説明

樹脂分散液連続凝析方法

【課題】本発明の目的は、樹脂分散液中の樹脂を短時間で完全に凝析させることができると共に、得られる凝析粒子の粒子径を容易に制御することができる樹脂分散液連続凝析方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る樹脂分散液連続凝析方法は、第1剪断工程及び第2剪断工程を備える。第1剪断工程では、樹脂分散液又は凝析済み樹脂分散液に第1剪断力が加えられる。第2剪断工程では、第1剪断工程において樹脂分散液から生成した凝析済み樹脂分散液又は第1剪断工程を経た凝析済み樹脂分散液に第1剪断力とは異なる剪断力が加えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化液や懸濁液等の樹脂分散液を連続的に凝析して所定範囲内の大きさの樹脂凝析粒体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素エラストマー水性分散液等の樹脂分散液から樹脂分を取り出す場合、通常、樹脂分散液に凝析液を加えると共に剪断力を加える凝析法が採用される。このような凝析法には、回分法と連続法とがあるが、生産性が優れている点で連続法が好ましい。そして、連続法としては、例えば、「凝析装置内に連続的にゴムラテックスと凝析液とを供給してゴムラテックスを連続的に凝析させる連続凝析方法」が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、過去に、「ポリテトラフルオロエチレン水性ディスパージョンを高剪断装置に連続的に供給してスラリー化する工程と、スラリーを竪型撹拌機に下方から連続的に供給して撹拌下に造粒し、上方から湿潤パウダーを取り出す工程と、湿潤パウダーを金網のベルトコンベア上に排出して水と分離する工程とを備えるポリテトラフルオロエチレンの湿潤パウダーの連続製造法」が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開昭57−146639号公報
【特許文献2】特開平2−239911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの方法を採用すると、未凝析分が大量に残存し排水処理が必要となる問題や、凝析粒子径が制御しにくく品質管理が困難である問題、大量の未凝析分によって後段の竪型撹拌機での処理時間が長くなり生産性が低下する問題等があった。また、特許文献2の方法を含フッ素エラストマーに適用すると、エラストマー粒子の付着性に起因して、金網のベルトに付着して水切りが不十分となる問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、樹脂分散液中の樹脂を短時間で完全に凝析させることができると共に、得られる凝析粒子の粒子径を容易に制御することができる樹脂分散液連続凝析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る樹脂分散液連続凝析方法は、第1剪断工程及び第2剪断工程を備える。第1剪断工程では、樹脂分散液又は凝析済み樹脂分散液に第1剪断力が加えられる。なお、ここにいう「樹脂分散液」とは、例えば、含フッ素エラストマー水性分散液等である。また、樹脂分散液を凝析させるには凝析液が必要となる場合がある。第2剪断工程では、第1剪断工程において樹脂分散液から生成した凝析済み樹脂分散液又は第1剪断工程を経た凝析済み樹脂分散液に第1剪断力とは異なる剪断力(以下「第2剪断力」という)が加えられる。なお、第2剪断工程以降に複数の剪断工程が設けられてもかまわない。
【0007】
この樹脂分散液連続凝析方法では、第1剪断工程において樹脂分散液に第1剪断力が加えられた後、第2剪断工程において第1剪断工程で樹脂分散液から生成した凝析済み樹脂分散液に第2剪断力が加えられる。このため、この樹脂分散液連続凝析方法では、第1剪断工程において樹脂分散液に強い剪断力を掛けて樹脂分散液の凝析を短時間で完了させ、第2剪断工程においてさらに強い剪断力を掛けて未凝析分を凝析させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、樹脂分散液から凝析時間を短縮化すると共に未凝析分の除去率を向上させることができる。また、この樹脂分散液連続凝析方法では、所定範囲内の粒子径の凝析粒子が得られるように第1剪断工程において樹脂分散液に比較的弱い剪断力を掛けて樹脂分散液を凝析させ、第2剪断工程において第1剪断工程時よりも強い剪断力を掛けて未凝析分を凝析させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、凝析粒子の粒子径を容易に制御することができると共に未凝析分を低減することができる。この結果、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、安定した品質の凝析粒体を連続的に生産することができる。
【0008】
なお、後者の場合、第1剪断工程における凝析効率は不充分であってもかまわない。
【0009】
また、この樹脂分散液連続凝析方法では、第1剪断工程において凝析済み樹脂分散液に第1剪断力が加えられた後、第2剪断工程において第1剪断工程を経た凝析済み樹脂分散液に第1剪断力とは異なる剪断力が加えられる。このため、この樹脂分散液連続凝析方法では、未凝析分を段階的に低減される。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、凝析時間を短縮化すると共に未凝析分の除去率を向上させることができる。
【0010】
第2発明に係る樹脂分散液連続凝析方法は、第1発明に係る樹脂分散液連続凝析方法であって、第1剪断工程は、第1駆動源により駆動される第1凝析装置によって行われる。また、第2剪断工程は、第1駆動源とは独立して設けられる第2駆動源により駆動される第2凝析装置によって行われる。なお、第2凝析装置は、第1凝析装置と同じ凝析装置であってよいし異なる凝析装置であってもよい。また、第2駆動源は、第1駆動源と同じ駆動源であってもよいし異なる駆動源であってもよい。
【0011】
このため、樹脂分散液に所望の剪断力が掛かるように第1凝析装置及び第2凝析装置を設定すれば、この樹脂分散液連続凝析方法を実施することができる。
【0012】
第3発明に係る樹脂分散液連続凝析方法は、第2発明に係る樹脂分散液連続凝析方法であって、第2凝析装置は、第1凝析装置と同じ凝析装置である。
【0013】
このため、樹脂分散液に所望の剪断力が掛かるように第1駆動源及び第2駆動源を設定するだけで、この樹脂分散液連続凝析方法を実施することができる。
【0014】
第4発明に係る樹脂分散液連続凝析方法は、第2発明又は第3発明に係る樹脂分散液連続凝析方法であって、凝析装置は、パイプラインミキサー又はパイプラインミルである。
【0015】
このため、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、ミキサーの回転数を調整することによって樹脂分散液に所望の剪断力を掛けることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、樹脂分散液の凝集の度合を容易に制御することができる。
【0016】
第5発明に係る樹脂分散液連続凝析方法では、樹脂分散液に対して異なる剪断力が段階的に加えられる。
【0017】
このため、この樹脂分散液連続凝析方法では、先ず、第1段階において樹脂分散液に強い剪断力を掛けて樹脂分散液の凝析を短時間で完了させ、第2段階以降の段階においてさらに強い剪断力を掛けて未凝析分を凝析させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、樹脂分散液から凝析時間を短縮化すると共に未凝析分の除去率を向上させることができる。また、この樹脂分散液連続凝析方法では、所定範囲内の粒子径の凝析粒子が得られるように第1段階において樹脂分散液に比較的弱い剪断力を掛けて樹脂分散液を凝析させ、第2段階以降の段階において第1段階時よりも強い剪断力を掛けて未凝析分を凝析させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、凝析粒子の粒子径を容易に制御することができると共に未凝析分を低減することができる。この結果、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、安定した品質の凝析粒体を連続的に生産することができる。
【0018】
なお、後者の場合、第1段階における凝析効率は不充分であってもかまわない。
【発明の効果】
【0019】
第1発明に係る樹脂分散液連続凝析方法では、第1剪断工程において樹脂分散液に第1剪断力が加えられた後、第2剪断工程において第1剪断工程で樹脂分散液から生成した凝析済み樹脂分散液に第2剪断力が加えられる。このため、この樹脂分散液連続凝析方法では、第1剪断工程において樹脂分散液に強い剪断力を掛けて樹脂分散液の凝析を短時間で完了させ、第2剪断工程においてさらに強い剪断力を掛けて未凝析分を凝析させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、樹脂分散液から凝析時間を短縮化すると共に未凝析分の除去率を向上させることができる。また、この樹脂分散液連続凝析方法では、所定範囲内の粒子径の凝析粒子が得られるように第1剪断工程において樹脂分散液に比較的弱い剪断力を掛けて樹脂分散液を凝析させ、第2剪断工程において第1剪断工程時よりも強い剪断力を掛けて未凝析分を凝析させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、凝析粒子の粒子径を容易に制御することができると共に未凝析分を低減することができる。この結果、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、安定した品質の凝析粒体を連続的に生産することができる。
【0020】
なお、後者の場合、第1剪断工程における凝析効率は不充分であってもかまわない。
【0021】
また、この樹脂分散液連続凝析方法では、第1剪断工程において凝析済み樹脂分散液に第1剪断力が加えられた後、第2剪断工程において第1剪断工程を経た凝析済み樹脂分散液に第1剪断力とは異なる剪断力が加えられる。このため、この樹脂分散液連続凝析方法では、未凝析分を段階的に低減される。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、凝析時間を短縮化すると共に未凝析分の除去率を向上させることができる。
【0022】
樹脂分散液に所望の剪断力が掛かるように第1凝析装置及び第2凝析装置を設定すれば、第2発明に係る樹脂分散液連続凝析方法を実施することができる。
【0023】
樹脂分散液に所望の剪断力が掛かるように第1駆動源及び第2駆動源を設定するだけで、第3発明に係る樹脂分散液連続凝析方法を実施することができる。
【0024】
第4発明に係る樹脂分散液連続凝析方すれば、ミキサーの回転数を調整することによって樹脂分散液に所望の剪断力を掛けることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、樹脂分散液の凝集の度合を容易に制御することができる。
【0025】
第5発明に係る樹脂分散液連続凝析方法では、先ず、第1段階において樹脂分散液に強い剪断力を掛けて樹脂分散液の凝析を短時間で完了させ、第2段階以降の段階においてさらに強い剪断力を掛けて未凝析分を凝析させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、樹脂分散液から凝析時間を短縮化すると共に未凝析分の除去率を向上させることができる。また、この樹脂分散液連続凝析方法では、所定範囲内の粒子径の凝析粒子が得られるように第1段階において樹脂分散液に比較的弱い剪断力を掛けて樹脂分散液を凝析させ、第2段階以降の段階において第1段階時よりも強い剪断力を掛けて未凝析分を凝析させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、凝析粒子の粒子径を容易に制御することができると共に未凝析分を低減することができる。この結果、この樹脂分散液連続凝析方法を利用すれば、安定した品質の凝析粒体を連続的に生産することができる。
【0026】
なお、後者の場合、第1段階における凝析効率は不充分であってもかまわない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<凝析対象>
本実施形態では、凝析対象となる樹脂分散液として含フッ素エラストマー水性分散液が選ばれる。以下、この含フッ素エラストマー水性分散液の詳細について説明する。
【0028】
凝析対象となる含フッ素エラストマー水性分散体としては、ポリマー濃度が水性分散体に対して5〜50%であるものが好ましい。
【0029】
本実施形態において、含フッ素エラストマーは、一般に、30〜80質量%の第1単量体の共重合単位を有するものである。なお、ここにいう「第1単量体」とは、含フッ素エラストマーの分子構造において、全共重合単位のうち最多質量を占める共重合単位を構成することとなったモノマーを意味する。第1単量体としては、例えば、ビニリデンフルオライド(以下「VdF」という)、テトラフルオロエチレン(以下「TFE」という)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下「PAVE」という)、ヘキサフルオロプロピレン(以下「HFP」という)等が挙げられる。
【0030】
また、本実施形態において、共重合単位は、含フッ素エラストマーの分子構造上の一部分であって、対応するモノマーに由来する部分を意味する。例えば、VdF単位は、VdF系共重合体の分子構造上の一部分であって、VdFに由来する部分であり、−(CH2−CF2)−で表される。「全共重合単位」は、含フッ素エラストマーの分子構造上、モノマーに由来する部分の全てを意味する。なお、共重合単位の含有量は、19F−NMRを測定して得られる。また、含フッ素エラストマーは、第1単量体以外の単量体に由来する共重合単位が、第1単量体と共重合可能な単量体の何れか1種のみに由来するものであってもよいし、第1単量体と共重合可能な単量体の2種以上に由来するものであってもよい。第1単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、フッ素含有オレフィン、フッ素含有ビニルエーテル及び炭化水素オレフィンが挙げられる。また、フッ素含有オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、VdF、TFE、HFP、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン(以下「CTFE」という)、フッ化ビニル(以下「VF」という)等が挙げられる。また、フッ素含有ビニルエーテルとしては、例えば、パーフルオロ(ビニルエーテル)が挙げられる。また、パーフルオロ(ビニルエーテル)としては、例えば、PAVE等が挙げられる。
【0031】
PAVEとしては、例えば、
一般式(1):CF2=CFO(RfaO)n(RfbO)mRfc(式中、Rfa及びRfbは、異なって、直鎖又は分岐鎖である炭素数2〜6のパーフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して0〜10の整数であり、Rfcは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。)で表される化合物、
一般式(2):CF2=CFO(CF2CFXO)rRfd(Xは、−F又は−CF3であり、rは、0〜5の整数であり、Rfdは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。)で表される化合物、
一般式(3):CF2=CFO[(CF2uCF2CFZO]vRfe(式中、Rfeは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、uは0又は1の整数であり、vは0〜5の整数であり、Zは−F又は−CF3である。)で表される化合物、
一般式(4):CF2=CFO[(CF2CF(CF3)O)m(CF2CF2CF2O)n(CF2y]Cz2z+1(式中、m及びnは、独立して0〜10の整数であり、yは、0〜3の整数であり、zは、炭素数1〜5の整数である。)で表される化合物、
一般式(5):CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF3O)wx2x+1(式中、wは1〜5の整数であり、xは1〜3の整数である。)で表される化合物
等が挙げられる。
【0032】
なお、一般式(2)で表される化合物としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下「PMVE」という)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(以下「PEVE」という)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下「PPVE」という)等であることが好ましい。
【0033】
また、一般式(3)において、Rfeは−C37であることが好ましく、上記uは0であり、上記vは1であることが好ましい。
【0034】
また、一般式(4)において、上記m及びnは、独立して0又は1であることが好ましく、zは1であることが好ましい。
【0035】
また、一般式(5)において、上記xは1であることが好ましい。
【0036】
また、含フッ素エラストマーがPAVE単位を有する場合、含フッ素エラストマー中のPAVE単位が20〜70質量%であることが好ましい。また、含フッ素エラストマーがPMVE単位を有する場合、含フッ素エラストマー中のPMVE単位が30〜55質量%であることが好ましい。
【0037】
また、炭化水素オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロペン等が挙げられるが、プロペンが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る含フッ素エラストマーが炭化水素オレフィン単位を有する場合、含フッ素エラストマー中の炭化水素オレフィン単位が全共重合体単位の4〜20質量%であることが好ましい。
【0039】
なお、含フッ素エラストマーは、具体的には、例えば、TFE/パーフルオロ(ビニルエーテル)系共重合体、VdF/HFP系共重合体、VdF/CTFE系共重合体、VdF/HFP/TFE系共重合体、VdF/CTFE/TFE系共重合体、TFE/プロピレン系共重合体、TFE/プロピレン/VdF系共重合体、エチレン/HFP系共重合体等の含フッ素共重合体等が挙げられ、なかでも、第1単量体がVdFであるVdF系共重合体、又は、第1単量体がTFEであるTFE系共重合体であることが好ましい。
【0040】
なお、TFE系共重合体としては、例えば、TFE/プロピレン共重合体、TFE/PAVE系共重合体が挙げられる。
【0041】
また、VdF系共重合体としては、例えば、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、一般式:ICH2CF2CF2O〔CF(CF3)CF2O〕yCF=CF3(y=0〜3)で示されるヨウ素化合物を共重合体単位とするVdF系共重合体等が挙げられる。
【0042】
また、含フッ素エラストマーは、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/含フッ素ビニルエーテル共重合体、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン/含フッ素ビニルエーテル共重合体、ビニリデンフルオライド/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/クロロトリフルオロエチレン/含フッ素ビニルエーテル共重合体、ビニリデンフルオライド/クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、又は、ビニリデンフルオライド/クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/含フッ素ビニルエーテル共重合体であることが特に好ましい。
【0043】
含フッ素エラストマーを重合する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、なかでも、乳化重合が好ましい。上記重合で用いる重合開始剤の種類や濃度、重合温度、重合圧力は特に限定されない。
【0044】
<樹脂分散液連続凝析装置>
本発明の一実施形態に係る樹脂分散液連続凝析装置1は、含フッ素エラストマー水性分散液を凝析して所定範囲内の大きさの凝析粒体を製造するための装置であって、図1に示されるように、主に、第1パイプラインミキサー1A及び第2パイプラインミキサー1Bを備える。なお、本実施の形態において、第2パイプラインミキサー1Bは、第1パイプラインミキサーと同じパイプラインミキサーである。以下、パイプラインミキサー1A,1Bの構成の詳細について説明する。
【0045】
<パイプラインミキサーの構成>
パイプラインミキサー1A,1Bは、ケーシング10、攪拌棒30、シール機構50及び駆動機構70を備える。以下、これらの構成要素の詳細について詳述する。
【0046】
<パイプラインミキサーの構成要素>
(1)ケーシング
ケーシング10は、図2及び図3に示されるように、主に、本体部11、蓋部12、樹脂分散液供給管13、凝析液供給管14及び樹脂凝析粒体排出管15から構成されている。なお、このケーシング10は、本体部11及び凝析粒体排出管15の軸が水平面に平行になり(つまり、本体部11及び凝析粒体排出管15の軸が鉛直方向に直交し)且つ凝析液供給管14が上を向くように設置される。
【0047】
本体部11は、図2及び図3に示されるように、円筒形の部材であって、3つの円筒部材11a,11b,11cが取り外し可能に連結されて構成されている。なお、以下、説明の便宜上、蓋部12が取り付けられている円筒部材11aを「第1円筒部材」と称し、中央に位置する円筒部材11bを「第2円筒部材」と称し、樹脂凝析粒体排出管15が取り付けられている円筒部材11cを「第3円筒部材」と称する。そして、これらの円筒部材11a,11b,11cは、フランジ113(図4参照)によって連結されている。また、これら円筒部材11a,11b,11cの連結部分は、図2に示されるように、シールリング112によってシールされている。また、本体部11には、攪拌棒30が駆動シャフト71に取り付けられた状態において粉砕補助翼33(後述)及び局所攪拌翼36a,36b,36c(後述)に対応する位置、及び逆流補助翼37(後述)と逆流発生翼38(後述)との間に対応する位置に固定羽根111が形成されている。固定羽根111は、図2に示されるように、本体部11の軸方向に沿って5セット形成されており、図3に示されるように1セットにつき4枚の羽根が用意されている。そして、この固定羽根111は、平板状の羽根であって、図4に示されるように、本体部11の軸を含む第1面と、本体部11の軸を含み第1面に直交する第2面に沿って本体部11の内周面から本体部11の軸に向かって延びている。
【0048】
蓋部12は、図2及び図3に示されるように、本体部11の外径よりもほぼ同一の外径を有する円盤体であって、本体部11の第1端の開口を覆う。なお、この蓋部12には、ほぼ中心に、樹脂分散液供給管13を嵌め込むための挿通孔が形成されている。また、この蓋部12と第1円筒部材11aとの連結部分は、図1に示されるように、シールリング112によってシールされている。
【0049】
樹脂分散液供給管13は、図2及び図3に示されるように、蓋部12のほぼ中心に形成される挿通孔に嵌め込まれた状態で蓋部12に溶接されている。なお、本実施の形態において、第1パイプラインミキサー1Aの樹脂分散液供給管13は含フッ素エラストマー水性分散液タンク(図示せず)に接続されており、第2パイプラインミキサー1Bの樹脂分散液供給管13は、第1パイプラインミキサー1Aの樹脂凝析粒体排出管15に接続されている。
【0050】
凝析液供給管14は、図2及び図3に示されるように、本体部11の第1端側の端部の側壁を貫通して設けられている。なお、この凝析液供給管14は、本体部11の第1円筒部材11aに溶接されている。なお、本実施の形態において、第1パイプラインミキサー1Aの凝析液供給管14は凝析液タンク(図示せず)に接続されており、第2パイプラインミキサー1Bの凝析液供給管14は、密栓されている。また、本実施の形態において、凝析剤としては、通常用いられているものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、カリミョウバン、PAC(ポリ塩化アルミ)等が挙げられる。なお、これらの中でも、硫酸アルミニウムが好ましい。
【0051】
樹脂凝析粒体排出管15は、ケーシング10の内部空間SPで生成する樹脂凝析粒体を系外に排出するためのものであり、図2及び図3に示されるように、本体部11の第1端の反対側の第2端の若干手前の位置の側壁を貫通して設けられている。なお、この樹脂凝析粒体排出管15は、本体部11の軸に沿って見た場合において、軸が凝析液供給管14の軸と直交する。また、この樹脂凝析粒体排出管15は、本体部11の第3円筒部材11cに溶接されている。また、本実施の形態において、第1パイプラインミキサー1Aの樹脂凝析粒体排出管15は第2パイプラインミキサー1Bの樹脂分散液供給管13に接続されており、第2パイプラインミキサー1Bの樹脂凝析粒体排出管15は図1に示されるように竪型撹拌装置100の下端に接続されている。
【0052】
なお、竪型撹拌装置100は、鉛直方向に平行な軸を有する撹拌棒を備えている。そして、この攪拌棒は、少なくとも1段の撹拌翼を有している。このような竪型撹拌装置100は、凝析粒体の定量排出性に優れる。なお、竪型撹拌装置100としては、特開平2−239911号公報に記載のものが挙げられる。また、竪型撹拌装置100からは適当な排出手段で凝析粒体を連続的に取り出すことができる。排出手段としては、例えば、オーバーフロー法、スクレーパー法等による定量かき出し法などが採用でき、特にオーバーフロー法が好ましい。竪型撹拌装置100から排出された凝析粒体は、メッシュ等によって水と分離され、乾燥に供される。なお、水分離工程及び乾燥工程も連続的に行うことができる。例えば、オーバーフローした凝析粒体含有液を金網製のベルトコンベヤ上に供給して水を分離しながら連続的に乾燥機に送り込むようにしてもよい。
【0053】
(2)攪拌棒
攪拌棒30は、図5に示されるように、主に、シャフト31、粉砕翼32、粉砕補助翼33、3つの流体搬送翼34a,34b,34c、剪断翼35、3つの局所攪拌翼36a,36b,36c、逆流補助翼37及び逆流発生翼38から構成されている。なお、以下、説明の便宜上、粉砕翼側の流体搬送翼34aを「第1流体搬送翼」と称し、中央に位置する流体搬送翼34bを「第2流体搬送翼」と称し、逆流発生翼側の流体搬送翼34cを「第3流体搬送翼」と称し、粉砕翼側の局所攪拌翼36aを「第1局所攪拌翼」と称し、中央に位置する局所攪拌翼36bを「第2局所攪拌翼」と称し、逆流発生翼側の局所攪拌翼36cを「第3局所攪拌翼」と称する。
【0054】
シャフト31は、図5に示されるように、円柱棒である。なお、このシャフト31には、第1端側の端部に駆動機構70の駆動シャフト71と連結するためのピン受け孔(図示せず)が形成されている。
【0055】
粉砕翼32は、図6に示されるように、4枚の羽根321から構成されている。そして、これらの羽根321は、平板状の羽根であり、シャフト31の第1端の反対側の第2端側の部分の外周から、シャフト31の第2端を基点とし第1端へと向かう方向の反対方向に向かうに連れて外周方向に向かって延びている。また、これらの羽根321は、図6に示されるように、シャフト31の軸に沿って見た場合において、シャフト31の外周に沿って均等に配置されており、シャフト31の軸を含む第21面、及びシャフト31の軸を含み第21面に直交する第22面に対して90°傾斜するように形成されている。
【0056】
粉砕補助翼33は、図7に示されるように、4枚の羽根331から構成されている。羽根331は、平板状の羽根であり、シャフト31の軸を含む第31面、及びシャフト31の軸を含み第31面と直交する第32面に沿ってシャフト31の外周面から外側に向かって延びている。また、この羽根331は、シャフト31の軸方向第1端側に張り出すように形成されている。また、この粉砕補助翼33は、図5に示されるように、粉砕翼32に隣接して設けられる。
【0057】
流体搬送翼34a,34b,34cは、図5に示されるように、シャフト31の中央より第2端側の領域においてシャフト31の軸方向に沿って等間隔に並べられており、図8に示されるように、それぞれ3枚の羽根341から構成されている。羽根341は、図5に示されるように、シャフト31の軸に対して45°の角度で交差する平板状の羽根であり、図8に示されるように、シャフト31の外周に沿って均等に配置されている。
【0058】
剪断翼35は、図5に示されるように、第3局所攪拌翼36cと逆流補助翼37との間の第3局所攪拌翼36c寄りに位置しており、図9に示されるように、4枚の羽根351から構成されている。羽根351は、図9に示されるように、平板状の羽根であり、シャフト31の軸を含む第51面、及びシャフト31の軸を含み第51面に直交する第52面に沿ってシャフト31の外周面から外側に向かって延びている。
【0059】
局所攪拌翼36a,36b,36cは、図5に示されるように、第1流体搬送翼34aと第2流体搬送翼34bとの間、第2流体搬送翼34bと第3流体搬送翼34cとの間、及び第3流体搬送翼34cと剪断翼35との間に位置しており、図10に示されるように、それぞれ4枚の羽根361から構成されている。羽根361は、図10に示されるように、シャフト31の軸を含む第61面、及びシャフト31の軸を含み第61面に直交する第62面に沿ってシャフト31の外周面から外側に向かって延びている。なお、この羽根361は、長さが流体搬送翼34a,34b,34cの長さよりも短い。また、第61面は第51面と一致する面であり、第62面は第52面と一致する面である。
【0060】
逆流補助翼37は、図5に示されるように、剪断翼35と逆流発生翼38との間の逆流発生翼38寄りに位置しており、図11に示されるように、4枚の羽根371及び邪魔板372から構成されている。羽根371は、図11に示されるように、平板状の羽根であり、シャフト31の軸を含む第71面、及びシャフト31の軸を含み第71面に直交する第72面に沿ってシャフト31の外周面から外側に向かって延びている。なお、第71面は第51面と一致する面であり、第72面は第52面と一致する面である。邪魔板372は、図11に示されるように、円環状の板であり、シャフト31の外周面から羽根371の中央部分まで延びている。また、この邪魔板372は、図5に示されるように、シャフト31の軸に直交する方向に沿って見た場合、羽根371の中央部分と交差するように形成されている。
【0061】
逆流発生翼38は、流体搬送翼34a,34b,34cとは逆方向の流体流れをつくり出す翼であり、図5に示されるように、シャフト31の第1端側の端部に位置している。そして、この逆流発生翼38は、図12及び図13に示されるように、2枚の羽根381から構成されている。羽根381は、図13に示されるように、シャフト31の外周から外側に向かうに連れて湾曲する羽根であり、シャフト31を挟んで対抗するように形成されている。
【0062】
そして、この攪拌棒30は、図2に示されるように、シャフト31の軸がケーシング10の本体部11の軸に一致するようにケーシング10に収容され、シール機構50を介して駆動機構70の駆動シャフト71に連結される。このように攪拌棒30がケーシング10に収容された状態において、粉砕翼32が収容される内部空間SPを「粉砕空間SPc」と称し、粉砕補助翼33、流体搬送翼34a,34b,34c、剪断翼35及び局所攪拌翼36a,36b,36cが収容される内部空間SPを「剪断空間SPs」と称し、剪断翼35と逆流補助翼37との間の内部空間SPを「排出空間SPe」と称し、逆流補助翼37及び逆流発生翼38を収容する内部空間を「逆流空間SPr」と称する。
【0063】
(3)シール機構
シール機構50は、ケーシング10の内部空間SPに流れる液が駆動シャフト71を伝って駆動機構70に浸入しないように内部空間SPと駆動機構70とを分け隔てる。なお、このシール機構50には駆動シャフト71の脇に凝析液通路が設けられており、凝析液通路を流れる凝析液は逆流発生翼38によって排出空間SPeへと送られる。
【0064】
(4)駆動機構
駆動機構70は、電動機であって、駆動シャフト71を回転させる。
【0065】
<樹脂分散液連続凝析装置による樹脂凝析粒体の製造>
(1)凝析条件
パイプラインミキサー1A,1Bは、含フッ素エラストマー水性分散液を内部空間SPで凝集することができる条件で運転される。なお、この条件は駆動モータの回転数によって決定されるが、ケーシング10と攪拌棒30との隙間が5〜10mm程度である場合、撹拌棒30の周速を2〜20m/秒、好ましくは3〜15m/秒の範囲内とすることが均一な高剪断力を与える点から好ましい。また、パイプラインミキサー1A,1B内部でのポリマー濃度は3〜20質量%、好ましくは4〜15質量%となるように調節されるのが好ましい。
【0066】
(2)凝析工程
先ず、第1パイプラインミキサー1A及び第2パイプラインミキサー1Bの駆動機構70により駆動シャフト71を回転させて第1パイプラインミキサー1A及び第2パイプラインミキサー1Bの攪拌棒30をそれぞれ回転させる。なお、このとき、第1パイプラインミキサー1Aでは比較的高い速度で駆動シャフト71を回転させ、第2パイプラインミキサー1Bでは更に高い速度で駆動シャフト71を回転させる。そして、第1パイプラインミキサー1Aの樹脂分散液供給管13に所定流量で含フッ素エラストマー水性分散液(通常、温度が5〜70℃であり、ポリマー濃度が5〜20質量%、好ましくは6〜12質量%である)を流して含フッ素エラストマー水性分散液を粉砕空間SPcに送ると同時に第1パイプラインミキサー1Aの凝析液供給管14に所定流量で凝析液を流して凝析液を粉砕空間SPcに送る。すると、粉砕空間SPcでは、粉砕翼32によって流入する樹脂分散液と凝析液とが攪拌混合されると同時に樹脂分散液と凝析液との攪拌混合によって生成する凝析体が粉砕翼32によって粉砕される。この結果、粉砕空間SPcには、所定範囲内の大きさの凝析粒体が連続的に製造される。そして、この凝析粒体は、主に流体搬送翼34a,34b,34cによって生じる流体流れ(以下「搬送方向流れ」という)に乗って剪断空間SPsへと送られる。そして、剪断空間SPsでは、凝析粒体及び未凝析分が、搬送方向流れに乗って排出空間SPeへと流れながら、流体搬送翼34a,34b,34c、局所攪拌翼36a,36b,36c及び固定羽根111によって剪断力を加えられる。この結果、未凝析分が減少すると同時に凝析粒体の形状が整えられていく。そして、搬送方向流れに乗って排出空間SPeへと達した凝析粒体は、搬送方向流れと、逆流発生翼38によって逆流空間SPrにおいて生じる逆搬送方向流れとによって樹脂凝析粒体排出管15に押し出される。そして、凝析粒体及び未凝析分を含む水は、第2パイプラインミキサー1Bの樹脂分散液供給管13を通って第2パイプラインミキサー1Bの内部空間へと導かれる。そして、凝析粒体及び未凝析分を含む水は、搬送方向流れに乗って粉砕空間SPcから剪断空間SPsへと送られる。そして、剪断空間SPsでは、未凝析分が、搬送方向流れに乗って排出空間SPeへと流れながら、流体搬送翼34a,34b,34c、局所攪拌翼36a,36b,36c及び固定羽根111によって剪断力を加えられる。この結果、未凝析分がさらに減少する。そして、搬送方向流れに乗って排出空間SPeへと達した凝析粒体は、搬送方向流れと、逆流発生翼38によって逆流空間SPrにおいて生じる逆搬送方向流れとによって樹脂凝析粒体排出管15に押し出され、竪型撹拌装置100に配送される。
【0067】
<樹脂分散液連続凝析装置の特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係る樹脂分散液連続凝析装置1では、含フッ素エラストマー水性分散液が第1パイプラインミキサー1A中の剪断空間SPsにおいて剪断力を加えられ、その後、第2パイプラインミキサー1B中の剪断空間SPsにおいて先の剪断力よりも大きな剪断力を加えられる。このため、この樹脂分散液連続凝析装置1を採用すれば、樹脂分散液から凝析時間を短縮化すると共に未凝析分の除去率を向上させることができる。したがって、この樹脂分散液連続凝析装置1を採用すれば、竪型撹拌装置100内に未凝析分が堆積することがない。この結果、この樹脂分散液連続凝析装置1を採用すれば、優れた生産性を実現することができる。
【0068】
なお、本発明に係る樹脂分散液連続凝析装置を利用すれば、平均粒子径が2〜15mm、より精密に制御すれば4〜7mmの凝析粒体が得ることができる。また、本発明に係る樹脂分散液連続凝析装置を利用すれば、排出される排水中の未凝析分量を、排水に対して0〜100ppm、より精密に制御すれば0〜30ppmとすることができる。
【0069】
(2)
本発明の実施の形態に係る樹脂分散液連続凝析装置1では、第1パイプラインミキサー1Aと第2パイプラインミキサー1Bとが、同一のパイプラインミキサーであった。このため、この樹脂分散液連続凝析装置1では、駆動シャフト71の回転数を変えるだけで、第1パイプラインミキサー1Aと第2パイプラインミキサー1Bにおいて異なる剪断力を発生させることができる。
【0070】
<変形例>
(A)
先の実施の形態では凝析対象を含フッ素エラストマー水性分散液としたが、含フッ素エラストマー水性分散液以外の樹脂分散液、例えば、ゴムラテックス等を凝析対象としてもかまわない。
【0071】
(B)
先の実施の形態に係る樹脂分散液連続凝析装置1では第2パイプラインミキサー1Bに粉砕翼32及び粉砕補助翼33が設けられたが、第2パイプラインミキサー1Bから粉砕翼32及び粉砕補助翼33が取り外されてもかまわない。
【0072】
(C)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、第2パイプラインミキサー1B以降に第2パイプラインミキサー1Bと同様のパイプラインミキサーを複数、直列に連結してもよい。なお、かかる場合、そのパイプラインミキサーの攪拌棒の回転数を第2パイプラインミキサー1Bの攪拌棒30の回転数よりも高くする必要がある。このようにすれば、さらに未凝析分の除去率を向上させることができる。
【0073】
(D)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、第2パイプラインミキサー1Bの凝析液供給管14に凝析液タンクを接続してもよい。
【0074】
(E)
先の実施の形態に係るパイプラインミキサー1A,1Bでは、攪拌棒30を回転駆動させる駆動機構70として駆動モータが採用されたが、駆動機構70としてエンジン等が採用されてもよい。
【0075】
(F)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、パイプラインミキサー1A,1Bに適宜、濃度調整用の水等が加えられてもよい。
【0076】
(G)
先の実施の形態に係る樹脂分散液連続凝析装置1において、第1パイプラインミキサー1Aでは比較的高い速度で駆動シャフト71を回転させ、第2パイプラインミキサー1Bでは更に高い速度で駆動シャフト71を回転させて、樹脂分散液から凝析時間を短縮化すると共に未凝析分の除去率を向上させた。しかし、第1パイプラインミキサー1Aでは比較的低い速度で駆動シャフト71を回転させ、第2パイプラインミキサー1Bでは比較的高い速度で駆動シャフト71を回転させて、凝析粒子の粒子径を制御しつつ未凝析分の除去率を向上させるようにしてもよい。よって、樹脂分散液連続凝析装置1をこのように設定すれば、安定した品質の凝析粒体を連続的に生産することができる。なお、かかる場合、第1パイプラインミキサー1Aにおける凝析効率は不充分であってもかまわない。
【0077】
(H)
先の実施の形態に係る樹脂分散液連続凝析装置1ではパイプラインミキサー1A,1Bが採用されたが、パイプラインミキサー1A,1Bに代えてパイプラインミルが採用されてもよいし、その他、均一な高剪断力を瞬時にかけられるものが採用されてもよい。
【0078】
(I)
先の実施の形態に係るパイプラインミキサー1A,1Bでは図5に示されるような攪拌棒30が採用されたが、これに代えて、図14に示されるような攪拌棒30Aが採用されてもよい。この攪拌棒30Aは、粉砕翼32A以外、先の実施の形態に掛かる攪拌棒30と同一である。また、本変形例に係る粉砕翼32Aは、羽根321AがL字型の形状を呈していること以外、先の実施形態に掛かる粉砕翼32と同一である。
【0079】
(J)
先の実施の形態では粉砕翼32、粉砕補助翼33、流体搬送翼34a,34b,34c、剪断翼35、局所攪拌翼36a,36b,36c、逆流補助翼37及び逆流発生翼38において羽根の枚数が規定されたが、本発明においてこれらの翼の羽根の枚数は特に限定されず、条件に応じて適宜変更してもかまわない。例えば、粉砕翼32の羽根321の枚数を6枚としてもかまわないし、流体搬送翼34の羽根341の枚数を4枚としてもかまわない。
【0080】
<実施例>
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0081】
なお、各実施例及び比較例において、各値の測定は以下の方法により行った。
【0082】
(1)排水中の未凝析分量の測定
未凝析量測定方法として、沈降法を用いた。
【0083】
竪型撹拌機出口部から流出してくる凝析粒体含有液を目開き100μmのナイロン製メッシュ上に供給し、ナイロン製メッシュにより凝析粒体含有液中の凝析粒体を捕捉すると共に、ナイロン製メッシュの下に配置した2Lビーカー(質量:W1)に排水を採取した。
【0084】
そして、約2Lの排水及びビーカーの合算質量(以下「W2」と略する)を測定した。次いで、濃度27%の硫酸アルミ水溶液100gを排水に添加して撹拌し、硫酸アルミを全体に分散させた後、その排水を12時間以上静置した。
【0085】
あらかじめ、150℃で12時間乾燥しデシケーター内で放冷し質量測定をした目開き1μmのメンブランフィルター(質量:W3)(47mm、親水性PTFE)を減圧ろ過装置にセットし、静置した排水をビーカー底に沈降したポリマーと共に減圧ろ過装置に通し沈降ポリマーを回収した。次に、50gの純水でビーカーを洗浄し、同様にろ過した。続いて、ビーカーの洗浄を更に5回繰り返しビーカー中のポリマーをすべて回収した。そして、最後に、メンブランフィルター上に回収されたポリマーを200gの純水を用いて洗浄した。さらに、減圧ろ過装置からメンブランフィルターをポリマーと共に回収し、そのメンブランフィルター及びポリマーを外部からの汚染を防ぐためにシャーレに入れ、150℃の熱風乾燥機を用いてそのメンブランフィルター及びポリマーを8時間乾燥させた。その後デシケーター内で充分放冷したのち、ポリマー及びメンブランフィルターの合算質量(W4)を測定した。
【0086】
未凝析量の算出式としては下記式を用いた。
【0087】
未凝析量(ppm)=(W4−W3)/(W2−W1)×106
【0088】
(2)平均粒子径の測定
凝析粒体同士の固着を防ぐために凝析粒体を水とともにシャーレにサンプリングした。そして、シャーレ中の全凝析粒体の長径と短径をノギスを用いて測定し平均粒径を算出した。
【実施例1】
【0089】
第1パイプラインミキサー1A(内径125mm、長さ650mm)及び第2パイプラインミキサー1B(内径125mm、長さ650mm)から成る樹脂分散液連続凝析装置1並びに竪型撹拌装置100(内径340mm、高さ700mm)から成る凝析粒子処理装置(図1参照)において、ポリマー濃度25質量%のVdF/HFP共重合体から成る粒子が分散した含フッ素系水性ディスパージョン(温度40℃)を毎時900リットルで第1パイプラインミキサー1Aの樹脂分散液供給管13に通して第1パイプラインミキサー1Aに供給し、同じく凝集剤としての0.1質量%硫酸アルミニウム(Al2(SO43)水溶液(温度40℃)を毎時2700リットルで第1パイプラインミキサー1Aの凝析液供給管14に通して第1パイプラインミキサー1Aに供給して含フッ素系水性ディスパージョンを連続凝析して凝析粒体を連続製造した。なお、このとき、第1パイプラインミキサー1Aの駆動モータの回転数を1800rpmに設定し、第2パイプラインミキサー1Bの駆動モータの回転数を2000rpmに設定し、竪型撹拌装置100の駆動モーラの回転数を360rpmに設定した。そして、竪型撹拌装置100から排出された凝析粒体含有液を目開き100ミクロンの樹脂製メッシュにて凝析粒体と排水とに分離しそれぞれの性状を測定した。その結果は表1及び表2の通りであった。
【0090】
(比較例1)
第2パイプラインミキサーを使用しなかったことを除いて実施例1と同様にして竪型撹拌装置から排出された凝析粒体含有液を目開き100ミクロンの樹脂製メッシュを用いて凝析粒体と排水とに分離しそれぞれの性状を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例2)
第2パイプラインミキサーを使用せず、竪型撹拌装置における滞留時間を150秒としたことを除いて実施例1と同様にして竪型撹拌装置から排出された凝析粒体含有液を目開き100ミクロンの樹脂製メッシュを用いて凝析粒体と排水とに分離しそれぞれの性状を測定した。結果を表2に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
<凝析機の設置数の相違による未凝析量の比較>
竪型撹拌装置での滞留時間を30秒に固定した場合、実施例1では、比較例1に比べ、排水中の未凝析量を約1/10に削減することができた。実施例1における粒体生成の大部分は第1パイプラインミキサーの内部空間で行われるため、第2パイプラインミキサーの追加による粒子径への影響はほとんどなかった。
【0094】
【表2】

【0095】
また、竪型撹拌装置での滞留時間を固定しない場合、実施例2では、比較例2に比べ、竪型撹拌装置での滞留時間を1/5以下とすることができ、排水中の未凝析分も低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る樹脂分散液連続凝析方法は、凝析粒子の粒子径を容易に制御することができると共に未凝析分を低減することができるという特徴を有し、含フッ素エラストマー水性分散液等の樹脂分散液から凝析粒体を製造するにあたって好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施の形態に係る樹脂分散液連続凝析装置及び竪型撹拌装置から成る凝析粒子処理装置の装置構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの平面部分断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーにおける攪拌棒の断面図、ケーシングの本体部の断面図、フランジの正面図、及び樹脂凝析粒体排出管の縦断面図を重ね合わせた図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの攪拌棒の側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの粉砕翼の背面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの粉砕補助翼のA−A断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの流体搬送翼の正面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの剪断翼のB−B断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの局所攪拌翼のC−C断面図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの逆流補助翼のD−D断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの逆流発生翼の正面図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係るパイプラインミキサーの逆流発生翼のE−E断面図である。
【図14】変形例(I)に係る攪拌棒の側面図である。
【符号の説明】
【0098】
1A 第1パイプラインミキサー(第1凝析装置)
1B 第2パイプラインミキサー(第2凝析装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂分散液又は凝析済み樹脂分散液に第1剪断力を加える第1剪断工程と、
前記第1剪断工程において前記樹脂分散液から生成した凝析済み樹脂分散液又は前記第1剪断工程を経た前記凝析済み樹脂分散液に第1剪断力とは異なる剪断力を加える第2剪断工程と
を備える樹脂分散液連続凝析方法。
【請求項2】
前記第1剪断工程は、第1駆動源により駆動される第1凝析装置(1A)により行われ、
前記第2剪断工程は、第1駆動源とは独立して設けられる第2駆動源により駆動される第2凝析装置(1B)により行われる、
請求項1に記載の樹脂分散液連続凝析方法。
【請求項3】
前記第2凝析装置は、前記第1凝析装置と同じ凝析装置である
請求項2に記載の樹脂分散液連続凝析方法。
【請求項4】
前記凝析装置は、パイプラインミキサー又はパイプラインミルである
請求項2又は3に記載の樹脂分散液連続凝析方法。
【請求項5】
樹脂分散液に対して異なる剪断力を段階的に加える樹脂分散液連続凝析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−173776(P2009−173776A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14066(P2008−14066)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】