説明

樹脂原料の製造方法及び樹脂とその製造方法

【課題】 従来技術が有する前述の欠点を解消し、バイオマス由来のカーボンニュートラルな、かつ樹脂の力学特性、耐熱性などを損なうことのない樹脂原料の製造方法及び樹脂とその製造方法の提供すること。
【解決手段】a)バイオマスを原料として製造された燃料を転化触媒と接触させてなる工程;
b)前記工程a)により得られる有機化合物を含む生成物を蒸留、抽出、吸着分離及び結晶化からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法により分離させてなる工程;
c)前記工程b)により分離された有機化合物を原料の少なくとも一部として樹脂原料を製造する工程;
からなる、樹脂原料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来のカーボンニュートラルな樹脂原料の製造方法及び樹脂とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原油備蓄量が世界的に減少しつつあること、及び化石及び鉱物燃料を使用した結果として生ずる環境破壊についての議論から、環境負荷を軽減し循環型社会を構築するためのバイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、我々のライフサイクルの中で太陽エネルギーによって二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。一方、石油は何億年もかけて生成された化石資源であり、我々のライフサイクルではもはや循環資源とは考えられず有限であり、いずれは枯渇する資源である。したがって、この数十年の間に我々は化石資源への依存から脱却し、非化石資源による循環型社会を構築し、持続可能な発展を図らなければならない。
【0003】
バイオマスの利用範囲はきわめて広く、食料、飼料、肥料、繊維、木材、燃料、工業原料及び薬品など広い用途があり、数多くのバイオマスやその成分などが使われている。中でも燃料、工業原料用途は石油代替、環境保全の点で特に重要である。
【0004】
燃料用途については、石油危機を契機に、資源の有限性への認識が高まるにつれて、再生資源としてのバイオマスから多様な燃料を得る技術が開発されており、主要なバイオマス燃料として次のようなものがある。
(1)液体燃料:エタノール、メタノール、バイオディーゼル、液化バイオマスなど
(2)気体燃料:メタン、熱分解ガス(水熱気化ガス含む)、水素など
(3)固体燃料:木質系(薪炭、廃材など)、農業廃棄物(藁など)、有機系都市ごみなど
【0005】
さらに得られたメタノールをゼオライト触媒によりガソリンに変換するプロセスも提案されている(例えば、特許文献1、2及び非特許文献1参照)。さらに、エタノールをゼオライト触媒によりガソリンに変換するプロセスも提案されている(例えば、非特許文献2、3参照)。しかし、これら燃料は、内燃機関、外燃機関、蒸気ボイラーなどの燃料として使用されるのみであり、これら燃料を原料に樹脂や合成繊維などを作るための工業原料を得るという提案には至っていない。
【0006】
また、メタノールをゼオライト触媒によりエチレンやプロピレンなどのオレフィン類に変換する方法も提案されているが(例えば、非特許文献4参照)、原料のメタノールはいずれもバイオマス由来ではなく天然ガス由来を前提にしており、石油同様に資源枯渇の問題は残されたままである。
【0007】
一方、従来の樹脂はほとんど石油資源を原料としているが、近年、植物資源を原料とする樹脂、すなわちバイオマス利用樹脂に注目が集まっている。現在、最も注目されているのはポリ乳酸である。ポリ乳酸は植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料とした樹脂である。しかしながら、ポリ乳酸などのバイオマス利用の生分解性樹脂は一般に力学特性、耐熱性が低く、用途が限られるため、従来の石油資源を原料とする樹脂を代替するまでには至っておらず、二酸化炭素循環による地球温暖化の抑制や資源枯渇の問題は何ら解決されていない。
【特許文献1】特開昭52−8005号公報
【特許文献2】米国特許第4,058,576号公報
【非特許文献1】触媒講座第9巻「工業触媒反応II」講談社 p51〜72(1985)
【非特許文献2】URL http://wwwchem.uwimona.edu.jm:1104/lectures/synfuel.html(2003)
【非特許文献3】第96回触媒討論会 討論会A予稿集2P33 p74(2005)
【非特許文献4】触媒講座第9巻「工業触媒反応II」講談社 p72〜79(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、バイオマス由来のカーボンニュートラルな、かつ樹脂の力学特性、耐熱性などを損なうことのない樹脂原料の製造方法及び樹脂とその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これまで内燃機関、外燃機関、蒸気ボイラーなどの燃料として使用されるのみであったバイオマスを原料として製造された燃料を触媒と接触させ、得られる生成物から樹脂原料に転化できうる有機化合物を選択的に分離し、それらを原料として樹脂原料を製造することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
1.a)バイオマスを原料として製造された燃料を転化触媒と接触させてなる工程;
b)前記工程a)により得られる有機化合物を含む生成物を蒸留、抽出、吸着分離及び結晶化からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法により分離させてなる工程;
c)前記工程b)により分離された有機化合物を原料の少なくとも一部として樹脂原料を製造する工程;
からなる、樹脂原料の製造方法。
【0012】
2.バイオマスを原料として製造された燃料が液体燃料及び気体燃料からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1記載の樹脂原料の製造方法。
【0013】
3.バイオマスを原料として製造された燃料がエタノール、メタノール及びメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする上記1または2記載の樹脂原料の製造方法。
【0014】
4.バイオマスを原料として製造された燃料がエタノールを含んでなることを特徴とする上記1〜3のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【0015】
5.転化触媒がゼオライトを含んでなる触媒組成物であることを特徴とする上記1〜4のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【0016】
6.有機化合物がオレフィン類及び芳香族化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする上記1〜5のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【0017】
7.有機化合物がエチレン、プロピレン、ベンゼン及びキシレンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする上記1〜6のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【0018】
8.有機化合物がパラーキシレンを含んでなることを特徴とする上記1〜7のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【0019】
9.樹脂原料がエチレングリコール、アクリロニトリル、カプロラクタム、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン及びテレフタル酸から選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする上記1〜8のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【0020】
10.樹脂原料がテレフタル酸を含んでなることを特徴とする上記1〜9のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【0021】
11.上記1〜10のいずれか記載の製造方法により得られる樹脂原料を少なくとも原料の一部として用いることを特徴とする樹脂の製造方法。
【0022】
12.樹脂原料がテレフタル酸を含んでなることを特徴とする上記11記載の樹脂の製造方法。
【0023】
13.樹脂がポリエステル樹脂を含んでなることを特徴とする上記11または12記載の樹脂の製造方法。
【0024】
14.上記10〜13のいずれか記載の製造方法により得ることができる樹脂。
から構成されるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下に説明する通り、バイオマス由来のカーボンニュートラルな樹脂原料の製造方法及び樹脂とその製造方法を得ることができる。
【0026】
このような樹脂原料を用いることによって、樹脂の力学特性、耐熱性などを損なうことなく、かつ二酸化炭素循環による地球温暖化の抑制や資源枯渇の問題も同時に解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明について更に詳細に説明する。
【0028】
本発明の樹脂原料の製造方法は、下記の工程からなることを特徴とする。
a)バイオマスを原料として製造された燃料を転化触媒と接触させてなる工程;
b)前記工程a)により得られる有機化合物を含む生成物を蒸留、抽出、吸着分離及び結晶化からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法により分離させてなる工程;
c)前記工程b)により分離された有機化合物を原料の少なくとも一部として樹脂原料を製造する工程;
【0029】
まず、工程a)について説明する。工程a)とは、バイオマスを原料として製造された燃料を転化触媒と接触させてなる工程、である。
【0030】
本発明におけるバイオマスは、太陽エネルギーによって二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であれば特に制限はなく、天然林や草原のように自生のものでも、人工林、牧草地、耕地で人工的に生産されるものでもよい。例えば、栽培作物系バイオマスとしてトウモロコシ、サトウキビ、ケナフ、マメ科植物など、廃棄物系・未利用バイオマスとして麦わら、籾殻、間伐材、廃木材、生ゴミ等が挙げられ、そのでんぷん、茎などの残さも利用できることからトウモロコシや天候の影響が受けにくいサトウキビはより好ましい。
【0031】
本発明における工程a)で用いられるバイオマスを原料として製造された燃料は特に限定されるものではないが、液体燃料、気体燃料及び固体燃料が挙げられ、具体的には下記のものが挙げられる。
(1)液体燃料:エタノール、メタノール、バイオディーゼル、液化バイオマスなど
(2)気体燃料:メタン、熱分解ガス(水熱気化ガス含む)、水素など
(3)固体燃料:木質系(薪炭、廃木材など)、農業廃棄物(藁など)、有機系都市ごみなど
【0032】
なかでも液体燃料及び気体燃料からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、製造量の多さや取り扱い易さの点からエタノール、メタノール及びメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなることがより好ましい。さらに、普及率の高さから安価に入手しやすいエタノールがより好ましい。
【0033】
燃料の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、エタノールの場合95%以上であれば良く、反応効率向上や転化触媒の劣化抑制の点から97%以上が好ましい。
【0034】
上記燃料の製造方法は特に限定されるものではないが、物理的方法、化学的方法および生物的方法が挙げられ、具体的には下記のものが挙げられる。
(1)物理的方法:抽出、蒸留、分離、乾燥、破砕、高密度化など
(2)化学的方法:熱分解、液化、気化、部分酸化、加水分解、触媒反応など
(3)生物的方法:発酵(エタノール発酵、メタン発酵など)、酵素処理など
【0035】
なかでもプロセスが簡易であり、エネルギー効率の点で生物的方法である発酵が好ましい。
【0036】
例えば、燃料用エタノールの製造を例に説明する。燃料用エタノールの製造は、次の3つの工程に大別される。(イ)バイオマス(トウモロコシ、サトウキビ、ケナフ、マメ科植物、藁、麦わら、籾殻、間伐材、廃木材、有機系都市ごみなど)を低分子化し糖類を生成、(ロ)糖類から微生物の機能によりエタノールを生成(エタノール発酵)、(ハ)エタノール含有発酵液からエタノールの分離精製、である。
【0037】
(イ)では、バイオマスを六炭糖、五炭糖などの他の糖類、でんぷん、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを生成し、六炭糖、五炭糖などの他の糖類はそのまま(ロ)のエタノール発酵に用いられ、でんぷん、セルロース、ヘミセルロースは蒸煮、加水分解、酵素分解などからなる糖化という低分子化し単糖とする工程を経た後エタノール発酵に用いられる。
【0038】
(ロ)では、(イ)で得られた単糖類から微生物機能を利用してエタノールが生成される。用いられる微生物として酵母や大腸菌を形質変換したものが挙げられる。
【0039】
(ハ)では、固体成分と液層を分離した後、蒸留工程で蒸発と凝縮を繰り返してエタノールの濃縮を行う。また、脱水剤や分離膜を用いてさらに濃縮する方法も用いられる。
【0040】
本発明における工程a)で用いられる転化触媒は特に限定されるものではないが、例えば、クラッキング、脱ロウ、芳香族化、分解、二量化、重合、縮合、異性化、不均化、酸化、転位、水素化、エステル化、加水分解等の転化反応に用いられる触媒を用いることが可能である。工程a)で用いられる上記燃料の種類や転化によって得られる生成物の種類に応じて触媒を選ぶことが可能である。具体的には、ゼオライト、シリカアルミナ、複合酸化物触媒、遷移金属担持触媒、貴金属担持触媒等が挙げられ、高活性、高選択性を有するゼオライトを含んでなる触媒組成物であることが好ましい。
【0041】
上記ゼオライトとは、結晶性マイクロポーラス物質のことであり、イオン交換能を有するものであれば特に限定されないが、分子サイズの均一な細孔径を有する結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性メタロアルミノフォスフェート、および結晶性シリコアルミノフォスフェートなどが挙げられる。ここでいうメタロシリケート、メタロアルミノシリケートとは、アルミノシリケートのアルミニウムの一部又は全部がガリウム、鉄、チタン、ボロン、コバルト、クロムなどのアルミニウム以外の金属で置換されたものである。メタロアルミノフォスフェートも同様にアルミノフォスフェートのアルミニウムまたはリンに対してその一部がそれ以外の金属で置換されたものをいう。
【0042】
本発明でいうゼオライトとは、アトラス オブ ゼオライト ストラクチャー タイプス(Atlas of Zeolite Structure types)(ダブリュー.エム.マイヤー,デイー.エイチ.オルソン、シーエイチ.ベロチャー,ゼオライツ(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Zeolites,) 17(1/2)(1996)に掲載されているすべてのゼオライト構造を有するものを意味する。上記の文献に掲載されていない構造の新種のゼオライトも本発明のゼオライトに含まれる。しかし、好ましくは簡単に入手できるL型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、ERI型ゼオライト、MFI型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β型ゼオライト、MEL型ゼオライト、FER型ゼオライト、Ω型ゼオライト、OFF型ゼオライト、AFI型ゼオライト、AEL型ゼオライト、ATO型ゼオライト、CHA型ゼオライトが有用である。触媒性能の点でMFI型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β型ゼオライト、ERI型ゼオライト及びOFF型ゼオライトが好ましい。
【0043】
本発明のゼオライトを触媒とする方法は、公知の方法が利用できる。ここでは最も一般的な方法について説明する。触媒は、ゼオライトを通常成型して用いる。成形体はゼオライトのみを固めたものでも、アルミナ、粘土などのバインダ−と共に造粒したものでも良い。造粒の仕方は、例えばアルミナゾルなどのバインダーと共に混練りした後、押し出し機で押しだし、マルメライザーでまるめることによって作ることができる。
【0044】
ゼオライトを含む触媒は、通常使用する前に予めゼオライト中の結晶水及び合成時に使った有機物を除去する。通常は200〜650℃で加熱することにより、結晶水及び合成時に使った有機物をほとんど除去することができる。
【0045】
ゼオライト細孔内の有機物を除去した後、通常はイオン交換などによって触媒能を向上させる。例えば、酸触媒として利用する場合、硝酸アンモニウムや塩化アンモニウム水溶液でアンモニウム交換した後、焼成することによって酸型にすることができる。また、塩酸や硝酸などの酸で処理して酸型にすることもできる。
【0046】
また、酸触媒以外の機能を持たせるためイオン交換サイトに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貴金属、希土類等を導入しても構わない。イオン交換サイトに導入した後焼成などにより、イオン交換サイトからはずれて違う場所にこれらの金属が存在しても構わない。
【0047】
また触媒は、ゼオライト以外の所に、例えばバインダーの部分などに金属を含んでいてもよく、例えば、酸触媒として用いる場合に、触媒寿命を延ばすためには、貴金属を担持して、水素と共存させて反応させることが好ましい。その理由は、明らかではないが、触媒へのプロトンの供給が容易になり、コーキングが抑えられる。担持する貴金属としては特に限定されないが、レニウム、白金、パラジウムが好ましい金属である。レニウムがさらに好ましい金属である。その理由は、水素化分解活性が低いためと考えられる。
【0048】
バイオマスを原料として製造された燃料を転化触媒と接触させる方法も特に制限はなく、燃料の組成、目的に応じて液相、気相のいずれも用いることができる。反応圧力や反応温度も一概にはいえないが、燃料の組成、転化の種類に応じて適宜選択することができる。また固定床、移動床、流動床のいずれの方法も用いられるが、操作の容易さから工業的には固定床流通式が特に好ましい。コーキングなどを抑制するために、水素などを共存させても構わない。
【0049】
例えば、メタノールをゼオライト触媒(例えば、MFI型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β型ゼオライト、CHA型ゼオライト、FER型ゼオライト、ERI型ゼオライト及びOFF型ゼオライトなど)によりガソリン(炭素数5以上のパラフィン類及びオレフィン類、炭素数5以上のナフテン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物を含有)やオレフィン類(エチレン、プロピレン、ブテンなど)に変換する方法については、特許文献1、2及び非特許文献1、4と同様の方法を用いることも可能である。エタノールをゼオライト触媒(例えば、MFI型ゼオライト、ガロシリケートなど)によりガソリンに変換する方法については、非特許文献2、3と同様の方法を用いることも可能である。メタンを炭化モリブデン修飾したゼオライト触媒によりベンゼンに変換する方法については、例えば、ケミカル コミュニケーションズ(Chemical Communications)(1) p86−87(2003)に記載の方法を用いることが可能である。また、熱分解ガスである一酸化炭素と水素は酸化亜鉛−酸化クロム触媒や銅−酸化亜鉛触媒によりメタノールに変換可能である(触媒講座第7巻「基本工業触媒反応」講談社 p21〜39(1985)参照)。
【0050】
次に、工程b)について説明する。工程b)とは、前記工程a)により得られる有機化合物を含む生成物を蒸留、抽出、吸着分離及び結晶化からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法により分離させてなる工程、である。
【0051】
本発明の前記工程a)により得られる有機化合物を含む生成物は特に限定されるものではないが、具体的には、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン等の炭素数1〜4の軽質ガス、炭素数5以上のパラフィン類及びオレフィン類、炭素数5以上のナフテン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ナフタレン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、エーテル類、コークなどの有機化合物の他、水、一酸化炭素、二酸化炭素、水素等が挙げられる。なかでも、樹脂原料の原料となりうるエチレン、プロピレン、ベンゼン及びキシレンの生成量が多いことが好ましい。そのためには、エタノール及びメタノールを含んでなる原料をMFI型ゼオライト触媒で転化することが好ましい。
【0052】
本発明の工程b)では、前記工程a)により得られる有機化合物を含む生成物から、蒸留、抽出、吸着分離及び結晶化からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法により、樹脂原料の原料となりうる有機化合物を選択的に分離することが重要である。
【0053】
本発明でいう蒸留、抽出、吸着分離及び結晶化は特に制限はなく、常圧蒸留法、減圧蒸留法、共沸蒸留法、抽出蒸留法、精密蒸留法、多段向流抽出法(エデレアーヌ法、ユーデックス法など)、分留法、水分離法、クロマト分取法、疑似移動床による吸着分離法、晶析法、深冷分離法、錯体形成法のいずれの方法も用いられるが、前記工程a)により得られる有機化合物を含む生成物の組成や分離したい有機化合物の組成に応じて選ぶことが可能である。蒸留は他の方法と結合して用いられる方が好ましい。また、工程b)の後、異性化工程を組み合わせることも可能である。
【0054】
例えば、吸着分離法および異性化方法の組み合わせにより、樹脂原料の原料となりうる有機化合物としてパラーキシレンを得る方法を具体例として説明する。
【0055】
バイオマスを原料として製造されたエタノールを非特許文献2の方法に従ってゼオライト触媒と接触させることにより、水、炭素数1〜4の軽質ガス、炭素数5以上のパラフィン類及びオレフィン類、炭素数5以上のナフテン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ナフタレン類及びコーク類などを得ることができる。
【0056】
これら生成物を加圧下で冷却し、凝縮しない軽質炭化水素ガスと液状の炭化水素及び水とを分離する(非特許文献1参照)。
【0057】
続いて、芳香族抽出及び/又は分留処理することによりエチルベンゼンを含有するキシレン異性体混合物を得ることができる。これらエチルベンゼンを含むキシレン異性体混合物は、平衡濃度に近いパラーキシレンを含有しているので、先ずパラーキシレン吸着分離工程に送られ、パラーキシレンを分離し、パラーキシレン濃度の低いラフィネート成分が、異性化工程に送られ、エチルベンゼンの転化と同時にパラーキシレンへの異性化反応を行い、キシレンより軽い沸点成分および重い沸点成分を分留で除去し、再び、新鮮な供給原料と合体して、パラーキシレン分離工程に送られ、パラーキシレンを分離し、パラーキシレン濃度の低いラフィネートを再循環する方法が挙げられる。さらに、上記パラーキシレン分離工程に供給される供給液中のパラーキシレン濃度を増大させ、且つパラーキシレン分離性能を向上させるため、フレッシュなエチルベンゼンを含むキシレン異性体混合物を、予め触媒と接触させ、エチルベンゼンをベンゼンとエタンに水素化脱アルキル化させ、エチルベンゼン濃度を低減させる方法を付加することもできる。この場合、パラーキシレンを分離後のラフィネート成分を異性化工程に循環させるループの外で、フレッシュなエチルベンゼンを含むキシレン異性体混合物を接触させる方法と、パラーキシレンを分離後のラフィネート成分を異性化工程に循環させるループに存在する異性化触媒に直接供給する方法がある。何れの方法も好ましく用いられる。
【0058】
さらに、疑似移動床による連続的吸着分離技術は基本的操作として、次に示す吸着操作、濃縮操作、脱着操作を連続的に循環して実施することも可能である。
(1)吸着操作:アルキル基置換芳香族化合物の異性体混合物を含む原料供給物が、本発明の吸着剤と接触して最強吸着成分が選択的に吸着される。最強吸着成分はエクストラクト成分として後で述べる脱着剤とともに回収される。
(2)濃縮操作:弱吸着成分を多く含むラフィネ−トはさらに吸着剤と接触させられ最強吸着成分が選択的に吸着されて、ラフィネ−ト中の弱吸着成分が高純度化される。
(3)脱着操作:高純度化された弱吸着成分はラフィネ−トとして回収される一方、最強吸着成分は脱着剤によって吸着剤から追出され、脱着剤をともなってエクストラクト成分として回収される。
【0059】
吸着分離方法の操作条件としては、温度は室温から350℃が好ましく、さらに好ましくは50〜250℃であり、また圧力は大気圧から4MPaが好ましく、さらに好ましくは大気圧から3MPaである。本発明の吸着分離方法は気相でも実施されうるが、操作温度を低くして原料供給物または脱着剤の好ましくない副反応を減じるために液相で実施するのが好ましい。
【0060】
次に、工程c)について説明する。工程c)とは、前記工程b)により分離された有機化合物を原料の少なくとも一部として樹脂原料を製造する工程、である。
【0061】
本発明の前記工程b)により分離された有機化合物は特に限定されるものではないが、具体的には、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン等の炭素数1〜4の軽質ガス、炭素数5以上のパラフィン類及びオレフィン類、炭素数5以上のナフテン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ナフタレン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、エーテル類等が挙げられる。なかでも、樹脂原料の原料となりうるオレフィン類及び芳香族化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらに、汎用樹脂であるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン66などの原料を合成できる点から、エチレン、プロピレン、ベンゼン及びキシレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。キシレンの中ではパラーキシレンが好ましい。
【0062】
本発明においては、上記有機化合物を用いて所望の樹脂原料に変換する。上記有機化合物から変換できる樹脂原料としては、例えば、エチレンからエチレングリコール、プロピレンからアクリロニトリル、ベンゼンからカプロラクタム、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミン、パラーキシレンからテレフタル酸が挙げられる。
【0063】
本発明における樹脂原料は特に限定されるものではないが、具体的には、エチレングリコール、アクリロニトリル、カプロラクタム、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン及びテレフタル酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0064】
樹脂原料の製造方法は特に制限はなく、既知の方法が用いられる。例えば、石油化学工業ハンドブック 朝倉書店(1952)に記載の方法を用いることが可能である。具体的には、エチレングリコールはエチレンを原料に銀触媒を用いた空気酸化により合成したエチレンオキサイドを水和する方法により得られ(石油化学工業ハンドブック 朝倉書店(1952)p388−389参照)、アクリロニトリルはプロピレンを原料にBi−Mo−Fe触媒を用いたアンモ酸化Sohio法により得られ(同p340−343参照)、カプロラクタムはベンゼンを原料にNi触媒を用いた水素還元法でシクロヘキサンを合成し、続いて、Co系触媒を用いた空気酸化、脱水素によるシクロヘキサノン合成、ベックマン転移を経て得られ(同p548−551参照)、アジピン酸はベンゼンを原料にNi触媒を用いた水素還元法でシクロヘキサンを合成し、続いてコバルト触媒を用いた空気酸化、硝酸酸化により得られ、ヘキサメチレンジアミンはアジピン酸からニトリル化、水素還元を経て得られ(同p492−495参照)、テレフタル酸はパラーキシレンを原料にCo−Mn−Br系触媒による空気酸化法により得られる(同p534−540参照)。
【0065】
樹脂原料の製造方法で用いる原料は、前記工程b)により分離された有機化合物のみを用いることも可能であるが、また、前記工程b)により分離された有機化合物を既知の石油由来の原料の一部に加えることも可能である。
【0066】
本発明で得られる樹脂原料を用い樹脂を製造する、または本発明で得られる樹脂原料を原料の一部として用い樹脂を製造することが重要である。
【0067】
本発明における樹脂は特に限定されるものではないが、具体的には、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど(共重合体を含む))、アルキッド樹脂など)、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコールなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなど)、スチレン樹脂(ポリスチレン、スチレン共重合体など)、アクリル樹脂(メタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル系炭素繊維など)、ポリアミド(ナイロン6,ナイロン66など)、ポリエーテル(ポリホルムアルデヒドなど)、ポリウレタン、ポリカーボネート、フッ素樹脂などが挙げられる。また、これら樹脂をガラス繊維、アルミナなどの無機酸化物等の充填剤、添加剤と組み合わせて樹脂組成物とすることも可能である。
【0068】
本発明における樹脂の製造方法は特に制限はなく、既知の方法が用いられる。例えば、石油化学工業ハンドブック 朝倉書店(1952)p585−664に記載の方法を用いることが可能である。具体的には、ナイロン6はカプロラクタムの開環重合により得られ(石油化学工業ハンドブック 朝倉書店(1952)p652−654参照)、ナイロン66はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との多縮合により得られ(同p654参照)、ポリアクリロニトリルはアクリロニトリルの乳化重合法により得られ(同p655−656参照)、ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールとの直接重合法により得られる(同p657−658参照)。
【0069】
本発明で得られる樹脂は、既知の樹脂の力学特性、耐熱性などを損なうことなく、かつ二酸化炭素循環による地球温暖化の抑制や資源枯渇の問題も同時に解決でき、樹脂成型品、繊維、フィルム用途などに有用である。
【実施例】
【0070】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
(触媒調製)
特開昭59−62347号公報の実施例1に準じ、以下の方法でシリカ/アルミナモル比が50のNa型のMFI型ゼオライトを得た。
【0072】
苛性ソーダ(NaOH含量97.0重量%、HO含量3.0重量%、カーク社製)14.7g、酒石酸(カーク社製)10.5gを水351gに希釈、溶解した。この溶液にアルミン酸ソーダ溶液(Al含量18.9重量%、NaOH25.4重量%、HO55.7重量%、ダイソー社製)5.24gを加え、均一な溶液とした。この溶液に含水ケイ酸(SiO含量90.4重量%、NaOH含量0.22重量%、Al含量0.26重量%、HO含量9.12重量%、ニップシールVN−3、日本シリカ社製)66.0gを撹拌しながら徐々に加え、均一なスラリー性水性反応混合物を調製した。
【0073】
この反応混合物の組成比(モル比)は次のとおりであった。
SiO/Al 100
OH/SiO 0.24
A/Al 7.0 (A:酒石酸塩)
O/SiO 20
【0074】
反応混合物は、500ml容のオートクレーブに入れ密閉し、その後800rpmで撹拌しながら160℃で72時間反応させた。反応終了後、蒸留水で5回水洗、濾過を繰り返し、約120℃で一晩乾燥した。
【0075】
上記得られたシリカ/アルミナモル比が50のNa型のMFI型ゼオライト20gを10%塩化アンモニウム水溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)40mlに分散し、80℃で2時間撹拌した。その後ろ過し、ついで水250mlで2回洗浄した。さらにこのイオン交換操作および水洗操作を4回繰りかえした。アンモニウムイオンはゼオライトを構成するアルミニウム1当量に対して1.0当量であった。これを110℃で一晩乾燥後、空気中550℃で4時間焼成してアンモニウムイオンを分解し、水素イオンとした後、反応に供した。
【0076】
(バイオエタノール転化反応)
バイオマスを原料として製造された燃料として、バイオエタノール燃料(アイオジェン社製、エタノール濃度99.8%)を用い、反応に供した。
【0077】
内径32mmの石英管の中央部の石英ウール上に、上記MFI型ゼオライト触媒10.0gをとり、窒素ガスを200ml/分で供給した。石英管を電気炉中に設置して、中心温度を375℃に加熱した(昇温時間60分)。375℃に到達した後、上記バイオエタノールを1.5ml/分で72時間供給した。
【0078】
分析はガスクロマトグラフを用いた(以下、分析Aと記す)。カラム充填剤として、ガス成分の分析には、PORAPAK P(登録商標、GLサイエンス社)、その他の分析には、SUPELCOWAX(登録商標、SUPELCO社)を用いた。
【0079】
バイオエタノールの転化率は100%であり、得られた生成物は重量比で、水36.6%、炭素数1〜4の軽質ガス29.4%、炭素数5以上のパラフィン類、オレフィン類およびナフテン類13.8%、ベンゼン1.0%、トルエン3.8%、エチルベンゼン1.0%、キシレン5.3%、エチルトルエン3.6%、トリメチルベンゼン1.3%、ナフタレン類0.1%、コーク類4.1%であった。
【0080】
(パラーキシレンの分離)
上記得られた生成物のうち液状炭化水素成分2000gを用い、単一蒸留法により135〜145℃留分A370gを分取した。分析Aの結果、得られた留分Aは重量比で、トルエン1.0%、エチルベンゼン15.7%、キシレン83.3%(パラーキシレン17.0%、メターキシレン49.5%、オルトーキシレン16.8%)であった。
【0081】
次に、上記得られた留分から深冷分離法によるパラーキシレン分離を行った。各成分の融点は、トルエン−95.0℃、エチルベンゼン−95.0℃、パラーキシレン13.3℃、メターキシレン−47.9℃、オルトーキシレン−25.2℃であり、パラーキシレンの分離が可能であることがわかる。上記得られた留分350gを500ml容の三角フラスコに入れ、ドライアイス−エタノール冷媒下(−72℃)で3時間冷却後、固化成分と液成分を分離した。その後、固化成分の再溶解、冷却(冷凍庫内−10℃)、固液分離を2回繰り返し、濃度99.9%のパラーキシレン40gを得た。
【0082】
(テレフタル酸の合成)
上記得られたパラーキシレン40gを用い、溶媒に対して、コバルト原子として300ppmの酢酸コバルト(シグマアルドリッチジャパン社製)、マンガン原子として200ppmの酢酸マンガン(シグマアルドリッチジャパン社製)、および臭素原子として1000ppmの臭化水素(シグマアルドリッチジャパン社製)を含有する酢酸(15%含水(シグマアルドリッチジャパン社製))を溶媒とし、溶媒/パラーキシレン重量比3で反応温度200℃、圧力2.0MPa、滞留時間120分、排ガス中の酸素濃度5%の条件下、液相酸化し、得られた混合物スラリーから減圧冷却後、固液分離し、テレフタル酸の結晶55gを得た。
【0083】
(ポリエチレンテレフタレートの合成)
上記得られたテレフタル酸83重量部とエチレングリコール(シグマアルドリッチジャパン社製)62重量部をスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間実施した。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013重量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、ついでその重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行った。この際、真空をひきはじめてから反応終了までに要した時間は3時間であった。ポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出され、ペレタイザによってチップ化した。そのチップを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。
【0084】
示差熱分析(装置:島津製作所DSC−60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)の結果、得られたポリマーのガラス転移温度は69℃を示し、石油由来の原料から得られる既知のポリエチレンテレフタレートと同等であり、これにより本発明は、従来のバイオマス由来の樹脂では得られなかった力学特性、耐熱性などを損なうことなく、かつ二酸化炭素循環による地球温暖化の抑制や資源枯渇の問題も同時に解決できる可能性を有していることがわかる。
【0085】
(実施例2)
(パラーキシレンの吸着分離)
内径21.4mm、長さ1mのステンレスカラム12本を直列に連結してなる液相擬似移動床吸着分離装置を用いて、以下の条件で実施例1と同様にして得られた留分Aを吸着分離した。
吸着剤: K−Y型ゼオライト成型体(調製法は後述)
脱着剤:パラージエチルベンゼン
温度:170℃
原料供給流量:65ml/時間
脱着剤流量:390ml/時間
エクストラクト流量:90ml/時間
ラフィネート流量:100ml/時間
【0086】
上記定常状態で、エクストラクトから脱着剤で希釈されたパラーキシレンが得られ、蒸留することで濃度99.5%のパラーキシレン50gを得た。得られたパラーキシレンを用い実施例1と同様の方法によりテレフタル酸の結晶68gを得た。さらに、実施例1と同様の方法によりポリエチレンテレフタレートを合成でき、得られたポリマーのガラス転移温度は69℃を示した。
【0087】
(K−Y型ゼオライト成型体の調製)
シリカ/アルミナ比が5.5であるNa−Y型ゼオライト(東ソー社製)粉末100重量部にアルミナゾル(日産化学製、Al含量10重量%)を8重量部(Al換算)、アルミナゲル(触媒化成製、Al含量70重量%)を7重量部(Al換算)および湿潤換算で約50重量%になるように蒸留水を加え約1時間混練りし、0.4mmφの開孔径を有するスクリーンから押し出した。120℃で1晩乾燥後、500℃で2時間焼成してNa−Y成型体を得た。Na−Y成型品を硝酸カリウム(和光純薬製)を10重量%含む水溶液で固液比5(l/kg)、80℃で1時間カリウムイオン交換した。カリウムイオン交換後、蒸留水で固液比5(l/kg)、80℃で1時間水洗した。この操作を5回繰り返した後、蒸留水で水洗を5回行った。カリウムイオン交換率は97.8%であった。
【0088】
(キシレンの異性化によるパラーキシレンの合成)
上記吸着分離により得られたパラーキシレン濃度の低いラフィネート成分を原料にして、特開昭59−62347号公報に準じ、以下の条件でキシレンの異性化活性を固定床流通式反応装置で評価した。評価方法は、まずキシレン異性化触媒(調製法は後述)を反応管に充填し、接触時間(触媒重量(W)/原料流量(F))=30g・hr/mol、水素/原料=4mol/mol、反応温度400℃、反応圧力1.2MPaの反応条件で、重量比でトルエン1.2%、エチルベンゼン18.5%、キシレン80.3%(パラーキシレン2.3%、メターキシレン58.2%、オルトーキシレン19.8%)の組成の原料液を供給した。分析はガスクロマトグラフを用いた(分析A)。
【0089】
上記異性化反応の結果、得られた生成物は重量比で、炭素数1〜7の非芳香族成分2.6%、ベンゼン6.5%、トルエン2.1%、エチルベンゼン8.9%、キシレン77.8%(パラーキシレン18.2%、メターキシレン41.6%、オルトーキシレン18.0%)、エチルトルエン0.3%、トリメチルベンゼン1.1%、ジエチルベンゼン0.4%、エチルキシレン0.3%であり、パラーキシレン濃度を2.3%から18.2%まで高めることができた。得られた生成物はキシレンより軽い沸点成分および重い沸点成分を分留で除去し、再びパラーキシレン分離工程に送られ、パラーキシレンを分離し、パラーキシレン濃度の低いラフィネートを再循環して行うことが可能である。
【0090】
(キシレン異性化触媒の調製)
特開2005−224793号公報の実施例1に準じ、以下の方法でシリカ/アルミナモル比が43のNa型のMFI型ゼオライトを得た。
【0091】
苛性ソーダ水溶液(NaOH含量48.6重量%、HO含量51.4重量%、三若純薬研究所製)40.9g、酒石酸(カーク社製)15.7gを水529gに希釈、溶解した。この溶液にアルミン酸ソーダ溶液(Al含量18.9重量%、NaOH25.4重量%、HO55.7重量%、ダイソー社製)12.83gを加え、均一な溶液とした。この溶液に含水ケイ酸(SiO含量90.4重量%、NaOH含量0.22重量%、Al含量0.26重量%、HO含量9.12重量%、ニップシールVN−3、日本シリカ社製)95.2gを撹拌しながら徐々に加え、均一なスラリー性水性反応混合物を調製した。
【0092】
この反応混合物の組成比(モル比)は次のとおりであった。
SiO/Al 55
OH/SiO 0.26
A/Al 4.0 (A:酒石酸塩)
O/SiO 22
【0093】
反応混合物は、1000ml容のオートクレーブに入れ密閉し、その後800rpmで撹拌しながら160℃で72時間反応させた。反応終了後、蒸留水で5回水洗、濾過を繰り返し、約120℃で一晩乾燥した。
【0094】
得られたシリカ/アルミナモル比が43のNa型のMFI型ゼオライトを絶対乾燥基準(500℃、20分間焼成した時の灼熱減量から計算)で10g、含水アルミナ(SASOL社製、Al含量75重量%)を40g(Alとして30g)、アルミナゾル(Al含量10重量%、日産化学工業社製)60g(Alとして6g)加え、充分混合した。その後、120℃の乾燥器に入れ、粘土状の水分になるまで乾燥した。その混練り物を1.2mmφの穴を有するスクリーンを通して押出した。押出し成形物を、120℃で一晩乾燥し、次いで、350℃から徐々に540℃に昇温し、540℃で2時間焼成した。焼成した成形体20gを取り、蒸留水60gに塩化アンモニウム(シグマアルドリッチジャパン社製)2.2g、塩化カルシウム・2水和物(カーク社製)1.3gを溶解した水溶液に入れ、80℃で1時間、時々撹拌しながら処理した。処理後、水溶液を除去し、蒸留水で5回水洗、濾過を繰り返した。Reとして80mg含む過レニウム酸水溶液(希産金属社製) 30ml中に室温で浸し、2時間放置した。30分毎に撹拌した。その後、液を切り、120℃で一晩乾燥した。乾燥後、硫化水素気流中で250℃で2時間硫化水素処理を行った。その後、空気中で、540℃、2時間焼成した。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は従来なかった既知の樹脂の力学特性、耐熱性などを損なうことなく、かつ二酸化炭素循環による地球温暖化の抑制や資源枯渇の問題も同時に解決でき、樹脂成型品、繊維、フィルム用途などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)バイオマスを原料として製造された燃料を転化触媒と接触させてなる工程;
b)前記工程a)により得られる有機化合物を含む生成物を蒸留、抽出、吸着分離及び結晶化からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法により分離させてなる工程;
c)前記工程b)により分離された有機化合物を原料の少なくとも一部として樹脂原料を製造する工程;
からなる、樹脂原料の製造方法。
【請求項2】
バイオマスを原料として製造された燃料が液体燃料及び気体燃料からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項3】
バイオマスを原料として製造された燃料がエタノール、メタノール及びメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項4】
バイオマスを原料として製造された燃料がエタノールを含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項5】
転化触媒がゼオライトを含んでなる触媒組成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項6】
有機化合物がオレフィン類及び芳香族化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項7】
有機化合物がエチレン、プロピレン、ベンゼン及びキシレンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項8】
有機化合物がパラーキシレンを含んでなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項9】
樹脂原料がエチレングリコール、アクリロニトリル、カプロラクタム、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン及びテレフタル酸から選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項10】
樹脂原料がテレフタル酸を含んでなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の樹脂原料の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか記載の製造方法により得られる樹脂原料を少なくとも原料の一部として用いることを特徴とする樹脂の製造方法。
【請求項12】
樹脂原料がテレフタル酸を含んでなることを特徴とする請求項11記載の樹脂の製造方法。
【請求項13】
樹脂がポリエステル樹脂を含んでなることを特徴とする請求項11または12記載の樹脂の製造方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか記載の製造方法により得ることができる樹脂。

【公開番号】特開2007−176873(P2007−176873A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379032(P2005−379032)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】