説明

樹脂塗膜剥離システム

【課題】樹脂材や塗膜の材質、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜の経年劣化の進行度等に関わらず、最適な条件下において塗膜剥離作業を行うことで塗膜剥離率を向上させることができる樹脂材塗膜剥離システムを提供する。
【解決手段】塗膜が付着する樹脂材の粉砕片を昇温する昇温装置と、昇温装置で昇温された粉砕片から塗膜を剥離する剥離装置と、剥離装置から排出される粉砕片を洗浄する洗浄装置と、洗浄装置で洗浄された粉砕片を、塗膜が付着した粉砕片と塗膜が付着していない粉砕片とに分離・選別する選別装置と、前記各装置を統合的に運転制御する制御装置と、を備えてなる樹脂塗膜剥離システムにおいて、前記制御装置は、前記選別装置により選別された前記各粉砕片の重量に基づいて塗膜剥離率を算出し、当該塗膜剥離率が予め設定した基準値以上となるよう前記各装置の運転条件をフィードバック制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材の表面に付着する塗膜を剥離し、該塗膜を剥離した樹脂材を再利用する技術に関するものであり、特に、塗膜を剥離した樹脂材を、効率的かつ効果的に回収することができる樹脂塗膜剥離システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用バンパー等の樹脂材の表面に付着する塗膜を剥離・除去し、当該樹脂材を再利用することが行われている(特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1には、塗膜付き樹脂成型品を粉砕し、かつ機械力によるこすり作用にて塗膜を剥離した後の粉砕片に対して塗膜付着の有無を検知判定し、塗膜が付着した粉砕片を塗膜が付着していない粉砕片から分離することで、塗膜が付着していない粉砕片を回収し再成形を行うこと、が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載のものは、従来の樹脂細片体と塗膜粉体とをふるい分離する方法にかえて、塗膜が付着した粉砕片を塗膜が付着していない粉砕片から分離する方法を採用することで、塗膜除去率や材料歩留まりの向上を図るものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、上記分離方法を開示するに止まるものであり、塗膜の剥離効率等を向上させる上において改善の余地の多いものである。
【0006】
特許文献2には、一端が樹脂製廃棄物の粗粉砕体の受入側で他端が吐出側である剥離筒と、複数の緩傾斜した突条を外周に有しており、前記剥離筒の内壁面との間に粗粉砕体処理用の間隙を形成するよう配設される剥離ロールとにより構成される粗粉砕体の塗膜の剥離装置において、前記剥離筒の吐出側に吐出口を塞ぐようにして配設される押え板の押し付け力を加減して粗粉砕体の流出量を調整し、前記剥離筒内の圧力を調整することで、前記剥離筒内の圧力、前記剥離ロールの回転数および粗粉砕体の投入量に起因する前記剥離筒内の粗粉砕体の品温を80℃〜115℃に調整すること、が記載されている。
【0007】
特許文献2に記載のものは、剥離筒内の粗粉砕体の品温を塗膜の剥離に適する温度範囲に調整することで、塗膜の剥離効率の向上を図るものである。
【0008】
しかしながら、最適な塗膜剥離条件は、樹脂材や塗膜材の種類、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜の経年劣化の進行度等により異なるものであり、特許文献2に記載のものは、必ずしも粗粉砕体の塗膜剥離を最適な条件下で行えるものとはなっていない。
【0009】
特許文献3には、塗膜及び母材の少なくとも1つについて軟化温度の異なる複数種の塗膜付き樹脂材が混合された被処理材を塗膜剥離装置に投入し、当該塗膜剥離装置内で前記被処理材をその塗膜若しくは母材の温度が非溶融で軟化する温度まで昇温させて塗膜を母材から剥離する塗膜剥離処理を行う塗膜剥離工程と、前記塗膜剥離処理された被処理材を塗膜が残存したものと塗膜が剥離されたものとに選別する選別工程と、を有し、前記被処理材を前記塗膜及び母材のいずれかの軟化温度のうち最も低い第1の軟化温度に昇温させて前記塗膜剥離工程を行った後、前記被処理材を塗膜が残存したものと塗膜が剥離されたものとに選別する前記選別工程を行い、選別された前記塗膜が残存した被処理材を、前記塗膜及び母材の軟化温度のうち前記第1の軟化温度より高い軟化温度に昇温させて前記塗膜剥離工程を行った後、前記被処理材を塗膜が残存したものと塗膜が剥離されたものとに選別する前記選別工程を行い、前記塗膜剥離工程における前記被処理材の温度を前記塗膜付き樹脂材の塗膜及び母材の軟化温度のうち最も高い軟化温度以下の範囲で順次昇温させながら、前記塗膜剥離工程及び前記選別工程を繰り返し行うこと、が記載されている。
【0010】
特許文献3に記載にものは、塗膜付き樹脂材の塗膜又は母材の軟化温度の違いに着目し、被処理材の温度を順次昇温させながら、塗膜剥離処理と選別処理を繰り返し行うことで、異種の塗膜付き樹脂材が混在した状態でも塗膜除去率を高めることを目指すものである。
【0011】
しかしながら、特許文献3に記載のものは、順次の昇温とともに塗膜剥離処理と選別処理を繰り返すものであり、処理に時間がかかり、量産処理としては処理効率が懸念されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4293346号公報
【特許文献2】特開平7−276364号公報
【特許文献3】特開2007−237729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、樹脂材や塗膜材の種類、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜材の経年劣化の進行度等に関わらず、最適な塗膜剥離条件で塗膜剥離作業を行うことで塗膜剥離率を向上させることができる樹脂材塗膜剥離システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、加工歩留や処理能力を担保した上で、一定以上の塗膜剥離率を確保することができる樹脂材塗膜剥離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、塗膜が付着する樹脂材の粉砕片を昇温する昇温装置と、昇温装置で昇温された粉砕片から塗膜を剥離する剥離装置と、剥離装置から排出される粉砕片を洗浄する洗浄装置と、洗浄装置で洗浄された粉砕片を、塗膜が付着した粉砕片と塗膜が付着していない粉砕片とに分離・選別する選別装置と、各装置を統合的に運転制御する制御装置と、を備えてなる樹脂塗膜剥離システムにおいて、前記制御装置は、前記選別装置により選別された前記各粉砕片の重量に基づいて塗膜剥離率を算出し、当該塗膜剥離率が予め設定した基準値以上となるよう前記各装置の運転条件をフィードバック制御することを特徴とするものである。
【0015】
本発明は、制御装置に各装置の運転条件を組み合わせてなる複数の運転パターンが予め設定され又は設定可能とされており、前記各装置は当該運転パターンに基づいて統合的に制御されることが好ましい。
【0016】
本発明は、フィードバック制御が、当該システムに投入される粉砕片の重量と選別装置により選別された粉砕片の重量に基づいて算出される加工歩留が予め設定した基準値以上となるよう行われることが好ましい。
【0017】
本発明は、フィードバック制御が、選別装置により選別された各粉砕片の重量に基づいて算出される処理能力が予め設定した基準値以上となるよう行われることが好ましい。
【0018】
本発明は、加工歩留の基準値が予め設定され又は予め設定可能とされており、当該加工歩留の基準値に対応して塗膜剥離率の基準値が自動又は手動で変更されることが好ましい。
【0019】
本発明は、処理能力の基準値が予め設定され又は予め設定可能とされており、当該処理能力の基準値に対応して前記塗膜剥離率の基準値が自動又は手動で変更されることが好ましい。
【0020】
本発明は、塗膜剥離率の基準値が、フィードバック制御の回数に対応して自動で変更されることが好ましい。
【0021】
本発明は、剥離装置が、一端を供給側とし他端を排出側とした剥離筒と、複数の突条を外周に有し、前記剥離筒の内壁面との間に剥離処理用の間隙を形成するよう配設された剥離ロールと、を備え、選別装置が、連続状に移送される粉砕片を撮像する撮像手段と、該撮像手段による撮像信号に基づいて塗膜が付着した粉砕片を排除する排除手段と、を備えるものであり、前記各装置の運転条件が、昇温装置においては昇温温度、剥離装置においては剥離筒内における粉砕片の循環回数、剥離筒内における粉砕片の圧力、剥離筒内における粉砕片の温度、洗浄装置においては洗浄圧力、選別装置においては粉砕片の移送流量及び選別感度、をそれぞれ含むことが好ましい。
【0022】
本発明は、剥離装置における剥離筒内の粉砕片の圧力が、剥離筒の排出側に設けられる抵抗蓋の押し付け力による負荷、剥離ロールの回転数、剥離筒内への粉砕片の供給量の少なくとも一つにより調整され、前記剥離筒内における粉砕片の温度が、剥離ロールから供給される噴風量により調整されることが好ましい。
【0023】
本発明は、洗浄装置における洗浄圧力が、洗浄が行われる円筒の回転数及び該円筒内へ供給される水量の内の少なくとも一つにより調整されることが好ましい。
【0024】
本発明は、フィードバック制御が、昇温装置における昇温温度の上昇及び剥離装置における粉砕片の循環回数の増加以外の運転条件の変更であることが好ましい。
【0025】
本発明は、フィードバック制御は、剥離装置における粉砕片の循環回数の増加以外の運転条件の変更であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、システムの稼働中において適宜塗膜剥離率を算出し、当該塗膜剥離率が基準値以上となるよう各装置の運転条件をフィードバック制御するものであるから、樹脂材や塗膜材の種類、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜材の経年劣化の進行度等に関わらず、最適な塗膜剥離条件で塗膜剥離作業を行うことができ塗膜剥離率を向上させることができる。
【0027】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、予め設定された複数の運転パターンの中から、オペレータが樹脂材の種類や塗膜材の種類に応じて運転パターンを適宜選択し、当該選択された運転パターンに基づいて昇温装置、剥離装置、洗浄装置及び選別装置の各装置が統合的に運転制御されるものであれば、塗膜剥離率を早期に基準値以上又は基準値に近い値とすることができる。
【0028】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、塗膜剥離率が予め設定した基準値以上となるよう行われる前記フィードバック制御が、当該システムの加工歩留が予め設定した基準値以上となるよう行われるものであれば、加工歩留を担保した上で一定以上の塗膜剥離率とすることができる。
【0029】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、塗膜剥離率が予め設定した基準値以上となるよう行われる前記フィードバック制御が、当該システムの処理能力が予め設定した基準値以上となるよう行われるものであれば、処理能力を担保した上で一定以上の塗膜剥離率とすることができる。
【0030】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、加工歩留の基準値が予め設定され又は予め設定可能とされており、当該加工歩留の基準値に対応して塗膜剥離率の基準値が自動又は手動で変更されるものであれば、システムを早期に定常運転の状態とすることができ、システムを円滑に稼働させることができる。
【0031】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、処理能力の基準値が予め設定され又は予め設定可能とされるものであれば、システムを早期に定常運転の状態とすることができ、システムを円滑に稼働させることができる。
【0032】
本発明は、塗膜剥離率の基準値が、フィードバック制御の回数に対応して自動で変更されるものであれば、システムを早期に定常運転の状態とすることができ、システムを円滑に稼働させることができる。
【0033】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、剥離装置が、一端を供給側とし他端を排出側とした剥離筒と、複数の突条を外周に有し、前記剥離筒の内壁面との間に剥離処理用の間隙を形成するよう配設された剥離ロールとを備え、選別装置が、連続状に移送される粉砕片を撮像する撮像手段と、該撮像手段による撮像信号に基づいて塗膜が付着した粉砕片を排除する排除手段と、を備えるものであり、各装置の運転条件が、昇温装置においては昇温温度、剥離装置においては剥離筒内における粉砕片の循環回数、剥離筒内における粉砕片の圧力、剥離筒内における粉砕片の温度、洗浄装置においては洗浄圧力、選別装置においては粉砕片の移送流量及び選別感度を、をそれぞれ含むものであれば、樹脂材や塗膜材の種類、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜材の経年劣化の進行度等に関わらず、塗膜剥離率を向上させることができる。
【0034】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、剥離筒内における粉砕片の圧力が、剥離筒の排出側に設けられる抵抗蓋の押し付け力による負荷、剥離ロールの回転数、剥離筒内への粉砕片の供給量の少なくとも一つにより調整され、前記剥離筒内における粉砕片の温度が、剥離ロールから供給される噴風量により調整されるものであれば、樹脂材や塗膜材の種類、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜材の経年劣化の進行度等に関わらず、塗膜剥離率を向上させることができる。
【0035】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、洗浄装置における洗浄圧力が、洗浄が行われる円筒の回転数及び該円筒内へ供給される水量の内の少なくとも一つにより調整されるものであれば、樹脂材や塗膜材の種類、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜材の経年劣化の進行度等に関わらず、塗膜剥離率を向上させることができる。
【0036】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、フィードバック制御が、昇温装置における昇温温度の上昇及び剥離装置における粉砕片の循環回数の増加以外の運転条件の変更であれば、加工歩留を担保した上で一定以上の塗膜剥離率を確保することができる。
【0037】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、フィードバック制御が、剥離装置における粉砕片の循環回数の増加以外の運転条件の変更であれば、処理能力を担保した上で一定以上の塗膜剥離率を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムの処理ラインの概念図。
【図2】本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムに用いる剥離装置の説明図。
【図3】図2における剥離装置のA−A断面図。
【図4】本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムに用いる選別装置の説明図。
【図5】本発明の実施の形態の樹脂塗膜剥離システムを利用して、塗膜付着樹脂材を再利用するに至るまでの工程図。
【図6】本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムの制御系統を示す説明図。
【図7】本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムの運転状態の一例を示すフローチャート。
【図8】本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムの他の運転状態の一例を示すフローチャート。
【図9】本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムのさらに他の運転状態の一例を示すフローチャート。
【図10】本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムのさらに他の運転状態の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施の形態の一例を図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態において、塗膜が付着する樹脂材は、バンパー等の各種自動車部品の廃材のほか、あらゆる種類の樹脂製品を含むものである。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態を示す樹脂塗膜剥離システムの処理ラインの概念図である。図1に示すように、本実施形態の樹脂塗膜剥離システムは、昇温装置Aと、剥離装置Bと、洗浄装置Cと、選別装置Dとを備えるものであり、これらの各装置の運転を中央制御コンピュータPにより制御するものである。そして、樹脂塗膜剥離システムの前処理工程は、バンパー等の各種自動車部品の廃材を粗粉砕する粗粉砕機E、粗粉砕機Eから排出された粗粉砕物を再度粉砕し、厚みが4mm以下、粒径が15mm以下の平板状かつ多角形状の粉砕片とする微粉砕機F、及び該微粉砕機Fから排出された粉砕片を水で洗浄し、これを脱水する洗浄脱水機Gを、ベルトコンベアH1,H2,H3を介して連結した構成となっている。
【0041】
昇温装置Aは、ヒータ101からの熱風が送給され粉砕片が昇温可能な構成になっている。すなわち、前記洗浄脱水機Gで洗浄された粉砕片は、配管102による空気輸送により予備タンク103に搬送されるとともに、ロータリバルブ104の駆動によって昇温タンク105内に投入される。昇温タンク105では、ヒータ101からの熱風が送給される構成になっており、粉砕片が昇温可能とされる。昇温タンク105内には、昇温ムラを防止するために、粉砕片を撹拌する撹拌機106が設置されている。昇温タンク105の下部には、該昇温タンク105から粉砕片を排出するためのロータリバルブ107が設けられる一方、昇温タンク105の側方には、昇温タンク105内で発生した塵埃を回収するためのサイクロン108が設けられている。
【0042】
剥離装置Bは、2系列からなる剥離装置B1,B2を並設してなるものであり、前記昇温装置Aにより昇温された粉砕片から塗膜を剥離するものである。すなわち、前記昇温装置Aで昇温された粉砕片は、ロータリバルブ107及び配管109を経て分岐装置110により二股に分岐され、一方の分岐管111により第一系列の剥離装置B1の予備タンク112に、他方の分岐管113により第二系列の剥離装置B2の予備タンク114に搬送される。予備タンク112,114のそれぞれの下方には、粉砕片を貯留するための2槽構造のダブルタンク115a,115bが配置され、さらに、該ダブルタンク115a,115bの下方には剥離機本体116a,116bが配置されている。前記ダブルタンク115a,115bの上部には、粉砕片の投入方向を2槽のうちいずれかに切り替えることが可能な投入切替弁117a,117bが設けられる一方、剥離機本体116a,116bの下部には、剥離機本体116a,116bから排出された粉砕片を、配管119a,119bにより搬送し剥離機本体116a,116bに再度循環させるか、配管120a,120bにより次工程に搬送するかを切り替える排出切替弁118a,118bが設けられている。本実施形態の剥離装置Bは、前記ダブルタンク115a,115bに設けられる2槽の貯留槽を交互に用いることで循環的な剥離が可能な構成となっている。
【0043】
洗浄装置Cは、粉砕片が空気輸送によって搬送されるために生じる静電気により、当該粉砕片に付着する塵埃を除去するためのものである。すなわち、機枠121内には、多孔壁により形成した横型円筒122を回転可能に横架するとともに、該横型円筒122内の一端から粉砕片と洗浄用の流水とを供給し、他端から粉砕片を排出可能にした構造である。該横型円筒122はその回転数を変更可能に構成され、また、洗浄用の流水の水量も適宜変更可能に構成されており、洗浄装置Cの洗浄圧力を適宜なものに設定できる構成となっている。前記剥離装置Bから空気輸送され予備タンクを介して投入ホッパー123に投入された粉砕片は、スクリューフィーダ124により洗浄装置Cに供給される。そして、洗浄装置Cにより塵埃等が除去された粉砕片は配管125を介して次工程に搬送される。
【0044】
選別装置Dは、塗膜が付着している粉砕片を検出し、当該粉砕片を排除することで塗膜の付着した粉砕片と塗膜の付着していない粉砕片とに分離・選別するものであって、後述する光学的な色彩選別機を用いることができる。前記洗浄装置Cで洗浄された粉砕片は、配管125による空気輸送により予備タンク126に搬送されるとともに、シャッタ127の駆動によって一次選別貯留タンク128内に投入され、該一次選別貯留タンク128から色彩選別機本体129に供給される。色彩選別機本体129は後述のように、検査手段としてCCDラインセンサが、選別除去手段としてエアノズルが採用され、当該CCDラインセンサ及びエアノズルは、色彩選別機本体129の幅方向において一次選別部、二次選別部及び三次選別部を構成するものである。前記一次選別貯留タンク128の側方であって、二次選別部及び三次選別部の上方には、二次選別貯留タンク130及び三次選別貯留タンク131が併設されている。
【0045】
そして、前記一次選別部のエアノズルの下方には、分別手段としての一次良粒樋および一次不良粒樋が設けられ、二次選別部のエアノズルの下方には、分別手段としての二次良粒樋および二次不良粒樋が設けられ、三次選別部のエアノズルの下方には、分別手段としての三次良粒樋および三次不良粒樋がそれぞれ設けられる。そして、一次選別部で良粒と判断された粉砕片は、二次選別用の揚粒機132で揚送された後、二次選別貯留タンク130を経て二次選別部に供給される。一方、一次選別部で不良粒と判断された粉砕片は、三次選別用の揚粒機133で揚送された後、三次選別貯留タンク131を経て三次選別部に供給される。三次選別部においても不良粒と判断されたものは、最終的な不良品として経路134を経て機外に取り出されることになる。一方、三次選別部において良品と判断されたものは、再選別のために経路135を経て一次選別用のリターン揚粒機136で揚送された後、一次選別部で再選別される。また、二次選別部において、良粒と判断された粉砕片は、最終的な良品として経路137を経て機外に取り出されることになる。一方、二次選別部において、不良粒と判断された粉砕片は、前記一次選別部での不良粒と同様に、三次選別用の揚粒機133で揚送された後、三次選別貯留タンク131を経て三次選別部に供給されることになる。
【0046】
経路137を経て取り出された良粒、即ち最終的な良品は、袋詰め装置140に搬送されフレキシブルコンテナなどの容器に詰められて、例えば、再生バンパーの原料として保管される。また、経路134を経て取り出された不良粒、即ち最終的な不良品は、フレキシブルコンテナなどの容器に詰められて、例えば、道路舗装用の原料として保管される。
【0047】
最終的な良品が取り出される経路134及び最終的な不良品が取り出される経路137には、それぞれ単位時間当たりの重量を計量することが可能な計量機138,139がそれぞれ配設されるとともに、該計量機138,139が前記中央制御コンピュータPに電気的に接続されている。これにより、本実施形態の樹脂塗膜剥離システムは、現時点での塗膜剥離率、加工歩留、及び処理能力(処理量)を算出することができる。
【0048】
ここで、上記剥離装置B及び選別装置Dについてさらに詳細に説明する。
図2に示すように、剥離装置Bの剥離機本体116は、粉砕片導入部2と、粉砕片から塗膜を剥離させる塗膜剥離部3と、粉砕片を塗膜剥離部3に連続的に送り込む粉砕片送込部4と、塗膜剥離部3から粉砕片を連続的に排出させる粉砕片排出部5を備えるものである。
【0049】
粉砕片導入部2は、粉砕片を貯留するホッパー6と、該ホッパー6下方を手動で開閉するシャッター7と、ホッパー6に貯留された粉砕片をブリッジの崩壊を伴って間欠的に粉砕片送込部4に送るロータリーバルブ8とから構成される。そして、ロータリーバルブ8はモータ9により間欠的に回転駆動される。
【0050】
塗膜剥離部3は、図3に示すように、周面に複数の突条14a及び噴風溝14bが形成された剥離ロール14と、剥離筒10に装着され塗膜通過孔が穿設された角型筒状体18と、該角型筒状体18を囲繞する塗膜回収樋19とから構成される。剥離筒10は、一端を供給側、他端を排出側とするものであり、塗膜剥離部3と粉砕片送込部4を連通させるものである。該剥離筒10内には中空軸11が回転自在に内装されており、該中空軸11の一端側にはプーリ12が軸着され、他端側であって粉砕片送込部4を形成する部分に送りロール13が、塗膜剥離部3を形成する部分に剥離ロール14が、それぞれ軸着されている。すなわち、送りロール13は粉砕片の送り方向の上流側に位置し、剥離ロール14が粉砕片の送り方向の下流側に位置するよう中空軸11に対し同心状に一体的に設けてある。そして、プーリ12に巻き掛かるベルト15にはモータ16のモータプーリ17が連絡され、モータ16からの回転力が中空軸11に伝達される構成となっている。また、中空軸11には、その中空部に噴風通路25を形成するとともに、該噴風通路25の一端側に噴風供給管26が接続される。そして、噴風供給管26には噴風ファン27が接続され、該噴風ファン27により生成した圧搾空気が噴風供給管26及び噴風通路25を介して剥離ロール14の噴風溝14bから吐出することになり、これにより、角型筒状体18に穿設された塗膜通過孔から塗膜回収樋19への塗膜の排出を促進することができる。
【0051】
粉砕片排出部5は、剥離筒10の先端側に開口される粉砕片吐出口20と、この粉砕片吐出口20を塞ぐように圧接自在に配設される抵抗蓋21と、該抵抗蓋21の押し付け力を加減し粉砕片吐出口20からの粉砕片の流出量及び前記剥離筒内の圧力を調整する圧力調整装置22と、前記粉砕片吐出口20と連通して粉砕片を機外に排出する粉砕片排出樋23とにより構成される。そして、塗膜回収樋19下端の排出口19aには、剥離済みの塗膜を回収するバッグフィルター(図示せず)に至る連絡管が接続される。塗膜回収樋19内には、この空間の静圧が適度であるか否かを検出する静圧計センサノズル24が配設されている。
【0052】
一方、図4に示すように、選別装置Dの選別機本体は、その上部位置に粉砕片供給部33を有する。粉砕片供給部33から選別機本体に供給された粉砕片は、所定幅を有する傾斜状シュート34を該幅方向に並んで連続状に自然流下した後、その下端部から所定落下軌跡に沿って空中に放出される。
所定の落下軌跡の前後には、少なくとも一対の光学検出装置35a,35bが配設される。光学検出装置35a,35bは、例えばCCDラインセンサ36a,36b,37a,37b、ランプ38a,38b、背景板39a,39bなどから構成される。当該選別装置Dは、CCDラインセンサ36a,36b,37a,37bが検出位置Oに到達した粉砕片を撮像し、その撮像信号に基づき塗膜が付着していると判定すると、エアノズル41からのエアーにより当該粉砕片を噴き飛ばし、塗膜が付着した粉砕片と塗膜が付着していない粉砕片とに分離・選別するものである。
【0053】
次に、本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムを利用して塗膜が付着する樹脂材を再利用するに至るまでの工程について説明する。
【0054】
図5に示すように、まず、回収工程において、例えば、ポリプロピレン樹脂製の廃棄バンパーやその他自動車部品の廃材等、表面に塗膜が付着する樹脂材が回収される。回収された樹脂材は、粉砕工程において、前記のとおり、粗粉砕機E及び微粉砕機Fにより本システムの処理に適した大きさに粉砕され、洗浄脱水されて本システムに原料として供給される。本システムの処理に適した原料の例としては、厚みが4mm以下、粒径が15mm以下の平板状かつ多角形状の粉砕片であって、容積重が400〜600g/リットルの範囲にあり、かつ、安息角が45〜65°とされたものがよい。また、粉砕片には、廃棄バンパーの表面塗膜であるアクリル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の塗膜等が付着しており、その塗膜の厚さは約100μm〜200μmの範囲にある。
【0055】
本システムに供給される粉砕片は、まず原料計量工程において、図1に図示しない計量機によって計量される。
そして、粉砕片は昇温工程に供給される。昇温工程では、昇温装置Aの昇温タンク105内においてヒータ101からの熱風により昇温される。この時、昇温ムラが起きないよう粉砕片は攪拌機106によって撹拌される。粉砕片は昇温工程で昇温されることで次工程において塗膜が剥離しやすくなる。
【0056】
昇温工程において昇温処理が施された粉砕片は、剥離工程において表面に付着する塗膜が剥離される。剥離工程では、剥離装置B内において粉砕片を剥離機本体116で循環させる回数や剥離筒10内の圧力、或いは剥離筒10内における粉砕片の温度を調整することで、最適な条件下において塗膜の剥離作業を行うことができる。ここで、剥離筒10内における圧力の調整は、剥離筒10内への粉砕片の投入量や剥離筒10端に配設される抵抗蓋21の押しつけ力、剥離ロール14の回転数を変更することで行うことができる。また、剥離筒10内において上昇した粉砕片の温度の調整は、剥離筒10内に供給される噴風量を変更することで行うことができる。
【0057】
ここで、剥離装置Bにおける剥離機116の作用について説明する。剥離機116において、粉砕片はホッパー6に投入される。そして、ホッパー6下方のロータリーバルブ8を駆動し、シャッター7を開放すると、ホッパー内の粉砕片はブリッジが崩壊されて粉砕片送込部4に至る。粉砕片送込部4では、モータ16からの回転力が送りロール13に伝達され、塗膜剥離部3の角型筒状体18と剥離ロール14との間隙に連続的に送入されることになる。
塗膜剥離部3では、粉砕片が剥離筒10内において剥離ロール14周面に形成された複数の突条14a,14aにより衝突作用と撹拌作用を受ける。そして、粉砕材は、前記昇温機による昇温効果と、該粉砕片が前記剥離ロール14の突条14a,14aに衝突したり粉砕片同志が相互に擦れたりする際に生じる摩擦熱の効果によって塗膜が効率よく剥離する。
【0058】
塗膜が剥離された後、粉砕片は、粉砕片排出部5の抵抗蓋21を外方へ押し広げながら粉砕片吐出口20から連続的に排出され、粉砕片排出樋23から剥離機B外に排出される。一方で、粉砕片から剥離した塗膜は、剥離ロール14の噴風溝14bから吐出する噴風により、角型筒状体18に穿設された塗膜通過孔から塗膜回収樋19へ排出される。そして、粉砕片排出樋23から剥離装置B外に排出される粉砕片は、適宜の搬送手段によって洗浄機Cに送られる。
【0059】
ここで、塗膜の剥離効果を高めるには、粉砕片吐出口20から排出された粉砕片をホッパー6内に戻して粉砕片から塗膜を剥離させる操作を複数回、例えば、2乃至10回程度繰り返すこと、即ち剥離装置Bにおいて粉砕片を複数回循環させることが好ましい。粉砕片吐出口20から排出された粉砕片をホッパー6内に戻すための搬送装置としては、粉粒体を管内の高速気流に投入して、気流とともに搬送するニューマ配管を利用するのがよく、また、ニューマ配管には粉砕片を加温するためにヒータを取り付けることもできる。なお、粉砕片を1台の剥離装置B内で複数回循環させる代わりに剥離装置Bを多段に設置するものとしても同様の効果が得られる。
【0060】
また、塗膜の剥離効果を高めるには、塗膜剥離部3において、剥離筒10内で粉砕片に作用する圧力を上げることが好ましい。この場合、圧力調整装置22により粉砕片吐出口20への抵抗蓋21の押し付け力を強くして負荷を上げたり、剥離ロール14の回転数を上げたり、塗膜剥離部3への粉砕片の供給量を増加させたり等すればよい。
【0061】
ただし、粉砕片に作用する圧力の上昇に伴って該粉砕片の温度が上昇しすぎると、当該粉砕片同志が溶着してしまい、逆に剥離効果は低下する。この場合、前記粉砕片吐出口20への抵抗蓋21の押し付け力、剥離ロール14の回転数、塗膜剥離部3への粉砕片の供給量等を調整することで、剥離筒10内において粉砕片に作用する圧力を低下させるほか、剥離ロール14の噴風溝14bから吐出する噴風量を増加させることで、粉砕片の温度を下げることもできる。
【0062】
次に、剥離工程において剥離処理が施された粉砕片は、後続の洗浄工程において表面に付着する塵埃等が除去される。洗浄工程では、洗浄装置Cの横型円筒122の回転数や該横型円筒内に供給する水量により洗浄圧力を調整することで、粉砕片表面から塵埃等を適切に除去することができる。粉砕片の洗浄により塵埃等の不純物を除去することで、次工程において塗膜が付着している粉砕片と付着していない粉砕片とに分離・選別する際の選別精度を高めることができる。
【0063】
洗浄工程において洗浄処理が施された粉砕片は、選別工程において、塗膜の付着した粉砕片と塗膜の付着していない粉砕片とに分離・選別される。選別工程に用いられる選別装置Dは、粉砕片を検出位置へ供給する際の流量やCCDカメラ等の撮像手段による粉砕片の検出感度等を調整することで選別精度を高めることができる。なお、図1に示す選別装置Dは、三次選別部まで備えるものであり、選別精度の非常に高いものである。
【0064】
選別工程において塗膜の付着していない良品と塗膜の付着した不良品とに選別された粉砕片は、良品・不良品計量工程においてそれぞれ計量機138,139により計量が行われる。当該計量結果は、図6に示すように先の原料計量工程における計量結果とともに中央制御コンピュータPに送られ、塗膜剥離率や加工歩留、さらには本システムの処理能力を算出する基礎データとなる。
【0065】
そして、計量が行われた後の粉砕片は、本システムから排出され、後の再利用工程に送られて、例えば、良品は再生バンパーの原料として、不良品は道路舗装用の原料として、それぞれ再利用される。
【0066】
次に、本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムの制御系統について説明する。図6に示すように、本システムを構成する昇温装置A、剥離装置B、洗浄装置C、選別装置Dは、中央制御コンピュータPとネットワークで結ばれ統合制御されるものである。また、中央制御コンピュータPには、上記のとおり、本システムに供給される原料を計量する原料計量機と、本システムの選別装置Dにおいて選別されたて塗膜の付着していない良品と塗膜の付着した不良品を計量する良品・不良品の各計量機138,139がネットワークで結ばれる。そして各計量結果に基づいて、塗膜剥離率や加工歩留、さらには本システムの処理能力が算出される。
【0067】
中央制御コンピュータPには、樹脂材や塗膜材の種類、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜材の経年劣化の進行度等に応じて、最適な塗膜剥離条件で塗膜剥離作業が行えるよう、予め前記各装置A〜Dの運転条件を組み合わせてなる運転パターンが複数記憶設定されている。当該運転パターンは、例えば樹脂材の材質や塗膜材の材質、樹脂材の材質と塗膜材の材質の組み合わせ毎に予め実験が行われ、塗膜剥離率、加工歩留及び処理能力が一定以上となるよう設定される理想的なものである。ただし、現実の塗膜剥離作業に当たっては、原料が複数の樹脂材や塗膜材の混合物であったり、複数の塗膜の処理方法によるものの混合物であったり、樹脂材や塗膜材の経年劣化の進行度等の異なるものの混合物であったりすることがほとんどである。そのため、中央制御コンピュータPは、各装置A〜Dの運転条件を、前記塗膜剥離率、加工歩留、処理能力等の現状に即してフィードバック制御することができるものとなっている。
【0068】
図6に示すように、各装置A〜Dにおける変更可能な運転条件としては、昇温装置Aにおいては粉砕片の昇温温度、剥離装置Bにおいては剥離機本体116における粉砕片の循環回数や剥離筒内の圧力、剥離筒10内における粉砕片の温度、洗浄装置Cにおいては洗浄圧力、選別装置Dにおいては粉砕片の供給流量やCCDラインセンサの検出感度等を挙げることができる。剥離装置Bにおける剥離機本体116の剥離筒10内の圧力は、具体的には、剥離筒10の出口に設けられる抵抗蓋21の押し付け力による負荷、剥離ロール14の回転数、剥離筒10への粉砕片の投入量により調整することができる。また、剥離筒10内における粉砕片の温度は、剥離ロール14の噴風溝14bから吐出する噴風量等により調整することができる。さらに、洗浄装置Cにおける洗浄圧力は、横型円筒122の回転数や該円筒内に供給する水量により調整することができる。
【0069】
ここで、当該塗膜剥離率、加工歩留及び処理能力は、前記各計量機から送られる計量結果に基づいて算出することができる。すなわち、塗膜剥離率は、塗膜が剥離した良品と塗膜が剥離していない不良品の計量結果から算出することができる。また、加工歩留は、本システムに供給される原料の計量結果と、本システムから排出される前記良品及び不良品の計量結果に基づいて算出することができる。さらに、処理能力は、本システムから排出される良品及び不良品の単位時間当たりの計量結果に基づいて算出することができる。
【0070】
本実施の形態の樹脂塗膜剥離システムにおける前記運転パターンは、中央制御コンピュータPに予め記憶され設定されるもののほか、作業者が中央制御盤から適宜入力し設定できることが望ましい。また、本実施の形態のシステムにおいて、前記塗膜剥離率、加工歩留、処理能力等の現状に即してフィードバック制御を行うか否かを判断するための基準値も、予め中央制御コンピュータPに設定されるもののほか、作業者が中央制御盤から任意に入力設定できることが望ましい。作業者が、前記運転パターンや塗膜剥離率等の基準値を任意に設定することができれば、特殊な原料を処理する場合やその他の特別な状況等に遭遇した場合であっても、柔軟に対応することができる。
【0071】
さらに、中央制御コンピュータPにおいて、加工歩留や処理能力の基準値に対応して塗膜剥離率の基準値が自動で、或いは作業者により適宜変更可能なものとすれば、システムの稼働を円滑なものとすることができる。
【0072】
なお、昇温装置A、剥離装置B、洗浄装置C、選別装置Dの各装置は、それぞれに設けられる操作盤からの指示により、個別に運転することが可能とされるものである。
【0073】
図7は、本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムによる塗膜剥離処理の一例を示すフローチャートである。ここで、フローチャート中の「塗膜剥離処理」は、本システムを構成する各装置A〜Dの全ての処理を含むものである。
【0074】
まず、塗膜剥離処理に先立って、作業者はシステムの運転条件の選択又は設定を行う。次いで、前工程において適度な大きさに粉砕され準備された原料粉砕片が本システムに供給されて、システムの運転が開始される。
【0075】
システムに供給された原料粉砕片は、順次、昇温装置A、剥離装置B、洗浄装置C、選別装置Dと搬送され、各装置において塗膜剥離処理が行われる。そして、塗膜剥離処理の最終段階において、良品と不良品に分離・選別された粉砕片は、それぞれ計量機138,139によって計量され、中央制御コンピュータPにおいて塗膜剥離率が算出される。
【0076】
中央制御コンピュータPは、当該算出された塗膜剥離率と予め記憶設定された塗膜剥離率の基準値との比較を行い、塗膜剥離率が基準値以上の場合は、システムの運転をそのまま続行する。一方、塗膜剥離率が基準値を下回る場合は、粉砕片の塗膜剥離率が基準値以上となるよう、上記各装置A〜Dの運転条件を一つ若しくは複数組み合わせて変更する。
【0077】
本実施の形態における樹脂塗膜剥離システムは、塗膜剥離率の算出を一定の時間間隔で行うことで、常に最適な条件で塗膜剥離処理を行うことができるものである。
【0078】
図8は、本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムによる塗膜剥離処理の他の一例を示すフローチャートである。
【0079】
本例は、システムの加工歩留を担保した上で、一定以上の塗膜剥離率を確保するものである。そのため、上記と同様に塗膜剥離処理が行われ、良品と不良品に分離・選別された粉砕片の計量が行われたのち、中央制御コンピュータPにおいて加工歩留及び塗膜剥離率が算出される。
【0080】
中央制御コンピュータPは、まず算出された加工歩留と予め記憶設定された加工歩留の基準値との比較を行い、加工歩留が基準値以上の場合は、次に算出された塗膜剥離率と予め記憶設定された塗膜剥離率の基準値との比較を行う。そして、塗膜剥離率が基準値以上の場合は、システムの運転をそのまま続行する。
【0081】
一方、加工歩留が基準値を下回る場合は、粉砕片の加工歩留が基準値以上となるよう、上記各装置A〜Dの運転条件を一つ若しくは複数組み合わせて変更する。
【0082】
加工歩留が基準値以上の場合で、塗膜剥離率が基準値を下回る場合は、粉砕片の塗膜剥離率が基準値以上となるよう、上記各装置A〜Dの運転条件を一つ若しくは複数組み合わせて変更する。この時、中央制御コンピュータPは、各装置A〜Dの運転条件のうち、例えば、剥離装置Bにおいて粉砕片を剥離機本体116内で循環させる回数を増加させることや昇温装置Aにおける昇温温度を上昇させることが加工歩留を低下させる大きな要因であることを考慮して、それら以外の条件を変更することで、加工歩留を基準値以上の状態に維持させつつ塗膜剥離率を向上させることが可能となる。
【0083】
本実施の形態における樹脂塗膜剥離システムは、加工歩留と塗膜剥離率の算出を一定の時間間隔で行うことで、加工歩留を担保しつつ常に最適な条件で塗膜剥離処理を行うことができる。
【0084】
図9は、本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムによる塗膜剥離処理のさらに他の一例を示すフローチャートである。
【0085】
本例は、システムの処理能力を担保した上で、一定以上の塗膜剥離率を確保するものである。そのため、塗膜剥離処理が行われ、良品と不良品に分離・選別された粉砕片の計量が行われたのち、中央制御コンピュータPにおいて処理能力(処理量)及び塗膜剥離率が算出される。
【0086】
中央制御コンピュータPは、まず算出された処理量と予め記憶設定された処理量の基準値との比較を行い、処理量が基準値以上の場合は、次に算出された塗膜剥離率と予め記憶設定された塗膜剥離率の基準値との比較を行う。そして、塗膜剥離率が基準値以上の場合は、システムの運転をそのまま続行する。
【0087】
一方、処理量が基準値を下回る場合は、粉砕片の処理量が基準値以上となるよう、上記各装置A〜Dの運転条件を一つ若しくは複数組み合わせて変更する。
【0088】
処理量が基準値以上の場合で、塗膜剥離率が基準値を下回る場合は、粉砕片の塗膜剥離率が基準値以上となるよう、上記各装置A〜Dの運転条件を一つ若しくは複数組み合わせて変更する。この時、中央制御コンピュータは、各装置A〜Dの運転条件のうち、例えば、剥離装置Bにおける剥離機本体116内の粉砕片の循環回数の増加が処理能力を低下させる大きな要因であることを考慮して、それら以外の条件を変更することで、処理量を基準値以上の状態に維持させつつ塗膜剥離率を向上させることが可能となる。
【0089】
本実施の形態における樹脂塗膜剥離システムは、処理量と塗膜剥離率の算出を一定の時間間隔で行うことで、処理量を担保しつつ常に最適な条件で塗膜剥離処理を行うことができるものである。
【0090】
図10は、本発明の実施の形態における樹脂塗膜剥離システムによる塗膜剥離処理のさらに他の一例を示すフローチャートである。
【0091】
本例は、システムの加工歩留と処理能力を担保した上で、一定以上の塗膜剥離率を確保するものである。そのため、塗膜剥離処理が行われ、良品と不良品に分離・選別された粉砕片の計量が行われたのち、中央制御コンピュータPにおいて加工歩留、処理能力(処理量)及び塗膜剥離率が算出される。
【0092】
中央制御コンピュータPは、まず算出された加工歩留と予め記憶設定された加工歩留の基準値との比較を行い、加工歩留が基準値以上の場合は、次に算出された処理量と予め記憶設定された処理量の基準値との比較を行う。処理量が基準値以上の場合は、さらに算出された塗膜剥離率と予め記憶設定された塗膜剥離率の基準値との比較を行う。そして、塗膜剥離率が基準値以上の場合は、システムの運転をそのまま続行する。
【0093】
一方、加工歩留が基準値を下回る場合は、粉砕片の加工歩留が基準値以上となるよう、上記各装置A〜Dの運転条件を一つ若しくは複数組み合わせて変更する。
【0094】
また、加工歩留が基準値以上の場合であって、処理量が基準値を下回る場合は、粉砕片の処理量が基準値以上となるよう、上記各装置A〜Dの運転条件を一つ若しくは複数組み合わせて変更する。
【0095】
さらに、加工歩留及び処理量が基準値以上の場合で、塗膜剥離率が基準値を下回る場合は、粉砕片の塗膜剥離率が基準値以上となるよう、上記各装置A〜Dの運転条件を一つ若しくは複数組み合わせて変更する。この時、中央制御コンピュータは、各装置A〜Dの運転条件のうち、例えば、剥離装置Bにおける剥離機本体116内の粉砕片の循環回数が加工歩留及び処理能力を低下させる大きな要因であることを考慮して、それら以外の条件を変更することで、加工歩留及び処理量を基準値以上の状態に維持させつつ塗膜剥離率を向上させることが可能となる。
【0096】
本実施の形態における樹脂塗膜剥離システムは、加工歩留、処理量及び塗膜剥離率の算出を一定の時間間隔で行うことで、加工歩留及び処理量を担保しつつ常に最適な条件で塗膜剥離処理を行うことができるものである。
【0097】
なお、上記各実施の形態において、加工歩留や処理能力の基準値や運転条件を変更するためのフィードバック制御の回数に応じて、塗膜剥離率の基準値が自動で又は手動で変更されるものとすれば、システムを早期に定常運転の状態とすることができ、本システムの稼働を円滑なものとすることができる。
【0098】
上記実施の形態における樹脂塗膜剥離システムは、図1に示すように、剥離装置Bを二系列で構成するものであるが、一系列で構成してもよいし三系列以上で構成してもよい。また、剥離機本体116として、いわゆる横軸型形態のものを用いたが、竪軸型形態、ドラム筒式形態、一対のロールを利用した形態等、公知のいずれの形態のものを用いてもよい。
【0099】
本発明の樹脂塗膜剥離システムは、上記実施の形態に限らず、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の樹脂材塗膜剥離システムは、樹脂材や塗膜材の種類、塗膜の処理方法、樹脂材や塗膜の経年劣化の進行度等に関わらず、最適な塗膜剥離条件で塗膜剥離作業を行うことができるものであり、自動車用バンパー等の樹脂材の表面に付着する塗膜を剥離・除去し、当該樹脂材を再利用する上で好適である。
【符号の説明】
【0101】
A 昇温装置
B 剥離装置
C 洗浄装置
D 選別装置
E 粗粉砕機
F 微粉砕機
P 中央制御コンピュータ
2 粉砕片導入部
3 塗膜剥離部
4 粉砕片送込部
5 粉砕片排出部
6 ホッパー
7 シャッター
8 ロータリーバルブ
9 モータ
10 剥離筒
11 中空軸
12 プーリ
13 送りロール
14 剥離ロール
15 ベルト
16 モータ
17 モータプーリ
18 角型筒状体
19 塗膜回収樋
20 粉砕片吐出口
21 抵抗蓋
22 圧力調整装置
23 粉砕片排出樋
24 噴風ノズル
25 噴風通路
26 噴風供給管
27 噴風ファン
33 粉砕片供給部
34 傾斜状シュート
35a,35b 光学検出装置
36a,36b,37a,37b CCDラインセンサ
38a,38b ランプ
39a,39b 背景板
41 エアノズル
101 ヒータ
105 昇温タンク
106 攪拌機
116a,116b 剥離機本体
122 横型円筒
129 色彩選別機本体
138,139 計量機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜が付着する樹脂材の粉砕片を昇温する昇温装置と、
昇温装置で昇温された粉砕片から塗膜を剥離する剥離装置と、
剥離装置から排出される粉砕片を洗浄する洗浄装置と、
洗浄装置で洗浄された粉砕片を、塗膜が付着した粉砕片と塗膜が付着していない粉砕片とに分離・選別する選別装置と、
前記各装置を統合的に運転制御する制御装置と、
を備えてなる樹脂塗膜剥離システムにおいて、
前記制御装置は、前記選別装置により選別された前記各粉砕片の重量に基づいて塗膜剥離率を算出し、当該塗膜剥離率が予め設定した基準値以上となるよう前記各装置の運転条件をフィードバック制御することを特徴とする樹脂塗膜剥離システム。
【請求項2】
前記制御装置には、各装置の運転条件を組み合わせてなる複数の運転パターンが予め設定され又は設定可能とされており、前記各装置は当該運転パターンに基づいて統合的に制御されることを特徴とする請求項1記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項3】
前記フィードバック制御は、当該システムに投入される粉砕片の重量と選別装置により選別された粉砕片の重量に基づいて算出される加工歩留が、予め設定した基準値以上となるよう行われることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項4】
前記フィードバック制御は、前記選別装置により選別された前記各粉砕片の重量に基づいて算出される処理能力が、予め設定した基準値以上となるよう行われることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項5】
前記加工歩留の基準値は予め設定され又は予め設定可能とされており、当該加工歩留の基準値に対応して前記塗膜剥離率の基準値が自動又は手動で変更されることを特徴とする請求項3又は4記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項6】
前記処理能力の基準値は予め設定され又は予め設定可能とされており、当該処理能力の基準値に対応して前記塗膜剥離率の基準値が自動又は手動で変更されることを特徴とする請求項4又は5記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項7】
前記塗膜剥離率の基準値は、前記フィードバック制御の回数に対応して自動で変更されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項8】
前記剥離装置は、一端を供給側とし他端を排出側とした剥離筒と、複数の突条を外周に有し、前記剥離筒の内壁面との間に剥離処理用の間隙を形成するよう配設された剥離ロールと、を備え、
前記選別装置は、連続状に移送される粉砕片を撮像する撮像手段と、該撮像手段による撮像信号に基づいて塗膜が付着した粉砕片を排除する排除手段と、
を備えるものであり、
前記各装置の運転条件は、昇温装置においては昇温温度、剥離装置においては剥離筒内における粉砕片の循環回数、剥離筒内における粉砕片の圧力、剥離筒内における粉砕片の温度、洗浄装置においては洗浄圧力、選別装置においては粉砕片の移送流量及び選別感度、をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項9】
前記剥離装置における剥離筒内の粉砕片の圧力は、剥離筒の排出側に設けられる抵抗蓋の押し付け力による負荷、剥離ロールの回転数、剥離筒内への粉砕片の供給量の少なくとも一つにより調整され、前記剥離筒内における粉砕片の温度は、剥離ロールから供給される噴風量により調整されることを特徴とする請求項8記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項10】
前記洗浄装置における洗浄圧力は、洗浄が行われる円筒の回転数及び該円筒内へ供給される水量の内の少なくとも一つにより調整されることを特徴とする請求項8又は9記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項11】
前記フィードバック制御は、昇温装置における昇温温度の上昇及び剥離装置における粉砕片の循環回数の増加以外の運転条件の変更であることを特徴とする請求項3,5,7,8,9又は10項記載の樹脂塗膜剥離システム。
【請求項12】
前記フィードバック制御は、剥離装置における粉砕片の循環回数の増加以外の運転条件の変更であることを特徴とする請求項4,6,7,8,9又は10記載の樹脂塗膜剥離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−148166(P2011−148166A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10509(P2010−10509)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】