説明

樹脂容器

【課題】作業ロボットによるハンドリング性が良好であってスループットを高めることのできる、簡易な構造を備える樹脂成形装置を提供する。
【解決手段】有底筒状の本体部12および円筒状の口頸部20を有し口頸部20の軸方向に延在するスリット部24により複数の螺旋片に分断された螺旋状の突条部22が口頸部20の周囲に設けられた樹脂製の中空成形体10を保持して、本体部12の外側に樹脂外装体をオーバーモールドするための樹脂成形装置200であって、口頸部20を嵌め込む第一凹部と、凹部周面に立設された、第一凹部の深さ方向に延在してスリット部24と係合するリブ216と、を備える樹脂成形装置200。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、樹脂成形方法および樹脂容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水、薬品または飲料など流動性をもつ液状物を収容する容器として、樹脂製の中空成形体(インナーシェル)の外側に溶融樹脂を射出して樹脂外装体(アウターシェル)をオーバーモールド成形した樹脂容器が提案されている(例えば、下記特許文献1,2を参照)。かかる樹脂容器は、インナーシェルとアウターシェルを異なる材料より作製できるため、例えばインナーシェルには耐食性を求め、アウターシェルには機械強度を求めるなど、収容される液状物の特性に応じた容器が実現される。
【0003】
ここで、中空成形体の外側に樹脂外装体をオーバーモールド成形するに際しては、成形用金型に対する中空成形体のぐらつきを抑制した状態で行う必要がある。また、中空成形体と樹脂外装体がともに角瓶形状であったり、それぞれに特定の装飾が施されていたりする場合には、成形用金型に対する中空成形体の向きを定めてオーバーモールド成形する必要がある。
【0004】
これに対し、上記文献1,2に記載の樹脂成形方法では、中空成形体の口頸部と成形用金型にそれぞれ螺子形状を形成しておき、両者を互いに螺合することで中空成形体を成形用金型に取り付けてオーバーモールド工程に供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/010597号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/010600号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献に記載の樹脂成形方法では、成形用金型に対する中空成形体の取り付けまたは取り外しに際して、中空成形体または成形された樹脂容器を回転させて、口頸部を金型より螺合または脱離させる必要がある。また、中空成形体の口頸部に対する螺子形状の螺刻位置や螺合トルクには所定のばらつきがあるため、成形用金型に装着された状態における中空成形体の角度精度と再現性を向上するには、特別の検知手段が必要であった。このため、成形用金型と作業ロボットを用いたオーバーモールド成形の全自動化によるスループットの向上という観点では改良の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、作業ロボットによるハンドリング性が良好であってスループットを高めることのできる、簡易な構造を備える樹脂成形装置、樹脂成形方法および樹脂容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂成形装置は、有底筒状の本体部および円筒状の口頸部を有し前記口頸部の軸方向に延在するスリット部により複数の螺旋片に分断された螺旋状の突条部が前記口頸部の周囲に設けられた樹脂製の中空成形体を保持して、前記本体部の外側に樹脂外装体をオーバーモールドするための樹脂成形装置であって、
前記口頸部を嵌め込む凹部と、
前記凹部の周面に立設された、前記凹部の深さ方向に延在して前記スリット部と係合するリブと、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の樹脂成形装置は、より具体的な態様として、複数本の前記リブが前記凹部の周面に不等間隔に設けられ、該周面が、隣接する前記リブ同士の間隔がより長い長周部と、より短い短周部とを含むこととし、
前記長周部を挟む前記リブの立設面と前記周面との為す角を、前記短周部を挟む前記リブの立設面と前記周面との為す角よりも小さくしてもよい。
【0010】
本発明の樹脂成形装置は、より具体的な態様として、前記リブと前記スリット部とが係合した状態で、該リブの基端部における前記立設面と前記螺旋片とのクリアランスを、前記長周部の側においてより大きく、前記短周部の側においてより小さくしてもよい。
【0011】
本発明の樹脂成形装置は、より具体的な態様として、複数本の前記リブが前記凹部の中心を通る対称面に関して対称位置に設けられているとともに、
前記リブの立設面が前記対称面に向けて形成されていてもよい。
【0012】
本発明の樹脂成形装置は、より具体的な態様として、保持された前記中空成形体の前記本体部を覆う外型金具をさらに備えるとともに、
前記スリット部の立設位置が、前記外型金具に対して前記凹部の周方向に可変であってもよい。
【0013】
本発明の樹脂成形装置は、より具体的な態様として、前記凹部の内外を連通する流路と、前記凹部に嵌め込まれた前記中空成形体の内部に前記流路を介して流体を供給する流体供給手段と、をさらに備えてもよい。
【0014】
本発明の樹脂成形方法は、有底筒状の本体部および円筒状の口頸部を有し前記口頸部の軸方向に延在するスリット部により複数の螺旋片に分断された螺旋状の突条部が前記口頸部の周囲に設けられた樹脂製の中空成形体に対して、前記本体部の外側に樹脂外装体をオーバーモールドする樹脂成形方法であって、
前記スリット部を係止して前記中空成形体を保持する保持工程と、
保持された前記中空成形体を溶融樹脂でオーバーモールドして樹脂容器を成形するオーバーモールド工程と、
を含む。
【0015】
本発明の樹脂成形方法は、より具体的な態様として、前記保持工程にて、前記口頸部を重力方向の下方に向けて前記中空成形体を保持してもよい。
【0016】
本発明の樹脂成形方法は、より具体的な態様として、前記螺旋片が、前記口頸部の周方向の長さがより長い長螺旋片と、より短い短螺旋片とを含む前記中空成形体に対してオーバーモールドするとともに、
前記保持工程にて、前記螺旋片の先端部におけるクリアランスを、前記長螺旋片の側においてより大きく、前記短螺旋片の側においてより小さくして前記スリット部を係止してもよい。
【0017】
本発明の樹脂容器は、有底筒状の本体部および円筒状の口頸部を有し、前記口頸部の周囲に螺旋状の突条部が設けられた樹脂製の中空成形体と、
前記本体部の外側に前記中空成形体と一体に設けられた樹脂外装体と、を備えるとともに、
前記突条部を複数の螺旋片に分断するスリット部が、前記口頸部の軸方向に延在して設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の樹脂容器は、より具体的な態様として、前記口頸部に螺合装着されて前記中空成形体を密閉するキャップ部をさらに備えるとともに、
前記キャップ部が、複数の前記螺旋片と螺合する少なくとも一ループ以上に亘り連続して形成された螺合部を有してもよい。
【0019】
本発明の樹脂容器は、より具体的な態様として、前記螺旋片が、前記口頸部の周方向の長さがより長い長螺旋片と、より短い短螺旋片とを含むとともに、
前記長螺旋片の周方向の両端が、前記短螺旋片の周方向の両端よりも急峻に前記口頸部より立ち上がっていてもよい。
【0020】
なお、上記発明でいう樹脂成形装置とは、オーバーモールド成形に供される金具、治具、取付具または金型のほか、樹脂その他の供給装置、ハンドリング装置もしくは制御装置などの一部または全部との組み合わせを意味する。したがって、本発明の樹脂成形装置の態様としては、中空成形体を保持する保持金具や保持治具の単体、保持金具と金型との組み合わせ、またはこれらと射出装置との組み合わせ、などを一例として含む。
【0021】
また、口頸部が円筒状であるとは、口頸部の全部または先端側の一部が、断面円形または略円形の筒状をなしていることをいう。口頸部が延在する軸は直線であっても曲線であってもよく、断面形状は幾何学的に完全な円形を要するものではない。
【0022】
また、スリット部が口頸部の軸方向に延在するとは、突条部の螺旋軸方向に沿って切れ込みが設けられていることをいう。ただし、スリット部の延在方向と口頸部の軸方向との厳密な一致を要するものではない。
また、スリット部の切れ込み深さは特に限定されるものではなく、突条部の立設高さとの大小を問わない。すなわち、スリット部の底面は、口頸部の周面と面一または口頸部の周面よりも深く切れ込んで突条部を螺旋片に完全に分断していてもよい。または、スリット部の底面が口頸部の周面よりも高く設けられて、突条部を高さ方向に一部分断する形でスリット部が形成されていてもよい。換言すると、スリット部の底面を基準とする螺旋片の高さは、口頸部の周面を基準とする突条部の高さと同一であっても、または互いに相違してもよい。
したがって、スリット部によって突条部が複数の螺旋片に分断されているとは、突条部が個々の螺旋片に完全に分離されている状態のほか、突条部が一部厚さで互いに連なったまま、櫛歯状に彫り込まれている一部分離状態を含む。
【0023】
上記発明において、流体とは、気体および液体などの流動物質であり、液体やペーストのほか、これらに粉体やゲルを混合したものでもよい。
【0024】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の樹脂成形装置、樹脂成形方法および樹脂容器によれば、口頸部の周囲に設けられた螺旋状の突条部が、軸方向に延在するスリット部により分断されていることから、かかるスリット部をキー溝として中空成形体を成型用金型に固定することができる。これにより、中空成形体を回転させずとも口頸部を成型用金型に装着することができ、あわせて成型用金型に対する中空成形体の向きを再現性よく位置決めすることができる。したがって、オーバーモールド成形のスループットを向上することができる。
また、本発明によれば、溶融樹脂により加熱されて中空成形体の口頸部が熱膨張した場合も、樹脂成形装置のリブに螺旋片が噛み込むことが抑制されるため、オーバーモールド成形のスループットをさらに向上することができる。かかる効果に関しては、後述する実施形態にて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態にかかる樹脂容器の一例を示す正面模式図である。
【図2】(a)は中空成形体の平面模式図であり、(b)はその正面図である。
【図3】(a)は図2(b)のIII−III断面図であり、(b)は円X領域の拡大図である。
【図4】本実施形態の樹脂成形装置を構成する口部金型に中空成形体を装着した状態を示す縦断面模式図である。
【図5】口部金型の分解構成図である。
【図6】フレーム金具の三面図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は下面図である。
【図7】図6(a)の拡大図である。
【図8】ノズル金具の四面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のC−C断面図、(d)は下面図である。
【図9】図4のIX−IX断面図であり、(a)は中空成形体の保持状態を示し、(b)はリブの近傍に関する拡大図であり、(c)は中空成形体が熱膨張した状態を示す図である。
【図10】本実施形態の樹脂成形方法の各工程を示す説明図である。
【図11】本実施形態の樹脂成形方法の各工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0028】
<樹脂容器>
はじめに、本実施形態の樹脂容器100の概要について説明する。樹脂容器100は、後述する樹脂成形装置200および樹脂成形方法を用いてオーバーモールド成形により作製される。
図1は、本実施形態の樹脂容器100の一例を示す正面模式図である。
図2(a)は、本実施形態にてインナーシェルとして用いられる中空成形体10の平面模式図であり、同図(b)はその正面図である。
【0029】
樹脂容器100は、有底筒状の本体部12および円筒状の口頸部20を有し、口頸部20の周囲に螺旋状の突条部22が設けられた樹脂製の中空成形体10と、本体部12の外側に中空成形体10と一体に設けられた樹脂外装体30と、を備えている。
そして、樹脂容器100には、突条部22を複数の螺旋片26に分断するスリット部24が、口頸部20の軸方向に延在して設けられている。
【0030】
次に、本実施形態の樹脂容器100について詳細に説明する。
中空成形体10には、本体部12および口頸部20に内容物を収容することができる。内容物は特に限定されず、液体、気体または固体のいずれでもよく、化粧水、薬品または飲料を例示することができる。
【0031】
本体部12よりも細径の円筒状に形成された口頸部20には、複数ループの螺旋状の突条部22が設けられている。突条部22のループ数は任意であるが、2〜3周程度とすることができる。
突条部22は、図1,2に示すように、四本のスリット部24により、各ループが4つの螺旋片26に分断されている。
すなわち、スリット部24は、螺旋状の突条部22に対して螺旋軸方向に交差している。本実施形態のスリット部24は、いずれも口頸部20の軸方向に直線状に延在している。
【0032】
なお、口頸部20に設けるスリット部24の本数はこれに限られず、三本以下、または五本以上としてもよい。
【0033】
本実施形態のスリット部24は、口頸部20の軸方向(図1における上下方向)に伸びる、突条部22の非形成領域として存在している。そして、スリット部24の底面は口頸部20の周面(口頸周面28)と面一である。
言い換えると、口頸周面28上に、複数の螺旋片26が互いに離間して非連続に配設されて突条部22が形成されている。そして、螺旋片26は、その位置および長さが口頸部20の周方向に規則的に繰り返され、隣接する螺旋片26同士の間の空隙が軸方向に揃って並ぶことによりスリット部24が形成されている。
【0034】
また、樹脂容器100は、口頸部20に螺合装着されて中空成形体10を密閉するキャップ部40をさらに備えている。
キャップ部40は、複数の螺旋片26と螺合する少なくとも一ループ以上に亘り連続して形成された螺合部42を有している。
【0035】
本実施形態の場合、キャップ部40は有底円筒状を為し、口頸部20の外部に装着される。キャップ部40の円筒状の内周面には、突条部22と係合する螺合部42がひと続きに設けられている。すなわち、キャップ部40の螺合部42には、突条部22のスリット部24に対応するスリットを有しておらず、キャップ部40を口頸部20に対して冠着することにより、螺合部42は、すべての螺旋片26に対して係合する。
【0036】
樹脂外装体30は、中空成形体10の本体部12を密着して覆い、樹脂容器100に審美性と機械的強度を与える部材である。
樹脂外装体30は、高透明性の合成樹脂を中空成形体10にオーバーモールドしてなる。材料としては、アイオノマー樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはスチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂などのスチレン系樹脂を用いることができ、好ましくはアイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、より好ましくは、アイオノマー樹脂を用いることができる。具体的には、耐衝撃性や透明性、審美性などの観点から選択する。
【0037】
アイオノマー樹脂としては、例えば不飽和カルボン酸含有が1〜40質量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものを使用することができる。
アイオノマー樹脂のベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸、さらに任意の他の極性モノマーを共重合体して得られるものである。
金属イオンとしては、1〜3価の原子価を有する金属イオン、特に元素周期律表におけるIA,IIA,IIIA,IVAおよびIII族の1〜3価の原子価を有する金属イオンが挙げられる。
【0038】
中空成形体10はポリオレフィン、ポリエステルまたはポリアミドなどの樹脂材料からなり、内容物の視認性から透明性合成樹脂が好適に用いられる。具体的には、耐熱性や耐衝撃性、耐食性、装飾性、審美性などの観点から選択することができる。例えば、溶融温度の高さからポリエステルやポリアミド、耐食性の高さからポリエチレンやポリプロピレンまたは上記アイオノマー樹脂が好ましく用いられる。樹脂材料には、光反射粉を混合して、樹脂容器100の審美性を向上してもよい。
中空成形体10の形状や寸法は特に限定されないが、本実施形態の場合、本体部12の横断面は角形であって、横断面円形の口頸部20に連なる上端はテーパー状に細径化する形状である。また、本体部12と口頸部20との間にはフランジ部14が形成され、フランジ部14の上面にはボス15が設けられてフランジ部14と口頸部20を補強している。
【0039】
本実施形態の中空成形体10は、ブロー成形で作製される。また、予め二分割して射出成形された半割の成形体を互いに振動融着してもよい。具体的には、中空成形体10は仮想分割面SPに関して略対象形状をなし、二分割成形体16a,16bの振動融着により中空形状に成形されてもよい。
なお、ブロー成形法や振動融着法に代えて、他の成形方法により中空成形体10を作製してもよい。
また、中空成形体10の表面には、装飾を施してもよい。
なお、キャップ部40に関しては、中空成形体10と同材料で成形しても、異種材料で成形してもよい。
【0040】
図3(a)は、図2(b)のIII−III断面図である。口頸周面28からは複数の螺旋片26が周方向に互いに離間して立設し、螺旋片26同士の間にはスリット部24が形成されている。図3(b)は、同図(a)の円Xで囲んだ領域の拡大図である。
【0041】
本実施形態の螺旋片26は、口頸部20の周方向の長さがより長い長螺旋片26aと、より短い短螺旋片26bとを含んでいる。
そして、長螺旋片26aの周方向の両端は、短螺旋片26bの周方向の両端よりも急峻に口頸周面28より立ち上がっている。
【0042】
すなわち、図3に示すように、口頸部20の横断面形状において、長螺旋片26aの周方向の端部27aと口頸周面28との為す角θは、短螺旋片26bの周方向の端部27bと口頸周面28との為す角θよりも大きい。
具体的には、長螺旋片26aの端部27aは、口頸部20の軸心CAに向かって比較的急峻に立ち上がっているのに対し、短螺旋片26bの端部27bは、軸心CAよりも口頸周面28の周方向に向かって比較的緩やかに立ち上がっている。
【0043】
また、口頸部20には、少なくとも一対の短螺旋片26bが、口頸部20の対向位置に設けられている。
本実施形態の場合、一対の短螺旋片26bおよび短螺旋片26bが、中空成形体10の仮想分割面SPに対して対象位置に対向して設けられており、短螺旋片26bは中空成形体10の仮想分割面SPに対して対象位置に対向することとなる。
中空成形体10はブロー成形で作製されたものを使用するのが一般的である。しかし、二分割成形体16a,16bを仮想分割面SPで振動融着して中空成形体10を作製するにあたっては、上記のように短螺旋片26bの周方向の両端(端部27b)をなだらかとすることにより、二分割成形体16a,16bの成形に際して螺旋片26にアンダーカットが生じない。
【0044】
<樹脂成形装置>
図4は、本実施形態の樹脂成形装置200を構成する口部金型202に中空成形体10を装着した状態を示す縦断面模式図である。
図5は口部金型202の分解構成図である。本実施形態の口部金型202は中空成形体10を保持する治具であり、フレーム金具210と、ノズル金具230と、閉止金具250と、ホルダ金具260とを組み合わせてなる。
図6はフレーム金具210の三面図であり、同図(a)は上面図、同図(b)は同図(a)のB−B断面図、同図(c)は下面図である。また、図7は、図6(a)の拡大図である。
図8はノズル金具230の四面図であり、同図(a)は上面図、同図(b)は正面図、同図(c)は同図(a)のC−C断面図、同図(d)は下面図である。
【0045】
本実施形態の樹脂成形装置200およびこれを構成する口部金型202の概要を説明する。
口部金型202は、有底筒状の本体部12および円筒状の口頸部20を有し口頸部20の軸方向に延在するスリット部24により分断された螺旋状の突条部22が口頸部20の周囲に設けられた樹脂製の中空成形体10を保持して、本体部12の外側に樹脂外装体30(図1を参照)をオーバーモールドするために用いられる。
【0046】
フレーム金具210は、インナーシェルとなる中空成形体10を保持するとともに、口頸部20を掩覆し、樹脂外装体30(図1を参照)がオーバーモールドされる本体部12を露出させる金具である。フレーム金具210はブロック状をなし、口頸部20を掩覆するための凹部(第一凹部212)と、ホルダ金具260を装着するための第二凹部220と、ノズル金具230を装着するための第三凹部222とを備えている。第一凹部212はフレーム金具210の表面側(図4における上方)に小径に設けられ、第三凹部222はフレーム金具210の裏面側(図4における下方)に大径に設けられている。第二凹部220は、第一凹部212と第三凹部222との間に、中径に設けられている。
【0047】
図6各図に示すように、フレーム金具210は、口頸部20を嵌め込む第一凹部212と、第一凹部212の周面(凹部周面214)に立設された、第一凹部212の深さ方向(奥行方向)に延在してスリット部24と係合するリブ216と、を備えている。
【0048】
本実施形態のフレーム金具210においては、口頸周面28に設けられたスリット部24とそれぞれ対応する位置に、スリット部24と同数である四本のリブ216が設けられている。リブ216は第一凹部212の深さ方向に直線状に伸びている。
【0049】
より具体的には、複数本(四本)のリブ216は、第一凹部212の中心を通る対称面SYに関して対称位置に設けられている。そして、リブ216の立設面217,218は対称面SYに向けて形成されている。
すなわち、凹部周面214からのリブ216の立ち上がり方向は、対称面SYの法線方向を向いている。ただし、リブ216の立設方向と対称面SYの法線方向とは厳密な一致を要するものではない。
【0050】
図7は、図6(a)におけるリブ216近傍の拡大図である。同図に示すように、本実施形態の樹脂成形装置200(フレーム金具210)は、複数本のリブ216が凹部周面214に不等間隔に設けられ、凹部周面214が、隣接するリブ216同士の間隔がより長い長周部214aと、より短い短周部214bとを含んでいる。
そして、長周部214aを挟むリブ216の立設面217と凹部周面214(長周部214a)との為す角φは、短周部214bを挟むリブ216の立設面218と凹部周面214(短周部214b)との為す角φよりも小さい。
【0051】
すなわち、リブ216の一方側の立設面218と凹部周面214(短周部214b)との為す角φは鈍角であり、リブ216の他方側の立設面217と凹部周面214(長周部214a)との為す角φは鋭角である。
そして、短周部214bと長周部214aの境界に位置するリブ216の立設面217,218は、第一凹部212の中心よりも長周部214aの側に向かって延在している。
また、リブ216の上面219は、凹部周面214に平行する凹面状に形成されている。
【0052】
なお、リブ216の立設面217,218と凹部周面214との為す角φまたはφは、第一凹部212の深さ方向に対して垂直に切った横断面における、リブ216の中心線と凹部周面214との為す角として定義することができる。これにより、リブ216の立設面217,218が平坦面でない場合や、立設面217,218と凹部周面214とが曲面で連続している場合についても、角φおよびφが定義される。
【0053】
第一凹部212には、座ぐり部226が設けられている。座ぐり部226は第一凹部212よりも大径であり、口頸部20のボス15が嵌合するとともにフランジ部14により閉止される(図4を参照)。
フレーム金具210の第三凹部222の底部には、ノズル金具230を固定するためのネジ穴224が設けられている。本実施形態では二対(四個)のネジ穴224が、第一凹部212に関する対称位置に設けられている。そして、対向する一対のネジ穴224同士は、第一凹部212に関して互いに45度の角度位置に設けられている。
【0054】
図8に示すように、ノズル金具230は、第三凹部222に嵌合されるフランジ部232と、フランジ部232から突き出したノズル部234とを備える金具である。ノズル部234は、フレーム金具210にセットされた中空成形体10の口頸部20より内部に挿入され、中空成形体10の内部に流体を供給することができる。
【0055】
ノズル金具230の下面側には、流路244a〜244cを介して中空成形体10の内部に流体を供給する流体供給部(図示せず)が接続される。
すなわち、本実施形態の樹脂成形装置200は、第一凹部212の内外を連通する流路244a〜244cと、第一凹部212に嵌め込まれた中空成形体10の内部に流路244a〜244cを介して流体を供給する流体供給部(図示せず)と、をさらに備えている。
【0056】
具体的には、ノズル部234は、先端位置に一つの先端開口241、基端位置に二つの基端開口242,243を有している。先端開口241、基端開口242,243は、それぞれ流路244a〜244cを介してフランジ部232の下面側と連通している。
流路244aは、フランジ部232の下面中央で開口している。そして、流路244bおよび244cは、フランジ部232の下面周縁近傍で開口している。
【0057】
供給する流体は気体であっても液体であってもよく、その材料や圧力は特に限定されない。
本実施形態では、中空成形体10の内部に加圧空気を供給するものとし、流体供給部としては加圧ポンプを用いる。加圧気体は、ノズル部234の先端開口241から中空成形体10内に供給される。また、ノズル部234の基端開口242,243から加圧空気を排気することにより、中空成形体10の内圧を調整することができる。
【0058】
本実施形態のノズル金具230は、ノズル部234が第一凹部212の軸心を通るようにフレーム金具210に取り付けられる。これにより、ノズル部234の先端開口241から加圧空気を中空成形体10に供給する際に、気流が中空成形体10に対して横力を与えることがなく、リブ216による口頸部20の保持性を損なわない。
【0059】
また、本実施形態のノズル金具230においては、先端開口241を中心にして対称位置に基端開口242,243が配置されている。したがって、基端開口242,243からの加圧空気の排気時にも、中空成形体10に対して横力が生じることがない。基端開口242,243を通じて中空成形体10内に気体または液体を供給する場合も同様である。
【0060】
中空成形体10の内部を加圧することにより、オーバーモールド成形時に、モールド圧によって中空成形体10が溶融変形することを防止する。
中空成形体10の内部を加圧化するタイミングは特に限定されないが、溶融樹脂のモールド圧が最大となる時点では内部が加圧化されていることが好ましい。一方、中空成形体10の内部を加圧化したことにより、フレーム金具210に保持された中空成形体10に浮き上がりが生じてリブ216と口頸部20との嵌合が不十分となったり、フレーム金具210にセットされた中空成形体10のフランジ部14と座ぐり部226との間に空隙が生じて溶融樹脂が浸入したりすることは回避することが好ましい。
したがって、中空成形体10の本体部12に対する溶融樹脂の射出が開始されてから、モールド圧が最大となるまでの間に中空成形体10の内部を加圧化することが好ましい。
【0061】
なお、加圧気体に代えて、または加圧気体とともに、中空成形体10の内部に液体を供給して、中空成形体10の変形容積を一時的に低減してもよい。
【0062】
なお、後述する閉止金具250にて中空成形体10を気密に密閉した状態でノズル部234により中空成形体10の内部を負圧に吸引することにより、フレーム金具210による中空成形体10の保持力を増加させることができる。
【0063】
フランジ部232には、厚み方向に貫通する一対の通孔236が、ノズル部234に関する対称位置に設けられている。通孔236は、フレーム金具210のネジ穴224と組み合わせてボルト穴として用いられる。
【0064】
ノズル金具230は、フレーム金具210に保持された中空成形体10の本体部12を覆う後述する外型金具270(図10を参照)および流体供給部を含む樹脂成形装置200の全体に対して固定される。
したがって、フレーム金具210はノズル金具230に対して回転可能であり、スリット部24の立設位置がノズル金具230および外型金具270に対して第一凹部212の周方向に可変である。
具体的には、本実施形態の場合、フレーム金具210は樹脂成形装置200全体に対して二通りの回転位置(第一位置,第二位置)で固定される。
【0065】
閉止金具250は、ノズル部234が挿入された状態の中空成形体10と、フレーム金具210との間を気密に密閉する筒状の金具である。閉止金具250は、図4に示すようにOリング256が周着される先端口部252と、ノズル金具230のフランジ部232に当接してノズル部234の基端部を保持するベース部254とを備えている。
Oリング256は、フレーム金具210にセットされた口頸部20の先端が気密に当接する。
【0066】
ホルダ金具260は、フレーム金具210の第二凹部220に装着され、閉止金具250をノズル金具230のフランジ部232に対して保持固定する筒状の金具である。ホルダ金具260には、フランジ部232と当接する下面側に、閉止金具250よりも大径に円形溝262が設けられている。円形溝262には、図4に示すようにOリング266が装着される。Oリング266は、ホルダ金具260とフランジ部232とを気密に当接させる。
ホルダ金具260は細径の頸部268を有し、保持された閉止金具250のベース部254が気密に当接する。
これにより、ノズル金具230のフランジ部232と、フレーム金具210にセットされた中空成形体10の口頸部20との間がシールされる。
【0067】
図9は、図4のIX−IX断面図であり、フレーム金具210の第一凹部212に中空成形体10の口頸部20が嵌め込まれた状態を示す拡大図である。同図(a)は、口頸部20のスリット部24とフレーム金具210のリブ216とが係合した、中空成形体10の保持状態を示している。同図(b)はリブ216の近傍に関する拡大図である。口頸周面28とリブ216の上面219とは所定のクリアランスを隔てて離間している。
同図(c)は、中空成形体10がオーバーモールドされる際に熱膨張した状態を示している。口頸周面28とリブ216の上面219とは近接している。
【0068】
口頸部20は、オーバーモールド時に溶融樹脂から本体部12が受けた熱の流入により加熱される。一方、リブ216を備えるフレーム金具210はノズル金具230とともに一般に冷却されており、かかる熱膨張は無視することができる。
【0069】
図3,7に示したように、口頸部20に関しては、突条部22の長螺旋片26aの端部27aは、短螺旋片26bの端部27bよりも、口頸周面28より急峻に立ち上がっている。そして、フレーム金具210のリブ216に関しては、長周部214aを挟む立設面217は、短周部214bを挟む立設面218よりも、凹部周面214より鋭角に立ち上がっている。
したがって、図9に示すように、リブ216をスリット部24に係合させた場合、リブ216の立設面217の先端部217aは、長螺旋片26aの端部27aの立ち上がり面(斜面27c)に対して深い角度で対向する。このため、螺旋片26とリブ216との係合性は、長螺旋片26aの斜面27cと立設面217の先端部217aとの間で良好となる。
【0070】
これに対し、立設面217と凹部周面214との角φ(図7を参照)が鋭角であることから、立設面217のうち凹部周面214側の基端部217bは、端部27aから、クリアランスC1をもって大きく離間している。
他方、短螺旋片26bの端部27bと立設面218との関係については、立設面218と凹部周面214との間の角φ(図7を参照)が鈍角であって、立設面218は、端部27bの立ち上がり面(斜面27d)に対して浅い角度で対向する。そして、立設面218のうち凹部周面214側の基端部218bは、端部27bから所定のクリアランスC2をもって離間している。
【0071】
そして、本実施形態においては、リブ216とスリット部24とが係合した状態で、リブ216の基端部における立設面217,218と螺旋片(長螺旋片26a,短螺旋片26b)とのクリアランスC1,C2が、長周部214aの側(C1)においてより大きく、短周部214bの側(C2)においてより小さい。
換言すると、本実施形態においては、リブ216の基端側における立設面217,218と螺旋片26の端部27a,27bとのクリアランスC1,C2を、長周部214aおよび長螺旋片26a(端部27a)の側(C1)においてより大きく、短周部214bおよび短螺旋片26b(端部27b)の側(C2)においてより小さいものとしている。
【0072】
これにより、本実施形態の樹脂成形装置200では、口頸部20とともに螺旋片26が熱膨張した際にリブ216に対して生じる螺旋片26の噛み込みが、立設面217,218の両側において均等化される。
図9(c)に示すように、口頸部20が加熱されると、口頸部20および螺旋片26は、図中の矢印にて示すように熱膨張する。すると、口頸部20は全体に拡径して周長が長くなるため、螺旋片26同士の間のスリット部24は間隔が広がる。
【0073】
一方、螺旋片26(長螺旋片26a,短螺旋片26b)における端部27a,27bの外周縁側では、矢印にて示すように、スリット部24を狭めるように熱膨張が生じる。これは、端部27a,27bの外周縁側には周方向への規制力が働かないためである。
この結果、口頸部20が加熱された場合には、螺旋片26の端部27a,27bがリブ216の立設面217,218に噛み込むおそれがある。
なお、かかる周方向への熱膨張は、螺旋片26の周方向の長さが大きいほど顕著となる。したがって、長螺旋片26aの端部27aにおいて、クリアランスC1を減じる方向の熱膨張が顕著に発生する。
【0074】
これに対し、本実施形態のフレーム金具210および中空成形体10においては、上記のように、リブ216の基端側における立設面217と端部27aとのクリアランスC1を、立設面218と端部27bとのクリアランスC2よりも大きくしている。
このため、リブ216の両側において噛み込みの発生をバランスさせることで、これを抑制することができる。
【0075】
したがって、オーバーモールド成形によって加熱された中空成形体10が完全に冷却されることを待たずに、樹脂容器100をフレーム金具210より取り外すことができる。したがって、本実施形態の中空成形体10および樹脂成形装置200を用いることにより、オーバーモールド成形のスループットを向上するという本発明に特有の課題が解決される。
【0076】
<樹脂成形装置>
図10および11は、本実施形態の樹脂成形方法の各工程を示す説明図である。
【0077】
はじめに、本実施形態の樹脂成形方法の概要について説明する。
本実施形態による樹脂成形方法は、有底筒状の本体部12および円筒状の口頸部20を有し口頸部20の軸方向に延在するスリット部24により分断された螺旋状の突条部22が口頸部20の周囲に設けられた樹脂製の中空成形体10に対して、本体部12の外側に樹脂外装体30をオーバーモールドする樹脂成形方法である。
そして、本実施形態の樹脂成形方法は、スリット部24を係止して中空成形体10を保持する保持工程と、保持された中空成形体10を溶融樹脂でオーバーモールドして樹脂容器100を成形するオーバーモールド工程と、を含む。
【0078】
次に、本実施形態の樹脂成形方法について詳細に説明する。
(保持工程)
図10(a)は、中空成形体10の口頸部20をフレーム金具210の第一凹部212に嵌め込むことにより、口頸部20のスリット部24とリブ216とを係合させた状態を示す模式図である。フレーム金具210は、ノズル金具230、閉止金具250およびホルダ金具260(図4を参照)と組み合わされて口部金型202を構成している。
【0079】
同図において、重力方向は図中下方である。すなわち、保持工程では、口頸部20を重力方向の下方に向けて中空成形体10を保持する。
【0080】
保持工程では、螺旋片26(長螺旋片26a,短螺旋片26b)の先端部におけるクリアランスを、長螺旋片26aの側(C1)においてより大きく、短螺旋片26bの側(C2)においてより小さくしてスリット部24を係止する。
【0081】
中空成形体10を保持した口部金型202は、オーバーモールド用の外型金具270と組み合わせて樹脂成形装置200を構成する。外型金具270は、割型271,272に分割構成される。
【0082】
図10(b)は、割型271,272を対向させて互いに組み合わせ、外型金具270の内部にキャビティ273を形成し、その内部に中空成形体10の本体部12を収容した状態を示す模式図である。
このとき、ノズル金具230の流路244a〜244cは、外型金具270の外部とそれぞれ連通している。すなわち、外型金具270には、口部金型202の先端開口241および基端開口242,243と個別に連通する管路275が設けられている。
【0083】
また、キャビティ273の上部には、溶融樹脂を供給するための樹脂流入路274が外型金具270の外部と連通して設けられている。
【0084】
図11(a)は、樹脂流入路274を通じてキャビティ273の内部に溶融樹脂276を充填した状態を示す模式図である。かかる状態では、管路275および流路244aを通じて外型金具270の外部より中空成形体10の内部に加圧空気が供給されている。
キャビティ273に流入する溶融樹脂276は、中空成形体10を重力方向に押圧しながらキャビティ273に充填されていく。
【0085】
本実施形態の外型金具270では、中空成形体10の中心軸上に樹脂流入路274が形成されている。したがって、口部金型202に保持された中空成形体10はキャビティ273に対して傾くことがない。
【0086】
図11(b)は、溶融樹脂276が冷却硬化した状態を示す模式図である。溶融樹脂276は硬化して樹脂外装体30となっている。
そして、ランナー277を切断することにより、本体部12の外側に中空成形体10と一体に設けられた樹脂外装体30を備える樹脂容器100がオーバーモールド成形される。
【0087】
成形された樹脂容器100は、口頸部20を口部金型202の第一凹部212から軸方向にまっすぐ引き抜くことで取り出し可能である。
【0088】
本実施形態の樹脂成形装置200および樹脂容器100より得られる作用効果について以下説明する。
本実施形態の樹脂容器100には、突条部22を複数の螺旋片26に分断するスリット部24が、口頸部20の軸方向に延在して設けられている。かかる構成を備える樹脂容器100は成形作業性に優れ、高スループットが実現される。すなわち、スリット部24をキー溝として中空成形体10を口部金型202に固定することができるため、中空成形体10を回転させることなく、口頸部20を口部金型202の第一凹部212に落とし込むだけで、中空成形体10を第一凹部212に対して所望の向きに再現性よく固定することができる。
【0089】
本実施形態のキャップ部40は、複数の螺旋片26と螺合する少なくとも一ループ以上に亘り連続して形成された螺合部42を有している。かかる構成により、口頸部20にスリット部24が形成されている樹脂容器100において、キャップ部40が冠着された中空成形体10の内部と外部が連通してしまうことを防止する。このため、中空成形体10の内容物が揮発性の液体の場合、キャップ部40が口頸部20に対して不完全に冠着されたときであっても内容物の蒸散が防止される。
【0090】
本実施形態の螺旋片26は、口頸部20の周方向の長さがより長い長螺旋片26aと、より短い短螺旋片26bとを含んでおり、長螺旋片26aの周方向の両端は、短螺旋片26bの周方向の両端よりも急峻に口頸周面28より立ち上がっている。かかる構成により、上述のように中空成形体10の成形を二分割成形体16a,16b(図2(a)を参照)の接合によって行うに際し、二分割成形体16a,16bの成形性が良好となる。また、中空成形体10をブロー成形によって得る場合も、成形金型のパーティングラインを仮想分割面SPに一致させることにより、スリット部24に対応する成形金型側の突起と螺旋片26とが干渉せず、いわゆるアンダーカットが生じない。換言すると、上記構成を備えることにより、成形性に優れる構造の中空成形体10が提供される。
【0091】
また、本実施形態の樹脂成形装置200は、口頸部20を嵌め込む第一凹部212と、凹部周面214に立設された、第一凹部212の深さ方向に延在してスリット部24と係合するリブ216と、を備えている。かかる構成により、第一凹部212に中空成形体10の口頸部20を差し込むだけで、口頸部20がスリット部24とリブ216との係合によってフレーム金具210に固定されるとともに、フレーム金具210に対する中空成形体10の向きが再現性よく位置決めされる。これにより、口頸部20に螺旋状の突条部22が形成された中空成形体10であっても、これを回転させることなくフレーム金具210にセットすることができるため、作業ロボットを用いたオーバーモールド成形の全自動化が容易に実現される。
【0092】
樹脂成形装置200を構成する口部金型202は、複数本のリブ216が凹部周面214に不等間隔に設けられ、凹部周面214が長周部214aと短周部214bとを含むとともに、長周部214aを挟むリブ216の立設面217と長周部214aとの為す角φが、短周部214bを挟むリブ216の立設面218と短周部214bとの為す角φよりも小さい。かかる構成により、長螺旋片26aの端部27aに対するリブ216の立設面217との係合性が良好となり、口部金型202の第一凹部212に対する中空成形体10の位置決めが良好に行われる。
これは、口部金型202がかかる構成を備えることにより、上述のように成形性に優れる中空成形体10の構造である長螺旋片26aおよび短螺旋片26bの周方向両端の立ち上がり角θ,θに対して、リブ216の立設面217,218の立設角φ1,φが補角の関係となるためである(図3,7を参照)。
【0093】
本実施形態の樹脂成形装置200では、リブ216の基端側における立設面217と端部27aとのクリアランスC1を、立設面218と端部27bとのクリアランスC2よりも大きくしている。かかる構成により、オーバーモールド時に中空成形体10が加熱されて長螺旋片26aに顕著な熱膨張が生じたとしても、リブ216の両側の立設面217,218で生じる螺旋片26の噛み込みをバランスして抑制することができる。このため、オーバーモールド成形後の樹脂容器100を迅速に第一凹部212から脱離することができ、高いスループットが達成される。
【0094】
複数本(四本)のリブ216が第一凹部212の中心を通る対称面SYに関して対称位置に設けられており、リブ216の立設面217,218は対称面SYに向けて形成されている。かかる構成により、第一凹部212に嵌め込まれた口頸部20の保持安定性が良好となる。
【0095】
本実施形態の樹脂成形装置200は、保持された中空成形体10の本体部12を覆う外型金具270をさらに備えるとともに、スリット部24の立設位置が、外型金具270に対して第一凹部212の周方向に可変である。かかる構成により、インナーシェルにあたる中空成形体10と、アウターシェルにあたる樹脂外装体30との角度を所望に調整することができる。これにより、例えば中空成形体10と樹脂外装体30の横断面をそれぞれ多角形とした場合など、中空成形体10と樹脂外装体30との軸周りの角度を変化させることで異なる意匠性の容器を成形することができる。
【0096】
本実施形態の樹脂成形装置200は、第一凹部212の内外を連通する流路244a〜244cと、第一凹部212に嵌め込まれた中空成形体10の内部に流路244a〜244cを介して流体を供給する流体供給部(図示せず)とを備えている。かかる構成により、オーバーモールド成形時に中空成形体10の内部に加圧気体や液体を供給することができる。このため、モールド圧による中空成形体10の圧縮変形を抑制することができ、中空成形体10と樹脂外装体30との高い密着性を得ることができる。
【0097】
本実施形態の樹脂成形方法より得られる作用効果について以下説明する。
本実施形態の樹脂成形方法は、スリット部24を係止して中空成形体10を保持する保持工程と、保持された中空成形体10を溶融樹脂でオーバーモールドして樹脂容器100を成形するオーバーモールド工程と、を含む。かかる構成により、中空成形体10の口頸部20に螺旋状の突条部22が設けられていても、スリット部24を係止して中空成形体10を保持することができるため、樹脂成形装置200に対する中空成形体10の螺合が不要となる。また、スリット部24を係止して中空成形体10を保持することにより、中空成形体10の形状に応じて所定の向きに保持した中空成形体10に対して樹脂外装体30をオーバーモールドすることができる。
【0098】
保持工程では、口頸部20を重力方向の下方に向けて中空成形体10を保持する。これにより、中空成形体10はその自重によって第一凹部212に安定して保持され、中空成形体10が外型金具270のキャビティ273に対して傾くことが防止される。
【0099】
保持工程では、螺旋片26(長螺旋片26a,短螺旋片26b)の先端部におけるクリアランスを、長螺旋片26aの側(C1)においてより大きく、短螺旋片26bの側(C2)においてより小さくしてスリット部24を係止する。これにより、オーバーモールド工程において螺旋片26が加熱されて長螺旋片26aが顕著に熱膨張したとしても、係止されているスリット部24に生じる噛み込みが抑制される。このため、オーバーモールド成形後の樹脂容器100を迅速に第一凹部212から脱離することができ、高いスループットが達成される。
【符号の説明】
【0100】
10 中空成形体
12 本体部
20 口頸部
22 突条部
24 スリット部
26 螺旋片
26a 長螺旋片
26b 短螺旋片
27a,27b 端部
28 口頸周面
30 樹脂外装体
40 キャップ部
42 螺合部
100 樹脂容器
200 樹脂成形装置
202 口部金型
210 フレーム金具
212 第一凹部
214 凹部周面
214a 長周部
214b 短周部
216 リブ
217,218 立設面
217a 先端部
217b,218b 基端部
244a〜244c 流路
270 外型金具
276 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の本体部および円筒状の口頸部を有し前記口頸部の軸方向に延在するスリット部により複数の螺旋片に分断された螺旋状の突条部が前記口頸部の周囲に設けられた樹脂製の中空成形体を保持して、前記本体部の外側に樹脂外装体をオーバーモールドするための樹脂成形装置であって、
前記口頸部を嵌め込む凹部と、
前記凹部の周面に立設された、前記凹部の深さ方向に延在して前記スリット部と係合するリブと、
を備える樹脂成形装置。
【請求項2】
複数本の前記リブが前記凹部の周面に不等間隔に設けられ、該周面が、隣接する前記リブ同士の間隔がより長い長周部と、より短い短周部とを含む請求項1に記載の樹脂成形装置であって、
前記長周部を挟む前記リブの立設面と前記周面との為す角が、前記短周部を挟む前記リブの立設面と前記周面との為す角よりも小さいことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項3】
前記リブと前記スリット部とが係合した状態で、該リブの基端部における前記立設面と前記螺旋片とのクリアランスが、前記長周部の側においてより大きく、前記短周部の側においてより小さいことを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
複数本の前記リブが前記凹部の中心を通る対称面に関して対称位置に設けられているとともに、
前記リブの立設面が前記対称面に向けて形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
保持された前記中空成形体の前記本体部を覆う外型金具をさらに備えるとともに、
前記スリット部の立設位置が、前記外型金具に対して前記凹部の周方向に可変であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記凹部の内外を連通する流路と、前記凹部に嵌め込まれた前記中空成形体の内部に前記流路を介して流体を供給する流体供給手段と、をさらに備える請求項1から5のいずれかに記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
有底筒状の本体部および円筒状の口頸部を有し前記口頸部の軸方向に延在するスリット部により複数の螺旋片に分断された螺旋状の突条部が前記口頸部の周囲に設けられた樹脂製の中空成形体に対して、前記本体部の外側に樹脂外装体をオーバーモールドする樹脂成形方法であって、
前記スリット部を係止して前記中空成形体を保持する保持工程と、
保持された前記中空成形体を溶融樹脂でオーバーモールドして樹脂容器を成形するオーバーモールド工程と、
を含む樹脂成形方法。
【請求項8】
前記保持工程にて、前記口頸部を重力方向の下方に向けて前記中空成形体を保持する請求項7に記載の樹脂成形方法。
【請求項9】
前記螺旋片が、前記口頸部の周方向の長さがより長い長螺旋片と、より短い短螺旋片とを含む前記中空成形体に対してオーバーモールドする請求項7または8に記載の樹脂成形方法であって、
前記保持工程にて、前記螺旋片の先端部におけるクリアランスを、前記長螺旋片の側においてより大きく、前記短螺旋片の側においてより小さくして前記スリット部を係止することを特徴とする樹脂成形方法。
【請求項10】
有底筒状の本体部および円筒状の口頸部を有し、前記口頸部の周囲に螺旋状の突条部が設けられた樹脂製の中空成形体と、
前記本体部の外側に前記中空成形体と一体に設けられた樹脂外装体と、を備えるとともに、
前記突条部を複数の螺旋片に分断するスリット部が、前記口頸部の軸方向に延在して設けられていることを特徴とする樹脂容器。
【請求項11】
前記口頸部に螺合装着されて前記中空成形体を密閉するキャップ部をさらに備えるとともに、
前記キャップ部が、複数の前記螺旋片と螺合する少なくとも一ループ以上に亘り連続して形成された螺合部を有することを特徴とする請求項10に記載の樹脂容器。
【請求項12】
前記螺旋片が、前記口頸部の周方向の長さがより長い長螺旋片と、より短い短螺旋片とを含むとともに、
前記長螺旋片の周方向の両端が、前記短螺旋片の周方向の両端よりも急峻に前記口頸部より立ち上がっていることを特徴とする請求項10または11に記載の樹脂容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−42685(P2010−42685A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262869(P2009−262869)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【分割の表示】特願2008−190240(P2008−190240)の分割
【原出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】