説明

樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子製造装置、樹脂微粒子、樹脂微粒子製造用分散液

【課題】均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅の小さい樹脂微粒子を得ることができる樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子製造装置、樹脂微粒子、樹脂微粒子製造用分散液を提供すること。
【解決手段】本発明の樹脂微粒子の製造方法は、樹脂材料を主材料として構成された第1の分散質61と、熱硬化樹脂を主材料として構成された第2の分散質62とが分散媒63中に微分散した分散液6をヘッド部2の吐出部から粒状に吐出し、搬送部3内を搬送させつつ、分散媒63を除去し、第1の分散質61由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体6’を得る分散媒除去工程と、凝集体6’を加熱することにより、第2の分散質62由来の熱硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、凝集体6’を構成する複数個の微粒子同士を溶融接合してトナー粒子9(接合体)を得る接合工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子製造装置、樹脂微粒子、樹脂微粒子製造用分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂を主材料として構成された微粒子、すなわち樹脂微粒子としては、例えば、電子写真方式を採用するプリンタ、コピー、ファクシミリなどの画像形成装置に用いられるトナーがある。
トナーの製造方法としては、トナーを構成する樹脂を含む分散質が分散媒中に微分散した分散液を、インクジェット法を用いて、粒状の液滴として吐出し、この液滴を固化することにより、トナー粒子を得るものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、特許文献1では、ポリエステルを主材料とする分散質が分散されてなる分散液をノズルから液滴として断続的に吐出し、その液滴を、筒状の搬送部内を搬送しつつ、分散媒を除去して分散質由来の微粒子を凝集して凝集体とした後に、この凝集体を構成する微粒子同士を加熱により溶融接合して接合体とし、これをトナー粒子として用いる。
しかしながら、特許文献1の方法では、凝集体を構成する微粒子同士を溶融接合して接合体を得る際に、凝集体の外周部の微粒子も溶融してしまうため、凝集体同士がくっついて、得られる接合体が異形状となってしまう。その結果、得られるトナーは、粒径や形状のばらつきが大きくなってしまう。
このようなトナーを画像形成装置に用いると、トナー粒子同士を摩擦帯電させ、帯電したトナー粒子を感光ドラムに静電的に付着させて、トナー像を形成する際して、帯電不良や転写不良を起こすおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−262976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅の小さい樹脂微粒子を得ることができる樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子製造装置、樹脂微粒子、樹脂微粒子製造用分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の樹脂微粒子の製造方法は、樹脂材料を主材料として構成された分散質が分散媒中に微分散した分散液の液滴を、熱硬化性樹脂を含む状態で、搬送部内を搬送させつつ、前記分散媒を除去し、前記分散質由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体を得る分散媒除去工程と、
前記凝集体を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記凝集体を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体を得る接合工程とを有することを特徴とする。
【0007】
これにより、接合工程にて、樹脂材料を主材料として構成された分散質由来の微粒子同士が溶融接合するに際して、硬化した熱硬化性樹脂が溶融せずに凝集体同士の間に介在するため、接合体同士の接合を防止することができる。その結果、得られる樹脂微粒子は、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さいものとなる。特に、凝集体に含まれる熱硬化性樹脂の量を、各凝集体間でより均一にすることができるので、接合工程にて、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。
また、凝集体が接合体となるに際して、硬化した熱硬化性樹脂により凝集体の形状が維持されるため、接合体の不本意な変形を防止することができ、この点でも、得られる樹脂微粒子の形状の均一化を図ることができる。
【0008】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記分散媒除去工程に先立ち、前記分散液を、前記熱硬化性樹脂を含む状態で吐出部から吐出し、前記熱硬化性樹脂を含む前記液滴を得ることが好ましい。
これにより、凝集体に熱硬化性樹脂をより均一に含ませることができる。その結果、接合工程にて、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。
【0009】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記分散媒除去工程に先立ち、前記分散液を吐出口から吐出するとともに、前記熱硬化性樹脂を含む液体を前記液滴に付与するように前記吐出口とは別の吐出口から吐出し、前記熱硬化性樹脂を含む前記液滴を得ることが好ましい。
これにより、凝集体に熱硬化性樹脂をより均一に含ませることができる。その結果、接合工程にて、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。
また、凝集体における熱硬化性樹脂の含有量を容易に調整することができる。
【0010】
本発明の樹脂微粒子の製造方法は、樹脂材料を主材料として構成された分散質が分散媒中に微分散した分散液の液滴を、搬送部内を搬送させつつ、前記分散媒を除去し、前記分散質由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体を得る分散媒除去工程と、
熱硬化性樹脂を前記凝集体に付与する熱硬化性付与工程と、
前記凝集体を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記凝集体を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体を得る接合工程とを有することを特徴とする。
【0011】
これにより、接合工程にて、樹脂材料を主材料として構成された分散質由来の微粒子同士が溶融接合するに際して、硬化した熱硬化性樹脂が溶融せずに凝集体同士の間に介在するため、接合体同士の接合を防止することができる。その結果、得られる樹脂微粒子は、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さいものとなる。特に、熱硬化性樹脂をより確実に凝集体の表面近傍に存在させることができるので、接合工程にて、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。
また、凝集体が接合体となるに際して、硬化した熱硬化性樹脂により凝集体の形状が維持されるため、接合体の不本意な変形を防止することができ、この点でも、得られる樹脂微粒子の形状の均一化を図ることができる。
【0012】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記熱硬化性付与工程において、前記熱硬化性樹脂を含む液体を、前記分散液とは別の吐出部から吐出し、前記液体を前記凝集体に付与することが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂をより確実に凝集体の表面近傍に存在させることができる。その結果、接合工程にて、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。また、用いる熱硬化性樹脂の量が比較的少量で済むので、樹脂微粒子の製造にかかる材料費を低減することができる。
【0013】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記液体は、前記熱硬化性樹脂を主材料として構成された分散質が分散媒中に微分散されたものであることが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂を凝集体の表面近傍に点在させた状態とすることができるので、接合体同士の接合をより確実に防止することができるとともに、得られる樹脂微粒子において、熱硬化性樹脂以外の樹脂材料の特性を十分に発揮させることができる。
【0014】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記分散媒除去工程に供される前記液滴は、前記熱硬化性樹脂以外の樹脂を主材料として構成されている第1の分散質と、前記熱硬化性樹脂を主材料として構成されている第2の分散質とが前記分散媒中に微分散していることが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂を凝集体の表面近傍に点在させた状態とすることができるので、接合体同士の接合をより確実に防止することができるとともに、得られる樹脂微粒子において、熱硬化性樹脂以外の樹脂材料の特性を十分に発揮させることができる。
【0015】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記第2の分散質の平均粒径は、前記第1の分散質の平均粒径よりも大きいことが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂を凝集体の表面近傍に点在させつつ、熱硬化性樹脂をより確実に凝集体の表面近傍に存在させることができる。その結果、接合体同士の接合をさらに確実に防止することができるとともに、得られる樹脂微粒子において、熱硬化性樹脂以外の樹脂材料の特性を十分に発揮させることができる。
【0016】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記熱硬化性樹脂は、水溶性であることが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂が溶媒に溶解した液体を用いて、凝集体の表面を覆うように熱硬化性樹脂を存在させることができる。その結果、接合工程にて、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。また、熱硬化性樹脂がネットワークを形成した状態で凝集体に含ませることができるので、より優れた機械的強度を有する樹脂微粒子を得ることができる。
【0017】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記分散媒は、主として水および/または水溶性の液体で構成されたものであることが好ましい。
これにより、分散液中における分散質の分散性をさらに高めることができ、分散液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきが特に小さいものとすることができる。また、有機溶媒を実質的に用いることなく、または、極めて少量の有機溶媒を用いて、分散液を調製することができるため、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法で樹脂微粒子を製造することができる。
【0018】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記硬化工程における加熱温度は、前記接合工程における加熱温度よりも低いことが好ましい。
これにより、硬化工程にて、微粒子を溶融させずに、凝集体同士の接合を防止しつつ、熱硬化性樹脂を硬化させることができ、その結果、得られるトナーは、より均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅がより小さいものとなる。
【0019】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、前記熱硬化性樹脂の硬化温度は前記微粒子の溶融温度よりも低いことが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂の硬化、微粒子同士の溶融接合をより確実に順次行うことができ、硬化工程にて、微粒子を溶融させずに、凝集体同士の接合を防止しつつ、熱硬化性樹脂を硬化させることができる。その結果、得られるトナーは、より均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅がより小さいものとなる。
【0020】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、樹脂微粒子としてトナーを得ることが好ましい。
これにより、得られるトナーは、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さいものとなるので、帯電特性および転写特性に優れたものとなる。
また、硬化工程にて、紫外線を用いた場合には、凝集体中に含まれる分散剤などの帯電特性や転写特性を阻害する成分を分解除去することができる。その結果、得られるトナーは、帯電特性および転写特性により優れたものとなる。
【0021】
本発明の樹脂微粒子製造装置は、樹脂材料を主材料として構成された分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いて、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子を製造する装置であって、
前記分散液を熱硬化性樹脂を含んだ状態で液滴状に吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出された分散液の液滴を搬送させる搬送部とを有し、
前記搬送部は、前記吐出部から吐出された分散液の液滴から前記分散媒を除去し、前記分散質由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体を得る分散媒除去領域と、前記凝集体を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化領域と、前記熱硬化性樹脂が硬化した状態で、前記凝集体を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体を得る接合領域とを備えることを特徴とする。
これにより、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さい樹脂微粒子を得ることができる。特に、分散液を熱硬化性樹脂を含んだ状態で粒状に吐出するので、凝集体に含まれる熱硬化性樹脂の量を、各凝集体間でより均一にすることができ、その結果、接合工程にて、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。
【0022】
本発明の樹脂微粒子製造装置は、樹脂材料を主材料として構成された分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いて、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子を製造する装置であって、
前記分散液を粒状に吐出する第1の吐出部と、
熱硬化性樹脂を含む液体を液滴状に吐出する第2の吐出部と、
前記第1の吐出部から吐出された分散液の液滴と前記第2の吐出部から吐出された液体の液滴とを搬送させる搬送部とを有し、
前記搬送部は、前記第1の吐出部から吐出された分散液の液滴から前記分散媒を除去し、前記分散質由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体を得る分散媒除去領域と、前記第2の吐出部から吐出された液体中の前記熱硬化性樹脂を含む前記凝集体を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化領域と、前記熱硬化性樹脂が硬化した状態で、前記凝集体を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体を得る接合領域とを備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さい樹脂微粒子を得ることができる。特に、熱硬化性樹脂を含む液体を、前記分散液とは別途粒状に吐出し、凝集体に熱硬化性樹脂を含ませるので、熱硬化性樹脂をより確実に凝集体の表面近傍に存在させることができる。その結果、接合工程にて、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。
【0024】
本発明の樹脂微粒子製造装置では、前記第2の吐出部は、前記液体を前記分散液の液滴に付与するように構成されていることが好ましい。
これにより、凝集体に熱硬化性樹脂をより均一に含ませることができる。その結果、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。
本発明の樹脂微粒子製造装置では、前記第2の吐出部は、前記液体を前記凝集体に付与するように構成されていることが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂をより確実に凝集体の表面近傍に存在させることができる。その結果、接合体同士の接合をより確実に防止することができる。
【0025】
本発明の樹脂微粒子は、本発明の製造装置によって製造されたことを特徴とする樹脂微粒子。
これにより、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さい樹脂微粒子を得ることができる。
本発明の樹脂微粒子製造用分散液は、樹脂微粒子の製造に用いる分散液であって、熱硬化性樹脂以外の樹脂を主材料として構成された分散質が分散媒中に微分散しているとともに、熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする。
これにより、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さい樹脂微粒子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子製造装置、樹脂微粒子、樹脂微粒子製造用分散液の好適な実施形態を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の樹脂微粒子製造装置の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の樹脂微粒子製造装置の第1実施形態を模式的に示す縦断面図、図2は、図1に示す樹脂微粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0027】
[樹脂微粒子製造装置]
まず、本発明の樹脂微粒子製造装置を添付図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明の樹脂微粒子製造装置をトナー製造装置に適用すると、特に、良好な帯電特性および転写効率を有するトナーを得ることができる。したがって、以下の説明では、本発明の樹脂微粒子製造装置をトナー製造装置に適用した場合について説明する。
【0028】
トナー製造装置1は、本発明の樹脂微粒子の製造方法に用いられる装置である。このトナー製造装置1は、分散液6(特に、脱気処理を施した分散液6)を粒状に吐出するヘッド部2と、ヘッド部2に分散液6を供給する分散液供給部4と、ヘッド部2から吐出された粒状の分散液6(分散液6の液滴)が搬送される搬送部3と、製造されたトナー粒子(樹脂微粒子)9を回収する回収部5とを有している。
【0029】
分散液供給部4には、分散液6が蓄えられており、当該分散液6は、ヘッド部2に送り込まれる。この分散液6は、熱硬化性樹脂以外の樹脂材料を主材料として構成された第1の分散質61と、熱硬化性樹脂を主材料として構成された第2の分散質62とが分散媒63中に微分散してなるものである。なお、分散液6については、後で詳述する。
分散液供給部4は、ヘッド部2に分散液6を供給する機能を有するものであればよいが、本実施形態では、図示のように、分散液6を攪拌する攪拌手段41を有している。これにより、例えば、第1の分散質61が分散媒中に分散しにくいものであっても、第1の分散質61が十分均一に分散した状態の分散液6を、ヘッド部2内に供給することができる。
【0030】
ヘッド部2は、図2に示すように、分散液貯留部21と、圧電素子22と、吐出部23とを有している。
分散液貯留部21には、後述するような分散液6が貯留されている。
分散液貯留部21に貯留された分散液6は、圧電素子22の圧力パルスにより、吐出部23から搬送部3に吐出される。
【0031】
吐出部23の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。これにより、分散液6の吐出部23での目詰まりをより確実に防止することができる。
吐出部23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、5〜500μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。これにより、吐出部23の目詰まり等を防止しつつ、吐出部23から吐出される液滴の形状安定性をより優れたものとすることができる。これに対し、吐出部23の直径が前記下限値未満であると、所望の大きさのトナー粒子9を得るためには、分散液6中に占めるトナーの構成成分の含有率を高くしなければならなくなる。その結果、分散液6の組成等によっては、分散液6の粘度が高くなり、液滴状の分散液6を吐出するのが困難になる場合がある。また、吐出部23の直径が前記上限値を超えると、分散液6の粘度等によっては、吐出される液滴状の分散液6の形状の安定性が低下し、最終的に得られるトナー粒子9も形状のバラツキが大きくなる。吐出部23の開口面積が前記上限値を超えると、分散液貯留部21の負圧と、ノズルの表面張力との力関係によっては、吐出される分散液6が気泡を抱き込んでしまう可能性がある。
【0032】
また、ヘッド部2の吐出部23付近(特に、吐出部23の開口内面や、ヘッド部2の吐出部23が設けられている側の面(図中の下側の面))は、分散液6に対し撥液性を有するのが好ましい。これにより、分散液6が吐出部付近に付着するのを効果的に防止することができる。その結果、いわゆる、液切れの悪い状態になったり、分散液6の吐出不良が発生するのを効果的に防止することができる。また、吐出部23付近への分散液6の付着が効果的に防止されることにより、吐出される液滴の形状の安定性が向上し(各液滴間での形状、大きさのバラツキが小さくなり)、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのバラツキも小さくなる。
このような撥液処理は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、シリコーン系樹脂等の撥液性材料を塗布すること、撥液性を有するように微細凹凸加工を施すことなどにより施すことができる。なお、ヘッド部2の吐出部23付近を撥液性材料を主材料として構成してもよい。
【0033】
また、ヘッド部2の吐出部23付近(特に、吐出部23の開口内面や、ヘッド部2の吐出部23が設けられている側の面(図中の下側の面))は、疎水化処理が施されているのが好ましい。これにより、例えば、分散液6の分散媒63が主として水で構成されたものである場合に、上記のような撥液性をより好適に発揮することができ、上記のような効果がより顕著なものとして現れる。疎水化処理の方法としては、例えば、疎水性材料(例えば、前述した撥液性を有する材料)で構成された被膜の形成等、上述の撥液性処理と同様のものが挙げられる。ところで、水は、各種液体の中でも比較的高い粘性を有するものであるが、このような水を分散媒63の構成材料として用いても、分散液6が吐出部付近に付着すること等による不都合の発生が効果的に防止される。したがって、ヘッド部2の吐出部23付近に疎水化処理が施されていると、有機溶媒を実質的に含まない、または、ほとんど含まない分散液6を好適に用いることができ、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。
【0034】
図2に示すように、圧電素子22は、下部電極(第1の電極)221、圧電体222および上部電極(第2の電極)223が、この順で積層されて構成されている。換言すれば、圧電素子22は、上部電極223と下部電極221との間に、圧電体222が介挿された構成とされている。
この圧電素子22は、振動源として機能するものであり、振動板24は、圧電素子(振動源)22の振動により振動し、分散液貯留部21の内部圧力を瞬間的に高める機能を有するものである。
【0035】
ヘッド部2は、圧電素子駆動回路(図示せず)から所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子22の下部電極221と上部電極223との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体222に変形が生じない。このため、振動板24にも変形が生じず、分散液貯留部21には容積変化が生じない。したがって、吐出部23から分散液6は吐出されない。
【0036】
一方、圧電素子駆動回路から所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子22の下部電極221と上部電極223との間に所定の電圧が印加された状態では、圧電体222に変形が生じる。これにより、振動板24が大きくたわみ(図2中下方にたわみ)、分散液貯留部21の容積の減少(変化)が生じる。このとき、分散液貯留部21内の圧力が瞬間的に高まり、吐出部23から粒状の分散液6(分散液6の液滴)が吐出される。
【0037】
1回の分散液6の吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極221と上部電極223との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子22は、ほぼ元の形状に戻り、分散液貯留部21の容積が増大する。なお、このとき、分散液6には、分散液供給部4から吐出部23へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気が吐出部23から分散液貯留部21へ入り込むことが防止され、分散液6の吐出量に見合った量の分散液6が分散液供給部4から分散液貯留部21へ供給される。
【0038】
上記のような電圧の印加を所定の周期で行うことにより、圧電素子22が振動し、粒状の分散液6(分散液6の液滴)が繰り返し吐出される。
このように、分散液6の吐出(噴射)を、圧電体222の振動による圧力パルスで行うことにより、分散液6を一滴ずつ間欠的に吐出することができ、また、吐出される分散液6の形状が安定する。その結果、各粒子(各トナー粒子)間での形状、大きさのバラツキの小さい樹脂微粒子(トナー)を得ることができる。
【0039】
また、上記のようにして分散液を吐出(噴射)することにより、圧電体の振動数、吐出部の開口面積(ノズル径)、分散液の温度・粘度、分散液の一滴分の吐出量、分散液中に占める分散質の含有率、分散液中における分散質の粒径等を比較的正確にコントロールすることができ、製造すべきトナーを所望の形状、大きさに制御することが容易にできる。また、これらの条件等をコントロールすることにより、例えば、トナーの製造量等を容易かつ確実に管理することができる。
【0040】
また、分散液の吐出に圧電体の振動を用いることにより、より確実に分散液を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される分散液の液滴同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、異形状の粉末の形成をより効果的に防止することができる。
ヘッド部2から搬送部3に吐出される分散液6の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。分散液6の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、分散液6の初速度が前記上限値を超えると、得られるトナー粒子9の形状のばらつきが大きくなる傾向を示す。
【0041】
また、ヘッド部2から吐出される分散液6の粘度は、特に限定されないが、例えば、0.5〜200[mPa・s]であるのが好ましく、1〜25[mPa・s]であるのがより好ましい。分散液6の粘度が前記下限値未満であると、吐出される粒子(分散液6の液滴)の大きさを十分に制御するのが困難となり、得られるトナー粒子9のバラツキが大きくなる場合がある。一方、分散液6の粘度が前記上限値を超えると、形成される粒子の径が大きくなり、分散液6の吐出速度が遅くなるとともに、分散液6の吐出に要するエネルギー量も大きくなる傾向を示す。また、分散液6の粘度が特に大きい場合には、分散液6を液滴として吐出できなくなる。
【0042】
また、分散液6の一滴分の吐出量は、分散液6中に占める第1の分散質61、62の含有率等により若干異なるが、0.05〜500plであるのが好ましく、0.5〜5plであるのがより好ましい。分散液6の一滴分の吐出量をこのような範囲の値にすることにより、トナー粒子9を適度な粒径のものにすることができる。
ところで、ヘッド部2から吐出される分散液6の液滴は、一般に、分散液6中の第1の分散質61、62に比べて十分に大きいものである。すなわち、分散液6の液滴中には、多数個の第1の分散質61が分散した状態となっている。このため、第1の分散質61の粒径のバラツキが比較的大きいものであっても、吐出される分散液6の液滴中に占める第1の分散質61、62の割合は、各液滴でほぼ均一である。したがって、第1の分散質61、62の粒径のバラツキが比較的大きい場合であっても、分散液6の吐出量をほぼ均一とすることにより、トナー粒子9は粒径のバラツキの小さいものとなる。このような傾向は、より顕著なものとなる。例えば、吐出される分散液6の平均粒径をDd[μm]、分散液6中における第1の分散質61の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足するのが好ましく、Dm/Dd<0.2の関係を満足するのがより好ましい。
【0043】
また、吐出される分散液6の平均粒径をDd[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足するのが好ましく、0.1≦Dt/Dd≦0.8の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、十分に微細で、かつ、粒度分布がシャープなトナー粒子9を比較的容易に得ることができる。
【0044】
圧電素子22の振動数は、特に限定されないが、1kHz〜500MHzであるのが好ましく、5kHz〜200MHzであるのがより好ましい。圧電素子22の振動数が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、圧電素子22の振動数が前記上限値を超えると、分散液6の液滴の吐出が追随できなくなり、分散液6一滴分の大きさのバラツキが大きくなる可能性がある。
図示の構成のトナー製造装置1は、ヘッド部2を複数個有している。そして、これらのヘッド部2から、それぞれ、分散液6の液滴が搬送部3に吐出される。
【0045】
本実施形態では、吐出部23(ヘッド部2)から吐出された分散液6の液滴が、後述する分散媒除去領域32での分散媒除去工程に供される際に、熱硬化性樹脂以外の樹脂を主材料として構成されている第1の分散質61と、熱硬化性樹脂を主材料として構成されている第2の分散質62とが分散媒63中に微分散している。
これにより、熱硬化性樹脂を凝集体6’の表面近傍に点在させた状態とすることができるので、得られるトナー粒子9(接合体)同士の接合をより確実に防止することができるとともに、得られるトナー粒子9(樹脂微粒子)において、熱硬化性樹脂以外の樹脂材料、すなわち分散質61を構成する樹脂材料の特性を十分に発揮させることができる。
【0046】
各ヘッド部2は、ほぼ同時に分散液6を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、分散液6の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部2から吐出された分散液6の液滴が固化する前に、粒状の分散液が衝突し、凝集するのをより効果的に防止することができる。
また、図2に示すように、トナー製造装置1は、ガス流供給手段10を有しており、このガス流供給手段10から供給されたガスが、ダクト101を介して、ヘッド部2−ヘッド部2間に設けられた各ガス噴射口7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部23から間欠的に吐出された分散液6の液滴の間隔を保ちつつ、分散液6を搬送し、固化させることができる。その結果、吐出される分散液6の液滴同士の衝突、凝集がより効果的に防止される。
【0047】
また、ガス流供給手段10から供給されたガスをガス噴射口7から噴射することにより、搬送部3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、搬送部3内の分散液6の液滴(トナー粒子9)をより効率良く搬送することができる。
また、ガス噴射口7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部2から吐出される粒子の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各粒子間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
【0048】
また、ガス流供給手段10には、熱交換器11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができ、搬送部3に吐出された分散液6の液滴を効率良く固化させることができる。
また、このようなガス流供給手段10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部23から吐出された分散液6の固化速度等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0049】
ガス噴射口7から噴射されるガスの温度は、分散液6中に含まれる第1の分散質61、第2の分散質62、分散媒63の組成等により異なるが、通常、0〜70℃であるのが好ましく、15〜60℃であるのがより好ましい。ガス噴射口7から噴射されるガスの温度がこのような範囲の値であると、得られる凝集体6’の形状の均一性、安定性を十分に高いものとしつつ、分散液6中に含まれる分散媒63を効率良く除去することができ、結果として、トナーの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0050】
また、ガス噴射口7から噴射されるガスの湿度は、例えば、50%RH以下であるのが好ましく、30%RH以下であるのがより好ましい。ガス噴射口7から噴射されるガスの湿度が50%RH以下であると、後述する搬送部3において、分散液6に含まれる分散媒63を効率良く除去することが可能となり、凝集体6’(トナー)の生産性がさらに向上する。
【0051】
搬送部3は、筒状のハウジング31により構成されている。
そして、搬送部3は、ハウジング31の内部空間に、図1に示すように、上方から下方に順次、吐出部23から吐出された分散液6の液滴を凝集体6’とするための分散媒除去領域32、凝集体6’中の第2の分散質62由来の熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化領域33、凝集体6’中の第1の分散質61由来の微粒子同士を溶融接合するための接合領域34が形成されている。
分散媒除去領域32は、吐出部23から吐出された分散液6の液滴から分散媒63を除去し、第1の分散質61由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体6’を得る分散媒除去工程を行うためのものである。例えば、分散媒除去領域32は、分散液6の液滴から分散媒63を除去するように、雰囲気の温度、気圧等の条件が設定されている。
【0052】
本実施形態では、分散媒除去工程に供される分散液6の液滴は、熱硬化性樹脂以外の樹脂を主材料として構成されている第1の分散質61と、熱硬化性樹脂を主材料として構成されている第2の分散質62とが分散媒63中に微分散している。これにより、熱硬化性樹脂を凝集体6’の表面近傍に点在させた状態とすることができるので、トナー粒子9(接合体)同士の接合をより確実に防止することができるとともに、得られるトナー粒子9(樹脂微粒子)において、熱硬化性樹脂以外の樹脂材料(結着樹脂等)の特性を十分に発揮させることができる。
なお、この分散媒除去領域32では、分散媒63は、吐出された分散液6の液滴から大部分が除去されていればよく、完全に除去されていなくともよい。すなわち、凝集体6’内に分散媒63が残存していてもよい。例えば、熱硬化性樹脂が分散媒63中に溶けている場合に、熱硬化性樹脂を凝集体6’中に残存させることができる。
【0053】
分散媒除去領域32の雰囲気温度は、分散液6の液滴から分散媒63を除去できればよく、特に限定されないが、具体的には、分散媒63の組成等によって異なり、特に分散媒63として水を含むものを用いた場合には、30〜150℃であるのが好ましく、50〜80℃であるのがより好ましい。分散媒除去領域32の雰囲気温度が前記下限値未満であると、分散液6の組成等によっては、分散液6から分散媒63を十分に除去するのが困難となる場合がある。一方、分散媒除去領域32の雰囲気温度が前記上限値を超えると、分散液6の組成等によっては、急激に分散媒63が除去され、結果として、得られるトナー粒子の内部に空洞が生じてしまう可能性がある。
【0054】
分散媒除去領域32での分散媒除去工程では、熱硬化性樹脂が硬化しないような温度のもとで、分散液6から分散媒63の除去を行うのが好ましい。これにより、分散媒除去工程にて、熱硬化性樹脂の硬化を防止して、分散液6の液滴から分散媒63をより円滑に除去し、凝集度および円形度のより高い凝集体6’を得ることができる。
硬化領域33は、凝集体6’を加熱することにより、凝集体6’中の熱硬化性樹脂を硬化させる硬化工程を行うためのものである。
【0055】
この硬化領域33に対応するハウジンク31の側壁には、図1に示すように、第1の加熱手段331が設けられている。この第1の加熱手段341は、凝集体6’に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させるように硬化領域33の雰囲気を加熱する。すなわち、第1の加熱手段341は、前記熱硬化性樹脂をその硬化温度以上に加熱する。
硬化領域33の雰囲気温度は、前記熱硬化性樹脂を硬化可能な温度であればよく、特に限定されないが、一般に、前述した分散媒除去領域32の雰囲気温度よりも高く、かつ、接合領域34の雰囲気温度よりも低い温度である。
【0056】
特に、硬化領域33の雰囲気温度は、接合領域34の雰囲気温度よりも低いのが好ましい。これにより、硬化領域33での硬化工程にて、第1の分散質61由来の微粒子を溶融させずに、凝集体6’同士の接合を防止しつつ、第2の分散質62由来の熱硬化性樹脂を硬化させることができ、その結果、得られるトナー粒子9は、より均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅がより小さいものとなる。
【0057】
また、硬化領域33の雰囲気温度の具体的な値は、特に限定されないが、硬化領域33における硬化工程(硬化処理)の処理時間が後述するような範囲内の値である場合、通常、30〜150℃であるのが好ましく、50〜130℃であるのがより好ましい。このような関係を満足することにより、第1の分散質61由来の微粒子の劣化、変性を十分に防止しつつ、第2の分散質62由来の熱硬化性樹脂を効率よく硬化させることができる。
【0058】
上記のような硬化工程(硬化処理)の処理時間は、特に限定されないが、硬化工程(硬化処理)の処理温度が前述したような範囲内の値である場合、0.01〜10秒であるのが好ましく、0.05〜10秒であるのがより好ましく、0.1〜5秒であるのがさらに好ましい。硬化工程の処理時間がこのような範囲内の値であると、第1の分散質61由来の微粒子の劣化、変性を十分に防止しつつ、第2の分散質62由来の熱硬化性樹脂を効率よく硬化させることができる。
【0059】
なお、硬化領域33を通過した後の凝集体6’、すなわち硬化工程に供された後の凝集体6’は、含まれる熱硬化性樹脂の全てが硬化していなくともよく、少なくとも一部(特に表面近傍)が硬化していればよい。また、後述する接合工程の後に、すなわち、最終的なトナー粒子9中に未硬化の熱硬化性樹脂が含まれていてもよい。
また、硬化領域33は、加熱された雰囲気により凝集体6’を加熱するのではなく、マイクロウエーブ等を用いて凝集体6’(熱硬化性樹脂)を直接的に加熱するようになっていていてもよい。
【0060】
接合領域34は、凝集体6’中の熱硬化性樹脂が硬化した状態で、凝集体6’を構成する第1の分散質61由来の複数個の微粒子同士を溶融接合して、トナー粒子9(接合体)を得る接合工程を行うためのものである。
この接合領域34に対応するハウジング31の側壁には、図1に示すように、第2の加熱手段341が設けられている。この第2の加熱手段341は、前記複数個の樹脂微粒子同士を溶融接合させるように接合領域34の雰囲気を加熱する。
【0061】
接合領域34の雰囲気温度は、凝集体6’を構成する第1の分散質61由来の複数個の微粒子同士を溶融接合可能な温度であればよく、特に限定されないが、一般に、前述した分散媒除去領域32や硬化領域33の雰囲気温度よりも高い温度である。これにより、容易かつ確実に、凝集体6’を構成する複数個の微粒子の溶融接合を進行させることができる。
言い換えすれば、硬化工程における加熱温度は、接合工程における加熱温度よりも低いのが好ましい。これにより、硬化工程にて、微粒子を溶融させずに、凝集体6’同士の接合を防止しつつ、熱硬化性樹脂を硬化させることができ、その結果、得られるトナー粒子9は、より均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅がより小さいものとなる。また、微粒子の溶融接合を、より円滑に進行させることができる。また、凝集体6’中に比較的多量の分散媒63等が含まれる場合であっても、分散媒等の含有量(残存量)を効果的に低減させることができ、さらには、最終的なトナー粒子中に実質的に分散媒等が残存しないようにすることができる。
【0062】
より具体的には、分散媒除去領域32の雰囲気温度をT[℃]、接合領域34の雰囲気温度をT[℃]としたとき、0≦T−T≦200の関係を満足するのが好ましく、10≦T−T≦200の関係を満足するのがより好ましく、20≦T−T≦100の関係を満足するのがさらに好ましく、25≦T−T≦80の関係を満足するのが最も好ましい。このような関係を満足することにより、構成成分の劣化、変性を十分に防止しつつ、得られるトナー粒子の形状の均一性、安定性を十分に高いものとし、さらに、トナー粒子の円形度を比較的大きいものとすることができる。
【0063】
また、接合領域34の雰囲気温度をT[℃]、前記樹脂粒子を構成する樹脂材料(第1の分散質61を構成する樹脂材料)の融点をT[℃]としたとき、−100≦T−T≦110の関係を満足するのが好ましく、−80≦T−T≦80の関係を満足するのがより好ましく、−50≦T−T≦70の関係を満足するのがさらに好ましく、−40≦T−T≦50の関係を満足するのが最も好ましい。このような関係を満足することにより、構成成分の劣化、変性を十分に防止しつつ、得られるトナー粒子の形状の均一性、安定性を十分に高いものとし、さらに、トナー粒子の円形度を比較的大きいものとすることができる。なお、樹脂粒子を構成する樹脂材料(第1の分散質61を構成する樹脂材料)が複数種の樹脂材料(樹脂成分)で構成されたものである場合、Tとして、これらの各成分の重量基準の加重平均値として求められる値を採用することができる。
【0064】
また、接合領域34の雰囲気温度の具体的な値は、特に限定されないが、接合領域34における接合工程(接合処理)の処理時間が後述するような範囲内の値である場合、通常、50〜200℃であるのが好ましく、60〜150℃であるのがより好ましい。このような関係を満足することにより、構成成分の劣化、変性を十分に防止しつつ、得られるトナー粒子の形状の均一性、安定性を十分に高いものとし、さらに、トナー粒子の円形度を比較的大きいものとすることができる。
【0065】
上記のような接合工程(接合処理)の処理時間は、特に限定されないが、接合工程(接合処理)の処理温度が前述したような範囲内の値である場合、0.01〜20秒であるのが好ましく、0.05〜20秒であるのがより好ましく、0.1〜15秒であるのがさらに好ましい。接合工程の処理時間がこのような範囲内の値であると、トナーの構成材料の劣化、変性等を十分に防止しつつ、トナー粒子の円形度を十分に大きいものとすることができる。
【0066】
また、ハウジング31の内壁面の少なくとも一部には、前述したヘッド部2の吐出部23付近と同様に、疎水化処理(撥水化処理)が施されているのが好ましい。これにより、例えば、分散液6の分散媒63が主として水で構成されたものである場合に、上記のような撥液性をより好適に発揮することができ、上記のような効果がより顕著なものとして現れる。疎水化処理の方法としては、例えば、疎水性材料(例えば、前述した撥液性を有する材料)で構成された被膜の形成等と同様のものが挙げられる。
また、ハウジング31には、電圧を印加するための電圧印加手段8が接続されている。電圧印加手段8で、ハウジング31の内面側に、分散液6の液滴(凝集体6’やトナー粒子9)と同じ極性の電圧を印加することにより、これにより、以下のような効果が得られる。
【0067】
通常、トナー粒子は、正または負に帯電している。このため、トナー粒子と異なる極性に帯電した帯電物があると、トナー粒子は、当該帯電物に、静電的に引き付けられ付着するという現象が起こる。一方、トナー粒子と同じ極性に帯電した帯電物があると、当該帯電物とトナー粒子とは、互いに反発しあい、前記帯電物表面にトナーが付着するという現象を効果的に防止することができる。したがって、ハウジング31の内面側に、分散液6の液滴(凝集体6’やトナー粒子9)と同じ極性の電圧を印加することにより、ハウジング31の内面に分散液6(凝集体6’やトナー粒子9)が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、得られる接合体、すなわちトナー粒子9(樹脂微粒子)の粒径のばらつきをより小さいものとすることができるとともに、トナー粒子9の回収効率も向上する。特に、前述した撥液処理(疎水化処理)と併用することにより、その効果をより高いものとすることができる。
また、図示の構成では、トナー製造装置1は、吸気手段12を有している。この吸気手段12により、搬送部3内に、ガスの流れを形成することができる。これにより、搬送部3において、微粒子化した分散液6(トナー粒子9)を円滑に搬送することができる。
【0068】
図示の構成では、吸気手段12は、接続管121でハウジング31に接続されている。また、接続管121のハウジング31と接続する端部付近には、その内径が拡大した拡径部122が形成されており、さらに、トナー粒子9等の吸い込みを防止するためのフィルター123が設けられている。
以上のように説明したトナー製造装置1では、分散液6を吐出部23から熱硬化性樹脂を含んだ状態で粒状に吐出し、吐出部23から吐出された分散液6の液滴を搬送部3で搬送させる。搬送部3では、分散媒除去領域32にて、前記分散液6の液滴から分散媒63を除去し、第1の分散質61由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体6’を得る(分散媒除去工程)。そして、硬化領域33にて、凝集体6’を加熱することにより、第2の分散質62由来の熱硬化性樹脂を硬化させる(硬化工程)。その後、接合領域34にて、前記熱硬化性樹脂が硬化した状態で、凝集体6’を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体、すなわちトナー粒子9を得る(接合工程)。このトナー粒子9は、回収部5で回収される。
【0069】
これにより、接合領域34における接合工程にて、樹脂材料を主材料として構成された第1の分散質61由来の微粒子同士が溶融接合するに際して、硬化した熱硬化性樹脂が溶融せずに凝集体6’同士の間に介在するため、トナー粒子9(接合体)同士の接合を防止することができる。その結果、得られるトナー粒子9(樹脂微粒子)は、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さいものとなる。
また、凝集体6’がトナー粒子9(接合体)となるに際して、硬化した熱硬化性樹脂により凝集体6’の形状が維持されるため、トナー粒子9(接合体)の不本意な変形を防止することができ、この点でも、得られるトナー粒子9(樹脂微粒子)の形状の均一化を図ることができる。
【0070】
特に、本実施形態では、分散液6が第1の分散質61および第2の分散質62を含んでおり、分散液6を熱硬化性樹脂を含んだ状態で吐出部23から粒状に吐出するので、凝集体6’に含まれる熱硬化性樹脂の量を、各凝集体6’間でより均一にすることができ、その結果、接合領域34における接合工程にて、トナー粒子9(接合体)同士の接合をより確実に防止することができる。
また、得られるトナー粒子9は、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さいものとなるので、帯電特性および転写特性に優れたものとなる。
【0071】
分散液6中に含まれる第1の分散質61の粒径は、通常、得られるトナー粒子9(吐出される分散液6の液滴)に比べて、十分に小さいものである。
また、分散媒63を除去してトナー粒子9を得る場合、通常、吐出部23から吐出される分散液6に比べて、得られるトナー粒子9は小さいものとなる。このため、吐出部23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、得られるトナー粒子9の大きさを比較的小さいものとすることができる。したがって、本発明では、ヘッド部2が、特別な精密加工を施すことにより得られたものでなくても(比較的容易に製造できるものであっても)、十分に微細なトナー粒子9を得ることができる。
また、上記のように、吐出部23の面積を極端に小さくする必要がないので、比較的容易に、各ヘッド部2から吐出される分散液6の粒度分布を、十分にシャープなものとすることができる。その結果、トナー粒子9も、粒径のバラツキの小さいもの、すなわち、粒度分布がシャープなものとなる。
【0072】
なお、上記の説明では、搬送部3において、分散媒除去工程、硬化工程、接合工程を順次行ってトナー粒子9が得られるものとして説明したが、トナー粒子は、このようにして得られるものに限定されない。例えば、硬化工程、接合工程は、搬送部3で行わずに、トナー製造装置1の外部で別途行ってもよい。すなわち、搬送部3の硬化領域33、接合領域34を省略したトナー製造装置から凝集体6’を取り出し、これに、硬化工程、接合工程を順次行ってもよい。
【0073】
また、第1の分散質61中に樹脂材料の前駆体(例えば、前記樹脂材料に対応するモノマー、ダイマー、オリゴマー等)が含まれる場合、搬送部3において重合反応を進行させることにより、トナー粒子9を得るような方法であってもよい。
以上のようにして得られたトナーに対しては、必要に応じて、熱処理等の各種処理を施してもよい。これにより、トナー粒子9を構成する分散質由来の微粒子の接合を進行させ、トナー粒子9の機械的強度(機械的安定性)をさらに優れたものとすることができる。
【0074】
また、上記のようなトナーに対しては、必要に応じて、分級処理、外添処理等の各種処理を施してもよい。
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
また、外添処理に用いられる外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩等の有機材料で構成された微粒子やこれらの複合物で構成された微粒子等が挙げられる。
【0075】
また、外添剤としては、上記のような微粒子の表面に、HMDS、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
以上のようにして製造される本発明のトナーは、均一な形状を有し、粒度分布のシャープな(幅の小さい)ものである。
【0076】
具体的には、トナー(トナー粒子)は、下記式(I)で表される平均円形度Rが0.96以上であるのが好ましく、0.97以上であるのがより好ましく、0.98以上であるのがさらに好ましい。これにより、得られるトナー粒子9は、優れた帯電特性および転写特性を有するものとすることができ。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
また、トナーは、各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.015以下であるのが好ましく、0.01以下であるのがより好ましい。各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.015以下であると、帯電特性、定着特性等のバラツキが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
【0077】
以上のようにして得られるトナーの重量基準の平均粒径は、2〜20μmであるのが好ましく、4〜10μmであるのがより好ましい。トナーの平均粒径が前記下限値未満であると、均一に帯電させるのが困難になるとともに、静電潜像担持体(例えば、感光体等)表面への付着力が大きくなり、結果として、転写残トナーの増加を招く場合がある。一方、トナーの平均粒径が前記上限値を超えると、トナーを用いて形成される画像の輪郭部分、特に文字画像やライトパターンの現像での再現性が低下する傾向を示す。
また、トナーは、各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であるのが好ましく、1.3μm以下であるのがより好ましく、1.0μm以下であるのがさらに好ましい。各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であると、帯電特性、定着特性等のバラツキが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
【0078】
[分散液]
ここで、前述した樹脂微粒子製造装置に用いる分散液6について詳細に説明する。
本発明の樹脂微粒子は、分散液6を用いて製造されるものである。なお、以下の説明では、本発明の樹脂微粒子をトナーに適用した場合について説明する。
分散液としては、例えば、懸濁液(サスペンション)や乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)等が挙げられる。なお、本明細書中において、「懸濁液」とは、液状の分散媒中に、固体(固形)の分散質(懸濁粒子)が分散した分散液(懸濁コロイドを含む)のことを指し、「乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)」とは、液状の分散媒中に、液状の分散質(分散粒子)が分散した分散液のことを指す。また、分散液中には、固体状の分散質と、液状の分散質とが併存していてもよい。このような場合、分散液中における分散質のうち、固体状の分散質の占める割合が液状の分散質の占める割合よりも大きいものを懸濁液といい、液状の分散質の占める割合が固体状の分散質の占める割合よりも大きいものを乳化液という。また、特に、本発明で用いる分散液は脱気処理が施されたものであるのが好ましい。脱気処理については、後に詳述する。
【0079】
分散液6は、上述したように、熱硬化性樹脂以外の樹脂材料を主材料として構成された第1の分散質61と、熱硬化性樹脂を主材料として構成された第2の分散質62とが分散媒63中に微分散している。言い換えすれば、分散液6は、熱硬化性樹脂以外の樹脂を主材料として構成された第1の分散質61が分散媒63中に微分散しているとともに、第2の分散質62として熱硬化性樹脂を含んでいる。
これにより、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さいトナー粒子9(樹脂微粒子)を得ることができる。
【0080】
<分散媒>
分散媒63は、後述する第1の分散質61や第2の分散質62を分散可能なものであればいかなるものであってもよいが、主として、一般に溶媒として用いられているような材料(以下、「溶媒材料」ともいう)で構成されたものであるのが好ましい。
【0081】
このような材料としては、例えば、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0082】
上記の材料の中でも、分散媒63としては、主として水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたものであるのが好ましい。これにより、例えば、分散媒63中における第1の分散質61および第2の分散質62の分散性を高めることができ、分散液6中における第1の分散質61を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのバラツキの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナー粒子9は、粒子間での大きさ、形状のバラツキが小さくなる。また、特に、分散媒63が、水で構成されたものであると、例えば、トナーの製造工程において、実質的に有機溶媒を揮発しないようにすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法、すなわち、環境に優しい方法でトナーを製造することができる。
【0083】
また、分散媒63の構成材料として複数の成分の混合物を用いる場合、分散媒の構成材料としては、前記混合物を構成する少なくとも2種の成分の間で、共沸混合物(最低沸点共沸混合物)を形成し得るものを用いるのが好ましい。これにより、後述するトナー製造装置の搬送部において、分散媒63を効率よく除去することが可能となる。また、後述するトナー製造装置の搬送部において、比較的低い温度で分散媒63を除去することが可能となり、得られるトナー粒子9の特性の劣化をより効果的に防止できる。例えば、水との間で、共沸混合物を形成し得る液体としては、二硫化炭素、四塩化炭素、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、アニソール、2−メトキシエタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン、アクリロニトリル、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、アクリルアルデヒド等が挙げられる。
【0084】
また、分散媒63の沸点は、特に限定されないが、180℃以下であるのが好ましく、150℃以下であるのがより好ましく、35〜130℃であるのがさらに好ましい。このように、分散媒63の沸点が比較的低いものであると、後述するトナー製造装置の搬送部において、分散媒63を比較的容易に除去することが可能となる。また、分散媒63としてこのような材料を用いることにより、最終的に得られるトナー粒子9中における分散媒63の残留量を特に少ないものにすることができる。その結果トナーとしての信頼性がさらに高まる。
なお、分散媒63中には、上述した材料以外の成分が含まれていてもよい。例えば、分散媒63中には、後に第1の分散質61や第2の分散質62の構成成分として例示する材料や、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等の各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0085】
<分散質>
(第1の分散質)
第1の分散質61は、通常、少なくとも、主成分としての樹脂またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む材料で構成されている。樹脂の前駆体としては、例えば、当該樹脂のモノマー、ダイマー、オリゴマー等が挙げられる。
以下、第1の分散質61の構成材料について説明する。
【0086】
1.樹脂(バインダー樹脂)
樹脂(バインダー樹脂)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、後述するトナー製造装置の搬送部において、第1の分散質61中の原料を重合反応させることによりトナーを製造する場合には、通常、上記の樹脂材料のモノマー、ダイマー、オリゴマー等を用いる。
第1の分散質61中における樹脂の含有量は、特に限定されないが、2〜98wt%であるのが好ましく、5〜95wt%であるのがより好ましい。
【0087】
2.溶媒
第1の分散質61中には、その成分の少なくとも一部を溶解する溶媒が含まれていてもよい。これにより、例えば、分散液6中における第1の分散質61の流動性を高めることができ、分散液6中における第1の分散質61を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのバラツキの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナー粒子9は、粒子間での大きさ、形状のバラツキが小さくなる。
【0088】
溶媒としては、第1の分散質61を構成する成分の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、後述するようなトナー製造装置の搬送部において、容易に除去されるものであるのが好ましい。
また、溶媒は、前述した分散媒63との相溶性が低いもの(例えば、25℃における分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、分散液6中において、第1の分散質61を安定した状態で微分散させることができる。
また、溶媒の組成は、例えば、前述した樹脂、着色剤の組成や、分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
【0089】
例えば、溶媒としては、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。この中でも特に、有機溶媒を含むものであるのが好ましく、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族複素環化合物系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化合物系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、アルデヒド系溶媒から選択される1種または2種以上を含むものであるのがより好ましい。このような溶媒を用いることにより、第1の分散質61中において、比較的容易に、前述したような各成分を十分均一に分散させることができる。
【0090】
また、分散液6中には、通常、着色剤が含まれている。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような着色剤は、通常、分散液6においては、第1の分散質61中に含まれる。
【0091】
分散液6中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、0.1〜10wt%であるのが好ましく、0.3〜3wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有量が前記下限値未満であると、着色剤の種類によっては、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。一方、着色剤の含有量が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナーの定着特性や帯電特性が低下する可能性がある。
【0092】
また、分散液6中には、ワックスが含まれていてもよい。ワックスは、通常、離型性を向上させる目的で用いられるものである。このようなワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、綿ロウ、木ロウ等の植物系ワックス・ロウ、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス・ロウ、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス・ロウ、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス・ロウ等の天然ワックス・ロウや、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス(ポリエチレン樹脂)、ポリプロピレンワックス(ポリプロピレン樹脂)、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス・ロウ等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ワックスとしては、さらに低分子量の結晶性高分子樹脂を使用してもよく、例えば、ポリn−ステアリルメタクリレート、ポリn−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等を使用することもできる。
【0093】
分散液6中におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、0.1〜10wt%であるのが好ましく、1〜5wt%であるのがより好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、最終的に得られるトナー粒子中において、ワックスが遊離、粗大化して、トナー粒子表面へのワックスのしみ出し等が顕著に起こり、トナーの転写効率が低下する傾向を示す。
ワックスの軟化点は、特に限定されないが、50〜180℃であるのが好ましく、60〜160℃であるのがより好ましい。
【0094】
(第2の分散質)
第2の分散質62は、熱硬化性樹脂を主材料として構成されている。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
また、熱硬化性樹脂には、必要に応じ、硬化剤などの他の成分が含まれていてもよい。
【0095】
第2の分散質62を構成する熱硬化性樹脂の硬化温度は、第1の分散質61を構成する樹脂材料、すなわち第1の分散質61由来の微粒子の溶融温度よりも低いのが好ましい。これにより、硬化工程にて、前記微粒子を溶融させずに、凝集体6’同士の接合を防止しつつ、熱硬化性樹脂を硬化させることができ、その結果、得られるトナー粒子9は、より均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅がより小さいものとなる。また、熱硬化性樹脂の硬化、前記微粒子同士の溶融接合をより確実に順次行うことができる。より具体的には、硬化領域33を接合領域34に重複または包含させて、硬化工程、接合工程を順次行うことができる。その結果、より短時間でトナーを製造することができる。
【0096】
このような場合、第2の分散質62を構成する熱硬化性樹脂の硬化温度がと、第1の分散質61を構成する樹脂材料の溶融温度との差は、0〜50℃であるのが好ましく、10〜40℃であるのがより好ましい。これにより、より確実に、硬化工程にて、前記微粒子を溶融させずに、凝集体6’同士の接合を防止しつつ、熱硬化性樹脂を硬化させることができる。
【0097】
なお、熱硬化性樹脂は、分散質62としてではなく、分散媒63として分散液6中に含まれていてもよい。すなわち、熱硬化性樹脂は水溶性であってもよい。この場合、熱硬化性樹脂が溶媒に溶解した液体を用いて、凝集体6’の表面を覆うように熱硬化性樹脂を存在させることができる。その結果、接合領域34における接合工程にて、トナー粒子9(接合体)同士の接合をより確実に防止することができる。この場合、分散媒63中に含まれる熱硬化性樹脂を、分散媒除去工程の後に、凝集体6’中に残存させる。このようにして得られる凝集体6’は、熱硬化性樹脂がネットワークを形成した状態で含まれる。これにより、得られるトナー粒子9(樹脂微粒子)は、より優れた機械的強度を有するものとなる。
また、分散質63には、前述した第2の分散質62と同様に、溶媒、着色剤、ワックス、後述する乳化分散剤、帯電制御剤、磁性粉末等の他の成分を含んでいてもよい。
【0098】
<他の成分>
分散液6中には、これら以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、乳化分散剤、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。この中でも、乳化分散剤を用いた場合、例えば、分散液6中における第1の分散質61の分散性を向上させることが可能となる。ここで、乳化分散剤としては、例えば、乳化剤、分散剤、分散助剤等が挙げられる。
【0099】
分散剤としては、例えば、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤等が挙げられる。この中でも、非イオン性有機分散剤またはアニオン性有機分散剤が特に好ましい。
【0100】
分散液6中における分散剤の含有量は、特に限定されないが、3.0wt%以下であるのが好ましく、0.01〜1.0wt%であるのがより好ましい。
また、分散助剤としては、例えば、アニオン、カチオン、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
分散助剤は、分散剤と併用するものであるのが好ましい。分散液6が分散剤を含むものである場合、分散液6中における分散助剤の含有量は、特に限定されないが、2.0wt%以下であるのが好ましく、0.005〜0.5wt%であるのがより好ましい。
【0101】
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフミン酸等が挙げられる。
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
【0102】
また、分散液6中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
また、分散液6中には、第1の分散質61以外の成分が、不溶分として分散していてもよい。例えば、分散液6中には、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等が分散していてもよい。
【0103】
樹脂微粒子がトナーである場合、分散液6中に占めるトナーの構成成分(固形成分)の含有率は、後述するヘッド部2の吐出部23の大きさ(開口面積)等により決定されるものであり、特に限定されないが、通常、1〜99vol%であるのが好ましく、2〜20vol%であるのがより好ましい。トナーの構成成分の含有率が前記範囲内の値であると、適度な大きさを有し、かつ、各粒子間での大きさ、形状のバラツキが特に小さいトナーを比較的容易に製造することができる。これに対し、トナーの構成成分の含有率が前記下限値未満であると、所望の大きさのトナー粒子9を得るためには、後述するようなトナー製造装置1において、比較的大きな液滴状の分散液6を吐出しなければならなくなる。その結果、分散液6の粘度等によっては、液滴状の分散液6の形状の安定性が低下し、最終的に得られるトナー粒子9も形状のバラツキが大きくなる。また、吐出された分散液6の固化に要するエネルギーも増大する。また、トナーの構成成分の含有率が前記上限値を超えると、分散液6の構成材料によっては、分散液6の粘度が大きくなりすぎる場合がある。その結果、前述したようなトナー製造装置1において、液滴状の分散液6を吐出するのが困難になる場合がある。また、トナーの構成成分の含有率が特に高い場合、吐出する液滴状の分散液6を小さいものとしなければならなくなり、上記のような傾向は特に顕著なものとなる。なお、ここでの「トナーの構成成分」は、最終的なトナーの構成成分そのものの他、当該成分の前駆体(例えば、最終的なトナーの構成成分のモノマー、ダイマー、オリゴマー等)も含む概念であり、最終的なトナーを構成するのに寄与している成分のことを指す。
以上のような成分構成で、分散液6は、第1の分散質61および第2の分散質62が分散媒63中に微分散した状態となっている。
【0104】
分散液6中における第1の分散質61および第2の分散質62のそれぞれの平均粒径は、特に限定されないが、0.05〜1.0μmであるのが好ましく、0.1〜0.8μmであるのがより好ましい。第1の分散質61および第2の分散質62の平均粒径がこのような範囲の値であると、最終的に得られるトナー粒子9は、各粒子間での特性、形状の均一性に優れたものとなる。
【0105】
また、分散液6において、第2の分散質62の平均粒径は、第1の分散質61の平均粒径よりも大きいのが好ましい。これにより、分散液6の液滴から分散媒63が除去される際に、第2の分散質62が粒状の分散媒63の表面近傍に偏在しやすくなるので、熱硬化性樹脂を凝集体6’の表面近傍に点在させつつ、熱硬化性樹脂をより確実に凝集体6’の表面近傍に存在(偏在)させることができる。その結果、トナー粒子9(接合体)同士の接合をさらに確実に防止することができるとともに、得られるトナー粒子9(樹脂微粒子)において、熱硬化性樹脂以外の樹脂材料、すなわち第1の分散質61を主として構成する樹脂の特性を十分に発揮させることができる。
【0106】
分散液6中における第1の分散質61および第2の分散質62のそれぞれの含有量は、特に限定されないが、1〜99wt%であるのが好ましく、2〜45wt%であるのがより好ましい。第1の分散質61の含有量が前記下限値未満であると、最終的に得られるトナー粒子9の形状のばらつきが大きくなる傾向を示す。一方、第1の分散質61の含有量が前記上限値を超えると、分散媒63の組成等によっては、分散液6の粘性が高くなり、最終的に得られるトナー粒子9の形状、大きさのバラツキが大きくなる傾向を示す。
【0107】
分散液6中においては、第1の分散質61および第2の分散質62は、固体状のものであってもよいし、液状のものであってもよいし、これらが併存していてもよい。すなわち、分散液6は懸濁液であってもよいし、乳化液であってもよい。
第1の分散質61が液状(例えば、溶液状態、溶融状態)のものである場合、分散媒63中に微分散した第1の分散質61の平均粒径を、比較的容易に、上記のような範囲の値にすることができる。また、第1の分散質61が液状のものである場合、各第1の分散質61間での形状、大きさのバラツキを特に小さいものとすることができるため、最終的に得られるトナーは、各トナー粒子9間での形状、大きさのバラツキが特に小さいものとなる。
【0108】
また、第1の分散質61が固体状のものである場合、最終的に得られるトナー中に溶媒等の不要成分が残存するのをより効果的に防止することができる。その結果、トナーの信頼性は特に優れたものとなる。また、第1の分散質61が固体状のものである場合、すなわち、分散液6が懸濁液である場合、例えば、分散液6としての懸濁液は、乳化液を経由して調製されたものであってもよい。これにより、上述したような、第1の分散質61が固体状のものである場合の利点を十分に発揮しつつ、第1の分散質61が液状のものである場合の利点も効果的に発揮される。
また、分散媒63中に分散している第1の分散質61は、例えば、各粒子間で、ほぼ同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、分散液6は、第1の分散質61として、主として樹脂材料で構成されたものと、主としてワックスで構成されたものとを含むようなものであってもよい。
また、分散液6が乳化液(エマルション)である場合、当該分散液6は、O/W型エマルション、すなわち、水性の分散媒63中に、油性(ここでは、水に対する溶解度が小さい液体のことを指す)の第1の分散質61が分散したものであるのが好ましい。これにより、各粒子間での形状、大きさのバラツキが小さいトナーを安定的に製造することができる。また、分散媒63に水性の液体を用いることにより、前述したようなトナー製造装置1の搬送部における有機溶媒の揮発量を少なく、または実質的に有機溶媒を揮発しないものとすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。
【0109】
また、分散液6中における第1の分散質61の平均粒径をDm[μm]、トナー粒子9の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足するのが好ましく、0.01≦Dm/Dt≦0.2の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、各粒子間での、形状、大きさのバラツキが特に小さいトナーを得ることができる。
【0110】
[分散液の製造方法]
以上説明したような分散液6は、例えば、以下のような方法(第1の方法)を用いて調製することができる。
まず、水または水との相溶性に優れる液体(水溶性の液体)に、必要に応じて分散剤および/または分散媒を添加した水性溶液を用意する。
一方、トナーの主成分となる樹脂(熱硬化性樹脂以外の樹脂)またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む樹脂液を調製する。樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料に加えて前述した溶媒を用いてもよい。また、樹脂液は、樹脂材料を加熱することにより得られる溶融した液体であってもよい。
【0111】
次に、上記樹脂液を、攪拌した状態の水性溶液中に、徐々に滴下しながら加えていくことにより、水性の分散媒63中に、樹脂材料を含む第1の分散質61が分散した第1の分散液が得られる。
上述と同様に、水性の分散媒63中に、熱硬化性樹脂を主材料として構成された第2の分散質62が分散した第2の分散液が得られる。
そして、第1の分散液および第2の分散液を混合することにより、分散液6を得ることができる。
【0112】
このような方法で、分散液6を調製することにより、分散液6中における第1の分散質61の円形度をさらに高めることができる。その結果、トナー粒子9は、各粒子間での形状のバラツキが特に小さいものとなる。なお、樹脂液の滴下を行う際、水性溶液および/または樹脂液を加熱してもよい。また、樹脂液の調製に溶媒を用いた場合、例えば、上記のような滴下を行った後に、得られた分散液6を加熱したり、減圧雰囲気下に置くこと等により、第1の分散質61や第2の分散質62中に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。例えば、第1の分散質61や第2の分散質62中に含まれる溶媒の大部分を除去することにより、分散液6を懸濁液として得ることができる。
【0113】
以上、分散液6の調製方法の一例について説明したが、分散液はこのような方法により調製されたものに限定されない。例えば、分散液6は、以下のような方法(第2の方法)によっても、調製することができる。
まず、水または水との相溶性に優れる液体に、必要に応じて分散剤および/または分散媒を添加した水性溶液を用意する。
一方、樹脂材料を含む、粉末状または粒状の材料を用意する。
次に、この粉末状または粒状の材料を、攪拌した状態の水性溶液中に、徐々に投入していくことにより、水性の分散媒63中に、樹脂材料を含む第1の分散質61が分散した第1の分散液が得られる。
【0114】
上述と同様に、水性の分散媒63中に、熱硬化性樹脂を主材料として構成された第2の分散質62が分散した第2の分散液が得られる。
そして、第1の分散液および第2の分散液を混合することにより、分散液6を得ることができる。
このような方法で、分散液6を調製した場合、前述したようなトナー製造装置1の搬送部において、実質的に有機溶媒を揮発しないようにすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。なお、前記材料を投入する際、例えば、水性溶液を加熱しておいてもよい。
【0115】
また、分散液6は、以下のような方法(第3の方法)によっても、調製することができる。
まず、少なくとも樹脂材料を分散してなる樹脂分散液と、少なくとも着色剤を分散してなる着色剤分散液とを調製する。
次に、樹脂分散液と、着色剤分散液とを混合・攪拌する。このとき、必要に応じて、攪拌しながら無機金属塩等の凝集剤を加えてもよい。
所定時間、攪拌することにより、樹脂材料、着色剤等が凝集した凝集体が形成される。その結果、前記凝集体が第1の分散質61として分散した第1の分散液が得られる。
【0116】
上述と同様に、水性の分散媒63中に、熱硬化性樹脂を主材料として構成された第2の分散質62が分散した第2の分散液が得られる。
そして、第1の分散液および第2の分散液を混合することにより、分散液6を得ることができる。
また、上記のような分散液の調製方法において、樹脂材料(結着樹脂)を含む混練物を用いてもよい。すなわち、上述した第1の方法、第3の方法での「樹脂材料」として、樹脂材料を含む混練物を用いてもよいし、第2の方法での「粉末状または粒状の材料」として、樹脂材料を含む混練物を用いてもよい。これにより、例えば、トナー粒子9を、各構成成分がより均一に混ざり合ったものとして得ることができる。特に、トナーの構成成分として、分散性、相溶性に劣る2種以上の成分を含む場合であっても、上記のような効果を得ることができる。なお、混練物としては、例えば、樹脂成分以外の成分(例えば、着色剤、ワックス、帯電制御剤等の成分)を含むものを用いることができる。これにより、上記のような効果はさらに顕著なものとなる。
【0117】
また、分散液6の調製には、例えば、特願2003−113428号明細書に記載された方法を適用してもよい。すなわち、粉末状または粒状の樹脂材料(混練物)を含む液体を複数のノズルから噴射させ、各ノズルから噴射した前記液体同士を衝突させて、前記樹脂材料(混練物)を微粒化させ、微粒化した第1の分散質61および第2の分散質62を含む分散液6を得る方法を適用してもよい。これにより、分散液6中に含まれる第1の分散質61の大きさを、容易に、比較的小さいもの(前述した範囲の大きさ)とすることができ、また、各第1の分散質61および第2の分散質62の大きさのバラツキを小さくすることができる。
【0118】
また、上記のような方法で得られた分散液6を、後述するトナー製造装置での吐出に供する前に、脱気処理を施す(脱気工程に供する)のが好ましい。これにより、分散液6中の気体の溶存量を低減させることができ、後述するトナー製造装置の搬送部において、液滴状に吐出された分散液6から分散媒63を除去する際に、当該分散液6中に気泡等が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られるトナー中に異形状のトナー粒子(中空粒子、欠落粒子等)が混入するのを効果的に防止することができる。したがって、各トナー粒子が均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを容易かつ確実に得ることができる。また、これにより、最終的に得られるトナーを、転写性、流動性、クリーニング性等の特性が特に優れたものとすることができる。また、分散液6に脱気処理を施すことにより、最終的に得られるトナー粒子中における空孔(空隙)の割合を小さいものとすることができる。その結果、トナーの信頼性はさらに向上する。
【0119】
脱気処理の方法は、特に限定されないが、例えば、分散液に超音波振動を与える方法(超音波振動法)や、分散液を減圧雰囲気中に置く方法(減圧法)等を用いることができる。
脱気処理の方法として減圧法を用いる場合、分散液が置かれる雰囲気の圧力は、80kPa以下であるのが好ましく、0.1〜40kPaであるのがより好ましく、1〜27kPaであるのがさらに好ましい。脱気処理時における雰囲気圧力がこのような範囲内の値であると、分散液6中における第1の分散質61の形状を十分に保持しつつ、溶存する気体を効率よく除去することができる。
【0120】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、本実施形態について、前述した実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態にかかるトナー製造装置の概略構成を示す図、図4は、図3に示すトナー製造装置に備えられたヘッド部2A、2Bの概略構成を示す図である。
【0121】
本実施形態のトナー製造装置1は、第1の分散質61と第2の分散質62とをそれぞれ別々の分散媒に分散させ、これらをそれぞれ別々の吐出部23から吐出するようになっている以外は、前述した第1実施形態と同様の構成となっている。
すなわち、図3に示すトナー製造装置1は、第1の分散質61を分散媒63に分散してなる第1の分散液6Aのための分散液供給部4と、第2の分散質62を分散媒64に分散してなる第2の分散液6Bのための分散液供給部4’を備え、これらは別々のヘッド部の吐出部に接続されている。より具体的には、分散液供給部4は、第1の吐出部23Aを有するヘッド部2Aに接続され、分散液供給部4’は、第1の吐出部23Bを有するヘッド部2Bに接続されている。
【0122】
すなわち、図3に示すトナー供給装置1は、第1の分散液6Aを粒状に吐出する第1の吐出部23Aと、第2の分散液6Bを粒状に吐出する第2の吐出部23Bとを有している。
したがって、搬送部3では、第1の吐出部23Aから吐出された分散液6Aの液滴と、第2の吐出部23Bから吐出された分散液6B(液体)の液滴とが搬送される。
【0123】
本実施形態では、ガス流供給手段10からのガスを噴射するガス噴射口7がヘッド部2Aとヘッド部2Bとの間に1つおきに設けられている。これにより、1つのヘッド部2Aと1つのヘッド部2Bとを組として、各組毎に、吐出された粒状の分散液の間隔を保ちつつ、分散液6を搬送し、固化させることができる。その結果、吐出される分散液6の液滴同士の衝突、凝集がより効果的に防止される。
【0124】
また、ガス噴射口7の出口付近は、その通路断面積が図4に示すように出口に向け漸増している。これにより、ヘッド部2Aの第1の吐出部23Aから吐出された分散液6Aの液滴と、ヘッド部2Bの第2の吐出部23Bから吐出された分散液6Bの液滴とを、組毎で効果的に衝突させて、分散液6の液滴を得ることができる。
このように、第2の吐出部23Bは、分散液6Bの液滴を分散液6Aの液滴に付与する熱硬化性付与工程を行うように構成されている。したがって、分散液6Bの液滴が分散液6Aの液滴に付与されることにより、分散液6の液滴を得る。これにより、凝集体6’に熱硬化性樹脂をより均一に含ませることができる。その結果、トナー粒子9同士の接合をより確実に防止することができる。
【0125】
なお、第2の吐出部23Bは、接合工程に先立ち、凝集体6’に熱硬化性樹脂を付与することができるものであれば、前述した形態に限定されない。
例えば、前述したようにガス噴射口7を構成しなくとも、分散液6Aの液滴と分散液6Bの液滴との間に電圧を印加することにより、これらを互いに引き付けて、衝突させるようにしてもよい。
また、第2の吐出部23Bは、分散液6Bの液滴を、分散液6Aの液滴が凝集した凝集体に付与するように構成されていてもよい。この場合、熱硬化性樹脂をより確実に凝集体6’の表面近傍に存在させることができる。その結果、トナー粒子9同士の接合をより確実に防止することができる。また、用いる熱硬化性樹脂の量が比較的少量で済むので、樹脂微粒子の製造にかかる材料費を低減することができる。
【0126】
また、第2の吐出部23Bは、搬送部3の側壁に設けられていてもよい。この場合、第一の吐出部23Aから吐出された分散液6A、または凝集体6’に対し、比較的簡単に、所望のタイミングで分散液6Bを付与することができる。
このように、本実施形態のトナー製造装置では、分散媒除去領域32にて、第1の吐出部23Aから吐出された分散液6Aの液滴から分散媒63を除去し、分散質61由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体6’を得る(分散媒除去工程)。そして、硬化領域33にて、第2の吐出部23Bから吐出された分散液6B中の熱硬化性樹脂を含む凝集体6’を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる(硬化工程)。その後、接合領域34にて、前記熱硬化性樹脂が硬化した状態で、凝集体6’を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合してトナー粒子9を得る(接合工程)。
【0127】
これにより、均一な形状を有するとともに、粒度分布の幅が小さいトナー粒子9(樹脂微粒子)を得ることができる。特に、第2の分散液6B、すなわち熱硬化性樹脂を含む液体を、第1の分散液6Aとは別々に吐出し、凝集体6’を熱硬化性樹脂を含んだ状態とするので、熱硬化性樹脂をより確実に凝集体6’の表面近傍に存在させることができる。その結果、接合工程にて、トナー粒子9(接合体)同士の接合をより確実に防止することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0128】
例えば、本発明のトナー製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、分散媒除去領域32と硬化領域33、または、硬化領域33と接合領域34が隣接した構成について説明したが、分散媒除去領域32または接合領域34は硬化領域33と離れていてもよい。
【0129】
また、これらの領域は、説明の便宜上図示したものであり、概念的なものである。したがって、本発明は、これらの領域が重複範囲もつことを排除するものではない。より具体的には、分散媒除去工程、硬化工程、接合工程がこの順で行われれば、硬化領域33は、分散媒除去領域32や接合領域34内に含まれていてもよく、また、分散媒除去領域32や接合領域34と重複範囲をもって形成されていてもよい。
【0130】
また、前述した実施形態では、搬送部3が、分散媒除去領域32と硬化領域33と接合領域34と、さらにその他の領域とで構成されたものとなっているが、これに限定されず、少なくとも、分散媒除去領域32と硬化領域33と接合領域34とで構成されたものであればよい。
また、前述の第2実施形態では、搬送部3内で、凝集体6’に対する熱硬化性樹脂の付与、硬化工程、接合工程を行うものについて説明したが、本発明の樹脂微粒子の製造方法は、凝集体6’に対する熱硬化性樹脂の付与、硬化工程、接合工程を、搬送部3の外部(トナー製造装置1の外部)で行ってもよい。硬化工程を搬送部3の外部で行う場合、装置構成の大幅へ変更を伴うことなく、熱硬化性樹脂に対する加熱時間や加熱温度の設定を比較的広い範囲で変更することができ、熱硬化樹脂の硬化を容易に制御することができる。
【0131】
また、図5に示すように、ヘッド部2に、音響レンズ(凹面レンズ)25が設置されていてもよい。このような音響レンズ25が設置されることにより、例えば、圧電素子22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)を、吐出部23付近の圧力パルス収束部26で収束させることができる。その結果、圧電素子22が発生した振動エネルギーを、分散液6を吐出させるためのエネルギーとして、効率よく利用することができる。したがって、分散液貯留部21に貯留された分散液6が比較的高粘度のものであっても、確実に吐出部23から吐出させることができる。また、分散液貯留部21に貯留された分散液6が凝集力(表面張力)の比較的大きいものであっても、微細な液滴として吐出することが可能となるため、容易かつ確実に、トナー粒子9の粒径を比較的小さい値にコントロールすることができる。
このように、本実施形態では、分散液6として、より粘度の高い材料や、凝集力の大きい材料を用いた場合であっても、トナー粒子9を所望の形状、大きさにコントロールすることができるので、材料選択の幅が特に広くなり、所望の特性を有するトナーをさらに容易に得ることができる。
【0132】
また、本実施形態では、収束した圧力パルスにより分散液6を吐出させるため、吐出部23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、吐出する分散液6の大きさを比較的小さいものにすることができる。すなわち、トナー粒子9の粒径を比較的小さくしたい場合であっても、吐出部23の面積を大きくすることができる。これにより、分散液6が比較的高粘度のものであっても、吐出部23における目詰まりの発生等をより効果的に防止することができる。
【0133】
音響レンズとしては、凹面レンズに限定されず、例えば、フレネルレンズ、電子走査レンズ等を用いてもよい。
さらに、図6〜図8に示すように、音響レンズ25と吐出部23との間に、吐出部23に向けて、収斂する形状を有する絞り部材13等を配置してもよい。これにより、圧電素子22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)の収束を補助することができ、圧電素子22が発生した圧力パルスをさらに効率よく利用することができる。
【0134】
また、前述した実施形態では、トナーの構成成分が固形成分として、分散質中に含まれるものとして説明したが、トナーの構成成分の少なくとも一部は、分散媒中に含まれていてもよい。
また、前述した実施形態では、吐出部の開口面積と、分散液中に占めるトナーの構成成分の含有率との設定により、トナー粒子の大きさを制御するものとして説明したが、これらの条件とともに、他の条件を適宜設定してもよい。これにより、トナー粒子の大きさをより好適に制御することができる。前記他の条件としては、例えば、分散液の吐出速度、吐出部付近の構成材料等が挙げられる。
【0135】
また、前述した実施形態では圧電パルスによりヘッド部から分散液を間欠的に吐出するものとして説明したが、分散液の吐出方法(噴射方法)としては、他の方法を用いることもできる。例えば、分散液を吐出(噴射)する方法としては、スプレードライ法や、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法等の方法のほか、「分散液を、ガス流で平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄層流とし、当該薄層流を前記平滑面から離して微粒子として噴射するようなノズルを用いて、分散液を液滴状に(微粒子として)噴射する方法(特願2002−321889号明細書に記載されたような方法)」等を用いてもよい。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、液体(分散液)を噴射(噴霧)させることにより、液滴を得る方法である。また、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法を適用した方法としては、特願2002−169348号明細書に記載された方法等が挙げられる。すなわち、分散液を吐出(噴射)する方法として、「気体の体積変化によりヘッド部から分散液を間欠的に吐出する方法」を適用することができる。
また、前述した実施形態では、樹脂微粒子をトナーに適用した場合について説明したが、これに限定されない。
【実施例】
【0136】
[1]トナー(樹脂微粒子)の製造
(実施例1)
<結着樹脂懸濁液の製造>
まず、結着樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移点Tg:58.6℃、軟化点Tf1/2:102.0℃、重量平均分子量Mw:13000):100重量部、着色剤としてフタロシアニン顔料(大日精化社製、フタロシアニンブルー):5重量部、帯電制御剤としてサリチル酸Cr錯体(ボントロンE−81、オリエント化学工業社製):1重量部、ワックスとしてカルナウバワックス:3重量部、溶媒としてテトラヒドロフラン(和光純薬社製):300重量部を用意した。
【0137】
これらの各成分をボールミルにて10時間混合分散し、結着樹脂溶液(樹脂液)を調製した。
一方、分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬社製、平均重合度n=2700〜7500):25重量部をイオン交換水:575重量部に溶解した水溶液(水性溶液)を用意した。
【0138】
次に、この水溶液:600重量部を3リットルの丸底ステンレス容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化工社製)を用いて、回転数:4000rpmで攪拌しながら、結着樹脂溶液:405重量部を10分かけて徐々に滴下した。この際、液温を75℃に保持した。結着樹脂溶液の滴下完了からさらに10分間、液温を75℃に保持しつつ攪拌して、乳化液を得た。
【0139】
次に、温度:45℃、雰囲気圧力:10〜20kPaの条件下で、この乳化液(分散質)中のテトラヒドロフランを除去し、その後、室温まで冷却し、さらに、イオン交換水を加えることにより、固形微粒子が分散した結着樹脂懸濁液(分散液)を得た。その後、さらにイオン交換水を加え、濃度を調整した。
その後、得られた結着樹脂懸濁液(分散液)に脱気処理を施した。脱気処理は、攪拌した状態の結着樹脂懸濁液(分散液)を、14kPaの雰囲気中に10分間置くことにより行った。脱気処理時における雰囲気温度は、25℃であった。このようにして得られた結着樹脂懸濁液(分散液)中における固形分(分散質)濃度(トナー構成成分の含有率)は、10wt%であった。また、結着樹脂懸濁液(分散液)の25℃における粘度は、2mPa・sであった。また、結着樹脂懸濁液を構成する分散質の平均粒径Dmは、0.31μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0140】
<熱硬化樹脂溶液の製造>
まず、熱硬化性樹脂としての液状エポキシアクリレート樹脂(日本アピカ社製、ネオポール8250L、スチレン含有量:40%(比重:1.05))1000gに、N,N−ジメチルアニリン:1.0g、界面活性剤(三洋化成社製、イオネットT−20C、ポリオキシエチレンソルビタンエステル):3gを添加溶解させた後、イオン交換水:238g(熱硬化性樹脂80mlに対し水20ml)を加え、超音波ホモジナイザーを用いて、10分間超音波を照射して、水性分散体を得た。
【0141】
この水性分散体に対し、硬化剤(日本油脂社製、ナイパーBMT K40、ベンゾイルパーオキサイド40%含有):12.5gを添加分散させた後、イオン交換水:134gを加えて、合計1372g(熱硬化性樹脂:30mlに対し水:70ml)の熱硬化性樹脂溶液(分散液)を得た。
このようにして得られた熱硬化樹脂溶液(分散液)を構成する分散質の平均粒径Dmは、0.75μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0142】
<樹脂微粒子の製造>
前述したように得られた脱気処理済みの分散液(結着樹脂懸濁液)と、熱硬化樹脂溶液とを、これらを(分散液):(熱硬化樹脂溶液)=20:1の割合(重量比)で混合した状態で、図1、図2に示すようなトナー製造装置1の分散液供給部4内に投入した。分散液供給部4内の分散液を攪拌手段41で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部21に供給し、吐出部23から搬送部3に吐出させた。吐出部23は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部2としては、吐出部23付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。
【0143】
分散液の吐出時における、ヘッド部2内における分散液温度は40℃、圧電体の振動数は10kHz、吐出部23から吐出される分散液の初速度は3m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は3pl(粒径Dd:18μm、重量:約3ng)であった。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0144】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口7から温度:40℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、この際、各ガス供給手段と吸気手段12を調整することにより、ハウジング31内の圧力(雰囲気圧力)が大気圧となるように調節した。また、ハウジング31内の温度(雰囲気温度)は、60〜70℃となるように調節した。
また、加熱領域33の雰囲気温度は、35℃であり、接合領域34の雰囲気温度は、65℃であった。
搬送部3内において、吐出した分散液から分散媒が除去され、分散質の凝集体としての粒子が形成された。
【0145】
搬送部3で形成された粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度Rが0.978、円形度標準偏差が0.010であった。重量基準の平均粒径Dtは、6.4μmであった。重量基準の粒径標準偏差は0.8μmであった。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて、水分散系で行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ(日本エアロジル社製、R−972):1.0重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーは、平均円形度Rが0.979、円形度標準偏差が0.010であった。重量基準の平均粒径Dtは、6.5μmであった。重量基準の粒径標準偏差は0.8μmであった。
【0146】
(実施例2)
用いる熱硬化樹脂溶液が異なる以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
<熱硬化樹脂懸濁液の製造>
界面活性剤(三洋化成社製、イオネットT−20C、ポリオキシエチレンソルビタンエステル)の添加量を10gとした以外は、実施例1と同様にして、熱硬化樹脂懸濁液を得た。
このようにして得られた熱硬化樹脂溶液(分散液)を構成する分散質の平均粒径Dmは、0.13μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0147】
(実施例3)
用いる熱硬化樹脂溶液が異なる以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
<熱硬化樹脂溶液の調整>
まず、熱硬化性樹脂としての液状不飽和ポリエステル樹脂(日本触媒社製、エポラックG−266)1000gに、N,N−ジメチルアニリン:1.0g、界面活性剤(旭電化工業社製、プルロニックL−61、ポリオキシエチレンプロピレンエーテル型):6gを添加溶解させた後、イオン交換水:200gを加え、超音波ホモジナイザーを用いて、10分間超音波を照射して、O/W型の水性分散体を得た。
【0148】
この水性分散体に対し、硬化剤(日本油脂社製、ナイパーBMT K40、ベンゾイルパーオキサイド40%含有):12.5gを添加分散させた後、イオン交換水を加えて、固形分濃度30%の熱硬化性樹脂溶液(分散液)を得た。
このようにして得られた熱硬化樹脂溶液(分散液)を構成する分散質の平均粒径Dmは、0.34μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0149】
(実施例4)
用いる熱硬化樹脂溶液が異なる以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
まず、熱硬化性樹脂としてのポリエチレングリコールジクリシルエーテル(ナガセ化成化学工業社製、ディナコールX810)100gに、イオン交換水:1000gを加え、超音波ホモジナイザーを用いて、10分間超音波を照射して、水溶液を得た。
この水溶液に対し、硬化剤(日本油脂社製、ナイパーBMT K40、ベンゾイルパーオキサイド40%含有):5gを添加分散させた後、イオン交換水を加えて、固形分濃度10%の熱硬化性樹脂溶液(溶解液)を得た。
【0150】
(実施例5)
図3、図4に示すようなトナー製造装置を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。このとき、脱気処理済みの分散液(結着樹脂懸濁液)を分散液供給部4内に投入し、熱硬化樹脂溶液を分散液供給部4’内に投入した。吐出部23A、23Bは、直径:25μmの円形状をなすものとした。
【0151】
また、分散液の吐出時における、ヘッド部2A内における分散液温度は40℃、圧電体の振動数は10kHz、第1の吐出部23Aから吐出される分散液の初速度は3m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は3pl(粒径Dd:18μm、重量:約3ng)であった。また、熱硬化樹脂溶液の吐出時における、ヘッド部2B内における熱硬化樹脂溶液温度は40℃、圧電体の振動数は(分散液):(熱硬化樹脂溶液)=20:1の割合(重量比)で吐出されるように1.5kHz、第2の吐出部23Bから吐出される分散液の初速度は3m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量は3pl(粒径Dd:18μm、重量:約3ng)であった。
【0152】
(実施例6)
図1、図2に示すトナー製造装置の第2の加熱手段341を省略し、搬送部3内で凝集体6’に対する接合工程を行わずに、回収部5から凝集体を取り出し、これに対しトナー製造装置の外部で接合工程を行った以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
凝集体に対する接合工程は、熱硬化処理後の凝集体をオーブン内でできるだけ薄く広げ、60℃で1時間保持することにより行った。
【0153】
(実施例7)
図1に示すトナー製造装置の第1の加熱手段331および第2の加熱手段341、分散液供給部4内への熱硬化樹脂溶液を省略し、回収部から凝集体を取り出し、これに対しトナー製造装置の外部で、熱硬化樹脂溶液の付与を行った後に、硬化工程、接合工程を順次行った以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
【0154】
凝集体に対する熱硬化樹脂の付与は、取り出された凝集体:100重量部に対し、熱硬化樹脂溶液:5重量部を、ヘッド部2Bと同様の構成を有する噴霧装置を用いて、噴霧添加することにより行った。そして、この噴霧添加後の凝集体を、振動流動層乾燥機(中央化工機社製)を用いて、乾燥した。この乾燥は、エアー温度:40℃、ジャケット温度:40℃、エアー量:115L/min、振動数:1500rpm、振幅:1.0mm、乾燥時間:10分で行った。
凝集体に対する硬化工程は、取り出した凝集体をオーブン内でできるだけ薄く広げ、30℃で30分保持することにより行った。
凝集体に対する接合工程は、実施例5と同様の方法で行った。
(比較例)
分散液供給部4内への熱硬化樹脂溶液の投入を省略した以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
以上の各実施例および比較例について、トナーの製造条件を表1に示した。
【0155】
【表1】

【0156】
[2]評価
上記のようにして得られた各トナーについて、凝集度、帯電特性、転写効率、耐久性の評価を行った。
【0157】
[2.1]凝集度
得られたトナー:2gを、目開き45μmのメッシュ上に載せ、このメッシュを一定条件で振動させ、メッシュ上に残ったトナーの重量を測定した。
そして、初期のトナー量(2g)に対する、メッシュ上に残ったトナー量の重量比を凝集度とし、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:凝集度が3%未満で、トナーの凝集が認められない。
○:凝集度が3%以上6%未満で、トナーの凝集が目視では認めらず、実使用に全く問題がない。
△:凝集度が6%以上10%未満で、トナーの凝集が目視で僅かに認められるが、実使用に問題がない。
×:凝集度が10%以上で、実使用上問題がある。
【0158】
[2.2]帯電特性
レーザープリンタ(セイコーエプソン社製、LP−3000C)を用いて、以下のような試験を実施した。
レーザープリンタにおいて、印字途中で運転を停止させ、カートリッジを取り外し、粉黛帯電量分布測定装置(ホソカワミクロン社製、E-spart analyzer)を用いて、帯電量分布を測定し、その結果から、帯電量および逆帯電量としてプラス帯電量を求めた。
【0159】
帯電量については、室温条件(25℃湿度45%)での初期帯電量と、1000枚印字後(1K後)の帯電量とについて求めた。
1000枚印字後(1K後)の帯電量については、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:初期帯電量からの変化量(絶対値)が0.5μC/g未満。
○:初期帯電量からの変化量(絶対値)が0.5μC/g以上1μC/g未満。
△:初期帯電量からの変化量(絶対値)が1μC/g以上3μC/g未満。
×:初期帯電量からの変化量(絶対値)が3μC/g以上。
また、逆帯電性のトナーについては、全トナー量に対する存在比率で求め、逆帯電性のトナーの存在比率が3wt%未満の場合は○、逆帯電性のトナーの存在率が3wt%以上の場合は×とした。
【0160】
[2.3]転写効率
以上のようにして得られた各トナーについて、転写効率の評価を行った。
転写効率は、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製、LP−2000C)を用いて、以下のように評価した。
感光体への現像工程直後(転写前)の感光体上のトナーと、転写後(印刷後)の感光体上のトナーとを、別々のテープを用いて採取し、それぞれの重量を測定した。転写前の感光体上のトナー重量をW[g]、転写後の感光体上のトナー重量をW[g]としたとき、(W−W)×100/Wとして求められる値を、転写効率とした。
【0161】
[2.4]耐久性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーを、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製:LP−2000C)の現像機にセットした。その後、印字しないように、現像機を連続回転させた。12時間後、現像機を取り出し、現像ローラ上のトナー薄層の均一性を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:薄層に乱れがまったく認められない。
○:薄層に乱れがほとんど認められない。
△:薄層に多少の乱れが認められる。
×:薄層に筋状の乱れがはっきりと認められる。
これらの結果を、トナー製造装置を用いて製造された粒子(トナー母粒子、シリカを添加する前のトナー粒子)の平均円形度R、円形度標準偏差、重量基準の平均粒径Dt、粒径標準偏差とともに表2に示す。
【0162】
【表2】

【0163】
表2から明らかなように、本発明(実施例1〜7)のトナーは、いずれも、円形度が小さく、粒度分布の幅の小さいものであった。また、形状のバラツキ(円形度の標準偏差)も小さかった。
【0164】
これに対し、比較例1、2のトナーは、円形度が実施例と比較して大きかった。また、顕微鏡で外観を観察したところ、異形状で他よりも大きいトナー粒子が観察された。これは、接合工程時にトナー粒子同士が接合して形成されたものと考えられる。
また、図5〜8に示すヘッド部を有するトナー製造装置を用いて、上記と同様にしてトナーを製造した結果、同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の樹脂微粒子製造装置の第1実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示す樹脂微粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図3】本発明の樹脂微粒子製造装置の第2実施形態を模式的に示す縦断面図であ
【図4】図1に示す樹脂微粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図5】トナー製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図6】トナー製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図7】トナー製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図8】トナー製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0166】
1……トナー製造装置 2、2A、2B……ヘッド部 21……分散液貯留部 22……圧電素子 221……下部電極 222……圧電体 223……上部電極 23……吐出部 23A……第1の吐出部 23B……第2の吐出部 24……振動板 25……音響レンズ 26……圧力パルス収束部 3……搬送部 31……ハウジング 311……縮径部 32……分散媒除去領域 33……硬化領域 331……第1の加熱手段 34……接合領域 341……第2の加熱手段 4……分散液供給部 41……攪拌手段 5……回収部 6……分散液 6’……凝集体 6A……第1の分散液 6B……第2の分散液 61……第1の分散質 62……第2の分散質 63……分散媒 64……分散媒 7……ガス噴射口 8……電圧印加手段 9……トナー粒子 10……ガス供給手段 101……ダクト 11……熱交換器 12……吸気手段 121……接続管 122……拡径部 123……フィルター 13……絞り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を主材料として構成された分散質が分散媒中に微分散した分散液の液滴を、熱硬化性樹脂を含む状態で、搬送部内を搬送させつつ、前記分散媒を除去し、前記分散質由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体を得る分散媒除去工程と、
前記凝集体を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記凝集体を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体を得る接合工程とを有することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記分散媒除去工程に先立ち、前記分散液を、前記熱硬化性樹脂を含む状態で吐出部から吐出し、前記熱硬化性樹脂を含む前記液滴を得る請求項1に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記分散媒除去工程に先立ち、前記分散液を吐出口から吐出するとともに、前記熱硬化性樹脂を含む液体を前記液滴に付与するように前記吐出口とは別の吐出口から吐出し、前記熱硬化性樹脂を含む前記液滴を得る請求項1に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
樹脂材料を主材料として構成された分散質が分散媒中に微分散した分散液の液滴を、搬送部内を搬送させつつ、前記分散媒を除去し、前記分散質由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体を得る分散媒除去工程と、
熱硬化性樹脂を前記凝集体に付与する熱硬化性付与工程と、
前記凝集体を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記凝集体を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体を得る接合工程とを有することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性付与工程では、前記熱硬化性樹脂を含む液体を、前記分散液とは別の吐出部から吐出し、前記液体を前記凝集体に付与する請求項4に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記液体は、前記熱硬化性樹脂を主材料として構成された分散質が分散媒中に微分散されたものである請求項3または5に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記分散媒除去工程に供される前記液滴は、前記熱硬化性樹脂以外の樹脂を主材料として構成されている第1の分散質と、前記熱硬化性樹脂を主材料として構成されている第2の分散質とが前記分散媒中に微分散している請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記第2の分散質の平均粒径は、前記第1の分散質の平均粒径よりも大きい請求項7に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂は、水溶性である請求項1ないし8のいずれかにに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記分散媒は、主として水および/または水溶性の液体で構成されたものである請求項1ないし9のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記硬化工程における加熱温度は、前記接合工程における加熱温度よりも低い請求項1ないし10のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂の硬化温度は前記微粒子の溶融温度よりも低い請求項1ないし11のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項13】
樹脂微粒子はトナーである請求項1ないし12のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項14】
樹脂材料を主材料として構成された分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いて、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子を製造する装置であって、
前記分散液を熱硬化性樹脂を含んだ状態で液滴状に吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出された分散液の液滴を搬送させる搬送部とを有し、
前記搬送部は、前記吐出部から吐出された分散液の液滴から前記分散媒を除去し、前記分散質由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体を得る分散媒除去領域と、前記凝集体を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化領域と、前記熱硬化性樹脂が硬化した状態で、前記凝集体を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体を得る接合領域とを備えることを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項15】
樹脂材料を主材料として構成された分散質が、分散媒中に微分散した分散液を用いて、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子を製造する装置であって、
前記分散液を粒状に吐出する第1の吐出部と、
熱硬化性樹脂を含む液体を液滴状に吐出する第2の吐出部と、
前記第1の吐出部から吐出された分散液の液滴と前記第2の吐出部から吐出された液体の液滴とを搬送させる搬送部とを有し、
前記搬送部は、前記第1の吐出部から吐出された分散液の液滴から前記分散媒を除去し、前記分散質由来の複数個の微粒子が凝集した凝集体を得る分散媒除去領域と、前記第2の吐出部から吐出された液体中の前記熱硬化性樹脂を含む前記凝集体を加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化領域と、前記熱硬化性樹脂が硬化した状態で、前記凝集体を構成する複数個の前記微粒子同士を溶融接合して接合体を得る接合領域とを備えることを特徴とする樹脂微粒子製造装置。
【請求項16】
前記第2の吐出部は、前記液体を前記分散液の液滴に付与するように構成されている請求項15に記載の樹脂微粒子製造装置。
【請求項17】
前記第2の吐出部は、前記液体を前記凝集体に付与するように構成されている請求項15に記載の樹脂微粒子製造装置。
【請求項18】
請求項14ないし17のいずれかの製造装置によって製造されたことを特徴とする樹脂微粒子。
【請求項19】
樹脂微粒子の製造に用いる分散液であって、熱硬化性樹脂以外の樹脂を主材料として構成された分散質が分散媒中に微分散しているとともに、熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする樹脂微粒子製造用分散液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−28433(P2006−28433A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212292(P2004−212292)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】