説明

樹脂成形品

【課題】樹脂成形品の薄型化および軽量化と、高剛性の維持と、ヒケ防止等の外観向上効果とを同時に達成する。
【解決手段】筐体の少なくとも一部を構成する樹脂成形品(パネル1)が、1.05倍以上かつ2.0倍以下の発泡倍率になるように成形された熱可塑性樹脂発泡体からなり、板厚が0.5mm以上かつ2.0mm以下である基板2の一方の表面2aに、表面2a上に位置する根元部分4aからの高さが2.0mm以上かつ10.0mm以下であるリブ4を有し、リブ4の表面2aへの投影面積の合計が表面2aの総面積の2.5%以上かつ20.0%以下である。リブ4は表面2a上に格子状に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやデスクトップコンピュータのモニターを含む薄型ディスプレイなどの大型の電気・電子機器の筐体の少なくとも一部を構成する樹脂成形品に関し、特に、筐体の背面(バックパネル)を構成する樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビやデスクトップコンピュータのモニターを含むディスプレイは、年々大型化するとともに、薄型化および軽量化の動きが強まっている。このようなディスプレイの筐体は、通常、樹脂成形品によって構成されている。特に、液晶テレビなどのディスプレイのバックパネルは、液晶テレビの筐体を構成する樹脂成形品のうちで最も重量が大きく、軽量化が求められている。このようなバックパネルを軽量化するために板厚を薄くすると、その外観品質が悪くなる可能性が高い。板厚が薄いバックパネルでは、特に裏面にボスが存在する部分およびその近傍において、成形時にヒケが生じて外観が悪くなり易いという問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、ガスアシスト射出成形法を行うことによってヒケ防止を図り、さらに、ボスの根元にガスチャンネルを設置することによってヒケ防止の効果をより高めることが提案されている。
【特許文献1】特開2007−110578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明によると、ある程度のヒケ防止効果が得られたものの、板厚が薄くなることによって剛性が大幅に低下するという問題が依然として残されていた。特に、液晶テレビのバックパネルなどのように大型で面積が広い樹脂成形品を軽量化するために薄型化した場合、剛性の低下の問題が顕著であった。しかも、板厚が薄いと、補強のために設けるリブの厚さをさらに薄くする必要があるため、成形時に金型キャビティのリブ形成部分へ樹脂を十分に充填することが困難になり、良好な成形が行えなくなるおそれがあった。
【0005】
そこで本発明の目的は、薄型化および軽量化と、高剛性の維持と、ヒケ防止等の外観向上効果とを同時に達成できる樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の、筐体の少なくとも一部を構成する樹脂成形品は、1.05倍以上かつ2.0倍以下の発泡倍率になるように成形された熱可塑性樹脂発泡体からなり、板厚が0.5mm以上かつ2.0mm以下である基板の一方の表面に、その表面上に位置する根元部分からの高さが2.0mm以上かつ10.0mm以下であるリブを有し、リブの表面への投影面積の合計が表面の総面積の2.5%以上かつ20.0%以下であることを特徴とする。リブは表面上に格子状に設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、樹脂成形品を発泡体から構成し、その基板を薄肉にすることによって、軽量化および薄型化を達成するとともに、リブを設けることによって高い剛性を確保することができる。特に、基板の板厚と、リブの高さと、発泡倍率と、リブの投影面積の割合をそれぞれ適切に設定しているため、筐体の一部として十分な剛性と軽量化および薄型化とを両立させることが可能である。しかも、外観品質を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1に本発明の樹脂成形品の一実施形態であるパネル1を示し、図2にその要部拡大図を示している。このパネル1は、液晶テレビ等の大型かつ薄型のディスプレイなどの電気・電子機器の筐体の一部を構成する部品、具体的には筐体のバックパネルとなる部品である。
【0010】
このパネル1は、1000mm×500mm程度の大型の平板状の基板2と、基板2の四辺に設けられた側壁(立ち壁)3とを有し、基板2の一方の表面2a上に格子状に複数のリブ4が形成され、かつ開口部5が設けられた構成である。なお、基板2の表面2aは一般面ともいう。基板2の板厚は0.5mm以上かつ2.0mm以下であり、リブ4の、表面2a上に位置する根元部分4aからの高さは、2.0mm以上かつ10.0mm以下である。そして、リブ4の表面2aへの投影面積の合計、すなわち、縦および横に多数並んで配置されている各リブ4の平面的に見たときの面積の合計が、表面2aの総面積(開口部5を除いた面積)の2.5%以上かつ20.0%以下の大きさである。
【0011】
このパネル1は、熱可塑性樹脂の発泡体からなり、その発泡倍率は1.05倍以上かつ2.0倍以下である。そして、このパネル1を構成する発泡体は、表層に位置し実質的に気泡を含まないスキン層6と、内部に位置し独立気泡を含むコア層7とからなる。コア層7内における気泡のサイズは、断面写真から測定される数平均セル径が1000μm以下の範囲である。仮に、セル径がこれよりも大きい場合や連続気泡になった場合には、発泡体の剛性が低くなり好ましくない。
【0012】
このような発泡体は、射出発泡成形、押出発泡成形、発泡ブロー成形、または常圧二次発泡成形等の発泡成形法によって形成される。このうち、射出発泡成形は、発泡剤を含有した熱可塑性樹脂を金型内に射出する成形法であり、複雑な形状の成形品を比較的容易に製造でき、しかも成形サイクルが短いことから、本発明の目的に最も適している。
【0013】
このパネル1の原料となる熱可塑性樹脂は、特に制限は無いが、ソリッド(非発泡状態)での剛性が高い材料であることが好ましい。一般的に用いられる材料としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリ乳酸等が挙げられ、これらの樹脂が単独で用いられてもよく、これらの樹脂の混合物が用いられてもよい。さらに、このような熱可塑性樹脂に、エチレンプロピレンゴムまたはスチレンイソプレンゴム等のエラストマーや、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、または炭素繊維等の充填材や、難燃剤または耐候安定剤等の添加剤や、顔料や、メタリックフィラー等を添加することが可能である。
【0014】
また、前記した熱可塑性樹脂に混入される発泡剤としては、熱分解によって気体を放出する化学発泡剤や、常温常圧で液体であるが加熱されると気化する水や炭化水素等の物理発泡剤や、常温常圧で気体である物理発泡剤や、前記した常温常圧で液体であるが加熱されると気化する化合物をガスバリア性熱可塑性樹脂のカプセル内に収容したマイクロカプセル等が挙げられる。
【0015】
このうち、化学発泡剤としては、アゾジカーボンアミド(ADCA)のような窒素を発生する発泡剤や、炭酸水素ナトリウムやクエン酸や両者の混合物に代表される二酸化炭素を発生する発泡剤が用いられることが好ましい。なお、これらの化学発泡剤としては、成形に供される熱可塑性樹脂の成形温度と近い分解開始温度を有するものが選ばれる。発泡倍率やセル形状は発泡剤の添加量によって調整される。
【0016】
常温常圧で液体であるが加熱されると気化する物理発泡剤としては、水、低分子量炭化水素、フッ素化炭化水素等が用いられるのが好ましい。常温常圧で気体である物理発泡剤としては、窒素や二酸化炭素が一般的である。これらの物理発泡剤は、ボンベ内に注入しておいて必要に応じてそのボンベから供給するようにすればよい。ただし、窒素を用いる場合には、空気中から窒素を分離して取り出して熱可塑性樹脂中に混入するようにしてもよい。
【0017】
化学発泡剤やマイクロカプセルは、成形に供される熱可塑性樹脂にドライブレンドして使用されるのが一般的である。液状の発泡剤を用いる場合には、成形に供される熱可塑性樹脂に発泡剤を予め含浸しておき、その熱可塑性樹脂を成形機に供給するか、あるいは、成形機のシリンダーに液状の発泡剤を加圧注入する方法が一般的である。
【0018】
常温常圧で気体である物理発泡剤を用いる場合には、その物理発泡剤を気体のまま成形機のシリンダーに供給するか、その物理発泡剤を加圧して超臨界流体として成形機のシリンダーに供給する方法が一般的である。なお、本発明の目的に最も適した射出発泡成形方法は、常温常圧で気体である物理発泡剤を用いる方法であり、特に超臨界状態の窒素あるいは二酸化炭素を用いる方法が好ましい。
【0019】
本実施形態の樹脂成形品であるパネル1を製造する際には、前記した例のうちのいずれかの方法によって発泡剤が混ぜられた熱可塑性樹脂を、図示しないが、射出成形機のノズルを介して金型キャビティ内に流入させる。この時、圧力降下によって熱可塑性樹脂中に気泡核が形成され、気泡が成長しながら熱可塑性樹脂の流動が進行する。金型キャビティ内に流入した、気泡を内在した熱可塑性樹脂は、金型内壁を通して放熱することで、気泡を内在した状態のまま冷却固化する。このようにして、図1,2に示すパネル1を形成する。
【0020】
以上説明した本実施形態の樹脂成形品(パネル1)は、薄肉の基板2と、根元部分4aからの高さが2.0mm以上かつ10.0mm以下であるリブ4と、側壁3とからなり、それらの表層は実質的に気泡を含まないスキン層6からなり、内部は独立気泡を含むコア層7からなるため、重量の低減と剛性の維持と外観不良の防止が可能である。基板2は板厚が0.5mm以上かつ2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上かつ1.8mm以下であることが特に好ましい。基板2の板厚がこの範囲よりも薄いと、貫通衝撃に対して弱くなる。また、基板2の板厚がこの範囲よりも厚いと、軽量化のメリットが小さくなる。
【0021】
リブ4の根元部分4aからの高さは2.0mm以上かつ10.0mm以下であることが好ましく、3.0mm以上かつ6.0mm以下であることが特に好ましい。リブ4の高さがこの範囲より低いと、剛性維持の効果が小さくなり、この範囲よりも高いと、内部部品との干渉が大きくなる。リブ4の厚さ(太さ)は特に限定されないが、基板2の板厚より薄いと、図示しないが、そのリブ4を形成するための金型キャビティの凹部内に溶融状態の熱可塑性樹脂が流入しにくくなりヒケが生じる可能性がある。従って、リブ4の厚さは、基板2の板厚以上であることが好ましい。
【0022】
基板2の表面2aに対するリブ4の存在割合を、平面的に見たときの面積の割合で表すと、リブ4の表面2aへの投影面積の合計が表面2aの総面積の2.5%以上かつ20%以下であると良い。リブ4の存在割合がこの範囲より小さいと、1つのパネル1内において、リブ4によって補強される部分とリブ4から遠い部分との間の剛性の差が大き過ぎる。また、リブ4の存在割合がこの範囲より大きいと、リブ4の重量が無視できず、軽量化のメリットが小さくなる。リブ4は表面2aに対してできるだけ異方性が小さくなるように設置する方が良い。
【0023】
前記したとおり、表面2aとリブ4はいずれも、実質的に気泡を含まないスキン層6と独立気泡を含むコア層7とからなり表面2aとリブ4が接合する部分(根元部分4a)には独立気泡が存在する。スキン層6とコア層7を含めて測定される発泡倍率は1.05〜2.0倍の範囲であることが好ましい。発泡倍率がこの範囲より小さいと、表面2aとリブ4の接合する部分での気泡の成長が十分でなく、リブ4にヒケが生じる。発泡倍率がこの範囲よりも大きいと、表面2aとリブ4が接合する部分での気泡の径が大きくなりリブ4の強度が低下する。
【0024】
例えば、発泡倍率が1.5倍であり、基板2の板厚が1.8mmで、リブ4の根元部分4aからの高さとリブ4の厚さがいずれも2mmであり、これらのリブ4が18mm間隔で縦横に格子状に配置されたパネル1の場合、板厚が2mmでありリブが存在しないソリッド(非発泡体)のパネルと比較してほぼ同等の剛性を有しつつ、35%の軽量化が達成できた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の樹脂成形品の一実施形態であるパネルの斜視図である。
【図2】図1に示すパネルの要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 パネル
2 基板
2a 表面
3 側壁
4 リブ
4a 根元部分
5 開口部
6 スキン層
7 コア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の少なくとも一部を構成する樹脂成形品であって、
1.05倍以上かつ2.0倍以下の発泡倍率になるように成形された熱可塑性樹脂発泡体からなり、
板厚が0.5mm以上かつ2.0mm以下である基板の一方の表面に、前記表面上に位置する根元部分からの高さが2.0mm以上かつ10.0mm以下であるリブを有し、前記リブの前記表面への投影面積の合計が前記表面の総面積の2.5%以上かつ20.0%以下である、樹脂成形品。
【請求項2】
前記リブは前記表面上に格子状に設けられている、請求項1に記載の樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−36494(P2010−36494A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203307(P2008−203307)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000185868)小野産業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】