説明

樹脂注型金型

【課題】可動側封着金具と樹脂侵入防止部材間に設けられるシール部材を所定圧力で圧縮することができる樹脂注型金型を提供する。
【解決手段】一方のキャビティー2aを設けた一方の金型1aと、一方のキャビティー2aと組合される他方のキャビティー2bを設けた他方の金型1bと、キャビティー2a、2b内にセットされる真空バルブ3と、真空バルブ3の可動側封着金具7と可動側通電軸8とを囲むような樹脂浸入防止部材の可動側シールド9と、可動側シールド9と可動側封着金具7間に設けられたシール部材10と、可動側シールド9を移動させる移動装置とを備え、移動装置は、一方の金型1aと他方の金型1bとを閉鎖することで、シール部材10を圧縮する方向に可動側シールド9を移動させるとともに、この可動側シールド9に加圧ばね25のばね力を加えるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、真空バルブの外周をエポキシ樹脂のような絶縁材料でモールドする樹脂注型金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接離自在の一対の接点を有する真空バルブには、一方の電路となる固定側通電軸と、他方の電路となる軸方向に移動自在の可動側通電軸が導出されている。この真空バルブをモールドするときには、可動側通電軸の周りにエポキシ樹脂が浸入しないようにシール部材が設けられることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の樹脂注型金型を図5に示すが、閉鎖装置に固定された一方の金型1aと、一方の金型1aが組合される図示左右方向に移動する他方の金型1bに二分割されている。一方の金型1aと他方の金型1bの合せ面には、所定形状に彫られた対称の一方のキャビティー2aと、他方のキャビティー2bが設けられている。
【0004】
キャビティー2a、2b内には、真空バルブ3がセットされ、固定側通電軸4が図示上部の一方と他方の金型1a、1bの略中央部に固定されている。固定側通電軸4には、真空バルブ3の固定側封着金具5を囲むような椀状の固定側シールド6が固定されている。
【0005】
可動側にも、可動側封着金具7を囲むとともに、キャビティー2a、2b内の可動側通電軸8を囲むような椀状の可動側シールド9が設けられている。可動側封着金具7と可動側シールド9の内側の間には、Oリング10が設けられている。
【0006】
可動側通電軸8端部には、これを囲むようなカップ状のカラー11が設けられており、周縁部が可動側シールド9端部に当接している。カラー11は、金型の一部となる中子12に収納されている。中子12には、止めねじ13が設けられており、カラー11の底部を図示上方向に押し上げることで、Oリング10を圧縮することができる。また、カラー11は、可動側通電軸8の中心軸の位置決めを行う。
【0007】
これにより、キャビティー2a、2b内にエポキシ樹脂を充填し、加熱硬化すれば、真空バルブ3の外周に絶縁層を設けたモールド真空バルブを製造することができる。Oリング10によって可動側へのエポキシ樹脂の浸入を防ぐことができ、可動側通電軸8を軸方向に移動自在とすることができる。
【0008】
ここで、真空バルブ3の軸方向の長さには公差があるので、Oリング10を所定圧力で圧縮するためには止めねじ13の回転操作を調整する必要があった。このため、止めねじ13の操作を定量化することができなかった。Oリング10が所定圧力で圧縮されていないときには、可動側通電軸8側にエポキシ樹脂が流れ込むことがあった。また、カラー11の底部に止めねじ13が当接し回転するので、この部分が磨耗し、Oリング10の圧縮の定量化を困難とさせていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−338557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、可動側封着金具7と可動側シールド9間に設けられるシール部材となるOリング10を、真空バルブ3の軸方向長さに公差などがあっても所定圧力で圧縮することができる樹脂注型金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、実施形態の樹脂注型金型は、一方のキャビティーを設けた一方の金型と、前記一方のキャビティーと組合される他方のキャビティーを設けた他方の金型と、前記一方のキャビティー内と前記他方のキャビティー内とにセットされる真空バルブと、前記真空バルブの可動側封着金具と可動側通電軸とを囲むような樹脂浸入防止部材と、前記樹脂浸入防止部材と前記可動側封着金具間に設けられたシール部材と、前記樹脂浸入防止部材を移動させる移動装置とを備え、前記移動装置は、前記一方の金型と前記他方の金型とを閉鎖することで、前記シール部材を圧縮する方向に前記樹脂浸入防止部材を移動させるとともに、この樹脂浸入防止部材に加圧ばねのばね力を加えるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る樹脂注型金型の構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る樹脂注型金型の動きを説明する断面図。
【図3】本発明の実施例2に係る樹脂注型金型の構成を示す断面図。
【図4】本発明の実施例3に係る樹脂注型金型の構成を示す要部拡大断面図。
【図5】従来の樹脂注型金型の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
先ず、本発明の実施例1に係る樹脂注型金型を図1、図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る樹脂注型金型の構成を示す断面図、図2は、本発明の実施例1に係る樹脂注型金型の動きを説明する断面図である。なお、各図において、従来と同様の構成部分については、同一符号を付した。
【0015】
図1に示すように、樹脂注型金型は、一方の金型1aと、一方の金型1aが組合される他方の金型1bに二分割されている。一方の金型1aと他方の金型1bの合せ面には、所定形状に彫られた対称の一方のキャビティー2aと、他方のキャビティー2bが設けられている。
【0016】
キャビティー2a、2b内には、真空バルブ3がセットされ、固定側通電軸4が図示上部の一方と他方の金型1a、1bの略中央部に固定されている。固定側通電軸4には、真空バルブ3の固定側封着金具5を囲むような椀状の固定側シールド6が固定されている。
【0017】
可動側にも、可動側封着金具7を囲むとともに、キャビティー2a、2b内の可動側通電軸8を囲むような椀状の可動側シールド9が設けられている。可動側封着金具7と可動側シールド9の内側の間には、Oリング10が設けられている。
【0018】
可動側通電軸8端部には、これを囲むような軸方向に移動自在のカップ状のカラー11が設けられており、周縁部が可動側シールド9端部に当接している。カラー11は、金型の一部となる中子12に収納されている。中子12には、カラー11の底部に当接し、これを図示上方向の真空バルブ3側に押し上げる軸方向に移動自在のプッシャーピン20が貫通する貫通孔21が設けられている。
【0019】
プッシャーピン20は、中子12に連接し、一方と他方の金型1a、1bに嵌め込まれる筒状の容器22に収納されている。プッシャーピン20の軸方向の中間部には、鍔部23が設けられ、カラー11側にプッシャーピン20を図示下方向に移動させるように付勢される引離しばね24が設けられている。反カラー11側には、プッシャーピン20を図示上方向、即ち、Oリング10を圧縮する方向に付勢される加圧ばね25が設けられている。
【0020】
カラー11と対向するプッシャーピン20端部には、断面三角状のスライドコア26が固定されており、図示下面は第1の傾斜部27となっている。他方の金型1bには、容器22を貫通し、スライドコア26を図示上方向の真空バルブ3側に押し上げる断面三角状のロッキングブロック28が固定されている。ロッキングブロック28にも、第1の傾斜部27と対向する面に第2の傾斜部29が設けられており、第1の傾斜部27を滑るようになっている。
【0021】
なお、図1には、金型1a、1bの合せ面、中子12とカラー11間などに設けられるエポキシ樹脂の漏れを防ぐOリングは省略している。
【0022】
次に、金型1a、1bを開放した状態を図2を参照して説明する。
【0023】
図2に示すように、他方の金型1bを閉鎖装置で図示左方向に移動させると、中子12と容器22が一方の金型1aに嵌め込まれた状態となり、引離しばね24のばね力でプッシャーピン20が後退しカラー11と離れる。これが、一方の金型1aに真空バルブ3をセットした状態である。また、絶縁層を図示していないが、キャビティー2a、2b内にエポキシ樹脂を充填し加熱硬化させて離型したときの状態でもある。
【0024】
金型1a、1bを閉鎖するため他方の金型1bを図示右方向の一方の金型1a方向に移動させると、互いの傾斜部27、29が組合され滑動し、図1に示すように、プッシャーピン20が押し上げられるとともに、加圧ばね25が圧縮され、ばね力が加わってOリング10が圧縮される。互いの傾斜部27、29は、移動方向を変換するものであり、他方の金型1bの水平移動をプッシャーピン20が垂直移動するように変換する。そして、プッシャーピン20に連結された可動側シールド9が移動する。これらを可動側シールド9を軸方向に移動させる移動装置と称する。
【0025】
加圧ばね25のばね力を百数十kgfとすれば、真空バルブ3の軸方向長さが2mm程度のばらつき(公差)があっても、Oリング10を所定の圧力で加圧することができ、可動側へのエポキシの浸入を防ぐことができる。また、可動側シールド9、カラー11などの製造公差、組立公差などは、真空バルブ3の公差よりも小さく、加圧ばね25で吸収することができる。また、最終的には、Oリング10を加圧ばね25で圧縮しているので、圧力が略一定となり、可動側へのエポキシ樹脂の浸入を確実に防ぐことができる。
【0026】
上記実施例1の樹脂注型金型によれば、金型1a、1bを閉鎖することで、可動側封着金具7と可動側シールド9間に設けたOリング10を圧縮するようにプッシャーピン20を移動させるとともに、加圧ばね25のばね力を加えているので、真空バルブ3などに公差があっても、Oリング10を略一定の所定圧力で圧縮することができ、可動側へのエポキシ樹脂の浸入を確実に防ぐことができる。なお、離型時には、加圧ばね25は放勢され、引離しばね24でプッシャーピン20がカラー11側から後退するので、中子12、容器22などの嵌め込み作業に支障はない。
【0027】
上記実施例1では、可動側封着金具7と可動側シールド9間をOリング10を用いて説明したが、パッキンなどでもよく、ここでは、これらをシール部材と称する。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の実施例2に係る樹脂注型金型を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係る樹脂注型金型の構成を示す断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、真空バルブに設けるシールドの有無である。図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、真空バルブ3の封着金具5、7には、実施例1のような椀状のシールドを設けていない構成となっている。しかしながら、キャビティー2a、2b内の可動側通電軸8の周りには、筒状の樹脂浸入防止管30を設けている。樹脂浸入防止管30と可動側封着金具7間にはOリング10を設け、カラー11を介してOリング10を圧縮するようになっている。なお、適用電圧が低く、封着金具5、7端部の電界を許容できるときには、電界緩和をする必要がなく、封着金具5、7の外周部分を囲むシールドは不要となる。
【0030】
ここで、樹脂浸入防止管30と実施例1の可動側シールド9は、真空バルブ3の可動側にエポキシ樹脂が浸入することを防止する作用があり、これらを可動側封着金具7と可動側通電軸8とを囲むような樹脂浸入防止部材と称する。可動側封着金具7では、半径方向の面が樹脂浸入防止管30に囲まれる。
【0031】
上記実施例2の樹脂注型金型によれば、実施例1による効果のほかに、シールドを設けない場合でも、樹脂浸入防止管30により可動側へのエポキシ樹脂の浸入を防ぐことができる。
【実施例3】
【0032】
次に、本発明の実施例3に係る樹脂注型金型を図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施例3に係る樹脂注型金型の構成を示す要部拡大断面図である。なお、この実施例3が実施例2と異なる点は、ロッキングブロックに滑り易い部材を設けたことである。図4において、実施例2と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0033】
図4に示すように、ロッキングブロック28の第2の傾斜部29に、耐熱性、耐磨耗性を有するフッ素樹脂のような材料からなる滑動層31を設けている。
【0034】
上記実施例3の樹脂注型金型によれば、実施例2による効果のほかに、傾斜部27、29が滑り易くなり、プッシャーピン20の移動ロスを低減することができる。
【0035】
以上述べたような実施形態によれば、注型時に、真空バルブの可動側への樹脂の浸入を確実に防止することができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1a、1b 金型
2a、2b キャビティー
3 真空バルブ
4 固定側通電軸
5 固定側封着金具
6 固定側シールド
7 可動側封着金具
8 可動側通電軸
9 可動側シールド
10 Oリング
11 カラー
12 中子
13 止めねじ
20 プッシャーピン
21 貫通孔
22 容器
23 鍔部
24 引離しばね
25 加圧ばね
26 スライドコア
27、29 傾斜部
28 ロッキングブロック
30 樹脂流入防止管
31 滑動層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のキャビティーを設けた一方の金型と、
前記一方のキャビティーと組合される他方のキャビティーを設けた他方の金型と、
前記一方のキャビティー内と前記他方のキャビティー内とにセットされる真空バルブと、
前記真空バルブの可動側封着金具と可動側通電軸とを囲むような樹脂浸入防止部材と、
前記樹脂浸入防止部材と前記可動側封着金具間に設けられたシール部材と、
前記樹脂浸入防止部材を移動させる移動装置とを備え、
前記移動装置は、前記一方の金型と前記他方の金型とを閉鎖することで、前記シール部材を圧縮する方向に前記樹脂浸入防止部材を移動させるとともに、この樹脂浸入防止部材に加圧ばねのばね力を加える樹脂注型金型。
【請求項2】
前記移動装置は、前記樹脂浸入防止部材に連結されるプッシャーピンを有し、
このプッシャーピンには、前記一方の金型と前記他方の金型とを離型したとき、前記樹脂浸入防止部材から後退させる引離しばねが設けられている請求項1に記載の樹脂注型金型。
【請求項3】
前記樹脂浸入防止部材は、前記可動側封着金具の電界緩和を図る可動側シールドである請求項1または請求項2に記載の樹脂注型金型。
【請求項4】
前記シール部材は、Oリングである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂注型金型。
【請求項5】
前記移動装置は、前記一方の金型に嵌め込まれる前記プッシャーピンに固定された第1の傾斜部を有するスライドコアと、
前記第1の傾斜部を滑動する第2の傾斜部を有する前記他方の金型に固定されたロッキングブロックとを有する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂注型金型。
【請求項6】
前記第2の傾斜部に、滑り易い滑動層を設けた請求項5に記載の樹脂注型金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−228796(P2012−228796A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97466(P2011−97466)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】