説明

樹脂用可塑剤及び樹脂組成物

本発明は、一般式(1):R−(O−R−CO)−O−[(CHR(CHR−O][(CHRp’(CHRq’−O]r’−R(式中、Rは水素原子又は炭素数2〜20のアシル基を示す;Rはヒドロキシカルボン酸残基を示す;R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。kは1〜60の整数を示す;p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物を、含有する樹脂用可塑剤、当該可塑剤を含有する樹脂組成物及びその成形物を、提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、樹脂用可塑剤、当該可塑剤を含有する樹脂組成物及びその成形物に関する。
【背景技術】
通常、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ビニル系樹脂、スチロール系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等の各種熱可塑性樹脂の成形物には、柔軟性、耐久性、耐寒性、電気特性等を付与するため、可塑剤が配合されている。
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が公知である。
熱可塑性樹脂は、成形が容易であること、成形物が軽量であることから、建築材、包装材、雑貨などの多彩な用途に用いられている。しかし、樹脂には、(1)成形の際に使用される添加剤の安全性が懸念される、(2)燃焼させた際の燃焼熱が高いため焼却処理施設へ悪影響を及ぼす、(3)自然環境で生分解され難く、環境負荷が大きいといった問題点があった。
上記問題点を解決し得る樹脂として、各種生分解性プラスチックが提案され、商業生産されるに至っている。なかでも透明性が比較的良好であることから、ポリエステルの一種であるポリ乳酸が注目されている。しかし、ポリ乳酸は、生産コストが高いこと、成形物の柔軟性に欠けること等の点から、医療用途などの限られた分野で使用されるに止まっていた。
ポリ乳酸のコスト面については、近年原料の乳酸が発酵法により安価に製造できるようになり、又大型商業プラントの稼働によるコスト低減が期待できる。
一方、ポリ乳酸の成形物の柔軟性については、前記公知の可塑剤の添加による改善が図られているものの、可塑化効果が不十分であったり、可塑剤がブリードアウトするなどの問題があった。また、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックに使用する可塑剤として、安全性が高く、環境負荷を低減できる可塑剤が要望されている。
WO94/06856公報は、上記要望を充足する可塑剤として、ヒドロキシカルボン酸の一種である乳酸のエステルオリゴマー誘導体を、ポリ乳酸系樹脂に添加した組成物を提案している。しかし、当該樹脂組成物は、その成形物の透明性、耐ブリードアウト性及び柔軟性が十分とはいえない。また、上記乳酸のエステルオリゴマー誘導体には低引火点成分である乳酸メチルが含まれるため、成形時に当該成分が蒸散し、引火する等の危険性も懸念される。
【発明の開示】
本発明の目的は、各種樹脂との相溶性が良好であり、樹脂成形物の可塑化効果及び耐ブリードアウト性に優れ、又低引火点成分である乳酸メチルを含まないため、樹脂の成形時において引火するおそれが小さく、安全性にも優れる樹脂用可塑剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、当該可塑剤を用いることにより、透明性、柔軟性等に優れた成形物を収得できる樹脂組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的及び特徴は、以下の記載により明らかにされるであろう。
本発明者は、新規な樹脂用可塑剤を開発すべく、鋭意研究した。その結果、ポリ乳酸系樹脂等の各種樹脂に添加する可塑剤として、ヒドロキシカルボン酸に由来する部分とアルキレングリコールに由来する部分とを有する特定の化合物を用いることにより、上記目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる新知見に基づいて完成されたものである。
本発明は、以下に示す樹脂用可塑剤、当該可塑剤を含有する樹脂組成物及びその成形物を、提供するものである。
1.一般式(1):

(式中、Rは水素原子又は炭素数2〜20のアシル基を示す;Rはヒドロキシカルボン酸残基を示す;R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。kは1〜60の整数を示す;p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物を、含有する樹脂用可塑剤。
2.樹脂及び上記項1に記載の樹脂用可塑剤を含有する樹脂組成物。
3.樹脂100重量部に対して、該樹脂用可塑剤を1〜300重量部程度含有する上記項2に記載の樹脂組成物。
4.樹脂が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ビニル系樹脂、スチロール系樹脂、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である上記項2に記載の樹脂組成物。
5.樹脂が、ポリエステルである上記項4に記載の樹脂組成物。
6.ポリエステルが、ポリ乳酸系樹脂である上記項5に記載の樹脂組成物。
7.上記項2に記載の樹脂組成物を成形してなる成形物。
8.(a)ヒドロキシカルボン酸と、(b)一般式(2):

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物とを、反応させた後、必要に応じて、更に(c)炭素数2〜20のカルボン酸を反応させて得られる反応生成物を、含有する樹脂用可塑剤。
9.(a)成分が、グリコール酸、グリコール酸オリゴマー、乳酸、乳酸オリゴマー及びグリコール酸と乳酸との混合オリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも一種である上記項8に記載の樹脂用可塑剤。
10.(b)成分が、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種である上記項8に記載の樹脂用可塑剤。
11.(c)成分が、炭素数2〜11の脂肪族カルボン酸の少なくとも一種である上記項8に記載の樹脂用可塑剤。
12.樹脂及び上記項8に記載の樹脂用可塑剤を含有する樹脂組成物。
13.樹脂100重量部に対して、該樹脂用可塑剤を1〜300重量部程度含有する上記項12に記載の樹脂組成物。
14.樹脂が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ビニル系樹脂、スチロール系樹脂、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である上記項12に記載の樹脂組成物。
15.樹脂が、ポリエステルである上記項14に記載の樹脂組成物。
16.ポリエステルが、ポリ乳酸系樹脂である上記項15に記載の樹脂組成物。
17.上記項12に記載の樹脂組成物を成形してなる成形物。
18.(a)ヒドロキシカルボン酸と、(c)炭素数2〜20のカルボン酸とを反応させた後、更に(b)一般式(2):

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物を、反応させて得られる反応生成物を、含有する樹脂用可塑剤。
本発明によれば、下記のような顕著な効果が得られる。
(1)本発明の樹脂用可塑剤は、各種樹脂との相溶性が良好であり、樹脂成形物の可塑化効果及び耐ブリードアウト性に優れる。
(2)当該可塑剤を添加した樹脂組成物は、経時的変化が少なく、又透明性、柔軟性等に優れた成形物を調製できる。また、該樹脂組成物は、使用した可塑剤が低引火点成分である乳酸メチルを含まないため、樹脂の成形時において引火するおそれが小さい。従って、安全性に優れる。
(3)本発明可塑剤を、ポリ乳酸系樹脂に添加した樹脂組成物は、従来の汎用プラスチックと比較して生分解性が良好であり、燃焼熱も低く、ゴミ処理問題の解決に役立つ。
本発明の可塑剤は、一般式(1):
(式中、Rは水素原子又は炭素数2〜20のアシル基を示す;Rはヒドロキシカルボン酸残基を示す;R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。kは1〜60の整数を示す;p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物を、含有する。
一般式(1)において、R又はRで示される炭素数2〜20のアシル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、エナントイル、イソノナノイル、パルミトイル、ステアロイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル、ヒドロキシベンゾイル、ナフトイル基等の芳香族アシル基等を挙げることができる。
で示されるヒドロキシカルボン酸の残基としては、グリコール酸、D−乳酸、L−乳酸、DL−乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸残基を挙げることができる。
で示される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
上記一般式(1)の化合物の内、p、p’、q及びq’が1で、r+r’が3で、Rが水素原子で、Rが乳酸残基で、R、R、R及びRが水素原子で、Rがメチル基であるもの;p、p’、q及びq’が1で、r+r’が3で、Rが炭素数2〜11の脂肪族アシル基で、Rが乳酸残基で、R、R、R及びRが水素原子で、Rがメチル基であるものが、樹脂(特にポリ乳酸系樹脂)に添加した組成物の成形物の透明性及び柔軟性が良好となる点から、好ましい。
上記一般式(1)の化合物の製造方法は、特に制限されない。例えば、下記方法(A)、(B)により、該化合物を、調製することができる。
方法(A)は、(a)ヒドロキシカルボン酸と、(b)一般式(2):

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物とを、反応させた後、必要に応じて、更に(c)炭素数2〜20のカルボン酸を反応させる方法である。
方法(A)によって得られる反応生成物は、一般式(1)の化合物を主成分として含んでおり、必ずしも精製する必要はなく、そのまま又は酸化防止剤等の各種添加剤と共に本発明可塑剤として使用することができる。
方法(A)において、(a)ヒドロキシカルボン酸と、(b)一般式(2)の化合物を反応させることによって、一般式(1)において、Rが水素原子で、Rが炭素数1〜8のアルキル基である化合物を主成分とする反応生成物が得られる。
また、(a)成分と(b)成分を反応して得られた化合物に、更に、(c)炭素数2〜20のカルボン酸を反応させることによって、一般式(1)において、Rが炭素数2〜20のアシル基で、Rが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基である化合物を主成分とする反応生成物が得られる。
方法(B)は、(a)ヒドロキシカルボン酸と、(c)炭素数2〜20のカルボン酸とを反応させた後、更に(b)一般式(2):

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物を、反応させる方法である。
方法(B)によって得られる反応生成物は、一般式(1)の化合物を主成分として含んでおり、必ずしも精製する必要はなく、そのまま又は酸化防止剤等の各種添加剤と共に本発明可塑剤として使用することができる。
方法(B)においては、一般式(1)において、Rが炭素数2〜20のアシル基で、Rが炭素数1〜8のアルキル基である化合物を主成分とする反応生成物が得られる。
原料の(a)ヒドロキシカルボン酸としては、一分子内に、水酸基とカルボキシル基とを少なくとも一つずつ有するものであれば用いることができる。具体的には、例えば、グリコール酸、D−乳酸、L−乳酸、DL−乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸、及びこれらのヒドロキシカルボン酸のオリゴマーを使用することができる。
オリゴマーの場合、ヒドロキシカルボン酸一種単独のオリゴマーであっても、ヒドロキシカルボン酸の複数種の混合オリゴマーであっても良い。ヒドロキシカルボン酸のオリゴマーを用いることにより、可塑化効果及び耐ブリードアウト性が向上し、又引火点が上昇するので、好ましい。
オリゴマーは、市販のヒドロキシカルボン酸に、一部含まれているが、積極的に調製することもできる。オリゴマーは、通常、ヒドロキシカルボン酸を、公知のエステル化方法により、重縮合することによって得られる。具体的には、130℃〜250℃程度の高温条件において、生成する水を系外に除去しながら重縮合することによって、得られる。重縮合反応中に空気が混入すると生成するオリゴマーが着色する恐れがある為、反応は窒素やヘリウム等の不活性ガスの下で行うことが好ましい。重縮合反応に際して必ずしも重縮合触媒を必要としないが、反応時間の短縮のために酢酸、パラトルエンスルホン酸などの酸触媒;水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物;トリフェニルフォスファイト等の有機リン系化合物;オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート等のスズ化合物等を使用することもできる。このようにして得られるオリゴマーの重合度は、通常、2〜60程度であることが好ましい。重合度が60を超える場合には、可塑化効果が低下する傾向にあるため好ましくない。
(a)成分としては、ポリ乳酸系樹脂に添加した場合に得られる樹脂組成物の成形物の透明性及び柔軟性が良好となる点から、グリコール酸、グリコール酸オリゴマー、乳酸、乳酸オリゴマー又はグリコールと乳酸との混合オリゴマーであることが好ましい。乳酸としては、D−乳酸、L−乳酸又はDL−乳酸のいずれでもよい。また、これらのオリゴマーの重合度は、2〜40程度であるのが好ましく、2〜20程度であるのがより好ましい。特に、乳酸の2〜20量体のオリゴマー、グリコール酸の2〜20量体のオリゴマーが最も好ましい。
(b)成分としては、一般式(2)に包含される化合物であれば、特に制限されず公知の物を使用することができる。
一般式(2)においてRで示される炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数2〜20のアシル基は、前記一般式(1)におけるものと同じである。
一般式(2)において、p+q、p’+q’が6を超える場合、r+r’が7を超える場合には、樹脂との相溶性が悪くなり、得られる組成物の成形物の透明性が低下するため好ましくない。
(b)成分の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノメチルエーテル、ポリテトラメチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノベンゾエート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノベンゾエート、トリエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノベンゾエート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノベンゾエート等のアルキレングリコールモノカルボン酸エステル等が挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、例えば、アルコールに150℃前後でアルカリ触媒を使用してアルキレンオキシドを付加重合させることにより得られる。また、アルキレングリコールモノカルボン酸エステルは、例えば、モノカルボン酸にアルキレンオキシドを付加重合したり、モノカルボン酸とアルキレングリコールをエステル化することにより得られる。ここで、アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド(THF)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いても良い。アルキレングリコールモノアルキルエーテルの製造に用いられるアルコールは特に制限されず、炭素数1〜8のアルコールが挙げられる。また、アルキレングリコールモノカルボン酸エステルの製造に用いられるモノカルボン酸としては、炭素数1〜8のモノカルボン酸が挙げられる。
(b)成分の中では、樹脂(特にポリ乳酸系樹脂)との相溶性、樹脂(特に(ポリ乳酸系樹脂)に対する可塑化効果が良好な点から、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル又はトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等を用いることが好ましい。また、耐ブリードアウト性向上効果が良好な点から、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルがより好ましい。更に、可塑化効果及び耐ブリードアウト性向上効果が著しい点から、トリエチレングリコールモノメチルエーテルが、最も好ましい。
(c)炭素数2〜20のカルボン酸としては、例えば、酢酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、オクチル酸、イソノナン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪族カルボン酸及びこれらの無水物;ウンデシレン酸、オレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸及びこれらの無水物;安息香酸及びパラヒドロキシ安息香酸などの芳香族カルボン酸及びこれらの無水物などが挙げられる。これらの中では樹脂(特にポリ乳酸系樹脂)との相溶性、樹脂(特にポリ乳酸系樹脂)に対する可塑化効果が良好なことから炭素数2から11の脂肪族カルボン酸を用いることが好ましく、特に炭素数2〜7の脂肪族カルボン酸を用いた場合には耐ブリードアウト性が良好となるため好ましい。
(a)成分と(b)成分との反応、この反応物と(c)成分との反応、(a)成分と(c)成分との反応は、公知のエステル化反応法により行うことができる。具体的には、130℃〜250℃程度の高温条件において、生成する水を系外に除去しながら行われる。また、エステル化反応中に空気が混入すると生成するエステル化物が着色する恐れがある為、反応は窒素やヘリウム等の不活性ガスの下で行うことが好ましい。なお、反応に際して必ずしもエステル化触媒を必要としないが、反応時間の短縮のために酢酸、パラトルエンスルホン酸などの酸触媒;水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物;トリフェニルフォスファイト等の有機リン系化合物;オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート等のスズ化合物等を使用することもできる。
(a)成分と(b)成分の反応割合は、(b)成分1モルに対して、(a)成分が1.3〜5.0モル程度とすることが好ましい。但し、(a)成分がオリゴマーである場合は、(b)成分1モルに対して、(a)成分に含まれるヒドロキシカルボン酸単位として1.3〜5.0モル程度とすることが好ましい。(a)成分の割合が1.3モルより少ない場合は反応の完結に時間がかかり、生成物の引火点が下がったり、耐ブリードアウト性が低下する場合がある。(a)成分を多く用いると可塑化効果は良好となる傾向があるが、5.0より多い場合には生産効率が悪くなるうえ、可塑化効果が低下する傾向がある。
また、(c)成分の反応割合は、(a)成分に由来する末端水酸基がアシル化されるように適宜決定すればよい。
前記一般式(1)の化合物の製造方法(A)及び(B)において、反応を促進するために、(a)成分又は/及び(c)成分として、酸塩化物を使用することもできる。
かくして得られる一般式(1)で表される化合物は、通常、重量平均分子量300〜1,500程度であり、淡黄色の液体である。
一般式(1)の化合物、及び前記方法(A)又は方法(B)により得られる、一般式(1)で表される化合物を主成分とする反応生成物は、いずれも、各種樹脂用の可塑剤として使用でき、優れた可塑化効果を発揮する。
当該可塑剤を使用できる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、スチロール系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などのオレフィン共重合体などを挙げることができる。ポリオレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46等の脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどを挙げることができる。ポリアミドは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアセタールとしては、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができる。ポリアセタールは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スチロール系樹脂としては、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などを挙げることができる。このようなスチロール系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステルを挙げることができる。アクリル系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セルロース系樹脂としては、セロハン、セルロイド、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、メチルアセテート、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースなどを挙げることができる。セルロース系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、サラン、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルメチルエーテルなどを挙げることができる。ビニル系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、ポリブチレンアジペート・テレフタレート共重合体、ポリ乳酸系樹脂などを挙げることができ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸を重合して得られるポリエステル樹脂であれば特に制限されず使用できる。重合に用いられる乳酸は、L−体であっても、D−体であってもよく、L−体とD−体の混合物であってもよい。また、ポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸のホモポリマーに限らず、コポリマー、ブレンドポリマーなどであっても良い。
ポリ乳酸のコポリマーを形成する成分としては、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などに代表されるヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などに代表されるジカルボン酸;エチレングリコール、プロパンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、グリセリン、ソルビタン、ポリエチレングリコールなどに代表される多価アルコール;グリコリド、ε−カプロラクトン、δ−ブチロラクトンに代表されるラクトン類が挙げられる。ポリ乳酸とブレンドするポリマーとしては、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、再生セルロース、グリコーゲン、キチン、キトサン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートテレフタレートなどが挙げられる。
本発明可塑剤を用いる樹脂としては、ポリエステルが好ましく、ポリエステルの中でも特にポリ乳酸系樹脂が、本発明可塑剤との相溶性に優れ、かつ当該可塑剤を添加した際の可塑化効果が良好である点から、より好ましい。例えば、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、当該可塑剤を30重量部程度配合することにより、通常、ガラス転移点を20℃以上低下させることができる。
本発明の可塑剤の使用量は、樹脂100重量部に対し、1〜300重量部程度、好ましくは5〜150重量部程度、より好ましくは10〜100重量部程度である。かかる範囲で使用することにより、得られる組成物の経時的な物性低下が少なく、その成形物の柔軟性を向上させるとともに、透明性を損なわない点から、好ましい。本発明の可塑剤は、必要に応じて、従来公知の可塑剤と併用してもよい。
樹脂に、可塑剤を配合する方法としては、特に制限はないが、通常のブレンダー、ミキサー等で混合する方法、押出機、バンバリーミキサー等を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。また、樹脂製造時に、予め可塑剤を混合しておいてもよい。
本発明可塑剤を含有する樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤以外の各種添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば結晶核剤、帯電防止剤、発泡剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤、滑剤、離型剤、無機充填剤、顔料分散剤、顔料、染料などを挙げることができる。
本発明可塑剤を含有する樹脂組成物は、一般的な熱可塑性プラスチックと同様に、押出し成形、射出成形、延伸フィルム成形、ブロー成形などの成形方法を用いることが可能であり、これにより種々の成形物を調製することができる。
得られた成形物は、家庭用品から工業用品に至る広い用途の素材として好適に使用できる。この様な応用分野としては、例えば、食品容器、電気部品、電子部品、自動車部品、機械機構部品、フィルム、シート、繊維などを挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例、比較例及び試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する、但し、本発明は、これら実施例等により限定されるものではない。
各例における重合体の重量平均分子量は、GPC分析によるポリスチレン換算値である。分析機器としては、東ソー製の次の機器を用いた。
GPC:HLC−8220、
データ処理システム:GPC−8020model II、
カラム:TSK guardcolumnHXL−L、TSK−GEL G2000HXL及びTSK−GEL G1000HXLの3種類のカラムを連結して用いた。
【実施例1】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)398.9g(乳酸4.0モル相当)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル285.5g(1.7モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.4g(L−乳酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して4時間保温した後、220℃に昇温し10時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマーエステル517.8g(重量平均分子量約500)を得た。
【実施例2】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)315.0g(乳酸3.1モル相当)を加え、170℃まで昇温した。5時間後にトリエチレングリコールモノメチルエーテル208.2g(1.3モル)を15分かけて滴下した。200℃に昇温し25時間後エナント酸(商品名「ヘプチル酸」、伊藤製油(株)製)126.8g(1.0モル)を10分かけて滴下した。50時間保温した後、未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマーエナント酸エステル316.6g(重量平均分子量約700)を得た。
【実施例3】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)315.0g(乳酸3.1モル相当)を加え、170℃まで昇温した。5時間後にトリエチレングリコールモノメチルエーテル208.2g(1.3モル)を15分かけて滴下した。200℃に昇温し25時間後、140℃に冷却した。無水酢酸(和光純薬(株)製)265.5g(2.6モル)を20分かけて滴下した。4時間保温した後、未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマー酢酸エステル432.0g(重量平均分子量約520)を得た。
【実施例4】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)315.0g(乳酸3.1モル相当)を加え、170℃まで昇温した。5時間後にトリエチレングリコールモノメチルエーテル208.2g(1.3モル)を15分かけて滴下した。200℃に昇温し25時間後、ラウリン酸(商品名「LUNAC L−98」、花王(株)製)238.2g(1.2モル)を徐々に投入した。40時間保温した後、未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマーラウリン酸エステル570.2g(重量平均分子量約700)を得た。
【実施例5】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、グリコール酸(グリコール酸約70重量%含有)(商品名「GLYCOLIC ACID」、デュポン社製)434.4g(グリコール酸4.1モル相当)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル286.3g(1.7モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.6g(グリコール酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して4時間保温した後、220℃に昇温し5時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノメチルエーテルグリコール酸オリゴマーエステル465.6g(重量平均分子量約500)を得た。
【実施例6】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)398.9g(乳酸4.0モル相当)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル503.4g(3.1モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.4g(L−乳酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して4時間保温した後、220℃に昇温し10時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマーエステル731.7g(重量平均分子量約400)を得た。
【実施例7】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)398.9g(乳酸4.0モル相当)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル130.6g(0.8モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.4g(L−乳酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して4時間保温した後、220℃に昇温し8時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマーエステル382.4g(重量平均分子量約1,000)を得た。
【実施例8】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)398.9g(乳酸4.0モル相当)、トリプロレングリコールモノメチルエーテル360.9g(1.7モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.4g(L−乳酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して4時間保温した後、220℃に昇温し5時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、トリプロレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマーエステル560.7g(重量平均分子量約600)を得た。
【実施例9】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)398.9g(乳酸4.0モル相当)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル358.7g(1.7モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.4g(L−乳酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して4時間保温した後、220℃に昇温し10時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノブチルエーテル乳酸オリゴマーエステル570.4g(重量平均分子量約500)を得た。
【実施例10】
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)398.9g(乳酸4.0モル相当)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル309.9g(1.7モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.4g(L−乳酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して4時間保温した後、220℃に昇温し、10時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、トリエチレングリコールモノエチルエーテル乳酸オリゴマーエステル567.4g(重量平均分子量約500)を得た。
比較例1
冷却管及び攪拌装置をつけた1リットルの反応容器に、乳酸メチル(商品名「PURASOLV ML」、PURAC社製)624.6g(6.0モル相当)を加え、135℃まで昇温した。135℃で保温し7時間後にジブチルスズジラウレート0.6g(乳酸メチル100重量部に対して0.1重量部)を添加し、70時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、乳酸オリゴマーメチルエステル400.8g(重量平均分子量約400)を得た。
比較例2
冷却管及び攪拌装置をつけた2リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)398.9g(乳酸4.0モル相当)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(商品名「トーホーメトキシポリエチレングリコール400」、東邦化学(株)製、平均分子量374〜432)695.1g(約1.7モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.4g(L−乳酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して5時間保温した後、220℃に昇温し10時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマーエステル874.6g(重量平均分子量約800)を得た。
比較例3
冷却管及び攪拌装置をつけた2リットルの反応容器に、L−乳酸(商品名「HiPure90」、PURAC社製、L−乳酸約90重量%含有)398.9g(乳酸4.0モル相当)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(商品名「トーホーメトキシポリエチレングリコール400」、東邦化学(株)製、平均分子量374〜432)484.0g(約1.2モル)を加え、170℃まで昇温した。170℃で保温し1時間後にトリフェニルフォスファイト2.4g(L−乳酸100重量部に対して0.6重量部)を添加した。添加して5時間保温した後、220℃に昇温し10時間攪拌した。未反応物を減圧留去し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル乳酸オリゴマーエステル874.6g(重量平均分子量約1,000)を得た。
試験例1〜19
ポリ乳酸(商品名「LACTY 9031」、島津製作所(株)製、重量平均分子量14万、融点133℃)、ポリブチレンアジペート・テレフタレート共重合体(商品名「エコフレックス」、BASF社製)又はポリブチレンサクシネート(商品名「ビオノーレ#1001G」、昭和高分子(株)製)100重量部に対して、実施例1〜10の化合物、比較例1〜3の化合物及び公知可塑剤のグリセリルトリアセテートを、表1に示される量可塑剤として添加し、設定温度190℃でブラベンダー社製トルクレオメーター(商品名「プラスチコーダーPL−2000」)により、溶融混練し、樹脂組成物を得た。また、可塑剤を用いない場合として、各樹脂を同様に溶融混練した。
得られた各樹脂組成物等を用いて、溶融温度170℃、冷却温度20℃で圧縮成形し試験片(10mm×10mm×2mmの直方体)を作成した。この試験片について透明性、柔軟性及び耐ブリードアウト性の評価を行った。
透明性:試験片を目視で調べ、濁りが無いものをA、有るものをBと評価した。
柔軟性:柔軟性の指標として、試験片のガラス転移点(℃)を測定した。ガラス転移点が雰囲気温度以下であれば、試験片はゴム状態、つまり柔軟性のある状態といえる。ガラス転移点の測定は、示差走査熱量計(商品名「DSC220C」、セイコー電子社製)により測定を行った。
耐ブリードアウト性:試験片を、室内及び70℃恒温槽中に保管し、1週間後、可塑剤がブリードアウトした表面積の割合(%)を、下記式により、求めた。
〔(可塑剤がブリードアウトした表面積)/(試験片の上部面積10mm×10mm)〕×100
上記表面積の割合により、耐ブリードアウト性の程度を、次の4段階で評価した。4;ブリードアウト面積0%、3;ブリードアウト面積0%を超えて10%未満、2;ブリードアウト面積10%以上50%未満、1;ブリードアウト面積50%以上。
試験結果を、表1に示す。

表1中、可塑剤のGTAはグリセリルトリアセテート(商品名「トリアセチン」、大八化学工業(株)製)を示す。樹脂のPLAはポリ乳酸、PBATはポリブチレンアジペート・テレフタレート共重合体、PBSはポリブチレンサクシネートを示す。
表1試験例13の耐ブリードアウト性の70℃における試験において、2*は次のことを示す。即ち、用いた可塑剤が低沸点であり70℃では蒸散するため目視ではブリードアウトを観察できなかったが、試験後の試験片のガラス転移点を再測定したところ、39℃という大幅なガラス転移点の上昇があることから、ブリードアウトしたことが明らかであることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):

(式中、Rは水素原子又は炭素数2〜20のアシル基を示す;Rはヒドロキシカルボン酸残基を示す;R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。kは1〜60の整数を示す;p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物を、含有する樹脂用可塑剤。
【請求項2】
樹脂及び請求項1に記載の樹脂用可塑剤を含有する樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂100重量部に対して、該樹脂用可塑剤を1〜300重量部程度含有する請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ビニル系樹脂、スチロール系樹脂、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂が、ポリエステルである請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエステルが、ポリ乳酸系樹脂である請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項2に記載の樹脂組成物を成形してなる成形物。
【請求項8】
(a)ヒドロキシカルボン酸と、(b)一般式(2):

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物とを、反応させた後、必要に応じて、更に(c)炭素数2〜20のカルボン酸を反応させて得られる反応生成物を、含有する樹脂用可塑剤。
【請求項9】
(a)成分が、グリコール酸、グリコール酸オリゴマー、乳酸、乳酸オリゴマー及びグリコール酸と乳酸との混合オリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載の樹脂用可塑剤。
【請求項10】
(b)成分が、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載の樹脂用可塑剤。
【請求項11】
(c)成分が、炭素数2〜11の脂肪族カルボン酸の少なくとも一種である請求項8に記載の樹脂用可塑剤。
【請求項12】
樹脂及び請求項8に記載の樹脂用可塑剤を含有する樹脂組成物。
【請求項13】
樹脂100重量部に対して、該樹脂用可塑剤を1〜300重量部程度含有する請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
樹脂が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ビニル系樹脂、スチロール系樹脂、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
樹脂が、ポリエステルである請求項14に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
ポリエステルが、ポリ乳酸系樹脂である請求項15に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
請求項12に記載の樹脂組成物を成形してなる成形物。
【請求項18】
(a)ヒドロキシカルボン酸と、(c)炭素数2〜20のカルボン酸とを反応させた後、更に(b)一般式(2):

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す;Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜20のアシル基を示す。p、p’、q及びq’は、0〜6の整数(但し1≦p+q≦6、1≦p’+q’≦6)を示す;r及びr’は、0〜7の整数(但し1≦r+r’≦7)を示す。)で表される化合物を、反応させて得られる反応生成物を、含有する樹脂用可塑剤。

【国際公開番号】WO2004/067639
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504760(P2005−504760)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000885
【国際出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】