説明

樹脂用改質剤及びこれを用いた樹脂組成物、成形品

本発明の要旨は、平均粒子径が20μm以上であり、10μm以下の粒子の占める割合が30質量%未満である樹脂用改質剤であって、40wの超音波を5分間照射した後に、10μm以下の粒子の占める割合が30質量%以上となる樹脂用改質剤にある。 また、本発明の要旨は、前記樹脂用改質剤1〜40質量%と、熱可塑性樹脂もしくは硬化性樹脂99〜60質量%(両者の合計量が100質量%)からなる樹脂組成物ならびにこれを成形してなる成形品にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂または熱可塑性樹脂に対して優れた分散性を示す樹脂用改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子製品、自動車、建材などその用途に応じて樹脂製品が製造されている。それらの成形品は目的に応じて要求される性能を発現させるために、1種または数種の樹脂や添加剤が添加される。これらの樹脂は、高い靭性が必要な場合が多く、それらが製造される最終用途に要求される耐衝撃性強度を付与するために樹脂用改質剤を添加している。
通常この樹脂用改質剤は粉末形態で供給される。そのためマトリックス樹脂への分散が非常に重要な要素となり、分散不良を起こした場合には十分な改質効果が得られなかったり、ブツとして外観に現れたりすることがある。電気電子部品やソルダーペースト、塗料において樹脂用改質剤の分散性は特に重要な要素である。その中でも半導体封止材用改質剤としては、近年の半導体素子の高機能化、高集積化に伴うパッケージの薄型化、微細化に伴い分散不良を起こさないことが必須条件となっている。
これまで半導体封止材用途として強度を付与する方法としては、エポキシ樹脂にMBS樹脂などのゴム等を添加する添加する方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2000−7890号公報
【特許文献2】特開昭62−22825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記樹脂用改質剤においては、低せん断において加工される成形方法においてはその分散性が十分ではなく、例えば封止用エポキシ樹脂に添加した際に分散不良を起こし、ハンダ処理時の熱応力により、樹脂自体にクラック発生または破壊しまう場合がある。
本発明は、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂に添加されたとき優れた分散性を示し、耐衝撃性や艶消し性、あるいは増粘性を付与することが可能な樹脂用改質剤を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の樹脂用改質剤の要旨は、平均粒子径が20μm以上であり、10μm以下の粒子の占める割合が30質量%未満である樹脂用改質剤であって、40wの超音波を5分間照射した後に、10μm以下の粒子の占める割合が30質量%以上となる樹脂用改質剤にある。
また、本発明の樹脂組成物の要旨は、前記樹脂用改質剤1〜40質量%と、熱可塑性樹脂もしくは硬化性樹脂99〜60質量%(両者の合計量が100質量%)からなる樹脂組成物にある。
更に本発明の成形品の要旨は、前記樹脂組成物を成形してなる成形品にある。
【発明の効果】
【0005】
本発明の樹脂用改質剤によれば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂に配合した際の分散性に優れ、その製品の外観が良好で、十分な衝撃強度を付与することができる。
また、本発明の樹脂用改質剤を熱可塑性樹脂、硬化性樹脂に配合した樹脂組成物はIC封止剤、ソルダーペストならびに成型品に適用することができる。
更に本発明の樹脂用改質剤を硬化性樹脂組成物に配合すると、摩擦によっても光沢が上昇することがなく、リコートされた塗膜の密着性が良好な艶消し塗膜を形成することができる。また、本発明の樹脂用改質剤は、非水系塗料に対して優れた増粘性を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の樹脂用改質剤の構造は特に限定されるものではないが、グラフト共重合体を用いることが好ましい。グラフト共重合体としては、ゴム状重合体を幹ポリマーとし、これにグラフト重合可能なビニル系単量体をグラフトさせた一般的にコア/シェル型と呼ばれる構造を有するものであれば特に制限はない。
ゴム状重合体としては特に限定するものでは無いが、一般的に用いられるジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴムもしくはシリコーン/アクリル系複合ゴムを用いることが出来る。これらのうち、特に分散性の高い樹脂用改質剤が得られることから、アクリル系ゴムが好ましく用いられる。
【0007】
前記ジエン系ゴムとしては、1,3−ブタジエン及び必要に応じてこれと共重合しうる一種以上のビニル系単量体を重合することにより得ることができる。ここでビニル系単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体等がある。
さらに、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコール、トリメタクリル酸エステル、トリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物等の架橋性単量体を併用することもできる。
該ビニル系単量体及び架橋性単量体は、一種または二種以上を使用することができる。連鎖移動剤として、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、α−メチルスチレン等を使用することができる。好ましくはt−ドデシルメルカプタンが使用できる。
【0008】
ブタジエン系ゴムの重合方法としては好ましくは乳化重合法が用いられる。
重合開始剤としては、特に限定されないが過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性過硫酸、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメインハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸過物を一成分としたレドックス系開始剤、または上記過酸化物と1種以上の還元剤を組み合わせたものを使用できる。重合は重合開始剤の種類にもよるが40〜80℃程度の範囲で適宜行うことができる。また、乳化剤としては公知の乳化剤を適宜用いることができ、1段もしくは多段シード重合を用いることが出来る。場合によってはソープフリー重合を用いても良い。粒子径を制御する上において得られたゴムラテックスを酸或いは塩等で肥大化する方法などの方法を用いて製造することもできる。
【0009】
前記アクリル系ゴムは、1種もしくは2種以上のアルキル(メタ)アクリレート、およびこれと共重合しうる一種以上のビニル系単量体を重合することにより得ることができる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
単量体には、分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体が20質量%以下の範囲、好ましくは0.1〜18質量%以下の範囲で含まれていてもよい。分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体は、架橋剤またはグラフト交叉剤としての役割を有するものであり、架橋剤としては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、多官能メタクリル基変性シリコーンなどのシリコーン等が挙げられる。また、グラフト交叉剤としては、例えばアリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。アリルメタクリレートは架橋剤として用いることもできる。これら架橋剤およびグラフト交叉剤は単独でまたは2種以上併用して用いられる。
さらにこの単量体には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メタクリル酸変性シリコーン、フッ素含有ビニル化合物等の各種のビニル系単量体が30質量%以下の範囲で共重合成分として含まれていてもよい。
上述のアクリル系ゴムは、単層、もしくは2段以上の多層構造を有するものでも良い。また成分が2種類以上含み、ガラス転移温度を2つ以上有するポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムでも良い。
【0010】
アクリル系ゴムを重合する際の重合方法や重合条件は特に限定されないが、通常、乳化重合、好ましくはソープフリー乳化重合が用いられる。必要があれば強制乳化重合によっても良い。
重合開始剤としては、特に限定されないが過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性過硫酸、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメインハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸過物を一成分としたレドックス系開始剤、または上記過酸化物と1種以上の還元剤を組み合わせたものを使用できる。
使用する乳化剤としては、特に限定されないが必要に応じて不均化ロジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸のアルカリ金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸アルカリ金属塩を1種以上添加することが出来る。
粒子径を制御する上において得られたゴムラテックスを酸或いは塩等で肥大化する方法などの方法を用いて製造することもできる。
【0011】
前記シリコーン系ゴムとしては、特に限定されるものではないが,好ましくはビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが好ましく用いられる。
ポリオルガノシロキサンの製造に用いるジメチルシロキサンとしては,3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ,3〜7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン,ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられるが,これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
また,ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては,ビニル重合性官能基を含有しかつジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであり,ジメチルシロキサンとの反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には,β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン,γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン,γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン,γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン,γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン,γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエトキシメチルシランおよびδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシラン,テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン,p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシラン,さらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン,γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。なお,これらビニル重合性官能基含有シロキサンは単独でまたは二種以上の混合物として用いることができる。
シロキサン系架橋剤としては,3官能性または4官能性のシラン系架橋剤,例えばトリメトキシメチルシラン,トリエトキシフェニルシラン,テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,テトラブトキシシラン等が用いられる。
【0012】
上記ポリオルガノシロキサンの製造は、具体的には、例えば、ジオルガノシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物またはさらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和することにより行うことができる。
重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化されたラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等があるが、ポリオルガノシロキサン粒子径の制御のしやすさを考慮すると、シロキサン混合物が微粒子化されたラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
シロキサン混合物、乳化剤、水および/または酸触媒を混合する方法は、高速攪拌による混合、ホモジナイザーなどの高圧乳化装置による混合などがあるが、ホモジナイザーを使用する方法はポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径の分布が小さくなるので好ましい方法である。
【0013】
ポリオルガノシロキサンの製造の際に用いる乳化剤としては,アニオン系乳化剤が好ましく,アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤が使用される。特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ラウリル硫酸ナトリウムなどが好ましい。
ポリオルガノシロキサンの重合に用いられる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合の停止は、反応液を冷却し、さらにラテックスを苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質により中和することによって行うことができる。
【0014】
本発明では上記シリコーンゴムにアルキル(メタ)アクリレートゴムを複合化させたシリコーン/アクリル系複合ゴムを用いることも出来る。シリコーン/アクリル系複合ゴムは、ポリオルガノシロキサン成分のラテックス中へアルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合することによって調製することができる。アルキル(メタ)アクリレートを添加する方法としては、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスと一括で混合する方法とポリオルガノシロキサン成分のラテックス中に一定速度で滴下する方法がある。なお、得られるグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性を考慮すると、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスとを一括で混合する方法が好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては,例えばメチルアクリレート,エチルアクリレート,n−プロピルアクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびヘキシルメタクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート,n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ,これらを単独でまたは二種以上併用して用いることができる。またグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性および成形光沢を考慮すると,特にn−ブチルアクリレートの使用が好ましい。
【0015】
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては,例えばアリルメタクリレート,エチレングリコールジメタクリレート,プロピレングリコールジメタクリレート,1,3−ブチレングリコールジメタクリレート,1,4−ブチレングリコールジメタクリレート,トリアリルシアヌレート,トリアリルイソシアヌレート等が挙げられ,これらを単独でまたは二種以上併用して用いることができる。
重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ハイドロパーオキサイドを組み合わせた系が好ましい。
【0016】
本発明の樹脂用改質剤に用いるグラフト共重合体ラテックスは、上記ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴムもしくはシリコーン/アクリル系複合ゴムから選ばれるいずれか1種またはそれ以上の成分からなるゴム重合体ラテックスの存在下に、1種以上の共重合可能なビニル系単量体を添加し、グラフト重合させることにより得られる。
本発明において、グラフト重合に使用する単量体としては、ゴム重合体に共重合可能であれば特に限定するものではない。例えばスチレン、α−メチルスチレンならびに各種ハロゲン置換およびアルキル置換スチレン等の芳香族ビニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体、ヒドロキシメタクリレートなどのヒドロキシ基を有するビニル系単量体及び前述の架橋性単量体、連鎖移動剤との単量体混合物を使用することができる。これら単量体混合物は、分散性と衝撃強度のバランスより必要の応じて一段もしくは二段以上の多段グラフト重合することができる。
【0017】
本発明の樹脂用改質剤に用いるグラフト共重合体においては、グラフト重合に用いる単量体の全量とゴム重合体の量の合計を100質量%とした場合、グラフト重合に用いる単量体の全量が5〜50質量%であることが好ましい。グラフト重合に使用する単量体の全量が50質量%を越えると耐衝撃性が劣り、また5質量%未満であると、分散性が劣る傾向にある。
本発明の樹脂用改質剤に用いるグラフト共重合体は、衝撃強度向上の観点から、コア成分のガラス転移温度(Tg)が−150℃〜10℃の範囲内、より好ましくは−70℃〜−20℃の範囲内にあるものを使用することが好ましい。また、分散性の観点よりシェル成分のTgが30℃〜150℃、更に好ましくは40〜130℃の範囲内にあるものを使用することが好ましい。ここで重合体のTgは、動的機械的特性解析装置(以下DMA)で測定されるTanδの転移点として測定される。
【0018】
本発明の樹脂用改質剤に用いるグラフト共重合体は、重合により得られたラテックスの噴霧乾燥により回収されるが、この時熱可塑性樹脂や硬化性樹脂中での分散性を向上させるために、最終的に得られたラテックス中での平均粒子径が200nm以上であるグラフト重合体を使用することが好ましい。平均粒子径が200nmより小さい場合には、得られた樹脂用改質剤の1次粒子が融着し、良好な分散性を示すことが出来ない。また同様に粉体分散性制御の点から、ラテックス粒子の粒子径分布は出来るだけ狭くすることが好ましい。また、150nm以下の粒子は存在しても特に不都合は無いが、出来るだけ少ないほうがより好ましい。
なお、グラフト共重合体ラテックスには、必要に応じてあらかじめ適当な酸化防止剤や添加剤を加えることが出来る。
【0019】
得られたグラフト共重合体ラテックスは、噴霧乾燥により乾燥することにより粉体化する。噴霧乾燥は、ラテックスを微小液滴状に噴霧し、これに熱風を当てて乾燥するものであり、用いられる装置としては、特に制限はないが、例えば、液滴を発生する方法としては、回転円盤型式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、加圧二流体ノズル式などのいずれのものでも使用することができる。また、乾燥機容量も特に制限がなく、実験室で使用するような小規模なスケールから、工業的に使用するような大規模なスケールまでのいずれでも使用することができる。
乾燥機における乾燥用加熱ガスの供給部である入口部、また乾燥用加熱ガスおよび乾燥粉末の排出口である出口部の位置も通常用いられている噴霧乾燥の装置と同様であってよく、特に限定されるものでない。装置内に導入する熱風の温度(熱風入口温度)、すなわちグラフト共重合体に接触し得る熱風の最高温度は200℃以下が好ましく、特に好ましくは120〜180℃である。
また、噴霧乾燥する際に、グラフト重合体ラテックスは単独でもよいが、複数のラテックスの混合物であってもよい。さらには、噴霧乾燥時のブロッキング、嵩比重等の粉末特性を向上させるために、シリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機質充填剤や、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等を添加して噴霧乾燥を行うこともできる。また、噴霧するラテックスに適当な酸化防止剤や添加剤等を加えて噴霧乾燥することもできる。
【0020】
上記噴霧条件によって得られた樹脂用改質剤は、その平均粉体粒子径が20μm以上であって、10μm以下の粒子の占める割合が30質量%未満である。10μm以下の粒子の占める割合は、ハンドリング性の観点から20質量%とすることが好ましく、10質量%以下とすることが最も好ましい。また、樹脂用改質剤の平均粒子径は200μm以下であることが好ましい。
本発明の樹脂用改質剤はグラフト共重合体ラテックス中の1次粒子が完全に融着せず凝集した構造を有しており、40wの超音波を5分間照射した後に、10μm以下の粒子の占める割合が30質量%以上となる。なお、40wの超音波を5分間照射した後に、10μm以下の粒子の占める割合が40質量%以上となる樹脂用改質剤が好ましく、更には50質量%以上となる樹脂用改質剤が最も好ましい。
なお、上記の超音波の照射は、得られた粉体を蒸留水で希釈して行うものであり、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3000、濃度範囲は装置が自動算出)を用いて、5分間超音波を照射(40W)後、10μm以下の粒子の割合を重量%で測定する。
【0021】
本発明の樹脂組成物に用いられる硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は特別に限定されるものではなく、公知のものであればいかなるものも使用することができる。前記硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が含まれる。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂が挙げられる。これらは混合して使用することも出来る。なお本発明の樹脂用改質剤はこれらの熱硬化性樹脂のうち、特にエポキシ系樹脂に好適に用いられる。
エポキシ樹脂としては、公知の各種のものが使用でき、その分子中にエポキシ結合を少なくとも2個有するものであれば分子構造、分子量等に特に制限はない。例えばジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型などの各種エポキシ樹脂を単独または2種以上併用して用いることが出来る。上記硬化剤としては、例えばフェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤、アミン系硬化剤及び酸無水物硬化剤等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよく、使用量については特に制限はないが、エポキシ基硬化の化学量論量を加えることが必要である。
また、フェノール樹脂としては公知の各種のものが使用でき、例えば各種フェノール類とホルムアルデヒドまたはC2以上のアルデヒドから誘導されるレゾール型あるいはノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。これらフェノール樹脂は乾性油、キシレン樹脂、メラミン樹脂等で変性されたものであっても良い。ノボラック型フェノール樹脂の場合は通常ヘキサミン等のポリアミン、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、ポリホルムアルデヒド化合物あるいはレゾール型フェノール樹脂等の硬化剤が更に併用される。
不飽和ポリエステル樹脂としては公知の各種のものが使用でき、例えばイソフタル酸、オルソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、無水エンドメチレンラトラヒドロフタル酸、クロルデン酸などの飽和二塩基酸と、エチレングリコールジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、水素化ビスフェノールA、ネオペンテルグリコール、イソペンテルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどの多価アルコールと、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸とを180℃〜250℃で反応させて得られるものである。共重合性モノマーとしては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ジビンルベンゼン、ジアリルフタレート、ビニルトルエン、アクリル酸エステル類などの不飽和ポリエステル樹脂と共重合性を有し不飽和基を有するモノマー又はそのプレポリマーを用いることが出来る。
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知の様々な添加剤を併用することが出来る。例えば、種々の硬化促進剤、シリコーンオイル、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル類、パラフィン類等の離型剤、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の粉体やガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤、塩素化パラフィン、ブロムトルエン、ヘキサブロムベンゼン、三酸化アンチモン等の難燃剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤。シランカップリング剤等を使用することができる。
【0022】
硬化性樹脂組成物の調整方法としては、特に限定されるものではなく、公知の技術を使用することが出来る。例えば組成物を溶液状態で混合するか、ミキシングロールやニーダー等を用いて溶融混合し冷却した後、粉砕もしくは打錠し、トランスファー成形、シートコンパウンドモールディング成形、バルクモールディング成形等を用いることが出来る。さらには塗料および接着剤組成物として用いることが出来る。
【0023】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて得られる成形体としては、例えばIC封止材を含む電気電子、自動車、および建材用成形材料、更には塗料、接着剤、回線基板保護膜用ソルダーペーストなどを挙げることができる。また本発明の樹脂用改質剤は、非水系塗料に対して優れた増粘性を発現する。
本発明による樹脂用改質剤を塗料に添加する時期は、顔料を混練する過程でも良いし、また塗料を製造した後に添加しても良い。添加温度に制限はなく、分散機は塗料の製造で一般に用いられるものが使用できる。
本発明の樹脂用改質剤を用いることにより、エポキシ塗料やウレタン塗料などの防食塗料において、垂れ防止性、塗料製造工程の効率化などの要求に対応が可能となる。
【0024】
本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、結晶性もしくは非晶性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート−スチレン系樹脂、ポリアルキル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリアクリロニトリルスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上併用して使用することが出来る。
上記熱可塑性樹脂組成物には、熱または光に対する安定剤、例えばフェーノール系、フォスファイト系、イオウ系安定剤、紫外線吸収剤、アミン系の光安定剤を添加してもよい。また、耐加水分解性等の改質剤、例えばエポキシ系改質剤を添加してもよい。さらに公知の難燃化剤や酸化チタン、タルク等の充填剤、染顔料、可塑剤等を必要に応じて添加することができる。
調製方法は特に限定されるものではなく、公知の技術、例えばヘンシェルミキサー、タンブラー等で粉体、粒状物を混合し、これを押し出し機、ニーダー、ミキサー等で溶融混合する方法、あらかじめ溶融させた成分に他成分を逐次混合していく方法、さらには混合物を直接射出成形機で成形する方法等各種の方法で製造することができる。また射出成形の他にも、カレンダー成形、ブロー成形、押し出し成形、熱成形、発泡成形、溶融紡糸などを挙げることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお各記載中「部」は質量部を、「%」は質量%を示す。
なお、本実施例において、ラテックス粒子径、およびガラス転移点(Tg)は以下の方法にて測定を行った。
1)ラテックス粒子径
得られたラテックスを蒸留水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA−910)を用い、50%体積平均粒子径を測定した。
2)粉体のガラス転移点
樹脂用改質剤を3mm厚み×10mm幅×12mm長さの試片に調整し、動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製DMA983)により、昇温速度2℃/minの条件でTanδ曲線を測定し、転移点に対応した温度をガラス転移温度として求めた。
3)粉体の平均粒子径
得られた粉体を蒸留水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3000)を用い、50%体積平均粒子径を測定した。
4)粉体の解砕性
得られた粉体を蒸留水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3000)を用い、超音波を照射(40W×300sec)後、10μm以下の粒子の割合を重量%で測定した。
【0026】
(製造例1)樹脂用改質剤(IM−1)の製造
5リットルのフラスコに、純水45部、ブチルアクリレート2.5部、アリルメタクリレート0.065部を投入し、窒素雰囲気中、250rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。
つぎに予め調製した過硫酸カリウム0.10部、純水5.2部の溶液を一括投入し、60分間保持し第一段目のソープフリー乳化重合を行った。次にブチルアクリレート67.5部、アリルメタクリレート1.695部、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:ペレックスOT−P)0.6部、純水34.0部の混合液を180分かけて滴下、1時間保持し、第二段目の乳化重合を行いアクリル系ゴム重合ラテックス(R−1)を得た。得られたラテックス(R−1)に、メチルメタクリレート29.4部、エチルアクリレート0.6部、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.4部、純水15.6部の混合液を100分かけて滴下し、1時間保持後乳化重合を終了し、グラフト共重合体(G−1)ラテックスを得た。ラテックス粒子径は900nmであった。得られたグラフト共重合体ラテックスは噴霧乾燥機を用い、圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃にて乾燥し、樹脂用改質剤(IM−1)を得た。
粉体の平均粒子径は43μmであった。粉体粒子の解砕性は64%であった。ガラス転移点は、ゴム部−23℃、グラフト部86℃であった。
【0027】
(製造例2)樹脂用改質剤(IM−2)の製造
5リットルのフラスコに、純水88部、ブチルアクリレート5部、アリルメタクリレート0.125部を投入し、窒素雰囲気中、250rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。つぎに予め調製した過硫酸カリウム0.10部、純水5.2部の溶液を一括投入し、60分間保持し第一段目のソープフリー乳化重合を行った。次にブチルアクリレート65部、アリルメタクリレート1.625部、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.6部、純水34.0部の混合液を180分かけて滴下、1時間保持し、第二段目の乳化重合を行いアクリル系ゴム重合ラテックス(R−2)を得た。得られたラテックス(R−4)に、メチルメタクリレート25.4部、エチルアクリレート0.6部、グリシジルメタクリレート4部、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.4部、純水15.6部の混合液を100分かけて滴下、1時間保持後乳化重合を終了し、グラフト共重合体(G−2)ラテックスを得た。ラテックス粒子径は600nmであった。得られたグラフト共重合体ラテックスは噴霧乾燥機を用い、圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃にて乾燥し、樹脂用改質剤(IM−2)を得た。粉体の平均粒子径は38μmであった。粉体粒子の解砕性は57%であった。ガラス転移点は、ゴム部−25℃、グラフト部83℃であった。
【0028】
(製造例3)樹脂用改質剤(IM−3)の製造
製造例2で得られたラテックス(R−2)に、メチルメタクリレート28.4部、エチルアクリレート0.6部、アリルメタクリレート0.75部、グリシジルメタクリレート1部、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.4部、純水15.6部の混合液を100分かけて滴下、1時間保持後乳化重合を終了し、グラフト共重合体(G−3)ラテックスを得た。ラテックス平均粒子径は610nmであった。得られたグラフト共重合体ラテックスは噴霧乾燥機を用い、圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃にて乾燥し、樹脂用改質剤(IM−3)を得た。粉体の平均粒子径は60μmであった。粉体粒子の解砕性は55%であった。ガラス転移点は、ゴム部−25℃、グラフト部88℃であった。
【0029】
(製造例4)樹脂用改質剤(IM−4)の製造
オートクレーブに1,3ブタジエン80部、スチレン20部、ジビニルベンゼン4.5部、半硬化牛脂脂肪酸カリウム3部、無水硫酸ナトリウム0.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部、デキストローズ0.2部、硫酸第一鉄0.003部、ピロリン酸ナトリウム・10水和物0.3部、蒸留水220部を仕込み、撹拌しながら52℃で8時間反応させて、ゴム重合体ラテックス(R−3)を得た。得られたゴム共重合体ラテックス(R−3)を65部、アルケニルコハク酸カリウム0.3部、ロンガリット0.3部及び蒸留水を窒素置換したフラスコに仕込み、内温を70℃に保持して第一段目としてメチルメタクリレート30.6部、エチルアクリレート5.4部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.375部の混合物を50分かけて滴下した後、1時間保持した。その後前段階で得られた重合体の存在下で、第二段目としてスチレン44部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.375部の混合物を1時間かけて連続添加した後、100分保持した。しかる後、第一段目および第二段目で得られた重合体の存在下で、第三段目としてメチルメタクリレート20部およびt−ブチルハイドロパーオキサイド0.375部の混合物を15分かけて連続滴下した後、90分保持して重合を終了し、グラフト共重合体ラテックス(G−4)を得た。ラテックス平均粒子径は95nmであった。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸アルミニウムの熱水中に滴下することにより凝固、分離し、洗浄したのち、75℃で16時間乾燥し粉体を得た。その後液体窒素を用いた凍結粉砕を行って微粉化した後、250μmを超える粒子を篩別除去して樹脂用改質剤(IM−4)を得た。粉体の平均粒子径は92μmであった。粉体粒子の解砕性は2%であった。ガラス転移点は、ゴム部−41℃、グラフト部81℃であった。
【0030】
得られた樹脂用改質剤(IM1〜4)の製造に供したラテックス平均粒子径、樹脂用改質剤粉体の超音波照射前後における平均粒子径及び10μm以下の粒子の占める割合、ガラス転移点の測定結果を表1に示した。
【0031】

【0032】
[実施例1〜5、比較例1〜2]
硬化性樹脂100質量部に対して、樹脂用改質剤を表2に示す割合で配合してシート状成形試験片を得た。その試験片を用いてアイゾット衝撃強度及び改質剤の分散性を評価した。
なお、本実施例においては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化(株)製アデカレジンEP−4100E)100部、テトラヒドロメチル無水フタル酸(旭電化(株)製アデカハードナーEH−3326)85部、および表2記載量の樹脂用改質剤を60℃にて攪拌機を用いて150rpmにて90分間攪拌した後、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール1部を加え更に攪拌混合し、得られた組成物を金型に充填し80℃で2時間、120℃で6時間加熱して試験片を作成した。評価方法は以下の方法を用いた。
(1)衝撃強度:シート状試験片を成形し切断後、ASTM D256に基づき評価した。(厚み:1/4インチ、単位:J/m)
(2)分散性:シート状試片表面における樹脂用改質剤の分散状態(凝集状態)を目視で評価した。
○:ゴムの凝集物が観察できない。
×:ゴムの凝集物が観察される。
【0033】


【0034】
[実施例6〜11、比較例3]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート828)30部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート1002)40部、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(旭化成(株)製AER4152)30部、ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン(株)製DICY)5部、3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル尿素(保土ヶ谷化学(株)製DCMU)4部および表3記載量の樹脂用改質剤をフラスコ内でスリーワンモーターと攪拌棒を使用して混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られた組成物を以下の方法により評価した。
(1)硬化樹脂のエネルギー解放率測定
該エポキシ樹脂組成物を、3mmのスペーサーを挟み込んだガラス板間にキャストし、熱風乾燥機中130℃×1時間の条件で加熱硬化させて厚さ2mmの硬化樹脂板を得た。この硬化樹脂板について、ASTM D5045(SENB法)に準拠した試験片を作成して硬化樹脂のエネルギー解放率GIcを求めた。この時、切込み部にはカッタ刃を当ててノッチを入れた。
(3)硬化樹脂のTg測定
該エポキシ樹脂組成物を、2mmのスペーサーを挟み込んだガラス板間にキャストし、熱風乾燥機中130℃×1時間の条件で加熱硬化させて厚さ2mmの硬化樹脂板を得た。この硬化樹脂板について、レオメータ(レオメトリックス社製RDA−700)により昇温速度10℃/min、測定周波数10ラジアン毎秒にて測定された損失正接Tanδのピーク温度を硬化樹脂のガラス転移温度Tgとした。
【0035】


【0036】
[実施例12〜13、比較例4]
たるみ性評価用クリヤー塗料の調整
500mLステンレス容器に、樹脂用改質剤90部、キシレンを210部を入れ、ディスパー攪拌機を用いて2000回転で10分間攪拌し、樹脂固形分30%の樹脂用改質剤キシレン分散液を得た。
温度計、攪拌機、冷却器を備えた500mL四つ口フラスコに、キシレン180部を加え、攪拌しながら固形アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製BR−73)120部をゆっくり投入し、温水浴で50℃まで昇温して1時間攪拌し、樹脂固形分40%のアクリル樹脂のキシレン溶液を得た。
500mLステンレス容器に、先の調整例で調整したアクリル樹脂の40%キシレン溶液を250部入れ、表5記載量の樹脂用改質剤が加わるようにキシレン分散液(例:16.5部の場合、樹脂用改質剤30%キシレン分散液55部)を加えて攪拌した。得られた混合物を粘度がザーンカップ#4で16〜17秒となる様にキシレンで希釈し、たるみ性評価用のクリヤー塗料を得た。得られた塗料を以下の方法により評価した。結果を表4に記す。
(1)たるみ性評価
120mm×120mmのガラス板(厚さ2mm)に、先の調整例で調整したクリヤー塗料をサグテスターを用いて塗装し、試験片を直ちに鉛直に立てて30分放置し、塗料の流れが出なかった最大膜厚を記録し、下の基準により判定した。サグテスターは太佑機材(株)製、9mm、25〜250μm、隙間2mmのものを用いた。
25〜50μm :×
75〜100μm :△
125〜175μm:○
200〜250μm:◎
【0037】


【0038】
[実施例14〜15、比較例5]
耐衝撃性評価用白塗料の調整
300mL蓋つきガラス瓶に、先の調整例で調整したアクリル樹脂の40%キシレン溶液を250部入れ、酸化チタン(CR−90:石原産業(株)製)83.5部、フタル酸ジオクチル25部を加えて混合した。これを遊星ボールミルで1時間分散後、表5記載量の樹脂用改質剤が加わるように先の調整例で調整した改質剤の30%キシレン分散液(例:25部の場合改質剤30%キシレン分散液83.5部)を加え、粘度がフォードカップ#4にて12〜13秒となるようにキシレンで希釈し、白塗料を得た。得られた塗料を以下の方法により評価した。結果を表5に記す。
(1)耐衝撃性評価
先に調整例で調整した白塗料を、試験基材(燐酸処理鋼板に電着塗装、中塗り塗装、水研処理を施した0.8×70×150mmの基材(日本ルートサービス(株)製ダル鋼板D−7))に乾燥膜厚50μmとなるようにスプレー塗装し、室温で20分静置後、60℃で1時間乾燥させて試験片とした。耐衝撃性評価は、デュポン式衝撃変形試験器を用い、1/2インチで500gのおもりを使用した。(JIS K5400)評価結果は、塗膜に割れ、はがれが認められないおもりの高さから、下の基準により判定した。
〜25cm:×
30〜35cm:△
40〜45cm:○
50〜 cm:◎
【0039】


【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の樹脂用改質剤は、種々の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂に添加することにより、良好に分散し、高い耐衝撃性を付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が20μm以上であり、10μm以下の粒子の占める割合が30質量%未満である樹脂用改質剤であって、40wの超音波を5分間照射した後に、10μm以下の粒子の占める割合が30質量%以上となる樹脂用改質剤。
【請求項2】
アクリル系グラフト共重合体からなることを特徴とする請求項1記載の樹脂用改質剤。
【請求項3】
請求項1記載の樹脂用改質剤1〜40質量%と、熱可塑性樹脂もしくは硬化性樹脂99〜60質量%(両者の合計量が100質量%)からなる樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。

【国際公開番号】WO2005/078013
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518005(P2005−518005)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002210
【国際出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】