説明

樹脂積層体

【課題】 外装材に変形が生じるのを抑制することで、製品の外観が損なわれるのを抑制すると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる樹脂積層体を提供することを課題とする。
【解決手段】 複数の発泡性樹脂粒子が一体的に成形されてなる発泡樹脂成形体が非発泡の合成樹脂からなる外装材によって形成された密閉空間内に配置されてなる樹脂積層体において、密閉空間に配置される際の発泡樹脂成形体の内部に残存するガス成分の質量は、発泡樹脂成形体の質量に対して0.7wt%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂からなる外装材によって形成された密閉空間内に発泡樹脂成形体が配置されてなる樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
保冷用や保温用の容器等を形成する際には、熱を伝達し難い材料が用いられている。また、形成された製品の取り扱いが容易となるように軽量であることも要求されている。このような材料としては、非発泡の合成樹脂からなる外装材によって形成された密閉空間に発泡樹脂成形体が配置された樹脂積層体が用いられる。
【0003】
外装材としては、樹脂積層体(即ち、製品)の重量が軽量なものとなるように、一般的に厚みの薄いものが用いられている。一方、発泡樹脂成形体としては、複数の発泡性樹脂粒子が高温の水蒸気と接触することによって一体的に成形されたものが用いられている。かかる発泡樹脂成形体は、内部に間隙(粒子間の間隙)や気泡(粒子内の気泡)を備えているため、軽量で且つ断熱性に優れたものとなっている。そして、このような外装材及び発泡樹脂成形体からなる樹脂積層体を用いることで、優れた保冷性、保温性を有すると共に軽量な製品が形成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−018250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような樹脂積層体を用いて容器などの製品を形成した際には、製品の使用環境、外装材の厚みや材質などの影響によって、外装材に変形(膨れ)が生じてしまう場合がある。かかる外装材の変形は、容器の外観を損なうと共に、容器全体に歪みを生じさせたり、変形した箇所に破損を生じさせたりする要因となる。
【0006】
そこで、本発明は、外装材に変形が生じるのを抑制することで、製品の外観が損なわれるのを抑制すると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる樹脂積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した如き課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、発泡樹脂成形体から密閉空間内へ放散されるガス成分の影響によって、密閉空間の内圧が上昇し、かかる内圧の上昇が外装材に変形(膨れ)を生じさせる要因となることを見出した。そして、発泡樹脂成形体からのガス成分の放散量を低減することで、外装材の変形を抑制し得ることを見出し、ここに発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明に係る樹脂積層体は、複数の発泡性樹脂粒子が一体的に成形されてなる発泡樹脂成形体が非発泡の合成樹脂からなる外装材によって形成された密閉空間内に配置されてなる樹脂積層体において、密閉空間に配置される際の発泡樹脂成形体の内部に残存するガス成分の質量は、発泡樹脂成形体の質量に対して0.7wt%以下であることを特徴とする。また、密閉空間内のガス成分の質量は、発泡樹脂成形体の質量に対して0.7wt%以下であることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、密閉空間内に配置される際の発泡樹脂成形体内のガス成分の質量、又は、密閉空間内のガス成分の質量が、発泡樹脂成形体の質量に対して0.7wt%以下であることで、発泡樹脂成形体から放散されるガス成分の影響によって密閉空間の内圧が上昇し、外装材に変形が生じるのを抑制することができる。これにより、樹脂積層体を用いて形成された製品の外観が損なわれるのを抑制することができると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる。
【0010】
具体的には、上記のような発泡樹脂成形体を成形する際には、一般的に、発泡性樹脂粒子の膨張に伴ってガス成分が発生する。また、成形後においても、温度等の影響によってガス成分がさらに発生する場合もある。このガス成分は、発泡樹脂成形体の内部に残存した状態となっている。このような発泡樹脂成形体が外装材によって形成された密閉空間に配置されると、樹脂積層体(具体的には、製品)が使用される環境等の影響によって、発泡樹脂成形体からガス成分が放散され、密閉空間の内圧が上昇することとなる。このため、変形し易い材質や厚みの外装材が用いられている場合には、内圧の上昇によって外装材に変形が生じてしまう虞がある。
しかしながら、発泡樹脂成形体内のガス成分の質量が発泡樹脂成形体の質量に対して上記のような割合となることで、密閉空間に放散されるガス成分の量を低減することができ、密閉空間の内圧の上昇を抑制することができる。これにより、樹脂積層体を用いて形成された製品の外観が外装材の変形によって損なわれるのを抑制することができると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる。
【0011】
また、密閉空間内の発泡樹脂成形体を85℃の環境下で96時間加熱した際に、密閉空間に放散されたガス成分の体積は、密閉空間の体積に対して0.2〜5vol%であることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、85℃の環境下で96時間加熱された際に発泡樹脂成形体から放散されるガス成分の体積が密閉空間の体積に対して0.2〜5vol%であることで、発泡樹脂成形体から密閉空間内にガス成分が放散された場合であっても、外装材に変形が生じない程度に密閉空間の内圧の上昇を抑制することができる。これにより、樹脂積層体を用いて形成された製品の外観が損なわれるのを抑制することができると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、外装材に変形が生じるのを抑制することで、製品の外観が損なわれるのを抑制すると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る樹脂積層体を用いて形成された容器を示した断面図。
【図2】実施例において作製した容器の断面図。
【図3】実施例において曲げ強度の測定に用いた装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態に係る樹脂積層体1は、保温性や保冷性を有する製品を形成する際に用いられるものであり、例えば、図1に示すような保温用や保冷用の容器などを形成する材料として用いられるものである。
【0017】
樹脂積層体1は、非発泡の合成樹脂からなる外装材2と、複数の発泡性樹脂粒子が一体的に成形されてなる発泡樹脂成形体3とから構成され、外装材2によって形成された密閉空間R内に発泡樹脂成形体3が配置されている。
【0018】
外装材2は、非発泡の熱可塑性樹脂を用いて形成され、複数の外装材2が組み合わされることで、外装材2によって囲まれた密閉空間Rが形成されている。本実施形態では、外装材2は、2つの外装部材21,22から構成され、外装部材21,22との間に密閉空間Rが形成されている。具体的には、外装材2は、断面形状が凹状となるように形成されて上端部に開口部を備える外装部材21,22から構成され、一方の外装部材22の内側に他方の外装部材21が間隔を空けて配置されている。つまり、一方の外装部材22が容器の外壁を形成すると共に、他方の外装部材21が容器の内壁を形成している。以下では、他方の外装部材21を内側外装部材21と記載し、一方の外装部材22を外側外装部材22と記載する。
【0019】
また、外装材2(即ち、内側及び外側外装部材21,22)は、非発泡のポリプロピレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて形成されている。外装材2の厚みとしては、0.2〜7mmであることが好ましく、1〜2.5mmであることがより好ましい。また、外装材2の引張り強度としては、200〜350kgf/cm2であることが好ましく、250〜300kgf/cm2であることがより好ましい。外装材2の曲げ強度としては、20〜80Nであることが好ましく、25〜40Nであることがより好ましい。
なお、引張り強度は、JIS K 7113に基づいて測定されるものであり、曲げ強度は、下記の実施例において説明する方法で測定されるものである。
外装材2を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、射出成形機などを用いて成形することができる。
【0020】
樹脂積層体1は、外装材2によって形成された密閉空間Rを備えている。該密閉空間Rは、複数の外装部材によって囲まれた空間であり、本実施形態では、内側外装部材21と外側外装部材22との間に形成されている。具体的には、内側外装部材21と外側外装部材22との間に間隔が形成されるように外側外装部材22の内側に内側外装部材21を配置した状態で内側外装部材21と外側外装部材22とを連結することで密閉空間R(具体的には、凹状の断面形状を有する密閉空間R)が形成されている。
【0021】
また、内側外装部材21及び外側外装部材22は、それぞれの上端部(開口部側の端部)同士が連結されるように構成されている。具体的には、内側外装部材21の上端部には、開口部の全周に沿ってフランジ部が形成されており、該フランジ部の先端部と外側外装部材22の上端部とが凹凸嵌合するように構成されている。より詳しくは、内側外装部材21のフランジ部には、周方向の全域に亘って凹状の溝部21aが下方に向かって開放するように形成されている。一方、外側外装部材22の上端部には、開口部の周方向の全域に亘って凸状部22aが上方に向かって突出するように形成されている。そして、溝部21aと凸状部22aとが凹凸嵌合するように構成されている。
【0022】
更に、凹凸嵌合した際の内側外装部材21と外側外装部材22との境界部分は、封止材23によって密封されるように構成されている。具体的には、内側外装部材21及び外側外装部材22は、凹凸嵌合した上端部同士の境界部分に、封止材23を埋め込むための埋込溝24が形成されるように構成されている。該埋込溝24は、内側外装部材21と外側外装部材22との境界の全域に沿って連続的に形成されており、内側外装部材21と外側外装部材22との境界が埋込溝24の内側に位置するように構成されている。そして、封止材23によって埋込溝24が埋め込まれることで、内側外装部材21と外側外装部材22とが強固に連結されると共に、境界部分が密封される。これにより、気密性に優れた密閉空間Rが形成される。
【0023】
封止材23としては、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂からなるものを用いることができ、特には外装材2を形成する材質と同一の材質(本実施形態では、ポリプロピレン)を用いることが好ましい。封止材23を用いて埋込溝24を埋め込む際には、封止材23を加熱して軟化させた状態で埋込溝24の内側に配置し、埋込溝24の内面に密着させるように埋込溝24を埋め込むことで、内側外装部材21と外側外装部材22との境界部分が密封される。
【0024】
発泡樹脂成形体3は、複数の発泡性樹脂粒子が型内成形されたものである。具体的には、発泡樹脂成形体3は、複数の発泡性樹脂粒子を水蒸気等で加熱して予備発泡させたもの(予備発泡樹脂粒子)を金型内に充填し、高温の水蒸気と接触させることで、各粒子を膨張させると共に表面を溶融軟化させて一体的に成形したものである。
【0025】
発泡性樹脂粒子としては、熱可塑性樹脂からなる粒子に発泡剤を含浸させたものを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)又はこれらを含む複合樹脂からなるものが挙げられる。好ましくは、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂又はこれらを含む複合樹脂からなるものを用いることができる。
【0026】
発泡樹脂成形体3は、密閉空間Rに対応した形状に成形されている。また、発泡樹脂成形体3は、密閉空間R内に配置された状態で、外装材2との間に隙間が形成されるように構成されている。具体的には、密閉空間Rに配置される発泡樹脂成形体3の体積としては、密閉空間Rの体積に対して80〜95%程度であることが好ましい。これにより、外装材2と発泡樹脂成形体3との間に空気の層が形成されるため、保温性、保冷性が良好なものとなる。
【0027】
発泡樹脂成形体3内には、発泡性樹脂粒子を予備発泡させた際に発生したガス成分や、予備発泡樹脂粒子を発泡させた際に発生したガス成分が残存している。また、成形後においても僅かながらガス成分が発生し、発泡樹脂成形体3内に残存している。ガス成分としては、例えば、ブタンやトルエンのガスが挙げられる。また、ガス成分は、粒子間の間隙や粒子の内部に残存しており、樹脂積層体1を用いて形成された製品の使用環境等の影響によって発泡樹脂成形体3から密閉空間R内へ放散される。
【0028】
発泡樹脂成形体3は、内部に残存するガス成分量を成形直後よりも減少させた状態で密閉空間R内に配置される。具体的には、密閉空間Rに配置される際の発泡樹脂成形体3の内部に残存するガス成分の質量は、発泡樹脂成形体3の質量に対して0.7wt%以下である。なお、ガス成分の質量割合は、下記の実施例において説明する方法で測定されるものである。また、以下では、発泡樹脂成形体3に対する発泡樹脂成形体3内に残存するガス成分の質量割合を「残存ガス質量率」と記す。
【0029】
残存ガス質量率を減少させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、風通しの良い保管場所に所定期間保管して養生する方法を採用することができる。これにより、ガス成分が経時的に発泡樹脂成形体3から放散されるため、残存ガス質量率を減少させることができる。または、ガス成分が放散され易い温度に管理された保管場所で所定期間養生する方法を採用することもできる。これにより、発泡樹脂成形体3からガス成分を効率的に放散させ、残存ガス質量率を減少させることができる。例えば、25〜35℃の保管場所に14〜36日間保管することが好ましく、保管場所の温度が5〜25℃である場合には、36〜96日間保管することが好ましい。
【0030】
密閉空間R内に発泡樹脂成形体3を配置する際には、発泡樹脂成形体3を外側外装部材22の内側に配置し、次に、発泡樹脂成形体3の内側に内側外装部材21を配置する。そして、内側外装部材21のフランジ部と外側外装部材22の上端部とを凹凸嵌合させ、封止材23で埋込溝24を埋め込む。これにより、発泡樹脂成形体3が密閉空間R内に配置され、保温性及び保冷性を備えた容器(樹脂積層体1)が形成される。なお、樹脂積層体1が形成された直後の状態においては、外装材2と発泡樹脂成形体3との間(即ち、密閉空間R)には、空気が満たされている。
【0031】
また、樹脂積層体1(本実施形態では、容器)は、残存ガス質量率が上記の割合となっていることで、密閉空間R内のガス成分の質量が発泡樹脂成形体3の質量に対して0.7wt%以下となる。つまり、発泡樹脂成形体3から密閉空間Rへ放散されるガス成分の質量と発泡樹脂成形体3内に残存するガス成分の質量との合計が、発泡樹脂成形体3の質量に対して0.7wt%以下となる。また、樹脂積層体1を85℃の環境下で96時間加熱した際に、密閉空間Rに放散されたガス成分の体積は、密閉空間Rの体積に対して0.2〜5vol%であることが好ましい。なお、以下では、密閉空間Rに放散されたガス成分の体積の密閉空間Rの体積に対する割合を放散ガス体積率と記す。
【0032】
以上のように、本発明に係る樹脂積層体によれば、密閉空間の内圧の上昇を外装材が変形しない程度に抑制することができるため、樹脂積層体を用いて形成された製品の外観が損なわれるのを抑制することができると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる。
【0033】
即ち、樹脂積層体1は、密閉空間R内に配置される際の発泡樹脂成形体3内のガス成分の質量が発泡樹脂成形体3の質量に対して0.7wt%以下であることで、発泡樹脂成形体3から密閉空間R内にガス成分が放散された場合であっても、密閉空間Rの内圧の上昇を外装材2に変形が生じない程度に抑制することができる。このため、樹脂積層体1を用いて形成された製品の外観が外装材2の変形によって損なわれるのを抑制することができると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる。
【0034】
また、密閉空間R内の発泡樹脂成形体3を85℃の環境下で96時間加熱した際に、密閉空間Rに放散されたガス成分の体積が密閉空間Rの体積に対して0.2〜5vol%であることで、密閉空間Rの内圧の上昇を外装材2に変形が生じない程度に抑制することができる。これにより、外装材2に変形が生じるのを抑制することができ、樹脂積層体1を用いて形成された製品の外観が損なわれるのを抑制することができると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができる。
【実施例】
【0035】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0036】
<実施例1及び2>
1.外装材(内側外装部材及び外側外装部材)
(1)外装材の作製
積水化成品社製 エスレンコンテナ SP−15D(平面視において四角形状となるもの)に使用されるポリプロピレン系樹脂を用い、上記実施形態と同様の図2に示すような外装材2(密閉空間Rの体積:10500cm3)を作製した。
【0037】
(2)外装材の厚み
内側外装部材21及び外側外装部材22の底部21a,22aにおける3箇所(平滑な領域)の厚みを測定した。また、側壁部21b,22bにおける3箇所(平滑な領域)の厚みを測定した。そして、各厚みの測定結果から算出された相加平均を外装材2の厚みとした。厚みについては、下記表1に示す通りである。
【0038】
(3)外装材の曲げ強度
テンシロン試験機(エー・アンド・デイ社製)を用いて3点曲げ強度の測定を行なった。具体的には、内側外装部材21及び外側外装部材22のそれぞれの底部21a,22a及び側壁部21b,22bから所定のサイズ(幅:60mm、長さ:120mm)の試験片Aを複数採取した。そして、該試験片Aを、図3に示すように、間隔(100mm)を空けて設置された2つの支点F上に配置した。
【0039】
次に、試験片Aの長手方向の中心部に上方から幅方向の全域に沿って圧子P(先端R:5mm、試験片Aと当接する先端部の長さ:60mm)を当接させ、50mm/minの速度で試験片Aをたわませた。そして、たわみ量hが28mmとなった際の荷重を測定し、各試験片Aの測定結果から算出された相加平均を曲げ強度とした。曲げ強度については、下記表1に示す通りである。
【0040】
2.発泡樹脂成形体
上記実施形態と同様に、外装材2の密閉空間Rに配置可能な発泡樹脂成形体3(体積:10000cm3)を成形した。そして、養生後の残存ガス質量率が下記表1に記載の数値となるように発泡樹脂成形体3を養生した。
【0041】
・養生後の残存ガス質量率
養生した発泡樹脂成形体3の底部の1箇所及び側壁部の2箇所から試験片(5mm×5mm×35mm)を採取し、各試験片について熱分解ガスクロマトグラフを用いて残存ガス質量率を測定した。そして、各試験片における測定結果から相加平均を算出し、残存ガス質量率とした。養生後の残存ガス質量率については、下記表1に示す通りである。
【0042】
使用設備としては、熱分解炉:PYR−1A(島津製作所社製)、ガスクロマトグラフ:GC−14B(島津製作所社製)、カラム:ポラパックQ(80/100、3mmφ×1.5m)、検出器:TCDを用いた。
また、測定条件は、カラム温度:100℃、注入口温度:120℃、検出器温度:120℃、キャリアガス(He)流量:1ml/min、絶対検量線法、加熱炉温度180℃とした。
【0043】
3.膨れ量の測定
上記の外装材2及び養生後の発泡樹脂成形体3を用いて、図2に示すように、上記実施形態と同様の構成の容器1を作製し、斯かる容器1を85℃の恒温槽内に96時間放置して加熱した。そして、内側及び外側外装部材21,22の各底部21a,22aによって形成された容器1の底部と、各側壁部21b,22bによって形成された4つの側壁部との膨れ量の測定を行ない、各箇所の測定結果を合計して膨れ量とした。膨れ量については、下記表1に示す通りである。
【0044】
なお、容器1の底部の膨れ量は、容器1の内側の底面の中央部と、容器1の開口端部との間の垂直距離W1を加熱前後で測定し、その差を底部の膨れ量とした。また、各側壁部の膨れ量は、各側壁部における容器1の外面と内面との間の水平距離W2を加熱前後で測定し、その差を各側壁部の膨れ量とした。下記表1には、加熱前の膨れ量を0mmとして記載した。
【0045】
4.放散ガス体積率・放散ガス質量率
加熱後の容器1を20℃で24時間放置した後、外装材2の一部に錐で穴を開け、直ちにその穴をビニールテープで密封した。そして、ガスタイトシリンジをビニールテープに刺して密閉空間のガス成分を採取した。採取したガス成分についてガスクロマトグラフ質量分析を行ない、密閉空間の体積に対するガス成分(ブタン及びトルエン)の体積割合(以下では、放散ガス体積率と記す)を測定した。測定結果については、下記表1に示す通りである。
【0046】
使用設備としては、ガスクロマトグラフ質量分析計:JMS−Q1000GC(日本電子データム社製)、パージアンドトラップサンプラ:TD−4J型(液クロサイエンス社製)、カラム:ZB−1(Phenomenex社製、1.0μm×φ0.25mm×60m)を用いた。
また、測定条件は、カラム温度:250℃(40℃を3分間維持し、その後、昇温速度15℃/minで200℃まで加熱し、更に昇温速度25℃/minで250℃まで加熱)、注入口温度:250℃、キャリアガス(He)流量:1ml/min、インターフェース温度:250℃、検出器電圧:−1056V、スプリット比:1/50、イオン源温度:250℃、イオン化電流:300μA、イオン化エネルギー:70eV、絶対検量線法とした。
【0047】
5.容器加熱後の残存ガス質量率
加熱後の容器1を20℃で24時間放置した後、外装材2を取り除いて密閉空間から発泡樹脂成形体3を取り出した。そして、発泡樹脂成形体3の底部の1箇所及び側壁部の2箇所から試験片(5mm×5mm×35mm)を採取した。そして、各試験片について熱分解ガスクロマトグラフを用いた測定を行ない、残存ガス質量率を測定した。そして、各試験片の測定結果から相加平均を算出した。残存ガス質量率については、下記表1に示す通りである。
【0048】
使用設備としては、熱分解炉:PYR−1A(島津製作所社製)、ガスクロマトグラフ:GC−14B(島津製作所社製)、カラム:ポラパックQ(80/100、3mmφ×1.5m)、検出器:TCDを用いた。
また、測定条件は、カラム温度:100℃、注入口温度:120℃、検出器温度:120℃、キャリアガス(He)流量:1ml/min、絶対検量線法、加熱炉温度180℃とした。
【0049】
<比較例1及び2>
養生後の残存ガス質量率が下記表1に記載の通りとなる発泡樹脂成形体3を用いたこと以外は、実施例1及び2と同一条件で容器1を作製し、同一条件で各測定を行なった。各測定結果については、下記表1に示す通りである。
【0050】
【表1】

【0051】
上記の試験結果を見ると、実施例1及び2の方が比較例1及び2よりも加熱後の膨れ量が抑制されていることが認められる。つまり、残存ガス質量率が0.7%以下となる発泡樹脂成形体を密閉空間に配置することで、各実施例及び各比較例で用いたような曲げ強度が低い(即ち、変形しやすい)外装材を用いた場合であっても、外装材に変形(膨れ)が生じてしまうのを抑制することができる。このため、樹脂積層体を用いて形成された製品(容器)の外観が外装材の変形によって損なわれてしまうのを抑制することができると共に、製品に歪みや破損が生じるのを抑制することができると認められる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・樹脂積層体、2・・・外装材、3・・・発泡樹脂成形体、21・・・内側外装部材、22・・・外側外装部材、23・・・封止材、24・・・埋込溝、R・・・密閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発泡性樹脂粒子が一体的に成形されてなる発泡樹脂成形体が非発泡の合成樹脂からなる外装材によって形成された密閉空間内に配置されてなる樹脂積層体において、
密閉空間に配置される際の発泡樹脂成形体の内部に残存するガス成分の質量は、発泡樹脂成形体の質量に対して0.7wt%以下であることを特徴とする樹脂積層体。
【請求項2】
複数の発泡性樹脂粒子が一体的に成形されてなる発泡樹脂成形体が非発泡の合成樹脂からなる外装材によって形成された密閉空間内に配置されてなる樹脂積層体において、
密閉空間内のガス成分の質量は、発泡樹脂成形体の質量に対して0.7wt%以下であることを特徴とする樹脂積層体。
【請求項3】
密閉空間内の発泡樹脂成形体を85℃の環境下で96時間加熱した際に、密閉空間に放散されたガス成分の体積は、密閉空間の体積に対して0.2〜5vol%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂積層体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−66560(P2012−66560A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215762(P2010−215762)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】