説明

樹脂組成物、その製造方法及びその硬化物

【課題】流動性と保存安定性に優れる樹脂組成物、及び、それを使用した耐光性及び耐冷熱衝撃性に優れる硬化物、並びにそれらを含む封止材を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を反応させて得られ、
【化1】


前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、を含み、かつ、下記一般式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19であり、
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
更に、残留アルコキシ基量が5%以下である、樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂と、特定のアルコキシシラン化合物とを反応させて得られる樹脂組成物、その製造方法及びその硬化物、並びにそれらを含む封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED関連市場は急激な伸びを示しており、それに伴い、高性能で安価な封止材への需要も高まりつつある。従来、封止材としてはエポキシ樹脂が多く用いられてきたが、性能面、特に耐光性に劣ることから、使用できる分野が制限されている。中でも、ビスフェノールAグリシジルエーテル等の芳香環を持つエポキシ樹脂に関して、この傾向が顕著である。
これに対して、シリコーン樹脂は、耐光性や耐熱性には優れるものの、硬化物の硬度や接着性等に関して課題も多い。また、エポキシ樹脂と比較して、非常に高価であることも含め、実用性に劣る。
特許文献1及び2には、エポキシ樹脂と、予め縮合されたシリコーン樹脂を混合した組成物についての記載がある。
特許文献3及び4には、エポキシ樹脂とメトキシシラン縮合物を混合し、脱アルコール反応により得られる樹脂組成物についての記載がある。
特許文献5及び6には、エポキシ樹脂とテトラメトキシシラン縮合物を混合し、加水分解縮合することにより得られる樹脂組成物についての記載がある。
特許文献7には、環状エーテル基を有する有機基を持つアルコキシシラン化合物と、アリール基を有する有機基を持つアルコキシシラン化合物とを加水分解縮合することによって得られる樹脂についての記載がある。
特許文献8には、固形フェノキシ樹脂とγ−グリシドキシプロピルメトキシシランを、脱メタノール反応させた変性フェノキシ樹脂についての記載がある。
特許文献9及び10には、エポキシ樹脂と、メチルトリメトキシシラン部分縮合物、又は、テトラメトキシシラン部分縮合物とを脱アルコール反応させた、シラン変性エポキシ樹脂についての記載がある。
特許文献11には、エポキシ樹脂と、シラン化合物とを脱アルコール反応させた、シラン変性エポキシ樹脂についての記載がある。当該文献に記載された樹脂は、上記特許文献3及び4に記載されたものと本質的に同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−241230号公報
【特許文献2】特開2006−225515号公報
【特許文献3】特開2005−179401号公報
【特許文献4】特開2003−246838号公報
【特許文献5】国際公開2005/081024号パンフレット
【特許文献6】特開2007−284621号公報
【特許文献7】特開2008−120843号公報
【特許文献8】特開2007−321130号公報
【特許文献9】特開2001−059013号公報
【特許文献10】特開2002−179762号公報
【特許文献11】特開2001−059011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2、5、及び6に記載された樹脂組成物は、環状エーテル基を有する有機基を持つアルコキシシラン化合物、アリール基を有する有機基を持つアルコキシシラン化合物の両者を使用するものではなく、本発明のアルコキシシラン化合物から誘導されるものとは化学構造が異なる。また、これらの樹脂組成物は、シリコーン樹脂を製造後に、エポキシ樹脂と混合するものであり、エポキシ樹脂と特定のアルコキシシラン化合物を混合した後、共加水分解縮合を行う本発明とは、内容を異にする。
このように、エポキシ樹脂の非共存下で製造されたシリコーン樹脂は、保存中に、シリコーン由来の残留水酸基同士の縮合反応が進み易く、保存安定性が不良となる。このシリコーン樹脂にエポキシ樹脂を配合することで、残留水酸基同士の縮合反応が多少妨害され、保存安定性はやや改善するものの、性能としては未だ不十分である。
特許文献3、4、及び11に記載された樹脂組成物は、メトキシシラン縮合物を使用しているという点で、本発明とは内容を異にする。また、このメトキシシラン縮合物には、環状エーテル基を有する有機基を持つアルコキシシラン化合物、アリール基を有する有機基を持つアルコキシシラン化合物は使用されておらず、本発明のアルコキシシラン化合物から誘導されるものとは化学構造が異なる。またその製造方法は、脱アルコール反応であり、本発明の共加水分解縮合反応とは異なる反応機構である。そのため樹脂組成物に、メトキシ基が多く残留してしまう。上記、原料シラン化合物と製造方法の違いから、結果として、硬化物を作製した際の耐冷熱衝撃性に劣り、場合によっては、正常に硬化物が作製できないこともある。
特許文献7に記載された樹脂は、エポキシ樹脂を使用していないシリコーン樹脂であり、本発明とは異なる発明である。
特許文献8に記載された樹脂は、アリール基を有するアルコキシシラン化合物を加えていないことから、本発明の樹脂組成物とは化学構造が異なる。また、当該変性フェノキシ樹脂の実態としての繰り返し単位は50〜300個と非常に分子量が大きいものであり、エポキシ基に由来するエポキシ樹脂としての機能は殆ど有しておらず、本発明の樹脂組成物とは本質的に内容を異にする。
特許文献9及び10には、エポキシ樹脂と、メチルトリメトキシシラン部分縮合物、又は、テトラメトキシシラン部分縮合物を、無水条件下で、脱アルコール反応を行うことにより得られるシラン変性エポキシ樹脂についての記載がある。しかしながら、特定の有機基を持たないアルコキシシランの部分縮合物を原料として使用している点や、無水条件下で反応を行うことで得られる樹脂であることから、本発明の樹脂組成物とは化学構造を異にする。また脱アルコール反応により得られる樹脂組成物には、上述のような問題があり、実用に適さない。
上記事情に鑑み、本発明は、流動性と保存安定性に優れる樹脂組成物、及び、それを使用した耐光性及び耐冷熱衝撃性に優れる硬化物、並びにそれらを含む封止材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、エポキシ樹脂と、特定のアルコキシシラン化合物とを、ある特定の比率で混合して反応させることにより得られる樹脂組成物であって、樹脂組成物中の残留アルコキシ基量を特定範囲に調整することによって、流動性と保存安定性に優れる樹脂組成物、及び、それを使用した耐光性及び耐冷熱衝撃性に優れる硬化物、並びにそれらを含む封止材を提供できることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を反応させて得られ、
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、n=0〜3であり、R1は各々独立に、水素原子、a)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、R2は各々独立に、水素原子、d)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上8以下の1価の有機基、からなる群から選ばれる1種以上の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、を含み、かつ、下記一般式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19であり、
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:前記(B)成分のmol%、αc:前記(C)成分のmol%)
更に、残留アルコキシ基量が5%以下である、樹脂組成物。
[2]
前記(A)エポキシ樹脂の、エポキシ当量(WPE)が100〜300g/eqである、上記[1]記載の樹脂組成物。
[3]
前記(A)エポキシ樹脂は、25℃における粘度が500Pa・s以下の液体である、上記[1]又は[2]記載の樹脂組成物。
[4]
前記(A)エポキシ樹脂は、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂である、上記[1]〜[3]のいずれか記載の樹脂組成物。
[5]
前記(A)エポキシ樹脂は、脂環式エポキシ樹脂である、上記[1]〜[3]のいずれか記載の樹脂組成物。
[6]
前記(A)〜(C)成分に加え、
(D)前記一般式(1)において、n=0である、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を更に反応させて得られる、上記[1]〜[5]のいずれか記載の樹脂組成物。
[7]
下記一般式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標βが、0.01〜1.4である、上記[1]〜[6]のいずれか記載の樹脂組成物;
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
(式中、
βn2:一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn0:一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn1:一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物のmol%、
ここで、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である)。
[8]
下記一般式(4)で表される、前記(A)エポキシ樹脂と前記アルコキシシラン化合物の混合指標γが、0.02〜15である、上記[1]〜[7]のいずれか記載の樹脂組成物;
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
(式中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g))
[9]
加水分解縮合触媒として、(E)有機金属を更に加えて反応させて得られる、上記[1]〜[8]のいずれか記載の樹脂組成物。
[10]
エポキシ当量(WPE)が100〜700g/eqである、上記[1]〜[9]のいずれか記載の樹脂組成物。
[11]
25℃における粘度が1000Pa・s以下の液体である、上記[1]〜[10]のいずれか1項記載の樹脂組成物。
[12]
縮合率が80%以上である、上記[1]〜[11]のいずれか記載の樹脂組成物。
[13]
上記[1]〜[12]のいずれか記載の樹脂組成物に、更に
(A’)エポキシ樹脂
を加えてなる混合樹脂組成物。
[14]
上記[1]〜[13]のいずれか記載の樹脂組成物に、更に
(F)硬化剤
(G)硬化促進剤
を加えてなる混合樹脂組成物。
[15]
上記[1]〜[14]のいずれか記載の樹脂組成物を、熱又はエネルギー線により硬化させて得られる硬化物。
[16]
上記[15]記載の硬化物を含む封止材。
[17]
上記[1]〜[12]のいずれか記載の樹脂組成物の製造方法であって、
(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を、脱水を伴わない還流工程と、それに続く脱水縮合工程と、の2つの工程により構成される共加水分解縮合反応に供することを含む製造方法;
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、n=0〜3であり、R1は各々独立に、水素原子、a)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、R2は各々独立に、水素原子、d)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上8以下の1価の有機基、からなる群から選ばれる1種以上の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、を含み、かつ、下記一般式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:前記(B)成分のmol%、αc:前記(C)成分のmol%)。
[18]
以下の工程(a)及び(b)を含む、上記[17]記載の樹脂組成物の製造方法。
工程(a):エポキシ樹脂(A)存在下において、一般式(1)で表される(B)及び(C)を少なくとも含むアルコキシシラン化合物を、脱水を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程。
工程(b):工程(a)によって製造された中間体を脱水縮合反応する工程。
[19]
以下の工程(c)及び(d)を含む、上記[17]記載の樹脂組成物の製造方法。
工程(c):一般式(1)で表される(B)及び(C)を少なくとも含むアルコキシシラン化合物を、脱水を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程。
工程(d):工程(a)によって製造された中間体にエポキシ樹脂(A)を共存させて脱水縮合反応する工程。
[20]
前記脱水を伴わない還流工程における加熱温度が50〜100℃である、上記[17]〜[19]のいずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂のそれぞれの利点を生かした、流動性と保存安定性に優れる樹脂組成物、及び、それを使用した耐光性と耐冷熱衝撃性に優れる硬化物、並びにそれらを含む封止材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の例
【図2】脂環式エポキシ樹脂の例(1/2)
【図3】脂環式エポキシ樹脂の例(2/2)
【図4】ノボラック型エポキシ樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の例
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」と言う。)について詳細に説明する。尚、本発明は、本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
本実施の形態の樹脂組成物は、
(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を反応させて得られ、
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、n=0〜3であり、R1は各々独立に、水素原子、a)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、R2は各々独立に、水素原子、d)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上8以下の1価の有機基、からなる群から選ばれる1種以上の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、を含み、かつ、下記一般式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19であり、
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:前記(B)成分のmol%、αc:前記(C)成分のmol%)
更に、残留アルコキシ基量が5%以下である。
【0016】
本発明者らは、エポキシ樹脂と、特定のアルコキシシラン化合物とを、ある特定の比率で混合して反応させることにより得られる樹脂組成物であって、樹脂組成物中の残留アルコキシ基量を特定範囲に調整することによって、流動性と保存安定性に優れる樹脂組成物、及び、それを使用した耐光性及び耐冷熱衝撃性に優れる硬化物、並びにそれらを含む封止材を提供できることを見出した。以下、本実施の形態について具体的に説明する。
【0017】
[エポキシ樹脂]
本実施の形態の(A)エポキシ樹脂及び(A’)エポキシ樹脂とは、後述のアルコキシシラン化合物とその縮合物を除く、分子内にオキシラン環、通常は2個以上のオキシラン環を有する化合物を指し、上述の要件を満たすものであれば、特に限定されるものではない。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。また、(A)エポキシ樹脂と(A’)エポキシ樹脂は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0018】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(WPE)は、100〜600g/eqであることが好ましく、より好ましくは100〜500g/eq、更に好ましくは100〜300g/eqである。アルコキシシラン化合物との組成バランスによっては、エポキシ当量(WPE)が100g/eq未満であると、樹脂組成物の保存安定性が低下する場合があり、600g/eqを超えると、硬化物の冷熱衝撃性が悪化するおそれがある。本実施の形態の樹脂組成物及び硬化物の用途は特に限定されるものではないが、封止材として用いる場合には、エポキシ樹脂のエポキシ当量は100〜300g/eqであることが好ましい。
【0019】
また、エポキシ樹脂は、25℃における粘度が1000Pa・s以下の液体であることが好ましく、より好ましくは500Pa・s以下、更に好ましくは100Pa・s以下の液体である。25℃における粘度が1000Pa・sを超えると、液体としての流動性を失い、後述するアルコキシシラン化合物との相溶性が悪化する傾向にある。また、25℃における粘度が500Pa・sを超え、1000Pa・s以下である場合(500Pa・s<粘度≦1000Pa・s)には、製造時の温度調整や溶媒選択等により使用可能であるが、製造条件がやや限定される傾向にあるため、500Pa・s以下であることが好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、容易に入手可能であり、硬化物として良好な物性を付与できるという観点から、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂と、脂環式エポキシ樹脂が好ましく、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂がより好ましい。またこれらのエポキシ樹脂は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、2,6−ジ(t−ブチル)ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエンのポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。上記の中でも、透明性と流動性に優れるタイプのものが多く市販され、安価に入手可能であることや、硬化物とした時に耐冷熱衝撃性に優れる傾向にあるため、ビスフェノールA骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂が好ましい。ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の代表例を図1に示す。
【0022】
エポキシ樹脂として、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂を使用する場合の繰り返し単位(図1の代表例におけるn)は、特に限定されるものではないが、好ましくは50未満、より好ましくは0.001〜5、更に好ましくは0.01〜2である。繰り返し単位が0.001未満であると、アルコキシシラン化合物との反応性が悪化する場合があり、50を超えると流動性が低下して、実用上問題となる場合がある。上述の反応性と流動性のバランスの観点から、繰り返し単位は0.01〜2であることが特に好ましい。
【0023】
脂環式エポキシ樹脂とは、脂環式エポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基等を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
脂環式エポキシ樹脂としては、単官能脂環式エポキシ化合物、2官能脂環式エポキシ化合物、多官能脂環式エポキシ化合物が挙げられる。単官能脂環式エポキシ化合物としては、例えば、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオクチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,2,8,9−ジエポキシリモネン等が挙げられる。多官能脂環式エポキシ化合物としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキセン付加物等が挙げられる。また、多官能脂環式エポキシ化合物としては、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン等を用いることもできる。脂環式エポキシ樹脂の代表例を図2及び3に示す。
【0025】
ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の代表例を図4に示す。
【0026】
芳香族エポキシ樹脂の核水素化物としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール等)のグリシジルエーテル化物又は各種フェノール(フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等)の芳香環を核水素化したものや、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物の核水素化物等が挙げられる。
【0027】
脂肪族系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、具体的には、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、キシリレングリコール誘導体等の多価アルコールのグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0028】
複素環式エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0029】
グリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸類からなるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0030】
グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、アニリン、トルイジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン誘導体、ジアミノメチルベンゼン誘導体等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
[アルコキシシラン化合物]
本実施の形態におけるアルコキシシラン化合物とは、1〜4個のアルコキシル基を有するケイ素化合物のことを示し、下記一般式(1)で表される。
【0033】
【化4】

(式中、n=0〜3であり、R1は各々独立に、水素原子、a)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、R2は各々独立に、水素原子、d)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上8以下の1価の有機基、からなる群から選ばれる1種以上の有機基を示す。)
【0034】
<R1の説明>
以下、本実施の形態におけるR1について説明する。一般式(1)におけるR1は、各々独立に、水素原子、a)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。
【0035】
上記のa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基としては、例えば、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等のオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
【0036】
上記のb)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基としては、例えば、
(b−1)メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の脂肪族炭化水素からなる鎖状の有機基、
(b−2)シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状単位を含む炭化水素からなる有機基、
(b−3)メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基等のエーテル結合を含む有機基、
(b−4)ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0037】
上記c)の無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、α−メチルスチリル基、3−メチルスチリル基、4−メチルスチリル基等が挙げられる。
【0038】
本実施の形態のアルコキシシラン化合物は、上記a)〜c)の有機基が異なる2種以上の混合物であってもよい。
【0039】
また、上記の炭素数及び酸素数の範囲内であれば、有機基としてヒドロキシル単位、アルコキシ単位、アシル単位、カルボキシル単位、アルケニルオキシ単位、アシルオキシ単位、フッ素や塩素等のハロゲン原子、或いは、エステル結合、更には、酸素原子や珪素原子を除く窒素、リン、硫黄等のヘテロ原子を含んでいてもよい。また、上記a)〜c)は、1種又は2種以上が混在した有機基であってよい。
【0040】
1としては、本実施の形態の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐光性が良好となる、或いは、保存時の安定性が高まる傾向にあるため、全Si単位の合計モル数に対する、ヒドロキシル単位、アルコキシ単位、アシル単位、カルボキシル単位、アルケニルオキシ単位、アシルオキシ単位、フッ素や塩素等のハロゲン原子、或いは、エステル結合、更には、酸素原子や珪素原子を除く窒素、リン、硫黄等のヘテロ原子を含む有機基が結合した珪素原子の合計モル数が、10%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、全く含まないことが更に好ましい。
【0041】
一方、本実施の形態の樹脂組成物を用いて硬化物を製造する際に、安定的に再現性よく硬化させることが可能となる傾向にあるため、全Si単位の合計モル数に対する、(b−4)ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の1価の脂肪族有機基の合計モル数は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましく、全く含まないことが特に好ましい。
【0042】
本実施の形態の樹脂組成物の耐光性が良好となると共に、耐熱変色性が向上する傾向にあるため、一般式(1)のR1としては、上記のa)、b−1)、b−2)、c)からなる群から選択されることが好ましく、a)として、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基と、b−1)及びb−2)中の炭素数が1以上8以下、酸素数0からなる群から選択される有機基、並びに、フェニル基、ベンジル基なる群から選択されることが更に好ましく、a)として、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基と、b−1)及びb−2)中の炭素数が1以上3以下、酸素数0からなる群から選択される有機基、並びに、フェニル基からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0043】
<R2の説明>
次ぎに、本実施の形態におけるR2について説明する。一般式(1)におけるR2は、各々独立に、水素原子、d)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上8以下の1価の有機基を示す。d)としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の脂肪族炭化水素からなる鎖状の有機基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状単位を含む炭化水素からなる有機基等が挙げられる。
【0044】
本実施の形態のアルコキシシラン化合物は、上記d)の有機基が異なる2種以上の混合物であってもよい。また、これらは、1種又は2種以上が混在した有機基であってよい。
【0045】
これらの有機基の中でも、アルコキシシラン化合物の反応性が高まる傾向にあるため、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0046】
[(B)成分]
本実施の形態における、(B)成分は、一般式(1)において、n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物である。
【0047】
【化5】

【0048】
環状エーテル基とは、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルを有する有機基を指し、通常は3〜6員環の構造を持つ環状エーテル基を意味する。中でも、環歪みエネルギーが大きく、反応性の高い3員環又は4員環の環状エーテル基が好ましく、特に好ましくは3員環のエポキシ基である。
【0049】
環状エーテル基の具体例としては、例えば、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等のオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
【0050】
上記の中でも、入手が容易なことや、エポキシ樹脂との相溶性が良好となる傾向にあるため、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等の炭素数1〜3のアルキル基にオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基、オキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数3以下のアルキル基が好ましい。
【0051】
本実施の形態における(B)成分の具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
[(C)成分]
本実施の形態における、(C)成分は、一般式(1)において、n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物である。
【0053】
【化6】

【0054】
アリール基とは、芳香族炭化水素(単純芳香環又は多環芳香族炭化水素)から誘導された官能基又は置換基を指す。アリール基としては、特に限定されないが、高次構造における立体障害を考慮すると、フェニル基やベンジル基が好ましい。
【0055】
本実施の形態における(C)成分の具体例としては、例えば、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
本実施の形態における「(B)一般式(1)において、n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物」と、「(C)一般式(1)において、n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の一般式(2)で算出される混合指標αで表される。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:(B)成分のmol%、αc:(C)成分のmol%)。
【0057】
本実施の形態においては、混合指標αを0.001〜19の範囲とする。混合指標αが0.001未満であると、樹脂組成物の流動性や保存安定性が低下し、19を超えると、樹脂組成物の流動性や、硬化物の耐冷熱衝撃性が悪化する。特に、封止材用途での使用を考慮した場合には、高い耐冷熱衝撃性が要求されるため、混合指標αは、好ましくは0.2〜5、より好ましくは0.3〜2である。
【0058】
本実施の形態における樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)成分に加え、(D)成分として、上記一般式(1)におけるR1の個数を示すn=0、つまり(OR2)を4個有するアルコキシシラン化合物を更に反応させてもよい。
【0059】
本実施の形態における(D)一般式(1)において、n=0である、少なくとも1種のアルコキシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
また、本実施の形態における樹脂組成物は、(B)〜(D)成分以外の一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を更に反応させてもよい。そのような化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ビス(2−クロロエトキシ)メチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシメチルシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメトキシイソプロポキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロパン−1−チオール、トリメトキシ(プロピル)シラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メトキシルトリエトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメトキシルジプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシロキシトリメチルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、オクチルオキシトリメチルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルオキシトリメチルシラン、ジエトキシドデシルメチルシラン等が挙げられる。
【0061】
本実施の形態におけるアルコキシシラン化合物の「n=2であるアルコキシシラン化合物」、「n=1であるアルコキシシラン化合物」及び「n=0であるアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の一般式(3)で算出される混合指標βで表される。
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
(式中、
βn2:一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn0:一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn1:一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物のmol%、
ここで、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である)。
【0062】
混合指標βは、好ましくは0.01〜1.4、より好ましくは0.03〜1.2、更に好ましくは0.05〜1.0である。組成によっては、混合指標βが0.01未満であると、樹脂組成物の流動性が悪化する場合があり、1.4を超えると、耐冷熱衝撃性が悪化する場合がある。
【0063】
本実施の形態における樹脂組成物は、樹脂組成物中の残留アルコキシ基量が5%以下であり、より好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。残留アルコキシ基量が5%を超えると、硬化物や塗膜を形成する際に、ボイドやクラックが発生する場合がある。ここで、樹脂組成物中の残留アルコキシ基量は、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
【0064】
本実施の形態における(A)エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物の「n=0〜2であるアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の一般式(4)で算出される混合指標γで表される。
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
(式中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g))
【0065】
混合指標γは、好ましくは0.02〜15であり、より好ましくは0.04〜7、更に好ましくは0.08〜5である。組成によっては、混合指標γが0.02未満であると、硬化物としての接着性や硬度に問題を生じる場合があり、15を超えると、硬化物としての耐光性が悪化するおそれがある。
【0066】
本実施の形態における樹脂組成物のエポキシ当量(WPE)は、100〜700g/eqであることが好ましく、より好ましくは120〜500g/eq、更に好ましくは150〜400g/eqである。アルコキシシラン化合物との組成バランスによっては、エポキシ当量(WPE)が100g/eq未満であると、樹脂組成物の保存安定性が低下する場合があり、700g/eqを超えると、硬化物の冷熱衝撃性が悪化するおそれがある。本実施の形態の樹脂組成物及び硬化物の用途は特に限定されるものではないが、封止材として用いる場合には、150〜300g/eqであることが好ましい。
【0067】
また、樹脂組成物は、25℃における粘度が1000Pa・s以下の液体であることが好ましく、より好ましくは500Pa・s以下、更に好ましくは100Pa・s以下の液体である。25℃における粘度が1000Pa・sを超えると、液体としての流動性を失い、他の物質との混合性に問題が生じる場合がある。また、25℃における粘度が500Pa・sを超え、1000Pa・s以下である場合(500Pa・s<粘度≦1000Pa・s)には、製造時の温度調整や溶媒選択等により使用可能であるが、用途によっては使用できない可能性があるため、500Pa・s以下であることが好ましい。
【0068】
本実施の形態における樹脂組成物の縮合率(%)は、80%以上が好ましく、更に好ましくは85%以上である。これは、樹脂組成物の特性として、縮合率が高い程、保存安定性が良好となる傾向にあるためである。樹脂組成物の縮合率(%)は、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
【0069】
本実施の形態においては、上述の(A)エポキシ樹脂と、アルコキシシラン化合物に加え、加水分解縮合触媒を更に加えて反応させてもよい。
【0070】
加水分解縮合触媒とは、従来公知の加水分解縮合反応を促進させるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム
、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等)、有機金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等の有機酸化物、有機酸塩、有機ハロゲン化物、アルコキシド等)、無機塩基(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、有機塩基(アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等)等が挙げられる。上記の中でも、有機金属が好ましく、より好ましくは有機錫、更に好ましくは錫の有機酸塩である。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。例えば、錫等の有機酸塩で反応させた後に、無機塩基で処理することも可能である。この場合の無機塩基としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等の多価カチオンの水酸化物が好ましい。
【0071】
上述した有機錫とは、錫原子に少なくとも一つの有機基が結合しているものを指し、構造としては、モノ有機錫、ジ有機錫、トリ有機錫、テトラ有機錫等が挙げられ、中でも、ジ有機錫が好ましい。
【0072】
また、加水分解縮合時のオキシラン環の開環を抑制できることや、樹脂組成物の分子量制御が容易となる傾向にあることから、有機錫の中でも、有機錫カルボン酸塩が好ましい。
【0073】
有機錫の具体例としては、例えば、四塩化錫、モノブチル錫トリクロライド、モノブチル錫オキサイド、モノオクチル錫トリクロライド、テトラn−オクチルチン、テトラn−ブチルチン、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシラウレート、ジブチル錫ステアレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫・ケイ素エチル反応物、ジブチル錫塩とシリケートの化合物、ジオクチル錫塩とシリケートの化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレート)、ジブチル錫ビス(ステアリルマレート)、ジブチル錫ビス(オレイルマレート)、ジブチル錫マレート、ジブチル錫ビス(O−フェニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソノニル3−メルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジドデシルメルカプト、ジオクチル錫バーサテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレート)、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジブチル錫ジブトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジブトキサイド、オクチル酸錫、ステアリン酸錫等が挙げられる。上記の中でも、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテートが好ましい。
【0074】
加水分解縮合触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、上述の一般式(1)における(OR2)に対する比率である混合指標δから求めることができる。ここで、混合指標δは、以下の一般式(5)で表される。
混合指標δ=(δe)/(δs) (5)
(式中、
δe:加水分解縮合触媒の添加量(mol数)、
δs:一般式(1)における(OR2)の量(mol数))
【0075】
混合指標δは、好ましくは0.0005〜5、より好ましくは0.001〜1、更に好ましくは0.005〜0.5である。組成によっては、混合指標δが0.0005未満であると、加水分解縮合の促進効果が得られ難くなる場合があり、5を超えると、環状エーテル基の開環が促進される場合がある。
【0076】
共加水分解縮合における水の添加量は、特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、上述の一般式(1)における(OR2)に対する比率である混合指標εから求めることができる。ここで、混合指標εは、以下の一般式(6)で表される。
混合指標ε=(εw)/(εs) (6)
(式中、
εw:水の添加量(mol数)、
εs:一般式(1)における(OR2)の量(mol数))
【0077】
混合指標εは、好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.2〜3、更に好ましくは0.3〜1.5である。組成によっては、混合指標εが0.1未満であると、加水分解反応が正常に進行しない場合があり、5を超えると、エポキシ樹脂のエポキシ基が異常な開環反応を起こしたり、樹脂組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0078】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施の形態の樹脂組成物の製造方法は、(A)エポキシ樹脂と、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物とを、反応させる工程を有する。具体的には、後述の「共加水分解縮合反応」に供する、即ち、後述の還流工程で得られた中間体の脱水縮合を行うことにより、製造するのが好ましい。ここで言う「共加水分解縮合反応」とは、エポキシ樹脂存在下で行う加水分解縮合反応を意味し、エポキシ樹脂非共存下における反応とは明確に区別される。
【0079】
【化7】

【0080】
(式中、n=0〜3であり、R1は各々独立に、水素原子、a)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、R2は各々独立に、水素原子、d)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上8以下の1価の有機基、なる群から選ばれる1種以上の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、を含み、かつ、下記一般式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:前記(B)成分のmol%、αc:前記(C)成分のmol%)。
【0081】
「共加水分解縮合反応」とは、脱水を伴わない還流工程と、それに続く脱水縮合工程との、2つの工程により構成されている。上記中間体とは、還流工程を経た後の中間製品である。
【0082】
「脱水を伴わない還流工程」とは、共加水分解のために配合した水や溶媒、及び、反応中に生じる、アルコキシシラン化合物由来の水や溶媒を、反応溶液に戻しながら反応を行う工程である。例えば、反応容器上部に冷却管を取り付け、生じた水や溶媒をリフラックスさせながら反応を行う。この工程で、上記式(1)における(OR2)は加水分解されて、(OH)となる。還流工程における温度は、特に限定されるものではないが、通常0〜200℃である。0℃未満の場合には、水が凝固する場合がある。一方、200℃を超える場合には、樹脂組成物が着色する場合がある。反応速度を高め、エポキシ基の開環等、樹脂の変性を抑制する観点から、20℃〜150℃が好ましく、40℃〜120℃がより好ましく、50℃〜100℃が更に好ましい。反応温度は、上記の範囲内であれば一定である必要は無く、反応途中において変化させてもよい。
【0083】
また、還流工程における反応時間については、特に限定されないが、上記式(1)における(OR2)の反応率を向上させると共に、樹脂の変性を抑制する観点から、0.1〜100時間が好ましく、1〜80時間がより好ましく、3〜60時間が更に好ましく、5〜50時間が特に好ましい。
【0084】
「脱水縮合工程」とは、前記中間体から、配合した水や溶媒、及び、上記「脱水を伴わない還流工程」で生じた水や溶媒を、除去しながら縮合反応を行う工程である。例えば、添加した水や溶媒、及び、上記「脱水を伴わない還流工程」で生じた水や溶媒を、除去しながら縮合反応を行う工程である。例えば、ロータリーエバポレータ、留出管が備えられた竪型撹拌槽、表面更新型撹拌槽、薄膜蒸発装置、表面更新型二軸混練器、二軸横型撹拌器、濡れ壁式反応器、自由落下型の多孔板型反応器、支持体に沿わせて化合物を落下させながら揮発成分を留去させる反応器等の装置の1種又は2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0085】
本実施の形態における共加水分解縮合としては、以下に示す<製法1>と<製法2>の、いずれの製法を選択することも可能である。
<製法1>
「共加水分解縮合反応」が、以下の工程(a)及び(b)を含む、製造方法。
工程(a):エポキシ樹脂(A)存在下において、一般式(1)で表される(B)及び(C)を少なくとも含むアルコキシシラン化合物を、脱水を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程。
工程(b):工程(a)によって製造された中間体を脱水縮合反応する工程。
<製法2>
「共加水分解縮合反応」が、以下の工程(c)及び(d)を含む、製造方法。
工程(c):一般式(1)で表される(B)及び(C)を少なくとも含むアルコキシシラン化合物を、脱水を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程。
工程(d):工程(a)によって製造された中間体にエポキシ樹脂(A)を共存させて脱水縮合反応する工程。
【0086】
本実施の形態の樹脂組成物を製造する際の、アルコキシシラン化合物の添加方法については特に限定はなく、初期に一括添加して反応させることも可能であり、また、逐次、或いは、連続的に反応系に添加して反応させることも可能である。
【0087】
また、エポキシ樹脂(A)は、「製法1」及び「製法2」のいずれの場合においても、一度に添加しても、分割して、逐次、添加することも可能である。
【0088】
また、「製法1」に従う場合においては、工程(a)及び(b)を連続して行うことも、工程(a)で得られた反応混合物を分離又は回収した後、工程(b)を行うこともできる。一方、「製法2」に従う場合においては、工程(c)及び(d)を連続して行うことも、工程(c)で得られた反応混合物を回収した後、工程(d)を行うこともできる。
【0089】
また、本実施の形態における共加水分解縮合は、還流工程での水の添加が必須であるという点で、水を実質的に添加することなく行われる脱アルコール反応(例えば、上述した特許文献9及び10に記載された反応)とは明確に区別される。上記、「脱水を伴わない還流工程」では、アルコキシシラン類を加水分解させるために、反応系中に水を共存させることが必須である。水の添加は、アルコキシシラン化合物の加水分解が主たる目的であり、共加水分解して中間体を製造する工程終了時点までの間に添加すればよい。添加のタイミングは、特に限定されず、反応開始初期に一括添加する方法、反応中に逐次点する方法、或いは、反応中に連続的に添加する方法のいずれの方法を用いてもよい。これらの中でも、反応初期に一括添加する方法が好ましく用いられる。
【0090】
本実施の形態の共加水分解縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができる。溶媒としては、エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物を溶解可能であり、これらに対して非活性である有機溶媒であれば、特に制限されず、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン等の芳香族水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0091】
これらの中でも、反応中のエポキシ基の開環を抑制する観点から、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、エーテル系溶媒を50質量%以上含む溶媒がより好ましく、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の混合溶媒が更に好ましく、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0092】
また入手が容易であることから、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶媒の使用も好ましい。
【0093】
溶媒の添加量としては、特に制限されないが、共加水分解縮合反応に供されるエポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物の合計質量に対して、好ましくは0.01〜20倍量、より好ましくは0.02〜15倍量、更に好ましくは0.03〜10倍量である。溶媒の添加量により分子量を制御することが可能であるため、上述の添加量の範囲とすることで、適正な分子量、ひいては適性粘度の樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0094】
本実施の形態の共加水分解縮合反応における雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス又は低級飽和炭化水素等の不活性ガスや空気中で製造することができる。これらのガスの中でも、樹脂の変性を抑制する観点から、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス又は低級飽和炭化水素等の不活性ガスが好ましく、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガスがより好ましく、窒素、ヘリウムが更に好ましく、窒素が特に好ましく用いられる。
【0095】
本実施の形態の共加水分解縮合反応における圧力は、上記ガスの雰囲気下、流通下、減圧下、加圧下又はこれらの組み合わせで行うことができる。なお、圧力は、一定である必要は無く、反応途中において変化させてもよい。これらの中でも、「脱水を伴わない還流工程」では、共加水分解のために配合した水や溶媒、及び、反応中に生じる、アルコキシシラン化合物由来の水や溶媒を、工業的に容易に反応溶液に戻しながら反応を行うことが必要であることから、上記ガスの大気圧雰囲気下及び/又は加圧下で行われることが好ましい。一方、「脱水縮合工程」では、「脱水を伴わない還流工程」で添加した水や溶媒、及び、上記「脱水を伴わない還流工程」で生じた水や溶媒を、除去しながら縮合反応を行うことが必要であるため、不活性ガス流通下及び/又は減圧下で行うことが好ましい。
【0096】
[混合樹脂組成物]
本実施の形態の混合樹脂組成物とは、本実施の形態の樹脂組成物に、上述の(A’)エポキシ樹脂や、硬化剤及び/又は硬化促進剤を加え、混合したものである。
[硬化物]
本実施の形態の樹脂組成物は各種用途に供されるが、通常は、硬化物として使用される。また、各種用途へ適用するにあたっては、本実施の形態により得られた樹脂組成物と上述のエポキシ樹脂や、ポリオールを併用して使用することも可能である。そのようなポリオールとしては、分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物であれば、特に制限されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0097】
本実施の形態における硬化物の作製方法としては、特に限定されるものではないが、熱硬化又はエネルギー線硬化が好ましく、特に好ましくは熱硬化を用いる。
【0098】
ここで、熱硬化とは、熱による化学反応により分子間に3次元の架橋結合を生じさせることで硬化物を得る方法である。熱硬化の方法としては、特に限定されるものではないが、硬化剤や硬化促進剤を使用して熱硬化させる方法、又は、熱カチオン重合開始剤を用いて熱硬化させる方法を選択するのが好ましく、中でも、硬化剤や硬化促進剤を使用して熱硬化させる方法がより好ましい。
【0099】
本実施の形態における硬化剤とは、樹脂組成物を硬化させるために用いられる物質であり、環状エーテル基と反応可能であれば、特に限定されるものではない。硬化剤としては、例えば、酸無水物系化合物、アミン系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物等が挙げられ、中でも、酸無水物系化合物が好ましく、カルボン酸無水物がより好ましい。
【0100】
また、ここで言う酸無水物系化合物には脂環式酸無水物が含まれ、カルボン酸無水物の中でも脂環式カルボン酸無水物が好ましい。これらの物質は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
硬化剤の具体例としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、テトラエチレンペンタミン、ジメチルベンジルアミン、ケチミン化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、又はビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類若しくはフェノール類との縮合物等、ビフェノール類及びこれらの変性物、イミダゾール、3フッ化硼素−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
【0102】
脂環式カルボン酸無水物の具体例としては、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、「4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30」、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、「メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物/ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物」等が挙げられる。
【0103】
また、脂肪族酸無水物の具体例としては、例えば、テトラプロペニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物、2,5−ジケトテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0104】
硬化剤の添加量は、特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、上述のエポキシ樹脂、及びアルコキシシラン化合物に含まれる環状エーテル基に対する比率である混合指標ζから求めることができる。ここで、混合指標ζは、以下の一般式(7)で表される。
混合指標ζ=(ζf)/(ζk) (7)
(式中、
ζf:硬化剤の添加量(mol数)、
ζk:エポキシ樹脂、及びアルコキシシラン化合物に含まれる環状エーテル基の量(mol数)。
【0105】
混合指標ζは、好ましくは0.1〜1.5、より好ましくは0.2〜1.3、更に好ましくは0.3〜1.5である。組成によっては、混合指標ζが0.1未満であると、硬化速度が低下する場合があり、1.5を超えると、硬化物としての耐湿性が悪化する場合がある。
【0106】
本実施の形態における硬化促進剤とは、硬化反応の促進を目的に使用される硬化触媒を意味し、単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。硬化促進剤は、特に限定されるものではないが、3級アミン類及びその塩を選択することが好ましい。
【0107】
硬化促進剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(1)3級アミン類:ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等、
(2)イミダゾール類:2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1')〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1')〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1')〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等、
(3)有機リン系化合物:ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等、
(4)4級フォスフォニウム塩類:ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムo,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラッフェニルボレート等、
(5)ジアザビシクロアルケン類:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7及びその有機酸塩等、
(6)有機金属化合物:オクチル酸亜鉛、アクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等、
(7)4級アンモニウム塩類:テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド等、
(8)金属ハロゲン化合物:三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等。
【0108】
硬化促進剤の添加量は、特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、上述のエポキシ樹脂、及びアルコキシシラン化合物の質量に対する比率である混合指標ηから求めることができる。ここで、混合指標ηは、以下の一般式(8)で表される。
混合指標η=(ηg)/(ηk)×100 (8)
(式中、
ηg:硬化促進剤の質量(g)、
ηk:エポキシ樹脂及びアルコキシシラン化合物の質量(g))
【0109】
混合指標ηは、好ましくは0.01〜5、より好ましくは0.05〜3、更に好ましくは0.1〜1である。組成によっては、混合指標ηが0.01未満であると、硬化が良好に進行しない場合があり、5を超えると、硬化物が着色する場合がある。
【0110】
また、熱カチオン重合開始剤としては、熱によりカチオン種を発生して重合を開始させる化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、芳香族オニウム塩等の各種オニウム塩等が挙げられる。これらは単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0111】
ここで、第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウム−p−トルエンスルホネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジエチル−N−ベンジルトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0112】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルシネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルシネート、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルシネート等が挙げられる。
【0113】
ホスホニウム塩としては、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0114】
芳香族オニウム塩としては、例えば、特公昭52−14277号公報、特公昭52−14278号公報、特公昭52−14279号公報等に例示される化合物等が挙げられる。
【0115】
エネルギー線硬化とは、エネルギー線(紫外線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線等の光の他、電子線等)を照射することで硬化物を得る方法であり、エネルギー線の種類としては、特に限定されるものではないが、好ましくは光、より好ましくは紫外線である。
【0116】
エネルギー線の発生源は、特に限定されるものではなく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、UVランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、エキシマーレーザー、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、電子線照射器等の各種光源等が挙げられる。
【0117】
エネルギー線硬化の手法は、特に限定されるものではなく、通常、エネルギー線刺激により重合開始剤が分解することで重合開始種が発生し、対象物質の重合性官能基を重合するという経過を辿る。
【0118】
エネルギー線硬化に用いられる重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、発生する活性種によって以下の3つに大別することが可能である。これらの重合開始剤は単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
(1)エネルギー線の照射によりラジカルを発生するもの。
(2)エネルギー線の照射により、カチオンを発生するもの(エネルギー線が光である場合、光酸発生剤と呼ばれる)。
(3)エネルギー線の照射により、アニオンを発生するもの(エネルギー線が光である場合、光塩基発生剤と呼ばれる)。
【0119】
エネルギー線硬化に用いられる重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイン類及びベンゾインアルキルエーテル類(ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モノフォリノ−プロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等)、アントラキノン類(2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等)、キサントン類、安息香酸エステル類(エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート等)、アミン類(トリエチルアミン、トリエタノールアミン等)、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物、アンモニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、アルソニウム塩化合物、スチボニウム塩化合物、オキソニウム塩化合物、セレノニウム塩化合物、スタンノニウム塩化合物等が挙げられる。
【0120】
本実施の形態の樹脂組成物及びその硬化物には、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、各種有機樹脂、無機充填剤、着色剤、レベリング剤、滑剤、界面活性剤、シリコーン系化合物、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、酸化防止剤、光安定剤等を適宜添加することができる。また、その他、一般に樹脂用の添加剤(可塑剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、耐衝撃強化剤、発泡剤、抗菌・防カビ剤、導電性フィラー、防曇剤、架橋剤等)として供される物質を、配合しても差し支えない。
【0121】
ここで、有機樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0122】
無機充填材としては、例えば、シリカ類(溶融破砕シリカ、結晶破砕シリカ、球状シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降性シリカ等)、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン等が挙げられ、好ましくはシリカ類、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム等であり、更に硬化物の物性を考慮すると、シリカ類がより好ましい。これらの無機充填材は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0123】
着色剤としては、着色を目的に使用される物質であれば特に限定されず、例えば、フタロシアニン、アゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリノン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン系の各種有機系色素、酸化チタン、硫酸鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、弁殻、コバルト紫、紺青、群青、カーボンブラック、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機顔料等が挙げられる。これらの着色剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0124】
レベリング剤としては、特に限定されず、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、チタン系カップリング剤等が挙げられる。これらのレベリング剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0125】
滑剤としては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシウム、カルシウム、カドミウム、バリウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、ミツロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類等が挙げられる。これらの滑剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0126】
界面活性剤とは、その分子中に溶媒に対して親和性を持たない疎水基と、溶媒に対して親和性を持つ親媒基(通常は親水基)を持つ、両親媒性物質を指す。また、その種類は特に限定されるものではなく、例えば、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0127】
シリコーン系化合物としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン縮合物、シリコーン部分縮合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、シリコーンオイル、ポリシロキサン等が挙げられ、その両末端、片末端、あるいは側鎖に有機基を導入して変性したものも含まれる。その変性の方法も特に限定されず、例えば、アミノ変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、ポリエーテル変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、フェノール変性、シラノール変性、ポリエーテル変性、ポリエーテル・メトキシ変性、ジオール変性等が挙げられる。
【0128】
反応性希釈剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルグリシジルエーテル、アルキルフェノールのモノグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1、6―ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アルカン酸グリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。非反応性希釈剤としては、特に限定されず、例えば、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の高沸点溶媒等が挙げられる。
【0129】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルイソデシルホスファイト等の有機リン系酸化防止剤、ジステアリル−3,3’−チオジプロピネート等の有機イオウ系酸化防止剤、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0130】
光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリルレート系、ニッケル系、トリアジン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0131】
本実施の形態の樹脂組成物及び硬化物の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、電子材料(碍子類、交流変圧器、開閉機器等の注型及び回路ユニット、各種部品のパッケージ、IC・LED・半導体等の封止材、発電器、モーター等の回転機コイル、巻線含浸、プリント配線基板、絶縁ボード、中型碍子類、コイル類、コネクター、ターミナル、各種ケース類、電気部品類等)、塗料(防蝕塗料、メンテナンス、船舶塗装、耐蝕ライニング、自動車・家電製品用プライマー、飲料・ビール缶、外面ラッカー、押出チューブ塗装、一般防蝕塗装、メンテナンス途装、木工製品用ラッカー、自動車用電着プライマー、その他工業用電着塗装、飲料・ビール缶内面ラッカー、コイルコーティング、ドラム・缶内面塗装、耐酸ライニング、ワイヤーエナメル、絶縁塗料、自動車用プライマー、各種金属製品の美装兼防蝕塗装、パイプ内外面塗装、電気部品絶縁塗装等)、複合材料(化学プラント用パイプ・タンク類、航空機材、自動車部材、各種スポーツ用品、炭素繊維複合材料、アラミド繊維複合材料等)、土木建築材料(床材、舗装材、メンブレン、滑り止め兼薄層舗装、コンクリート打ち継ぎ・かさ上げ、アンカー埋め込み接着、プレキャストコンクリート接合、タイル接着、コンクリート構造物の亀裂補修、台座のグラウト・レベリング、上下水道施設の防蝕・防水塗装、タンク類の耐蝕積層ライニング、鉄構造物の防蝕塗装、建築物外壁のマスチック塗装等)、接着剤(金属・ガラス・陶磁器・セメントコンクリート・木材・プラスチック等の同種又は異種材質の接着剤、自動車・鉄道車両・航空機等の組み立て用接着剤、プレハブ用複合パネル製造用接着剤等:一液型、二液型、シートタイプを含む。)、航空機・自動車・プラスチック成形の治工具(プレス型、ストレッチドダイ、マッチドダイ等樹脂型、真空成形・ブロー成型用モールド、マスターモデル、鋳物用パターン、積層治工具、各種検査用治工具等)、改質剤・安定剤(繊維の樹脂加工、ポリ塩化ビニル用安定剤、合成ゴムへの添加剤等)等として用いることができる。
【0132】
本実施の形態における「封止材」とは、液体や気体等の物質(異物)が、部品の内部に入り込まないように封止するための材料のことを言う。上述の物質(異物)には、温度、湿気、ホコリ等の物理的衝撃等も含まれる。
【0133】
本実施の形態における封止材は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、ガラス等からなる他の封止材と併用してもよい。
【0134】
封止材は、上述した要件を満たすものであれば、特にその用途は限定されるものではないが、主に、半導体用途、発光ダイオード(LED)をはじめとする光半導体の用途、液晶用途に使用される。つまり、これらの用途において、温度、湿気、ホコリ等から、半導体を保護するための半導体封止材や、LEDを保護して耐久寿命を延ばすためのLED封止材、液晶を保護するための液晶封止材として使用され、中でも、LED封止材としての使用が好ましい。
【0135】
また、本実施の形態の樹脂組成物又は硬化物は、封止材以外にも、これら半導体・LED周辺材料(レンズ材、基板材、ダイボンド材、チップコート材、積層板、光ファイバー、光導波路、光フィルター、電子部品用の接着剤、コート材、シール材、絶縁材、フォトレジスト、エンキャップ材、ポッティング材、光ディスクの光透過層や層間絶縁層、プリント配線板、積層板、導光板、反射防止膜等)等の用途にも利用可能である。
【0136】
上記レンズ材の例としては、光学機器用レンズ、自動車ランプ用レンズ、メガネレンズ、CD・DVD等のピックアップ用レンズ、プロジェクター用レンズ等が挙げられる。
【0137】
ここで言う「LED」とは、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子のことであり、発光原理としては、エレクトロルミネセンス(EL)効果を利用している。
【0138】
LED封止材の用途としては、特に限定されるものではなく、ディスプレイ、電光表示板、信号機、ディスプレイのバックライト(有機ELディスプレイ、携帯電話、モバイルPC等)、自動車の内外装照明、イルミネーション、照明器具、懐中電灯等、広い分野へ展開することができる。
【0139】
また、LED封止材の使用部位としては、特に限定されるものではないが、例えば、LEDチップ、LEDチップ周辺のワイヤー等の保護のために使用される場合が多い。また、鉛フリーのリフロープロセスにおいても使用することができる。
【0140】
更に、上述したLED封止材には、蛍光体を配合してもよい。これにより、発光素子から放出される光を吸収し、波長変換を行うことで、発光素子の色調と異なる色調を有するLEDを提供することが可能となる。
【0141】
上記蛍光体は、蛍光を発する物質、つまり、電子線、X線、紫外線、電界等のエネルギーを吸収して、吸収したエネルギーの一部を比較的効率よく可視光線として放出(発光)する物質であれば特に限定されず、無機系、有機系を問わず採用することができる。上記無機系蛍光体の大きさは、特に限定されるものではないが、粒径1〜数十μmの粉末が用いられる場合が多い。また、無機系蛍光体の性能を発現させるため、母体と呼ばれる化合物Aの中に、付活剤(発光中心)と呼ばれる元素Bを導入したものが一般的に用いられ、通常は「母体A:付活剤B」と表記される。上記母体Aと付活剤Bは、特に限定されるものではないが、例えば、母体Aとしては、酸化物や窒化物が挙げられる。また付活剤Bとしては、例えば、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)等の希土類元素が挙げられる。
【0142】
上述の酸化物蛍光体の例としては、例えば、母体Aがアルミン酸イットリウム(Y3Al512:以下、YAGと言う)で、付活剤Bがセリウム(Ce)の「YAG:Ce蛍光体」が良く知られている。「YAG:Ce蛍光体」に、青色光照射(460nm付近)を行うと、効率的に黄色発光が起こる。この蛍光体は、「Y3Al512」のYの一部を他のGdやTb等で置換したり、Alの一部をGa等で置換して、母体Aの構造を変化させることにより、発光ピーク位置を長波長側、又は短波長側にずらすことができるため、非常に有用である。その他、酸化物蛍光体の例としては、母体Aが珪酸ストロンチウム・バリウム(Sr,Ba)2SiO4で、付活剤Bとしてユーロピウム(Eu)を導入した、「(Sr,Ba)2SiO4:Eu蛍光体」が知られている。この系は、SrとBaの組成比を変えることで、緑色〜橙色まで発光色を調整することができる。
【0143】
窒化物蛍光体としては、例えば、以下のようなものが例示される。
(1)α−サイアロン蛍光体
母体Aは、α型窒化ケイ素結晶に、Ca等の金属イオンと、アルミニウムと酸素とが固溶した結晶で、「(Mp(Si,Al)12(O,N)16」で表される。ここで、Mは金属イオン、pは固溶量を示す。中でも、「Cap(Si,Al)12(O,N)16:Eu」が、最も良く知られている。
(2)β−サイアロン蛍光体
母体Aは、β型窒化ケイ素結晶に、アルミニウムと酸素とが固溶した「Si6-qALqq8-q」の組成で示され、ここで、qは固溶量を示す。中でも、「Si6-qALqq8-q:Eu」が最も良く知られている。
(3)CaAlSiN3蛍光体
母体Aは、窒化カルシウムと窒化アルミニウムと窒化ケイ素を1800℃の高温で反応させて得られる窒化物結晶であり、中でも、「CaAlSiN3:Eu」が最も良く知られている。
【0144】
無機系蛍光体の具体例としては、例えば、赤色系の発光色を有するものとしては、「6MgO・As2O5:Mn4+、Y(PV)O4:Eu」、「CaLa0.1Eu0.9Ga37」、「BaY0.9Sm0.1Ga37」、「Ca(Y0.5Eu0.5)(Ga0.5In0.537」、「Y33:Eu、YVO4:Eu」、「Y22:Eu」、「3.5MgO・0.5MgF2GeO2:Mn4+」、「(Y・Cd)BO2:Eu」等が挙げられる。青色系の発光色を有するものとしては、例えば、「(Ba,Ca,Mg)5(PO43Cl:Eu2+」、「(Ba,Mg)2Al1627:Eu2+」、「Ba3MgSi28:Eu2+」、「BaMg2Al1627:Eu2+」、「(Sr,Ca)10(PO46l2:Eu2+」 、「(Sr,Ca)10(PO46l2・nB23:Eu2+」、「Sr10(PO46Cl2:Eu2+」、「(Sr,Ba,Ca)5(PO43Cl:Eu2+」、「Sr227:Eu」、「Sr5(PO43Cl:Eu」、「(Sr,Ca,Ba)3(PO46Cl:Eu」、「SrO・P25・B25:Eu」、「(BaCa)5(PO43Cl:Eu」、「SrLa0.95Tm0.05Ga37」、「ZnS:Ag」、「GaWO4」、「Y2SiO6:Ce」、「ZnS:Ag,Ga,Cl」、「Ca24OCl:Eu2+」、「BaMgAl43:Eu2+」、「(M1,Eu)10(PO46l2(M1は、Mg,Ca,Sr,及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素)」等が挙げられる。緑色系の発光色を有するものとしては、例えば、「Y3Al512:Ce3+(YAG)」、「Y2SiO5:Ce3+,Tb3+」、「Sr2Si38・2SrCl2:Eu」、「BaMg2Al1627:Eu2+,Mn2+」、「ZnSiO4:Mn」、「Zn2SiO4:Mn」、「LaPO4:Tb」、「SrAl2O4:Eu」、「SrLa0.2Tb0.8Ga37」、「CaY0.9Pr0.1Ga37」、「ZnGd0.8Ho0.2Ga37」、「SrLa0.6Tb0.4Al37、ZnS:Cu,Al」、「(Zn,Cd)S:Cu,Al」、「ZnS:Cu,Au,Al」、「Zn2SiO4:Mn」、「ZnSiO4:Mn」、「ZnS:Ag,Cu」、「(Zn・Cd)S:Cu」、「ZnS:Cu」、「GdOS:Tb」、「LaOS:Tb」、「YSiO4:Ce・Tb」、「ZnGeO4:Mn」、「GeMgAlO:Tb」、「SrGaS:Eu2+」、「ZnS:Cu・Co」、「MgO・nB23:Ge,Tb」、「LaOBr:Tb,Tm」、「La22S:Tb」等が挙げられる。また、白色系の発光色を有する「YVO4:Dy」や、黄色系の発光色を有する「CaLu0.5Dy0.5Ga37」等も知られている。
【0145】
上記有機系蛍光体の具体例としては、例えば、青色系の発光色を有する、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン(Bis−MSB)、トランス−4,4’−ジフェニルスチルベン(DPS)等のスチルベン系色素、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(クマリン4)等のクマリン系色素等が挙げられる。黄色系〜緑色系の蛍光色を有するものとしては、例えば、Brilliantsulfoflavine FF、Basic yellow HG、SINLOIHI COLOR FZ−5005(SINLOIHI社製)等が挙げられる。黄色系〜赤色系の蛍光色を有するものとしては、Eosine、Rhodamine6G、RhodamineB等が挙げられる。
【0146】
LEDの構成材料である外層樹脂としては、封止樹脂の外層部分の樹脂であれば、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシとシリコーンのハイブリッド樹脂等が、一般に使用されている。しかしながら、封止樹脂ほどは耐熱性や耐光性が要求されず、使用量が多いことから、コスト抑制のためにエポキシ樹脂が使用される場合が多い。
【0147】
上記LEDチップは、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、インジウム(In)、P(リン)、N(窒素)、Al(アルミニウム)等の元素からなる素子であり、上記元素の組み合わせにより、様々な色に発光させることができる。例えば、Ga、As、In、Pを組み合わせることで、赤色〜黄色に発光させることが可能であり、In、Ga、Nを組み合わせることで、青色〜緑色の発光や、紫外光を発光させることもできる。そのため、近年では、蛍光体との組み合わせによっては、白色LEDの光源としても使用でき、青色系のニーズが高いため、InGaN系の素子の需要が大きい。代表的なLEDチップの材質、発光色、発光波長の具体例としては、例えば、「GaInN(紫外光〜青色〜緑色、約370〜530nm)」、「InGaAlP/GaAs(緑色〜黄緑色、約560〜580nm)」、「InGaAlP/GaP(黄色、約590nm)」、「InGaAlP(赤色、約644nm)」、「GaAlAs/GaAs(赤色、約660nm)」、「GaP/GaP(赤色、約700nm)」、「GaAlAs(赤外光、約880nm)」、「GaAs(赤外光、約940nm)」等が挙げられる。
【0148】
また、LEDの形状としては、特には限定されず、用途に合わせて適宜選択することができ、例えば、砲弾型、表面実装型(SMD型)、Flux型、Chip On Board型(以下、COB型と言う)、パワーLED型、板状、薄膜状等が挙げられる。
【0149】
本実施の形態の樹脂組成物における保存安定性は、以下の一般式(9)で示す、保存安
定性指標θで表される。
保存安定性指標θ=(保存粘度)/(開始粘度) (9)
本実施の形態においては、樹脂組成物に流動性があり(粘度が1000Pa・s以下であり)、かつ、保存安定性指標θが4以下である場合に、保存安定性が良好であると判断する。
【0150】
本実施の形態の樹脂組成物からなる硬化物の耐光性は、後述する実施例における耐光性試験の結果により表され、YIが13以下である場合に耐光性があると判断する。
【0151】
本実施の形態の樹脂組成物からなる硬化物の耐冷熱衝撃性は、後述する実施例における冷熱衝撃試験の結果により表され、ヒートサイクル100回の時点で、「9個以上/10個中」のサンプルに異常が見られなかった時、つまり後述の耐冷熱衝撃性回数が100回以上である場合に、耐冷熱衝撃性があると判断する。
【0152】
本実施の形態の樹脂組成物及びその硬化物は、樹脂組成物における優れた流動性及び保存安定性を有し、かつ、それを硬化物にした時に、耐光性と耐冷熱衝撃性を有するものである。
【0153】
本実施の形態の樹脂組成物及びその硬化物、並びにそれらを含む封止材には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の物質が添加されていてもよい。そのような、他の物質の例としては、溶媒、油脂、油脂加工品、天然樹脂、合成樹脂、顔料、染料、色素、剥離剤、防腐剤、接着剤、脱臭剤、凝集剤、洗浄剤、脱臭剤、pH調整剤、感光材料、インク、電極、めっき液、触媒、樹脂改質剤、可塑剤、柔軟剤、農薬、殺虫剤、殺菌剤、医薬品原料、乳化剤・界面活性剤、防錆剤、金属化合物、フィラー、化粧品・医薬品原料、脱水剤、乾燥剤、不凍液、吸着剤、着色剤、ゴム、発泡剤、着色剤、研磨剤、離型剤、凝集剤、消泡剤、硬化剤、還元剤、フラックス剤、皮膜処理剤、鋳物原料、鉱物、酸・アルカリ、ショット剤、酸化防止剤、表面被覆剤、添加剤、酸化剤、火薬類、燃料、漂白剤、発光素子、香料、コンクリート、繊維(カーボンファイバー、アラミド繊維、ガラス繊維等)、ガラス、金属、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、懸濁化剤、粘稠剤等が挙げられる。
【実施例】
【0154】
以下に本実施の形態を具体的に説明した実施例を例示するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性の評価は以下の通りに行った。
<エポキシ当量(WPE)>
「JIS K 7236:2001(エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方)」に従って測定した。
【0155】
<粘度>
以下の条件で、測定を行った。
回転式E形粘度計:東機産業株式会社製、「TV−22形」
ローター:3°×R14(必要に応じ、他のローターを選択してもよい。)
測定温度:25℃
サンプル量:0.4mL
【0156】
<混合指標αの算出>
混合指標αは、以下の一般式(2)から算出した。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
ここで、
αb:(B)一般式(1)において、n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有するアルコキシシラン化合物のmol%
αc:(C)一般式(1)において、n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有するアルコキシシラン化合物のmol%。
【0157】
<混合指標βの算出>
混合指標βは、以下の一般式(3)から算出した。
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
ここで、
βn2:一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn0:一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn1:一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物のmol%、
但し、この時、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である。
【0158】
<混合指標γの算出>
混合指標γは、以下の一般式(4)から算出した。
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
ここで、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)。
【0159】
<混合指標δの算出>
混合指標δは、以下の一般式(5)から算出した。
混合指標δ=(δe)/(δs) (5)
ここで、
δe:加水分解縮合触媒の添加量(mol数)、
δs:一般式(1)における(OR2)の量(mol数)。
【0160】
<混合指標εの算出>
混合指標εは、以下の一般式(6)から算出した。
混合指標ε=(εw)/(εs) (6)
ここで、
εw:水の添加量(mol数)、
εs:一般式(1)における(OR2)の量(mol数)。
【0161】
<混合指標ζの算出>
混合指標ζは、以下の一般式(7)から算出した。
混合指標ζ=(ζf)/(ζk) (7)
ここで、
ζf:硬化剤の添加量(mol数)、
ζk:エポキシ樹脂及びアルコキシシラン化合物に含まれる、環状エーテル基の量(mol数)。
【0162】
<混合指標ηの算出>
混合指標ηは、以下の一般式(8)から算出した。
混合指標η=(ηg)/(ηk)×100 (8)
ここで、
ηg:硬化促進剤の質量(g)、
ηk:エポキシ樹脂及びアルコキシシラン化合物の質量(g)。
【0163】
<保存安定性指標θの算出と、樹脂組成物の保存安定性>
樹脂組成物における保存安定性は、以下の一般式(9)で示す、保存安定性指標θで評価した。
保存安定性指標θ=(保存粘度)/(開始粘度) (9)
製造直後の樹脂組成物を入れた容器を密封し、25℃で2時間、温度調整した後、25℃における粘度を測定し、これを「開始粘度」とした。
更に、樹脂組成物を入れた容器を密封し、25℃の恒温インキュベーター内で、2週間保存した。保存後、25℃における粘度を測定し、これを「保存粘度」とした。
樹脂組成物に流動性があり(粘度が1000Pa・s以下であり)、かつ、保存安定性指標θが4以下である場合に、保存安定性を有すると判断した。
【0164】
<中間体のH−NMR測定>
還流工程終了後、採取したサンプル溶液(中間体)のH−NMR測定を、以下の手順で行った。
(1)サンプル瓶に、30mgの還流工程終了後のサンプル溶液を計りとり、クロロホルム−d(和光純薬工業株式会社製)を加え、1gに調整した。
(2)上記(1)の溶液を、直径5mmφのNMRチューブに移し、下記条件で、H−NMRを測定した。
フーリエ変換核磁気共鳴装置:日本電子株式会社製「α−400型」
核種:H
積算回数:200回
【0165】
<樹脂組成物の残留アルコキシ基量の算出:H−NMR測定>
H−NMR測定は、以下の手順で行った。
(1)サンプル瓶に、10mgのサンプルと、20mgの内部標準物質を計りとり、更にクロロホルム−d(和光純薬工業株式会社製)を加え、1gに調整した。
・内部標準物質:1,1,2,2−テトラブロモエタン(東京化成工業株式会社製)
(2)上記(1)の溶液を、直径5mmφのNMRチューブに移し、下記条件で、H−NMRを測定した。
フーリエ変換核磁気共鳴装置:日本電子株式会社製「α−400型」
核種:H
積算回数:200回
上記測定結果から、以下の手順で、残留アルコキシ基量(%)を算出した。
(3)H−NMRチャートから、残留アルコキシ基由来ピークの、面積値を算出した。
(4)H−NMRチャートから、内部標準物質由来ピークの、面積値を算出した。
(5)上記(3)及び(4)で読み取った、面積値を、下記式に代入し、残留アルコキシ基量(%)を求めた。
残留アルコキシ基量(%)=(残留アルコキシ基由来ピークの面積値)/(内部標準物質由来ピークの面積値)×100
残留アルコキシ基由来ピークの面積値は、以下の方法により算出した。
<残留アルコキシ基由来のピークが単一ピークの場合>
ベースラインと、当該ピークとで囲まれた部分の面積を、残留アルコキシ基由来ピークの面積値とした。
残留アルコキシ基の種類によっては、当該残留アルコキシ基の由来のピークが複数存在する場合がある。その場合、本発明における残留アルコキシ基由来ピークの面積値は、前記の複数の残留アルコキシ基由来ピークの面積の総和とした。
<残留アルコキシ基由来のピークが複合ピークの場合>
残留アルコキシ基由来のピークと、前記の残留アルコキシ基以外に由来するピークとの間で囲まれる傾き0となる点から、残留アルコキシ基由来のピークの面積が最小となるように接線を引き、当該接線と残留アルコキシ基由来のピークとで囲まれた部分の面積を、残留アルコキシ基由来ピークの面積値とした。
なおここで、残留アルコキシ基由来のピークが当該ピークの主成分であって、残留アルコキシ基由来のピークと残留アルコキシ基以外に由来するピークとの間に、傾きが0となる点が存在しない場合には、残留アルコキシ基以外に由来するピークはピークとみなさず、当該ピークは全て残留アルコキシ基由来ピークとした。また、残留アルコキシ基以外に由来するピークが当該ピークの主成分であって、残留アルコキシ基由来のピークと残留アルコキシ基以外に由来するピークとの間に、傾きが0となる点が存在しない場合には、残留アルコキシ基に由来するピークはピークとみなさなかった。
【0166】
<樹脂組成物の縮合率の算出:Si−NMR>
縮合率は、以下のSi−NMR測定結果から、以下の手順で求めた。
(1)Cr溶液の調製:6.3質量%のChromium(III) acetylacetonate(Sigma−Aldrich社製)に、クロロホルム−d(和光純薬工業株式会社製)を加え、溶解した。
(2)サンプル瓶に、200mgのサンプルを計りとり、上記Cr溶液を加え、1gに調整した。
(3)上記(2)の溶液を、直径5mmφのNMRチューブに移し、下記条件で、Si−NMRを測定した。
フーリエ変換核磁気共鳴装置:日本電子株式会社製「α−400型」、
核種:Si、
積算回数:4000回
(4)次式に従って、樹脂組成物の縮合率Kを求めた。
中間体の縮合率K(%)=(D1×1+D2×2+T1×1+T2×2+T3×3)/{(D0+D1+D2)×2+(T0+T1+T2+T3)×3}×100・・・(10)
ここで、D0:式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(11)に示すD0構造由来シグナルの積分値の合計。
D1:式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(12)に示すD1構造由来シグナルの積分値の合計。
D2:式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(12)に示すD2構造由来シグナルの積分値の合計。
T0:式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(13)に示すT0構造由来シグナルの積分値の合計。
T1:式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(14)に示すT1構造由来シグナルの積分値の合計。
T2:式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(14)に示すT2構造由来シグナルの積分値の合計。
T3:式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(14)に示すT3構造由来シグナルの積分値の合計。
【化8】

前記式(11)中、Rは、任意の有機基又はHである。
【化9】

前記式(12)中、Rは、任意の有機基又はHである。
【化10】

前記式(13)中、Rは、任意の有機基又はHである。
【化11】

前記式(14)中、Rは、任意の有機基又はHである。
【0167】
<硬化物の耐光性試験>
以下の方法で、硬化物の耐光性を評価した。
(1)後述の方法で準備した硬化物用溶液を硬化させ、20mm×10mm×厚み3mmの硬化物を作製した。
(2)上記硬化物を、直径5.5mmの穴を開けた25mm×15mm×厚み1.2mmの黒色マスクで覆い、耐光性試験用サンプルとした。
(3)UV照射装置(ウシオ電機株式会社製、「スポットキュアSP7−250DB」)から、光ファイバーを経由して、50℃一定にした恒温インキュベーター中の上記サンプルにUV光を照射できるように装置を準備した。
(4)上記サンプルを、黒色マスクを上面にした状態で、50℃の恒温インキュベーター内にセットした。
(5)直径5.5mmの穴にUV光が照射できるように、黒色マスクの上部より、2W/cm2のUV光を96時間照射した。
(6)UV照射したサンプルを、積分球開口部を直径10mmに改造した分光色彩計(日本電色工業株式会社製、「SD5000」)で測定した。
(7)黄色度(YI)は、“ASTM D1925−70(1988):Test Method for Yellowness Index of Plastics”に準じて求めた。このYIが、13以下である場合に、耐光性を有すると判断した。
【0168】
<硬化物の冷熱衝撃試験>
以下の方法で、硬化物の冷熱衝撃性を評価した。
(1)以下に示す、基板と、シリコンチップを準備した。
(1−1)基板:ソルベイアドバンストポリマーズ社製、「アモデル A−4122NL WH 905」(15mm×15mm×厚み2mmの平板中央に、直径10mm×深さ1.2mmの窪みがあるもの)
(1−2)シリコンチップ
(2)後述の方法で準備した硬化物用溶液を上記基板に流し込み、その中にシリコンチップを1枚入れたものを10個ずつ準備して、硬化させたものを冷熱衝撃試験用サンプルとした。
(3)上記サンプルを、冷熱衝撃装置(エスペック株式会社製、「TSE−11−A」)にセットし、「(−40℃〜120℃)/サイクル:晒し時間14分、昇降温時間1分」の条件で、ヒートサイクルをかけた。
(4)上記サンプルを、ヒートサイクル100回経過した時点で取り出し、浸透液(株式会社コーザイ製、「ミクロチェック」)をスプレーし、異常(剥離やクラック)がないか観察し、その個数を記録した。
(5)上述の(4)で異常が確認されなかったサンプルは、再度、装置に入れて、更に、100回のヒートサイクルをかけて同様の方法で評価した。これらの操作を繰り返し、評価を行った。
(6)2個/10個中のサンプルに異常が見られた時点で評価を中断し、「耐冷熱衝撃性回数=(中断したヒートサイクル回数)−(100回)」を求めた。
この耐冷熱衝撃性回数が100回以上であった場合に、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
【0169】
実施例及び比較例で使用した原材料について、以下の(1)〜(9)に示す。
(1)エポキシ樹脂
(1−1)エポキシ樹脂A1:ポリ(ビスフェノールA−2−ヒドロキシプロピルエーテル)(以下、Bis−A1エポキシ樹脂と言う)
・商品名:旭化成エポキシ株式会社製、「AER2600」
また、上述の方法で測定した、エポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):187g/eq
・粘度(25℃):14.3Pa・s
(1−2)エポキシ樹脂A2:ポリ(ビスフェノールA−2−ヒドロキシプロピルエーテル)(以下、Bis−A2エポキシ樹脂と言う)
・商品名:旭化成エポキシ株式会社製、「AER2500」
また、上述の方法で測定した、エポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):186g/eq
・粘度(25℃):10.2Pa・s
(1−3)エポキシ樹脂A3:ポリ(ビスフェノールA−2−ヒドロキシプロピルエーテル)(以下、Bis−A3エポキシ樹脂と言う)
・商品名:旭化成エポキシ株式会社製、「AER6071」
また、上述の方法で測定した、エポキシ当量(WPE)は、以下の通りであった。但し、このエポキシ樹脂A3は、25℃では固形であるため、粘度は測定できなかった。
・エポキシ当量(WPE):470g/eq
(1−4)エポキシ樹脂B:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート
(以下、脂環式エポキシ樹脂と言う)
・商品名:ダイセル化学工業株式会社製、「セロキサイド2021P」
また、上述の方法で測定した、エポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):131g/eq
・粘度(25℃):227mPa・s
(1−5)エポキシ樹脂C:脂肪族ポリグリシジルエーテル(以下、脂肪族エポキシ樹脂と言う)
・商品名:東都化成株式会社製、「YH−300」
また、上述の方法で測定した、エポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):150g/eq
・粘度(25℃):152mP・s
(1−6)エポキシ樹脂D:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
・商品名:ジャパンエポキシレジン株式会社製、「jER YX8034」
・エポキシ当量(WPE):291g/eq
・粘度(25℃):325mPa・s
【0170】
(2)アルコキシシラン化合物
(2−1)アルコキシシラン化合物H:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、GPTMSと言う)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBM−403」
(2−2)アルコキシシラン化合物I:フェニルトリメトキシシラン(以下、PTMSと言う)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBM−103」
(2−3)アルコキシシラン化合物J:ジメチルジメトキシシラン(以下、DMDMSと言う)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBM−22」
(2−4)アルコキシシラン化合物K:テトラエトキシシラン(以下、TEOSと言う)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBE−04」
(2−5)アルコキシシラン化合物L:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(以下、ECETMSと言う)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBM−303」
【0171】
(3)テトラメトキシシラン部分縮合物(別名:ポリメトキシシロキサン)(以下、P−MSと言う)
・商品名:扶桑化学工業株式会社製、「メチルシリケート51」
【0172】
(4)溶媒
(4−1)テトラヒドロフラン:和光純薬工業株式会社製、安定剤不含タイプ(以下、
THFと言う)
(4−2)エタノール:和光純薬工業株式会社製(以下、EtOHと言う)
(4−3)イソプロパノール:和光純薬工業株式会社製(以下、i−PrOHと言う)
(4−4)シクロヘキサノン:純正化学株式会社製(以下、CHNと言う)
【0173】
(5)加水分解縮合触媒
(5−1)ジブチル錫ジラウレート:和光純薬工業株式会社製(以下、DBTDLと言う)
(5−2)ジブチル錫ジアセテート:東京化成工業株式会社製(以下、DBTDAと言う)
(5−3)ジオクチル錫ジアセテート:日東化成株式会社製、「ネオスタンU−820」(以下、DOTDAと言う)
(5−4)ジブチル錫ジメトキサイド:Sigma−Aldrich社製、(以下、DBTDMと言う)
【0174】
(6)硬化剤:「4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30」
・商品名:新日本理化株式会社製、「リカシッド MH−700G」
【0175】
(7)硬化促進剤:アミン系硬化剤
・商品名:サンアプロ株式会社製、「U−CAT 18X」
【0176】
(8)シリコーン樹脂:信越化学工業株式会社製、「SCR−1012(A液及びB液)」
【0177】
(9)無機充填材:コロイダルシリカ
・商品名:日産化学工業株式会社製、「メタノールシリカゾル」(SiO2:30%、粒子径:10〜20nm)
【0178】
(10)フェノキシ樹脂
・商品名:巴工業株式会社製、「PKHH」
【0179】
[実施例1]
樹脂組成物を以下の手順で製造し、評価した。
(1)準備:循環恒温水槽を5℃にセットし、冷却管に還流させた。更に、マグネチックスターラーの上に、80℃のオイルバスを載せた。
(2)表1の組成比率に従って、25℃の雰囲気下で、Bis−A1エポキシ樹脂と、アルコキシシラン化合物及びTHFを、攪拌子を投入したフラスコに入れて混合攪拌後、更に、水と加水分解縮合触媒を添加して、混合攪拌した。
(3)続いて、フラスコに冷却管をセットし、速やかに、80℃のオイルバスに浸して攪拌を開始し、リフラックスさせながら7時間反応させた。(還流工程)
(4)反応終了後、25℃まで冷却後、フラスコから冷却管を外し、前記還流工程終了後、サンプル溶液(中間体)を採取した。
(5)還流工程終了後、サンプル溶液(中間体)の、H−NMRを測定し、下記式(1)の(OR2)が加水分解されて、(OH)になっていることを確認した。
【0180】
【化12】

【0181】
(6)還流工程終了後の溶液を、エバポレーターを使用して、400Pa、50℃で1時間留去した後、更に、80℃で5時間留去しながら、脱水縮合反応を行った。(脱水縮合工程)
(7)反応終了後、25℃まで冷却し、樹脂組成物を得た。
(8)この樹脂組成物における、混合指標α1〜ε1を、表3に示した。
(9)次に、上述の方法に従って、上記(6)で得た樹脂組成物の、エポキシ当量(WPE)、開始粘度及び保存粘度を測定した。更に、保存安定性指標θ1を求めた。
上記実施例1の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=230g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=32.7Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=46.4Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ1=1.42≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、上述の方法に従って、H−NMRを測定したが、残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
これらの結果を表3に示した。
【0182】
次に、上述の25℃で2週間保存した樹脂組成物を使用して、以下の手順で硬化物を製造し、評価した。
(10)25℃の雰囲気下で、上述の樹脂組成物、硬化剤及び硬化促進剤を、表2の組成比率に従って混合攪拌し、真空下で脱気し、硬化物用溶液とした。
(11)厚み3mm、コの字状のシリコンゴムを、離型剤を塗ったステンレス板2枚で挟み込み、成型治具を作製した。
(12)この成型治具と、上述の冷熱衝撃試験用基板10個に、上述の硬化物用溶液を注ぎ込み、更に、各々の基板にシリコンチップを1枚ずつ投入した。
(13)上記の成型治具と、冷熱衝撃試験用基板をオーブンに入れ、120℃で1時間、更に、150℃で1時間、硬化処理を施し、硬化物を作製した。
(14)オーブン内温が30℃以下に下がってから硬化物を取り出して、上述の方法に従って、耐光性試験用サンプルと、冷熱衝撃試験用サンプルを調製した。
(15)上記サンプルを使用して、上述の方法で耐光性試験と冷熱衝撃試験を行った結果を表3に示す。この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=10.1≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例1の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0183】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α2〜ε2、保存安定性指標θ2を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例2の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=231g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=11.8Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=17.0Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ2=1.44≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。更に、樹脂組成物の縮合率は75.9%であった。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.3≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は500回以上≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例2の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0184】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α3〜ε3、保存安定性指標θ3を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例3の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=253g/eq
であり、適正な値を示した。また、開始粘度=27.3Pa・s<1000Pa・s、か
つ、保存粘度=39.6Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ3=1.45≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=9.2≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は500回以上≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例3の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0185】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α4〜ε4、保存安定性指標θ4を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例4の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=208g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=11.7Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=16.7Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ4=1.43≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.7≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例4の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0186】
[実施例5]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α5〜ε5、保存安定性指標θ5を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、この樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=245g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=13.2Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=18.7Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ5=1.42≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.5≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は200回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例5の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0187】
[実施例6]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α6〜ε6、保存安定性指標θ6を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例6の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=221g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=18.2Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=26.6Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ6=1.46≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.1≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は300回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例6の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0188】
[実施例7]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α7〜ε7、保存安定性指標θ7を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例7の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=217g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=10.3Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=14.5Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ7=1.41≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.3≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例7の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0189】
[実施例8]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α8〜ε8、保存安定性指標θ8を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例8の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=213g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=10.6Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=15.3Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ8=1.45≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=7.6≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は100回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例8の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0190】
[実施例9]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α9〜ε9、保存安定性指標θ9を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例9の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=235g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=27.8Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=28.6Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ9=1.03≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.0≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は300回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例9の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0191】
[実施例10]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α10〜ε10、保存安定性指標θ10を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例10の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=214g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=13.2Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=13.7Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ10=1.04≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=7.8≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例10の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0192】
[実施例11]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α11〜ε11、保存安定性指標θ11を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例11の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=228g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=41.1Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=65.8Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ11=1.60≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=7.5≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例11の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0193】
[実施例12]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α17〜ε17、保存安定性指標θ17を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例12の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=230g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=33.7Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=48.5Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ17=1.44≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=9.8≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例12の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0194】
[実施例13]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α18〜ε18、保存安定性指標θ18を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例13の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=253g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=27.5Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=40.8Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ18=1.48≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=9.9≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例3の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0195】
[実施例14]
実施例1の(12)の硬化処理温度を、110℃で4時間、更に、150℃で1時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α19〜ε19、保存安定性指標θ19を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例14の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=192g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=1.77Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=3.08Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ19=1.74≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=5.2≦13であり、耐光性を有す
ると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は100回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例14の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0196】
[実施例15]
実施例1の(12)の硬化処理温度を、110℃で4時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α20〜ε20、保存安定性指標θ20を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例15の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=214g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=4.80Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=9.23Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ20=1.92≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.8≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は200回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例15の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0197】
[実施例16]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α21〜ε21、保存安定性指標θ21を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例16の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=214g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=12.7Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=15.4Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ21=1.21≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=12.4≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例16の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0198】
[実施例17]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α22〜ε22、保存安定性指標θ22を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例17の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=238g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=18.9Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=28.9Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ22=1.53≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=7.2≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は100回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例17の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0199】
[実施例18]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α23〜ε23、保存安定性指標θ23を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例18の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=245g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=18.2Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=30.5Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ23=1.68≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=7.9≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は100回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例18の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0200】
[実施例19]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α24〜ε24、保存安定性指標θ24を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、実施例19の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=235g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=16.2Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=24.3Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ24=1.50≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=7.3≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は100回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例19の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0201】
[実施例20]
実施例2の樹脂組成物88質量%に、Bis−A1エポキシ樹脂12質量%を加え、混合したものを、混合樹脂組成物Aとした。
実施例1と同様の方法で、表2に従って硬化物を作製し、評価した結果を表3に示す。
この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=11.7≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は500回以上≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例20の混合樹脂組成物Aの硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0202】
[実施例21]
実施例2の樹脂組成物93質量%に、脂環式エポキシ樹脂7質量%を加え、混合したものを、混合樹脂組成物Bとした。
実施例1と同様の方法で、表2に従って硬化物を作製し、評価した結果を表3に示す。
この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=7.5≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は100回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例21の混合樹脂組成物Bの硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0203】
[実施例22]
実施例2の樹脂組成物96質量%に、脂肪族エポキシ樹脂4質量%を加え、混合したものを、混合樹脂組成物Cとした。
実施例1と同様の方法で、表2に従って硬化物を作製し、評価した結果を表3に示す。
この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.9≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は200回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例22の混合樹脂組成物Cの硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0204】
[実施例23]
実施例2の樹脂組成物96質量%に、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂4質量%を加え、混合したものを、混合樹脂組成物Dとした。
実施例1と同様の方法で、表2に従って硬化物を作製し、評価した結果を表3に示す。
この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.1≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は200回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例23の混合樹脂組成物Dの硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0205】
[実施例24]
樹脂組成物を以下の手順で製造し、評価した。
(1)準備:循環恒温水槽を5℃にセットし、冷却管に還流させた。更に、マグネチックスターラーの上に、80℃のオイルバスを載せた。
(2)表1の組成比率に従って、25℃の雰囲気下で、アルコキシシラン化合物及びTHFを、攪拌子を投入したフラスコに入れて混合攪拌後、更に、水と加水分解縮合触媒を添加して、混合攪拌した。
(3)続いて、フラスコに冷却管をセットし、速やかに、80℃のオイルバスに浸して攪拌を開始し、リフラックスさせながら10時間反応させた(還流工程)。
(4)反応終了後、25℃まで冷却後、フラスコから冷却管を外し、前記還流工程終了後、サンプル溶液(中間体)を採取した。
(5)還流工程終了後、サンプル溶液(中間体)の、H−NMRを測定し、下記式(1)の(OR2)が加水分解されて、(OH)になっていることを確認した。
(6)中間体に、Bis−A1エポキシ樹脂を添加し、均一になるまで混合攪拌した後、エバポレーターにセットした。400Pa、50℃で1時間留去した後、更に、80℃で5時間留去しながら、脱水縮合反応を行った(脱水縮合工程)。
(7)反応終了後、25℃まで冷却し、樹脂組成物を得た。
(8)この樹脂組成物における、混合指標α28〜ε28を、表3に示した。
(9)更に、上述の方法に従って、上記(6)で得た樹脂組成物の、エポキシ当量(WPE)、開始粘度及び保存粘度を測定した。更に、保存安定性指標θ28を求め、これらを表3に示した。
上記実施例24の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=228g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=12.9Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=19.3Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ28=1.50≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
実施例1と同様の方法で、表2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、表3に示す通り、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.2≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例24の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0206】
[実施例25]
樹脂組成物を以下の手順で製造し、評価した。
(1)準備:循環恒温水槽を5℃にセットし、冷却管に還流させた。更に、マグネチックスターラーの上に、80℃のオイルバスを載せた。
(2)表1の組成比率に従って、25℃の雰囲気下で、Bis−A1エポキシ樹脂の半量と、アルコキシシラン化合物及びTHFを、攪拌子を投入したフラスコに入れて混合攪拌後、更に、水と加水分解縮合触媒を添加して、混合攪拌した。
(3)続いて、フラスコに冷却管をセットし、速やかに、80℃のオイルバスに浸して攪拌を開始し、リフラックスさせながら10時間反応させた(還流工程)。
(4)反応終了後、25℃まで冷却後、フラスコから冷却管を外し、前記還流工程終了後、サンプル溶液(中間体)を採取した。
(5)還流工程終了後、サンプル溶液(中間体)の、H−NMRを測定し、下記式(1)の(OR2)が加水分解されて、(OH)になっていることを確認した。
(6)中間体に、表1にある残りの半量に当たるBis−A1エポキシ樹脂を入れて均一になるまで混合攪拌してからエバポレーターにセットし、400Pa、50℃で1時間留去した後、更に、80℃で5時間留去しながら、脱水縮合反応を行った(脱水縮合工程)。
(7)反応終了後、25℃まで冷却し、樹脂組成物を得た。
(8)この樹脂組成物における、混合指標α29〜ε29を、表3に示した。
(9)更に、上述の方法に従って、上記(6)で得た樹脂組成物の、エポキシ当量(WPE)、開始粘度及び保存粘度を測定した。更に、保存安定性指標θ25を求め、これらを表3に示した。
上記実施例25の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=231g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=12.5Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=18.2Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ29=1.46≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
実施例1と同様の方法で、表2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、表3に示す通り、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.3≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は400回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例25の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0207】
[実施例26]
還流工程を25時間とした以外は、上述した実施例1と同様の方法により、下記表1及び表2に従って、樹脂組成物と、その硬化物を作製した。
この樹脂組成物とその硬化物について、上述した実施例1と同様の方法により評価を行った。評価結果、混合指標α30〜ε30、保存安定性指標θ30を、下記表3に示す。
下記表3に示す通り、実施例26の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=233g/eqであり、適正な値を示した。
また、開始粘度=15.9Pa・s<1000Pa・s、かつ保存粘度=18.8Pa・s<1000Pa・sであり、良好な流動性を有していた。
また、保存安定性指標θ30=1.18≦4であり、流動性に優れ、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。また上述の方法で算出した樹脂組成物の縮合率は、82.3%であった。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.1≦13であり、実用上十分な耐光性を有していると判断した。
冷熱衝撃試験回数は200回≧100回であり、実用上十分な耐冷熱衝撃性を有していると判断した。
以上の結果から、実施例26の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0208】
[実施例27]
還流工程を45時間とした以外は、上述した実施例1と同様の方法により、下記表1及び表2に従って、樹脂組成物と、その硬化物を作製した。
この樹脂組成物とその硬化物について、上述した実施例1と同様の方法により評価を行った。評価結果、混合指標α31〜ε31、保存安定性指標θ31を、表3に示す。
下記表3に示すように、実施例27の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=242g/eqであり、適正な値を示した。
また、開始粘度=15.3Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=17.3Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ31=1.13≦4であり、であり、流動性に優れ、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。また上述の方法で算出した樹脂組成物の縮合率は、88.4%であった。
この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=9.0≦13であり、実用上十分な耐光性を有すると判断した。
冷熱衝撃試験回数は100回≧100回であり、実用上十分な耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例27の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有し、更にその樹脂組成物の硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0209】
[実施例28]
実施例2の樹脂組成物99.1質量%に、P−MSを0.9質量%を加え、混合したものを、混合樹脂組成物Eとした。混合樹脂組成物Eの残留アルコキシ基量は、4.5%であった。
実施例1と同様の方法で、表2に従って硬化物を作製し、評価した結果を表3に示す。
この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=9.6≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は100回≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、実施例28の混合樹脂組成物Eの硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性を有することから、総合判定として合格であると判断した。
【0210】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で、表1に従って、樹脂組成物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果と、混合指標α12〜ε12、保存安定性指標θ12を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、比較例1の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=368g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度>1000Pa・s、かつ、保存粘度>1000Pa・sと、両者とも流動性を示さず、保存安定性指標θ12は算出不能であった。
また上述の樹脂組成物は、保存粘度>1000Pa・sと流動性が無いために、硬化物の作製は不可能であった。
更に、測定用溶媒に樹脂組成物が完全に溶解せず、残留アルコキシ基の測定は困難であった。
以上の結果から、比較例1の樹脂組成物には流動性が無く、保存安定性は算出不能であり、残留アルコキシ基の測定が困難であり、更に硬化物の作製が不可能であったことから、総合判定は不合格と判断した。
【0211】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で、表1及び2に従って、樹脂組成物と硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α13〜ε13、保存安定性指標θ13を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、比較例2の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=295g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度=30.5Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=45.1Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ13=1.48≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また、この硬化物の耐光性試験の指標であるYI=8.4≦13であり、耐光性を有すると判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は0回<100回であり、耐冷熱衝撃性が無いと判断した。
以上の結果から、比較例2の樹脂組成物は、流動性と保存安定性を有するものの、その樹脂組成物で作製した硬化物は、耐光性はあるが、耐冷熱衝撃性が無く、総合判定として不合格であると判断した。
【0212】
[比較例3]
実施例1と同様の方法で、表1に従って、樹脂組成物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α14〜ε14、保存安定性指標θ14を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、比較例3の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=233g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度3.8Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度>1000Pa・sと流動性を示さなかった。また、保存安定性指標θ14=263以上>4であり、保存安定性が無いことが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また上述の樹脂組成物は、保存粘度>1000Pa・sと流動性が無いために、硬化物の作製は不可能であった。
以上の結果から、比較例3の樹脂組成物には、流動性や保存安定性が無く、更に硬化物の作製が不可能であったことから、総合判定は不合格と判断した。
【0213】
[比較例4]
実施例1と同様の方法で、表1に従って、樹脂組成物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α15〜ε15、保存安定性指標θ15を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、比較例4の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=184g/eqであり、適性な値を示した。また、開始粘度10.5Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度>1000Pa・sと流動性を示さなかった。また、保存安定性指標θ15=95以上>4であり、保存安定性が無いことが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また上述の樹脂組成物は、保存粘度>1000Pa・sと流動性が無いために、硬化物の作製は不可能であった。
以上の結果から、比較例4の樹脂組成物には、流動性や保存安定性が無く、更に硬化物の作製が不可能であったことから、総合判定は不合格と判断した。
【0214】
[比較例5]
実施例1と同様の方法で、表1に従って、樹脂組成物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果、及び混合指標α16〜ε16、保存安定性指標θ16を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、比較例5の樹脂組成物のエポキシ当量(WPE)は測定不能であった。また、開始粘度24.0Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度>1000Pa・sと流動性を示さなかった。また、保存安定性指標θ16=41以上>4であり、保存安定性が無いことが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
また上述の樹脂組成物は、保存粘度>1000Pa・sと流動性が無いために、硬化物の作製は不可能であった。
以上の結果から、比較例5の樹脂組成物には、流動性や保存安定性が無く、更に、硬化物の作製が不可能であったことから、総合判定は不合格と判断した。
【0215】
[比較例6]
実施例1と同様の方法で、表2に従って、エポキシ樹脂A1の硬化物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果を、表3に示す。
硬化物の耐光性試験の指標であるYI=16.9>13であり、耐光性が無いと判断した。更に、冷熱衝撃試験回数は500回以上≧100回であり、耐冷熱衝撃性を有すると判断した。
以上の結果から、比較例6の硬化物は、耐冷熱衝撃性は有するものの、耐光性が無いことから、総合判定として不合格であると判断した。
【0216】
[比較例7]
上述のシリコーン樹脂のA液とB液を、1:1の質量比で混合攪拌したものを、表2に従って、実施例1と同様の方法で、硬化物用溶液を作製した。
上述の硬化用溶液を、実施例1と同様の方法で、成型治具と、上述の冷熱衝撃試験用基板10個に、上述の硬化物用溶液を注ぎ込み、更に、各々の基板に、シリコンチップを1枚ずつ投入した。
上記の成型治具と、冷熱衝撃試験用基板をオーブンに入れ、70℃で1時間、更に150℃で5時間、硬化処理を施し、硬化物を作製した。
実施例1と同様の方法で評価した結果を、表3に示す。
硬化物の耐光性試験の指標であるYI=2.0≦13であり、耐光性を有すると判断した。しかしながら、冷熱衝撃試験回数は0回<100回であり、耐冷熱衝撃性が無いことが判明した。
以上の結果から、比較例7の硬化物は、耐光性は有するものの、耐冷熱衝撃性が無いことから、総合判定として不合格であると判断した。
【0217】
[比較例8]
表1に従って、エポキシ樹脂A2とエポキシ樹脂A3を、反応容器に添加し、85℃のオイルバスに浸して攪拌・溶解し、更に、P−MSとDBTDLを加えて混合した。
更に、窒素パージを行いながら、オイルバスの温度を105℃に上げて8時間、脱アルコール反応を行った。
次に、60℃まで冷却の後、12000Paに減圧し、溶存アルコールを除去し、樹脂組成物を得た。実施例1と同様の方法で評価した結果と、保存安定性指標θ25を、表3に示す。
比較例8の樹脂組成物の、エポキシ当量(WPE)=282g/eqであり、適性な値を示した。また、開始粘度1.89Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=2.03Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ25=1.07≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基量は52.3%>5%と、多量に残留していることが判明した。
更に、表2の配合に従って、実施例1と同様の方法で硬化物を作製し、評価したところ、比較例8の硬化物は、冷熱衝撃試験回数は0回<100回であり、耐冷熱衝撃性が無いことが判明した。また耐光性試験用に作製したサンプルには、微小なクラックが生じており、測定できなかった。
以上の結果から、比較例8の硬化物は、総合判定として不合格であると判断した。
【0218】
[比較例9]
実施例1と同様の方法で、表1に従って、樹脂組成物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果と、混合指標α26〜ε26を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されていないものが多く残留しており、正常に加水分解反応が進まなかったが、引き続き、実施例1と同様の方法で脱水縮合反応を行った。表3に示す通り、実施例9の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=237g/eqであり、適正な値を示した。しかしながら、樹脂組成物の残留アルコキシ基量は39.8%>5%と、多量に残留していることが判明した。
更に、表2の配合に従って、実施例1と同様の方法で硬化物を作製し、評価したところ、比較例9の硬化物は、冷熱衝撃試験回数は0回<100回であり、耐冷熱衝撃性が無いことが判明した。また耐光性試験用に作製したサンプルには、微小なクラックが生じており、測定できなかったため、総合判定として不合格であると判断した。
【0219】
[比較例10]
実施例1と同様の方法で、表1に従って、樹脂組成物を作製した。実施例1と同様の方法で評価した結果と、混合指標α27〜ε27、保存安定性指標θ27を、表3に示す。また中間体の、上記式(1)における(OR2)が加水分解されて、(OH)となったことを確認した。
表3に示す通り、比較例10の樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=323g/eqであり、適正な値を示した。また、開始粘度25.2Pa・s<1000Pa・s、かつ、保存粘度=60.3Pa・s<1000Pa・sと、両者とも流動性のある液体であった。また、保存安定性指標θ27=2.39≦4であり、保存安定性を有する樹脂組成物であることが判明した。
更に、樹脂組成物の残留アルコキシ基のピークは検出されず、残留アルコキシ基量は0%と判断した。
更に、表2の配合に従って、実施例1と同様の方法で硬化物を作製し、評価したところ、比較例10の硬化物は、耐光性試験の指標であるYI=7.9≦13であり、耐光性を有すると判断した。冷熱衝撃試験回数は0回<100回であり、耐冷熱衝撃性が無いことが判明した。
以上の結果から、比較例10の硬化物は、耐光性は有するものの、耐冷熱衝撃性が無いことから、総合判定として不合格であると判断した。
【0220】
[比較例11]
表1に従って、フェノキシ樹脂とCHNを、攪拌機とエステルアダプター付き反応容器に添加し、80℃のオイルバスに浸して攪拌・溶解し、更に、GPTMSとDBTDLを加えて混合した。
更に、窒素パージを行いながら、オイルバスの温度を105℃に上げて8時間、脱アルコール反応を行った。
次に、60℃まで冷却の後、12000Paに減圧し、溶存アルコールと溶媒を除去し、樹脂組成物を得た。実施例1と同様の方法で評価した結果を、表3に示す。
また上述の樹脂組成物は、保存粘度>1000Pa・sと流動性が無いために、硬化物の作製は不可能であった。
以上の結果から、比較例11の樹脂組成物には、流動性や保存安定性が無く、更に、硬化物の作製が不可能であったことから、総合判定は不合格と判断した。
以上の結果から、比較例11の硬化物は、総合判定として不合格であると判断した。
【0221】
【表1】

【0222】
【表2】

【0223】
【表3】

【0224】
表1〜3の結果から明らかなように、エポキシ樹脂と、特定のアルコキシシラン化合物とを、本実施の形態における特定の比率で混合し、反応させることにより得られた樹脂組成物(実施例1〜27)は、流動性と保存安定性に優れていた。
また、本実施の形態の樹脂組成物を使用した硬化物は、耐光性及び耐冷熱衝撃性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本実施の形態の樹脂組成物及び硬化物は、例えば、電子材料(碍子類、交流変圧器、開
閉機器等の注型及び回路ユニット、各種部品のパッケージ、IC・LED・半導体等の封
止材、発電器、モーター等の回転機コイル、巻線含浸、プリント配線基板、絶縁ボード、
中型碍子類、コイル類、コネクター、ターミナル、各種ケース類、電気部品類等)等とし
ての産業上利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を反応させて得られ、
【化1】

(式中、n=0〜3であり、R1は各々独立に、水素原子、a)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、R2は各々独立に、水素原子、d)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上8以下の1価の有機基、からなる群から選ばれる1種以上の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、を含み、かつ、下記一般式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19であり、
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:前記(B)成分のmol%、αc:前記(C)成分のmol%)
更に、残留アルコキシ基量が5%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂の、エポキシ当量(WPE)が100〜300g/eqである、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)エポキシ樹脂は、25℃における粘度が500Pa・s以下の液体である、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)エポキシ樹脂は、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)エポキシ樹脂は、脂環式エポキシ樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)〜(C)成分に加え、
(D)前記一般式(1)において、n=0である、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を更に反応させて得られる、請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
下記一般式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標βが、0.01〜1.4である、請求項1〜6のいずれか1項記載の樹脂組成物;
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
(式中、
βn2:一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn0:一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn1:一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物のmol%、
ここで、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である)。
【請求項8】
下記一般式(4)で表される、前記(A)エポキシ樹脂と前記アルコキシシラン化合物の混合指標γが、0.02〜15である、請求項1〜7のいずれか1項記載の樹脂組成物;
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
(式中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g))
【請求項9】
加水分解縮合触媒として、(E)有機金属を更に加えて反応させて得られる、請求項1〜8のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項10】
エポキシ当量(WPE)が100〜700g/eqである、請求項1〜9のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項11】
25℃における粘度が1000Pa・s以下の液体である、請求項1〜10のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項12】
縮合率が80%以上である、請求項1〜11のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の樹脂組成物に、更に
(A’)エポキシ樹脂
を加えてなる混合樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の樹脂組成物に、更に
(F)硬化剤
(G)硬化促進剤
を加えてなる混合樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項記載の樹脂組成物を、熱又はエネルギー線により硬化させて得られる硬化物。
【請求項16】
請求項15記載の硬化物を含む封止材。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項記載の樹脂組成物の製造方法であって、
(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を、脱水を伴わない還流工程と、それに続く脱水縮合工程と、の2つの工程により構成される共加水分解縮合反応に供することを含む製造方法;
【化2】

(式中、n=0〜3であり、R1は各々独立に、水素原子、a)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、R2は各々独立に、水素原子、d)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上8以下の1価の有機基、からなる群から選ばれる1種以上の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、R1として、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、を含み、かつ、下記一般式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式中、αb:前記(B)成分のmol%、αc:前記(C)成分のmol%)。
【請求項18】
以下の工程(a)及び(b)を含む、請求項17記載の樹脂組成物の製造方法。
工程(a):エポキシ樹脂(A)存在下において、一般式(1)で表される(B)及び(C)を少なくとも含むアルコキシシラン化合物を、脱水を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程。
工程(b):工程(a)によって製造された中間体を脱水縮合反応する工程。
【請求項19】
以下の工程(c)及び(d)を含む、請求項17記載の樹脂組成物の製造方法。
工程(c):一般式(1)で表される(B)及び(C)を少なくとも含むアルコキシシラン化合物を、脱水を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程。
工程(d):工程(a)によって製造された中間体にエポキシ樹脂(A)を共存させて脱水縮合反応する工程。
【請求項20】
前記脱水を伴わない還流工程における加熱温度が50〜100℃である、請求項17〜19のいずれか1項記載の樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−229384(P2010−229384A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159080(P2009−159080)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】