説明

樹脂組成物、樹脂ペレット、樹脂ペレットの製造方法及び太陽電池封止材

【課題】ペレット同士の互着が抑えられ、かつ、互着を防止する成分を混合していない樹脂よりも電気絶縁性の向上した樹脂組成物、樹脂ペレット、及びその製造方法等を提供する。
【解決手段】エチレン−不飽和エステル共重合体とメタカオリンとを含有する樹脂組成物であって、
エチレン−不飽和エステル共重合体が、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位とを有し、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位との総和を100質量%とするとき、不飽和エステルに由来する構造単位の量が20〜35質量%であるエチレン−不飽和エステル共重合体であり、
上記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、メタカオリンを0.001〜5質量部含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂ペレットおよびその製造方法、及び太陽電池封止材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、粘着性を有する樹脂のペレットには、該ペレットを保管、輸送、加工する時等に、ペレット同士で互着するという問題があった。この問題を解決するために、互着を防止する成分を樹脂に混合する方法が知られている。例えば、特許文献1には、ゴムペレットと、高級脂肪酸又は/及びその塩とを混合する方法が記載されている。特許文献2には、エチレン−ビニルエステル共重合体及び有機系粉末、金属有機酸塩粉体、無機粉体等のフィラーを、ミキサーを用いて撹拌して得られるエチレン−ビニルエステル共重合体組成物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−124829号公報
【特許文献2】特開2005−306959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載された樹脂組成物は、互着を防止する成分を混合していない樹脂に比べて、電気絶縁性が十分ではなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ペレット同士の互着が抑えられ、かつ、互着を防止する成分を混合していない樹脂よりも電気絶縁性の向上した樹脂組成物、樹脂ペレット、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第一は、エチレン−不飽和エステル共重合体とメタカオリンとを含有する樹脂組成物であって、エチレン−不飽和エステル共重合体が、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位とを有し、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位との総和を100質量%とするとき、不飽和エステルに由来する構造単位の量が20〜35質量%であるエチレン−不飽和エステル共重合体であり、上記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、メタカオリンを0.001〜5質量部含有する樹脂組成物にかかるものである。
【0008】
本発明の第二は、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面にメタカオリンが付着している樹脂ペレットであって、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを構成するエチレン−不飽和エステル共重合体が、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位とを有し、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位との総和を100質量%とするとき、不飽和エステルに由来する構造単位の量が20〜35質量%であるエチレン−不飽和エステル共重合体であり、上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレット100質量部に対して、メタカオリンが0.001〜5質量部付着している樹脂ペレットにかかるものである。
【0009】
本発明の第三は、前記樹脂ペレットの製造方法であって、メタカオリンと分散媒とを含む分散液を、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させ、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着した分散液から分散媒を除去する方法にかかるものである。
【0010】
本発明の第四は、上記樹脂組成物もしくは樹脂ペレットを用いて得られる太陽電池封止材にかかるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ペレット同士の互着が抑えられ、かつ、互着を防止する成分を混合していない樹脂よりも電気絶縁性の向上した樹脂組成物、樹脂ペレット、及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔エチレン−不飽和エステル共重合体〕
本発明のエチレン−不飽和エステル共重合体は、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位とを有し、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位との総和を100質量%とするとき、不飽和エステルに由来する構造単位の量が20〜35質量%であるエチレン−不飽和エステル共重合体である。
不飽和エステルとしては、例えばカルボン酸ビニルエステル、不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0013】
本発明のエチレン−不飽和エステル共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
【0014】
上記エチレン−不飽和エステル共重合体に含まれる不飽和エステルに由来する構造単位の量は、加工性、透明性を高める観点から、好ましくは23質量%以上、33質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上、32質量%以下である。エチレン−不飽和エステル共重合体が、二種類以上の不飽和エステルに由来する構造単位を含有する場合は、当該エチレン−不飽和エステル共重合体が含有する全ての不飽和エステルに由来する構造単位の量の合計を、不飽和エステルに由来する構造単位の量とする。
【0015】
上記エチレン−不飽和エステル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、加工性を高める観点から、好ましくは4g/10分以上、50g/10分以下である。MFRの上限はより好ましくは40g/10分である。MFRの下限はより好ましくは5g/10分である。MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法により、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
【0016】
上記エチレン−不飽和エステル共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、加工性を高める観点から、2以上、8以下であることが好ましい。分子量分布の下限は、2.5であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。分子量分布の上限は、5であることがより好ましく、4.5であることがさらに好ましく、4であることがよりさらに好ましい。なお、Mwは、ポリスチレン換算の重量平均分子量を指し、Mnは、ポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
【0017】
上記エチレン−不飽和エステル共重合体のポリエチレン換算の重量平均分子量は、40000〜80000であることが好ましく、50000〜70000であることがより好ましい。ポリエチレン換算の重量平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量を求め、上記ポリスチレン換算の重量平均分子量と、ポリエチレンとポリスチレンのQファクターの比(17.7/41.3)との積である。
【0018】
上記エチレン−不飽和エステル共重合体の製造方法としては、例えば、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0019】
〔メタカオリン〕
本発明のメタカオリンは、カオリナイトを約500℃以上で焼成したもので、結晶中の結晶水が除かれたメタカオリンである。市販品としては、例えばインシュライト(登録商標)MCシリーズ(水澤化学工業(株))を挙げることができる。
【0020】
本発明のメタカオリンの平均粒径は、本発明の樹脂組成物を溶融混練する場合にエチレン−不飽和エステル共重合体中により均一にメタカオリンが分散するという観点、およびペレット同士の互着を抑えるという観点から、0.1μm以上、30μm以下であり、好ましくは1μm以上、10μm以下である。
【0021】
なお、メタカオリンの平均粒径とは、メタカオリンをエタノール中に分散させた分散液にレーザー光線を照射し、その回折(散乱)から、体積基準で測定した粒度分布の中心粒径である。
【0022】
なお、メタカオリンは、例えば、乳鉢ですりつぶすことにより、またはジェットミルで粉砕することにより、平均粒径を0.1μm以上、30μm以下にして用いてもよい。
【0023】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、上記エチレン−不飽和エステル共重合体と、上記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、メタカオリン0.001〜5質量部とを含有する樹脂組成物である。
【0024】
本発明の樹脂組成物に含有されるメタカオリンの量は、より確実にペレット同士の互着を抑えるという観点から、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上、1質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上、0.5質量部以下であることがより好ましい。
【0025】
〔樹脂ペレット〕
本発明の樹脂ペレットは、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面にメタカオリンが付着している樹脂ペレットである。
エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを構成するエチレン−不飽和エステル共重合体は、前記エチレン−不飽和エステル共重合体である。メタカオリンを、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させることで、樹脂ペレット同士の互着が抑えられるため、好ましい。
なお、本明細書において、「エチレン−不飽和エステル共重合体ペレット」とはエチレン−不飽和エステル共重合体から構成されるペレットであってメタカオリンが付着していないペレットを指し、「樹脂ペレット」とはエチレン−不飽和エステル共重合体から構成されるペレットの表面にメタカオリンが付着しているペレットを指す。
【0026】
上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの形状は、例えば、球状、楕円球状、円柱状、楕円柱状、角状、棒状等が挙げられる。また、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの大きさは、直径又は長さが3mm以上で5mm以下が好ましい。
【0027】
例えば、樹脂ペレットを用いて太陽電池封止材を製造する場合は、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させるメタカオリンの粒子は、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレット100質量部に対して0.05質量部以上、0.3質量部以下であることが好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物および樹脂ペレットは、必要に応じて耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤からなる群より選ばれる一種以上の化合物を含有してもよい。上記化合物は、メタカオリンと共に、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させてもよい。
耐光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばフェノール系化合物、リン系化合物等が挙げられる。
【0029】
〔樹脂ペレットの製造方法〕
樹脂ペレットを製造する方法としては、例えば、メタカオリンと分散媒とを含む分散液を、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させ、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着した分散液から分散媒を除去する方法や、分散媒を用いずにメタカオリンをエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させる方法が挙げられる。
【0030】
上記メタカオリンと分散媒とを含む分散液を、上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させ、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着した分散液から分散媒を除去する方法としては、例えば、後述するエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを一時保管するためのホッパー内や、ペレットを移送するための空送ライン内に当該分散液を噴霧してエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを分散液で被覆後、乾燥することにより、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着した分散液から分散媒を除去する方法が挙げられる。
【0031】
上記分散媒としては、好ましくは水である。上記メタカオリンを分散媒に分散させる方法としては、例えば、高速攪拌方法又は超音波を用いる方法等が挙げられる。
【0032】
分散媒を用いずに上記メタカオリンを上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させる方法としては、上記メタカオリンと上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットとをミキサーを用いて混合する方法や、後述するエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを移送するための空送ライン内に上記メタカオリンを供給する方法が挙げられる。ミキサーとしては、例えば、タンブルミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0033】
樹脂ペレットの製造を工業的規模で行う場合、袋、ドラム缶、プラスチック容器等に製造された樹脂ペレットを詰める作業を連続的かつ簡便に行う必要がある。具体的には、以下のような方法で、上記メタカオリンをエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットに付着させる方法が挙げられる。
【0034】
前記方法としては、
工程1a) エチレン−不飽和エステル共重合体を押出機からストランド状に押し出して、水中でストランドをペレット状に切断してエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを製造する工程と、
工程1b) エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを、空送ラインを通じて次工程へ移送しながら、当該空送ライン内において、メタカオリンと分散媒とを含む分散液をエチレン−不飽和エステル共重合体ペレット表面に付着させる工程と、
工程1c) 上記分散液が表面に付着したエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを乾燥し、工程1a)において付着した水と工程1c)において付着した分散媒とを除去して樹脂ペレットを得る工程と
を有する方法や、
工程2a) エチレン−不飽和エステル共重合体を押出機からストランド状に押し出して、水中でストランドをペレット状に切断してエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを製造する工程と、
工程2b) エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを、空送ラインを通じて、ホッパーへ移送する工程と、
工程2c) ホッパー内において、メタカオリンと分散媒とを含有する分散液をエチレン−不飽和エステル共重合体ペレット表面に付着させる工程と、
工程2d) 上記分散液が表面に付着したエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを乾燥し、工程2a)において付着した水と工程2c)において付着した分散媒とを除去して樹脂ペレットを得る工程と、
を有する方法が挙げられる。
工程2d)は、工程2c)のホッパー内で行ってもよい。
工程1a)と工程1b)との間に、または、工程2a)と工程2b)との間に、
工程b') エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットに付着した水を除く工程
を設けてもよい。
分散媒を用いずに上記メタカオリンを上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させる方法としては、
工程3a) エチレン−不飽和エステル共重合体を押出機からストランド状に押し出して、水中でストランドをペレット状に切断してエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを製造する工程と、
工程3b) エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを、空送ラインを通じて、ホッパーへ移送する工程と、
工程3c) 上記ホッパー内で工程3a)において付着した水を乾燥して除去する工程と、
工程3d) 上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを、空送ラインを通じて次工程へ移送しながら、当該空送ライン内において、メタカオリンを上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させる工程と、
を有する方法が挙げられる。
工程3a)と工程3b)との間に、
工程b') エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットに付着した水を除く工程
を設けてもよい。
【0035】
〔メタカオリン含有量の算出方法〕
本発明の樹脂組成物に含有されるメタカオリンの含有量、および本発明のエチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着しているメタカオリンの量は、上記樹脂組成物または樹脂ペレットを500℃で燃焼し、質量変化がなくなった後に得られる灰分量として算出することが可能である。
【0036】
〔太陽電池封止材〕
下記の実施例で示されるように、本発明の樹脂組成物または樹脂ペレットを用いて得られる樹脂製品は、メタカオリンを含まない樹脂組成物や樹脂ペレットを用いて得られる樹脂製品に比べて、体積固有抵抗が向上する。そのため、本発明の樹脂組成物または樹脂ペレットを用いて作製したシート等は、太陽電池素子(結晶、多結晶、アモルファス等)の封止及び保護に用いられる太陽電池封止材に好適に用いられる。
【0037】
シート状の太陽電池封止材の製造方法は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機等を用いて上記樹脂組成物または樹脂ペレットを加工する方法が挙げられる。樹脂組成物または樹脂ペレットをシートに加工する段階で、カップリング剤、防曇剤、可塑剤、界面活性剤、着色剤、帯電防止剤、変色防止剤、難燃剤、結晶核剤、滑剤等を添加してもよい。
【0038】
太陽電池モジュールでは、太陽電池素子の薄膜化に伴い、上部保護材がガラスからフィルムに置き換えられたものも普及してきている。上部保護材がフィルム化された太陽電池モジュールは、雨天や湿度が高い環境に曝されると、上部保護材側から水分が浸入しやすく電極を腐蝕するため、封止材の水蒸気透過度が小さいことが望ましい。本発明の樹脂組成物および樹脂ペレットを用いて得られる樹脂製品は、メタカオリンを含まない樹脂組成物や樹脂ペレットを用いて得られる樹脂製品に比べて、水蒸気透過度にも優れる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0040】
(試験の方法)
実施例及び比較例における、ペレット互着試験及び物性の測定は、以下の方法で行った。
【0041】
〔ペレット互着試験〕60mm×85mmのチャック付ポリ袋に試料ペレット32gを入れ、チャックを閉じた。次いで、40℃の雰囲気下で、上記袋に900g/cmの荷重をかけ、その状態を24時間保った後、温度のみを5℃に変更し、その状態を24時間保った。その後、荷重を取り除き、袋を23℃で24時間保った。その後、袋を破り、ペレットを取り出して、ペレットの非粘着性を観察し、下記の基準に従って評価した。
○:ペレット同士の互着なし
×:ペレット同士が5粒以上くっついている
【0042】
〔体積固有抵抗(単位:Ω・cm)〕互着試験後のペレットを、150℃の熱プレス機により2MPaの圧力で5分間プレスした後、30℃の冷却プレス機で5分間冷却して、厚さ約500μmのシートを作製した。平板試料用大径電極(東亜ディーケーケー株式会社製 SME−8310)に、該シートを設置して、500Vの電圧を印加し、デジタル絶縁計(東亜ディーケーケー株式会社製 DSM−8103)にて1分後の抵抗値を測定し、その値をもとに体積固有抵抗値を算出した。
【0043】
〔平均粒径(単位:μm)〕試料の平均粒径は、以下の方法で算出した。
試料をエタノールに加え、ホモジナイザで10分間分散した。上記分散液にレーザー光線を照射し、その回折(散乱)をマイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社製 MT−3000EX II)で体積基準の粒度分布として測定し、粒度分布の中心粒径を求めた。
【0044】
〔メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)〕エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートは、JIS K7210−1995に規定された方法により、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
【0045】
〔酢酸ビニルに由来する構造単位の量(単位:質量%)〕
エチレン−酢酸ビニル共重合体に含有される酢酸ビニルに由来する構造単位の量は、エチレンに由来する構造単位と、酢酸ビニルに由来する構造単位との総和を100質量%とするときの値であり、JIS K7192に従い測定した。
【0046】
〔分子量分布(Mw/Mn)〕
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)〜(8)により、共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(1)装置:Water製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
(3)測定温度:140℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)試料濃度:5mg/5ml オルトジクロロベンゼン
(8)検出器:示差屈折
【0047】
〔水蒸気透過度〕
互着試験後のペレットを、ラボプラストミルにより5分間混練した。混練物を150℃の熱プレス機により2MPaの圧力で5分間プレスした後、30℃の冷却プレス機で5分間冷却して、厚さ約500μmのシートを作製した。該シートをJIS−K7129−2008 附属書A 感湿センサ法に準拠し、水蒸気透過度(g/(m・24hr))を測定した。シートの水蒸気透過度は、小さいほど好ましい。
【0048】
<実施例1>
オートクレーブ式反応器にて、反応温度188〜195℃、反応圧力180〜185MPa、フィードガス組成(エチレン:63〜68質量%、酢酸ビニル:37〜32質量%)の条件で、開始剤として、t-ブチルパーオキシ 2-エチルヘキサノエートを用いてエチレン−酢酸ビニル共重合体を合成した。得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体を押出機を用いて造粒し、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットを得た。エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット(酢酸ビニルに由来する構造単位の量32質量%、MFR37g/10分、分子量分布3.8、以下、EVA−1と称する。)32gと、メタカオリン(インシュライトMC−6、水澤化学工業株式会社製、平均粒径6μm)0.096g(100質量部のEVA−1に対し、メタカオリンが0.3質量部)、ポリエチレン製の袋へ入れ2分間攪拌後、互着試験を実施した。互着試験後の樹脂ペレットを用い体積固有抵抗を測定した。評価結果を表1に示した。
【0049】
<実施例2>
メタカオリンを0.064g用いた以外は、実施例1と同様にして実施した(100質量部のEVA−1に対し、メタカオリンが0.2質量部)。評価結果を表1に示した。
【0050】
<実施例3>
用いた樹脂を、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット(住友化学社製、KA−40、酢酸ビニルに由来する構造単位の量28質量%、MFR20g/10分、分子量分布4.0、以下、EVA−2と称する。)に変更し、メタカオリンを0.032g用いた以外は、実施例1と同様にして実施した(100質量部のEVA−2に対し、メタカオリンが0.1質量部)。評価結果を表2に示した。
【0051】
<実施例4>
エチレン−メチルメタクリレート共重合体ペレット(住友化学株式会社製、WK−402、メチルメタクリレートに由来する構造単位の量25質量%、MFR20g/10分、以下、EMMA−1と称する)32gと、メタカオリン(インシュライトMC−6、水澤化学工業株式会社製、平均粒径6μm)0.064gを、ポリエチレン製の袋へ入れ2分間攪拌後、互着試験を実施した(100質量部のEMMA−1に対し、メタカオリンが0.2質量部)。互着試験は、次の条件で行った。40℃の雰囲気下で、上記袋に900g/cmの荷重をかけ、その状態を48時間保った後、温度のみを5℃に変更し、その状態を24時間保った。その後、荷重を取り除き、袋を破り、ペレットを取り出して、ペレットの非粘着性を観察した。
互着試験後の樹脂ペレットを用い体積固有抵抗を測定した。これら評価結果を表3に示した。
【0052】
<実施例5>
用いた樹脂を、エチレン−メチルアクリレート共重合体ペレット(住友化学株式会社製、CG4002、メチルアクリレートに由来する構造単位の量31質量%、MFR5g/10分、以下、EMA−1と称する)とした以外は、実施例4と同様にして評価を実施した。評価結果を表4に示した。
【0053】
<比較例1>
メタカオリンを用いなかった以外は、実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示した。
【0054】
<比較例2>
メタカオリンのかわりに、カオリン(はくとう土、和光純薬工業株式会社製、平均粒径5μm、質量0.064g)0.20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示した。
【0055】
<比較例3>
メタカオリンを用いなかった以外は、実施例3と同様にして実施した。評価結果を表2に示した。
【0056】
<比較例4>
メタカオリンのかわりに、ステアリン酸カルシウム(AR−42、共同薬品株式会社製、平均粒径10μm)0.10質量部を用いた以外は、実施例3と同様にして実施した。評価結果を表2に示した。
【0057】
<比較例5>
メタカオリンを用いなかった以外は、実施例4と同様にして実施した。評価結果を表3に示した。
【0058】
<比較例6>
メタカオリンを用いなかった以外は、実施例5と同様にして実施した。評価結果を表4に示した。
【0059】
【表1】

○:ペレット同士の互着なし ×:ペレット同士が5粒以上くっついている
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−不飽和エステル共重合体とメタカオリンとを含有する樹脂組成物であって、
エチレン−不飽和エステル共重合体が、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位とを有し、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位との総和を100質量%とするとき、不飽和エステルに由来する構造単位の量が20〜35質量%であるエチレン−不飽和エステル共重合体であり、
上記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、メタカオリンを0.001〜5質量部含有する樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面にメタカオリンが付着している樹脂ペレットであって、
エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットを構成するエチレン−不飽和エステル共重合体が、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位とを有し、エチレンに由来する構造単位と不飽和エステルに由来する構造単位との総和を100質量%とするとき、不飽和エステルに由来する構造単位の量が20〜35質量%であるエチレン−不飽和エステル共重合体であり、
上記エチレン−不飽和エステル共重合体ペレット100質量部に対して、メタカオリンが0.001〜5質量部付着している樹脂ペレット。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂ペレットの製造方法であって、メタカオリンと分散媒とを含む分散液を、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着させ、エチレン−不飽和エステル共重合体ペレットの表面に付着した分散液から分散媒を除去する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物または請求項2に記載の樹脂ペレットを用いて得られる太陽電池封止材。

【公開番号】特開2013−64115(P2013−64115A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183883(P2012−183883)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】