説明

樹脂組成物、積層体及び建装材

【課題】 軟質ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との接着性が何れも良好であり、有機溶剤系接着剤を使用せずに溶融成形や熱接着することが可能な接着層用樹脂として好適な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 成分(A):酢酸ビニル含有量が40〜99重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を10〜90重量部、成分(B):酢酸ビニル含有量1〜39重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を90〜10重量部(但し、成分(A)と成分(B)との合計量を100重量部とする)含有し、成分(A)及び成分(B)の合計量中の酢酸ビニル含有量が25〜40重量%であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリオレフィン樹脂との接着性が良好な樹脂組成物及び、該樹脂組成物を含有する層を有する積層体に関する。
また、本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂層及びポリオレフィン樹脂層を有する積層体を共押出または押出ラミネートによって製造するに際し、層間剥離の生じない積層体とすることに適した樹脂組成物及び、該樹脂組成物を含有する層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙や化粧シートなどの建装材の基材としては、柔軟であり成形加工性も良好であることから軟質ポリ塩化ビニル樹脂基材が多用されている。また、軟質ポリ塩化ビニル樹脂製の建装材としては、手触り感の向上や意匠性が求められる用途においては、エンボス加工や発泡を施したものも使用されている。
しかしながら、軟質ポリ塩化ビニル樹脂は通常、樹脂に対して多量の可塑剤が配合されており、この可塑剤は経時的に建装材の表面からブリードアウト(漏出)することが避けられない。軟質ポリ塩化ビニル樹脂からの可塑剤のブリードアウトは、建装材の表面を自ら汚したり、柔軟性が低下してヒビ割れを生じるばかりでなく、衛生面、環境面においても好ましくない。特にエンボス加工や発泡を施した建装材は、表面に凹凸が形成されていたり、多孔質であるため、可塑剤のブリードアウトが一層顕著となる。
【0003】
軟質ポリ塩化ビニル樹脂製の建装材から可塑剤がブリードアウトすることを抑制する手段としては、表面を他の樹脂で被覆する方法が挙げられる。特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂は、化学的安定性が良く、多量な可塑剤を含有することも無いため、表面の汚染も少なく、衛生面、環境面においても好適である。また、上記のようなポリオレフィン樹脂は、一旦汚れが付着すると除去が困難であるため、防汚性を向上するためにエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)等が表面に使用されることもある。
【0004】
軟質ポリ塩化ビニル樹脂層の表面にポリオレフィン樹脂層やEVOH層を積層する方法としては、一般にドライラミネート法が用いられている。ドライラミネート法では通常、層間を接着するために有機溶剤を使用するが、製造工程で有機溶剤を使用することは、自然環境への影響、火災の危険性、作業者の健康面への影響等の観点から好ましくない。このため、有機溶剤を使用しない成形方法(共押出法や押出コーティング法などの溶融成形法や熱接着法)で製造することが強く望まれている。
【0005】
多層構造の建装材を溶融成形で製造する方法としては、例えば特許文献1では、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を接着性樹脂層として用いた建装材が開示されているが、当該技術はポリ塩化ビニル樹脂とは異なる基材を対象としたものであり、軟質ポリ塩化ビニル樹脂層との接着性は改良されていない。
更に特許文献2には、壁紙基材PVCシートと表皮層用アイオノマーとの接着層用樹脂として、エチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体樹脂が開示されている。しかしながら当該接着性樹脂は、アイオノマーのような極性基を有する比較的接着性のよい樹脂層に対しては適用可能であるものの、ポリエチレンのような非極性樹脂層との接着性は不十分である。
【0006】
一方、特許文献3には、酢酸ビニル含量の高いα−オレフィン−酢酸ビニルコポリマーからなる外側層、酢酸ビニル含量の低いα−オレフィン−酢酸ビニルコポリマーからなる中間層、ポリオレフィン層からなる3層の複合フォイルが開示されているが、当該技術は
軟質ポリ塩化ビニル樹脂層との接着性を改良するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−1883号公報
【特許文献2】特開2006−205527号公報
【特許文献3】特開2010−100060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況から、現状では、軟質ポリ塩化ビニル樹脂層とポリオレフィン樹脂層やEVOH層とを有機溶剤を使用せずに溶融成形や熱接着し、層間接着性が良好となるような接着性樹脂は未だ見出されていない。
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との接着性が何れも良好であり、有機溶剤系接着剤を使用せずに溶融成形や熱接着することが可能な接着層用樹脂として好適な樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とを有し、柔軟性、意匠性、防汚性に優れ、可塑剤のブリードアウトが抑制された建装材の接着層として好適な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、異なる酢酸ビニル含有量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を2種以上併用した樹脂組成物とすることにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[10]を要旨とする。
[1] 成分(A):酢酸ビニル含有量が40〜99重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を10〜90重量部、成分(B):酢酸ビニル含有量1〜39重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を90〜10重量部(但し、成分(A)と成分(B)との合計量を100重量部とする)含有し、成分(A)及び成分(B)の合計量中の酢酸ビニル含有量が25〜40重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【0010】
[2] [1]において、更に成分(C):脂肪酸アミドを0.001〜0.5重量%含有する樹脂組成物。
[3] [2]において、成分(C)がN,N−2置換の脂肪酸アミドである樹脂組成物。
[4] [1]〜[3]の何れかにおいて、更に成分(D):不飽和カルボン酸若しくはその誘導体又はエチレン性不飽和シラン化合物で変性されたポリオレフィンを0.1〜20重量%含有する樹脂組成物。
[5] [4]において、成分(D)が不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体である樹脂組成物。
【0011】
[6] [1]〜[5]の何れかの樹脂組成物を成形してなる成形体。
[7] [1]〜[5]の何れかの樹脂組成物を含有する層と、その他の層とを有する積層体。
[8] [1]〜[5]の何れかの樹脂組成物を含有する接着層、ポリオレフィン樹脂層を有する積層体。
[9] [8]において、該ポリ塩化ビニル樹脂層と該接着層、及び/又は、該接着層と該ポリオレフィン樹脂層が接している積層体。
[10] [1]〜[9]の何れかの積層体を構成物として含む建装材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟質ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との接着性が何れも良好であり、有機溶剤系接着剤を使用せずに溶融成形や熱接着することが可能な接着層用樹脂として好適な樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、軟質ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とを有し、柔軟性、意匠性、防汚性に優れ、可塑剤のブリードアウトが抑制された建装材の接着層として好適な樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本発明の樹脂組成物は、少なくとも、異なる酢酸ビニル含有量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を2種以上含有する。以下に、本発明におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体について説明する。
【0014】
<成分(A)>
本発明において成分(A)は、酢酸ビニル含有量が40〜99重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を意味する。成分(A)におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は、好ましくは42重量%以上、より好ましくは44重量%以上であり、一方、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
酢酸ビニル含有量が上記範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、後述する成分(B)とともに併用することにより、本発明の樹脂組成物のポリ塩化ビニル樹脂に対する接着性が良好となる。成分(A)の酢酸ビニル含有量が上記の上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物のポリオレフィン樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物に対する接着性が悪化するとともに、製造することも困難となる。
【0015】
ここで、酢酸ビニル含有量とは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を構成する全単量体単位(後述する「他の共重合成分」も含む。)のうち、酢酸ビニル由来の単量体の重量割合を意味し、後述する成分(B)についても同様である。なお、該酢酸ビニル含有量は、重合モノマー段階では酢酸ビニルモノマーを用いずに、重合後の変性等によって同一の化学構造を形成しているものも包含し、後述する成分(B)についても同様である。
なお、本発明において酢酸ビニル含有量の測定は、フーリエ変換赤外分光光度計を用い、JIS K7192(1999)に順じて測定した値を意味する。
【0016】
成分(A)のエチレン−酢酸ビニル共重合体には、エチレン及び酢酸ビニル以外に、他の共重合成分を含有していてもよく、後述する成分(B)についても同様である。共重合可能な成分は限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜20程度のα−オレフィンや、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられる。
【0017】
成分(A)のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、JIS K7210(1999)に従い、190℃、21.2N荷重で測定した値が、通常0.2〜60g/10分、好ましくは1〜35g/10分、さらに好ましくは、2〜30g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記の上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物の押出成形性が低下する傾向があり、更に、積層体とした場合の機械的強度が低下する傾向がある。MFRが上記の下限値未満では流動性が不足するため、得られる樹脂組成物の成形性が低下する傾向がある。
【0018】
成分(A)のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法は限定されないが、通常、溶液重合やラテックス重合、高圧法ラジカル重合等の公知の製造方法が挙げられる。特に成分(A)の範囲の酢酸ビニル含有量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を製造するためには、溶液重合により製造することが好ましい。
成分(A)のエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶液重合で製造する際の具体的な条件は限定されないが、通常、エチレンと酢酸ビニルとを必須の原料とし、tert−ブタノール等を溶媒とし、有機過酸化物又はアゾ化合物等のラジカル開始剤を用い、50〜150℃、好ましくは55〜70℃の温度で、10〜70MPa(100〜700バール)、好ましくは30〜40MPa(300〜400バール)の圧力下に行われる。
このような製造方法は、例えば、特開平1−101304号公報、特開平7−33829号公報、欧州特許出願公開第A0341499号明細書、欧州特許出願公開第A0510478号明細書等に記載されている。
成分(A)のエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、ランクセス社製「レバプレン」等から上記に該当するものを選択して使用することができる。
【0019】
<成分(B)>
本発明において成分(B)は、酢酸ビニル含有量が1〜39重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を意味する。成分(B)におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は、好ましくは4重量%以上、より好ましくは8重量%以上であり、一方、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
酢酸ビニル含有量が上記範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、成分(A)とともに併用することにより、本発明の樹脂組成物のポリオレフィン樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物に対する接着性が良好となる。成分(B)の酢酸ビニル含有量が上記の下限値未満である場合は、得られる樹脂組成物のポリ塩化ビニル樹脂に対する接着性が悪化する。
【0020】
成分(B)のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、JIS K7210(1999)に従い、190℃、21.2N荷重で測定した値が、通常0.2〜60g/10分、好ましくは1〜25g/10分、さらに好ましくは、2〜20g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記の上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物の押出成形性が低下する傾向があり、更に、積層体とした場合の機械的強度が低下する傾向がある。MFRが上記の下限値未満では流動性が不足するため、得られる樹脂組成物の成形性が低下する傾向がある。
【0021】
成分(B)のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法は限定されないが、通常、高圧法ラジカル重合、ラテックス重合等の製造方法が挙げられる。特に成分(B)の範囲の酢酸ビニル含有量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を製造するためには、高圧法ラジカル重合により製造することが好ましい。
成分(B)のエチレン−酢酸ビニル共重合体を高圧法ラジカル重合で製造する際の具体的な条件は限定されないが、通常、エチレンと酢酸ビニルとを必須の原料とし、有機過酸化物又はアゾ化合物等のラジカル開始剤を用い、150〜350℃の温度で、100〜300MPaの圧力下に行われる。
成分(B)のエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、日本ポリエチレン社製「ノバテックEVA」、三井・デュポンポリケミカル社製「エバフレックス」等から上記に該当するものを選択して使用することができる。
【0022】
<成分(C)>
本発明の樹脂組成物は、成分(C)として脂肪酸アミドを含有することが好ましい。樹脂組成物中に脂肪酸アミドを含有することにより、本発明の樹脂組成物から得られる成形
品の成形性や取り扱い性が向上する傾向がある。特に、本発明の樹脂組成物を含有する層と、ポリ塩化ビニル樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂等からなる層とを有する積層体を共押出成形し、ロール状に巻き取った場合、該ロール状シートからのシートの巻き出し易さが向上する傾向がある。
脂肪酸アミドの化学構造は限定されず、脂肪酸とアミン化合物又はアンモニアとの反応によって得られるものが挙げられる。なお、化学構造が同一であれば、上記反応によって得られるものに限定されるものではない。
【0023】
成分(C)の脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、また直鎖脂肪酸であっても分岐を有する脂肪酸であってもよい。更には、脂環族カルボン酸も包含される。更には、脂肪酸を構成する炭化水素が極性基やハロゲン等で置換されていてもよい。具体的には、例えば、飽和脂肪酸としてはカプリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、ベヘニン酸等が、不飽和脂肪酸としてはオレイン酸、エルカ酸等が、脂環族カルボン酸としてはシクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。更には、カルボン酸を2以上有する化合物であってもよく、これらとアミンとを反応させることにより、ビスアミド等とすることができる。
【0024】
成分(C)の脂肪酸アミドを構成するアミン化合物は、脂肪族アミンであっても芳香族アミンであってもよい。脂肪族基は飽和脂肪族炭化水素基であっても不飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、また直鎖脂肪族炭化水素基であっても分岐を有する脂肪族炭化水素基であってもよい。更には、脂環族も包含される。また、脂肪族基又は芳香族基を構成する炭化水素が極性基やハロゲン等で置換されていてもよい。脂肪酸アミドを構成するアミン化合物として具体的には、例えば、飽和脂肪族炭化水素基としてはカプリル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基、ベヘリル基等が、不飽和脂肪族炭化水素基としてはオレイル基、エルカリル基等が、脂環族基としてはシクロヘキシル基等が、芳香族基としてはフェニル基、フェニルメチル基、トルイル基、キシリル基等が挙げられる。更には、アミン基を2以上有する化合物であってもよく、これらと脂肪酸とを反応させることにより、ビスアミド等とすることができる。
【0025】
また、脂肪酸アミドを構成するアミン化合物は、1級アミンであっても2級アミンであってもよい。また、原料の段階では3級アミンであってもよい。1級アミンを用いることにより、N−1置換の脂肪族アミドが得られ、2級アミンを用いることにより、N,N−2置換の脂肪酸アミドが得られる。本発明における成分(C)としては、N,N−2置換の脂肪酸アミドであることが好ましい。N,N−2置換の脂肪酸アミドとしては、具体的には、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド等が挙げられる。なお、脂肪酸アミドは、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
【0026】
<成分(D)>
本発明の樹脂組成物は、成分(D)として不飽和カルボン酸若しくはその誘導体又はエチレン性不飽和シラン化合物で変性されたポリオレフィンを含有することが好ましい場合がある(以下、「不飽和カルボン酸若しくはその誘導体又はエチレン性不飽和シラン化合物」を総称して「変性用不飽和化合物」という場合がある)。樹脂組成物中に変性用不飽和化合物で変性されたポリオレフィンを含有することにより、軟質ポリ塩化ビニル樹脂や、ポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等との接着性が向上する場合がある。その理由は明らかでないが、変性用不飽和化合物で変性されたポリオレフィンは、成分(A)及び成分(B)を主成分とする樹脂組成物中で微分散化するためであると考えられる。
【0027】
成分(D)の不飽和カルボン酸若しくはその誘導体又はエチレン性不飽和シランで変性されたポリオレフィンとは、ポリオレフィン樹脂を変性用不飽和化合物で変性したものである。成分(D)としては、変性用不飽和化合物で変性されたポリオレフィンを1種のみ用いても、異なるものを2種以上併用してもよい。
変性する原料として用いることが出来るポリオレフィン樹脂は限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィン同士あるいはそれらのα−オレフィンと3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられる。
【0028】
ポリオレフィン樹脂として具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物を含む)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体等のプロピレン系樹脂;1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂;及び、ノルボルネンの開環メタセシス重合体やノルボルネン誘導体−エチレン共重合体等の所謂環状ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂として共重合体を用いる場合の連鎖形式は限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等の何れであってもよい。
これらのポリオレフィン樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
【0029】
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂としては、エチレン系樹脂が好ましく、エチレン系共重合体がより好ましい。
なお、本発明においてエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、1−ブテン系樹脂とは、それぞれ、エチレン、プロピレン、または1−ブテンをモノマー単位の50重量%以上の組成で含有する樹脂を言う。
【0030】
ポリオレフィン樹脂を変性するための変性用不飽和化合物は、不飽和カルボン酸又はその誘導体、エチレン性不飽和シラン化合物から選択されるものであれば限定されるものではない。中でも不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性(以下、総称して「不飽和カルボン酸変性」という場合がある。)されたものが好ましい。特に本発明の樹脂組成物に不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体を含有することにより、ポリオレフィン樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物との接着性が一層向上する場合がある。
【0031】
不飽和カルボン酸は限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラス酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のα,β−不飽和カルボン酸や不飽和ジカルボン酸が挙げられ、それらの誘導体としては、酸無水物、エステル、酸ハロゲン化物、アミド、イミドなどが挙げられる。これらの誘導体の中では、酸無水物が好ましい。これらの酸類は、1種を単独で用いる場合に限らず、2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和シラン化合物は限定されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、ビニルトリメトキシシラン
が好適に用いられる。これらは、1種を単独で用いる場合に限らず、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリオレフィン樹脂を変性用不飽和化合物で変性する方法は限定されず、熱のみの反応でも得ることができるが、反応の際にラジカル発生剤を添加してもよい。また、反応させる手法としては、溶媒中で反応させる溶液変性法や溶媒を使用しない溶融変性法のほか、懸濁分散反応法などの方法を用いてもよい。中でも、溶融変性法が好ましい。
溶融変性法としては、ポリオレフィン樹脂と変性用不飽和化合物、及び必要により公知のラジカル発生剤を予め混合した上で混練機中で溶融混練させて反応させる方法や、混練機中で溶融したポリオレフィン樹脂に、溶剤等に溶解した変性用不飽和化合物とラジカル発生剤との混合物を装入口から添加して反応させる方法等を用いることができる。混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、溶融混練には通常、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。
【0033】
変性用不飽和化合物の配合量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは0.1重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは5重量部以下、更に好ましくは1重量部以下である。
ラジカル発生剤の配合量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、通常0.001重量部以上、好ましくは0.005重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上で、通常3重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.2重量部以下、特に好ましくは0.1重量部以下である。
【0034】
ポリオレフィン樹脂の変性率(グラフト量)は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは7重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。グラフト量を前記範囲内とした成分(D)を本発明の樹脂組成物に含有することにより、ポリオレフィン樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物との接着性が一層向上する場合がある。なお、変性率(グラフト量)は公知の方法で確認することが可能であり、H−NMR、赤外吸収スペクトル、高周波プラズマ発光分析装置を用いたICI発光分析法等により確認することができる。
【0035】
不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィンとしては市販品を用いることもでき、三菱化学社製「モディック」、三井化学社製「アドマー」等が挙げられる。
エチレン性不飽和シラン化合物で変性されたポリオレフィンとしては市販品を用いることもでき、三菱化学社製「リンクロン」等が挙げられる。
【0036】
成分(D)のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜80g/10分、さらに好ましくは、1.0〜60g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記の上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物の押出成形性が低下する傾向があり、更に、積層体とした場合の機械的強度が低下する傾向がある。MFRが上記の下限値未満では流動性が不足し、得られる樹脂組成物の成形性が低下する傾向がある。ここで、MFRは、ポリオレフィン系樹脂がエチレン系樹脂または1−ブテン系樹脂である場合は190℃、21.2N荷重での値を意味し、ポリオレフィン系樹脂がプロピレン系樹脂である場合は230℃、21.2N荷重での値を意味する。
【0037】
<その他の樹脂>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、成分(A)、成分(B)及び成分(D)以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」という場合がある。)を配合す
ることができる。その他の樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用しても良い。
その他の樹脂としては、具体的には、例えば、ポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;等の熱可塑性樹脂や各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これらの中では、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、前記の成分(D)の原料として用いることの出来るポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0038】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、種々の添加剤等を配合することができる。添加剤としては、各種の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、造核剤、可塑剤、衝撃改良剤、相溶化剤、消泡剤、増粘剤、架橋剤、界面活性剤、滑剤、離型剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。これら添加剤は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0039】
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が環境面で好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
【0040】
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0041】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物における成分(A)と成分(B)との含有割合は、成分(A):10〜90重量%、成分(B):90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)との合計量を100重量部とする。以下、同様。)である。成分(A)と成分(B)との含有割合の好ましい範囲は、成分(A):25〜80重量%、成分(B):75〜20重量%であり、より好ましい範囲は、成分(A):40〜70重量%、成分(B):60〜30重量%である。
成分(A)の含有量が上記の下限値未満である場合は、得られる樹脂組成物のポリ塩化ビニル樹脂に対する接着性が悪化する。一方、成分(A)の含有量が上記の上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物のポリオレフィン樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物に対する接着性が悪化する。
【0042】
本発明において成分(A)と成分(B)を併用することにより、得られる樹脂組成物が軟質ポリ塩化ビニル樹脂と、ポリオレフィン樹脂及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物との何れに対しても良好な接着性を発現することが可能となる。その原因は明らかではないが、成分(A)と成分(B)は溶融混合した状態においてミクロに相分離した構造を形成し、成分(A)のドメイン、成分(B)のドメインがミクロに共存していることが重要であると考えられる。このミクロ構造によって、酢酸ビニル含有量の高い成分(A)がポリ塩化ビニル樹脂との親和性、接着性を発現し、酢酸ビニル含有量の低い成分(B)がポリオレフィン樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物との親和性、接着性を発現するためであると考えられる。
【0043】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)の酢酸ビニル含有量と成分(B)の酢酸ビニル含有量との差は限定されないが、好ましくは7〜86重量%、より好ましくは30〜60重量%である。成分(A)、成分(B)の酢酸ビニル含有量の差が前記範囲内であれば、両者の親和性が高いためミクロ構造が安定し、流動性及び接着性が良好となる傾向にある。
【0044】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)及び成分(B)の合計量中の酢酸ビニル含有量は、25〜40重量%、好ましくは27〜36重量%である。前記の酢酸ビニル含有量を前記範囲内とすることにより、得られる樹脂組成物がポリ塩化ビニル樹脂及びポリオレフィン樹脂の何れに対しても接着性が良好となる。
【0045】
本発明の樹脂組成物中における成分(A)の含有量は限定されないが、通常3〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは12〜70重量%である。樹脂組成物中の成分(A)の含有量を前記範囲内とすることにより、得られる樹脂組成物とポリ塩化ビニル樹脂又はポリオレフィン樹脂との接着性が良好となる傾向がある。
本発明の樹脂組成物中における成分(B)の含有量は限定されないが、通常3〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜70重量%である。樹脂組成物中の成分(B)の含有量を前記範囲内とすることにより、得られる樹脂組成物とポリ塩化ビニル樹脂又はポリオレフィン樹脂との接着性が良好となる傾向がある。
【0046】
本発明の樹脂組成物中において、成分(C)を用いる場合の含有量は限定されないが、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜7重量%である。樹脂組成物中の成分(C)の含有量を前記範囲内とすることにより、本発明の樹脂組成物を含有する層と、ポリ塩化ビニル樹脂又はポリオレフィン樹脂等からなる層とを有する積層体を共押出成形し、ロール状に巻き取った場合に、該ロール状シートの巻き戻し易さが向上する傾向がある。
本発明の樹脂組成物中において、成分(D)を用いる場合の含有量は限定されないが、通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは3〜12重量%である。樹脂組成物中の成分(D)の含有量を前記範囲内とすることにより、得られる樹脂組成物とポリオレフィン樹脂との接着性が良好となる傾向がある。
【0047】
本発明の樹脂組成物にその他の樹脂を含有する場合の含有量は限定されないが、通常、樹脂組成物中に0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。その他の樹脂の含有量が前記上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物がポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等に対する接着性が不十分な場合がある。
本発明の樹脂組成物に添加剤を含有する場合の含有量は限定されないが、通常、樹脂組成物中に0.01〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%である。添加剤の含有量が前記上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物のポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等に対する接着性が不十分な場合がある。な
おこれらのその他の成分は、本発明の樹脂組成物をマスターバッチとして用いる場合には、前記した含有量の2〜50倍、好ましくは3〜30倍の濃度で含有させることもできる。
【0048】
本発明の樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、JIS K7210(1999)に従い、190℃、21.2N荷重で測定した値が、通常0.2〜60g/10分、好ましくは1〜30g/10分、さらに好ましくは、2〜25g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記の上限値を超える場合は、樹脂組成物の押出成形性が低下する傾向があり、更に、積層体とした場合の機械的強度が低下する傾向がある。MFRが上記の下限値未満では流動性が不足するため、樹脂組成物の成形性が低下する傾向がある。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、上述の各成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分布した組成物を得ることができる。
より均一な混合・分散のためには、所定量の上記原料成分を溶融混合することが好ましく、例えば、本発明の樹脂組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱したり、全原料成分等を順次溶融させながら混合しても良いし、目的とする成形品を製造する際の成形時に各原料を適宜配合(ドライブレンド)して溶融混合してもよい。
【0050】
混合方法や混合条件は、各原料成分等が均一に混合されれば特に制限は無いが、生産性の点からは、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて原料を混合し、単軸押出機や2軸押出機のような連続混練機及びミルロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機で溶融混練する方法が好ましい。これらの方法で樹脂組成物を製造する際の製造条件は限定されず、周知の条件で適宜設定することができる。溶融混合時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150〜250℃で行う。
【0051】
<成形品>
本発明の樹脂組成物から得られる成形品には限定は無く、種々の押出成形品や射出成形品とすることができる。成形品の製造方法も特に制限は無く、具体的には、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形等の各種成形方法及び、これらの成形方法によって得られたシートを用いた真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の二次的成形方法が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物を単独で使用し、単層シートなどの成形品とすることもできるが、本発明の樹脂組成物はポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等との接着性に優れるので、該樹脂組成物を1つの層とした積層体として利用するとより効果的である。
【0052】
<積層体>
本発明の樹脂組成物を用いた積層体は、本発明の樹脂組成物からなる層(以下、樹脂組成物層という場合がある)を含む2層または3層以上に積層された積層体である。本発明の積層体の形状は限定されず、フィルムやシート、板状などの平面状や、パイプ状、袋状、不定形状など何れでもよい。樹脂組成物層以外の層(以下、他の層という場合がある)を構成する材料は限定されないが、樹脂層のみならず金属層であってもよい。
積層体を構成する樹脂層の材料は限定されず、例えば、本発明の樹脂組成物に用いることができるその他の樹脂として例示したものが挙げられる。また、積層体を構成する樹脂層には、本発明の樹脂組成物に用いることが出来る添加剤を含有することもできる。
これらの中でも特に、本発明の樹脂組成物からなる層を接着層とし、後述するポリ塩化ビニル樹脂層、及び/又はポリオレフィン樹脂層を有する積層体が好適である。この場合の積層体の層構成は限定されないが、ポリ塩化ビニル樹脂層と該接着層、及び/又は、該接着層と該ポリオレフィン樹脂層が接している積層体であることが好ましい。
【0053】
本発明の積層体を壁紙や化粧シート等の建装材に用いる場合、表面の汚染が少なく、衛生面、環境面においても好適であるポリオレフィン樹脂層を外表面側とし、接着装を中間層とし、柔軟性、成形性が良好であるポリ塩化ビニル樹脂層を内側として使用する構成とが好ましい。この場合、ポリ塩化ビニル樹脂層側に、更に粘着層、離型層等を付与した多層構造とし、離型層を剥離して使用することができる。
【0054】
<ポリ塩化ビニル樹脂層>
積層体を構成するポリ塩化ビニル樹脂層は、少なくとも塩化ビニル樹脂を含有する。ポリ塩化ビニル樹脂層を構成する塩化ビニル樹脂は限定されないが、塩化ビニルの単独重合体または共重合体が挙げられる。
塩化ビニルに共重合体可能なモノマーは限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、メタクリル酸またはそのエステル、塩化ビニリデン等が挙げられる。また、部分的に架橋された樹脂であってもよい。また、ポリ塩化ビニル樹脂のポリマーブレンド物、たとえば、塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニリデンからなるポリマーブレンド物を用いてもよい。
これらのうち、ポリ塩化ビニル樹脂層に用いる塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単独重合体が好ましい。
【0055】
ポリ塩化ビニル樹脂層に用いる塩化ビニル樹脂の平均重合度は限定されないが、通常、500〜6000、好ましくは800〜3000であることが望ましい。
本発明に用いる塩化ビニル樹脂の還元粘度(K値)は限定されないが、JIS K7367−2に準拠した値として、通常、50〜110、好ましくは60〜90であることが望ましい。
塩化ビニル樹脂の製造方法は限定されず、例えば、懸濁重合法や塊状重合法、乳化重合法等により製造することができる。また、塩化ビニル樹脂の微粒子を有機媒体に分散させたプラスチゾルや水性ラテックスであってもよい。
【0056】
ポリ塩化ビニル樹脂層に用いる塩化ビニル樹脂は、可塑剤を含有していることが好ましい。
塩化ビニル樹脂に用いる可塑剤は限定されないが、具体的には、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジドデシルフタレート、ジイソクミルフタレート、ジノニルフタレートなどの炭素数1〜12のアルキル基を有するフタル酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジヘキシルアゼレート、ジイソオクチルアゼレート、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレートなどの脂肪酸エステル類;トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチル・トリメリテート、トリイソオクチル・トリメリテート、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ−n−オクチル・ピロメリテート、テトラ
イソオクチル・ピロメリテート、ビフェニルテトラカルボン酸テトラブチルエステル、ビフェニルテトラカルボン酸テトラペンチルエステル、ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘキシルエステルなどの芳香族カルボン酸エステル類;トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどの正リン酸エステル類;塩素化パラフィン;塩素化脂肪酸エステル;エポキシ化大豆油;エポキシ化あまに油;エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート;メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどが挙げられる。
これらの可塑剤は、1種の化合物のみを用いても、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0057】
可塑剤を用いる場合の配合量は限定されないが、塩化ビニル樹脂100重量部に対して通常1〜150重量部、好ましくは15〜120重量部、より好ましくは20〜100重量部である。可塑剤の配合量が前記下限値未満であると、本発明の積層体の柔軟性が不十分となる傾向にある。一方、可塑剤の配合量が前記上限値を超えると、本発明の積層体から可塑剤がブリードアウトする場合や、成形性が悪化する場合がある。
【0058】
ポリ塩化ビニル樹脂層に用いる塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル樹脂とともに安定剤を含有していてもよい。
塩化ビニル樹脂に用いる安定剤は限定されないが、公知の塩化ビニル樹脂用安定剤等の中から適宜選択することが可能であり、例えば、三塩基性硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、ケイ酸鉛、オルトケイ酸鉛−シリカゲル共沈物、二塩基性ステアリン酸鉛、カドミウム−バリウム系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、錫系安定剤、及び、ハイドロタルサイト等のマグネシウム、アルミニウム、ケイ素等の無機塩を主成分とした安定剤等などが挙げられる。
これらの安定剤は、1種の化合物のみを用いても、2種以上の化合物を併用してもよい。
本発明において安定剤を用いる場合の配合量は限定されないが、塩化ビニル樹脂100重量部に対して通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部、より好ましくは3〜15重量部である。安定剤が前記範囲で配合されていると、熱安定性や成形性が良好となる傾向にある。
【0059】
<ポリオレフィン樹脂層>
積層体を構成するポリオレフィン樹脂層は、少なくともポリオレフィン樹脂を含有する。ポリオレフィン樹脂層に使用することができるポリオレフィン樹脂は限定されず、前述した本発明の樹脂組成物を構成するその他の樹脂としてのポリオレフィン樹脂と同様な樹脂を挙げることができる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることもできる。これらのポリオレフィン樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
ポリオレフィン樹脂層に好適なポリオレフィン樹脂は、本発明の積層体の用途および要求特性に応じて異なるが、建装材用に用いる場合は、エチレン系樹脂又はプロピレン系樹脂が好適である。エチレン系樹脂としては、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体がより好ましく、プロピレン系樹脂としては、プロピレンとエチレン或いは炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体がより好ましい。
【0061】
ポリオレフィン樹脂層に使用するポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜80g/10分、さらに好ましくは、1.0〜60g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記
の上限値を超える場合、上記の下限値未満の場合の何れの場合も、積層体の成形性が低下する傾向がある。ここで、MFRは、ポリオレフィン系樹脂がエチレン系樹脂または1−ブテン系樹脂である場合は190℃、21.2N荷重での値を意味し、ポリオレフィン系樹脂がプロピレン系樹脂である場合は230℃、21.2N荷重での値を意味する。
【0062】
<積層体の製造>
本発明の積層体を製造する方法は限定されず、従来公知の種々の手法を採用することが出来る。特に、本発明の樹脂組成物は接着性が良好であるため、有機溶剤を用いたドライラミネーション等を行わなくとも、以下のような成形方法によって良好な接着性を有する積層体とすることができる。
具体的には、例えば、押出機で溶融させた個々の溶融樹脂を多層ダイスに供給し、ダイスの中で積層して成形する共押出法によって、インフレーションフィルム、T−ダイフィルム、シート、パイプなどとする方法や、溶融した個々の樹脂を同一金型内にタイムラグを付けてインジェクションする、共インジェクション成形などが挙げられる。
また、各層のうちのいずれか1層を構成する樹脂フィルムを予め成形しておき、これに他の層を溶融押出する押出ラミネート成形も採用することができる。更には、予め各層を構成する樹脂フィルムを成形しておき、これら各層に熱をかけて融着することで積層体とすることも可能である。
【0063】
また、本発明の積層体は、上記のような成形にて積層体を得た後、これを延伸することで延伸積層体とすることもできる。延伸積層体は、熱固定を行ってもよいし、熱固定をせずに製品としてもよい。熱固定を行わない場合は、その後に延伸積層体を加熱することによって応力が開放され、収縮する性質をもつためシュリンクフィルムとして用いることができる。
更には、これらを真空成形、圧空成形等の二次加工を経て、絞り成形容器等とすることもできる。
【0064】
本発明の積層体の厚み(総厚み)は限定されず、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができるが、通常30〜500μmであり、さらには40〜400μmであることが好ましく、特には50〜300μmであることが好ましい。
【0065】
本発明の積層体における樹脂組成物層(接着層)の厚みは限定されず、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができるが、総厚みに対し通常1%以上、好ましくは5%以上であり、通常20%以下、好ましくは10%以下であることが望ましい。樹脂組成物層の厚みが前記下限値未満の場合は、接着性が低下する場合があり、前記上限値を超える場合は、フィルム強度が低下する傾向にある。
【0066】
<用途>
本発明の樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等に対する接着性が良好であるため、得られる積層体は、壁紙や化粧シートなどの建装材として好適に用いることができるほか、各種成形品の保護フィルム、防汚フィルム、包装材料等に広く適用することができる。これらの中で、特に壁紙として好適に用いることができる。本発明の積層体を壁紙として用いる場合は、更に粘着層や基材層、防汚層等を設けてもよい。また、エンボス加工等の物理的な処理を施した場合も、良好な層間接着性を維持することができる。
【実施例】
【0067】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において使用した測定方
法は次の通りである。
【0068】
<酢酸ビニル含有量測定>
エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は、日本分光社製、フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−610を用い、JIS K7192(1999)に順じて測定した。
<メルトフローレート(MFR)測定>
MFRは、タカラ・サーミスタ社製、メルトインデクサ L244を用い、190℃、21.2N荷重にてJIS K7210(1999)に順じて測定した。
【0069】
[樹脂組成物の原料]
<成分(A)>
A−1: ランクセス社製、商品名レバプレン450(エチレン−酢酸ビニル共重合体
。酢酸ビニル含有量45重量%、MFR:2.7g/10min(190℃、21.2N)。
A−2: ランクセス社製、商品名レバプレン700(エチレン−酢酸ビニル共重合体。酢酸ビニル含有量70重量%、MFR:5.5g/10min(190℃、21.2N)。
【0070】
<成分(B)>
B−1: 日本ポリエチレン社製、商品名ノバテックEVA LV440(エチレン−酢酸ビニル共重合体。酢酸ビニル含有量15重量%、MFR:2.0g/10min(190℃、21.2N)。
B−2: 日本ポリエチレン社製、商品名ノバテックEVA LV342(エチレン−酢酸ビニル共重合体。酢酸ビニル含有量10重量%、MFR:2.0g/10min(190℃、21.2N)。
B−3: 日本ポリエチレン社製、商品名ノバテックEVA LV141(エチレン−酢酸ビニル共重合体。酢酸ビニル含有量4.5重量%、MFR:2.0g/10min(190℃、21.2N)。
B−4: 三井・デュポンポリケミカル社製、商品名エバフレックス EV180(エチレン−酢酸ビニル共重合体。酢酸ビニル含有量33重量%、MFR:0.1g/10min(190℃、21.2N)。
【0071】
<成分(C)>
C−1: 日本精化社製の脂肪酸アミド、商品名ニュートロンSNT(N−ステアリルエルカアミド)。
<成分(D)>
D−1: メタロセン系触媒で重合した線状低密度ポリエチレンと、無水マレイン酸及び有機化酸化物とを押出機にて溶融混練して得られた、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(酸変性度:0.55重量%、MFR:8.0g/10min(190℃、21.2N)。
<その他成分>
E−1: 日本ポリエチレン社製、商品名ノバテックLD LF440HB(低密度ポリエチレン。MFR:2.8g/10min(190℃、21.2N)
E−2: 三井化学社製、商品名エルバロイ3427AC(エチレン−ブチルアクリレート共重合体)。MFR:4.0g/10min(190℃、21.2N)。
【0072】
〔実施例1〕
A−1とB−1を重量比70:30として配合した。これを2軸押出機(池貝社製、PCM−30)を使用し、シリンダー温度:200℃、吐出量:5kg/h、スクリュー回
転数:200rpmにて溶融混練し、押出された溶融ストランドを水冷、カッティングすることにより樹脂組成物のペレットを得た。
プラコー社製3種3層Tダイフィルム成形機を使用し、上記で得られた樹脂組成物を巻き取りロールの内層側、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名ノバテックHD HY350。MFR:2.5g/10min(190℃、21.2N))を中間層及び外層側としてダイス温度:200℃で共押出成形し、厚さ40μm(樹脂組成物層10μm、高密度ポリエチレン層30μm)の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを以下の方法で接着性評価を行った結果を表−1に示す。
【0073】
<接着性評価>
上記で得られた積層フィルムと、軟質PVCフィルム(MKVドリーム社製、商品名ノービエース。軟質塩化ビニル樹脂製、厚さ100μm)を、樹脂組成物層が中間層となるように重ね、JIS Z1707(1997)「7.5ヒートシール強さ試験」に準じて熱圧着し、剥離強度を測定した。
ヒートシールは、佐川製作所社製ヒートシールテスターを用い、シール温度:110℃、シール圧:0.2MPa、シール時間:3秒の条件で、ヒートシール幅は10mmとした。ヒートシール後、ヒートシール部位が10mm×15mmとなるように幅15mmの短冊型試験片を切り出した(積層フィルム、PVCフィルムの何れも、押出方向(MD方向)を短冊の長辺とした)。この試験片を、300mm/minの条件で180°剥離試験を行った。なお、評価はn=3の平均値とした。
【0074】
評価結果のうち「軟質PVC界面」とは軟質PVCフィルムと樹脂組成物層(接着層)との剥離強度を意味し、2.5N/15mm以上(剥離しない場合を含む)を「合格」とした。なお、3.5N/15mm以上であることがより好ましく、4.0N/15mm以上であることが更に好ましい。
評価結果のうち「ポリオレフィン界面」とは高密度ポリエチレン層と樹脂組成物層(接着層)との剥離強度を意味し、2.5N/15mm以上(剥離しない場合を含む)を「合格」とした。なお、3.5N/15mm以上であることがより好ましく、4.0N/15mm以上であることが更に好ましい。
【0075】
<実施例2〜10、比較例1〜9>
原料の種類及び配合量を表−1の通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを製造し、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを用い、実施例1と同様にして接着性評価を行った結果を表−1及び表−2に示す。
なお、実施例2の接着性評価では、軟質PVC界面、ポリオレフィン界面の何れでも剥離せず、樹脂組成物層の内部破壊(凝集破壊)により試験片が破断した。
【0076】
<実施例11>
原料の種類及び配合量を表−1の通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを製造した。プラコー社製3種3層Tダイフィルム成形機を使用し、上記で得られた樹脂組成物を巻き取りロールの内層側、ホモポリプロピレン(日本ポリプロピレン社製、商品名ノバテックPP FY4。MFR:5.0g/10min(230℃、21.2N))を中間層及び外層側としてダイス温度:220℃で共押出成形し、厚さ40μm(樹脂組成物層10μm、ホモポリプロピレン層30μm)の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを用い、実施例1と同様にして接着性評価を行った結果を表−1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表−1の結果から明らかな通り、実施例においては、接着性評価において、軟質PVC界面、ポリオレフィン界面の何れにおいても良好な接着性を示した。このことから、実施例の構成の積層体は、壁紙や化粧シートなどの建装材として好適に用いることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体を1種のみ使用した比較例1〜3、2種のエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用したが、酢酸ビニル含有量が本願規定の範囲外である比較例5〜7、1種のエチレン−酢酸ビニル共重合体のみを使用し、低密度ポリエチレンで希釈することにより酢酸ビニル含有量を低減した比較例8及び9の何れにおいても、接着性評価の結果は不十分であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):酢酸ビニル含有量が40〜99重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を10〜90重量部、成分(B):酢酸ビニル含有量1〜39重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を90〜10重量部(但し、成分(A)と成分(B)との合計量を100重量部とする)含有し、成分(A)及び成分(B)の合計量中の酢酸ビニル含有量が25〜40重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
更に成分(C):脂肪酸アミドを0.001〜0.5重量%含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分(C)がN,N−2置換の脂肪酸アミドである請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
更に成分(D):不飽和カルボン酸若しくはその誘導体又はエチレン性不飽和シラン化合物で変性されたポリオレフィンを0.1〜20重量%含有する請求項1〜3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
成分(D)が不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体である請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載の樹脂組成物を含有する層と、その他の層とを有する積層体。
【請求項8】
ポリ塩化ビニル樹脂層、請求項1〜5の何れか1項に記載の樹脂組成物を含有する接着層、ポリオレフィン樹脂層を有する積層体。
【請求項9】
該ポリ塩化ビニル樹脂層と該接着層、及び/又は、該接着層と該ポリオレフィン樹脂層が接している請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の積層体を構成物として含む建装材。


【公開番号】特開2013−23573(P2013−23573A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159400(P2011−159400)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】