説明

樹脂組成物およびその製造方法

【課題】 溶融成形が可能であり、リサイクルが可能で環境負荷が小さいにもかかわらず、高い耐熱性と機械的強度を有するポリアミドイミド樹脂を提供する。
【解決手段】 弾性率が5000MPa以上、対数粘度が0.05〜0.3dl/gのポリイミド系樹脂と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエーテルスルホンからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド系樹脂が配合された溶融成形可能な樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、耐熱性と高強度と高伸度を有し、自動車部品や電気電子部品に供される溶融成形用樹脂組成物に関する。本発明は、射出成形や押出成形や圧縮成形による成形が可能であり、高耐熱性と高強度と高伸度を有し、有用な工業部品を提供する溶融成形用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば連続使用温度200℃以上のような耐熱性が必要な部材に使用するプラスチック材料としては、従来熱硬化樹脂、全芳香族ポリエステルまたはポリイミド等が使用されてきた。しかし、これら材料は、射出成形や押出成形などの成形法が適用できないため生産性が低く、またリサイクル成形が難しかった。さらに、これら材料は、耐熱性には優れるが、伸度が低く脆いため、外力を受ける部品へ使用することは困難であった。
【0003】
一方、耐熱性樹脂として芳香族ポリアミドイミド樹脂の研究も進められ、いろいろな合成法が開示されてきた(特許文献1〜3)。これらの方法により、熱硬化性ポリアミドイミドや熱可塑性ポリアミドイミドの重合も可能となった。しかし、これらのポリアミドイミドの多くは、流動軟化温度が熱分解温度より高いかあるいは近傍にあるため、射出成形や押出成形などの溶融成形により成形体を得ることは事実上不可能であり、成形材料としての工業的応用が限られていた。従って、これらは特許文献4に開示されるように、溶液からの湿式紡糸による繊維として使用したり、特許文献5に開示されるように、溶液をダイコーターなどで膜状に塗布して溶媒を除去してフィルムとして使用されたりしてきた。また、上記ポリアミドイミド樹脂溶液をキャスティングして得られたフィルムは大変脆く、仮に溶融成形したとしても、成形材料として使用できるものではなかった。
【0004】
さらに、アシル化された脂肪族ジアミンを共重合することにより、射出成形が可能なアミドイミド樹脂が開示されているが(特許文献6〜8)、重合時の反応性が低いため高分子量のポリアミドイミド樹脂を得ることが難しく、また該ポリアミドイミド樹脂の耐熱性や強度が低かった。特許文献9には、ポリアミドイミド樹脂にポリアミド樹脂を配合して射出成形する手法が開示されているが、耐熱性や強度が低下するために、高い耐熱性の要求される部材に適用することが出来なかった。
【0005】
近年、製品や部品が軽薄短小化され、それに使用される材料に対しても強靭性が要求される。特に、200℃以上雰囲気下で連続的に使用可能である高い耐熱性を有する有機材料は数少ないことから、強靭性と耐熱性を併せ持つと共に、生産性が高くなる溶融成形が可能なポリアミドイミド樹脂が求められる。
【0006】
【特許文献1】特公昭42−15637号公報
【特許文献2】特公昭46−15513号公報
【特許文献3】特公昭50−33120号公報
【特許文献4】特開平10−279680号公報
【特許文献5】特開2003−238707号公報
【特許文献6】特公平03−9130号公報
【特許文献7】特公平03−9131号公報
【特許文献8】特公平03−40057号公報
【特許文献9】特開昭59−89354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶融成形が可能であり、リサイクルが可能で環境負荷が小さいにもかかわらず、高い耐熱性と機械的強度を有するポリアミドイミド樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は以下の樹脂組成物およびその製造方法である。
【0009】
弾性率が5000MPa以上、対数粘度が0.05〜0.3dl/gのポリイミド系樹脂と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエーテルスルホンからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂組成物に関する。
【0010】
また、分子内にビフェニル構造を有するポリイミド系樹脂と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエーテルスルホンからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂組成物に関する。
【0011】
さらに上記のポリイミド系樹脂の溶液中に、ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂を配合して、溶解し、さらに貧溶剤中に投入して凝固することを特徴とする樹脂組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成からなる本発明の溶融成形用ポリアミドイミド樹脂組成物は、分解温度が軟化温度より高く射出成形や押出成形が可能であり、かつ高い耐熱性と高い強度・伸度を有している。本発明の樹脂やそれを用いた樹脂組成物を溶融成形によって成形することにより、高い耐熱性と高い機械的強度を有する自動車部品、電気電子部品、OA機器部品等を生産性高く提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるポリイミド系樹脂は、例えば、酸成分や酸クロライド成分とアミン成分との反応で得られるアミン法、酸成分とイソシアナート成分との反応で得られるイソシアナート法などの通常の方法により合成される。従って本発明で言う「アミン成分」とは対応する「ジイソシアネート成分」を包含することがある。なお、反応時の重合安定性等の観点からイソシアネート法により合成することが好ましい。
【0014】
本発明のポリイミド系樹脂の合成に用いられる酸成分としては、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸およびこれらの無水物、グリコールのジトリメートエステルとして、エチレングリコールジトリメリテート、プロピレングリコールジトリメリテート、ブチレングリコールジトリメリテート、ジエチレングリコールトリメリテートなどが挙げられる。これらの中では、ピロメリット酸、トリメリット酸およびこれらの無水物が価格、反応性、耐熱性から好ましい。
【0015】
この他に、酸成分として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸などを共重合してもよい。
【0016】
また、(B)アミンまたはイソシアナート成分としては、4,4’―ジフェニルメタンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、o−トリジン、ベンジジン、ナフタレンジアミンおよびこれらのジイソシアネートから選ばれた1種または1種以上の組み合わせが使用される。これらの中では、ビフェニル構造を有するo−トリジン、ベンジジンおよびこれらのジイソシアネートが耐熱性、強度、弾性率の点から好ましい。この他アミン成分としてエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびこれらのジイソシアネート等を共重合モノマーとして使用してもよい。
【0017】
本発明に用いるポリイミド系樹脂の合成にはN,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチル尿素、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルイミダゾリルジノン、等の高沸点極性溶剤の単独または混合溶剤を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明に用いるポリイミド系樹脂は、上記溶剤中、50から250℃、好ましくは80から230℃で攪拌することにより合成されるが、反応を促進するためにトリエチルアミン、ルチジン、ピコリン、トリエチレンジアミン、等のアミン類、リチウムメチラート、ナトリウムメチラート、リチウムエチラート、ナトリウムエチラート、マグネシウムエチラート、カリウムブトキサイド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物、あるいはコバルト、チタニウム、スズ、亜鉛等の金属、半金属化合物等の触媒存在下に行ってもよい。
【0019】
本発明に使用されるポリイミド系樹脂は、対数粘度(N−メチル−2−ピロリドン中25℃、ポリマー濃度0.5g/100ml)が、0.05〜0.3dl/g以下であることが好ましい。対数粘度が0.3dl/gを超えると、ポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂との相溶性が低下して機械的特性や耐熱性が十分発揮されない場合がある。また、対数粘度が0.05dl/g未満では相溶性は良いが、配合物の機械的特性や耐熱性に寄与しない。これらの対数粘度の樹脂を得る手段としては、反応成分の当量比、添加順序、反応時間や反応温度等を制御する方法を用いることができるが、これらに限定されない。
【0020】
また、本発明で使用するポリイミド系樹脂の弾性率は5000MPa以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、100000MPa以下が好ましい。弾性率が5000MPa未満であると成形体の機械特性が低下することがある。弾性率を5000MPa以上にするためには、例えば分子内にp−フェニレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格を導入することが効果的である。これらの構造を沢山導入することにより弾性率を高くすることが出来る。これらの中でもビフェニル骨格を導入することが、その他の樹脂との相溶性等の観点より好ましい。ビフェニル骨格はポリイミド系樹脂を構成する酸成分、アミン成分それぞれを100モル%としたときに、酸成分および/またはアミン成分の5〜95モル%を導入することが好ましい。p−フェニレン骨格を導入するためのモノマー成分としてはp−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン(及び対応するイソシアネート)等が挙げられ、ビフェニル骨格を導入するためには3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン(及び対応するイソシアネート)、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物等が挙げられ、ナフタレン骨格を導入するためにはナフタレンジカルボン酸やナフタレンジアミン(および対応するジイソシアネート)等を挙げることができる。
【0021】
本発明に使用されるポリイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂等が挙げられる。これらのうち、溶融成形時の熱安定性やポリイミド系樹脂以外の成分との相溶性等を考慮するとポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0022】
上記のようなポリイミド系樹脂と、熱成形可能なその他の樹脂とブレンドすることにより本発明の熱成形が可能な樹脂組成物を製造することが出来る。熱成型可能な樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられ、これらの中では相溶性や価格などの点からポリアミドおよび/またはポリエステル樹脂が好ましい。
【0023】
本発明においては組成物全体を100質量%としたときに、ポリイミド系樹脂が1〜50質量%含有することが好ましい実施態様である。該配合により、溶融成型が容易になり、成型品の荷重たわみ温度が高くなり、また寸法精度が向上し、伸度を維持して弾性率が向上して寸法精度が向上する点で好ましい。
【0024】
上記範囲の配合品の配合方法も特に制限はなく、ポリイミド系樹脂と熱成型可能な樹脂のドライブレンド法、溶液混合法などが用いられるが、ポリイミド系樹脂を重合した溶液に熱成型可能な樹脂を重合の途中、或いは重合の後期に配合溶解する方法、あるいは熱成型可能な樹脂をポリイミドの重合溶液に溶解した溶液でポリイミド系樹脂を重合する方法などが挙げられ、これら後二者の方法によれば、より微細に混合され、配合物成型品の透明性が向上する。一部交換反応などによって更に均一にブレンドされるためと推定される。
【0025】
上述のように溶液法にて製造する場合は、該溶液から樹脂成分を取り出し、固形化する工程が必要となる。すなわち溶液を水等の貧溶剤中へ投入して凝固させて、ろ過で固形樹脂を取り出し、乾燥する手法を用いることが好ましい。乾燥後のポリアミドイミド樹脂は粉砕して粉末状としても良いし、溶融混練によりペレット化しても良い。貧溶剤としては水、グリコール類、セルソルブ類、アルコール類等を使用することが出来る。
【0026】
本発明のポリイミド系樹脂を含む熱成型可能な樹脂組成物には、無機粉体などの強化材を配合することができる。強化材の配合量はポリイミド系樹脂を含む樹脂成分100質量部に対して10質量部未満では、強化効果は低く、また300質量部を超えると脆性化することがある。寸法精度向上の目的からすると、20〜100質量部が特に好ましい。
【0027】
本発明に使用される無機強化材としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、タルク、クレイ、シリカ、ワラストナイト、マイカ、ベントナイト、炭酸カルシュウムなど粒状粉末や板状粉末強化材が挙げられる。中では、クレイ、ワラストナイト、タルク、マイカが好ましく、特にタルクが好ましい。粒径としては、球状に換算して、30μm以下、好ましくは、0.1〜10μmが好ましい。これ以下では強化効果が低く、これ以上では表面平滑性が低下することがある。
【0028】
また、無機強化材として使用される繊維状強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、針状ワラストナイト、チタン酸カルシウムや硼酸アルミニウムなどのウイスカー等の無機繊維が挙げられる。特にガラス繊維や炭素繊維が好ましい。繊維径としては1〜30μmのものが好ましく、特に8〜20μmのものが好ましい。成形品中の繊維長としては、0.05〜0.5mmのものが好ましく、0.1〜0.4mmのものがより好ましい。
【0029】
本発明においては、上記ポリイミド系樹脂を含む熱成型可能な組成物には金型等からの離形性を高める目的で脂肪酸塩を配合することが好ましい。その配合量はポリイミド系樹脂を含む樹脂成分100質量部当たり、脂肪酸塩を0.1〜5質量部を含んでなることが好ましい実施態様である。0.1質量部未満では効果は小さく、5質量部を超えるとブリードなどして外観が低下して好ましくない。0.3〜1.0質量部が特に好ましい。
【0030】
肪酸塩としては、パルミチル酸、ステアリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、及びオレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和酸、不飽和酸の2量体やこれらの2量体を水素添加したいわゆるダイマー酸などの、リチュウム、ナトリュウム、カリュウム、マグネシュウム、カルシュウム、バリュウム、アルミニュウム、亜鉛などの塩や部分塩が例示される。中では、ステアリン酸バリュウム、モンタン酸ナトリュウム、モンタン酸カリュウム、モンタン酸カルシュウム塩、モンタン酸マグネシュウム、モンタン酸亜鉛などが好しい。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、粉末状かペレット状で提供されることが好ましい。本発明の樹脂組成物は通常の射出成形機や押出機や圧縮成形機で成形が可能である。材料を、軟化点より10〜50℃高い、好ましくは15〜30℃高い温度に調節されたシリンダー温度を有する射出成形機か押出成形機に供給して、加熱溶融した後、金型やダイに供給されて成形体が得られる。射出成形時の金型温度は、100〜240℃にて成形される。好ましくは、150〜240℃である。150℃以下の場合は、製品を熱処理して使用することが好ましい。
【0032】
さらに、本発明の樹脂組成物には、常用の添加剤、例えば耐熱安定剤、耐侯剤、耐加水分解剤、顔料などを添加してもよい。熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系、チオエーテル系、ホスファイト系等やこれらの組み合わせを挙げることができる。耐侯剤としては、ベンゾフェノン系、トリアゾール系、ヒンダードアミン系などが挙げることができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、前記の添加剤成分を重合段階で混合して、ポリアミドイミド樹脂を重合することができる。また、単軸押出機、2軸押出機やニーダーなどの装置を用いて、離型剤や安定剤を混練することにより製造することができる。安定剤をより高濃度に含む組成物を予め溶融混練して、成形時にこれをマスターバッチとして混合することもできる。
【0034】
本発明の溶融成形用樹脂組成物の用途は特に限定されないが、上記した特性を有するので、高耐熱性や高強度や高寸法精度が要求される自動車のエンジン周辺部品や電気・電子部品やOA機器部品の用途に用いられるものであることが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中単に部とあるのは質量部を示す。なお実施例中の物性評価は以下の方法により測定した。
1.動的粘弾性
動的粘弾性測定は、幅4mm、試長30mmのサンプルについて、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御製DVA−220)を用い、測定周波数110Hz、昇温速度2℃/分にて室温から250℃の範囲において行った。保存弾性率(E’)の屈折点において、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と屈折点以上における最大傾斜を示す接線との交点の温度を変曲点とした。
2.対数粘度
測定は、0.5gのポリマーを100mlのN−メチルピロリドンに溶解して得た溶液について、ウベローデ粘度管を用いて25℃において行った。
3.弾性率
ポリイミド系樹脂単独溶液からキャスト法によって得られた約20μmのフィルムを
東洋ボールドウイン製引張り試験機によって、引っ張り速度20mm/分で測定した。
【0036】
(実施例1)
反応容器にトリメリット酸無水物1.1モル、o−トリジンジイソシアネート0.8モル、2,4−トリレンジイソシアネート0.2モルを固形分濃度が15%となるようにN−メチル−2−ピロリドンとともに仕込み攪拌しながら、180℃で2時間反応させた後、冷却したポリマー溶液を大量の水中に投入して凝固させ、十分水洗した後乾燥した。得られたポリマーの対数粘度は0.25dl/g、弾性率は6200MPaであった。
得られたポリマーを粉砕して粉末状のポリアミドイミド共重合体を得た。このポリアミドイミド10部をナイロン6(東洋紡績製)90部に配合して、二軸押出機(池貝鉄工社製、PCM30)のホッパーに投入して、300℃、100rpmにて溶融混練して、コンパウンドペレットを得た。
このコンパウンドペレットを140℃にて3時間乾燥した。これを、300℃に温度調節した射出成形機(東芝機械製IS100)と120℃に温度調節したテストピース金型を使用して、JISK6301タイプ1の試験片を成形した。得られた成形品を180℃にて5時間熱処理して物性評価した。
【0037】
(実施例2)
実施例1において、ナイロン6の代わりにポリエステル樹脂(東洋紡績製SI173)を用いた以外は実施例1と同じ方法でテストピースを得た。得られたテストピースの特性値を表1に示す。
【0038】
(実施例3)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂の重合終了後にナイロン6をポリアミドイミド樹脂/ナイロン6=10/90(部)となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に加え固形分濃度が15%の樹脂溶液とした。以下、実施例1と同じ方法で凝固、洗浄、乾燥してポリアミドイミド/ナイロン6の配合物粉体を得た。この粉体を140℃にて3時間乾燥したあと、実施例1と同じ条件で射出成型してテストピースを作成した。得られたテストピースの特性値を表1に示す。
(実施例4〜5)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂とナイロン6の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同じ方法でテストピースを作成した。得られたテストピースの特性値を表1に示す。
【0039】
(実施例6〜8)
実施例3において、ナイロン6の代わりにポリエステル樹脂(東洋紡績製SI173)を用い、表1に示す比率で配合した樹脂溶液を作成し、実施例1と同じ方法でテストピースを得た。得られたテストピースの特性値を表1に示す。
(実施例9)
実施例1において、ピロメリット酸0.1モル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物0.2モル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.3モル、トリメリット酸無水物0.5モル、o−トリジンジイソシアネート1モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に仕込み、実施例1と同じ方法でポリアミドイミド樹脂を合成した。得られたポリマーの対数粘度は0.23dl/g、弾性率は6800MPaであった。このポリマー溶液に実施例1と同じ方法でナイロン6を配合、均一に溶解した後、水中に投入して固形ポリマーを得、実施例1と同じ方法でテストピースを作成した。このテストピースの特性を表1に示す。
【0040】
(実施例10)
実施例1において、トリメリット酸1モル、o−トリジンジイソシアネート1モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に仕込み、実施例1と同じ方法でポリアミドイミド樹脂を合成した。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.21dl/g、弾性率は6500MPaであった。このポリマー溶液に実施例1と同じ方法でナイロン6を配合、均一に溶解した後、水中に投入して固形ポリマーを得、実施例1と同じ方法でテストピースを作成した。このテストピースの特性を表1に示す。
【0041】
(比較例1)
実施例1においてナイロン6単独のテストピースを作成した。
(比較例2)
実施例1においてポリエステル(東洋紡SI173)単独のテストピースを作成した。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物からなる成形体は、耐熱性、機械的特性(引張強度、引張伸度など)に優れており、かつ溶融成形が可能なため、生産性も高く成形時の作業環境も良い。そのため耐熱性と強度の要求される自動車用部品や電気電子部品やOA機器部品に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性率が5000MPa以上、対数粘度が0.05〜0.3dl/gのポリイミド系樹脂と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエーテルスルホンからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
分子内にビフェニル構造を有するポリイミド系樹脂と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエーテルスルホンからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂組成物。
【請求項3】
ポリイミド系樹脂が、ポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
組成物全体を100質量%としたときに、ポリイミド系樹脂が1〜50質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリイミド系樹脂の溶液中に、ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂を配合して、溶解し、さらに貧溶剤中に投入して凝固することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂を溶解した溶液中で請求項1または2に記載のポリイミド系樹脂を合成し、さらに貧溶剤中に投入して凝固することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−193610(P2006−193610A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6277(P2005−6277)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】