説明

樹脂組成物および輸送機器用大型部品

【課題】 航空機の機体内部に使用される内装材に用いるのに適した、軽くて、難燃性を有し、適度の強度を有するとともに、客室内で使用する機材や、搭乗客が保有する品物などによる打撃で傷付かないような表面の硬さを有する材料を提供する。
【解決手段】 特に523cm2 以上の表面積を有する輸送機器用大型部品の成形に用いられるもので、熱可塑性樹脂、特にはポリプロピレンホモポリマーを主たる成分とし、リン含有難燃剤、さらにはポリテトラフルオロエチレン、金属化合物の添加により難燃化されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂組成物および輸送機器用大型部品、より具体的には、難燃性を有し、輸送機器用大型部品の成形に用いられる樹脂組成物と、この樹脂組成物により成形された輸送機器用大型部品、特に、表面積が523cm2以上で航空機に求められる難燃性を満足し、しかも軽量な大型部品に関するものであって、輸送機器、特に航空機の製造技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の急速な原油価格の高騰に伴い、航空機燃料価格の大幅な上昇を招き、航空機業界は、採算性確保が大きな問題となっている。
この採算性改善の為に、機体重量を軽減して燃費を改善することが強く求められている。
原油価格の高騰は“OPEC”の原油生産量統制に基づき発生した現象で、化石燃料である原油は有限の限られた資源であって、長期的に見れば原油高騰の動きは止まらず、長期化すると思われる。
また、新たなエネルギーが世に現れても、航空機が原油を燃料とする限り、重量軽減の可否は、航空機業界の生き残りを掛けた採算性確保に大きな影響を与えるため、重量軽減の要請は長期的、かつ継続的に存在していくと思われる。
【0003】
航空機は、空中浮遊体としての宿命から燃費改善の為、従来からも各種の重量低減策が取られている。
例えば、特開2002−178425号公報(特許文献1)に提案されているように、使用する材料も、軽量で強度のあるアルミ合金や、軽量な中空体にも拘わらず十分な強度を有するハニカム構造体が各部分に使われている。
【0004】
しかしながら、前記アルミニウム合金は、強さのある反面、他の軽量材料と比べ密度も高く、その性質上使用せざるを得ない部分を除いて、他の低密度材料に変わることが、重量低減の為には望ましい。
また、アルミニウム合金より低密度の材料として、複雑な賦形性が要求され、強度を必要とする構造部材には、繊維強化プラスチックなどが使用されている。
【0005】
また、航空機は、飛行中、独立した個室となっているため、機内での発火などの災害に遭遇しても、機外に逃げることはできず、火ことなどの災害は絶対に避けなければならず、必然的に機体に装着される材料、しかもある一定寸法以上の部品は、大きさに依る区別に応じて、難燃性であることを要求されている。
【0006】
そのために、特許文献1にも、種々の難燃剤が、例えば、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、三酸化アンチモン、硼素およびアルミニウムの水和物などを用いることが例示されている。
【0007】
これらの難燃剤の中でも、臭素、塩素などのハロゲン化合物、取り分け難燃効果の高いものとして臭素化合物が選択され、難燃性付与の目的で種々の材料が添加されている。
しかしながら、これらの難燃剤は、燃焼した際に有害ガスを発生することが知られている。また、特に効果の高い臭素系難燃材は、有毒ガスを発生することが知られていた。
そのため、ヨーロッパにおいては、特に電気用品の分野において、難燃性付与の目的で使われていた臭素系難燃材の熱可塑性樹脂への添加は、制限される動きにある。さらに、一部臭素系難燃材は使用禁止の動きが出てきている。
【0008】
特に航空機の内部においては、高い飛行高度のため、室外の空気密度が非常に小さく、室内を高度に気密化して、外部と隔離しておく必要がある。
すなわち、航空機の飛行中に、何らかの有害ガスの発生が機内で起きた場合、発生する有害ガスを機外に出すことは、機内の高度の気密性から困難で、機内の空気の浄化、入れ替えは非常に難しい構造となっている。
したがって、室内に有害ガスが滞留することになるので、機内に毒性のガスが発生するような災害は避けなければならず、燃焼時に臭素、塩素などを有する毒性の強いハロゲンガスを発生するような難燃剤の使用は好ましくないとされている。
【0009】
さらに、特表2004−527474号公報(特許文献2)においては、航空機の内装用部品にも用いられる成形用組成物が提案され、芳香族ポリカーボネート、ABSグラフトポリマーに添加されるリン系難燃剤のジュース化現象を防止するものとして、特定の難燃剤としてのオリゴホスフェートが提案されている。
【特許文献1】特開2002−178425号公報(請求項1,段落0012)
【特許文献2】特表2004−527474号公報(請求項20)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かかる現状に鑑み、発明者らは、航空機の機体内部に使用される部材、特に内装材として、軽量であって、かつ難燃性を有し、適度の強度を有するとともに、客室内で使用する機材や、搭乗客が保有する品物などによる衝撃などによっても、損傷することのない表面の硬さを有する材料を提供することを目的として開発を行った。
【0011】
その結果、リン含有難燃剤の添加により難燃化された熱可塑性樹脂を主たる成分とする樹脂組成物が、輸送機器用大型部品の成形に適したものであることを見出し、この発明を完成させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の請求項1に記載の発明は、
熱可塑性樹脂を主たる成分とし、リン含有難燃剤の添加により難燃化され、
輸送機器用大型部品の成形に用いられるものであること
を特徴とする樹脂組成物である。
【0013】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の樹脂組成物において、
前記輸送機器用大型部品が、
523cm2 以上の表面積を有するものであること
を特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の樹脂組成物において、
前記輸送機器用大型部品の成形が、
射出成形であること
を特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の樹脂組成物において、
前記熱可塑性樹脂が、
付加重合体であること
を特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項4に記載の樹脂組成物において、
前記付加重合体が、
ポリプロピレンホモポリマーであること
を特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項5に記載の樹脂組成物において、
前記ポリプロピレンホモポリマーが、
鉛筆硬度で示される硬度が、HB以上のものであること
を特徴とするものである。
【0018】
また、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1に記載の樹脂組成物において、
前記熱可塑性樹脂は、
リン含有難燃剤を、5〜40をWt%の範囲で含有すること
を特徴とするものである。
【0019】
また、この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1に記載の樹脂組成物において、
前記熱可塑性樹脂は、
難燃化補助剤として、ポリフッ化オレフィンおよび/または金属化合物が添加されていること
を特徴とするものである。
【0020】
また、この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項8に記載の樹脂組成物において、
前記ポリフッ化オレフィンが、
ポリテトラフルオロエチレンであること
を特徴とするものである。
【0021】
また、この発明の請求項10に記載の発明は、
請求項8に記載の樹脂組成物において、
前記金属化合物が、
酸化アンチモン、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムであること
を特徴とするものである。
【0022】
また、この発明の請求項11に記載の発明は、
請求項1〜10に記載の樹脂組成物を用いて成形されたこと
を特徴とする輸送機器用大型部品である。
【0023】
また、この発明の請求項12に記載の発明は、
請求項11に記載の輸送機器用大型部品において、
前記輸送機器が、
航空機又はリニアモーターカー並びに新幹線用の車両であること
を特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の請求項13に記載の発明は、
請求項11に記載の輸送機器用大型部品において、
前記輸送機器用大型部品が、
航空機のラバトリー、ギャリー又はコックピットを構成する部品であること
を特徴とするものである。
【0025】
また、この発明の請求項14に記載の発明は、
請求項13に記載の輸送機器用大型部品において、
前記輸送機器用大型部品は、
その密度が1.1g/cm以下であること
を特徴とするものである。
【0026】
また、この発明の請求項15に記載の発明は、
請求項13又は14に記載の輸送機器用大型部品において、
前記輸送機器用大型部品が、
ボーイング社で規定しているテスト方法「14CFR Part 25.853 and APPENDIX F PART 1」による難燃試験、「PART V」の煙濃度試験、および「ABD0031」による毒性試験に合格するものであること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明の樹脂組成物は、輸送機器、特に航空機内の内装材を、成形、特に射出成形によって、かなり自由な形状で、あるいは複雑な形状と大きさに調製することができる。
また、得られた成形品は、内装材に要求される難燃性を満たすもので、燃焼時に臭素や塩素等を含んだ有害な燃焼ガスの少ない、環境に優しいものである。
また、その成形品は、航空機業界が要求する難燃規格に合格するのに十分な難燃性を有し、しかも航空機内装材としての使用に耐えるだけの強さと表面硬さを持ち、他の材料との価格競争にうち勝つだけの価格競争力を有するものである。
さらに、乗客又は手荷物などが表面に触れる機会の多いそれらの内装材の表面損傷が、その表面硬度を高くしたことにより効果的に防止できるものである。
【0028】
この発明の樹脂組成物によって得られる成形品は、航空機業界が要求する、例えば、ボーイング社で規定しているテスト方法「14CFR Part 25.853 and APPENDIX F PART 1」による難燃試験、「PART V」の煙濃度試験、および「ABD0031」による毒性試験に合格するものである。
【0029】
また、この発明の樹脂組成物によって得られる成形品は、1.1g/cm3 以下の密度のものとすることが可能で、航空機内装材の重さを低減することが出来るもので、航空機の軽量化に大きく寄与するものである。
【0030】
さらに、内装材の強度を、以下の範囲にあるようにすることができ、この内装材の破損で、少なくとも大きな人的、物的被害の無い部分に使用され、機内の人や物との接触などにより簡単には破損することがない。
引っ張り強度;25MPa以上
曲げ強度 ;45MPa以上、
アイゾット衝撃強さ(ノッチ無し); 18KJ/m2 以上
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この発明の樹脂組成物を構成する主たる熱可塑性樹脂としては、高温で流動性を持ち、通常の成形方法、特に射出成形や真空成形などの方法で成形できるもので有れば使用可能であって、特に限定されるものではない。
【0032】
具体的には、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリスチレン,ポリアクリレート,ポリメタクリレート,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルクロライド,ポリメチルペンテン等各種ポリオレフィンの付加重合体及びそれらの共重合体及びそれら重合体の混合物による熱可塑性樹脂,ポリアセタール,ポリアミド,ポリアリレート,液晶ポリマー,ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ポリフェニレンサルファイド,ポリカーボネート,その他各種ポリエステル類,各種ポリウレタン類,ポリフェニレンオキサイド等の縮合型熱可塑性樹脂などを挙げることができる。
【0033】
なお、成形する対象部品の形状が複雑な場合には、射出成形により隅々まで樹脂が流れることが必要で、高い高温流動性が要求され、成形対象物の形状にもよるが、射出成形の容易さから判断して、高温時の流動性が、ASTM D1238(メルトフローレート;温度230℃)で、5g/10min以上である樹脂が、この発明にとり好ましい。
【0034】
また、平面部分が多い部品などのように、複雑な形状の少ない、あるいは成形面積の小さい部品は、さらに小さいメルトフローレートを有するものでも成形ができるので、メルトフローレートの値で、この発明の熱可塑性樹脂が必ずしも限定されるものではない。
【0035】
この発明に使用できる熱可塑性樹脂としては、前述したように、高温流動性を有し、成形、特に射出成形できるもので有れば、特段の限定はないが、価格の安さ、高温流動性が大きく、成形の容易なこと、成型品の密度が小さいこと、また、航空機が高空で日光の直射を受けた場合などに遭遇する輻射熱の影響などを勘案すると、ポリプロピレンが適する樹脂の一つである。
【0036】
さらに、通常のポリプロピレンは表面硬度が低く、機内に内装材として装着した場合には容易に表面に傷が付き易い。
この問題を防ぐために、ポリプロピレンの中でも、表面硬度が高いホモポリマーがより適している。
例えば、JIS K5600−5−4(鉛筆硬度)によると、通常のポリプロピレンの鉛筆硬度が“3B〜H”で有るのに対し、ポリプロピレンのホモポリマーは“HB〜H”を示し、内装材として表面の傷をかなり防ぐことができるので、より内装材の材料として適している。
また、ホモポリマーは、曲げ強さ、曲げ弾性率などの強度についても、他の形態よりも平均して10〜15%高く、この点でも優れているので、この発明の目的に適している。
【0037】
この発明に用いられるリン含有難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン,ピロリン酸メラミン,オルトリン酸メラミン,リン酸二アンモニウム,リン酸一アンモニウム,リン酸アミド,リン酸ピペラジン,ポリリン酸メラミン,ポリリン酸アンモニウム,ポリリン酸アミド等のリン酸塩が使用できる。
また、これら化合物からの派生物、混合物等が挙げられる。
【0038】
さらに、リン酸トリメチル,リン酸トリエチル,リン酸トリプロピル,リン酸トリブチル,リン酸トリイソプロピル,リン酸トリス(ブトキシエチル),リン酸トリフェニル,リン酸トリクレシル,リン酸(2−エチルヘキシル),リン酸t−ブチルジフェニル,リン酸トリキシレニル等のリン酸エステル類も使用できる。
【0039】
また、色調の問題があるものの、赤燐も使用が可能であって、分子中にリン分子を含む化合物は、限定なくこの発明において使用することができる。
また、リンを含有している市販されている各種リン系難燃剤も、特に限定無く使用することができる。
さらに、その難燃効果は、添加量によって、その系中のリン含有量を制御することにより調整することができる。
【0040】
このリン含有難燃剤の添加による効果は、熱可塑性樹脂の種類により異なるが、最終的には、上記したボーイング社の難燃試験に合格するまで添加するのが好ましく、通常5〜40Wt%、最適には15〜25Wt%添加すればよい。
【0041】
この発明にとり好ましい熱可塑性樹脂であるポリプロピレンホモポリマーの場合、通常のリン含有難燃剤であれば、15〜25Wt%前後が最適添加量で、これにより上記の難燃性の規格に合格することができる。
【0042】
この難燃性は、フッ素化ポリオレフィン、特にポリテトラフルオロエチレンの添加でさらに向上させることができる。
フッ素化ポリオレフィン、特にポリテトラフルオロエチレンの添加量は、0.05%〜2.0Wt%が適しており、さらに0.1〜0.5Wt%が最適である。
【0043】
ポロテトラフルオロエチレンの添加は、高温流動性を落とす弊害を有し、成形対象部品の形状に依るが、2.0Wt%以上の添加は、高温流動性の著しい低下を招き、好ましくない。その点を考慮して、添加量は、0.1〜0.5Wt%が最適である。
【0044】
上記ポリプロピレンホモポリマーの場合、リン含有難燃剤を添加した上に、0.2Wt%の添加で大幅な難燃性の改善効果が発揮される。
【0045】
フッ素化ポリオレフィンの難燃性に与える効果は、含有成分のフッ素にある。
有効成分のフッ素はハロゲン類であるが、フッ素自体は少量なうえ、ポリテトラフルオロエチレンは、フライパンの焦げ防止や、焼き付き防止に使われるように、非常に安定したポリマーで、ヨーロッパでも規制の対象から外されている。
【0046】
この発明においては、このフッ素化ポリオレフィン、特にポリテトラフルオロエチレンを使用するものであるが、その使用量の少なさと、規制の対象から外れていることによって、有害物の使用とはならないものと判断される。
【0047】
この発明において、さらに難燃性の効果を増すために、金属化合物が添加される。
難燃性能を向上させる金属化合物としては、具体的に、酸化アンチモン,水酸化アルミニューム,水酸化マグネシュームなどが挙げられ、1〜30Wt%の添加により、難燃性の効果を増すことができる。
【0048】
但し、この金属化合物の添加も、高温流動性の低下を招き、成形対象物の形状によっては、その流動性が低下するため、使用を制限したほうが好ましい。
【0049】
金属化合物は、添加量の多いほど難燃性が向上させるが、流動性低下の問題を有し、高温流動性の大幅な低下は、複雑な形状の成形に支障を来たすため、形状による差異はあるが、添加量は通常15Wt%以下であるのが望ましい。
また、添加量が1Wt%以下の場合は、難燃性向上の効果が小さく、実際上流動性低下に依る不具合のみが強調され、添加の意義が生じ難い。
【0050】
この発明における樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、特にポリプロピレンホモポリマーとリン含有難燃剤、さらに必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレン,酸化アンチモン,水酸化アルミニューム,水酸化マグネシュームなどから構成される。
【0051】
輸送機用大型部品の成形のためには、それらを混合し、押出成型機で混練押出しすることによって、ペレットとして用いるのが好ましい。
【0052】
輸送機用大型部品の成形、特に射出成形による成形は、上記ペレットを用い、別途製造した金型に射出することにより行なわれ、それにより航空機内装部品など、輸送機用大型部品を得ることができる。
【0053】
この際の成形条件の一例として、
シリンダー温度 ; 180〜210℃
スクリュー回転数 ; 50〜100rpm
射出速度 ; 30〜60%
背圧 ; 5〜10Kg/cm2
金型温度 ; 30〜60℃
を挙げることができる。
【0054】
また、そのようにして成形された又その代表的組成(ポリプロピレンのポリマーにリン酸エステル系難燃材を20〜30Wt%、及びポリテトラフルオロエチレン0.2Wt%を添加した)の樹脂組成物からの成型品の強度は、
引っ張り強さ;30MPa (ASTM D638)
曲げ強さ ;53MPa (ASTM D790)
表面硬さ(鉛筆硬度);B〜HB (JIS K5600−5−4)
アイゾット衝撃強さ ;2KJ/m(ASTM D256)
(温度23℃、ノッチ付き)
を示し、実用上の性能をクリアしている。
【0055】
さらに、この樹脂系で射出成形した部品は、ボーイング社の要求する“FLAMMABILITYTEST”,“SMOKE DENSITY TEST”および“燃焼ガス毒性試験”にも合格するものである。
【実施例1】
【0056】
以下、実施例によって、この発明の樹脂組成物を、さらに詳細に説明する。
なお、この発明は、以下に述べる実施例により何ら制限されるものではない。
【0057】
<熱可塑性樹脂コンパウンドの作成>
ポリプロピレンホモポリマー(プライムポリマー社製)に、アデカスタブFP−2200(旭電化社製)を18Wt%混合した。
さらに、ポリテトラフルオロエチレンを0.2Wt%、酸化アンチモンを3.0Wt%添加して、温度220℃に保持した押出機で、ペレット状の樹脂組成物(以下、JBS−18という。)を作成した。
【0058】
<力学的性質確認>
得たJBS−18を、乾燥機で温度95℃/3時間乾燥したのち、シリンダー温度220℃にて射出成型機で試験片を作成して、各種の物性を測定した。
その結果は以下の通りで、十分航空機内装材の大型部品として使用可能な材料であった。
密度 ;1.05
引っ張り強さ ;28MPa (ASTM D638)
曲げ強さ ;50MPa (ASTM D790)
鉛筆硬度 ;HB (JIS K5600−5−4)
【0059】
<燃焼試験の実施>
JBS−18を用いて作成した試験片で、難燃性能を測定した。
その結果は以下の通りで、航空機内装材の難燃規格に合格するものであった。
測定方法; (14 CFR Part 25.853 and APPENNDIX F Part I)
消火時間/1.8秒
燃焼距離/1.0 インチ
樹脂滴下量/ 滴下無し
【0060】
また、この試験片を用い、発煙濃度試験を行った。
その結果も以下の通りで、航空機内装材の煙濃度試験に合格するものであった。
測定方法; (14CFR Part 25.853 and APPENNDIX F Part V)
4分間の平均煙濃度 95.96
4分間の最大煙濃度 104.87
【0061】
さらに、燃焼ガスの毒性試験を行った。その結果は以下の通りであった。
測定方法; (ABD0031)
判定 ; 合格
【0062】
以上の試験から明らかなように、この発明による大型部品は、ボーイング社の航空機内装材に関する全ての燃焼試験に合格するものであることが確認できた。
【実施例2】
【0063】
JBS−18を用いて、日精樹脂工業社製射出成型機“FN460”を用いて航空機のラバトリー用のパネル(SA PANEL)を、以下の条件で成形したところ、良好な成形物が得られた。
シリンダー温度; 220℃
スクリュウ回転数;80rpm
背圧 ;10Kg/cm2
金型温度 ;60℃
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明の樹脂組成物および輸送機器用大型部品は、以下分野での使用が可能なものであって、今後本格使用が期待されるものである。
【0065】
特に、航空機内装分野では、その密度が低い為、燃料消費量の優れた、経済的に有利な材料として期待され、今後本格的に使われ始めると思われる。
る。
【0066】
この発明の樹脂組成物は、その他、リニアモーターカー、新幹線車両等の輸送機器などの軽量、難燃材料が尊重される分野での実用化が期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主たる成分とし、リン含有難燃剤の添加により難燃化され、
輸送機器用大型部品の成形に用いられるものであること
を特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記輸送機器用大型部品が、
523cm2 以上の表面積を有するものであること
を特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記輸送機器用大型部品の成形が、
射出成形であること
を特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、
付加重合体であること
を特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記付加重合体が、
ポリプロピレンホモポリマーであること
を特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリプロピレンホモポリマーが、
鉛筆硬度で示される硬度が、HB以上のものであること
を特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、
リン含有難燃剤を、5〜40をWt%の範囲で含有すること
を特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、
難燃化補助剤として、ポリフッ化オレフィンおよび/または金属化合物が添加されていること
を特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリフッ化オレフィンが、
ポリテトラフルオロエチレンであること
を特徴とする請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記金属化合物が、
酸化アンチモン、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムであること
を特徴とする請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の樹脂組成物を用いて成形されたこと
を特徴とする輸送機器用大型部品。
【請求項12】
前記輸送機器が、
航空機又はリニアモーターカー並びに新幹線用の車両であること
を特徴とする請求項11に記載の輸送機器用大型部品。
【請求項13】
前記輸送機器用大型部品が、
航空機のラバトリー、ギャリー又はコックピットを構成する部品であること
を特徴とする請求項11に記載の輸送機器用大型部品。
【請求項14】
前記輸送機器用大型部品は、
その密度が1.1g/cm以下であること
を特徴とする請求項13に記載の輸送機器用大型部品。
【請求項15】
前記輸送機器用大型部品が、
ボーイング社で規定しているテスト方法「14CFR Part 25.853 and APPENDIX F PART 1」 による難燃試験、「PART V」の煙濃度試験、および「ABD0031」による毒性試験に合格するものであること
を特徴とする請求項13又は14に記載の輸送機器用大型部品。

【公開番号】特開2010−59320(P2010−59320A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227081(P2008−227081)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(500574654)バイオシステム株式会社 (1)
【出願人】(000104364)カルプ工業株式会社 (23)
【出願人】(000132013)株式会社ジャムコ (53)
【Fターム(参考)】