説明

樹脂組成物および電子部品予備加熱用トレー

【目的】 帯電防止性、耐熱性、耐衝撃性、低ソリ性に優れ、かつ電気抵抗の異方性の少ない樹脂組成物およびこれを成形してなる電子部品予備加熱用トレーを提供することにある。
【構成】 テレフタル酸および/またはイソフタル酸またはその機能誘導体(ただし、テレフタル酸残基とイソフタル酸残基のモル比は7:3〜0:10)とビスフェノール類とから得られる芳香族ポリエステル共重合体30〜90重量部、ホスゲンとビスフェノール類とから得られるポリカーボネート70〜10重量部、導電性カーボン5〜40重量部(前記芳香族ポリエステル共重合体とポリカーボネートとの合計100重量部に対して)とからなる樹脂組成物およびその成形によって得られる電子部品予備加熱用トレー。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、帯電防止性、耐熱性、耐衝撃性、低ソリ性に優れ、かつ電気抵抗の異方性の少ない樹脂組成物および電子部品予備加熱用トレーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】プリント基板への電子部品の高密度実装、工程簡略化に伴い、電子部品の表面実装技術が著しい進歩を遂げている。この実装技術の進展に伴い、集積回路(IC,LSI)を始めとする電子部品を表面実装するに際し、基板のスルーホール上に仮置きした電子部品を溶融した半田浴に浸漬して半田付けする方法、半田ペースト上に仮置きした電子部品を赤外線加熱機、高沸点低活性溶媒の蒸気浴等を通過させ半田付けを行う方法等が行われている。
【0003】しかし、これらのいずれの方法もICを始めとする電子部品を急速に加熱するので、電子部品内部に含まれている水分が急速に加熱されて水蒸気となり、電子部品の表面にフクレが生じることが大きな問題となっている。
【0004】これを防止するために電子部品を加熱前に加熱乾燥し、吸水している水分を除去することが有効である。このため、ICをはじめ電子部品は実装前に予め乾燥炉中で150℃以上の温度で予備加熱して水分を除去することが行われていた。この乾燥工程の際に電子部品は150℃以上の耐熱変形性を有するトレーに載せて取り扱われるが、このトレーは静電気の蓄積、放電による電子部品の損傷を防ぐために電気抵抗を低くする必要があり、電気抵抗(体積抵抗)が106 Ωm以下、好ましくは104 Ωm以下であることが望ましい。
【0005】このような要求に対し、従来はアルミダイキャストを始めとする金属製トレーが使用されてきたが、高価格のため、代替材料として各種樹脂材料が検討されている。
【0006】例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の結晶性樹脂のガラス繊維強化材料があるが、これらは結晶化に伴う収縮が大きく、またガラス繊維の異方性のため、ソリの発生が避けがたいとの欠点を有している。また、ポリカーボネートのような非結晶性樹脂は耐熱温度が低いため使用できず、ガラス繊維を配合して耐熱性を向上させようとしてもその効果は僅かであり、逆にガラス繊維の異方性のため、ソリの発生が避けがたい。従って、電子部品の予備加熱に用いられるトレーには少なくとも耐熱温度が150℃以上の非結晶性樹脂が望まれる。
【0007】このような耐熱樹脂としては、ポリフェニレンエーテルまたはポリフェニレンエーテルとポリスチレンの混合物、ポリエーテルサルフォン、ポリアリルサルフォン等が知られている。しかし、このような耐熱樹脂は耐衝撃性が不足しており、添加が必要とされている導電性カーボンを含有せしめた場合、著しく耐衝撃性が低下し、非常に脆くなるとの欠点を有している。さらに、導電性カーボンを含有せしめた場合、成形時のソリの発生が大きく、本発明の目的とする電子部品予備加熱用トレーのような平板状の成形品を成形した場合、ソリの無い成形品を得ることは極めて困難であった。また、矯正等により成形品のソリを少なくしても、電子部品の予備乾燥の繰り返しなどによりソリが大きくなるため、繰り返し使用が困難という欠点もあった。
【0008】さらに、導電性カーボン含有樹脂製トレーは、一般に導電性に異方性が生じ易く良好な静電防止効果が得にくいとの欠点もあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このような状況に鑑み、本発明の課題は、帯電防止性、耐熱性、耐衝撃性、低ソリ性に優れ、かつ電気抵抗の異方性の少ない樹脂組成物およびこれを成形してなる電子部品予備加熱用トレーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリエステル共重合体とポリカーボネートおよび導電性カーボンよりなる樹脂組成物が上記課題を達成できることを見出し、本発明に至った。
【0011】すなわち、本発明は、テレフタル酸および/またはイソフタル酸またはその機能誘導体(ただし、テレフタル酸残基とイソフタル酸残基のモル比は7:3〜0:10)と下記一般式〔1〕で示されるビスフェノール類とから得られる芳香族ポリエステル共重合体30〜90重量部、ホスゲンと下記一般式〔1〕で示されるビスフェノール類とから得られるポリカーボネート70〜10重量部、導電性カーボン5〜40重量部(前記芳香族ポリエステル共重合体とポリカーボネートとの合計100重量部に対して)とからなることを特徴とする樹脂組成物、
【化2】


(式中、-X- は-O-,-S-,- SO2 -,-CO-, アルキレン基およびアルキリデン基よりなる群から選ばれ、 R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7 および R8 は水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる。)および前記樹脂組成物の成形によって得られる電子部品加熱用トレーである。
【0012】本発明において、用いられる芳香族ポリエステル共重合体は、テレフタル酸および/またはイソフタル酸またはその機能誘導体(ただし、テレフタル酸残基とイソフタル酸残基のモル比は7:3〜0:10)と下記一般式〔1〕で示されるビスフェノール類とから得られるものであり、テレフタル酸残基が70モル%を越えると、芳香族ポリエステル共重合体の溶融温度が高くなり過ぎ、本発明の樹脂組成物を調製することが困難となる。
【化3】


前記テレフタル酸およびイソフタル酸の誘導体とは、例えばこれらの酸のジクロライド等のハロゲン化物あるいはアルキル、アリール等のジエステル等をいう。また、本発明において用いられるテレフタル酸、イソフタル酸およびこれらの誘導体のフェニレン基は、ハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよい。
【0013】前記一般式〔1〕で表されるビスフェノール類の具体例としては、 4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4- ヒドロキシ-2- メチルフェニル) エーテル、ビス(4- ヒドロキシ-3- クロロフェニル)-エーテル、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- サルファイド、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)- ケトン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- メタン、ビス(4- ヒドロキシ-3- メチルフェニル) - メタン, ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジクロロフェニル)- メタン、ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジブロモフェニル)- メタン、ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジフルオロフェニル)- メタン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル)- エタン、2,2-ビス(4- ヒドロキシ-3- メチルフェニル)-プロパン、,2,2- ビス(4- ヒドロキシ-3,3- ジメチルフェニル)-プロパン、 2,2-ビス(4- ヒドロキシ-3- クロロフェニル)-プロパン、2,2-ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジクロロフェニル)- プロパン、2,2-ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジブロモフェニル)- プロパン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル)- n-ブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)- フェニルメタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- ジフェニルメタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)-4- メチルフェニルメタン、 1,1- ビス(4- ヒドロキシフェニル)-2,2,2- トリクロロエタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)-4- クロロフェニルメタン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2-ビス(4- ヒドロキシナフチル)プロパン、1,1-ジ(4- ヒドロキシフェニル)-1- フェニルエタン等が挙げられ、中でも最も代表的なものは,2,2- ビス(4- ヒドロキシフェニル)- プロパン(ビスフェノールA)である。そしてもし必要ならば、前記ビスフェノール類の混合物あるいはビスフェノール類と少量の他の2価の化合物、例えば、 2,2'-ジヒドロキシジフェニル、 2,6- ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、 2,6- ジヒドロキシトルエン、 2,6- ジヒドロキシクロロベンゼン、 3,6- ジヒドロキシトルエン等の混合物を使用することができる。
【0014】本発明において用いられる芳香族ポリエステル共重合体は、界面重合法、溶融重合法、溶液重合法等の任意の方法で合成される。また、芳香族ポリエステル重合体の対数粘度は〔25℃,フェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)混合溶媒中で測定〕は、機械的強度、熱変形温度などの点で0.4〜0.8のものが好ましい。
【0015】本発明において用いられるポリカーボネートは、ホスゲンと一般式〔1〕で表されるビスフェノール類から得られるものである。
【0016】一般式〔1〕で表されるビスフェノール類の具体例としては、4,4'- ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4- ヒドロキシ-2- メチルフェニル) エーテル、ビス(4- ヒドロキシ-3- クロロフェニル)-エーテル、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- サルファイド、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- スルホン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- ケトン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3- メチルフェニル)-メタン, ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジクロロフェニル)- メタン、ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジブロモフェニル)- メタン、ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジフルオロフェニル)- メタン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル)- エタン、2,2-ビス(4- ヒドロキシ-3- メチルフェニル)-プロパン、,2,2- ビス(4- ヒドロキシ-3,3- ジメチルフェニル)-プロパン、 2,2- ビス(4- ヒドロキシ-3- クロロフェニル)-プロパン、2,2-ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジクロロフェニル)- プロパン、2,2-ビス(4- ヒドロキシ-3,5- ジブロモフェニル)- プロパン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル)- n-ブタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- フェニルメタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)- ジフェニルメタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)-4- メチルフェニルメタン、 1,1- ビス(4- ヒドロキシフェニル)-2,2,2- トリクロロエタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)-4- クロロフェニルメタン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2-ビス(4- ヒドロキシナフチル)プロパン、1,1-ジ(4- ヒドロキシフェニル)-1- フェニルエタン等が挙げられ、中でも最も代表的なものは,2,2- ビス(4- ヒドロキシフェニル)- プロパン(ビスフェノールA)である。そしてもし必要ならば、前記ビスフェノール類の混合物あるいはビスフェノール類と少量の他の2価の化合物、例えば、 2,2'-ジヒドロキシジフェニル、 2,6- ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、 2,6- ジヒドロキシトルエン、 2,6- ジヒドロキシクロロベンゼン、 3,6- ジヒドロキシトルエン等の混合物を使用することができる。
【0017】本発明において用いられるポリカーボネートは、界面重合法、溶融重合法、溶液重合法等の任意の方法で合成される。また、ポリカーボネートの対数粘度は〔25℃,テトラクロロエタン溶媒中で測定〕は、機械的強度、熱変形温度などの点で0.4〜0.7のものが好ましい。
【0018】本発明において用いられる導電性カーボンとは、樹脂中に混入することにより、樹脂の電気抵抗を大幅に低下せしめるカーボンであり、アセチレンブラックおよびファーネスブラック等が好ましく用いられる。ファーネスブラックとしては、具体的には、KEJ-EC, DJ-600( いずれもライオン社商品名) 、♯3600B 、♯3250B ( いずれも三菱化成社商品名) 、ケッチェンブラックKEC(オランダ・アクゾ社商品名) 、MHS-500(旭カーボン社商品名) 、バルカンXC72( 米国CABOT 社商品名) 等の市販品がある。これらの導電性カーボンの中でもDJ-600は本発明の樹脂組成物に対して少量の含有率で電気抵抗を低下させることができ、好ましい。さらに、♯3600B は本発明の樹脂組成物に対して耐衝撃性の低下が少ないため好ましい。
【0019】本発明の樹脂組成物における芳香族ポリエステル共重合体とポリカーボネートとの混合割合は、芳香族ポリエステル共重合体が30〜90重量部で、ポリカーボネートが50〜10重量部である。芳香族ポリエステル共重合体が30重量部未満である場合には、樹脂組成物の耐熱変形性が著しく損なわれ、ポリカーボネートが10重量部未満である場合には、成形性、低ソリ性、耐衝撃性が著しく損なわれ、かつ溶融混練温度、成形温度を高くしなくてはならず、樹脂組成物の分解を招くこととなる。
【0020】導電性カーボンの混合割合は、芳香族ポリエステル共重合体とポリカーボネートとからなる樹脂組成物100重量部に対し、5〜40重量部、好ましくは8 〜30重量部である。導電性カーボンの含有量が5 重量部より少ない場合には、電気抵抗の低下が充分でなく、40重量部より多い場合には、成形性や耐衝撃性、低ソリ性が低下する。
【0021】また、樹脂組成物の耐熱性、耐候性あるいは耐酸化性等を改良するために、熱分解防止剤、紫外線吸収剤あるいは酸化防止剤等を樹脂組成物中に存在させてもよい。これらの添加剤には、ヒンダードフェノール化合物、アミン化合物、リン化合物、ベンゾトリアゾール化合物等がある。これらの添加剤は、混合前の各々の樹脂に存在させてもよく、各成分の混合時に添加してもよい。その他、可塑剤、染顔料、潤滑剤および結晶核剤、無機充填剤等も本発明の樹脂組成物と共用することができる。さらに、必要に応じてガラス繊維、無機ケイ酸塩、シリカ、石英、炭素繊維、アスベスト、クレー、タルク、マイカ、ワラストナイト等の強化材あるいは充填材を含有させてもよく、必要に応じて難燃剤や難燃助剤を併用してもよい。さらにまた、本発明の樹脂組成物には、必要に応じてEPラバー、EPDM、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の低弾性体およびその無水マレイン酸、無水ハイミック酸付加物、グリシジル基付加物等を添加することができる。
【0022】本発明の樹脂組成物は、通常、溶融混練した状態で用いられる。また、各成分を単に機械的に混合した状態で用いても、各成分を別個に溶融混練しつつ用いてもよい。また、本発明の樹脂組成物を成形するにあたっては、いかなる方法で行ってもよく、通常、射出成形または押出成形等の溶融成形法が好適である。溶融成形を行う際の樹脂組成物の形態は、予め溶融混練してチップ等に成形したものが好適である。本発明の電子部品予備加熱用トレーの成形方法については特に制限はなく、公知の成形方法が適用できるが、特に射出成形法が経済性に優れ有利である。
【0023】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0024】実施例1〜12,比較例1〜4界面重合法によりテレフタル酸ジクロライドとイソフタル酸ジクロライド(モル比=1:1)の塩化メチレン溶液およびビスフェノールAのアルカリ水溶液とから、分子量の異なる芳香族ポリエステル共重合体を製造した。これらの芳香族ポリエステル共重合体の対数粘度を測定したところ、表1に示すように0.50、0.58、0.64、0.75であった。なお、この測定には、ウベローデ型粘度計を用い、溶媒にはフェノールと1,1,2,2,ーテトラクロロエタン〔60/40(重量比)〕の混合溶媒を用いて25℃で行った。
【0025】また、界面重合法によりホスゲンの塩化メチレン溶液およびビスフェノールAのアルカリ水溶液とから、分子量の異なるポリカーボネートを製造した。このポリカーボネートの対数粘度を測定したところ、表1に示すように0.42、0.46、0.53、0.57であった。なお、この測定には、ウベローデ型粘度計を用い、溶媒には1,1,2,2,ーテトラクロロエタンを用いて25℃で行った。
【0026】導電性カーボンとしては、DJ-600( ライオン社商品名、表1ではAで表す) 、♯3600B (三菱化成社商品名、表1ではBで表す) ♯3250B (三菱化成社商品名、表1ではCで表す)を使用した。
【0027】これらの芳香族ポリエステル共重合体とポリカーボネート及び導電性カーボンを表1に示す各種の重量比で混合し、PCM-30型同方向2軸押出機(池貝鉄工社製)で混練し、ペレットを得た。
【0028】次いで,得られたペレツトをIS100E型射出成形機(東芝機械社製)を用い、シリンダー温度340℃,金型温度120℃で射出成形し、試験片を得た。得られた試験片を用いて、各種特性値を次のようにして測定した。
【0029】(1) 引張特性(引張強さ、引張伸度)
ASTM D638 に準拠して測定した。なお、試験片には肉厚3.2mmのI号ダンベルを用いた。
【0030】(2) アイゾット衝撃強度ASTM D256 に準拠して測定した。なお、試験片には寸法12.6×127×3.2mmの成形品を用いた。
【0031】(3) 電気抵抗(流れ方向体積抵抗、直角方向体積抵抗)
ASTM D247 に準拠して測定した。試験片には寸法102mmφ×3.2mmの円板状成形品を用いた。
【0032】(4) 熱変形温度(大荷重変形温度)
ASTM D648 に準拠して測定した。なお、試験片には寸法12.6×127×3.2mmの成形品を用いた。
【0033】(5) ソリ量直径10mm、厚さ1.6mmの円板状成形品をサイドゲートで成形し、それを平面状の定盤上に静置し、樹脂の流れ方向及び直角方向における定盤との隙間を測定して求めた。
【0034】これらの測定結果を表1に示す。
【表1】


表1から明らかなように、本発明の組成範囲を有する樹脂組成物は、106 Ωm以下で、異方性の少ない電気抵抗値を示し、150℃以上の耐熱性、0.1mm以下のソリ量を示すなど耐衝撃性、耐熱性、ソリ等のいずれの特性においても優れた特性を示しているとともに、優れた帯電防止性をも得られることが明らかである。
【0035】実施例13〜23、比較例5〜7実施例1〜11、比較例1〜4のペレットを用い、同様の条件でIS-100E 型射出成形にて図1、図2に示す電子部品予備加熱用トレーを成形し、次の各種特性を測定した。
【0036】(6) トレーのソリ量(初期値、熱処理後)
平面状の定盤上に成形品を静置し、生じた定盤との最大の隙間を測定して求めた。
【0037】(7) トレーの落錘衝撃強さDupont式落錘衝撃試験機を用い、トレーの底面中央部に落錘衝撃を加えて測定した。
【0038】(8) 熱処理後の変形熱処理後、トレーを定盤上に静置し、トレーの端と定盤との最大の隙間を測定して求めた。
【0039】これらの測定結果を表2に示す。
【表2】


表2から明らかなように、本発明の組成範囲を有する樹脂組成物から得られたトレーは、ソリ量、落錘衝撃強さ、熱処理後の変形のいずれの特性においても優れた特性値を示すことが明らかである。
【0040】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、帯電防止性、耐熱性、耐衝撃性、低ソリ性に優れ、かつ電気抵抗の異方性の少ない樹脂組成物および電子部品予備加熱用トレーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2において製造したトレーの一部切欠平面図である。
【図2】実施例2において製造したトレーの一部切欠正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 テレフタル酸および/またはイソフタル酸またはその機能誘導体(ただし、テレフタル酸残基とイソフタル酸残基のモル比は7:3〜0:10)と下記一般式〔1〕で示されるビスフェノール類とから得られる芳香族ポリエステル共重合体30〜90重量部、ホスゲンと下記一般式〔1〕で示されるビスフェノール類とから得られるポリカーボネート70〜10重量部、導電性カーボン5〜40重量部(前記芳香族ポリエステル共重合体とポリカーボネートとの合計100重量部に対して)とからなることを特徴とする樹脂組成物。
【化1】


(式中、-X- は-O-,-S-,- SO2 -,-CO-, アルキレン基およびアルキリデン基よりなる群から選ばれ、 R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7 および R8 は水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる。)
【請求項2】 請求項1記載の樹脂組成物の成形によって得られることを特徴とする電子部品予備加熱用トレー。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開平5−339482
【公開日】平成5年(1993)12月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−169875
【出願日】平成4年(1992)6月5日
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)