説明

樹脂組成物

【課題】 色相安定性に優れた着色された耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)荷重18.5kgの荷重たわみ温度が140℃以上であり、かつ300℃、1.2kgfで測定したMVRが1.0cm/10分以上である熱可塑性樹脂(a成分)100重量部に対して、(C)焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤(c成分)0.0001〜10重量部を含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色された耐熱性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、高温使用時の色相安定性に優れた着色された耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、“ビスフェノールA”と称することがある)から得られるポリカーボネート樹脂は、強靭さ、耐熱性、耐衝撃性、電気特性に優れたエンジニアリングプラスチックであり、着色した前記ポリカーボネート樹脂は上記特性を活かし、電機・電子機器、自動車、機械など広い分野で利用されている。
【0003】
しかしながら、近年より耐熱性の高い樹脂が自動車のヘッドランプのリフレクターやICデバイスの焼付け用トレー等の用途に要求されている。高耐熱性に優れた樹脂は、従来のビスフェノールAから得られるポリカーボネート樹脂よりも加工温度が高く使用可能な着色剤の種類も少なく、さらに使用される着色剤には高い耐熱性が必要とされる。
【0004】
有機系色剤は加工温度の影響を受けやすく、特に高温使用時に色剤そのものが分解するなどして色相が大きく変化するという問題がある。
【0005】
また、一般の無機系色剤はポリカーボネート系樹脂の加工温度で色剤そのものは分解しないが、高温で長期に使用した場合、無機系色剤に含まれる僅かな不純物によりポリカーボネート系樹脂成形品の色相が変化するという問題があった。
【0006】
これを解決するため各種熱安定剤をポリカーボネート系樹脂に配合する事が試みられていた。しかし、熱安定剤の添加は、加工工程が増えるなどの問題があるとともに、場合によっては耐湿熱性等の長期的特性を低下させる。
【0007】
なお、特許文献1には、複合酸化物からなる無機系色剤を使用した色相安定性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が示されている。しかしながら、特許文献1にはより高耐熱性の熱可塑性樹脂、殊に9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンを構成成分とする高耐熱性のポリカーボネート樹脂については記載も示唆もされていない。
【特許文献1】特開2001−031858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高温使用時の色相安定性に優れた着色された耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討をした結果、荷重18.5kgの荷重たわみ温度が140℃以上であり、かつ300℃、1.2kgfで測定したMVRが1.0cm/10分以上である熱可塑性樹脂、特に9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンと特定の芳香族ジヒドロキシ成分を使用することにより得られた芳香族ポリカーボネート共重合体に、焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤を配合することにより、高温使用時の色相安定性に優れた着色された耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、
1.(A)荷重18.5kgの荷重たわみ温度が140℃以上であり、かつ300℃、1.2kgfで測定したMVRが1.0cm/10分以上である熱可塑性樹脂(a成分)100重量部に対して、(C)焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤(c成分)0.0001〜10重量部を含有する樹脂組成物。
【0011】
2.前記a成分の熱可塑性樹脂は、全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%が下記式[1]で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、95〜5モル%が下記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート共重合体である前項1記載の樹脂組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

[式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子であり、Wは単結合、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、O、S、SO、SO、CO、またはCOO基である]
【0014】
3.前項2記載のポリカーボネート共重合体100重量部に、さらに、(B)前記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート樹脂(b成分)1〜10重量部を配合した樹脂組成物。
【0015】
4.前記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである前項2または前項3記載の樹脂組成物。
【0016】
5.複合酸化物がTiO−Sb−Cr系である前項1記載の樹脂組成物。
【0017】
6.(B)前記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート樹脂(b成分)と(C)焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤(c成分)とを予め混合したマスター組成物を、前記ポリカーボネート共重合体と共に溶融押出する前項3記載の樹脂組成物の製造方法。
【0018】
7.前記ポリカーボネート樹脂(b成分)は、平均粒径が0.1〜1.0mmのパウダーであり、パウダー全体を100重量%とした時、ASTM篩い7番を通過しない粒子が1重量%以下、ASTM篩い14番を通過しない粒子が10〜30重量%であり、かつ、ASTM篩い140番を通過する粒子が4〜15重量%である前項6記載の樹脂組成物の製造方法。
【0019】
8.前項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された電子部品搬送容器。
が提供される。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用される熱可塑性樹脂(a成分)は、荷重18.5kgの荷重たわみ温度が140℃以上であり、かつ300℃、1.2kgfで測定したMVRが1.0cm/10分以上である。上記荷重たわみ温度は145℃以上が好ましく、150℃以上が最も好ましい。また、上記MVRは2.0cm/分以上が好ましく、2.5cm/分以上が最も好ましい。
【0021】
前記熱可塑性樹脂のなかでも、全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%が前記式[1]で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、95〜5モル%が前記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分からなる芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましく使用される。
【0022】
前記芳香族ポリカーボネート共重合体は、それを構成する芳香族ジヒドロキシ成分として、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下、“ビスクレゾールフルオレン”と略称することがある)が全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%、好ましくは7〜90モル%、さらに好ましくは10〜85モル%含まれる。また15〜75モル%含まれるのが最も好ましい。ビスクレゾールフルオレンの含有量が5モル%未満の場合、耐熱性を十分に満足することが難しい。一方、ビスクレゾールフルオレンの含有量が95モル%より多い場合、樹脂組成物の溶融流動性が低下し、成形が困難となることがある。
【0023】
また、前記芳香族ポリカーボネート共重合体におけるビスクレゾールフルオレンとの共重合成分としての芳香族ジヒドロキシ成分として、具体的には4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(“ビスフェノールC”)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(“ビスフェノールZ”)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホキシド、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン(“ビスフェノールM”)、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン等が挙げられる。中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールM、ビスフェノールZが好ましく、殊にビスフェノールAが好ましい。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
前記芳香族ポリカーボネート共重合体において用いられる前記式[2]で示される芳香族ジヒドロキシ成分は、全芳香族ジヒドロキシ成分の95〜5モル%、好ましくは93〜10モル%、さらに好ましくは90〜15モル%である。また85〜25モル%含まれるものが最も好ましい。前記式[2]で示される芳香族ジヒドロキシ成分が95モル%より多い場合、耐熱性が不足することとなる。また5モル%未満の場合、溶融流動性が不足し、成形が困難となることとなる。
【0025】
前記芳香族ポリカーボネート共重合体はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.21〜0.45の範囲のものが好ましく、0.22〜0.43の範囲のものがより好ましい。さらに好ましいのは0.22〜0.38である。比粘度が0.21未満では成形品が脆くなり、0.45より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になる。
【0026】
前記芳香族ポリカーボネート共重合体は、昇温速度20℃/minにて測定したガラス転移温度(Tg)が150℃以上であることが好ましい。さらには155℃以上であることが好ましい。Tgが150℃未満では耐熱性が十分でなく、耐熱用途への使用が困難となる。なお、Tgは250℃以下で十分である。
【0027】
前記芳香族ポリカーボネート共重合体は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆体を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0028】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは芳香族ジヒドロキシ成分のジハロホルメート等が挙げられる。
【0029】
上記芳香族ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体を界面重合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。
【0030】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0031】
溶融法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.3×10〜1.3×10Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0032】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0033】
前記芳香族ポリカーボネート共重合体は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリマーは、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
【0034】
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノール或いは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0035】
【化3】

[式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基を示し、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数を示す。]
【0036】
前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0037】
本発明では(B)前記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート樹脂(b成分)が好ましく使用される。該芳香族ジヒドロキシ成分としては2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。この芳香族ポリカーボネート樹脂の配合量は、前記ポリカーボネート共重合体(a成分)100重量部に対して1〜10重量部が好ましく、1〜8重量部が特に好ましい。b成分の配合量が10重量部を越えると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下し好ましくない。
【0038】
また、a成分のポリカーボネート共重合体は結晶化せず造粒したパウダーは粒度が大きく粒度分布も広くなり易く、一方b成分の芳香族ポリカーボネート樹脂は結晶化し易く造粒したパウダーはその粒度が細かく粒度分布も狭くなる。従って、b成分の芳香族ポリカーボネート樹脂は後述するc成分の色剤(粉体)と充分に混合でき、この組成物はマスター組成物として好適に使用される。かかるマスター組成物をa成分のポリカーボネート共重合体と共に溶融押出することにより、c成分の色剤が局在化することなく分散し、色相安定性に優れた樹脂組成物が得られることとなる。
【0039】
b成分の芳香族ポリカーボネート樹脂は、その平均粒径が0.1〜1.0mmのパウダーであることが好ましく、平均粒径が0.2〜0.9mmのパウダーであることがより好ましい。また、パウダー全体を100重量%とした時、ASTM篩い7番を通過しない粒子が好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.8重量%以下である。ASTM篩い14番を通過しない粒子が好ましくは10〜30重量%であり、より好ましくは12〜28重量%である。ASTM篩い140番を通過する粒子が好ましくは4〜15重量%であり、より好ましくは4〜12重量%である。
【0040】
ASTM篩い7番を通過しない粒径の粒子が1重量%を超える場合、ASTM篩い14番を通過しない粒子が30重量%を超える場合あるいはASTM篩い140番を通過する粒子が4重量%より少ない場合は、b成分の芳香族ポリカーボネート樹脂と後述するc成分の色剤(粉体)とが充分に混合されず、c成分の分散性が劣り得られる樹脂組成物の色相安定性が低下することがある。また、ASTM篩い14番を通過しない粒子が10重量%より少ない場合あるいはASTM篩い140番を通過する粒子が15重量%を超える場合は、b成分の芳香族ポリカーボネート樹脂と後述するc成分の色剤(粉体)とは充分に混合されるが、かかるマスター組成物は溶融押出機のスクリューに対するかみこみ性に劣り滑り現象を起こし易く、結果的に得られる樹脂組成物中のc成分の分散性が劣り樹脂組成物の色相安定性が低下することがある。
【0041】
本発明で使用される(C)焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤(c成分)としては、TiO−Sb―Cr系イエロー、TiO−Sb−NiO系イエロー、TiO−BaO−NiO系イエロー、Fe−ZnO系ブラウン、Fe−ZnO−Cr系ブラウン、TiO−CoO−NiO−ZnO系グリーン、CoO−Cr系グリーン、CoO−Al系ブルー、CoO−Al−Cr系ブルーグリーン、CuO−Cr系ブラック、CuO−Fe−MnO系ブラック等の複合酸化物が挙げられ、特にTiO−Sb―Cr系イエローが好ましく使用される。これらは併用して使用してもよい。
【0042】
焼成した複合酸化物からなる無機系色剤の水洗浄方法に制限はなく、任意の洗浄方法、例えば水を使用した湿式ボールミル、湿式ビーズミル、振動ミルなどが挙げられる。また洗浄に使用される水に制限はなく、蒸留水、イオン交換水、上水、工業用水等が挙げられる。
【0043】
更に、本発明の目的を損なわない範囲で他の色剤を本発明の樹脂組成物に配合してもよい。他の色剤としては、亜鉛華、二酸化チタン、弁柄、酸化クロム、鉄黒等の単純酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッド等の硫化物、黄鉛、亜鉛黄、クロムバーミリオン等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、群青等の珪酸塩、カーボンブラック、金属粉等の無機系色剤、アントラキノン、ペリレン、ペリノン、キノリン、チオインジゴ、キナクリドン、ジオキサジン、イソインドリノン、フタロシアニン等の有機系色剤が挙げられる。
【0044】
焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤(c成分)の使用量は、熱可塑性樹脂(a成分)100重量部に対して0.0001〜10重量部である。0.0001重量部未満では着色性に劣り、10重量部を超えると該熱可塑性樹脂本来の特性を損ねるため好ましくない。好ましい範囲は0.0005〜5重量部であり、更に好ましい範囲は0.001〜2重量部である。
【0045】
また、本発明の樹脂組成物には必要に応じて、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。かかるリン化合物の配合量は、前記熱可塑性樹脂(a成分)に対して0.0001〜0.05重量%が好ましく、0.0005〜0.02重量%がより好ましく、0.001〜0.01重量%が特に好ましい。このリン化合物を配合することにより、熱可塑性樹脂(a成分)の熱安定性が向上し、成形時における分子量の低下や色相の悪化が防止される。
【0046】
かかるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物である。
【0047】
リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0048】
亜リン酸エステルとしては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられ、ホスホン酸エステルとしては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどが挙げられ、また亜ホスホン酸エステルとしては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げられる。
【0049】
これらのリン化合物のなかで、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトが好ましく使用される。
【0050】
また、本発明の樹脂組成物には必要に応じてベンゾフラノン系安定剤を使用してもよい。ベンゾフラノン系安定剤としては、例えば5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラノ−2−オン、5,7−ジ−t−ブチル−3−(2,3−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラノ−2−オンが挙げられる。これらの安定剤は単独で用いても、二種以上併用してもよい。かかるベンゾフラノン系安定剤の配合量は、前記熱可塑性樹脂(a成分)に対して0.0001〜0.05重量%が好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としてはフェノール系酸化防止剤を示すことができ、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい配合量の範囲は前記熱可塑性樹脂(a成分)に対して0.0001〜0.05重量%である。
【0052】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて一価または多価アルコールと高級脂肪酸とのエステルを加えることもできる。
【0053】
かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。また、かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられ、なかでもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
【0054】
かかるアルコールと高級脂肪酸とのエステルの配合量は、前記熱可塑性樹脂(a成分)に対して0.01〜2重量%が好ましく、0.015〜0.5重量%がより好ましく、0.02〜0.2重量%がさらに好ましい。配合量がこの範囲内であれば離型性に優れ、また離型剤がマイグレートし金属表面に付着することもなく好ましい。
【0055】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤が配合される。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤が使用される。
【0056】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−3−(4−メトキシ−α−クミル)−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0057】
なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが好ましく、更に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0058】
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系の例えば商品名チヌビン400(チバスペシャルティーケミカル社製)が好ましい。
【0059】
ベンゾオキサジン系の紫外線吸収剤としては、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼンなどが挙げられるが、中でも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好ましい。
【0060】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられ、なかでも2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンが好ましい。これらの紫外線吸収剤は単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0061】
これらの紫外線吸収剤は、前記熱可塑性樹脂(a成分)に対して好ましくは0.01〜5重量%であり、より好ましくは0.02〜3重量%であり、特に好ましくは0.05〜2重量%である。この範囲で配合することにより紫外線吸収性能が十分で、樹脂の色相が良好で好ましい。
【0062】
本発明の樹脂組成物には、さらに帯電防止剤、滑剤、充填剤などの添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で少割合添加することもできる。
【0063】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、(A)熱可塑性樹脂(a成分)と(C)焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤を混合する方法が挙げられ、その混合方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等で混合し、押出し機等で溶融混練する方法が挙げられる。特に、(B)前記芳香族ジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート樹脂(b成分)と(C)焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤(c成分)とを予め混合したマスター組成物を、前記(A)ポリカーボネート共重合体(a成分)と共に溶融押出する樹脂組成物の製造方法が好ましく採用される。
【0064】
本発明の樹脂組成物は、自動車ヘッドランプのリフレクターや電子部品搬送容器用途に好適に用いられる。特に電子部品搬送容器用途に好適に用いられ、電子部品搬送容器としては、パソコン、ワープロ、ファクス、コピー機、プリンター等のOA機器の電子部品搬送トレイ、半導体やメモリ、ハードディスク等の生産時にこれらを搬送する際に使用される搬送トレイ、CDやCD−ROM、CD−R、CD−RW、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−R等、光ディスクや光磁気ディスク等のトレイ、CCDカメラ等光学機器半導体部品搬送トレイ、自動車の計器部品搬送トレイ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0065】
本発明の着色された耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物は、高温使用時の変色が少なく過酷な成形条件下でも色調を維持するものであり、自動車ヘッドランプのリフレクター、電子部品搬送容器などの高温で使用される成形品に好適に使用することができる。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。また、実施例中の「部」は特に断りのない限り重量部を意味する。
【0067】
[実施例1〜2及び比較例1〜2]
(1)着色されたポリカーボネート樹脂組成物の調整
表1記載の各成分を表1記載の割合でタンブラーを用いて混合後、径44mmφのベント付き2軸押し出し機(JSW製TEX44CHT)でベントから真空排気させながらシリンダー温度300℃で溶融混錬し押し出しペレット化し、着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。
【0068】
(2)試験片の作成
得られた着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを、120℃で6時間乾燥した後、射出成形機(住友ネスタール サイキャップ150T)を用いて、シリンダー温度310℃及び340℃の2水準/金型温度90℃で成形を行い試験片(縦70mm×横50mm×厚み2mmの板状成形品)を作成した(表2中「通常」と称する)。また、同時に10分間シリンダー内で樹脂を滞留(放置)した時の試験片も作成した(表2中「滞留」と称する)。
【0069】
(3)色相安定性の評価方法
得られた試験片を分光光度計(datacolor社 SF500)を用いて、D65光源(相関色温度6504K)下での、L*(明度)、a*(赤味から緑味にかけての色度)、b*(黄味から青味にかけての色度)を測定し、求められた値を下記(1)式に挿入して、310℃で成形した試験片(表2中;310℃「通常」と称する)に対する各成形温度条件で成形した試験片の色差(△E)を求めた。評価結果は表2に記載した。△E*(色差)の値が0に近いほど色相が安定していることになる。
【0070】
【数1】

【0071】
[実施例3及び比較例3]
(1)着色されたポリカーボネート樹脂組成物の調整
表1記載のPC−2と顔料1または2とを表1記載の割合で高速ミキサーにより混合し、マスター組成物を得た。次いで、表1記載のPC−1と前記マスター組成物とをタンブラーを用いて混合後、径44mmφのベント付き2軸押し出し機(JSW製TEX44CHT)でベントから真空排気させながらシリンダー温度300℃で溶融混錬し押し出しペレット化し、着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。得られた着色芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを用いて前記(2)と同様の方法で試験片を作成し、得られた試験片を用いて前記(3)と同様の方法により試験片の色差(△E)を求めた。評価結果は表2に記載した。
なお表1記載の各成分を示す記号及び項目は下記の通りである。
【0072】
PC−1:
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水24623部、48%水酸化ナトリウム水溶液4153部を入れ、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”と略称することがある)2537.1部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“ビスフェノールA”と略称することがある)2295.6部およびハイドロサルファイト8部を溶解した後、塩化メチレン18188部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン1994部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール102.5部を塩化メチレン330部に溶解した溶液および48%水酸化ナトリウム水溶液692.1部を加え、乳化後、トリエチルアミン5.8部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリカーボネート濃度が20%の溶液を得た。1000Lニーダーにイオン交換水100Lを入れ水温42℃として、この温水中にポリカーボネート溶液を投入し塩化メチレンを蒸発させて粒体を得た。この粒体を140℃で乾燥した。得られたポリカーボネート粒体はビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAとの構成単位の比がモル比で40:60であった(ポリマー収率97%)。またこのポリマーの比粘度は0.337、Tgは190℃であった。また、このポリマー粒体の平均粒径は3.5mmであった。このポリマー粒体をPC−1とする。
【0073】
PC−2:
合成例1において、ビスクレゾールフルオレンを使用せず、ビスフェノールAを3894.2部用いた以外は合成例1と同様にしてビスフェノールAホモポリカーボネートを得た(収率99%)。このポリマーの比粘度は0.365、Tgは148℃であった。また、このポリマー粒体の平均粒径は0.3mmであり、ポリマー粒体(パウダー)全体を100重量%とした時、ASTM篩い7番を通過しない粒子が0.4重量%、ASTM篩い14番を通過しない粒子が25重量%、ASTM篩い140番を通過する粒子が6重量%であった。このポリマー粒体をPC−2とする。
【0074】
ポリマー粒体の平均粒径と粒度分布は下記の方法で求めた。
ポリマー粒体の平均粒径;ポリマー粒体をASTM篩い7番、14番、25番、35番、45番、60番、100番、140番、200番を使用して篩い分けした後、重量を基準として累積粒度分布グラフを作成し、累積重量が50%になるところの粒径を求め、これを平均粒径とした。
【0075】
ポリマー粒体の粒度分布;ポリマー粒体をASTM篩い7番で篩い分け操作を行い、篩い上に残った粒子の割合(重量%)、ASTM篩い14番で篩い分け操作を行い、篩い上に残った粒子の割合(重量%)、ASTM篩い140番で篩い分け操作を行い、篩いを通過した粒子の割合(重量%)を求めた。
【0076】
顔料−1:焼成後に水洗浄処理したTiO−Sb―Cr系黄色剤(C.I.No.Pigment Brown 24、平均粒径1.0μm)
顔料−2:焼成後に水洗浄処理しなかったTiO−Sb―Cr系黄色剤(C.I.No.Pigment Brown 24、平均粒径1.0μm)
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)荷重18.5kgの荷重たわみ温度が140℃以上であり、かつ300℃、1.2kgfで測定したMVRが1.0cm/10分以上である熱可塑性樹脂(a成分)100重量部に対して、(C)焼成後に水洗浄処理した複合酸化物からなる無機系色剤(c成分)0.0001〜10重量部を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記a成分の熱可塑性樹脂は、全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%が下記式[1]で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、95〜5モル%が下記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート共重合体である請求項1記載の樹脂組成物。
【化1】

【化2】

[式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子であり、Wは単結合、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、O、S、SO、SO、CO、またはCOO基である]
【請求項3】
請求項2記載のポリカーボネート共重合体100重量部に、さらに、(B)前記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート樹脂(b成分)1〜10重量部を配合した樹脂組成物。
【請求項4】
前記式[2]で表される芳香族ジヒドロキシ成分が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである請求項2または請求項3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
複合酸化物がTiO−Sb−Cr系である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネート樹脂(b成分)と前記無機系色剤(c成分)とを予め混合したマスター組成物を、前記ポリカーボネート共重合体(a成分)と共に溶融押出する請求項3に記載された樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ポリカーボネート樹脂(b成分)は、平均粒径が0.1〜1.0mmのパウダーであり、パウダー全体を100重量%とした時、ASTM篩い7番を通過しない粒子が1重量%以下、ASTM篩い14番を通過しない粒子が10〜30重量%であり、かつ、ASTM篩い140番を通過する粒子が4〜15重量%である請求項6記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された電子部品搬送容器。

【公開番号】特開2006−28353(P2006−28353A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209817(P2004−209817)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】