説明

樹脂組成物

【課題】その塗膜が優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性を有する新規な塗料用に適した樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】(A)エポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸とを開環付加反応させて得られた反応物を、更に(C)イソシアネート基を有する化合物と反応させることによって得られる(D)前駆樹脂組成物と、(E)溶剤の存在下において、(F)ラジカル重合性基を有する化合物を重合させて得られることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にて有用なる樹脂組成物に関し、詳しくは、それを塗膜とした際に優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性を有する塗料用の樹脂組成物に関する。特に耐候性と、優れた密着性及び耐食性を有するため、従来の多工程塗装、例えば下塗り+中塗り+上塗りの3工程の塗装系、若しくは下塗り+上塗りの2工程の塗装系により得られる塗膜と同等の性能を有する塗膜を、単独の塗料で得ることが出来る塗料用の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐食性を有する樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂を不飽和脂肪酸で変性したエポキシエステル樹脂が溶剤系塗料の分野において知られており、例えば、錆止め下塗り塗料用の樹脂組成物として使用されている。しかしながらビスフェノール型エポキシ樹脂は溶解性に乏しく、充分な溶解性を得るためには末端のエポキシ基のみならず、樹脂骨格中の二級水酸基と脂肪酸を脱水縮合させる必要がある。この際、未反応の脂肪酸が残ることにより耐食性や耐水性の悪化の一因となっていた。溶解性を確保する為に低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂を使用した場合には、乾燥が遅く耐食性も充分なものは得られない。また、エポキシエステル樹脂塗料は耐候性に課題があり上塗り塗料として使用されることはなく、一般的には中塗り、上塗り塗料を塗布することにより耐候性を付与する必要がある。
【0003】
エポキシ樹脂にカルボン酸を反応させ、更にイソシアネートを反応させる変性エポキシ樹脂の従来技術として、下記が開示されている。
【0004】
特許文献1及び2で開示される樹脂はアルカノールアミンを必須成分として含んでおり、また、特許文献3で開示される樹脂はアルキルフェノール及び/又はノボラック型フェノールを必須成分として含んでいる。更に何れも主に防錆性や密着性が要求される、いわゆる下塗り塗料用樹脂として好適に用いることが出来る技術の開示であり、上塗り塗料用樹脂に要求される耐候性等についての開示はない。
【特許文献1】特開平11−171969号公報
【特許文献2】特開2002−60461号公報
【特許文献3】特開2004−315677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、その塗膜が優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性を有する新規な塗料用に適した樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、(A)エポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸とを開環付加反応させて得られた反応物を、更に(C)イソシアネート基を有する化合物と反応させることによって得られる(D)前駆樹脂組成物と、(E)溶剤の存在下において、(F)ラジカル重合性基を有する化合物を重合させて得られることを特徴とする樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述のように、本発明によって、優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性を有する新規な塗料用の樹脂組成物を提供することが可能となった。特に耐候性と、優れた密着性及び耐食性を有するため、従来の多工程塗装、例えば下塗り+中塗り+上塗りの3工程の塗装系、若しくは下塗り+上塗りの2工程の塗装系により得られる塗膜と同等又は同等以上の性能を有する塗膜を、単独の塗料で得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
本発明者等は、上記の目的を達成するために種々の研究を重ねた結果、(A)エポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸とを開環付加反応させて得られた反応物を、更に(C)イソシアネート基を有する化合物と反応させることによって得られる(D)前駆樹脂組成物と、(E)溶剤の存在下において、(F)ラジカル重合性基を有する化合物を重合させて得られることを特徴とする樹脂組成物を塗料等に用いると、長期にわたり密着性、耐食性、耐候性、可撓性に優れ、低臭気な塗膜を形成することができることを見出した。
【0010】
以下、本発明に使用される化合物について、詳細に述べる。
【0011】
本発明に使用される(A)エポキシ基を有する化合物として、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られる末端エポキシ基化合物及びその水添化合物等を使用することができる。
【0012】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0013】
脂環族エポキシ化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエンジオキサイド、エポキシシクロヘキセンカルボン酸エチレングリコールジエステル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、1,2:8,9ジエポキシリモネン等が挙げられる。
【0014】
ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ化合物の製造に用いうるポリフェノール化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2’−プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0015】
上記エポキシ基を有する化合物(A)の具体例としては、jER製のjER828、YED111N、阪本薬品工業製のBGE−R、SR−NPG、SR−16H、SR−TMP、SR−HHPA、大日本インキ化学工業製のエピクロン840、同830、同726、同725、同720、東都化成製のエポトートPG−202、ネオトートE、ネオトートS、ナガセ化成製のデナコールEX−411、同EX−313、同EX−321、同EX−201、同EX−211、同EX−212、同EX−111、同EX−141、同EX−810、新日本理化製のリカレジンHBE−100、同DME−100、同BPO−20E、四日市合成製のエポゴーセーBA、同BP、同HD、ダイセル化学工業製セロキサイド2021、同3000等が挙げられる。
【0016】
(A)エポキシ基を有する化合物の平均官能基数が大きすぎるとゲル化する恐れあり、エポキシ基総数の70〜95%が二官能エポキシ化合物であることが好ましい。
【0017】
耐候性の点で、脂肪族エポキシ化合物が好ましい。これらの(A)エポキシ基を有する化合物単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0018】
本発明に使用される(B)乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ダイズ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられる。
【0019】
耐食性、耐候性、可撓性の点で、脱水ヒマシ油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸が好ましい。これらの(B)乾性油脂肪酸は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0020】
また上述の乾性油脂肪酸以外にも、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の不乾性油脂肪酸類、安息香酸、メチル安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸、リノール酸、リノレン酸、カプロン酸、カプリン酸、イソノナン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、トリメリット酸等を、乾燥性に影響を及ぼさない範囲で併用することが出来る。
【0021】
(A)エポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸の反応において、(A)エポキシ基を有する化合物のエポキシ基1.0モルに対して(B)乾性油脂肪酸の酸基が0.8〜1.0モルの範囲であることが好ましく、好適な耐候性、耐食性、耐溶剤性を有する樹脂組成物が得られる。
【0022】
(A)エポキシ基を有する化合物と、(B)乾性油脂肪酸との反応においては、触媒を使用することができる。使用できる触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫、水酸化リチウム、酢酸亜鉛等の各種の金属塩類、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ−n−オクチルアミン等の3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、テトラメチル尿素等のアルキル尿素類、テトラメチルグアニジン等のアルキルグアニジン類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド等のスルフィド類、及び、これらの塩類等が挙げられる。これらの触媒は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0023】
本発明に使用される(C)イソシアネート基を有する化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート類及び付加物、脂環族ジイソシアネート類及び付加物、芳香族ジイソシアネート化合物類及び付加物、ポリイソシアネート類及び付加物、ウレタン化物及び付加物が挙げられる。
【0024】
脂肪族ポリイソシアネート類及び付加物の具体例としては、例えば、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、トシルイソシアネート等のモノイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、及び、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物等が挙げられる。
【0025】
脂環族ジイソシアネート類及び付加物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、及び、これらのジイソシアネートのビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物等が挙げられる。
【0026】
芳香族ジイソシアネート化合物類及び付加物の具体例としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物類、及び、これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物等が挙げられる。
【0027】
ポリイソシアネート類及び付加物の具体例としては、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類、及び、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物等が挙げられる。
【0028】
ウレタン化物及び付加物の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化物、及び、これらのウレタン化物のビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物等が挙げられる。
【0029】
塗膜の耐候性の点で好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらの(C)イソシアネート基を有する化合物は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0030】
上記(C)イソシアネート基を有する化合物の市販品としては、旭化成製のデュラネート50M、同D−101、同D−201、同24A−100、同TPA−100、同TKA−100、三井化学製のコスモネートT−80、同M−100、同NBDI、同ND、タケネート500、同600、同700、住化バイエルウレタン製のスミジュールT−80、同44S、同N3200、同N3300、デスモジュールH、同W、同I、日本ポリウレタン工業製のコロネートT−80、ミリオネートMT、同MR、同HDI、協和発酵製のLTI、信越シリコーン製のKBE−9007等が挙げられる。
【0031】
(A)エポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸との反応物とを開環付加反応させて得られた反応物を、(C)イソシアネート基を有する化合物との反応において、触媒を使用することができる。使用できる触媒としては通常のウレタン化反応において使用される、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫系触媒等を必要に応じて用いてもよい。これらの触媒は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0032】
(C)イソシアネート基を有する化合物の平均官能基数が大きすぎるとゲル化する恐れあり、イソシアネート基総数の70〜95%が二官能イソシアネート化合物であることが好ましい。
【0033】
(C)イソシアネート基を有する化合物を反応させる際、(B)乾性油脂肪酸の酸基1.0モルに対して(C)イソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基が0.5〜1.0モルの範囲であることが好ましく、好適な耐候性、耐食性、耐溶剤性を有する樹脂組成物が得られる。
【0034】
(A)エポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸とを開環付加反応させて得られた反応物と、(C)イソシアネート基を有する化合物との反応時に、分子量調節、分岐度調節、油長調節等の目的で、更にアルコール類やポリオール類、グリコール類等のイソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物を使用する事が出来る。
【0035】
アルコール類の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、カプリルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アリルアルコ−ル、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール及びブチルカルビトール等が挙げられる。
【0036】
ポリオール類には低分子量グリコール類と高分子量グリコール類とがある。
【0037】
低分子量グリコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテル、ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0038】
高分子量グリコール類の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられる。
【0039】
更には、グリセリン等にエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオール、ジカルボン酸とジオールやトリオール等との縮合により得られる縮合系ポリエステルポリオール、ジオールやトリオールをベースとし、ラクトンの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環反応によって得られるポリエステルジオール、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
【0040】
これらのイソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0041】
上記イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物を使用する場合は、(B)乾性油脂肪酸の酸基とイソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物の官能基の合計1.0モルに対して、(C)イソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基が0.5〜1.0モルの範囲であることが好ましく、好適な耐候性、耐食性、耐溶剤性を有する樹脂組成物が得られる。
【0042】
(F)ラジカル重合性基を有する化合物としては、アクリル酸及びアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルエーテル、スチレン及びスチレン誘導体、アクリロニトリル等、ラジカル重合性基を有する化合物が挙げられる。
【0043】
アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルへキシル等が挙げられる。
【0044】
メタクリル酸エステルの具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸−2−エチルへキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸グリシジルの酸付加物等が挙げられる。
【0045】
スチレン誘導体の具体例としては、例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0046】
耐候性の点でこれらの(F)ラジカル重合性基を有する化合物は、前記(E)溶剤に溶解し、且つ、重合後には該溶剤に溶解せずに粒子を形成している、つまり(F)ラジカル重合性基を有する化合物による粒子が(D)前駆樹脂組成物に包まれ、溶剤中に安定に存在している状態であることが好ましい。これらの(F)ラジカル重合性基を有する化合物は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0047】
本発明における(E)溶剤としては、特に制限なく使用することが出来るが、作業環境、特に臭気の点で脂肪族炭化水素を50質量%以上含む場合が好ましく、脂肪族炭化水素を90質量%以上含む場合が更に好ましい。
【0048】
脂肪族炭化水素を50質量%以上含む溶剤としては、例えば、ミネラルスピリットやミネラルターペン等が挙げられ、脂肪族炭化水素を90質量%以上含む溶剤としては、例えば、イソパラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤等が挙げられる。
【0049】
(E)溶剤の存在下で(F)ラジカル重合性基を有する化合物を重合する際、(D)と(F)の合計に対して25〜90質量%の範囲であることが好ましい。25質量%未満ではゲル化する可能性があり、90質量%超過では重合反応が充分に進行しない可能性がある。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、それだけでもクリヤー塗料として使用可能ではあるが、塗料として各種機能を付与させるために、各種樹脂、ドライヤーやダレ防止剤等の一般的に塗料に用いられる添加剤を用いてもよい。更に、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等の一般的に塗料に用いられる各種顔料を配合する場合は、顔料分散剤や沈降防止剤等の一般的に塗料に用いられる各種添加剤を配合するのが望ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物、もしくはそれを用いた塗料は、金属以外にも、木材、プラスチック等の各種素材にも適用でき、自然乾燥、もしくは加熱強制乾燥させることにより優れた塗膜を形成することが可能である。
【0052】
本発明の樹脂組成物を用いることで、長期にわたり密着性、耐食性、耐候性、可撓性に優れる塗膜が提供できる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとする。
【0054】
<製造例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製jER828)84.7部、大豆油脂肪酸125.4部及びジメチルエタノールアミン0.2部を仕込み、窒素雰囲気下で130℃において、酸価が3mgKOH/g以下に達するまで反応させる。次にイソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製デスモジュールI)39.9部、溶剤としてキシレン250部及びジブチル錫ジラウレート0.1部を仕込み、2時間後に赤外吸収スペクトル(IR)測定によりイソシアネート基のシグナルが消失していることを確認した。
【0055】
液温を110℃に下げ、予め調整しておいたスチレン80部、アクリル酸ブチル70部、メタクリル酸メチル100部及びラジカル重合開始剤としてアゾビスメチルブチロニトリル7部の混合物を3時間均一滴下し、更にアゾビスメチルブチロニトリル3部を仕込み2時間110℃に保持した後にキシレン250部を仕込み、固形分が50%の目的とする樹脂溶液1を得た。
【0056】
<製造例2〜7>
製造例1と同様の方法で、下記表1に示した配合にて反応させて、目的とする樹脂溶液2〜7を得た。
【0057】
<製造例8>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にアマニ油脂肪酸125.4部、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製デスモジュールI)39.9部及び溶剤としてキシレン165.3部を仕込み、窒素雰囲気下で130℃において10時間反応させたが、反応が充分進行せず、赤外吸収スペクトル(IR)測定によりイソシアネート基のシグナルが確認された。
【0058】
<製造例9>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製jER828)84.7部、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製デスモジュールI)39.9部及び溶剤としてキシレン124.6部を仕込み、窒素雰囲気下で130℃において10時間反応させたが、反応が全く進行せず、赤外吸収スペクトル(IR)測定によりイソシアネート基のシグナルが確認された。
【0059】
<製造例10>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製jER828)84.7部、アマニ油脂肪酸125.4部及びジメチルエタノールアミン0.2部を仕込み、窒素雰囲気下で130℃において、酸価が3mgKOH/g以下に達するまで反応させ、溶剤としてキシレン210.1部を仕込んだ。
【0060】
液温を110℃に下げ、予め調整しておいたスチレン80部、アクリル酸ブチル70部、メタクリル酸メチル100部及びラジカル重合開始剤としてアゾビスメチルブチロニトリル7部の混合物を3時間均一滴下し、更にラジカル重合開始剤としてアゾビスメチルブチロニトリル3部を仕込み2時間110℃に保持した後にキシレン250部を仕込み、固形分が50%の目的とする樹脂溶液10を得た。
【0061】
<製造例11>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製jER828)84.7部、アマニ油脂肪酸125.4部及びジメチルエタノールアミン0.2部を仕込み、窒素雰囲気下で130℃において、酸価が3mgKOH/g以下に達するまで反応させた。次にイソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製デスモジュールI)39.9部及びジブチル錫ジラウレート0.1部を仕込み反応を継続させたところ、20分後に高粘度化により攪拌が困難になった。
【0062】
<製造例12>
攪拌機、温度計、冷却器、分水器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器に大豆油脂肪酸300部、ペンタエリスリトール67部、グリセリン35部、エチレングリコール25部、無水フタル酸170部及びキシレン15部を仕込み、窒素雰囲気下で240℃において反応させ、固形分酸価が12mgKOH/gに達した時点で反応を終了し、冷却後溶剤としてミネラルスピリット540部にて希釈し、固形分が50%の目的とする樹脂溶液12を得た。
【0063】
<製造例13>
攪拌機、温度計、冷却器、分水器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製jER1004)300部、大豆油脂肪酸200部及びキシレン20部を仕込み、窒素雰囲気下で240℃において反応させ、固形分酸価が5mgKOH/gに達した時点で反応を終了し、冷却後溶剤としてキシレン480部にて希釈し、固形分が50%の目的とする樹脂溶液13を得た。
【0064】
上記製造例で得た各樹脂溶液を用いて下記表1に示した各実施例及び比較例の塗料を得た。
【0065】
<実施例1>
上記樹脂溶液1を固形分として30部、溶剤(樹脂溶液1に使用した溶剤と同じもの)を44.0部(上記樹脂溶液1の溶剤と塗料製造時に使用する溶剤の合計量)、顔料(カーボンブラック1部、ベンガラ3部、二酸化チタン18部、沈降性硫酸バリウム3部)を25部、アマイド系ダレ防止剤等の添加剤として0.3部、ナフテン酸コバルトとオクチル酸バリウムとからなるドライヤーを0.7部により、実施例1の塗料を得た。
【0066】
<実施例2〜7及び比較例1〜3>
上記樹脂溶液2〜7、10、12及び13を用いて実施例1と同様の方法により、実施例2〜7及び比較例1〜3の塗料を得た。
【0067】
<比較例4>
比較例4は、比較例3で用いた製造例13の樹脂溶液からなる塗料を下塗り、比較例2で用いた製造例12の樹脂溶液からなる塗料を上塗りに用いた。
【0068】
<樹脂固形分>
得られた樹脂組成物の固形分量の測定は、JIS−K−5600−6−1に準じて行った。
【0069】
上記で得た塗料を用いて、塗板の作製及び塗膜特性の評価方法を以下のように行った。
【0070】
「塗板の作製」
みがき軟鋼板(厚さ0.7mm)及びブリキ板(厚さ0.3mm)を用い、その表面をキシレンにて洗浄し、各実施例及び比較例で得た塗料をエアスプレーにて塗装した。一回の乾燥膜厚が40μmになるよう塗装し、24時間の塗装間隔で二回塗装を行った。これを室温で2週間乾燥後に各試験に用いた。可撓性試験にはブリキ板を用い、その他の試験にはみがき軟鋼板を用いた。
【0071】
<耐候性>
サンシャインウェザロメーターによって促進耐候性試験を行い、500時間後の塗膜の変化を塗膜外観の変化で評価し、また鏡面光沢度(60°光沢)を測定し、初期60°光沢値と比較した光沢保持率により下記のように評価した。
○:塗膜外観変化が僅かであり、光沢保持率75%以上
△:光沢保持率75%以上だが、黄変が見られる
×:塗膜変化が著しい、光沢保持率75%未満
【0072】
<耐食性>
JIS−K−5621−7−12 複合サイクル試験の試験方法に準拠し、100サイクル後の塗膜外観を、以下の基準で目視判定した。
◎:塗膜表面に、異常なし
○:クロスカット部周辺に、直径1mm以下の赤錆が発生
×:クロスカット部周辺に、直径1mmを超える赤錆が発生
【0073】
<耐溶剤性>
ミネラルスピリットを染み込ませたガーゼで、塗面を50往復擦った後の塗膜状態を目視で判定した。
○:僅かな痕跡あり
△:目立った擦り傷や艶ぼけあり
×:塗膜が溶解した
【0074】
<可撓性>
塗面を外側に向けて塗板を180°折り曲げ、屈曲部位の塗膜状態を目視で判定した。
◎:塗膜に異常なし
○:僅かにクラックが発生するが、実用上問題ないレベル
△:部分的にクラックが発生している
【0075】
<臭気>
塗装時の臭気を10人で評価した。
◎:9人以上が臭気が少なく良好と判定。
○:6〜8人が臭気が少なく良好と判定。
△:5人以下が臭気が少なく良好と判定。
【0076】
【表1】

jER828:ジャパンエポキシレジン製のビスフェノールA系エポキシ樹脂
jER1004:ジャパンエポキシレジン製のビスフェノールA系エポキシ樹脂
デナコールEX−810:ナガセ化成製のエチレングリコールジグリシジルエーテル
デスモジュールI:住化バイエルウレタン製のイソホロンジイソシアネート
デスモジュールH:住化バイエルウレタン製のヘキサメチレンジイソシアネート
IPソルベント1620:出光興産製のイソパラフィン系溶剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸とを開環付加反応させて得られた反応物を、更に(C)イソシアネート基を有する化合物と反応させることによって得られる(D)前駆樹脂組成物と、(E)溶剤の存在下において、(F)ラジカル重合性基を有する化合物を重合させて得られることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)乾性油脂肪酸が、脱水ヒマシ油に由来する脂肪酸又はアマニ油に由来する脂肪酸を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(E)溶剤が、脂肪族炭化水素を50質量%以上含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(E)溶剤が、脂肪族炭化水素を90質量%以上含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(F)ラジカル重合性基を有する化合物が、前記(E)溶剤に溶解し、且つ、重合後には該溶剤に溶解せずに粒子を形成する請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−43178(P2010−43178A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207839(P2008−207839)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】