説明

樹脂組成物

【課題】環境負荷を低減することが可能であり、曲げ特性を維持しつつ、成形性、耐熱性および耐衝撃性に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)と5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量が70質量%以上、樹脂組成物中の5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷を低減することが可能であり、曲げ特性を維持しつつ、成形性、耐熱性および耐衝撃性に優れた樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、成形用の原料としてはポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの樹脂が使用されている。このような樹脂から製造された成形体は成形性、耐衝撃性、曲げ特性などの機械的強度に優れている。しかしながら、廃棄する際、ゴミの量を増やすうえに自然環境下では殆ど分解されないために、埋設処理しても半永久的に地中に残留するという問題があった。
【0003】
一方、近年、環境保全の見地からポリ乳酸をはじめとする生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。生分解性ポリエステル樹脂の中でも、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどは、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。そのうち、ポリ乳酸は既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造可能となっており、使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると炭素の収支として中立であることから、特に、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
【0004】
ポリ乳酸は、結晶化を十分進行させることにより耐熱性が向上するため、広い用途に適用可能となる。しかしながら、ポリ乳酸単独では、結晶化速度は極めて遅い。そこで、結晶化速度を向上させることを目的としてポリ乳酸に各種結晶剤を添加することや、ポリ乳酸を架橋することなどが検討されている。
【0005】
ポリ乳酸の結晶化を促進するために結晶核剤を添加する手法として、特定の分子構造を有するカルボン酸アミドまたはエステルを添加することが知られている(特許文献1)。また、ポリ乳酸の結晶化を促進するために結晶核剤を添加する手法として、トリシクロへキシルトリメシン酸アミドを添加することが知られている(特許文献2)。さらに、ポリ乳酸の結晶化を促進するために結晶核剤を添加する手法として、エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドを添加することが知られている(特許文献3)。
【0006】
ポリ乳酸の結晶化を促進するためにポリ乳酸を架橋する手法として、ポリ乳酸に(メタ)アクリル酸エステル化合物を配合することが知られている(特許文献4)。また、ポリ乳酸の結晶化を促進するためにポリ乳酸を架橋する手法として、ポリ乳酸にイソシアネート化合物を配合することが開示されている(特許文献5)。
【0007】
しかしながら、前記のように、結晶核剤をポリ乳酸に添加したり、ポリ乳酸に架橋処理を施したりしても、結晶化速度の向上効果は未だ不十分であった。従って、成形体を得る場合に、例えば射出成形に付する際には、成形サイクルが長くなるため、従来の樹脂を用いた場合の成形体と比較すると成形性に劣っていた。また、実用に耐えうる耐熱性や耐衝撃性を達成しているものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/137397号パンフレット
【特許文献2】特開2006−328163号公報
【特許文献3】特開2003−226801号公報
【特許文献4】特開2003−128901号公報
【特許文献5】特開2002−3709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、環境負荷を低減することが可能であり、曲げ特性を維持しつつ、成形性、耐熱性および耐衝撃性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とするものである。さらに、該樹脂組成物からなる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂と5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩を含有した樹脂組成物は前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)と5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量が70質量%以上、樹脂組成物中の5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
(2)ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であることを特徴とする(1)の樹脂組成物。
(3)ポリ乳酸樹脂(A)が、架橋されていることを特徴とする(1)または(2)の樹脂組成物。
(4)ポリ乳酸樹脂(A)が、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)、アルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物(E)のうち少なくともいずれか一方の化合物を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの樹脂組成物。
(5)樹脂組成物中に可塑剤(F)が含有されており、樹脂組成物中の可塑剤(F)の含有量が0.1〜15質量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの樹脂組成物。
(6)可塑剤(F)が、脂肪族多価カルボン酸エステル誘導体、脂肪族多価アルコールエステル誘導体、脂肪族オキシエステル誘導体、脂肪族ポリエーテル誘導体、脂肪族ポリエーテル多価カルボン酸エステル誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(5)の樹脂組成物。
(7)樹脂組成物中にカルボジイミド化合物、エポキシ化合物およびオキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種の反応性化合物(G)が含有されており、樹脂組成物中の反応性化合物(G)の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの樹脂組成物。
(8)(1)〜(7)のいずれかの樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、曲げ特性を維持しつつ、成形性、耐熱性および耐衝撃性を併有し、かつ、環境への負荷の低いポリ乳酸系樹脂組成物を提供することができる。このポリ乳酸系樹脂組成物を電気製品の筐体などに用いることで、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)と5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)を含有するものである。
【0014】
ポリ乳酸樹脂(A)としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができる。
成形性や得られる成形体の耐熱性を向上させるためには、ポリ乳酸樹脂(A)は、中でも、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または、D体含有量が99.0モル%以上であることが好ましく、0.1〜0.6モル%である、または、99.4〜99.9モル%であることがさらに好ましい。D体含有量がこの範囲外であるポリ乳酸樹脂を用いると、得られる成形体は、結晶化度が低くなり、耐熱性や成形性に劣るものとなりやすい。
【0015】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂を構成する総乳酸単位のうち、D−乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂の場合、このポリ乳酸樹脂は、D−乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L−乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
【0016】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、実施例にて後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL−乳酸とD−乳酸を全てメチルエステル化し、L−乳酸のメチルエステルとD−乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出するものである。
【0017】
また、ポリ乳酸樹脂(A)の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、中でも0.2〜20g/10分であることが好ましく、最適には0.5〜10g/10分である。上記MFRが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形体としたときの機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。また、MFRが0.1g/10分未満の場合は、成形加工時の負荷が高くなるため、操業性が低下する場合がある。なお、上記のMFRは、JIS K 7210(試験条件D)により測定した値である。
【0018】
また、ポリ乳酸樹脂(A)のMFRを所定の範囲に制御する方法としては、MFRが大きすぎる場合には、少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、MFRが小さすぎる場合は、MFRのより大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
【0019】
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造される。
ポリ乳酸樹脂(A)には、主たる構成成分以外のモノマーが共重合されていてもよい。共重合可能なモノマーとしては、例えば、酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、2,2´−ビフェニルジカルボン酸、4,4´−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸およびこれらの無水物;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。
【0020】
共重合可能なモノマーとしては、例えば、ジオール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールAやビスフェノールSなどのビスフェノール類またはそれらのエチレンオキサイド付加体;ハイドロキノン、レゾルシノールなどの芳香族ジオールなどが挙げられる。
【0021】
さらには、共重合可能なモノマーとして、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、6−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸などのヒドロキシカルボン酸;δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物などが挙げられる。また、難燃性を付与するために有機リン化合物が共重合されていてもよい。
【0022】
本発明の樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量は、70質量%以上であることが必要であり、中でも80質量%以上であることが好ましく、さらには90質量%以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が70質量%未満であると、環境負荷を低減する効果に乏しくなるため、好ましくない。なお、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量の上限は、後述する5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)等、他の化合物の含有量を考慮すると、99.9質量%以下であることが好ましく、中でも99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
そして、本発明の樹脂組成物には、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化の促進、および耐衝撃性の向上を目的として、結晶核剤として5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)を含有することが必要である。すなわち、本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)と、特定の結晶核剤、すなわち5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)を組み合わせることにより、樹脂組成物の耐衝撃性の向上、結晶化促進による耐熱性の向上、成形性の向上という顕著な効果を発現させることが可能である。
【0024】
5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)の含有量は、本発明の樹脂組成物中の0.1〜10質量%であることが必要であり、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは、2〜8質量%である。含有量が0.1質量%未満であると、結晶化促進による耐熱性の向上効果、成形性の向上効果および耐衝撃性の向上効果に乏しい。一方、10質量%を超えると、結晶核剤としての効果が飽和し経済的に不利であるだけでなく、耐熱性が低下する場合がある。また、生分解後の残渣分が増大するため環境面でも好ましくない。
【0025】
5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)としては、5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルマグネシウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムなどが挙げられる。なかでも、成形サイクルや耐衝撃性の観点から、5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウムが好ましい。
【0026】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化を促進し、成形性や耐熱性を向上させるために、ポリ乳酸樹脂(A)を架橋させて、架橋ポリ乳酸とすることが好ましい。具体的には、ポリ乳酸樹脂(A)が、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)、アルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物(E)のうち少なくともいずれか一方の化合物を含有するものであることが好ましい。
【0027】
このような架橋したポリ乳酸樹脂(A)を得る方法としては、ポリ乳酸樹脂(A)に、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)、アルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物(E)(以下、単に「シラン化合物(E)」と称する場合がある)のうち少なくともいずれか一方の化合物を配合し、さらに、過酸化物(C)を配合する方法が好ましい。過酸化物(C)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)、シラン化合物(E)以外の架橋剤を用いた場合は、架橋効率が不十分であるため、上記のポリ乳酸樹脂(A)の結晶化促進の作用効果を十分に発現することができない場合がある。
【0028】
上記過酸化物(C)は、樹脂組成物の結晶化を促進させることを目的として配合されるものである。(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)やシラン化合物(E)と組み合わせて用いられる場合は、ポリ乳酸樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)やシラン化合物(E)との反応を促進し、成形性や耐熱性をよりいっそう向上させることができる。
【0029】
なお、過酸化物(C)は樹脂との混合の際に分解して消費されるため、溶融混練時に添加されても得られた樹脂組成物中には残存しない場合がある。
過酸化物(C)の具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメンなどが挙げられ、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。上記の中でも、架橋効率の観点から、ジ−t−ブチルパーオキサイドが好適である。
【0030】
過酸化物(C)の配合量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。配合量が0.01質量部未満では、目的とする成形性や耐熱性が得られない場合があり、また、耐衝撃性が低下する場合がある。一方、配合量が5質量部を超えると、混練時の操業性が低下する場合がある。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)は、樹脂組成物の結晶化を促進させることを目的として配合されるものである。(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)は、ポリ乳酸樹脂との反応性が高く、モノマーが残りにくく、かつ毒性が少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または、1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジメタクリレート、または、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。上記の中でも、結晶化促進効果と耐熱性の観点から、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレートが特に好ましい。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)の配合量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。配合量が0.01質量部未満であれば、目的とする成形性や耐熱性が得られず、5質量部を超えると、混練時の操業性が低下する場合がある。
【0034】
シラン系化合物(E)は、樹脂組成物の結晶化を促進させることを目的として配合されるものであり、下記式(I)で表されるものである。
【0035】
【化1】

式(I)中、R〜Rの少なくとも2つ以上は、アルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を表す。残りは、アルコキシ基、ビニル基、アクリル基、メタアクリル基以外を表し、例えば水素、アルキル基、エポキシ基が挙げられる。
【0036】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。ビニル基としては、例えば、ビニル基、p−スチリル基が挙げられる。アクリル基としては、例えば、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基などが挙げられる。アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。エポキシ基としては、例えば、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)基などが挙げられる。
【0037】
このようなシラン化合物(E)の具体例、および商品名の例としては、テトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8114」、信越化学工業社製 商品名「KBM−04」)、テトラエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8124」、信越化学工業社製 商品名「KBE−04」)、メチルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8113」、信越化学工業社製 商品名「KBM−13」)、メチルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8123」、信越化学工業社製 商品名「KBE−13」)、ジメチルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8112」)、ジメチルジエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8122」、信越化学工業社製 商品名「KBE−22」)、メチルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8117」)、メチルジエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8127」)、フェニルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8173」)、フェニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8178」、信越化学工業社製 商品名「KBE−103」)、ジフェニルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8172」)、ジフェニルジエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8177」)、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−3063」)、デシルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−3103C」)、3−グリシドキシプロピルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL−8355」)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL−8350」、信越化学工業社製 商品名「KBM−403」)、ジメチルビニルメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8317」)、メチルビニルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8315」)、メチルビニルジエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8316」)、ジメチルビニルエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8318」)、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−1003」)、ビニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8311」、信越化学工業社製 商品名「KBE−1003」)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−303」)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBE−402」)、p−スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−1403」)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8375」、信越化学工業社製 商品名「KBM−502」)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8370」、信越化学工業社製 商品名「KBM−503」)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBE−502」)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBE−503」)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−5103」)、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−5102」)等が挙げられる。
【0038】
上記の中でも、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を1つ有し、アルコキシ基を3つ有するシラン化合物(E)が、結晶化速度向上の点で好ましい。このようなシラン化合物の具体例および商品名の例としては、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−1003」)、ビニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8311」、信越化学工業社製 商品名「KBE−1003」)、p−スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−1403」)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 商品名「TSL8370」、信越化学工業社製 商品名「KBM−503」)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBE−503」)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名「KBM−5103」)等が挙げられる。
【0039】
シラン化合物(E)の配合量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜3質量部である。配合量が0.01質量部未満であると、目的とする成形性や耐熱性が得られない場合があり、一方、5質量部を超えると、混練時の操業性が低下する場合がある。
【0040】
過酸化物(C)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)およびシラン化合物(E)は、それぞれ単独で用いてもよいが、結晶化を促進させる観点からは、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。なかでも、[過酸化物(C)と(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)]、[過酸化物(C)とシラン化合物(E)]、[過酸化物(C)と(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)とシラン化合物(E)]の組み合わせで用いることがより好ましい。架橋剤として、過酸化物(C)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)、シラン化合物(E)をこのような組み合わせで用いることによりポリ乳酸樹脂(A)の成形サイクルを短縮させたり、バリを低減させたりして、成形性を向上することができ、耐熱性も向上させることができるという顕著な作用効果を得ることができる。
【0041】
過酸化物(C)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)、シラン化合物(E)を2種以上組み合わせて用いる場合は、合計の配合量が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.02〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3.5質量部である。上記合計の配合量が0.02質量部未満であると、上記のような効果が得られない場合があり、一方、8質量部を超えると、混練時の操業性が低下する場合がある。
【0042】
また、本発明の樹脂組成物は、可塑剤(F)が含有されていることが好ましい。可塑剤(F)としては、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸樹脂(A)との相溶性に優れたものが好ましい。例えば、脂肪族多価カルボン酸エステル誘導体、脂肪族多価アルコールエステル誘導体、脂肪族オキシエステル誘導体、脂肪族ポリエーテル誘導体、脂肪族ポリエーテル多価カルボン酸エステル誘導体などから選ばれた少なくとも1種以上が挙げられる。このような可塑剤(F)を用いることにより、成形性や耐熱性を向上させることができる。
【0043】
可塑剤(F)の具体的な化合物としては、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノカプレート、ポリグリセリン酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリセライド、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、トリエチレングリコールジアセテート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルトリブチルクエン酸、ポリエチレングリコール、ジブチルジグリコールサクシネート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ビス(メチルジグリコール)アジペート、アジピン酸エステルなどが挙げられる。
【0044】
可塑剤(F)の具体的な商品名を例示すると、理研ビタミン社製 商品名「PL−102」「PL−109」「PL−320」「PL−710」「アクターシリーズ(M−1、M−2,M−3、M−4、M−107FR)」;田岡化学社製 商品名「ATBC」;大八化学社製 商品名「DAIFATTY−101」「BXA」「MXA」;太陽化学社製 商品名「チラバゾールシリーズ(VR−01、VR−05、VR−10P、VR−10P改1、VR−623)」などが挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物中の可塑剤(F)の含有量は、0.1〜15質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、成形性や耐熱性の向上効果に乏しくなる場合がある。一方、15質量%を超えると、耐熱性が低下する場合があり、また、可塑剤(F)が表面にブリードアウトする場合がある。
【0046】
さらに、本発明の樹脂組成物には、反応性を有する化合物を含有することが好ましい。反応性を有する化合物を含有させることにより、樹脂組成物の耐久性を向上させ、耐熱性を長期間安定的に維持することができる。本発明において、反応性を有する化合物は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物およびオキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種の反応性化合物(G)[以下、反応性化合物(G)と称する場合がある]であることが好ましい。
【0047】
カルボジイミド化合物としては、種々のものを用いることができ、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するものであれば特に限定されない。カルボジイミド化合物としては、例えば、脂肪族モノカルボジイミド、脂肪族ポリカルボジイミド、脂環族モノカルボジイミド、脂環族ポリカルボジイミド、芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。さらに、分子内に各種複素環、あるいは、各種官能基を持つものであっても構わない。
【0048】
カルボジイミド化合物としては、イソシアネート基を分子内に有するカルボジイミド化合物、およびイソシアネート基を分子内に有していないカルボジイミド化合物のどちらも区別無く用いることができる。
【0049】
カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格としては、N,N’−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N、N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、4,4’−ジシクロへキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、N,N’−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなど、多くのカルボジイミド骨格が挙げられる。
【0050】
カルボジイミド化合物の具体例としては、多くのものが挙げられるが、例えば、脂環族モノカルボジイミドとしては、ジシクロへキシルカルボジイミドなどが挙げられる。脂環族ポリカルボジイミドとしては、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドなどが挙げられる。芳香族モノカルボジイミドとしては、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが挙げられる。芳香族ポリカルボジイミドとしては、フェニレン−p−ジイソシアネートに由来するポリカルボジイミド、1,3,5−トリイソプロピル−フェニレン−2,4−ジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドなどが挙げられる。上記のカルボジイミド化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
なお、ポリカルボジイミドにおいては、その分子の両端あるいは分子中の任意の部分が、イソシアネート基等の官能基を有していてもよいし、または、分子鎖が分岐しているなど他の部位と異なる分子構造となっていてもよい。
カルボジイミド化合物を製造する方法としては、特に限定されず、イソシアネート化合物を原料に製造する方法など、多くの方法が挙げられる。
【0052】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどを含有するエポキシ化合物がもっとも好ましい。
オキサゾリン化合物としては、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンを含有するオキサゾリン化合物が最も好ましい。
【0053】
本発明の樹脂組成物中の反応性化合物(G)の含有量(複数の化合物を用いる場合は合計の含有量)は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、目的とする耐久性(耐湿熱性)が得られない場合がある。一方、含有量が10質量%を超えると、耐熱性が低下し、また経済的にも好ましくなく、さらに色調が大きく損なわれる場合がある。
【0054】
また、本発明の樹脂組成物の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローレート(JIS K−7210(試験条件4)による値)は、0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.2〜20g/10分であることがより好ましく、0.5〜10g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが30g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて、得られた成形体は機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。一方、メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は、成形加工時の負荷が高くなるため、操業性が低下したりコストが高くなったりするため好ましくない。
【0055】
樹脂組成物のMFRを所定の範囲に制御する方法としては、MFRが大きすぎる場合には、少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、MFRが小さすぎる場合は、MFRのより大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
【0056】
本発明の樹脂組成物を製造する方法は、特に制限されず、各成分が均一に相溶または分散されている状態になればよい。例えば、タンブラーやヘンシェルミキサーを用いて、均一にドライブレンドした後、溶融混練押出して、冷却・カッティング・乾燥工程に付してペレット化すればよい。溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することができる。
【0057】
ポリ乳酸樹脂(A)と5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)、可塑剤(F)や反応性化合物(G)とを混合したり、架橋したポリ乳酸樹脂(A)としたりする際に、ポリ乳酸樹脂と過酸化物(C)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)、シラン化合物(E)等を溶融混練する手段は、特に限定されないが、例えば、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。なかでも、混練状態を良くする意味で、二軸の押出機を用いることが好ましい。混練温度は{[ポリ乳酸樹脂(A)の融点]+5}℃〜{[ポリ乳酸樹脂(A)の融点]+100}℃であることが好ましい。この範囲より低温であると混練や反応が不十分となり、一方、この範囲より高温であると樹脂の分解や着色が起きる場合がある。また、混練時間は、20秒〜30分が好ましい。この時間より短いと混練や反応が不十分となり、一方、この時間より長いと樹脂の分解や着色が起きる場合がある。
【0058】
ポリ乳酸樹脂(A)と5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)とを含有する樹脂組成物に、さらに可塑剤(F)を配合する場合は、ポリ乳酸樹脂(A)、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)および可塑剤(F)が十分に相溶または分散するように、押出機のトップフィーダから同時に供給することが好ましい。
【0059】
ポリ乳酸樹脂(A)を架橋ポリ乳酸とするために、ポリ乳酸樹脂に過酸化物(C)を配合する場合は、ポリ乳酸樹脂が溶融状態にあるときに配合することが好ましいため、押出機のバレル途中から供給することが好ましい。過酸化物(C)をバレル途中から供給する場合の好ましい方法としては、操業性を格段に向上させる観点から、過酸化物(C)を媒体に溶解又は分散して混練機に注入する方法が挙げられる。過酸化物(C)を溶解または分散させる媒体としては、特に制限されず、一般的なものを用いることができる。なかでも、ポリ乳酸樹脂(A)との相溶性に優れた可塑剤が好ましく、過酸化物(C)が溶解または均一に分散するならば、上述の可塑剤(F)と同様のものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。また、2種類以上の可塑剤を併用してもよい。
過酸化物(C)と媒体との質量比率は、架橋効率の観点から、[過酸化物(C)]:(媒体)=1:3〜1:10が好ましく、中でも1:3〜1:7がより好ましい。
【0060】
ポリ乳酸樹脂(A)を架橋ポリ乳酸とする際に、ポリ乳酸樹脂に(メタ)アクリル酸エステル(D)やシラン化合物(E)を配合する場合は、ポリ乳酸樹脂および5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)とともに、トップフィーダから添加してもよいし、ポリ乳酸樹脂に(メタ)アクリル酸エステル(D)やシラン化合物(E)を配合させてポリ乳酸樹脂(A)を得た後、さらに5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)を加えてもよい。
【0061】
本発明の樹脂組成物には、その特性を損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、無機充填材、植物繊維、強化繊維、耐候剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、上記の結晶核剤以外の耐衝撃剤、相溶化剤等の添加剤を添加することができる。
【0062】
顔料としては、チタン、カーボンブラックなどを挙げることができる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。
【0063】
無機充填材としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、アルミナ、マグネシア、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維、層状珪酸塩などが例示される。なかでも、層状珪酸塩を配合することにより、樹脂組成物のガスバリア性を向上させることができる。
【0064】
植物繊維としては、例えば、ケナフ繊維、竹繊維、ジュート繊維、その他のセルロース系繊維などが例示される。
強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリマー繊維などの有機強化繊維などが挙げられる。
【0065】
耐候剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサジノンなどが挙げられる。
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができ、なかでも、各種脂肪酸金属塩、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましい。
【0066】
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物、中でも、各種脂肪酸エステル、各種脂肪酸アミドなどが好適に用いられる。
耐衝撃剤としては、特に限定されず、コアシェル型構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系耐衝撃剤など、種々のものを用いることができる。耐衝撃剤は市販品も好適に用いることができ、例えば、三菱レイヨン社製「メタブレンシリーズ」などが挙げられる。
【0067】
相溶化剤としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン系共重合樹脂を主鎖に有するグラフト共重合体が挙げられる。具体的には、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−ポリメチルメタクリレートグラフト共重合体、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−ポリ(アクリロニトリル/スチレン)グラフト共重合体などが挙げられる。相溶化剤としては、市販品も好適に使用でき、例えば、日本油脂社製「モディパーシリーズ」などが挙げられる。
【0068】
本発明の樹脂組成物に、上記の添加剤を混合する方法としては特に限定されない。
本発明の樹脂組成物に、ポリ乳酸樹脂(A)以外の樹脂を混合して、アロイとすることもできる。
【0069】
本発明の樹脂組成物とアロイされる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(メチル)メタアクリレート、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体、液晶ポリマー、ポリアセタールなどが挙げられる。
【0070】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6Tなどが挙げられる。
【0071】
ポリエステルとしては、各種芳香族ポリエステル、各種脂肪族ポリエステルを始め、多くのものが挙げられる。芳香族ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンアジペートテレフタレートなどが挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、具体的には、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリヒドロキシ酪酸等が挙げられる。
【0072】
この他のポリエステル系化合物としては、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリブチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロへキシレンジメチレンテレフタレート、シクロへキシレンジメチレンイソフタレートコテレフタレート、p−ヒドロキシ安息香酸残基とエチレンテレフタレート残基からなるコポリエステル、植物由来の原料である1,3−プロパンジオールからなるポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0073】
本発明の樹脂組成物に、これらの樹脂を混合する方法は特に限定されない。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、インジェクションブロー成形、発泡シート成形、および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。すなわち、射出成形してなる成形体、あるいは、押出成形してなるフィルム、シート、およびこれらのフィルムやシートを加工してなる成形体、あるいはブロー成形してなる中空体、および、この中空体から加工してなる成形体などとすることができる。上記のなかでも、とりわけ、射出成形法を採用することが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。
【0074】
本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度を樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、例えば、170〜250℃とすることが好ましく、170〜230℃とすることがより好ましい。また、金型温度は(樹脂組成物の融点−40)℃以下とすることが適当である。成形温度が上記のシリンダ温度や金型温度の範囲より低すぎると、成形品にショートが発生するなどして操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすくなったりする場合がある。逆に、成形温度が上記のシリンダ温度や金型温度の範囲を超えて高すぎると、樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色したりする等の問題が発生しやすく、ともに好ましくない場合がある。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、成形の際に結晶化を促進させることにより、耐熱性をさらに高めることができる。結晶化を促進させる方法としては、例えば、射出成形時に金型内で結晶化を促進させる方法があり、その場合には、樹脂組成物のガラス転移温度以上、(樹脂組成物の融点−40)℃以下に保たれた金型内で、一定時間成形体を保持した後、金型より取り出す方法が好適である。また、このような方法をとらずに金型から取り出された成形体であっても、該成形体を、樹脂組成物のガラス転移温度以上、(樹脂組成物の融点−40)℃以下で熱処理することにより、結晶化を促進することができる。
【0076】
本発明の樹脂組成物を用いた成形体の具体例としては、パソコン筐体部品および筐体、携帯電話筐体部品および筐体、その他OA機器筐体部品、コネクター類等の電化製品用樹脂部品;バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品をはじめ、コンテナーや栽培容器等の農業資材や農業機械用樹脂部品;浮きや水産加工品容器等の水産業務用樹脂部品;皿、コップ、スプーン等の食器や食品容器;注射器や点滴容器等の医療用樹脂部品;ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤等の住宅・土木・建築材用樹脂部品;花壇用レンガ、植木鉢等の緑化材用樹脂部品;クーラーボックス、団扇、玩具等のレジャー・雑貨用樹脂部品;ボールペン、定規、クリップ等の文具用樹脂部品等が挙げられる。
【0077】
そのうち、曲げ特性、成形性、耐熱性および耐衝撃性が必要とされる部品において、本発明の樹脂組成物は特に有用である。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例および比較例の樹脂組成物の評価に用いた測定法は次の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量
得られた樹脂組成物を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量(モル%)とした。
【0079】
(2)ポリ乳酸樹脂(A)、樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)JIS K 7210(試験条件D)に従って、190℃、荷重21.1Nで測定した。
(3)曲げ強度
得られた試験片を用いて、ISO178に従って曲げ強度を測定した。本発明においては、曲げ強度が90MPa以上であるものを実用に耐えうるものとした。
【0080】
(4)曲げ弾性率
得られた試験片を用いて、ISO178に従って曲げ弾性率を測定した。本発明においては、曲げ弾性率が3.1GPa以上であるものを実用に耐えうるものとした。
【0081】
(5)耐衝撃性
得られた試験片を用いて、ISO 179−1に従って測定したシャルピー衝撃強度を用いた。本発明においては、シャルピー衝撃強度が3.5kJ/m以上であるものを実用に耐えうるものとした。
【0082】
(6)耐熱性
得られた試験片を用いて、ISO75−1に従って、荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度を用いた。本発明においては、荷重たわみ温度が95℃以上であるものを実用に耐えうるものとした。
【0083】
(7)成形性(成形サイクル)
得られたペレット(70℃にて24時間真空乾燥後のもの)を用い、射出成形機(東芝機械社製、商品名「IS−80G」)で、ISOダンベル型試験片を成形した。成形温度190℃で樹脂組成物を溶融し、金型温度85℃の金型に充填した。樹脂組成物が金型内に射出される際の、射出時間と射出後に圧力をかけた時間の合計を30秒とし、その後、成形体が金型に固着、または、抵抗なく取り出すことができ、突き出しピンによる変形がなく、良好に離型できるまでの所要時間との合計時間(成形サイクル)(秒)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:所要時間が60秒以下である。
○:所要時間が60秒より長く80秒以下である。
×:所要時間が80秒を超える。
本発明においては、○以上であるものを実用に耐えうるものとした。
【0084】
(8)耐久性(曲げ強度保持率)
得られた試験片を2本用意し、1本は上記(3)と同様の方法で曲げ強度を測定した。もう1本は温度60℃、湿度95℃RHの環境下で500時間曝して湿熱処理を施し、再度、上記(3)と同様の方法で曲げ強度(湿熱処理後の曲げ強度)を測定した。以下の式により、曲げ強度保持率を算出した。
(曲げ強度保持率)(単位:%)=(湿熱処理後の曲げ強度)/(湿熱処理前の曲げ強度)×100
以下の基準で評価した。
◎:曲げ強度保持率が85%以上である。
○:曲げ強度保持率が60%以上85%未満である。
×:曲げ強度保持率が60%未満である。
本発明においては、曲げ強度保持率が60%以上(評価が○以上)であるものを実用に耐えうるものであるとした。
【0085】
また、実施例および比較例に用いた各種原料は次の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂
・カーギルダウ社製、商品名「Nature Works 3001D」(MFR:10g/10分、融点:168℃、D体含有量:1.4モル%)(以下、「3001D」と称する場合がある)
・トヨタ自動車製、商品名「S−12」(MFR:8g/10分、融点:178℃、D体含有量:0.1モル%)(以下、「S−12」と称する場合がある)
・トヨタ自動車製、商品名「S−06」(MFR:4g/10分、融点:176℃、D体含有量:0.2モル%)(以下、「S−06」と称する場合がある)
・トヨタ自動車製、商品名「A−1」(MFR:2g/10分、融点:172℃、D体含有量:0.6モル%)(以下、「A−1」と称する場合がある)
(2)5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)
・(B−1):5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム(竹本油脂社製、商品名「LAK−403」)
・(B−2):5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウム(竹本油脂社製、商品名「LAK−301」)
(3)5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)以外の結晶核剤
・(B−3):オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド(アデカ社製、商品名「T−1287A」)
・(B−4):フェニルホスホン酸亜鉛(日産化学社製、商品名「エコプロモートNP」)
(4)過酸化物(C)
・ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルD」)(以下、「PBD」と称する場合がある)
(5)(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)
・エチレングリコールジメタクリレート(日本油脂社製、商品名「ブレンマーPDE−50」)(以下、「PDE」と称する場合がある)
(6)シラン化合物(E)
・ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−1003」)(以下、「BM」と称する場合がある)
(7)可塑剤(F)
・(F−1)アジピン酸エステル(大八化学社製、商品名「DAIFATTY−101」)
・(F−2)中鎖脂肪酸トリグリセライド(理研ビタミン社製、商品名「アクターM−1」)
(8)反応性化合物(G)
・(G−1)カルボジイミド化合物(松本油脂社製、商品名「EN−160」)
・(G−2)カルボジイミド化合物(日清紡社製、商品名「LA−1」)
(架橋ポリ乳酸〔ポリ乳酸樹脂(A)〕の調製)
二軸押出機(東芝機械社製 商品名「TEM37BS型」)を用い、押出機の根元供給口から、表1に示すように、ポリ乳酸樹脂の種類と割合を変えて供給し、また、混練途中から表1に示す割合でPBD、BM、PDE、DAIFATTY−101を混合した溶液を注入し、バレル温度190℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量15kg/hの条件で、ベントを効かせながら溶融押出を実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水を満たしたバットを通過させて冷却した後、ペレット状にカッティングして、架橋ポリ乳酸樹脂であるポリ乳酸樹脂(A)(M−1)〜(M−16)のペレットを得た。
【0086】
【表1】

(実施例1)
二軸押出機(東芝機械社製 商品名「TEM37BS型」)を用い、ポリ乳酸樹脂(A)として3001Dを用い、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)として(B−1)を用い、3001D99.9質量部、(B−1)0.1質量部をドライブレンドして、押出機の根元供給口から供給し、バレル温度190℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hの条件で、ベントを効かせながら溶融押出を実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水を満たしたバットを通過させて冷却した後、ペレット状にカッティングして、樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを、70℃にて24時間真空乾燥した。
【0087】
その後、射出成形機(東芝機械社製 商品名「IS−80G型」)を用いて、成形温度190℃で樹脂組成物を溶融し、金型表面温度を85℃に調整しながら、ISOダンベル型試験片を作製した。評価結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
(実施例2〜6、比較例1〜4)
3001Dの配合量、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)以外の結晶核剤の種類、およびそれらの配合量を変更し、それぞれの含有量が表2および表3に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。該樹脂組成物のペレットを実施例1と同様に射出成形して試験片を作製した。実施例の評価結果を表2に、比較例の評価結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
(実施例7〜29、比較例5)
ポリ乳酸樹脂(A)として(M−1)〜(M−16)、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)以外の結晶核剤、可塑剤(F)、反応性化合物(G)の有無、種類およびそれらの配合量を変更し(すなわち、それぞれの含有量が表2、表3および表4に示す値となるように変更し)、これらをドライブレンドして押出機の根元供給口から供給し、バレル温度190℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hの条件で、ベントを効かせながら溶融押出を実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水を満たしたバットを通過させて冷却した後、ペレット状にカッティングして、樹脂組成物のペレットを得た。
【0092】
得られたペレットを、70℃にて24時間真空乾燥した後、実施例1と同様に射出成形して試験片を作成した。実施例の評価結果を表2および表4に、比較例の評価結果を表3に示す。
【0093】
【表4】

実施例1〜29で得られた樹脂組成物は、曲げ特性、耐熱性、成形性、耐衝撃性および耐久性に優れるものであった。
【0094】
架橋されたポリ乳酸樹脂(A)を用いた実施例7〜29は、特に、成形性と耐熱性に優れるものであった。
可塑剤(F)を用いた実施例7〜18、実施例21〜29は、特に成形性と耐熱性に優れるものであった。
【0095】
反応性化合物(G)を用いた実施例13〜18、実施例25〜29は、特に耐久性に優れるものであった。
ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が、1.0モル%以下である実施例25〜29は、特に成形性と耐熱性に優れるものであった。
【0096】
比較例1では、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)を用いなかったため、成形サイクルが長くなり、さらに、耐衝撃性、成形性、耐熱性においても劣る結果となった。
【0097】
比較例2では、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)の含有量が過多であったため、耐熱性に劣っていた。
比較例3および比較例4では、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)以外の結晶核剤を用いたため、耐衝撃性に劣っていた。
【0098】
比較例5では、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)の含有量が過少であったため、耐衝撃性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)と5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量が70質量%以上、樹脂組成物中の5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(B)の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリ乳酸樹脂(A)が、架橋されていることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂(A)が、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)、アルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物(E)のうち少なくともいずれか一方の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物中に可塑剤(F)が含有されており、樹脂組成物中の可塑剤(F)の含有量が0.1〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
可塑剤(F)が、脂肪族多価カルボン酸エステル誘導体、脂肪族多価アルコールエステル誘導体、脂肪族オキシエステル誘導体、脂肪族ポリエーテル誘導体、脂肪族ポリエーテル多価カルボン酸エステル誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂組成物中にカルボジイミド化合物、エポキシ化合物およびオキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種の反応性化合物(G)が含有されており、樹脂組成物中の反応性化合物(G)の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2011−157538(P2011−157538A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111586(P2010−111586)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】