説明

樹脂膜のゲッタリング性能評価方法

【課題】半導体チップにゲッタリング性能を付与するために、チップに適用される樹脂膜のゲッタリング性能を、簡便に評価しうる方法を提供する。
【解決手段】ゲッタリング性能を評価する対象の樹脂膜をシリコンウエハの片面に形成する工程、該樹脂膜を硬化してシリコンウエハとの積層体を形成する工程、該積層体を金属イオンで汚染する工程、汚染後の該樹脂をエッチングする工程、該エッチングに用いた液の回収液と純水とで金属イオン濃度測定用試料を調整する工程、および該試料をICP−MS等により含有金属元素量の定量を行う工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂膜のゲッタリング性能評価方法に関し、さらに具体的には、半導体チップにゲッタリング性能を付与するために、チップに適用される樹脂膜のゲッタリング性能を、簡便に評価しうる方法に関する。また、本発明は、該評価方法に基づいて樹脂膜を選択する工程を含む、該樹脂膜を形成するためのシートの製造方法および得られるシートを利用した半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハは大径の状態で製造される。半導体ウエハは、表面に回路を形成した後、裏面研削により所定の厚さまで研削し、素子小片(半導体チップ)に切断分離(ダイシング)された後に次の工程であるボンディング工程に移されている。この際、半導体ウエハは予め粘着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップの各工程が加えられた後、次工程のボンディング工程に移送される(たとえば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
近年、チップの薄化および半導体回路の配線微細化にともない、極微量の金属イオンによるウエハ、チップの汚染が問題となっている。このような金属イオンは、回路配線や環境等から不可避的にチップ等に混入されると考えられている。
【0004】
半導体装置の製造工程においてシリコンウエハの裏面研削時に研削面に形成される破砕層(シリコン多結晶層、格子欠陥層)は、ゲッタリングサイトとも呼ばれ、極微量の銅イオン等の重金属を捕捉する性能を有し、半導体素子の回路に対し電気特性の劣化を防ぐことが分かっている。しかし、この破砕層が存在すると、僅かな衝撃によってもウエハがひび割れ、ウエハの破損を招くことがある。このため、裏面研削終了後には、破砕層を除去するため、裏面にケミカルエッチングやプラズマエッチングなどを施すことが一般化している。破砕層を除去することで、ウエハの強度は向上し、極薄にまで研削されたウエハであっても、良好なハンドリング性が維持される。しかし、一方で破砕層を除去すると、ゲッタリング性能は失われ、得られる半導体装置は、不可避的に混入される銅イオン等の重金属により、電気特性が劣化することがあった。
【0005】
このため、破砕層を除去後の半導体ウエハ、チップに種々の処理を行うことで、ゲッタリング機能を付与する技術が提案されている(特許文献5,6)。しかし、特許文献5,6のように、半導体ウエハ、チップにゲッタリング機能を付与するための特殊な処理を施すことは、工程数が増加し、プロセスの煩雑化、コストの上昇を招く。
【0006】
そこで、本発明者らにより、ゲッタリング性能を有する樹脂膜を半導体ウエハ、チップに形成することで、ゲッタリング機能を付与する技術が提案されている。この技術によれば、比較的簡単な手法により、半導体ウエハやチップにゲッタリング性能を付与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−32181号公報
【特許文献2】特開平8−239636号公報
【特許文献3】特開平10−8001号公報
【特許文献4】特開2000−17246号公報
【特許文献5】特開2005−277116号公報
【特許文献6】特開2007−242713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
樹脂膜のゲッタリング性能を評価するためには、現時点では半導体装置を組み上げて、その動作性能から、重金属元素の影響を間接的に評価している。しかし、この方法では樹脂膜のゲッタリング性能を直接的に評価しているわけではなく、また個別の半導体装置における誤差等の影響を排除することもできない。したがって、このような間接的な評価結果に基づいて樹脂膜を取捨選択することは必ずしも妥当ではない。また、半導体装置を組み上げた上で評価するため、評価に時間および費用がかかる。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、半導体チップにゲッタリング性能を付与するために、チップに適用される樹脂膜のゲッタリング性能を、簡便に評価しうる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、以下の要旨を含む。
(1)樹脂膜のゲッタリング性能の評価方法であって、
該樹脂膜をシリコンウエハの片面に形成する工程、
該樹脂膜とシリコンウエハとの積層体を200℃以上に加熱する工程、および
該樹脂膜中における重金属元素量を定量する工程を含む、
樹脂膜のゲッタリング性能の評価方法。
【0011】
(2)該シリコンウエハが、銅により汚染処理されたシリコンウエハである(1)に記載の評価方法。
【0012】
(3)該積層体の加熱温度が260℃以上である(1)または(2)に記載の評価方法。
【0013】
(4)該シリコンウエハが、片面を研磨した後に、該面に形成された破砕層を除去したシリコンウエハである、(1)〜(3)の何れかに記載の評価方法。
【0014】
(5)該樹脂膜中における重金属元素量の定量を、樹脂膜を完全に溶解して得た溶液中の重金属イオン量を定量することで行う、(1)〜(4)の何れかに記載の評価方法。
【0015】
(6)上記(1)〜(5)の何れかに記載の評価方法に基づいて樹脂膜を選択する工程、
該選択された樹脂膜を形成しうる成分を含む樹脂膜形成用組成物を調製する工程、
該樹脂膜形成用組成物からなる層を、基材上に剥離可能に形成する工程を含む樹脂膜形成用組成物シートの製造方法。
【0016】
(7)上記(6)に記載の製造方法によって得られた樹脂膜形成用組成物シートの樹脂膜形成用組成物層に半導体ウエハを貼着する工程、該半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に該樹脂膜形成用組成物層を固着残存させて基材から剥離する工程、該半導体チップをダイパッド部上、または別の半導体チップ上に該樹脂膜形成用組成物層を介して載置する工程を含む半導体装置の製造方法。
【0017】
(8)表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、(6)に記載の製造方法によって得られた樹脂膜形成用組成物シートの樹脂膜形成用組成物層を貼付する工程、樹脂膜形成用組成物層から樹脂膜を形成し、裏面に樹脂膜を有する半導体ウエハを得る工程を含む半導体ウエハの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、評価対象の樹脂膜をシリコンウエハに適用後、加熱し、樹脂膜中における重金属元素量を定量するという簡便な操作で、樹脂膜のゲッタリング性能を的確に評価することができる。このため、種々の樹脂膜についての簡便、迅速な評価が可能であり、ゲッタリング性能を付与するための樹脂膜の開発および取捨選択に要する時間、費用も低減される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、その最良の形態も含めてさらに具体的に説明する。
本発明の評価対象は、ゲッタリング性能を有する樹脂膜であり、該樹脂膜のゲッタリング性能を評価する。ここで、ゲッタリング性能とは、上述のような銅イオン等の重金属を捕捉する性能をいう。ゲッタリング性能を有する樹脂膜は、本発明者らにより既に種々提案されており、たとえば、アクリル重合体、エポキシ系熱硬化性樹脂および熱硬化剤を主体とする樹脂成分にゲッタリング剤が配合された樹脂膜を例示することができる。ゲッタリング剤は、銅イオンなどの金属イオンを捕捉する作用を有する限り特に限定はされないが、好ましくは重金属不活性化剤、有機キレート剤、および銅イオンを捕捉しうる金属化合物等があげられる。このようなゲッタリング剤が配合された樹脂膜をチップに適用することで、半導体装置にゲッタリング性能が付与される。
【0020】
ゲッタリング性能を有する樹脂膜は、チップの保護膜として形成されてもよく、またチップとダイパッド等とを接着するための接着剤層としての樹脂膜(接着膜)であってもよい。
【0021】
このようなゲッタリング性能を有する樹脂膜の詳細は、たとえば本願出願人の出願に係る特願2010−83683号、特願2010−83688号、特願2010−83689号、特願2010−83690号、特願2010−83697号、特願2010−83700号等の明細書に記載されているが、本発明の評価対象たる樹脂膜がこれらの限定されることはない。
【0022】
本発明の評価方法では、まず上記の樹脂膜をシリコンウエハの片面に形成する。シリコンウエハとしては、回路等を有しない、いわゆるミラーウエハが好ましく用いられるが、回路が形成されているウエハであってもよい。また、シリコンウエハは、少なくとも片面がグラインダーなどにより研削後、研削時に生じた破砕層が除去されたウエハであることが好ましい。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。破砕層自体がゲッタリング性能を有するため、樹脂膜のゲッタリング性能を的確に評価するためには、破砕層が可能な限り除去されたウエハを用いることが好ましい。
【0023】
また、ウエハの厚みは10〜750μmが好ましく、50〜300μmがさらに好ましい。ウエハの厚みが薄すぎる場合には、評価試験中にウエハが破損することがあり、また厚すぎる場合には、後述する金属汚染のために多量の汚染源が必要になる。
【0024】
また、シリコンウエハとしては、不純物含量の低い、単結晶ウエハをそのまま使用してもよいが、樹脂膜のゲッタリング性能を的確に評価するためには、銅などの金属により汚染処理されたウエハを用いることが好ましい。不純物含量が極めて低い、単結晶ウエハをそのまま使用した場合には、後述する重金属含有量の定量において有意な差が得られない場合がある。
【0025】
ウエハを金属により汚染する方法は、特に限定はされないが、たとえば塩化銅(II)等の汚染源となる金属粉末または金属化合物粉末をシリコンウエハの片面に均一に散布する方法があげられる。また、汚染源となる金属粉末または金属化合物粉末を含有するシート等をウエハ片面に貼付しても良い。さらに汚染源となる金属イオンを含有する溶液をウエハ片面に塗布しても良い。
【0026】
また、汚染源の適用は、ウエハの研削面であってもよく、未研削面であってもよいが、好ましくは破砕層が除去された研削面側から汚染処理を行う。破砕層が除去された研削面側から汚染処理を行うと、汚染源からの金属イオンが破砕層のゲッタリング性によって捕捉されることがないので、金属によりシリコンウエハを均一に汚染することができる。
【0027】
このような汚染源をウエハに適用後、加熱を行うことで、汚染源に含まれる金属がイオンとしてウエハ内に拡散し、金属汚染されたウエハが得られる。汚染源として塩化銅(II)を用いる場合には、300℃以上で30分以上加熱することが好ましい。不純物含量が極微量のウエハを用いた場合には、ゲッタリング性能の評価が的確に行えない場合があるが、上記のような金属イオンで汚染処理されたウエハを用いると、ゲッタリング性能を的確に評価できるようになる。
【0028】
次いで、汚染源を除去後に、シリコンウエハ、好ましくは金属汚染されたシリコンウエハの片面に上記の樹脂膜を形成する。汚染源の除去は、水や溶剤を用いて洗浄したり、粘着テープの貼付・剥離を繰り返して物理的に除去することで行われる。樹脂膜の形成面は、前記汚染源を適用した面であってもよく、またその反対面であってもよい。
【0029】
樹脂膜の形成方法は特に限定はされず、樹脂膜を形成する液状の樹脂膜形成用組成物をシリコンウエハの片面に塗工、乾燥、必要に応じ熱硬化、エネルギー線硬化して樹脂膜を形成してもよく、また剥離性を有する基材上に樹脂膜またはその前駆体膜を形成した後に、基材上の樹脂膜または前駆体膜をシリコンウエハの片面に転写してもよい。前駆体膜の場合には、転写後に、必要に応じ熱硬化、エネルギー線硬化により前駆体膜から樹脂膜を形成する。
【0030】
なお、不純物含量の低い単結晶ウエハをそのまま使用した場合には、後述する重金属含有量の定量において有意な差が得られない場合があるため、樹脂膜とシリコンウエハとの積層体におけるシリコンウエハ面に汚染源を適用し、シリコンウエハを金属汚染することが好ましい。金属汚染後、後述する加熱工程により、汚染源に含まれる金属がイオンとしてウエハ内に拡散し、ゲッタリング性能を的確に評価できるようになる。積層体におけるシリコンウエハを金属汚染する方法は、たとえば塩化銅(II)等の汚染源となる金属粉末または金属化合物粉末をシリコンウエハの片面に均一に散布する方法や、汚染源となる金属粉末または金属化合物粉末を含有するシート等をウエハ片面に貼付する方法や、汚染源となる金属イオンを含有する溶液をウエハ片面に塗布する方法が挙げられる。
【0031】
次いで、樹脂膜とシリコンウエハとの積層体を加熱する。加熱温度は、実際の工程条件を考慮して適宜選択することができ、好ましくは200℃以上であり、さらに好ましくは260℃以上、特に好ましくは280〜350℃である。加熱時間は、特に限定はされないが、1〜60分程度であればよい。加熱処理により、シリコンウエハ内の金属イオンの移動が活性化され、ウエハと樹脂膜との界面に移動した金属イオンが樹脂膜により捕捉され、樹脂膜のゲッタリング性能が発現される。加熱温度の上限は特に限定はされず、樹脂膜が軟化、分解しない温度であればよい。なお、半導体装置の製造工程において、金属イオンの移動が最も活性化されるのは、樹脂封止やリフローにおける加熱環境下であり、その際にはチップは300℃程度にまで加熱される。したがって、樹脂膜のゲッタリング性能を的確に評価するためには、これと同程度の温度に加熱することが好ましい。
【0032】
次いで、汚染源を除去後に、樹脂膜中における重金属元素量を定量する。
【0033】
重金属元素量の定量法は特に限定はされず、樹脂膜中に存在する重金属元素量の測定に適した方法が用いられる。例えば、ICP−MS、ICP−OES、TOF−SIMS、原子吸光分析等の方法であってもよい。これらの中でも、元素毎の含有量を高い精度で簡便に定量可能なICP−MSが特に好ましい。
【0034】
ICP等の溶液法による場合には、積層体における樹脂膜を、酸エッチング(発煙硝酸、発煙硫酸、濃硫酸、濃硝酸等を用いて、必要に応じ加熱する)などの適当な処理により全溶解して得た溶液中の重金属イオン量を定量する。なお、積層体におけるシリコンウエハを、硝酸/ふっ酸混合液などを用いて全溶解後、残った樹脂膜を、酸エッチングなどの適当な処理により全溶解して得た溶液中の重金属イオン量を定量することもできる。
【0035】
次いで、所定の測定装置に前記溶液を導入することで、樹脂膜中に存在した重金属元素量を定量できる。ここで定量される重金属は、樹脂膜に捕捉された重金属である。したがって、定量される重金属元素量が多いほど、樹脂膜のゲッタリング性能が高く、重金属元素量が少ないほど、樹脂膜のゲッタリング性能が低いことを意味する。
【0036】
このような本発明の評価方法によれば、シリコンウエハに樹脂膜を適用後、加熱し、樹脂膜中における重金属元素量を定量するという簡便な操作で、樹脂膜のゲッタリング性能を的確に評価することができる。このため、種々の樹脂膜についての簡便、迅速な評価が可能であり、ゲッタリング性能を付与するための樹脂膜の開発および取捨選択に要する時間、費用も低減される。
【0037】
本発明は、上記の評価方法に基づいて樹脂膜を選択した上で、かかる樹脂膜を製造するために使用される樹脂膜形成用組成物シートの製造方法をも提供する。
【0038】
樹脂膜の選択の具体的指針として、定量される重金属元素量が相対的に多い樹脂膜ほどゲッタリング性能に優れるので、その他の要件、たとえば製造の容易性やコスト、作業安全性等のバランスを考慮して、使用する樹脂膜を選択すればよい。樹脂膜は、樹脂を使用して膜形状となるものであれば、限定されない。樹脂膜の前駆体である樹脂膜形成用組成物シートを製造する場合には、まず選択された樹脂膜を形成しうる成分を含む樹脂膜形成用組成物を調製する。組成物の成分や、その量比は、樹脂膜を作成する際の配合に従えばよい。一般に樹脂膜形成用組成物は、アクリル重合体、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化剤、エネルギー線重合性化合物から選ばれる1種類以上を含む組成物およびゲッタリング剤を含み、さらに必要に応じ、硬化促進剤、光重合開始剤、カップリング剤、無機充填材、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料等を含んでいても良い。これらの成分の具体例は、前述した本願出願人の先願明細書に詳細に記載されているが、これらに限定されることはない。
【0039】
樹脂膜形成用組成物シートは、上記のような樹脂膜形成用組成物をシート状に成膜してなる。樹脂膜形成用組成物シートは、上記樹脂膜形成用組成物からなる単層シートであってもよいが、好ましくは剥離性を有する基材上に、樹脂膜形成用組成物からなる層が剥離可能に形成されてなる。シートの成膜法は特に限定はされず、上記の樹脂膜形成用組成物を適宜量の溶剤で希釈し、所定の基材上に塗布乾燥すればよい。また、水分散エマルションの製膜、エネルギー線キャスト製膜、ホットメルト製膜を行ってもよい。以下、樹脂膜形成用組成物からなる層が基材上に形成された樹脂膜形成用組成物シートについて説明する。
【0040】
樹脂膜形成用組成物シートの基材としては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどの透明フィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、これらを着色したフィルム、不透明フィルムなどを用いることができる。
【0041】
樹脂膜形成用組成物シートは、各種の被着体に貼付され、被着体に所要の加工を施した後、樹脂膜形成用組成物層は、被着体に固着残存させて基材から剥離される。すなわち、樹脂膜形成用組成物層を、基材から被着体に転写する工程を含むプロセスに使用される。このため、基材の樹脂膜形成用組成物層に接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。下限値は通常25mN/m程度である。このような表面張力が低い基材は、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また基材の表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0042】
基材の剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0043】
上記の剥離剤を用いて基材の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、常温もしくは加熱または電子線硬化させたり、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などで積層体を形成すればよい。
【0044】
また、樹脂膜形成用組成物シートの基材は、上記のようなフィルム上にエネルギー線硬化型粘着剤層や、弱粘性の粘着剤層を設けた粘着シートを基材として用いてもよい。この基材としての粘着シート上に樹脂膜形成用組成物層を形成することにより、樹脂膜形成用組成物層を、基材から被着体に転写する工程を含むプロセスに使用することができる。
【0045】
基材の厚さは、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。また、樹脂膜形成用組成物層の厚みは、通常は2〜500μm、好ましくは6〜300μm、特に好ましくは10〜150μm程度である。
【0046】
樹脂膜形成用組成物シートの製造方法は、特に限定はされず、基材上に、樹脂膜形成用組成物を塗布乾燥することで製造してもよく、また樹脂膜形成用組成物層を別の剥離フィルム上に設け、これを上記基材に転写することで製造してもよい。樹脂膜形成用組成物は、上記各成分を適宜の割合で混合して得られる。混合に際しては、各成分を予め溶媒で希釈したものを用いてもよく、また混合時に溶媒を加えて粘度調整してもよい。
【0047】
次に本発明に係る樹脂膜形成用組成物シートの利用方法について、該シートをダイシング・ダイボンディング用接着シートとして用い、半導体チップを所定の基板等にダイボンドする工程を含む半導体装置の製造に適用した場合を例にとって説明する。
【0048】
本発明に係る半導体装置の製造方法では、上記評価方法を行い、その評価結果に基づいて樹脂膜を選択し、該樹脂膜を製造するための樹脂膜形成用組成物シートを得た後、該樹脂膜形成用組成物シートの組成物層に半導体ウエハを貼着し、該半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に該組成物層を固着残存させて基材から剥離し、該半導体チップを有機基板やリードフレームのダイパッド部上、またはチップを積層する場合に別の半導体チップ上に該組成物層を介して載置する工程を含む。樹脂膜形成用組成物層は、樹脂膜を形成するための前駆体膜であり、熱硬化やエネルギー線硬化などの適当な手段により樹脂膜となる。
【0049】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法について詳述する。
本発明に係る半導体装置の製造方法においては、まず、表面に回路が形成され、裏面が研削された半導体ウエハを準備する。
【0050】
本発明に係る半導体装置の製造方法に用いる半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、半導体ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚みは特に限定はされないが、通常は20〜500μm程度である。
【0051】
その後、必要に応じ、裏面研削時に生じた破砕層を除去する。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。破砕層の除去によりウエハが有していたゲッタリング機能は低下するが、本発明の樹脂膜形成用組成物シートを使用することで、得られる半導体装置には、ゲッタリング剤を含む樹脂膜が導入されるため、半導体装置自体にゲッタリング機能が付与される。したがって、本発明の半導体装置の製造方法は、特に破砕層を除去した半導体ウエハに対して好適に適用することができる。すなわち、本発明の半導体装置の製造方法は、破砕層の厚みを50nm以下、さらには30nm以下、特に10nm以下にまで低下した半導体ウエハに対して好適に適用することができる。
【0052】
次いで、リングフレームおよび半導体ウエハの裏面側を本発明に係る樹脂膜形成用組成物シートの樹脂膜形成用組成物層上に載置し、軽く押圧し、半導体ウエハを固定する。次いで、該組成物層にエネルギー線重合性化合物が配合されている場合には、組成物層に基材側からエネルギー線を照射し、エネルギー線重合性化合物を硬化し、組成物層の凝集力を上げ、組成物層と基材との間の接着力を低下させておく。照射されるエネルギー線としては、紫外線(UV)または電子線(EB)等が挙げられ、好ましくは紫外線が用いられる。次いで、ダイシングソーなどの切断手段を用いて、上記の半導体ウエハを切断し半導体チップを得る。この際の切断深さは、半導体ウエハの厚みと、組成物層の厚みとの合計およびダイシングソーの磨耗分を加味した深さにし、組成物層もチップと同サイズに切断する。なお、エネルギー線照射は、半導体ウエハの貼付後、半導体チップの剥離(ピックアップ)前のいずれの段階で行ってもよく、たとえばダイシングの後に行ってもよく、また下記のエキスパンド工程の後に行ってもよい。さらにエネルギー線照射を複数回に分けて行ってもよい。また、半導体ウエハの貼付前にエネルギー線照射を行ってもよい。
【0053】
次いで必要に応じ、シートのエキスパンドを行うと、半導体チップ間隔が拡張し、半導体チップのピックアップをさらに容易に行えるようになる。この際、組成物層と基材との間にずれが発生することになり、組成物層と基材との間の接着力が減少し、半導体チップのピックアップ性が向上する。このようにして半導体チップのピックアップを行うと、切断された組成物層を半導体チップ裏面に固着残存させて基材から剥離することができる。
【0054】
次いで組成物層を介して半導体チップを、チップ搭載部であるリードフレームのダイパッド上または別の半導体チップ(下段チップ)表面に載置する。チップ搭載部は、半導体チップを載置する前に加熱するか載置直後に加熱される。加熱温度は、通常は80〜200℃、好ましくは100〜180℃であり、加熱時間は、通常は0.1秒〜5分、好ましくは0.5秒〜3分であり、載置するときの圧力は、通常1kPa〜200MPaである。
【0055】
半導体チップをチップ搭載部に載置した後、必要に応じさらに加熱を行ってもよい。この際の加熱条件は、上記加熱温度の範囲であって、加熱時間は通常1〜180分、好ましくは10〜120分である。
【0056】
また、載置後の加熱処理は行わずに仮接着状態としておき、パッケージ製造において通常行われる樹脂封止での加熱を利用して組成物層を硬化させてもよい。このような工程を経ることで、組成物層が硬化し樹脂膜となり、半導体チップとチップ搭載部とを樹脂膜を介して強固に接着することができる。この場合、樹脂膜は、接着膜としての役割を有する。樹脂膜は本発明に係る評価方法により高いゲッタリング性能を有するものが選択できるため、得られる半導体装置の信頼性の向上に寄与する。
【0057】
また、上記樹脂膜形成用組成物シートは、半導体チップの裏面に保護膜を形成するために用いることもできる。この場合、樹脂膜は、保護膜としての役割を有する。使用方法としては、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、上記樹脂膜形成用組成物シートの樹脂膜形成用組成物層を貼付し、樹脂膜形成用組成物層を所定の手段で硬化して樹脂膜とし、裏面に樹脂膜を有する半導体ウエハを得る。得られたウエハをダイシング等の方法で切断し、裏面に樹脂膜を有する半導体チップを得る。この方法について、樹脂膜形成用組成物からなる層が基材上に剥離可能に形成された樹脂膜形成用組成物シートの使用を例にとり説明する。
保護膜としての樹脂膜の形成法は、好ましくは、以下の工程(1)〜(3)をさらに含み、工程(1)〜(3)を任意の順で行うことを特徴としている。
工程(1):樹脂膜形成用組成物層と基材とを剥離、
工程(2):樹脂膜形成用組成物層を硬化し、樹脂膜を得る、
工程(3):半導体ウエハおよび樹脂膜形成用組成物層(または樹脂膜)をダイシング。
【0058】
半導体ウエハは前記と同様であり、好ましくは破砕層が除去された極薄ウエハが用いられる。
【0059】
半導体ウエハの裏面に、上記樹脂膜形成用組成物シートの組成物層を貼付する。その後、工程(1)〜(3)を任意の順で行う。このプロセスの詳細については、特開2002−280329号公報に詳述されている。一例として、工程(1)、(2)、(3)の順で行う場合について説明する。
【0060】
まず、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、上記樹脂膜形成用組成物シートの組成物層を貼付する。次いで組成物層から基材を剥離し、半導体ウエハと組成物層との積層体を得る。次いで樹脂膜形成用組成物層を所定の手段で硬化し、ウエハの全面に樹脂膜を形成する。樹脂膜形成用組成物層には、一般に熱硬化樹脂やエネルギー線硬化樹脂などの硬化性成分が含まれているため、熱硬化やエネルギー線硬化により樹脂膜形成用組成物が硬化し、樹脂膜が得られる。この結果、ウエハ裏面に硬化樹脂からなる樹脂膜が形成され、ウエハ単独の場合と比べて強度が向上するので、薄くなったウエハの破損を低減でき、さらに樹脂膜に含まれるゲッタリング剤によりゲッタリング機能が付与される。
【0061】
次いで、半導体ウエハと樹脂膜との積層体を、ウエハ表面に形成された回路毎にダイシングする。ダイシングは、ウエハと樹脂膜をともに切断するように行われる。ウエハのダイシングは、ダイシングシートを用いた常法により行われる。この結果、裏面に樹脂膜を有する半導体チップが得られる。
【0062】
最後に、ダイシングされたチップをコレット等の汎用手段によりピックアップすることで、裏面に樹脂膜を有する半導体チップが得られる。このような本発明によれば、均一性の高い樹脂膜を、チップ裏面に簡便に形成でき、ダイシング工程やパッケージングの後のクラックが発生しにくくなる。さらに得られる半導体装置にはゲッタリング機能が付与される。そして、半導体チップをフェースダウン方式で所定の基台上に実装することで半導体装置を製造することができる。また、裏面に樹脂膜を有する半導体チップを、ダイパッド部または別の半導体チップなどの他の部材上(チップ搭載部上)に接着することで、半導体装置を製造することもできる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<樹脂膜形成用組成物シートの製造>
樹脂膜を形成するための各成分を下記に示す。
(A)アクリル重合体:n−ブチルアクリレート55質量部、メチルアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート20質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部からなる共重合体(重量平均分子量:90万、ガラス転移温度:−28℃)
(B)エポキシ系熱硬化性樹脂:
(B1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:jER828、エポキシ当量235g/eq)
(B2)ノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製:EOCN−104S、エポキシ当量218g/eq)
(C)熱硬化剤:ノボラック型フェノール樹脂(DIC製:TD−2131、フェノール性水酸基当量103g/eq)
(D)ゲッタリング剤:協和化学工業社製KW-2200(マグネシウムとアルミニウムの酸化物からなるハイドロタルサイト、平均粒径1μm)
(E)硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、キュアゾール2PHZ−PW)
(F)エネルギー線重合性化合物:多官能アクリレートオリゴマー(新中村化学社製、NKエステルA−DCP)
(G)光重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製:イルガキュア184)
(H)カップリング剤:シランカップリング剤(信越化学社製:KBE−403)
【0064】
上記成分Aを100質量部、B1を300質量部、B2を300質量部、Cを320質量部、Dを280質量部、Eを4.5質量部、Fを85質量部、Gを3.3質量部、Hを13質量部の割合で、メチルエチルケトン中で混合し、得られた樹脂膜形成用組成物のメチルエチルケトン溶液(固形濃度61重量%)を、シリコーンで剥離処理された剥離シート(リンテック株式会社製、SP−PET3811、厚さ38μm)の剥離処理面上に乾燥後20μmの厚みになるように塗布、乾燥(乾燥条件:オーブンにて100℃、1分間)した。次に、基材(ポリエチレンフィルム、厚さ100μm、表面張力33mN/m)と貼り合わせ、樹脂膜形成用組成物層を基材に転写し、基材上に樹脂膜形成用組成物層を有する樹脂膜形成用組成物シートを得た。
【0065】
<ゲッタリング性能評価>
シリコンウエハの表面に表面保護シート(リンテック社製BGテープ、E-8180HR)を貼付し、裏面研削装置(ディスコ社製、DGP8760)を用いて、ウエハ裏面を研磨及びドライポリッシュ処理した(200mm径、厚さ75μm、破砕層の厚み10nm)。
【0066】
シリコンウエハのドライポリッシュ処理した面(ウエハ裏面)に、上記で準備した樹脂膜形成用組成物シートの組成物層を40℃で貼付した。30分後、紫外線照射装置(リンテック社製、Adwill RAD−2000 m/12)を用いて基材面から紫外線照射(230mW/cm、120mJ/cm)を行い、基材を剥離した。その後、組成物層を熱硬化(120℃、30分および140℃、30分)し、樹脂膜とシリコンウエハとの積層体を得た。
【0067】
次いで、積層体のシリコンウエハ面(ウエハ表面)に、塩化銅(II)粉末(関東化学社製、品名:塩化銅(II)二水和物)1gを均一に散布し、擬似リフロー条件(300℃、30分)に投入し、シリコンウエハ内に銅イオンを拡散させた。その後、ウエハ表面に弱粘着性テープ(紫外線硬化後のリンテック社製Adwill D−675)を貼付・剥離を繰り返し、ウエハ表面から塩化銅(II)粉末を除去した。
【0068】
樹脂膜表面をふっ酸にて事前洗浄し、表面に付着したコンタミ(汚染物質)を除去した。その後、ウエハ外周10mmをテフロン(登録商標)製治具により挟み込む形でマスキングし、樹脂膜表面を硝酸/過酸化水素水混合液(比率5:2)を用いて加熱しながらエッチングした。得られたエッチング液を純水を用いて50mlに調整し、銅イオン濃度測定用試料とした。なお、試料調製は、クリーンルーム(クラス100)内に設置したクリーンドラフト(クラス10)内で実施した。
【0069】
ICP−MS測定により測定用試料中の銅イオンの濃度を定量測定した。
装置:パーキンエルマー社製 ELAN6100DRC Plus
条件等 :プラズマパワー1500W
【0070】
ここで検出された銅イオン濃度は、124ppm(樹脂単位重量あたりの銅原子重量分率)であった。定量される銅イオンは、樹脂膜に捕捉された銅イオンである。したがって、定量される銅イオンが多いほど、樹脂膜のゲッタリング性能が高く、銅イオンが少ないほど、樹脂膜のゲッタリング性能が低いことを意味する。
【0071】
(実施例2)
実施例1と同様にウエハ表面から塩化銅(II)粉末が除去された積層体を用いた。
この積層体を、硝酸/ふっ酸混合液(比率3:1)で満たした浴に投入し、シリコンウエハ部分を完全に溶解した。その後、残った樹脂膜を硝酸/過酸化水素水混合液(比率5:2)10mlに投入し、30分間マイクロウェーブ分解を行った。得られた分解液を純水を用いて50mlに調整し、銅イオン濃度測定用試料としたこと以外は実施例1と同様に銅イオンの濃度を測定した。なお、試料調整は、クリーンルーム(クラス100)内に設置したクリーンドラフト(クラス10)内で実施した。ここで検出された銅イオン量は、72ppmであった。
【0072】
(実施例3)
ゲッタリング剤を使用しない以外は、実施例1と同様にして、樹脂膜を形成し、評価した。この樹脂膜は、ゲッタリング性能をほとんど有しないと考えられる。測定用試料から検出された銅イオン量は3ppmであった。
【0073】
(実施例4)
ゲッタリング剤を使用しない以外は、実施例2と同様にして、樹脂膜を形成し、評価した。この樹脂膜は、ゲッタリング性能をほとんど有しないと考えられる。測定用試料から検出された銅イオン量は2ppmであった。
【0074】
(実施例5)
シリコンウエハ面を銅汚染していない積層体を用いたこと以外は実施例1と同様にして分析した。測定用試料から銅イオン量は検出されなかった(定量下限値である0.3ppm未満)。
【0075】
上記より、ゲッタリング性能を有する樹脂膜(実施例1,2)を使用した場合には、定量される銅イオン量が多いことがわかる。これは、樹脂膜によりウエハ中の銅イオンが捕捉されたためと考えられる。一方、樹脂膜がゲッタリング性能を有しない場合(実施例3,4)、およびシリコンウエハ面を銅汚染していない積層体を用いた場合(実施例5)には、ともに定量される銅イオン量が少ない。したがって、本発明の方法により、樹脂膜の有するゲッタリング性能を的確に評価できることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂膜のゲッタリング性能の評価方法であって、
該樹脂膜をシリコンウエハの片面に形成する工程、
該樹脂膜とシリコンウエハとの積層体を200℃以上に加熱する工程、および
該樹脂膜中における重金属元素量を定量する工程を含む、
樹脂膜のゲッタリング性能の評価方法。
【請求項2】
該シリコンウエハが、銅により汚染処理されたシリコンウエハである請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
該積層体の加熱温度が260℃以上である請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
該シリコンウエハが、片面を研磨した後に、該面に形成された破砕層を除去したシリコンウエハである、請求項1〜3の何れかに記載の評価方法。
【請求項5】
該樹脂膜中における重金属元素量の定量を、樹脂膜を完全に溶解して得た溶液中の重金属イオン量を定量することで行う、請求項1〜4の何れかに記載の評価方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の評価方法に基づいて樹脂膜を選択する工程、
該選択された樹脂膜を形成しうる成分を含む樹脂膜形成用組成物を調製する工程、
該樹脂膜形成用組成物からなる層を、基材上に剥離可能に形成する工程を含む樹脂膜形成用組成物シートの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法によって得られた樹脂膜形成用組成物シートの樹脂膜形成用組成物層に半導体ウエハを貼着する工程、該半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に該樹脂膜形成用組成物層を固着残存させて基材から剥離する工程、該半導体チップをダイパッド部上、または別の半導体チップ上に該樹脂膜形成用組成物層を介して載置する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項8】
表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、請求項6に記載の製造方法によって得られた樹脂膜形成用組成物シートの樹脂膜形成用組成物層を貼付する工程、樹脂膜形成用組成物層から樹脂膜を形成し、裏面に樹脂膜を有する半導体ウエハを得る工程を含む半導体ウエハの製造方法。

【公開番号】特開2012−216623(P2012−216623A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79935(P2011−79935)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】