説明

樹脂袋の品質評価方法および樹脂袋の製造方法

【課題】 簡便な破袋強度の評価方法により樹脂袋の品質を評価する方法、および、簡便な生産管理方法により樹脂袋を製造する方法を提供すること。
【解決手段】 フィルムをヒートシールしてなる樹脂袋の品質評価方法であって、該樹脂袋のヒートシール部を0.1〜10m/秒の速度で剥離して剥離エネルギーを測定する工程と、該剥離エネルギーを用いて、あらかじめ作成された剥離エネルギーと破袋強度との関係から樹脂袋の破袋強度を評価する工程とを有することを特徴とする樹脂袋の品質評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂袋の品質を評価する方法および樹脂袋の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機肥料、合成樹脂、米等の重量物;冷凍食品、レトルト食品等の食品;輸液、血液等の医療品;洗剤等の日用雑貨などの包装に用いられる袋としては、樹脂フィルムをヒートシールしてなる樹脂袋が多く用いられており、該樹脂袋としては、3方シール袋、ピロー袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ袋など、種々の形状のものが使用されている。これら樹脂袋の強度の評価としては、内容物を充填した袋を相当数作成した後、該袋を所定の高さから所定回数落下させ、破袋した数や破袋した時の落袋回数などを求める、いわゆる落袋試験が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−205362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の落袋試験は、手間と時間がかかるため、十分満足のいくものではなかった。
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、簡便な破袋強度の評価方法により樹脂袋の品質を評価する方法、および、簡便な生産管理方法により樹脂袋を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一は、フィルムをヒートシールしてなる樹脂袋の品質評価方法であって、該樹脂袋のヒートシール部を0.1〜10m/秒の速度で剥離して剥離エネルギーを測定する工程と、該剥離エネルギーを用いて、あらかじめ作成された剥離エネルギーと破袋強度との関係から樹脂袋の破袋強度を評価する工程とを有することを特徴とする樹脂袋の品質評価方法にかかるものである。
【0006】
本発明の第二は、フィルムをヒートシールしてなる樹脂袋の製造方法であって、生産された樹脂袋のヒートシール部を0.1〜10m/秒の速度で剥離して剥離エネルギーを測定し、該剥離エネルギーの値に応じて樹脂袋の生産工程を制御する生産管理を行うことを特徴とする樹脂袋の製造方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、簡便な破袋強度の評価方法により樹脂袋の品質を評価する方法、および、簡便な生産管理方法により樹脂袋を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の樹脂袋の製造に用いられるフィルムは、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層を有する。該熱可塑性樹脂は、ヒートシール可能な樹脂であればよく、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、ブテン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、
エチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−メタアクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂等をあげることができる。
【0009】
本発明の樹脂袋の製造に用いられるフィルムは、単層フィルムであっても、多層フィルムであってもよく、また、ガスバリヤー層を設けてもよい。該ガスバリヤー層には、アルミニウム;珪素酸化物などの無機酸化物;エチレンビニルアルコール共重合体樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂等が用いられる。
【0010】
本発明に用いられる樹脂袋は、フィルムをヒートシールしてなる袋であり、樹脂袋の形状としては、3方シール包装袋、ピロー包装袋、ガゼット包装袋、スタンディングパウチ袋等の種々の形状があげられる。また、該包装袋の製造方法について特に制限はなく、公知の包装袋の製造機が用いられる。なお、ここでいうヒートシールには、溶断シールも含むものである。
【0011】
本発明の樹脂袋の品質評価方法では、樹脂袋のヒートシール部を剥離して、剥離エネルギーを求める。剥離する際に用いる試験片は、通常、袋のヒートシール部から、任意に選択された形状に切り出して作成されたものが用いられる。該ヒートシール部としては、袋胴部のヒートシール部を用いてもよく、袋底部のヒートシール部を用いてもよい。
【0012】
剥離する際の速度は0.1〜10m/秒である。剥離する速度が遅すぎると、樹脂袋の破袋強度と剥離エネルギーとの相関が低下することがあり、また、剥離する速度を速くしすぎると、経済性が低下することがある。好ましくは0.5〜5m/秒である。なお、剥離は、公知の引張試験機を用いて行うことができ、通常、180度方向に定速度で剥離を行う。
【0013】
剥離エネルギーは、樹脂袋のヒートシール部を剥離するに要するエネルギーであり、樹脂袋のヒートシール部を剥離して得られる剥離応力−剥離距離曲線から求められる。剥離エネルギーを求める具体例としては、樹脂袋のヒートシール部の剥離において、x軸を剥離距離、y軸を剥離応力として、剥離応力−剥離距離曲線を測定し、得られた剥離応力−剥離距離曲線から、剥離応力−剥離距離曲線の終点(剥離終了時の点)を通りy軸(剥離距離が0の直線)に平行な直線と、x軸(剥離応力が0の直線)と、剥離応力−剥離距離曲線とに囲まれる部分の面積を算出する方法があげられる。
【0014】
上記剥離エネルギーは、樹脂袋の落袋強度との相関が高いため、樹脂袋の破袋強度を評価することにもちいられる。具体的には、剥離エネルギーと破袋強度との関係をあらかじめ作成しておき、評価対象とする樹脂袋の剥離エネルギーを測定した後、あらかじめ作成された剥離エネルギーと破袋強度との関係と、測定された剥離エネルギーとから、樹脂袋の破袋強度を評価する。樹脂袋の破袋強度の測定は、落袋試験等の公知の方法により行われ、落袋試験の条件(例えば、温度、落下高さ、落下回数、充填物の種類、充填物の充填量等)は、評価対象とする樹脂袋の種類、用途により、適宜決定される。また、剥離エネルギーと破袋強度との関係は、通常、公知の相関式を用いて表される。
【0015】
また、剥離エネルギーは、樹脂袋の製造における生産管理に用いられる。具体的には、生産された樹脂袋の剥離エネルギーを測定し、該剥離エネルギーの値により、樹脂袋の製袋条件(例えば、ヒートシール温度、ヒートシール時間、ヒートシール圧力等)を変更し、生産工程を制御する樹脂袋の製造方法があげられる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
【0017】
I.物性測定方法
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
(1)密度(単位:kg/m3)
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料には、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った。
【0018】
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法により測定した。
【0019】
(3)破袋強度(単位:%)
スタンディングパウチ袋に水を600g充填し、袋から空気を抜き、口をヒートシールして縦20cm×横15cm×マチ幅10cmの試験袋を作成した。1つの試験袋を、試験袋の底面が下向きになるように、1.8mの高さからコンクリート床面に垂直に40回落下させて該試験袋の破れを調べた。10袋の試験袋についてこの落下操作を行い、破れが発生した試験袋の数(破袋数)を求め、下記式から破袋率を求めた。この値が小さいほど破袋強度が強いことを示す。
破袋率 = 破れが発生した試験袋の数/10×100
【0020】
(4)剥離エネルギー(単位:mN・m)
ダンベルにより、スタンディングパウチ袋のサイドシール部分を打ち抜いて試験片を作成した。打ち抜き時のダンベルの位置は、ダンベルがサイドシール部分の長尺方向に対して直角であり、ダンベルの中央部が帯状のシール部の内容物側端と一致するようにした。試験片のシール部を、引張試験機(株式会社エー・アンド・ディ社製 CIT−150T−20)により、サイドシール部分の長尺方向に対して直角の方向が剥離方向となるようにして、所定の速度(引張速度)で、180度方向に剥離させて、x軸を剥離距離、y軸を剥離応力として、剥離応力−剥離距離曲線を測定した。
得られた剥離応力−剥離距離曲線を用い、剥離応力−剥離距離曲線の終点(剥離終了時の点)を通りy軸(剥離距離が0の直線)に平行な直線と、x軸(剥離応力が0の直線)と、剥離応力−剥離距離曲線とに囲まれる部分の面積から、剥離エネルギー(単位:mN・m)を求めた。
【0021】
II.使用樹脂
LL−1:直鎖状低密度ポリエチレン(コモノマー:1−ヘキセン、密度:925kg/m3、MFR:4g/10分)
LL−2:直鎖状低密度ポリエチレン(コモノマー:1−ヘキセン、密度:912kg/m3、MFR:3.8g/10分)
LL−3:直鎖状低密度ポリエチレン(コモノマー:1−ヘキセン、密度:940kg/m3、MFR:2.8g/10分)
LL−4:直鎖状低密度ポリエチレン(コモノマー:1−ブテン、密度:915kg/m3、MFR:0.8g/10分)
LD :高圧法低密度ポリエチレン(密度:919kg/m3、MFR:2g/10分)
【0022】
III.試験用サンプルの作成
下記方法により、3種類のサンプルとして、スタンディングパウチ袋を作成した。
(1)サンプルA
[フィルムの作成]
スクリュー径40mmφの押出機を内層用押出機および外層用押出機として夫々有し、スクリュー径50mmφの押出機を中間層用押出機として有する3層共押出Tダイ加工機(ダイ幅600mm)を用いて、押出温度:230℃、チルロール温度:75℃、引取速度:13m/分、フィルム厚み:120μm、内層/中間層/外層厚み比:1/3/1、コロナ処理:内層面に0.2kVの加工条件で、3層共押出フィルムを成形した。フィルム成形では、内層用樹脂として、LL−1を100重量部と、アンチブロッキング剤を0.5重量部と、滑剤を0.04重量部と、酸化防止剤を0.09重量部とを配合した樹脂組成物を、中間層用樹脂として、LL−2を100重量部と、滑剤を0.04重量部と、酸化防止剤を0.19重量部とを配合した樹脂組成物を、外層用樹脂として、LL−1を70重量部と、LDを30重量部と、アンチブロッキング剤を0.6重量部と、滑剤を0.04重量部と、酸化防止剤を0.05重量部とを配合した樹脂組成物を用いた。
【0023】
得られた3層共押出フィルムの内層側に、二軸延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)を、二液硬化型ポリウレタン系接着剤(武田薬品工業(株)製タケラックA310/タケネートA−3/酢酸エチル=12/1/32(重量比))によりドライラミネートし、40℃で48時間エージングを行った。
【0024】
[スタンディングパウチ袋の作成]
ドライラミネートにより得た積層フィルムを、スタンディングパウチ製袋機(西部機械(株)製 SBM−350−SST型)を用いて、シール温度:160℃、シール時間:0.8秒、ライン速度:30袋/分の製袋条件で、縦25cm×横15cm×マチ幅10cmのスタンディングパウチ袋に製袋した。
【0025】
(2)サンプルB
中間層用樹脂として、LL−3を100重量部と、滑剤を0.04重量部と、酸化防止剤を0.19重量部とを配合した樹脂組成物を用いる以外は、サンプルAの作成と同様に行った。
【0026】
(3)サンプルC
内層用樹脂、中間層用樹脂および外層用樹脂全てに、LL−4を70重量部と、LDを30重量部と、酸化防止剤を0.26部と、滑剤を0.03重量部と、アンチブロッキング剤を0.6重量部とを配合した樹脂組成物を用い、共押出フィルムの厚みを150μmとする以外は、サンプルAの作成と同様に行った。
【0027】
III.落袋強度の評価
実施例1
[破袋強度の測定]
サンプルA、B、Cの落袋試験を行ったところ、サンプルAの破袋数は1袋、サンプルBの破袋数は5袋、サンプルCの破袋数は0袋であった。破袋率を算出したところ、サンプルAの破袋率は10%、サンプルBの破袋率は50%、サンプルCの破袋率は0%であった。結果を表1に示した。
【0028】
[剥離エネルギーの測定]
サンプルA、B、Cのサイドシール部分をASTM D1822−99に記載のS型ダンベルで打ち抜き、剥離エネルギー測定用試験片を作成した。該試験片のシール部を、チャック間距離20mm、3.8m/秒の速度で、180度方向に剥離させて、剥離エネルギーを求めた。結果を表2に示し、破袋率と剥離エネルギーとの関係を図1に示した。図1の破袋率と剥離エネルギーとの関係には相関があり、本発明の剥離エネルギーを用いて、図1より破袋強度を評価することができる。
【0029】
実施例2
剥離する際の速度を2m/秒とする以外は実施例1と同様に剥離エネルギーの測定を行った。結果を表2に示し、破袋率と剥離エネルギーとの関係を図1に示した。図1の破袋率と剥離エネルギーとの関係には相関があり、本発明の剥離エネルギーを用いて、図1より破袋強度を評価することができる。
【0030】
実施例3
剥離する際の速度を1m/秒とする以外は実施例1と同様に剥離エネルギーの測定を行った。結果を表2に示し、破袋率と剥離エネルギーとの関係を図1に示した。図1の破袋率と剥離エネルギーとの関係には相関があり、本発明の剥離エネルギーを用いて、図1より破袋強度を評価することができる。
【0031】
比較例1
JIS K7127―1991附属書の4号形試験片用ダンベルを用い、チャック間距離80mm、剥離する際の速度を0.0083m/秒(500mm/分)とする以外は、実施例1と同様に剥離エネルギーの測定を行った。結果を表2に示し、破袋率と剥離エネルギーとの関係を図2に示した。図2の破袋率と剥離エネルギーとの関係には相関がない。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1〜3で得られた破袋率と剥離エネルギーとの関係を示すグラフである。
【図2】本発明の比較例1で得られた破袋率と剥離エネルギーとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
1:実施例1
2:実施例2
3:実施例3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムをヒートシールしてなる樹脂袋の品質評価方法であって、該樹脂袋のヒートシール部を0.1〜10m/秒の速度で剥離して剥離エネルギーを測定する工程と、該剥離エネルギーを用いて、あらかじめ作成された剥離エネルギーと破袋強度との関係から樹脂袋の破袋強度を評価する工程とを有することを特徴とする樹脂袋の品質評価方法。
【請求項2】
フィルムをヒートシールしてなる樹脂袋の製造方法であって、生産された樹脂袋のヒートシール部を0.1〜10m/秒の速度で剥離して剥離エネルギーを測定し、該剥離エネルギーの値に応じて樹脂袋の生産工程を制御する生産管理を行うことを特徴とする樹脂袋の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−168752(P2006−168752A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360989(P2004−360989)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】