樹脂製のマイクロニードル
光反応性樹脂の第1層を作業面上に配置する段階と、前記第1層に対して選択的に光を放射し、前記第1層が少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域を備える段階を備える方法である。該方法は、前記第1層を展開し、前記少なくとも1つの照射領域と前記少なくとも1つの非照射領域のうち1つを取り除き、少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分が、少なくとも部分的にマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階を備える。複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、前記マイクロニードルのそれぞれが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることを特徴とするマイクロニードル構造も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルに関連し、特に光反応性材料から形成されるマイクロニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルは従来からよく知られている。まず、Gerstelにより1976年6月に出願された米国特許第3,964,482号によるものが挙げられる。しかしながら、廉価な生産方法が見出されていなかったこと及び適切な製造材料を見出すことが困難であったため、マイクロニードル技術の市販化は困難なものであった。適切な製造材料なしでは、強度が高いマイクロニードルを作ることができず、また組織内に侵入させるという課題を解決することもできず、また簡単に折れてしまうという問題を招来する。
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,964,482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、樹脂製のマイクロニードルの製造は、ニードル構造を形成するためのモールドを用いた技術で行われている。これらの方法は固有の問題を備える。即ち、中空のマイクロニードルを製造することが困難であり、これに起因して、流体輸送に対してあまり有益でないマイクロニードルとなるというものである。従来技術に係る方法は、一般的に生産コストが高くなるものであり、生産されたマイクロニードルは脆弱なものとなる。一般的に、従来技術に係る経皮型アプリケーションにおいて用いられるマイクロニードルは、十分な頑健性を備えておらず、それ故、皮膚内へ侵入されるときに折れてしまうことがあった。或いは、マイクロニードルが十分に尖っておらず、皮膚内に効率的に侵入できないという問題があった。
それゆえ、廉価にマイクロニードルを製造する方法、中空及び非中空であるか否かを問わず頑健で鋭いマイクロニードルを製造する方法が必要である。このようなマイクロニードルは薬剤の搬送や診断に好適に使用可能なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は樹脂製のマイクロニードルの構造及びその製造方法に関するものである。
本発明の開示によれば、(a)光反応性樹脂の第1層を作業面上に配置する段階と、(b)前記第1層に対して選択的に光を放射し、前記第1層が少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域を備える段階と、(c)前記第1層を展開し、前記少なくとも1つの照射領域と前記少なくとも1つの非照射領域のうち1つを取り除き、少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分が、少なくとも部分的にマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階からなることを特徴とするマイクロニードルの製造方法が提供される。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードル構造の前記少なくとも一部分が、少なくとも部分的に形成された複数のマイクロニードルを含むことである。
本発明の他の特徴は、前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つのそれぞれが、その内部にチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つのそれぞれが、傾斜した端面を備えることである。
本発明の他の特徴は、前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つが異なる高さを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードル構造の前記少なくも一部分が、少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルを含み、該マイクロニードルがその内部にチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの前記少なくとも一部分が少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルを含み、該マイクロニードルが傾斜した端面を備えることである。
【0006】
本発明の他の特徴は、前記展開する段階の後に、(a)前記少なくとも一つの残存領域の周囲のうち少なくとも一部分に充填剤を配する段階と、(b)(i)前記少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分と、(ii)前記充填剤が配されている少なくとも一部分に光反応性樹脂の第2層を配する段階と、(c)前記第2層に光を放射する段階と、(d)前記第2層を展開し、前記第2層が前記マイクロニードル構造の少なくとも一部分をなすベース部を形成することである。
本発明の他の特徴は、前記ベース部が、その内部に少なくとも1つのチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記第2層に光を放射する段階が、前記第2層に選択的に光を放射することによって行われることである。
本発明の他の特徴は、前記作業面に少なくとも1つの溝部を形成する段階を備え、前記マイクロニードルの前記少なくとも一部分が前記少なくとも1つの溝部内に形成され、前記少なくとも1つの溝部が、前記マイクロニードル構造の少なくとも1つの傾斜した端面を定義することである。
本発明の他の特徴は、前記放射する段階が、可視光線を作り出す光源を用いて行われることである。
本発明の他の特徴は、前記光を放射する段階が紫外線を用いて行われることである。
本発明の他の特徴は、前記光を放射する段階がX線を用いて行われることである。
本発明の他の特徴は、光源を配する段階を更に備え、該光源は、前記光を放射する段階で用いられ、前記光源と前記作業面との相対的位置関係が、前記マイクロニードル構造の少なくとも1つの傾斜した端面を少なくとも部分的に定義することである。
【0007】
本発明の開示によれば、複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、前記マイクロニードルのそれぞれが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることを特徴とするマイクロニードル構造が提供される。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルのそれぞれの大部分が、前記光反応性樹脂から形成されることである。
本発明の他の特徴は、基礎部分を備え、該基礎部分が前記マイクロニードルに対するベース部を形成し、前記基礎部分が少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることである。
本発明の他の特徴は、前記基礎部分が、その内部に少なくとも1つのチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、その内部にチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、傾斜した端面を備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、互いに異なる高さを備えることである。
【0008】
本発明の開示によれば、マイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、
前記マイクロニードルが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成され、前記マイクロニードルが、その内部にチャネルを備えることを特徴とするマイクロニードル構造が提供される。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの大部分が前記光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項23記載のマイクロニードル構造である。
【0009】
本発明の開示によれば、マイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、前記マイクロニードルが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成され、前記マイクロニードルが傾斜した端面を備えることを特徴とするマイクロニードル構造が提供される。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの大部分が前記光反応性樹脂から形成されることである。
【0010】
本発明の開示によれば、(a)材料の層を作業面に配する段階と、(b)前記層を加工して、少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域のうち少なくとも1つを選択的に除去し、少なくとも1つの残存領域のうち少なくとも一部分がマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階を備え、前記加工する段階が、光の放射を用いて前記層に反応を生じせしめ、物理的変化及び化学的変化のうち少なくとも1つを前記層の材料に引き起こさせることを特徴とするマイクロニードルの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る実施形態を、以下に、図を参照しつつ説明する。
本発明は樹脂マイクロニードルの構造およびその製造方法に関する。
【0012】
本発明による樹脂マイクロニードル構造の原理および製造方法は図面と付随する説明を参照するとよりよく理解されうる。
【0013】
“Process development for polymer needles by using SU-8 technology and silicon molding techniques”(Dominique Maria Altpeter of Mesa+Institute, University of Twente, Enschede, Netherlands)という出版物が、本発明は殆どここにおいて全て発表されているといえるくらいに、あらゆる目的で参照され、組み込まれている。
【0014】
図1を説明する。該図はマイクロニードル構造(10)の概略斜視図である。該構造は本発明の好ましい実施形態に沿って操作可能であるように、構築されている。マイクロニードル構造(10)は、複数のマイクロニードル(12)及び基礎部分(14)からなり、該基礎部分はマイクロニードル(12)のベース部としての役割をもつ。マイクロニードル(12)及び基礎部分(14)はそれぞれ、その最低一部分、通常は大部分が、光反応性樹脂から形成され、マイクロニードル(12)は、通常すべて光反応性樹脂から形成される。或いは、使用する光反応性樹脂によって、マイクロニードル(12)は、マイクロニードル(12)が生体適合性を備えるようにする材料によってコーティングされる。或いは、マイクロニードル(12)は、電気化学的手法を用いて、導電性材料、たとえばチタン、金、アルミニウムによってコーティングされる。これらの導電性材料でコーティングされたマイクロニードルは診断用に利用可能である。その際には、マイクロニードル(12)は、電極としての役割を果たす。もしくは、これらのコーティングされたニードルは、電気泳動を利用して、マイクロニードル(12)間で電流を伝えることにより薬剤の運搬を強化する。光反応性樹脂は、図10を参照してより詳しく論じられる。各マイクロニードル(12)は通常その内部にチャネルを備える。しかしながら、マイクロニードル(12)はその内部にチャネルを、或いは備えないように形成されてもよい。基礎部分(14)は、通常その内部に、マイクロニードル(12)の各チャネルに対応するチャネルを備える。それにより、治療薬が基礎部(14)のチャネルを通って、マイクロニードル(12)のチャネルを抜け、患者の皮膚内に運ばれることが可能となる。加えて、該2つのチャンネルは、試料採取および/あるいは収集の目的で、体液を抜き取るためにも利用可能である。加えて、各マイクロニードル(12)は、最低1つの傾斜した端面を備え、該端面はマイクロニードル(12)に皮膚を貫通するための鋭い先端をもたらす。しかしながら、マイクロニードル(12)は、傾斜した端面を或いは備えないように形成されてもよい。或いは、マイクロニードル構造(10)のマイクロニードル(12)は、マイクロニードル(12)が様々な高さをもつように形成される。これらの特徴、およびその他の特徴、また工業生産の方法が、図2乃至図19を参照して、より詳しく説明される。
【0015】
図2を説明する。該図は概略断面図であり、シリコン・ウェハ(16)を示す。該シリコン・ウェハは、窒化珪素の薄い層でコーティングされており、該窒化珪素は図1のマイクロニードル構造を構築する際に用いられる。ウェハ(16)は、作業面として用いられ、その上でマイクロニードル構造(10)が形成される。最低1つの溝部(20)(図7)がウェハ(16)内に形成される。マイクロニードル(12)の前記端部は溝部(20)の中で形成される。溝部(20)は、マイクロニードル(12)の1つ以上の傾斜した端面を定義する。溝部(20)の形状は、図2乃至図7により詳しく示される。最初にウェハ(16)は、洗浄され、全ての塵および汚染を取り除かれる。該洗浄はアルコール・ベースの材料を用いて行われ、空気乾燥される。窒化珪素の層(18)がウェハ(16)上に配される。窒化珪素の層(18)の厚さは、通常300nmである。このコーティングは、LPCVD工程を用いて行われる。窒化珪素の層(18)はその後、ウェット・エッチングのためのマスクとして用いられる。(図6)
【0016】
図3を説明する。該図は概略断面図であり、図2のウェハを以下の工程を経た後の状態で示す。フォトレジストの層(22)は窒化珪素の層(18)の表面にコーティングされる。フォトレジストの層(22)に適する材料は、当分野の技術者に既知である。
【0017】
図4を説明する。該図は概略断面図で、図3のウェハ(16)を以下の工程を経た後の状態で示す。フォトレジストの層(22)は、KOHマスク(図には示さず)を通して露光される。KOHマスクは、フォトレジストの層(22)が展開される際に、一連の平行なストリップ溝(24)が、フォトレジストの層(22)内のウェハ(16)上に形成されるように配置される。この工程並びに展開技術に適した光源は、当分野の技術者に既知である。
【0018】
図5を説明する。該図は概略断面図であり、図4のウェハ(16)を以下の工程を経た後の状態で示す。プラズマ・エッチングが行われ、一連の平行なストリップ溝(26)が窒化珪素の層(18)内に作られる。
【0019】
図6を説明する。該図は概略断面図であり、図5のウェハ(16)を以下の工程を経た後の状態で示す。ウェハ(16)に対してウェット・エッチングが行われ、溝部(20)が平行なストリップ溝(26)(図5)の位置に作られる。該溝部には窒化珪素の層(18)からなる保護層が配されていない。ウェット・エッチング工程は、ウェハ(16)を化学液に短時間浸すことにより行われる。たとえば、THEMA或いはKOHを用いる。このウェット・エッチング工程では、ウェハ(16)の結晶面がエッチングされ、珪素ウェハ内に溝部(20)が作られる。上述のごとく、図2を参照して、溝部(20)は作業面としての役割を果たし、その上では、マイクロニードル(12)の先端が形成され、該先端が少なくとも1つの傾斜した端面を備えるようにされる。
【0020】
図7を説明する。該図は概略断面図であり、図6のウェハ(16)が以下の工程を経た後の状態を示す。窒化珪素の薄い層(28)が、該ウェハ上に配される。該薄い層は、後の段階でKOH化学物質を使用する際に、ウェハ(16)を保護する。ポリシリコンの層(図には示さず)はその後、LPCVD工程を用いて、窒化珪素の層(28)の表面上に配される。該ポリシリコンの層は、マイクロニードル構造(10)をウェハから取り出しやすくする。これについては、以下で図19を参照してより詳しく説明される。
【0021】
図8を説明する。該図は概略断面図であり、図7のウェハ(16)が以下の工程を経た後の状態を示す。光反応性樹脂の厚い層(40)(フォトレジスト)、たとえばSU8が、通常スピン・コーティングによって、窒化珪素の層(28)の表面上のウェハ(16)の作業表面上に配される。その他の光反応性樹脂の層(40)に適切な材料は、以下の表1に挙げられる。
【0022】
図9を説明する。該図は概略断面図であり、フォトレジストの層(30)がマスクを通して、先行技術に従って放射される。矢印(34)は、マスク(32)上への放射線の入射を表わす。マスク(32)を通しての照射によって、フォトレジストの層(30)に放射領域(36)および非放射領域(38)が形成される。フォトレジストの層(30)を展開すると、フォトレジストの層(30)がポジレジストかネガレジストかによって、放射領域(36)と非放射領域(38)のいずれかが除去される。フォトレジストの層(30)がネガレジストである場合は、展開に際して、非放射領域(38)が除去される。フォトレジストの層(30)がポジレジストである場合には、展開に際して、放射領域(36)が除去される。本発明の方法に用いる光反応性樹脂がポジレジストかネガレジストかは、当分野の一般的な技術者には明白である。
【0023】
図10を説明する。該図は概略断面図であり、マイクロニードル(12)の形状を決定する光反応性樹脂(40)(図9)を加工した後の、図8のウェハ(16)を示す。この処理は、放射線(光)を光反応性樹脂の層(40)に選択的に作用させることからなる。その結果、光反応性樹脂の層(40)に物理的および/または化学的変化を選択的に起こす。この処理は通常、選択的な放射と光反応性樹脂の層(40)の展開からなる。これらの工程は、以下に詳細に示される。最初に、光反応性樹脂の層(40)(図9)が選択的に放射される。その際通常マスクを用いて、光反応性樹脂の層(40)が、1つ以上の放射領域(図には示さず)および1つ以上の非放射領域(図には示さず)を備えるようにする。放射作業は通常、可視光線または紫外線を生成する光源を用いるか、X線放射によって行われる。光源は光反応性樹脂の層に用いる材料に依ることは、当分野の技術者には明白である。この他の光源および材料も当分野の技術者には既知である。非光反応性樹脂(たとえばPDMSすなわちポリジメチルシロキサンやPCB)を光反応性樹脂に埋め込んで、前駆物質として用いてもよい。該前駆物質は、光源にさらされた際に混合材料が反応するようにする役割を果たす。請求項で用いる「光反応性樹脂」という用語は、光源に対する反応性を備える混合材料を含む。
【0024】
以下の表1は適切な光源とそれに対応する光反応性樹脂の例である。
【0025】
【表1】
【0026】
PDMS,PMMA及びBCBは生体適合性を備えるのに加えて、微小加工技術にも用いられる。よって、マイクロニードルの製造に大変適していることに留意されたい。
【0027】
光反応性樹脂(40)が露光された後、露光後のベーク(加熱)が、光反応性樹脂に対して行われる。その後、光反応性樹脂(40)は展開され、光反応性樹脂(40)の放射領域または非放射領域のいずれかが選択的に除去される。どちらが除去されるかは、用いる樹脂のタイプ(ポジレジストかネガレジストか)による。いずれかの領域が除去されると、1つ以上の残存領域(46)の少なくとも一部分が、少なくとも部分的にマイクロニードル(12)の少なくとも一部の形態を定義するようになる。展開の過程は、マイクロニードル(12)の少なくとも一部の形態を定義するものとして説明する。それは、マイクロニードル(12)を使用可能な状態にするには、さらなる加工が必要であるからである。残存領域(46)はその後、水洗、乾燥された後、一般的にベーキングされる。上記の工程は、マイクロニードル(12)の外表面に加えてマイクロニードル(12)内のチャネルの表面を定義する。当分野の技術者であれば、上記の工程を用いると、その内部にチャネルを備えるまたは備えないマイクロニードルを、1つ以上作ることが可能であることが、理解できる。また、当分野の技術者であれば、上記の工程を用いると、1つ以上の傾斜した端面を備えるまたは備えないマイクロニードルを、1つ以上作ることが可能であることが、理解できる。図8および図10を参照して説明した工程は、マイクロニードルの必要な高さによって、必要であれば繰り返される。
【0028】
ここで、図11を参照する。図11は、マイクロニードル(50)を備えるウェハ(48)の概略断面図である。マイクロニードル(50)はウェハ(48)の上面に配されている。この形態は、本発明の第1の実施例の変更形態にしたがって構築され、操作される。マイクロニードル(50)は、2つの傾斜した端面(52)を備えている。傾斜端面(52)は、ウェハ(48)の表面内の溝部(54)の中間位置にマイクロニードル(50)を形成することによって定義される。
【0029】
ここで、図12を参照する。図12は、2つのマイクロニードル(58)を備えるウェハ(56)の概略断面図である。マイクロニードル(58)は、ウェハ(56)の上面に配されている。この形態は、本発明の第2の実施形態の変更形態にしたがって構築され、操作される。ウェハ(56)は、ウェハ(56)表面内に溝部(60)を備える。マイクロニードル(58)は、溝部(60)上の異なる位置に形成されている。そして、マイクロニードル(58)は互いに異なる高さとなっている。マイクロニードル・アレイは、異なる高さのマイクロニードルを備え、この形態は3次元マイクロニードル・アレイとして知られている。3次元マイクロニードル・アレイは、薬剤搬送のアプリケーションにおいて射出される物質の3次元の方向への投与を可能にするとともに診断のアプリケーションにおいてサンプリング効果を高めることを可能とする。
【0030】
ここで、図13を参照する。図13は、フォトレジスト(64)の厚い層を備えるウェハ(62)の概略断面図である。フォトレジスト(64)の層はウェハ(62)の上面に配されている。フォトレジスト(64)はマスク(66)を介して、光源(図示せず)から選択的に光を照射される。この形態は、本発明の第3の実施形態にしたがって、構築され、操作される。ウェハ(62)は、典型的には、略平坦な表面を備える。入射光は矢印(68)で示されている。光源とウェハ(62)の相対位置は、マイクロニードル(72)の傾斜端面(70)を少なくとも部分的に定義する。光源とウェハ(62)の相対位置は、「少なくとも部分的に定義する」との表現がなされているように、ウェハ(62)の表面が平坦でないならば、ウェハ(62)の表面の輪郭が、マイクロニードル(72)の傾斜端面(70)を定義することも可能である。
【0031】
ここで、図14を参照する。図14は、フォトレジスト(76)の厚い層を備えるウェハ(74)の概略断面図である。フォトレジスト(76)の層はウェハ(74)の上面に配されている。またフォトレジスト(76)の層は、光源(図示せず)によって、選択的に光を照射される。この形態は、本発明の第4の実施形態にしたがって、構築され、操作される。入射光は矢印(78)で示されている。光源とウェハ(74)の相対的位置関係は各マイクロニードル(82)の傾斜端面(80)を少なくとも部分的に定義するものとなる。図13と図14で示す例はともに、光源とウェハの相対的位置関係がマイクロニードルの形状を定義することを示している。マスクの方向はマイクロニードルの幅を定義する。
【0032】
ここで、図15を参照する。図15は、構築しうるマイクロニードル構造の概略断面図である。この形態は、本発明の第5の実施形態にしたがって構築され、操作される。本発明は、図示例の外側の形状や内部のチャネル形状に何ら限定されるものではない。これらの形状は、マスク、光源と作業面との相対的位置関係及び作業面の形状によって定まる。典型的な形状は、管状、ピラミッド形状やコーン形状であり、チャネルを備えていてもよく、またチャネルを備えていなくともよい。マイクロニードル(90,92,94)は、ニードル先端に一致しないチャネルを備える。それゆえ、もし流体の流量を大きくする必要があるならば、チップの大きさや皮膚に侵入させるために要求される力に影響を与えることなしに、チャネルを広げればよい。加えて、チップの構造及び位置が適宜変更可能であるということは、個々のアプリケーションの発展を促すものである。例えば、ニードルを用いて、組織に穴を開けることや切断することやアレイを固定することなどが可能となる。即ち、マイクロニードル構造は、各種のアプリケーションの要求を満たすように適宜定めればよい。第1の例においては、薬剤搬送は穴を設けるための鋭利なニードルを要求する。第2の例では、マイクロニードルを載置するバルーンは切断用ナイフや刃状のチップを要求する。第3の例においては、ワクチン接種のアプリケーションは、侵入物の表面積の拡大を要求する。侵入物は、鋸刃状で尖ったチップ及びチャネルを設けることを必要とする。
【0033】
ここで、図16を参照する。図16は、以下に示す工程が実行された後の図10に示すウェハ(16)の概略断面図である。樹脂製のレジスト材料の充填剤層(84)は少なくとも部分的に、典型的には、完全に残存領域(46)周囲を囲むように配される。前記「周囲」との文言は、マイクロニードル(12)外側周囲及びマイクロニードル(12)のチャネル周囲も含むものである。充填剤層(84)は、充填材料として作用し、基礎部分(14)(図1参照)を構築する。充填剤層(84)は、窒化珪素(28)の層からマイクロニードル(12)のベース部直下まで延びている。必要に応じて、充填剤層(84)は、マイクロニードル(12)の長さを定義するために用いられる。
【0034】
ここで、図17を参照する。図17は、以下の工程が実行された後の図16のウェハ(16)の概略断面図である。光反応性樹脂(例えば、SU8)(86)の層は、典型的にはスピンコーティングにより、充填剤層(84)及び残存領域(46)(マイクロニードル(12))の上面に配される。
【0035】
ここで、図18を参照する。図18は、以下の工程が実行された後の図17に示すウェハ(16)の概略断面図である。光反応性樹脂(86)(図17参照)の層は、選択的に光を照射される。典型的には、この工程にはマスク(図示せず)が用いられる。このマスクは、基礎部分(14)内のチャネル(88)の形態を定義するように形成される。チャネル(88)はマイクロニードル(12)内のチャネルと連通するものとなる。光反応性樹脂(86)の層は、その後、展開され、光反応性樹脂(86)の層がマイクロニードル構造(10)に対するベース部を形成するものとなる。一般的に、光反応性樹脂(86)の層は、展開工程の後、加熱される。
【0036】
ここで、図19を参照する。図19はマイクロニードル構造(10)の概略断面図であり、該マイクロニードル構造(10)は、図18のマイクロニードル(12)及び基礎部分(14)を備える。この形態は、以下の工程が実行された後に得られる。マイクロニードル構造(10)は、KOHエッチング材料を用いて、ウェハ(16)から解放される。
【0037】
上記の方法は、光反応性樹脂を用いてマイクロニードル(12)を形成し、典型的には、選択的な光の放射、展開及び加熱の工程を用いるものとして説明されてきた。これらの工程のいくつかは、選択される光反応性樹脂の種類によっては必要とされない。また必要に応じて、マイクロニードル12は少なくとも部分的に微細除去加工の技術を用いて形成されるものであってもよい。例えば、限定されるものではないが、マイクロニードル(12)の形態が、選択的に材料に光を放射することにより定義され、この工程において、高出力の光源が用いられ、不必要な材料を除去し、マイクロニードル(12)の形状を残すものであってもよい。
【0038】
本発明は、上記に図示され、説明されてきたものに何ら限定されるものではない。本発明の要旨は、上述の説明の様々な特徴の組み合わせやそれに類するものを備え、また、従来技術にはない、上記説明を知得した当業者が行いうる変更及び改良形態も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】マイクロニードル構造の概略斜視図であり、該マイクロニードルは、本発明の好適な実施形態にしたがって構築され、動作する。
【図2】図1のマイクロニードル構造の構築に用いられる窒化珪素の薄い層で被覆されたウェハの概略断面図である。
【図3】窒化珪素の層を被覆するフォトレジスト・コーティングの層を備える図2のウェハの概略断面図である。
【図4】平行な連続的なストリップ溝がフォトレジストの層上に形成された後の図3のウェハの概略断面図である。
【図5】プラズマ・エッチング処理後の図4のウェハの概略断面図であり、窒化珪素の層内に平行な連続的な溝が形成されている。
【図6】ウェット・エッチング後の図5に示すウェハの概略断面図であり、内部に溝部が形成されている。
【図7】窒化珪素が上面に配された薄い層を備える図6のウェハの概略断面図である。
【図8】上面にスピンコーティングを施されたフォトレジストの厚い層を備える図7のウェハの概略断面図である。
【図9】従来技術に従って、マスクを介して光を放射されたフォトレジストの層の概略断面図である。
【図10】選択的な光の放射及びフォトレジストの厚い層を展開した後の図8のウェハの概略断面図であり、マイクロニードルの形態が定義されている。
【図11】上面に配されたマイクロニードルを備えるウェハの概略断面図である。
【図12】上面に配された2つのマイクロニードルを備えるウェハの概略断面図であり、マイクロニードルは互いに異なる高さを備え、本発明の第2の実施形態に従って構築され、操作される。
【図13】上面に配されるフォトレジストの厚い層を備えるウェハの概略断面図であり、光源により選択的に光が放射される。光源とウェハの相対的位置関係は少なくとも部分的に各マイクロニードルの傾斜した端面を定義し、本発明の第3の実施形態にしたがって構築され、操作される。
【図14】上面に配されるフォトレジストの厚い層を備えるウェハの概略断面図であり、光源により選択的に光が放射される。光源とウェハの相対的位置関係は少なくとも部分的に各マイクロニードルの傾斜した端面を定義し、本発明の第4の実施形態にしたがって構築され、操作される。
【図15】構成しうるマイクロニードル構造の概略断面図であり、本発明の第5の実施形態にしたがって構築され、操作される。
【図16】樹脂製のレジスト材料の充填剤層を備える図10のウェハの概略断面図であり、レジスト材料はマイクロニードルを取り囲んでいる。
【図17】レジスト材料及びマイクロニードルの上面に配されるフォトレジストのスピンコーティング層を備える図16のウェハの概略断面図である。
【図18】選択的に光が放射され、フォトレジストの層を展開し、マイクロニードルに対するベース部を定義した後の図17のウェハの概略断面図である。
【図19】ウェハから開放された後の図18のマイクロニードル並びにベース部の概略断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルに関連し、特に光反応性材料から形成されるマイクロニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルは従来からよく知られている。まず、Gerstelにより1976年6月に出願された米国特許第3,964,482号によるものが挙げられる。しかしながら、廉価な生産方法が見出されていなかったこと及び適切な製造材料を見出すことが困難であったため、マイクロニードル技術の市販化は困難なものであった。適切な製造材料なしでは、強度が高いマイクロニードルを作ることができず、また組織内に侵入させるという課題を解決することもできず、また簡単に折れてしまうという問題を招来する。
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,964,482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、樹脂製のマイクロニードルの製造は、ニードル構造を形成するためのモールドを用いた技術で行われている。これらの方法は固有の問題を備える。即ち、中空のマイクロニードルを製造することが困難であり、これに起因して、流体輸送に対してあまり有益でないマイクロニードルとなるというものである。従来技術に係る方法は、一般的に生産コストが高くなるものであり、生産されたマイクロニードルは脆弱なものとなる。一般的に、従来技術に係る経皮型アプリケーションにおいて用いられるマイクロニードルは、十分な頑健性を備えておらず、それ故、皮膚内へ侵入されるときに折れてしまうことがあった。或いは、マイクロニードルが十分に尖っておらず、皮膚内に効率的に侵入できないという問題があった。
それゆえ、廉価にマイクロニードルを製造する方法、中空及び非中空であるか否かを問わず頑健で鋭いマイクロニードルを製造する方法が必要である。このようなマイクロニードルは薬剤の搬送や診断に好適に使用可能なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は樹脂製のマイクロニードルの構造及びその製造方法に関するものである。
本発明の開示によれば、(a)光反応性樹脂の第1層を作業面上に配置する段階と、(b)前記第1層に対して選択的に光を放射し、前記第1層が少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域を備える段階と、(c)前記第1層を展開し、前記少なくとも1つの照射領域と前記少なくとも1つの非照射領域のうち1つを取り除き、少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分が、少なくとも部分的にマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階からなることを特徴とするマイクロニードルの製造方法が提供される。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードル構造の前記少なくとも一部分が、少なくとも部分的に形成された複数のマイクロニードルを含むことである。
本発明の他の特徴は、前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つのそれぞれが、その内部にチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つのそれぞれが、傾斜した端面を備えることである。
本発明の他の特徴は、前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つが異なる高さを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードル構造の前記少なくも一部分が、少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルを含み、該マイクロニードルがその内部にチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの前記少なくとも一部分が少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルを含み、該マイクロニードルが傾斜した端面を備えることである。
【0006】
本発明の他の特徴は、前記展開する段階の後に、(a)前記少なくとも一つの残存領域の周囲のうち少なくとも一部分に充填剤を配する段階と、(b)(i)前記少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分と、(ii)前記充填剤が配されている少なくとも一部分に光反応性樹脂の第2層を配する段階と、(c)前記第2層に光を放射する段階と、(d)前記第2層を展開し、前記第2層が前記マイクロニードル構造の少なくとも一部分をなすベース部を形成することである。
本発明の他の特徴は、前記ベース部が、その内部に少なくとも1つのチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記第2層に光を放射する段階が、前記第2層に選択的に光を放射することによって行われることである。
本発明の他の特徴は、前記作業面に少なくとも1つの溝部を形成する段階を備え、前記マイクロニードルの前記少なくとも一部分が前記少なくとも1つの溝部内に形成され、前記少なくとも1つの溝部が、前記マイクロニードル構造の少なくとも1つの傾斜した端面を定義することである。
本発明の他の特徴は、前記放射する段階が、可視光線を作り出す光源を用いて行われることである。
本発明の他の特徴は、前記光を放射する段階が紫外線を用いて行われることである。
本発明の他の特徴は、前記光を放射する段階がX線を用いて行われることである。
本発明の他の特徴は、光源を配する段階を更に備え、該光源は、前記光を放射する段階で用いられ、前記光源と前記作業面との相対的位置関係が、前記マイクロニードル構造の少なくとも1つの傾斜した端面を少なくとも部分的に定義することである。
【0007】
本発明の開示によれば、複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、前記マイクロニードルのそれぞれが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることを特徴とするマイクロニードル構造が提供される。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルのそれぞれの大部分が、前記光反応性樹脂から形成されることである。
本発明の他の特徴は、基礎部分を備え、該基礎部分が前記マイクロニードルに対するベース部を形成し、前記基礎部分が少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることである。
本発明の他の特徴は、前記基礎部分が、その内部に少なくとも1つのチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、その内部にチャネルを備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、傾斜した端面を備えることである。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、互いに異なる高さを備えることである。
【0008】
本発明の開示によれば、マイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、
前記マイクロニードルが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成され、前記マイクロニードルが、その内部にチャネルを備えることを特徴とするマイクロニードル構造が提供される。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの大部分が前記光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項23記載のマイクロニードル構造である。
【0009】
本発明の開示によれば、マイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、前記マイクロニードルが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成され、前記マイクロニードルが傾斜した端面を備えることを特徴とするマイクロニードル構造が提供される。
本発明の他の特徴は、前記マイクロニードルの大部分が前記光反応性樹脂から形成されることである。
【0010】
本発明の開示によれば、(a)材料の層を作業面に配する段階と、(b)前記層を加工して、少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域のうち少なくとも1つを選択的に除去し、少なくとも1つの残存領域のうち少なくとも一部分がマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階を備え、前記加工する段階が、光の放射を用いて前記層に反応を生じせしめ、物理的変化及び化学的変化のうち少なくとも1つを前記層の材料に引き起こさせることを特徴とするマイクロニードルの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る実施形態を、以下に、図を参照しつつ説明する。
本発明は樹脂マイクロニードルの構造およびその製造方法に関する。
【0012】
本発明による樹脂マイクロニードル構造の原理および製造方法は図面と付随する説明を参照するとよりよく理解されうる。
【0013】
“Process development for polymer needles by using SU-8 technology and silicon molding techniques”(Dominique Maria Altpeter of Mesa+Institute, University of Twente, Enschede, Netherlands)という出版物が、本発明は殆どここにおいて全て発表されているといえるくらいに、あらゆる目的で参照され、組み込まれている。
【0014】
図1を説明する。該図はマイクロニードル構造(10)の概略斜視図である。該構造は本発明の好ましい実施形態に沿って操作可能であるように、構築されている。マイクロニードル構造(10)は、複数のマイクロニードル(12)及び基礎部分(14)からなり、該基礎部分はマイクロニードル(12)のベース部としての役割をもつ。マイクロニードル(12)及び基礎部分(14)はそれぞれ、その最低一部分、通常は大部分が、光反応性樹脂から形成され、マイクロニードル(12)は、通常すべて光反応性樹脂から形成される。或いは、使用する光反応性樹脂によって、マイクロニードル(12)は、マイクロニードル(12)が生体適合性を備えるようにする材料によってコーティングされる。或いは、マイクロニードル(12)は、電気化学的手法を用いて、導電性材料、たとえばチタン、金、アルミニウムによってコーティングされる。これらの導電性材料でコーティングされたマイクロニードルは診断用に利用可能である。その際には、マイクロニードル(12)は、電極としての役割を果たす。もしくは、これらのコーティングされたニードルは、電気泳動を利用して、マイクロニードル(12)間で電流を伝えることにより薬剤の運搬を強化する。光反応性樹脂は、図10を参照してより詳しく論じられる。各マイクロニードル(12)は通常その内部にチャネルを備える。しかしながら、マイクロニードル(12)はその内部にチャネルを、或いは備えないように形成されてもよい。基礎部分(14)は、通常その内部に、マイクロニードル(12)の各チャネルに対応するチャネルを備える。それにより、治療薬が基礎部(14)のチャネルを通って、マイクロニードル(12)のチャネルを抜け、患者の皮膚内に運ばれることが可能となる。加えて、該2つのチャンネルは、試料採取および/あるいは収集の目的で、体液を抜き取るためにも利用可能である。加えて、各マイクロニードル(12)は、最低1つの傾斜した端面を備え、該端面はマイクロニードル(12)に皮膚を貫通するための鋭い先端をもたらす。しかしながら、マイクロニードル(12)は、傾斜した端面を或いは備えないように形成されてもよい。或いは、マイクロニードル構造(10)のマイクロニードル(12)は、マイクロニードル(12)が様々な高さをもつように形成される。これらの特徴、およびその他の特徴、また工業生産の方法が、図2乃至図19を参照して、より詳しく説明される。
【0015】
図2を説明する。該図は概略断面図であり、シリコン・ウェハ(16)を示す。該シリコン・ウェハは、窒化珪素の薄い層でコーティングされており、該窒化珪素は図1のマイクロニードル構造を構築する際に用いられる。ウェハ(16)は、作業面として用いられ、その上でマイクロニードル構造(10)が形成される。最低1つの溝部(20)(図7)がウェハ(16)内に形成される。マイクロニードル(12)の前記端部は溝部(20)の中で形成される。溝部(20)は、マイクロニードル(12)の1つ以上の傾斜した端面を定義する。溝部(20)の形状は、図2乃至図7により詳しく示される。最初にウェハ(16)は、洗浄され、全ての塵および汚染を取り除かれる。該洗浄はアルコール・ベースの材料を用いて行われ、空気乾燥される。窒化珪素の層(18)がウェハ(16)上に配される。窒化珪素の層(18)の厚さは、通常300nmである。このコーティングは、LPCVD工程を用いて行われる。窒化珪素の層(18)はその後、ウェット・エッチングのためのマスクとして用いられる。(図6)
【0016】
図3を説明する。該図は概略断面図であり、図2のウェハを以下の工程を経た後の状態で示す。フォトレジストの層(22)は窒化珪素の層(18)の表面にコーティングされる。フォトレジストの層(22)に適する材料は、当分野の技術者に既知である。
【0017】
図4を説明する。該図は概略断面図で、図3のウェハ(16)を以下の工程を経た後の状態で示す。フォトレジストの層(22)は、KOHマスク(図には示さず)を通して露光される。KOHマスクは、フォトレジストの層(22)が展開される際に、一連の平行なストリップ溝(24)が、フォトレジストの層(22)内のウェハ(16)上に形成されるように配置される。この工程並びに展開技術に適した光源は、当分野の技術者に既知である。
【0018】
図5を説明する。該図は概略断面図であり、図4のウェハ(16)を以下の工程を経た後の状態で示す。プラズマ・エッチングが行われ、一連の平行なストリップ溝(26)が窒化珪素の層(18)内に作られる。
【0019】
図6を説明する。該図は概略断面図であり、図5のウェハ(16)を以下の工程を経た後の状態で示す。ウェハ(16)に対してウェット・エッチングが行われ、溝部(20)が平行なストリップ溝(26)(図5)の位置に作られる。該溝部には窒化珪素の層(18)からなる保護層が配されていない。ウェット・エッチング工程は、ウェハ(16)を化学液に短時間浸すことにより行われる。たとえば、THEMA或いはKOHを用いる。このウェット・エッチング工程では、ウェハ(16)の結晶面がエッチングされ、珪素ウェハ内に溝部(20)が作られる。上述のごとく、図2を参照して、溝部(20)は作業面としての役割を果たし、その上では、マイクロニードル(12)の先端が形成され、該先端が少なくとも1つの傾斜した端面を備えるようにされる。
【0020】
図7を説明する。該図は概略断面図であり、図6のウェハ(16)が以下の工程を経た後の状態を示す。窒化珪素の薄い層(28)が、該ウェハ上に配される。該薄い層は、後の段階でKOH化学物質を使用する際に、ウェハ(16)を保護する。ポリシリコンの層(図には示さず)はその後、LPCVD工程を用いて、窒化珪素の層(28)の表面上に配される。該ポリシリコンの層は、マイクロニードル構造(10)をウェハから取り出しやすくする。これについては、以下で図19を参照してより詳しく説明される。
【0021】
図8を説明する。該図は概略断面図であり、図7のウェハ(16)が以下の工程を経た後の状態を示す。光反応性樹脂の厚い層(40)(フォトレジスト)、たとえばSU8が、通常スピン・コーティングによって、窒化珪素の層(28)の表面上のウェハ(16)の作業表面上に配される。その他の光反応性樹脂の層(40)に適切な材料は、以下の表1に挙げられる。
【0022】
図9を説明する。該図は概略断面図であり、フォトレジストの層(30)がマスクを通して、先行技術に従って放射される。矢印(34)は、マスク(32)上への放射線の入射を表わす。マスク(32)を通しての照射によって、フォトレジストの層(30)に放射領域(36)および非放射領域(38)が形成される。フォトレジストの層(30)を展開すると、フォトレジストの層(30)がポジレジストかネガレジストかによって、放射領域(36)と非放射領域(38)のいずれかが除去される。フォトレジストの層(30)がネガレジストである場合は、展開に際して、非放射領域(38)が除去される。フォトレジストの層(30)がポジレジストである場合には、展開に際して、放射領域(36)が除去される。本発明の方法に用いる光反応性樹脂がポジレジストかネガレジストかは、当分野の一般的な技術者には明白である。
【0023】
図10を説明する。該図は概略断面図であり、マイクロニードル(12)の形状を決定する光反応性樹脂(40)(図9)を加工した後の、図8のウェハ(16)を示す。この処理は、放射線(光)を光反応性樹脂の層(40)に選択的に作用させることからなる。その結果、光反応性樹脂の層(40)に物理的および/または化学的変化を選択的に起こす。この処理は通常、選択的な放射と光反応性樹脂の層(40)の展開からなる。これらの工程は、以下に詳細に示される。最初に、光反応性樹脂の層(40)(図9)が選択的に放射される。その際通常マスクを用いて、光反応性樹脂の層(40)が、1つ以上の放射領域(図には示さず)および1つ以上の非放射領域(図には示さず)を備えるようにする。放射作業は通常、可視光線または紫外線を生成する光源を用いるか、X線放射によって行われる。光源は光反応性樹脂の層に用いる材料に依ることは、当分野の技術者には明白である。この他の光源および材料も当分野の技術者には既知である。非光反応性樹脂(たとえばPDMSすなわちポリジメチルシロキサンやPCB)を光反応性樹脂に埋め込んで、前駆物質として用いてもよい。該前駆物質は、光源にさらされた際に混合材料が反応するようにする役割を果たす。請求項で用いる「光反応性樹脂」という用語は、光源に対する反応性を備える混合材料を含む。
【0024】
以下の表1は適切な光源とそれに対応する光反応性樹脂の例である。
【0025】
【表1】
【0026】
PDMS,PMMA及びBCBは生体適合性を備えるのに加えて、微小加工技術にも用いられる。よって、マイクロニードルの製造に大変適していることに留意されたい。
【0027】
光反応性樹脂(40)が露光された後、露光後のベーク(加熱)が、光反応性樹脂に対して行われる。その後、光反応性樹脂(40)は展開され、光反応性樹脂(40)の放射領域または非放射領域のいずれかが選択的に除去される。どちらが除去されるかは、用いる樹脂のタイプ(ポジレジストかネガレジストか)による。いずれかの領域が除去されると、1つ以上の残存領域(46)の少なくとも一部分が、少なくとも部分的にマイクロニードル(12)の少なくとも一部の形態を定義するようになる。展開の過程は、マイクロニードル(12)の少なくとも一部の形態を定義するものとして説明する。それは、マイクロニードル(12)を使用可能な状態にするには、さらなる加工が必要であるからである。残存領域(46)はその後、水洗、乾燥された後、一般的にベーキングされる。上記の工程は、マイクロニードル(12)の外表面に加えてマイクロニードル(12)内のチャネルの表面を定義する。当分野の技術者であれば、上記の工程を用いると、その内部にチャネルを備えるまたは備えないマイクロニードルを、1つ以上作ることが可能であることが、理解できる。また、当分野の技術者であれば、上記の工程を用いると、1つ以上の傾斜した端面を備えるまたは備えないマイクロニードルを、1つ以上作ることが可能であることが、理解できる。図8および図10を参照して説明した工程は、マイクロニードルの必要な高さによって、必要であれば繰り返される。
【0028】
ここで、図11を参照する。図11は、マイクロニードル(50)を備えるウェハ(48)の概略断面図である。マイクロニードル(50)はウェハ(48)の上面に配されている。この形態は、本発明の第1の実施例の変更形態にしたがって構築され、操作される。マイクロニードル(50)は、2つの傾斜した端面(52)を備えている。傾斜端面(52)は、ウェハ(48)の表面内の溝部(54)の中間位置にマイクロニードル(50)を形成することによって定義される。
【0029】
ここで、図12を参照する。図12は、2つのマイクロニードル(58)を備えるウェハ(56)の概略断面図である。マイクロニードル(58)は、ウェハ(56)の上面に配されている。この形態は、本発明の第2の実施形態の変更形態にしたがって構築され、操作される。ウェハ(56)は、ウェハ(56)表面内に溝部(60)を備える。マイクロニードル(58)は、溝部(60)上の異なる位置に形成されている。そして、マイクロニードル(58)は互いに異なる高さとなっている。マイクロニードル・アレイは、異なる高さのマイクロニードルを備え、この形態は3次元マイクロニードル・アレイとして知られている。3次元マイクロニードル・アレイは、薬剤搬送のアプリケーションにおいて射出される物質の3次元の方向への投与を可能にするとともに診断のアプリケーションにおいてサンプリング効果を高めることを可能とする。
【0030】
ここで、図13を参照する。図13は、フォトレジスト(64)の厚い層を備えるウェハ(62)の概略断面図である。フォトレジスト(64)の層はウェハ(62)の上面に配されている。フォトレジスト(64)はマスク(66)を介して、光源(図示せず)から選択的に光を照射される。この形態は、本発明の第3の実施形態にしたがって、構築され、操作される。ウェハ(62)は、典型的には、略平坦な表面を備える。入射光は矢印(68)で示されている。光源とウェハ(62)の相対位置は、マイクロニードル(72)の傾斜端面(70)を少なくとも部分的に定義する。光源とウェハ(62)の相対位置は、「少なくとも部分的に定義する」との表現がなされているように、ウェハ(62)の表面が平坦でないならば、ウェハ(62)の表面の輪郭が、マイクロニードル(72)の傾斜端面(70)を定義することも可能である。
【0031】
ここで、図14を参照する。図14は、フォトレジスト(76)の厚い層を備えるウェハ(74)の概略断面図である。フォトレジスト(76)の層はウェハ(74)の上面に配されている。またフォトレジスト(76)の層は、光源(図示せず)によって、選択的に光を照射される。この形態は、本発明の第4の実施形態にしたがって、構築され、操作される。入射光は矢印(78)で示されている。光源とウェハ(74)の相対的位置関係は各マイクロニードル(82)の傾斜端面(80)を少なくとも部分的に定義するものとなる。図13と図14で示す例はともに、光源とウェハの相対的位置関係がマイクロニードルの形状を定義することを示している。マスクの方向はマイクロニードルの幅を定義する。
【0032】
ここで、図15を参照する。図15は、構築しうるマイクロニードル構造の概略断面図である。この形態は、本発明の第5の実施形態にしたがって構築され、操作される。本発明は、図示例の外側の形状や内部のチャネル形状に何ら限定されるものではない。これらの形状は、マスク、光源と作業面との相対的位置関係及び作業面の形状によって定まる。典型的な形状は、管状、ピラミッド形状やコーン形状であり、チャネルを備えていてもよく、またチャネルを備えていなくともよい。マイクロニードル(90,92,94)は、ニードル先端に一致しないチャネルを備える。それゆえ、もし流体の流量を大きくする必要があるならば、チップの大きさや皮膚に侵入させるために要求される力に影響を与えることなしに、チャネルを広げればよい。加えて、チップの構造及び位置が適宜変更可能であるということは、個々のアプリケーションの発展を促すものである。例えば、ニードルを用いて、組織に穴を開けることや切断することやアレイを固定することなどが可能となる。即ち、マイクロニードル構造は、各種のアプリケーションの要求を満たすように適宜定めればよい。第1の例においては、薬剤搬送は穴を設けるための鋭利なニードルを要求する。第2の例では、マイクロニードルを載置するバルーンは切断用ナイフや刃状のチップを要求する。第3の例においては、ワクチン接種のアプリケーションは、侵入物の表面積の拡大を要求する。侵入物は、鋸刃状で尖ったチップ及びチャネルを設けることを必要とする。
【0033】
ここで、図16を参照する。図16は、以下に示す工程が実行された後の図10に示すウェハ(16)の概略断面図である。樹脂製のレジスト材料の充填剤層(84)は少なくとも部分的に、典型的には、完全に残存領域(46)周囲を囲むように配される。前記「周囲」との文言は、マイクロニードル(12)外側周囲及びマイクロニードル(12)のチャネル周囲も含むものである。充填剤層(84)は、充填材料として作用し、基礎部分(14)(図1参照)を構築する。充填剤層(84)は、窒化珪素(28)の層からマイクロニードル(12)のベース部直下まで延びている。必要に応じて、充填剤層(84)は、マイクロニードル(12)の長さを定義するために用いられる。
【0034】
ここで、図17を参照する。図17は、以下の工程が実行された後の図16のウェハ(16)の概略断面図である。光反応性樹脂(例えば、SU8)(86)の層は、典型的にはスピンコーティングにより、充填剤層(84)及び残存領域(46)(マイクロニードル(12))の上面に配される。
【0035】
ここで、図18を参照する。図18は、以下の工程が実行された後の図17に示すウェハ(16)の概略断面図である。光反応性樹脂(86)(図17参照)の層は、選択的に光を照射される。典型的には、この工程にはマスク(図示せず)が用いられる。このマスクは、基礎部分(14)内のチャネル(88)の形態を定義するように形成される。チャネル(88)はマイクロニードル(12)内のチャネルと連通するものとなる。光反応性樹脂(86)の層は、その後、展開され、光反応性樹脂(86)の層がマイクロニードル構造(10)に対するベース部を形成するものとなる。一般的に、光反応性樹脂(86)の層は、展開工程の後、加熱される。
【0036】
ここで、図19を参照する。図19はマイクロニードル構造(10)の概略断面図であり、該マイクロニードル構造(10)は、図18のマイクロニードル(12)及び基礎部分(14)を備える。この形態は、以下の工程が実行された後に得られる。マイクロニードル構造(10)は、KOHエッチング材料を用いて、ウェハ(16)から解放される。
【0037】
上記の方法は、光反応性樹脂を用いてマイクロニードル(12)を形成し、典型的には、選択的な光の放射、展開及び加熱の工程を用いるものとして説明されてきた。これらの工程のいくつかは、選択される光反応性樹脂の種類によっては必要とされない。また必要に応じて、マイクロニードル12は少なくとも部分的に微細除去加工の技術を用いて形成されるものであってもよい。例えば、限定されるものではないが、マイクロニードル(12)の形態が、選択的に材料に光を放射することにより定義され、この工程において、高出力の光源が用いられ、不必要な材料を除去し、マイクロニードル(12)の形状を残すものであってもよい。
【0038】
本発明は、上記に図示され、説明されてきたものに何ら限定されるものではない。本発明の要旨は、上述の説明の様々な特徴の組み合わせやそれに類するものを備え、また、従来技術にはない、上記説明を知得した当業者が行いうる変更及び改良形態も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】マイクロニードル構造の概略斜視図であり、該マイクロニードルは、本発明の好適な実施形態にしたがって構築され、動作する。
【図2】図1のマイクロニードル構造の構築に用いられる窒化珪素の薄い層で被覆されたウェハの概略断面図である。
【図3】窒化珪素の層を被覆するフォトレジスト・コーティングの層を備える図2のウェハの概略断面図である。
【図4】平行な連続的なストリップ溝がフォトレジストの層上に形成された後の図3のウェハの概略断面図である。
【図5】プラズマ・エッチング処理後の図4のウェハの概略断面図であり、窒化珪素の層内に平行な連続的な溝が形成されている。
【図6】ウェット・エッチング後の図5に示すウェハの概略断面図であり、内部に溝部が形成されている。
【図7】窒化珪素が上面に配された薄い層を備える図6のウェハの概略断面図である。
【図8】上面にスピンコーティングを施されたフォトレジストの厚い層を備える図7のウェハの概略断面図である。
【図9】従来技術に従って、マスクを介して光を放射されたフォトレジストの層の概略断面図である。
【図10】選択的な光の放射及びフォトレジストの厚い層を展開した後の図8のウェハの概略断面図であり、マイクロニードルの形態が定義されている。
【図11】上面に配されたマイクロニードルを備えるウェハの概略断面図である。
【図12】上面に配された2つのマイクロニードルを備えるウェハの概略断面図であり、マイクロニードルは互いに異なる高さを備え、本発明の第2の実施形態に従って構築され、操作される。
【図13】上面に配されるフォトレジストの厚い層を備えるウェハの概略断面図であり、光源により選択的に光が放射される。光源とウェハの相対的位置関係は少なくとも部分的に各マイクロニードルの傾斜した端面を定義し、本発明の第3の実施形態にしたがって構築され、操作される。
【図14】上面に配されるフォトレジストの厚い層を備えるウェハの概略断面図であり、光源により選択的に光が放射される。光源とウェハの相対的位置関係は少なくとも部分的に各マイクロニードルの傾斜した端面を定義し、本発明の第4の実施形態にしたがって構築され、操作される。
【図15】構成しうるマイクロニードル構造の概略断面図であり、本発明の第5の実施形態にしたがって構築され、操作される。
【図16】樹脂製のレジスト材料の充填剤層を備える図10のウェハの概略断面図であり、レジスト材料はマイクロニードルを取り囲んでいる。
【図17】レジスト材料及びマイクロニードルの上面に配されるフォトレジストのスピンコーティング層を備える図16のウェハの概略断面図である。
【図18】選択的に光が放射され、フォトレジストの層を展開し、マイクロニードルに対するベース部を定義した後の図17のウェハの概略断面図である。
【図19】ウェハから開放された後の図18のマイクロニードル並びにベース部の概略断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光反応性樹脂の第1層を作業面上に配置する段階と、
(b)前記第1層に対して選択的に光を放射し、前記第1層が少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域を備える段階と、
(c)前記第1層を展開し、前記少なくとも1つの照射領域と前記少なくとも1つの非照射領域のうち1つを取り除き、少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分が、少なくとも部分的にマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階からなることを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロニードル構造の前記少なくとも一部分が、少なくとも部分的に形成された複数のマイクロニードルを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つのそれぞれが、その内部にチャネルを備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つのそれぞれが、傾斜した端面を備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つが異なる高さを備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロニードル構造の前記少なくも一部分が、少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルを含み、
該マイクロニードルがその内部にチャネルを備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロニードルの前記少なくとも一部分が少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルを含み、
該マイクロニードルが傾斜した端面を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記展開する段階の後に、
(a)前記少なくとも一つの残存領域の周囲のうち少なくとも一部分に充填剤を配する段階と、
(b)
(i)前記少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分と、
(ii)前記充填剤が配されている少なくとも一部分に光反応性樹脂の第2層を配する段階と、
(c)前記第2層に光を放射する段階と、
(d)前記第2層を展開し、前記第2層が前記マイクロニードル構造の少なくとも一部分をなすベース部を形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ベース部が、その内部に少なくとも1つのチャネルを備えることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第2層に光を放射する段階が、前記第2層に選択的に光を放射することによって行われることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記作業面に少なくとも1つの溝部を形成する段階を備え、
前記マイクロニードルの前記少なくとも一部分が前記少なくとも1つの溝部内に形成され、
前記少なくとも1つの溝部が、前記マイクロニードル構造の少なくとも1つの傾斜した端面を定義することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記放射する段階が、可視光線を作り出す光源を用いて行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記光を放射する段階が紫外線を用いて行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記光を放射する段階がX線を用いて行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
光源を配する段階を更に備え、
該光源は、前記光を放射する段階で用いられ、
前記光源と前記作業面との相対的位置関係が前記マイクロニードル構造の少なくとも1つの傾斜した端面を少なくとも部分的に定義することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、
前記マイクロニードルのそれぞれが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることを特徴とするマイクロニードル構造。
【請求項17】
前記マイクロニードルのそれぞれの大部分が、前記光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項15記載の構造。
【請求項18】
基礎部分を備え、
該基礎部分が前記マイクロニードルに対するベース部を形成し、
前記基礎部分が少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項16記載の構造。
【請求項19】
前記基礎部分が、その内部に少なくとも1つのチャネルを備えることを特徴とする請求項18記載の構造。
【請求項20】
前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、その内部にチャネルを備えることを特徴とする請求項16記載の構造。
【請求項21】
前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、傾斜した端面を備えることを特徴とする請求項16記載の構造。
【請求項22】
前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、互いに異なる高さを備えることを特徴とする請求項16記載の構造。
【請求項23】
マイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、
前記マイクロニードルが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成され、
前記マイクロニードルが、その内部にチャネルを備えることを特徴とするマイクロニードル構造。
【請求項24】
前記マイクロニードルの大部分が前記光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項23記載のマイクロニードル構造。
【請求項25】
マイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、
前記マイクロニードルが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成され、
前記マイクロニードルが傾斜した端面を備えることを特徴とするマイクロニードル構造。
【請求項26】
前記マイクロニードルの大部分が前記光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項25記載のマイクロニードル構造。
【請求項27】
(a)材料の層を作業面に配する段階と、
(b)前記層を加工して、少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域のうち少なくとも1つを選択的に除去し、少なくとも1つの残存領域のうち少なくとも一部分がマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階を備え、
前記加工する段階が、光の放射を用いて前記層に反応を生じせしめ、物理的変化及び化学的変化のうち少なくとも1つを前記層の材料に引き起こさせることを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項1】
(a)光反応性樹脂の第1層を作業面上に配置する段階と、
(b)前記第1層に対して選択的に光を放射し、前記第1層が少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域を備える段階と、
(c)前記第1層を展開し、前記少なくとも1つの照射領域と前記少なくとも1つの非照射領域のうち1つを取り除き、少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分が、少なくとも部分的にマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階からなることを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロニードル構造の前記少なくとも一部分が、少なくとも部分的に形成された複数のマイクロニードルを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つのそれぞれが、その内部にチャネルを備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つのそれぞれが、傾斜した端面を備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルのうち少なくとも2つが異なる高さを備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロニードル構造の前記少なくも一部分が、少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルを含み、
該マイクロニードルがその内部にチャネルを備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロニードルの前記少なくとも一部分が少なくとも部分的に形成されたマイクロニードルを含み、
該マイクロニードルが傾斜した端面を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記展開する段階の後に、
(a)前記少なくとも一つの残存領域の周囲のうち少なくとも一部分に充填剤を配する段階と、
(b)
(i)前記少なくとも1つの残存領域の少なくとも一部分と、
(ii)前記充填剤が配されている少なくとも一部分に光反応性樹脂の第2層を配する段階と、
(c)前記第2層に光を放射する段階と、
(d)前記第2層を展開し、前記第2層が前記マイクロニードル構造の少なくとも一部分をなすベース部を形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ベース部が、その内部に少なくとも1つのチャネルを備えることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第2層に光を放射する段階が、前記第2層に選択的に光を放射することによって行われることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記作業面に少なくとも1つの溝部を形成する段階を備え、
前記マイクロニードルの前記少なくとも一部分が前記少なくとも1つの溝部内に形成され、
前記少なくとも1つの溝部が、前記マイクロニードル構造の少なくとも1つの傾斜した端面を定義することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記放射する段階が、可視光線を作り出す光源を用いて行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記光を放射する段階が紫外線を用いて行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記光を放射する段階がX線を用いて行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
光源を配する段階を更に備え、
該光源は、前記光を放射する段階で用いられ、
前記光源と前記作業面との相対的位置関係が前記マイクロニードル構造の少なくとも1つの傾斜した端面を少なくとも部分的に定義することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、
前記マイクロニードルのそれぞれが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることを特徴とするマイクロニードル構造。
【請求項17】
前記マイクロニードルのそれぞれの大部分が、前記光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項15記載の構造。
【請求項18】
基礎部分を備え、
該基礎部分が前記マイクロニードルに対するベース部を形成し、
前記基礎部分が少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項16記載の構造。
【請求項19】
前記基礎部分が、その内部に少なくとも1つのチャネルを備えることを特徴とする請求項18記載の構造。
【請求項20】
前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、その内部にチャネルを備えることを特徴とする請求項16記載の構造。
【請求項21】
前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、傾斜した端面を備えることを特徴とする請求項16記載の構造。
【請求項22】
前記マイクロニードルの少なくとも2つにおいて、それぞれが、互いに異なる高さを備えることを特徴とする請求項16記載の構造。
【請求項23】
マイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、
前記マイクロニードルが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成され、
前記マイクロニードルが、その内部にチャネルを備えることを特徴とするマイクロニードル構造。
【請求項24】
前記マイクロニードルの大部分が前記光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項23記載のマイクロニードル構造。
【請求項25】
マイクロニードルを備えるマイクロニードル構造であって、
前記マイクロニードルが少なくとも部分的に光反応性樹脂から形成され、
前記マイクロニードルが傾斜した端面を備えることを特徴とするマイクロニードル構造。
【請求項26】
前記マイクロニードルの大部分が前記光反応性樹脂から形成されることを特徴とする請求項25記載のマイクロニードル構造。
【請求項27】
(a)材料の層を作業面に配する段階と、
(b)前記層を加工して、少なくとも1つの放射領域と少なくとも1つの非放射領域のうち少なくとも1つを選択的に除去し、少なくとも1つの残存領域のうち少なくとも一部分がマイクロニードル構造の少なくとも一部分の形態を定義する段階を備え、
前記加工する段階が、光の放射を用いて前記層に反応を生じせしめ、物理的変化及び化学的変化のうち少なくとも1つを前記層の材料に引き起こさせることを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2006−502831(P2006−502831A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501333(P2005−501333)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000818
【国際公開番号】WO2004/035105
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504336331)ナノ パス テクノロジーズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000818
【国際公開番号】WO2004/035105
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504336331)ナノ パス テクノロジーズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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