説明

樹脂製フェンダパネル取り付け構造

【課題】本願発明は、塗装工程において熱により樹脂製フェンダパネルが軟化することで、フェンダパネルとフロントピラー下部とが密着することにより、フロントピラー下部に塗装不良が発生することを防止することが可能な樹脂製フェンダパネル取り付け構造を提供する。
【解決手段】車両10の前輪上方に配置され車両10の側面の外板をなす樹脂製のフェンダパネルを備える車両10の樹脂製フェンダパネル取り付け構造において、樹脂製フェンダパネル12には、フロントピラー11の下部11aを覆う突出部17が一体に設けられ、フロントピラー下部11aには、突出部17を裏面側から支持する凸部1が設けられ、突出部1とフロントピラー下部11aとの間に隙間を設けるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製フェンダパネル取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前部側面には、一般的に、前輪上部に位置し外板をなすフェンダパネルが取り付けられる。従来、フェンダパネルは板金製の物が主流であった。しかし、近年、フェンダパネルの軽量化、歩行者保護、デザイン形成上の観点から、フェンダパネルを樹脂により成形する場合が増えて来ている。このような樹脂製フェンダパネルの一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−96169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製フェンダパネルは、板金製のフェンダパネルに比べ複雑な形状に成形することが可能である。図6に従来の樹脂製フェンダパネル取り付け構造の透視側面図を示す。図6に示すように、樹脂製フェンダパネルは、フロントピラー30とフェンダパネル31との接続部32の分割線の長さを短くし、且つフェンダパネル31の後端部上部の剛性を確保するために、フロントピラー30の下部30aをフェンダパネル31の後端部上部に形成した突出部33で覆う形状とする場合がある。
【0005】
しかしながら、上述した形状の樹脂製フェンダパネルを車両に取り付けた場合、電着塗装による塗装工程における熱によりフェンダパネル31が軟化して、この軟化したフェンダパネル31が、図6中にDで示すように、フロントピラー30の下部30aの上面30bに密着することで、フェンダパネル31とフロントピラー30との間に塗料を入り込ませることができなくなり、フロントピラー30の下部30aを確実に塗装することができなくなる。この場合、フェンダパネル31とフロントピラー30との接続部32の見栄えが著しく悪くなってしまう。さらに、フロントピラー30の下部30aに完全に塗装が施されていないため錆が発生する虞がある。
【0006】
このようなことから、本願発明は、塗装工程において熱により樹脂製フェンダパネルが軟化することで、フェンダパネルとフロントピラー下部とが密着することにより、フロントピラー下部に塗装不良が発生することを防止することが可能な樹脂製フェンダパネル取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための第1の発明(請求項1に対応)に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造は、
車両の前輪上方に配置され前記車両の前部側面の外板をなす樹脂製のフェンダパネルを備える車両の樹脂製フェンダパネル取り付け構造において、
前記樹脂製フェンダパネルには、フロントピラーの下部を覆う突出部が一体に設けられ、
前記フロントピラー下部には、前記突出部を裏面側から支持する凸部が設けられ、
前記突出部と前記フロントピラー下部との間に隙間を設けるよう構成されている
ことを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための第2の発明(請求項2に対応)に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造は、第1の発明に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造において、
前記凸部は、四角錘状の形状をなし、頂部に平面をなす頂面が形成されている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、車両の前輪上方に配置され車両の側面の外板をなす樹脂製のフェンダパネルを備える車両の樹脂製フェンダパネル取り付け構造において、樹脂製フェンダパネルには、フロントピラーの下部を覆う突出部が一体に設けられ、フロントピラー下部には、突出部を裏面側から支持する凸部が設けられ、突出部とフロントピラー下部との間に隙間を設けるよう構成されていることにより、例えば電着塗装による塗装工程において、熱により軟化した突出部が凸部により支えられることで、突出部の裏面がフロントピラーの下部の上面に密着してしまうことを防ぐことができるため、塗料をフェンダパネルとフロントピラーとの間に入り込ませることができる。これにより、フロントピラーの下部が確実に塗装されるため、フェンダパネルとフロントピラーとの接続部の見栄えを損なうことを防ぐことができる。
【0010】
第2の発明によれば、第1の発明による効果に加え、凸部は、四角錘状の形状をなし、頂部に平面をなす頂面が形成されていることにより、熱により軟化したフェンダパネルを面で支持することができ、点による支持に比べ支持点への荷重の集中を分散させることができるため、突出部によりフェンダパネルの形状が変形してしまうことを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造の一実施形態について、図1〜図5を用いて説明する。図1は本願発明の一実施形態に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造の透視側面図、図2は本願発明の一実施形態に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造におけるフロントピラーの斜視図、図3は図2にA−Aで示す断面でのフロントピラーの断面図、図4は図2にB−Bで示す断面でのフロントピラーの断面図、図5は本願発明の一実施形態に係る車両の斜視図である。なお、各図中において、Frは車両前方を、Inは車幅方向内側を、Upは車両上方を示す。
【0012】
以下、本願発明の一実施形態に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造について説明する。図5に示すように、車両10の前部の側面のフロントピラー11の下部11a(図1参照)には、車両前部側面の外板をなすフェンダパネル12が取り付けられている。本実施形態において、フェンダパネル12は樹脂により成形する。
【0013】
フロントピラー11下方のサイドミラー13前部には、三角形状のガラスが嵌め込まれた固定式三角窓14が形成されている。固定式三角窓14の前方には、運転席から車両左側の前輪15付近を視認するためのサイドアンダーミラー16が設置される。フェンダパネル12の上部の車両後方側の端部はフロントピラー11下部を覆うように突出部17が形成されている。
【0014】
図1に示すように、フロントピラー11の下部11aを覆う突出部17の下面側で、フロントピラー11の下部11aの上面11bには、フェンダパネル12の上部の後端部を支持する凸部1が形成されている。フロントピラー12下方の固定式三角窓14(図5参照)が配置される部分には、ガラスやサイドアンダーミラー16(図5参照)を設置するためのフランジ18が形成されている。
【0015】
図2に示すように、凸部1は、四角錘状の立体形状となっており、頂部には平坦な頂面2が形成されている。この凸部1はフロントピラー11と一体成形してもよいし、別部材により形成しても良い。フロントピラー11の車幅方向内側には、ウィンドシールドガラス19(図5参照)が設置されるフランジ20が形成されている。なお、図2においては、フェンダパネル12の図示は省略する。
【0016】
図3に示すように、凸部1の頂面2の上方側には、傾斜面(上側傾斜面3)が形成されており、頂面2の下方側には、傾斜面(下側傾斜面4)が形成されている。このため、フロントピラー12の下部11aの上面の位置よりも凸部1の頂面2の位置の方が高くなっている。図3中に一点鎖線で示すように、フェンダパネル12(図1参照)の突出部17は、突出部17の裏面と凸部1の頂面2とで接触するように取り付けられている。
【0017】
また、図4に示すように、頂面2の車幅方向内側には、傾斜面(内側傾斜面5)が形成されており、車幅方向外側には、傾斜面(外側傾斜面6)が形成されている。このため、フロントピラー11の下部の上面の位置よりも凸部1の頂面2の位置の方が高くなっている。図4中に一点鎖線で示すように、フェンダパネル12(図1参照)の突出部17は、突出部17の裏面と凸部1の頂面2とで接触するように取り付けられている。
【0018】
このように、フェンダパネル12の突出部17は、上端部側において凸部1と接触することで、図1中にCで示すようにフロントピラー11の下部11aと突出部17との間に空間を形成することができる。そして、電着塗装による塗装工程において、熱により軟化した突出部17が凸部1により支えられることで、突出部17の裏面がフロントピラー11の下部11aの上面11bに密着してしまうことを防ぐことができるため、塗料をフェンダパネル12とフロントピラー11との間に入り込ませることができる。なお、フェンダパネル12を凸部1で支持する程度であれば、凸部1の頂面2とフェンダパネル12との間に塗料を入り込ませることが可能であるため、凸部1の頂面2にも問題なく塗装を施すことができる。
【0019】
また、凸部1の形状を四角錘状とし、頂部に平面をなす頂面2を形成したことにより、熱により軟化したフェンダパネル12を面で支持することができるため、突出部17によりフェンダパネル12の形状が変形してしまうことを防ぐことができる。すなわち、単に点による支持であると軟化したフェンダパネル12の支持点に荷重が集中してしまうため、面による支持が有効となる。なお、頂面2の面積は、熱により軟化したフェンダパネル12の形状を変化させてしまわない程度の面積でありさえすればよく、形状についても四角錘状以外にも円錐状や三角錘状等としても良い。
【0020】
以上のように、本実施形態に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造によれば、フロントピラー11の下部11aが確実に塗装されるため、フェンダパネル12とフロントピラー11との接続部21(図1参照)の見栄えを損なうことを防ぐことができる。特に、固定式三角窓14前部にサイドアンダーミラー16が設置される場合には、フェンダパネル12とフロントピラー11との接続部21に乗員の視線が集まりやすいため有効である。また、フロントピラー11の下部11aに確実に塗装を施すことができるため、錆の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明の一実施形態に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造の透視側面図である。
【図2】本願発明の一実施形態に係る樹脂製フェンダパネル取り付け構造におけるフロントピラーの斜視図である。
【図3】図2にA−Aで示す断面でのフロントピラーの断面図である。
【図4】図2にB−Bで示す断面でのフロントピラーの断面図である。
【図5】本願発明の一実施形態に係る車両の斜視図である。
【図6】従来の樹脂製フェンダパネル取り付け構造の透視側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 凸部
2 頂面
3 上側傾斜面
4 下側傾斜面
5 内側傾斜面
6 外側傾斜面
10 車両
11 フロントピラー
11a フロントピラー下部
11b フロントピラー下部上面
12 フェンダパネル
13 サイドミラー
14 固定式三角窓
15 前輪
16 サイドアンダーミラー
17 フェンダパネル突出部
18,20 フランジ
19 ウィンドシールドガラス
21 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前輪上方に配置され前記車両の前部側面の外板をなす樹脂製のフェンダパネルを備える車両の樹脂製フェンダパネル取り付け構造において、
前記樹脂製フェンダパネルには、フロントピラーの下部を覆う突出部が一体に設けられ、
前記フロントピラー下部には、前記突出部を裏面側から支持する凸部が設けられ、
前記突出部と前記フロントピラー下部との間に隙間を設けるよう構成されている
ことを特徴とする樹脂製フェンダパネル取り付け構造。
【請求項2】
前記凸部は、四角錘状の形状をなし、頂部に平面をなす頂面が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製フェンダパネル取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−162415(P2008−162415A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354232(P2006−354232)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】