説明

樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造並びにこれを具えた容器

【課題】 ペットボトル等のボトルキャップの蓋開け時に、ボトル本体側に残るエンドリングをボトル本体から容易に取り外すための、樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造並びにこれを具えた容器を提供する。
【解決手段】 ボトル本体1に残るエンドリング25に形成されているかえし体250は、一部範囲でかえし体250を形成しない状態の誘導用かえし非設部255により分断され、一方、リング止め上フランジ15は、その一部に誘導用フランジ切り欠き部151を形成し、誘導用かえし非設部255と、誘導用フランジ切り欠き部151とを互いに隣接配置した除去開始定点設定状態とすることにより、エンドリングに対するリング止め上フランジ15による規制を一部範囲において解除した有効誘導ゾーンZを確保し、この部位においてエンドリング25に対しその除去開始にあたっての取り外し誘導傾斜姿勢を現出させるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばペットボトル等のボトルキャップの蓋開け時に、ボトル本体側に残るエンドリングをボトル本体から容易に取り外すための、樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造並びにこれを具えた容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、飲料容器としてポリエチレンテレフタレートを主材料とするいわゆるペット(PET)ボトルが普及している。このペットボトルを回収して再資源化するにあたっては、できるだけ単一素材として回収されることが望ましく、社会啓発の成果から少なくとも異種材料であるキャップ本体やラップフィルムについては、容易に除去できることもあって、取り外された状態で回収に持ち込まれている。しかしながらキャップには蓋が開けられた状態を確認できるようにボトル本体側に残るエンドリングが弱化部を介して設けられており、この部材についてはその取り外しが極めて面倒であるため、ほとんどの場合、エンドリングを付けたままボトル本体が回収されているのが現状であった。このような現状を考慮してこのエンドリングの除去を行い易くする手工具の提案や、キャップとボトル本体との相互の構造を工夫した提案等がなされている。このうち手工具については一般家庭に手工具を用意させるまでの意識を求めるのは現実性がなく、普及には至っていない。また容器自体の構成についても現状の製品の量産態勢を維持できる現実的な改良は多くは提案されておらず、実際市場にも登場していない。
【0003】
本発明に関連する先行技術としては、特開2006−232392「キャップ周状バンドをボトル口部より容易に取り除くことの出来るキャップ付きボトル型樹脂容器」が挙げられる。このものは技術的着眼として、前記エンドリング(キャップ周状バンド)の抜け止め規制をしているリング止め上フランジ(ボトル口部周方向突起8)を一部スロープ状に切り欠き、且つエンドリングを収める部位に、このスロープ状の切り欠きにエンドリングのかえしフラップ(突片7)を誘導する突起13を形成し、エンドリングを回転させることにより、この切り欠きを開始点としてエンドリングをリング止め上フランジから外すように構成したものである。しかしならがこの先行技術にあっては、エンドリングが上下のリング止めフランジに挟まれて全体的な変形が規制されていることから、実際には切り欠きに誘導されるような充分な変形状態は得られないか、またはその状態を現出させるとすれば、いわば怪力とでも言うべき操作力を要し、結果的に目的は達成し切れていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−232392
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況を考慮してなされたものであって、エンドリングの取り外しを行うにあたり、エンドリング自体の変形を前提とせず、単にエンドリングの姿勢を傾けるようにするだけで、容易に且つ確実に取り外しができるようにした、新規なエンドリングの除去構造並びにこれを具えた容器を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造は、ボトル本体の蓋閉め部に取り付けられるボトルキャップに付設され、蓋開け時にキャップ本体から切り離されて、ボトル本体におけるリング止め上フランジ下方に残るエンドリングを、ボトル本体から取り外して除去する構造において、
前記エンドリングは、その内周側に、リング止め上フランジの下方に残るための抜け止め用のかえし体を具え、且つかえし体は、一部範囲でかえし体を形成しない状態の誘導用かえし非設部により分断されるように構成され、
一方、前記リング止め上フランジは、その一部に誘導用フランジ切り欠き部を形成し、
前記誘導用かえし非設部と、誘導用フランジ切り欠き部とを互いに隣接配置した除去開始定点設定状態とすることにより、エンドリングに対するリング止め上フランジによる規制を一部範囲において解除した有効誘導ゾーンを確保し、この部位においてエンドリングに対しその除去開始にあたっての取り外し誘導傾斜姿勢を現出させるようにしたことを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項2記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造は、前記請求項1記載の要件に加え、前記誘導用フランジ切り欠き部を形成する一対の切り欠き端面は、そのうちの少なくとも操作方向側における切り欠き端面が、除去操作方向側に向かって誘導傾斜面を構成していることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項3記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造は、前記請求項2記載の要件に加え、前記除去操作方向は、ボトルキャップの緩め方向と逆方向であることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項4記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記有効誘導ゾーンは、ボトル蓋閉め部の周方向範囲において50°〜100°の範囲に設定されることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項5記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記誘導用かえし非設部の寸法であるかえし非設部寸法は、誘導用フランジ切り欠き部の寸法である切り欠き部寸法と同じか、またはそれより短い寸法に設定されることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項6記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造は、前記1、2、3、4または5記載の要件に加え、前記エンドリングとボトル本体との間には、除去開始定点設定状態を現出させるためのインジケータが形成されていることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項7記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造は、前記請求項6記載の要件に加え、前記インジケータは、リング止め上フランジの下方に設けられるリング止め下フランジの一部を切り欠いて合わせ凹部を形成するとともに、エンドリングにも対応する合わせ凹部を形成することによって構成したことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項8記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造は、前記1、2、3、4、5、6または7記載の要件に加え、前記ボトルキャップを前記ボトル本体に製造時において初期閉栓するにあたり、初期閉栓時におけるボトルキャップと一体のエンドリングの停止位置は、エンドリング側インジケータが容器側インジケータよりボトルキャップの緩め側にズレていることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項9記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造を具えた容器は、前記請求項1〜8記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造を具えていることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項10記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造を具えた容器は、前記請求項9記載の要件に加え、前記容器には、エンドリングを除去するための操作説明が設けられていることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0016】
まず請求項1記載の発明によれば、エンドリングを除去開始定点設定状態とすれば、そのときのみ除去操作のための有効誘導ゾーンが充分確保され、エンドリングに対し取り外し誘導傾斜姿勢を確実に現出させることができ、エンドリングの容易且つ確実な取り外しが可能となる。一方キャップを開ける前の段階では、誘導用かえし非設部と誘導用フランジ切り欠き部とを隣接させず、除去開始定点設定状態としなければ、エンドリングとリング止め上フランジとの規制に関しては、相互に非規制範囲が分散され、結果的にエンドリングは取り外し誘導傾斜姿勢が得られない。従って実質的に従来と同様にエンドリングの保持がされた状態であり、製造時に蓋を閉める工程、並びに消費者が蓋を開栓する場合にあっても、エンドリングの除去構造の存在が不都合をもたらさない。
【0017】
また請求項2記載の発明によれば、取り外し誘導傾斜姿勢を現出させた後、エンドリングにほとんど変形を与えなくとも取り外し開始動作ができるとともに、スムーズなエンドリングの回転ができ、エンドリングの除去操作が容易に且つ確実に行い得る。
【0018】
また請求項3記載の発明によれば、キャップ本体を開ける動作に伴ってエンドリングも外れてしまうような現象の発生が確実に回避できる。
【0019】
また請求項4記載の発明によれば、有効誘導ゾーンはボトル蓋閉め部全周のほぼ1/4程度の範囲であるから、キャップ本体の開栓時にエンドリングを切り離すのに充分な回転範囲が確保でき、その結果エンドリングが外れてしまうような現象の発生を回避しながら開栓できる。
【0020】
また請求項5記載の発明によれば、誘導用フランジ切り欠き部と誘導用かえし非設部のそれぞれの寸法設定により実用上充分な有効誘導ゾーンが確保できる。
【0021】
また請求項6記載の発明によれば、エンドリングを取り外すにあたり、インジケータの適宜のマークを合わせることにより、容易に誘導用かえし非設部と、誘導用フランジ切り欠き部とを互いに隣接配置した除去開始定点設定状態とすることができ、エンドリングの除去動作が容易に開始できる。
【0022】
また請求項7記載の発明によれば、前記インジケータは窪みにより形成されているものであり、インジケータによる指示がより明確化され、且つ手探りの状態でも操作がし得る。このことは例えば視覚障害のある人でも確実に操作できることを意味し、いわゆるユニバーサルデザイン対応の製品が提供し得る。
【0023】
また請求項8記載の発明によれば、ボトルキャップの初期開栓時にエンドリングが不用意に外れてしまうことがない。
【0024】
また請求項9記載の発明によれば、上記各エンドリングの除去構造を具えた容器が提供され、容器としての機能が向上し、またいわゆるエコロジカルな処理ができる。
【0025】
また請求項10記載の発明によれば、エンドリングの除去手法が、ボトル側に表示されているから、これにより消費者に対しペットボトル等の回収時にエンドリングの除去を積極的に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した容器を一部拡大して示す一部破断斜視図である。
【図2】同上容器の蓋閉め部を拡大し、ボトル本体にエンドリングが収まった状態と、これを分離した状態とを示す斜視図である。
【図3】同上縦断側面図であり、ボトル本体に対しボトルキャップを嵌めた状態と分離した状態とを併せ示すものである。
【図4】エンドキャップとボトル本体とエンドリングとの係止状態を拡大して示す断面図である。
【図5】ボトル本体からエンドリングを取り外す状態を順次示す側面図である。
【図6】ボトル本体における誘導用フランジ切り欠き部の他の実施例を示す側面図である。
【図7】ボトル本体とエンドリングの取り外しにあたっての位置合わせをするためのインジケータの他の実施例である。
【図8】容器におけるエンドリングの取り外しのための操作説明表示を付設した実施例を示す一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施する形態は、以下述べる実施例を好ましい実施形態とするとともに、更にまた本発明の技術思想内で改変し得る種々の形態を含むものでる。
【実施例】
【0028】
以下本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。まず符号Cは本発明が適用される容器であって、このものは大別すると、ボトル本体1とボトルキャップ2とにより構成され、更に両者の間には後述するボトルキャップ2から切り離されるエンドリング25の取り外し操作の手掛かりとなるインジケータ3が設けられている。ボトル本体1は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を主材料とした例えば透明なペットボトルと称される樹脂容器であって、このものには別途ラップ10が胴部11に対し巻き付けられるように取り付けられる。なおこのラップ10及びボトルキャップ2はボトル本体を構成する樹脂素材とは通常別種のものが適用され、ボトル本体1を回収するにあたっては、これらは除去されて回収されることが望まれている。
【0029】
まずボトル本体1について更に説明する。ボトル本体1の胴部11は、角筒状、円筒状、あるいは六角筒状等の100〜2000cc程度の適宜の容積を有する。この胴部11の頂部には蓋閉め部12が形成されているものであり、ここに言う蓋閉め部12は、胴部11の肩部から上方の概ねボトルキャップ2が被せられる範囲を概略的に蓋閉め部とするものである。蓋閉め部12の上端は、注ぎ口13が開放され、注ぎ口13の近くから下方に向かってオネジ山14が適宜形成されている。なおオネジ山14は、連続した螺旋オネジ状のほか、適宜一部分断される等、適宜の形状を具える。そしてこのオネジ山14の更に下方には、リング止め上フランジ15が形成される。更にリング止め上フランジ15に対向してその下方にはリング止め下フランジ16が形成されるものであり、通常その径はリング止め下フランジ16の方が径が大きく形成される。このリング止め下フランジ16を形成部位の一例として利用し、前記インジケータ3における容器側インジケータ31が設けられる。これらリング止め上フランジ15とリング止め下フランジ16とにより、その間が実質的に凹陥するように形成されるが、この部分をリング収め部17とする。このリング収め部17の高さ方向の寸法は、後述するエンドリング25を保持した状態でエンドリング25が上下に幾分か動くような、言わばガタを有する余裕のある寸法設定としている。またリング止め上フランジ15の上方であって、オネジ山14より下方の間は、後述するエンドリング25の抜け出しが、まず図られる部位であり、ここをリング抜け出し部18とする。
【0030】
そして本発明の特徴部分であるリング止め上フランジ15に関しては次のような構成がとられている。まずリング止め上フランジ15は図1、4に拡大して示すように、その一部に誘導用フランジ切り欠き部151が形成される。この誘導用フランジ切り欠き部151を構成する一対の切り欠き端面152、153については、そのうちの少なくともエンドリング25の除去操作方向側における切り欠き端面152が、一例としてエンドリング25の除去操作方向(矢印Dで示す)側に向かって誘導傾斜面152fを構成している。なお除去操作方向Dとは、後述するようにエンドリング25を取り外し誘導傾斜状態にした後、回転させて取り外し操作をすることから、その回転させる方向を言うものであって、この実施例では一例として右回り方向(図5中、矢印は左向きとなる)であるが、左回り設定とすることも可能である。またこの実施例では、対向する他の切り欠き端面153についても、除去操作方向側の切り欠き端面14とほぼ平行した傾斜面を形成している。これら各切り欠き端面152、153は、図1〜5に示す実施例では、対向しているそれの面自体は平行ではなく、幾分か外開き状となっている。特に切り欠き端面152については、その稜部を誘導縁152eとし、その最外端部を頂縁部152tとする。なお誘導用フランジ切り欠き部151の開口幅を切り欠き部寸法W1とするものであり、また除去操作方向側の切り欠き端面152については、その下端付近がエンドリング25の取り外しのための誘導開始点Pとなる。また前述したリング止め下フランジ16における容器側インジケータ31は、誘導用フランジ切り欠き部151の形成部位に設けられている。
【0031】
次にボトル本体1に嵌め込まれるボトルキャップ2について説明する。このものはキャップ本体21に対し、その内側にメネジ山22が形成され、前記オネジ山14と螺合してボトルキャップ2の締め付け、固定をする。そしてキャップ本体21は弱化部23を介してエンドリング25と一体に形成されている。弱化部23は具体的には一定間隔毎に点在する複数の接続位置で両者が一体に成形されているものであり、使用時にキャップ本体21を緩め方向に回してゆくと、エンドリング25は、リング止め上フランジ15に阻止されて上昇が阻まれる一方、キャップ本体21は上昇し、この上昇を受けて弱化部23が破損され、エンドリング25を残した状態でキャップ本体21が開栓されるようになるのである。もちろんエンドリング25とキャップ本体21との切り離し構造はこのような形態に限らず、開栓時にエンドリング25の回転が阻まれる状態を現出させた上で、キャップ本体21のねじり開栓操作により両者が弱化部23において分離するものも存在する。
【0032】
以下このエンドリング25を、その一例を挙げて説明する。まずこのエンドリング25は円環状のリング本体25Aに対し、その内側に抜け止め用のかえし体250を具えるものであり、本発明の実施例では複数片のかえしフラップ251によりかえし体250を構成したものを例示する。すなわち図1、2、3に示すようにリング本体25Aの内側には円周を一例として八等分したうちの7カ所にかえしフラップ251が形成されるものであり、その自由端252が上方に向かうとともに自然状態で幾分か内側に傾倒状態を維持している。そしてその基部側はリング本体25Aと一体に射出成形されている。
【0033】
これらかえしフラップ251は、それぞれかえしフラップ幅寸法WFを有し、隣接するかえしフラップ251に対しては、かえしフラップ間ギャップ254を確保しながら隣接するように設けられている。そしてその一部において、一枚のかえしフラップ251を排除したような誘導用かえし非設部255が形成される。この誘導用かえし非設部255の幅を、かえし非設部寸法W2とするものであり、このものは本実施例ではかえしフラップ幅寸法WFに対し、かえしフラップ間ギャップ寸法WGの2倍の寸法を加えた寸法となるものである。なお、かえしフラップ251一片当たりのピッチ寸法を、かえしフラップピッチ寸法WPとするものであり、このものは実質的にかえしフラップ幅寸法WFと、かえしフラップ間ギャップ寸法WGとの和となる。なお、かえしフラップ251については、エンドリング25の除去動作の説明においては、誘導用かえし非設部255に後続するものから順に、f1、f2・・・fnとしても併せ表示し、特に誘導用かえし非設部255の直後のかえしフラップ251については、誘導開始フラップf1としても表記する。そして前述したインジケータ3のうち、エンドリング側インジケータ32は、この誘導開始フラップf1の形成される部位に設けられる。
【0034】
なお、このかえし体250は、分断形成されているタイプの場合、上記のようにかえしフラップ251のような可動タイプのものではなく、固定した多数の突起状のものや、あるいは可動タイプであっても揺動(可動)方向をリング収め部17を言わば頸締め状に周方向としたもの等が存在する。またかえし体250が分断されず、リング本体25Aの内周面に連続し、且つ上端縁を自由状態とした、リップ状のものも存在する。しかしながら、いずれの形態であっても、前記誘導用かえし非設部255を設けることにより、本発明の目的とする作動は達成できる。
【0035】
本発明の第一の実施例は以上述べたような構成を有するものであり、以下その作動態様を説明するが、それに先立ち、ボトルキャップ2に要求される機能について説明する。ボトルキャップ2は、製造から廃棄の段階まで、状況毎に要求される機能が異なり、これら異なる機能を総合的に満足させることが必要である。すなわちこれら機能は、(1)初期閉栓時(製造時)機能、(2)輸送陳列時機能、(3)初期開栓時機能、(4)飲用時機能、(5)再閉栓時機能、(6)再開栓時機能、(7)廃棄時機能である。
【0036】
まず(1)初期閉栓時(製造時)機能としては、エンドリング25を伴ったボトルキャップ2が迅速確実にボトル本体1に装着できることであり、特にエンドリング25が円滑にリング収め部17に進入できる構造、機能が要求される。また(2)輸送陳列時機能としては、確実な閉栓維持とエンドリング25の維持機能が要求される。また(3)初期開栓時機能としては、エンドリング25がスムーズにキャップ本体21から切り離され、且つリング収め部17に確実に残留する機能が要求される。更にまた(4)飲用時機能としては、エンドリング25がリング収め部17にとどまり、飲用者の唇に触れるような姿勢変化がないようにする機能である。更にまた(5)再閉栓時機能としては、エンドリング25が、キャップ本体21の下端周面に概ね接近し、その部位の汚損等を防止する機能である。更にまた(6)再開栓時機能としては、キャップ本体21の開栓動作に応じてエンドリング25も抜け出してしまうような事態の発生を完全に防ぐ機能である。そして(7)廃棄時機能としては、それまで確実に装着されていることを求められていたエンドリング25を、極めて容易にボトル本体1から取り外すことができる機能である。
【0037】
本発明はこの(7)廃棄時機能を具えたボトルキャップ2のエンドリング25の除去構造を、上記各機能を満足させながらも実現し得たものである。換言すれば、上記各機能は廃棄時機能を除いて、すべて実用化が達成されていたものであり、従って本発明の本質は、すでに実用化が達成されていた機能を何ら阻害することなく、新たな廃棄時機能を発揮させる点にある。すなわちエンドリング25は平常時は外れることを完全に阻止しているが、一旦廃棄のためにエンドリング25を外す必要が生じた場合には、次のように作動してエンドリング25の取り外し除去が容易になされる。
【0038】
すなわち図5に示すように、まず始発状態においてはインジケータ3を利用して容器側インジケータ31とエンドリング側インジケータ32とを位置合わせする(図5(a−1)〜(a−5)参照)。なお図5(a−1)〜(a−5)は、説明のため円筒状の蓋閉め部12の側面を平面的に引き延ばしたような形態で図示している。
この始発準備の状態にあっては、誘導用フランジ切り欠き部151と、誘導用かえし非設部255とが隣接した除去開始定点設定状態となる。この状態をエンドリング25から見ると、リング止め上フランジ15による上方への規制が存在しない状態となっている。すなわち図5(a−1)に示すように誘導用フランジ切り欠き部151の設けられている範囲では、エンドリング25については、かえしフラップ251が存在するものの、上方への移動は許容されている。一方、誘導用フランジ切り欠き部151の除去操作方向側に隣接するリング止め上フランジ15が存在する部位では、エンドリング25側において、誘導用かえし非設部255が存在するから、エンドリング25はこの範囲でも上方への移動が許容されている。
【0039】
そしてこの範囲を有効誘導ゾーンZとするものであり、またその寸法を有効誘導ゾーン寸法W3として示すものである。有効誘導ゾーン寸法W3は、切り欠き部寸法W1と、かえし非設部寸法W2との和であり、有効誘導ゾーンZが形成される状態は、容器側インジケータ31とエンドリング側インジケータ32が合致した除去開始定点設定状態となったときのみもたらされる。
このように有効誘導ゾーン寸法W3が確保されているときには、エンドリング25の取り外し誘導傾斜姿勢が容易に得られる。すなわち図5(a−2)、図4(b−2)に示すようにインジケータ3の部分を上方に指等で押圧すると、この部位においてはエンドリング25を規制するためのリング止め上フランジ15は存在しないから、その上方への移動が許容される。更にそれに隣接する除去操作方向側においては、エンドリング25側において誘導用かえし非設部255が設けられ、かえしフラップ251が存在しないから、たとえその上方にリング止め上フランジ15が存在したとしても、この部位においてもエンドリング25の上方への移動が許容される。その結果、図4、5に示すように、エンドリング25は、リング収め部17に保持されながらも、リング収め部17の上下方向の寸法余裕も加わって、微視的には変形があるものの、基本的には傾斜するだけの姿勢、すなわち取り外し誘導傾斜姿勢を容易に現出させるのである。
【0040】
なおここでエンドリング25の傾きについて説明すると、図4(b−1)〜(b−6)、図4(c−1)〜(c−2)に示すように定常時には、エンドリング25はリング止め下フランジ16に載った状態で、その傾き角は0°である。そして定常時であってもエンドリング25は、リング収め部17内で上下方向の余裕寸法により多少の遊び(上下方向のガタ)があり、図4(b−1)に仮想線で示すように、このガタを利用してエンドリング25が傾くと傾き角β0が出現する。そして更に取り外し誘導傾斜状態での傾き角β1は、傾き角β0より更に大きくなる。そしてエンドリングの取り外し動作が進むと、図4(b−2)〜(b−5)に示すように、その傾き角β2、β3、β4、β5は更に増加するものであり、その際の作動態様を以下に説明する。なお図4における傾き角β0〜β5並びに図示は理解を助けるため、実施よりは誇張して表現している。
【0041】
すなわち、このような取り外し誘導傾斜姿勢が得られた状態で、更に指先の操作により、エンドリング25を図5(a−3)中、矢印Dで示す右回り状(平面的に図示すると矢印Dは左方向に向いている)に移動させると、かえしフラップ251のうち、最初の誘導開始フラップf1、すなわち誘導用かえし非設部255に後続する誘導開始フラップf1は、リング止め上フランジ15における切り欠き端面152における誘導開始点Pに乗り、その誘導傾斜面152f(更に微視的には誘導縁152e)に案内されて上方にずれてゆくのである(図5(a−3)、図4(b−3)〜(b−4)参照)。これを継続することにより、図5(a−4)〜(a−5)、図4(b−2)〜(b−5)に示すように、かえしフラップ251における後続のかえしフラップf2、f3、・・・fn(この実施例ではf7)が順次リング止め上フランジ15をあたかも斜めに横切るようにしてリング収め部17からリング抜け出し部18に移動してゆくのである。この際、リング収め部17からリング抜け出し部18側へ、エンドリング25自体が自然に向かうようになる境界位置は、誘導縁152e上における頂縁部152tの位置であり、図5(a〜1)〜(a−3)に示すように、除去開始定点設定状態からわずかの回転でリング抜け出し部18側への移動傾向が得られる。
更に詳しく見れば、図5(a−3)の III−III 線拡大断面図において、リング止め上フランジ15における最大径部、すなわち頂縁部152tを通る部位を頂縁線125tLで表し、またかえしフラップ251における自由端252を通る線を自由端線252Lで表すと、かえしフラップ251の自由端線252Lが、頂縁線152tLを越えさえすれば、図中矢印A方向にエンドリング25がすり抜ける傾向が与えられるのである。結果的にエンドリング25は、ほとんど変形することなく、単に姿勢を傾けるだけで確実な除去が図られる。そしてエンドリング25がリング収め部17側に抜け出したとはいえ、エンドリング25の内周下方は、リング止め上フランジ15に覆い被さる状態を呈しており、図示の限りでは図5(a−5)に示すように視覚的には、あたかも抜け出しきれていないかの状態に表現される。なおその後は、逆にオネジ山14の緩み方向に沿うように、例えば左回りに回転させながら外すことが可能である。なおこのような取り外し手法については、図8に示すようにボトル本体1またはラップ10に操作説明表示4を設けておくことによって、消費者に確実なエンドリング25の取り外し処理に対する意識を醸成し、分別回収を促すものである。
【0042】
以上本発明の要点であるエンドリング25の除去操作について説明したが、先に述べたボトルキャップ2に対して状況毎に要求される機能と、エンドリング25の除去構造との関係について以下説明する。まず設計時においては、オネジ山14とメネジ山22とのそれぞれの形成位置をあらかじめ設計することにより、初期閉栓時に、除去開始定点設定状態とならないようにすることが可能である。加えて初期閉栓時では、キャップ本体21とエンドリング25との分離にあたってキャップ本体21を回転させることを考慮すると、初期閉栓時のエンドリング25の停止位置、すなわちキャップ本体21を伴ったボトルキャップ2の締め込み完了位置は、エンドリング側インジケータ32が、容器側インジケータ31と適宜角度、ボトルキャップ2の緩め側にズレて位置していることが必要である。この状況、位置関係をそれぞれ初期閉栓状態または初期閉栓位置と定義し、更にこの状態における容器側インジケータ31とエンドリング側インジエータ32とのズレを初期ズレ設定角度θSとすると、図3(c)に示すように初期閉栓状態における初期ズレ設定角度θSは理論的には1°程度でも差し支えないが、実際上は、5°〜90°程度の範囲に設定される。そして初期閉栓位置からボトルキャップ2を緩め方向(左回し)に回し、仮にエンドリング25が途中で切り離された場合でもエンドリング25も一緒に回ったとして、エンドリング25が除去開始定点設定状態を現出させるまでの角度を、開栓余裕角度θMとすると、この開栓余裕角度θMは270°〜355°程度確保される。多くの仕様のボトルキャップ2は開栓余裕角度θMの範囲でキャップ本体21とエンドリング25の切り離しが完了する。
【0043】
このような状況は前述のボトルキャップに求められる(1)初期閉栓時(製造時)機能、(2)輸送陳列時機能、(3)初期開栓時機能を満たすものであって、閉栓が確実に実行、維持され、初期開栓時にもエンドリング25の脱落等を回避している。そして一旦開栓後は、除去開始定点設定状態という極めて限定された状態、つまりボトル本体1とエンドリング25との相互の関係が、一周360°の範囲中、0°から誤差ガタを見込んでも1°〜2°程度のズレ状態に収まっていない限り、エンドリング25が外れてしまう条件である取り外し誘導傾斜姿勢はとり得ないこととなる。従ってこの状況はボトルキャップ2に求められる前記(4)飲用時機能、(5)再閉栓時機能、(6)再開栓時機能を満たすものであって、エンドリング25が確実にリング収め部17にとどまっている状況を現出させている。
【0044】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた形態を最良の形態の一つとするものであるが、更に次のような構成がとり得る。まず図6(a−1)、(a−2)に示す実施例は、リング止め上フランジ15が比較的薄い厚さ寸法のときの切り欠き端面の状態を示すものであり、この場合には誘導傾斜面152fが形成されながらも正面視で傾斜した状態には形成されない。更に図?に示すものは誘導用フランジ切り欠き部151の他の実施例であって、この誘導用フランジ切り欠き部151は必ずしも切り欠き端面152を傾斜させなくともよい実施例である。すなわちリング止め上フランジ15の形成方向と直交する方向、すなわち垂直方向に単純に形成したものであってもよい。この実施例が可能であることからわかるように、本発明は傾斜した切り欠き端面152を具えた誘導用フランジ切り欠き部151を必須とするものではなく、要は誘導用フランジ切り欠き部151が存在し、且つ一方でエンドリング25側に誘導用かえし非設部255が設けられていることとにより、エンドリング25に対し取り外しのための取り外し誘導傾斜姿勢を充分に現出させることができるようにし、容易にエンドリング25の取り出しを可能とすることを特徴とするものである。
【0045】
また更に図7に示す実施例は、インジケータ3の他の実施例であり、凹陥形としたインジケータ3Rの他の実施例である。すなわちリング止め下フランジ16の一部を切り欠き、容器側インジケータ31Rを形成し、一方エンドリング25もその一部を切り欠き、エンドリング側インジケータ32Rを形成し、これらを合わせることにより取り外しの操作開始状態すなわち除去開始定点設定状態を得るようにしたものである。この構成によれば、指先の感触でエンドリング25の取り外しのための操作開始状態が容易に得られ、視覚障害のある人でも操作が行い易く、いわゆるユニバーサルデザイン対応の製品が提供し得る。そして特にエンドリング側インジケータ32Rは、その凹み形状を正面視で上すぼまり状、横断面視で上張出状(庇状)とすることが望ましい。このようにするときには、インジケータ3Rの除去開始定点設定状態を捉えた指先が、そのままエンドリング25を上方にずらせ易いように掛かっており、エンドリング25を取り外し誘導傾斜姿勢としながら直ちに除去操作に入ることができる。なおインジケータ3については、上記各実施例が好ましいものの、単に除去開始定点設定状態のみを案内し、除去開始にあたってエンドリング25を上方に押し上げる位置については別位置とすることも可能である。
【0046】
また更に図8に示す実施例は本発明のエンドリング25の除去構造を消費者に周知させるための表示であり、このような表示をすることによって、より積極的に分別資源回収を促すものである。更に前記説明において、ボトル本体1については、最も普及しているいわゆるPETボトルを例に挙げたが、これ以外の材料、例えば従来のガラス容器等であっても本発明が適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ボトル本体
10 ラップ
11 胴部
12 蓋閉め部
13 注ぎ口
14 オネジ山
15 リング止め上フランジ
151 誘導用フランジ切り欠き部
152 切り欠き端面
152e 誘導縁
152f 誘導傾斜面
152t 頂縁部
152tL 頂縁線
153 切り欠き端面
16 リング止め下フランジ
17 リング収め部
18 リング抜け出し部
2 ボトルキャップ
21 キャップ本体
22 メネジ山
23 弱化部
25 エンドリング
25A リング本体
250 かえし体
251 かえしフラップ
252 自由端
252L 自由端線
254 かえしフラップ間ギャップ
255 誘導用かえし非設部
3 インジケータ
31 容器側インジケータ
32 エンドリング側インジケータ
3R 凹陥タイプのインジケータ
31R 凹陥タイプの容器側インジケータ
32R 凹陥タイプのエンドリング側インジケータ
4 操作説明表示
P 誘導開始点
W1 切り欠き部寸法
W2 かえし非設部寸法
Z 有効誘導ゾーン
W3 有効誘導ゾーン寸法
WF かえしフラップ幅寸法
WG かえしフラップギャップ間寸法
WP かえしフラップピッチ寸法
f1 誘導開始フラップ
f2〜fn 後続のかえしフラップ
C 容器
D 矢印(除去操作方向を示す)
θS 初期ズレ設定角度
θM 開栓余裕角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル本体の蓋閉め部に取り付けられるボトルキャップに付設され、蓋開け時にキャップ本体から切り離されて、ボトル本体におけるリング止め上フランジ下方に残るエンドリングを、ボトル本体から取り外して除去する構造において、
前記エンドリングは、その内周側に、リング止め上フランジの下方に残るための抜け止め用のかえし体を具え、且つかえし体は、一部範囲でかえし体を形成しない状態の誘導用かえし非設部により分断されるように構成され、
一方、前記リング止め上フランジは、その一部に誘導用フランジ切り欠き部を形成し、
前記誘導用かえし非設部と、誘導用フランジ切り欠き部とを互いに隣接配置した除去開始定点設定状態とすることにより、エンドリングに対するリング止め上フランジによる規制を一部範囲において解除した有効誘導ゾーンを確保し、この部位においてエンドリングに対しその除去開始にあたっての取り外し誘導傾斜姿勢を現出させるようにしたことを特徴とする樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造。
【請求項2】
前記誘導用フランジ切り欠き部を形成する一対の切り欠き端面は、そのうちの少なくとも操作方向側における切り欠き端面が、除去操作方向側に向かって誘導傾斜面を構成していることを特徴とする請求項1記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造。
【請求項3】
前記除去操作方向は、ボトルキャップの緩め方向と逆方向であることを特徴とする請求項2記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造。
【請求項4】
前記有効誘導ゾーンは、ボトル蓋閉め部の周方向範囲において50°〜100°の範囲に設定されることを特徴とする請求項1、2または3記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造。
【請求項5】
前記誘導用かえし非設部の寸法であるかえし非設部寸法は、誘導用フランジ切り欠き部の寸法である切り欠き部寸法と同じか、またはそれより短い寸法に設定されることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造。
【請求項6】
前記エンドリングとボトル本体との間には、除去開始定点設定状態を現出させるためのインジケータが形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造。
【請求項7】
前記インジケータは、リング止め上フランジの下方に設けられるリング止め下フランジの一部を切り欠いて合わせ凹部を形成するとともに、エンドリングにも対応する合わせ凹部を形成することによって構成したことを特徴とする請求項6記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造。
【請求項8】
前記ボトルキャップを前記ボトル本体に製造時において初期閉栓するにあたり、初期閉栓時におけるボトルキャップと一体のエンドリングの停止位置は、エンドリング側インジケータが容器側インジケータよりボトルキャップの緩め側にズレていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造。
【請求項9】
前記請求項1〜8記載の樹脂製ボトルキャップのエンドリング除去構造を具えていることを特徴とする容器。
【請求項10】
前記容器には、エンドリングを除去するための操作説明が設けられていることを特徴とする請求項9記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−6105(P2011−6105A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151245(P2009−151245)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【特許番号】特許第4560127号(P4560127)
【特許公報発行日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(503343462)
【出願人】(506252071)
【Fターム(参考)】