説明

樹脂製収納ボックスの摺動部構造

【課題】車両走行時の収納ボックス11からの低級音の発生を抑制し、かつ筐体7の格納部9からの円滑な出入れを可能とする樹脂製収納ボックスの摺動部構造を実現する。
【解決手段】収納ボックス11の底壁11a裏面には、被係合口23aを有する対の受座23,23が突設され、筐体7の底壁9a表面には、舌状係合片部27を支持する対の支持座29,29が突設されている。格納状態では、舌状係合片部27が被係合口23aに挿入係合される。収納ボックス11の底壁11a裏面には、対の受座23,23の出入れ直交方向両側に補強レール18が設けられ、筐体7の底壁9a表面には、補強レール18を摺動可能に支持する補強レール受け15が設けられている。補強レール18の下端部19aには、対の受座23,23の間に対応する位置に突起部19bが設けられているとともに、受座23近傍に対応する位置に切欠き部19cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製収納ボックスの摺動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の車体後部に設けられた荷室のフロアパネルを下方に凹陥させることにより収納ボックス格納部を形成し、該収納ボックス格納部に収納ボックスを車体後方から出入れ可能に格納した格納構造が開示されている。この収納ボックスの格納構造では、収納ボックス格納部奥側に設けられた突出片を収納ボックス奥側に設けられたストライカーに係合させることにより、収納ボックスの格納状態を保持することができる。また、収納ボックスを引き出す過程において、収納ボックス格納部前側に設けられたセーフティレバーをリアエンドフレームの下端に係合させることにより、収納ボックスが収納ボックス収納部から勢い余って脱落しないようにしている。
【特許文献1】特開2001−322500号公報(段落0039欄、図6、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の収納ボックスの格納構造では、収納ボックス格納部前側のセーフティレバーはリアエンドフレームの下端に係合されていないことから、車両走行時などに収納ボックスが収納ボックス格納部内で上下左右方向にがたつく恐れがある。
【0004】
この問題を解決するために、本発明者は、収納ボックス及び収納ボックス格納部を備える筐体の出入れ方向前後2箇所の底壁構造に特徴を有する樹脂製収納ボックスの格納構造を設計した。具体的には、この格納構造は、収納ボックスの底壁裏面の出入れ方向両端近傍に、閉断面形状の被係合口を有する受座を突設するとともに、筐体の底壁表面の出入れ方向両端近傍に、舌状係合片部を支持する支持座を上記受座に対応するように突設することを特徴とするものである。
【0005】
このような格納構造を採用することにより、収納ボックスが収納ボックス格納部に格納されている格納状態では、出入れ方向両端近傍で舌状係合片部が閉断面形状の被係合口に挿入係合されることから、収納ボックスの上下左右方向の動きが規制されるので、収納ボックスを収納ボックス格納部にがたつくことなく安定して格納することができる。
【0006】
また、該収納ボックスを収納ボックス格納部から引出す操作に関しては、収納ボックスを引き出す際の摩擦抵抗を軽減し、円滑な引出し操作を行うため、例えば、収納ボックスの底壁裏面に補強レールを設けるとともに、筐体の底壁表面に該補強レールを摺動可能に支持する補強レール受けを設けることが考えられる。
【0007】
しかし、収納ボックス及び補強レールは比較的大きな部材であることから、温度変化等による歪みや反りが生じやすいので、このような補強レール及び補強レール受けを設けた場合には、収納ボックスが出入れ方向及び出入れ方向と直交する方向(以下、「出入れ直交方向」という)に反り上がることにより、補強レールの下端と補強レール受けの上面との間に隙間が生じることがある。
【0008】
図14は、収納ボックスの格納状態を模式的に示す出入れ方向に切断した断面図であり、図15は、同状態を模式的に示す出入れ直交方向に切断した断面図である。図14及び図15に示すように、収納ボックス11の底壁11a及び補強レール18に反りが生じて、補強レール18の下端と補強レール受け15の上面15aとの間に隙間が生じた場合には、車両走行中に補強レール18の下端と補強レール受け15の上面15aとが接触と非接触を繰り返すことから低級音が発生する。
【0009】
本発明者は、低級音の発生を抑制するために検討を行った結果、補強レールの下端と補強レール受けの上面との間隔が大きい場合には、車両走行中に両者が接触し難いことから、低級音の発生を回避できることを発見した。
【0010】
そこで、本発明者は、補強レールの下端部に下方に延びている突起部を設けることにより、補強レールの下端と補強レール受けの上面との間隔を意図的に拡げた構造を設計した。その結果、車両走行時における低級音の発生を抑制することが可能となった。
【0011】
しかし、補強レールの下端と補強レール受けの上面との間隔を拡げた場合には、それに伴って収納ボックスの底壁裏面と筐体の底壁表面との間隔が拡がることになる。このため、被係合口と舌状係合片部が上下逆方向に引っ張られる状態となることから、両者が強く係合することにより、収納ボックスを引き出す際の摩擦抵抗が増大するので、円滑な引出し操作を行うことが困難となることが確認された。
【0012】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両走行時における低級音の発生を抑制し、かつ収納ボックスの円滑な出入れを可能とする樹脂製収納ボックスの摺動部構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、樹脂製筐体の収納ボックス格納部に水平に出入れ可能に格納される引出し式樹脂製収納ボックスの底壁裏面には、その出入れ方向両端近傍に出入れ方向に沿った同一線上に位置するようにそれぞれ配置され、かつ、出入れ方向後側に開口する閉断面形状の被係合口をそれぞれ有する対の受座が少なくとも1対突設され、上記筐体の底壁表面には、その出入れ方向両端近傍に出入れ方向に沿った同一線上に位置するようにそれぞれ配置され、かつ、出入れ方向前側に水平に延びる舌状係合片部をそれぞれ支持する対の支持座が上記受座に対応するように少なくとも1対突設され、上記収納ボックスが上記収納ボックス格納部に格納されている状態では、上記舌状係合片部が上記被係合口に挿入係合される樹脂製収納ボックスの摺動部構造であって、上記収納ボックスの底壁裏面には、上記対の受座の、出入れ方向と直交する出入れ直交方向の両側に出入れ方向前端近傍から後端近傍まで延びる補強レールが設けられ、上記筐体の底壁表面には、上記補強レールを摺動可能に支持する補強レール受けが上記補強レールに対応するように設けられ、上記補強レールの下端部には、上記対の受座の間に対応する位置に下方に延びている突起部が設けられているとともに、上記受座近傍に対応する位置に切欠き部が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
このように補強レールの下端部に下方に延びている突起部が設けられていることから、補強レールの下端と補強レール受けの上面との間隔が拡がるので、車両走行中に低級音が発生するのを抑制することが可能となる。さらに、補強レールの下端部に切欠き部が設けられていることから、受座近傍における補強レールの剛性を低下させることができるので、突起部が設けられているにも拘わらず、被係合口と舌状係合片部が強く係合することを抑制でき、収納ボックスを引き出す際の摩擦抵抗が増大するのを防ぐことができる。
【0015】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記対の受座は、少なくとも2対突設され、上記補強レールは、上記各対の受座の出入れ直交方向両側にそれぞれ1条ずつ設けられ、上記突起部は、上記補強レールのうち最外側の補強レールにのみ設けられ、上記切欠き部は、上記補強レールのうち少なくとも最外側の補強レールに設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
ここで、収納ボックスの底壁に反りが生じた場合には、最外側の補強レールよりも内側(中央側)に位置する補強レールは、最外側の補強レールと比較して、補強レールの下端と補強レール受けの上面との間隔が大きくなる。つまり、最外側の補強レールよりも内側の補強レールは、その下端部に突起部が設けられていなくても、低級音が発生し難くい。したがって、第2の発明では、突起部が補強レールのうち最外側の補強レールにのみ設けられていることから、低級音の発生を効率良く抑制することができる。
【0017】
また、切欠き部が補強レールのうち少なくとも最外側の補強レールに設けられていることから、最外側の補強レールの剛性を確実に低下させることができる。これにより、最外側の補強レールに突起部が設けられているにも拘わらず、最外側の補強レール近傍で、受座の被係合口と支持座の舌状係合片部が強く係合するのを防ぐことができる。したがって、収納ボックスを引き出す際の摩擦抵抗が増大するのを確実に防ぐことができる。
【0018】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記突起部は、前側受座近傍又は後側受座近傍に対応する位置に設けられ、上記切欠き部は、上記突起部側の受座近傍に対応する位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
ここで、突起部が前側受座近傍及び後側受座近傍に対応する位置に設けられている場合には、前後両側の受座及び支持座で、受座の被係合口と支持座の舌状係合片部が強く係合する。また、突起部が対の受座の略中間に対応する位置に設けられている場合にも、前後両側の受座及び支持座で、受座の被係合口と支持座の舌状係合片部が強く係合する。よって、これらの場合に、円滑な引出し操作を行うためには、前側受座近傍及び後側受座近傍に対応する位置に切欠き部を設けなければならない。
【0020】
一方、第3の発明のように、突起部が前側受座近傍又は後側受座近傍に対応する位置に設けられている場合には、突起部側の、受座の被係合口と支持座の舌状係合片部は強く係合するが、突起部とは反対側の、受座の被係合口と支持座の舌状係合片部は強く係合しない。したがって、円滑な引出し操作を行うためには、第3の発明のように、突起部側の受座近傍に対応する位置に切欠き部を設ければよいので、補強レールの下端部に切欠き部が設けられている箇所を減少できる。これにより、補強レールの剛性を低下させる箇所数が少なくなるので、収納ボックスの出入れ方向における剛性を保持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、収納ボックスの円滑な引出し操作を行うために、収納ボックスの底壁裏面に補強レールを設けた場合にも、該補強レールの下端部には、対の受座の間に対応する位置に下方に延びている突起部が設けられていることから、補強レールの下端と補強レール受けの上面との間隔を保持することができるので、車両走行時における収納ボックスからの低級音の発生を抑制することができる。
【0022】
さらに、補強レールの下端部には、受座近傍に対応する位置に切欠き部が設けられていることから、受座近傍における補強レールの剛性を低下させることができるので、被係合口及び舌状係合片部が強く係合することを抑制し、収納ボックスを引き出す際の摩擦抵抗が増大するのを防ぐことができる。
【0023】
これらにより、車両走行時における低級音の発生を抑制できるとともに、収納ボックスの円滑な出入れが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は車両1の車体3後部に設けられた荷室5を示し、該荷室5のフロア(図示せず)下方には2個の樹脂製筐体7が車幅方向に並設されている。該各筐体7は、底壁9a、両側壁9b及び後壁9cで形成されて平面視略矩形状の格納部9を備え(図4〜図6参照)、車幅方向右側の筐体7の格納部9には、平面視略矩形状の引出し式樹脂製収納ボックス11が車体3後方から出入れ可能に格納されている。車幅方向左側の筐体7の格納部9には、収納ボックス11は格納されておらず、例えば長尺物を直接格納するようになっているが、ここにも車幅方向右側の筐体7と同様に収納ボックス11を格納してもよい。以下、収納ボックス11が格納されている車幅方向右側の筐体7の格納部9を収納ボックス格納部9と称呼する。なお、図1では、2個の筐体7を上方から覆うトランクボードは省略している。
【0026】
上記収納ボックス11は、図2及び図3に示すように、底壁11a、両側壁11b、前壁11c及び後壁11dで浅皿状に形成され、上記前壁11cはカバー11eで覆われている。また、収納ボックス11の底壁11a裏面の出入れ方向両端近傍には、図3に拡大して示すように、閉断面矩形状の被係合口23aを有する受座23が2つずつ一体にそれぞれ突設されている。これら受座23の被係合口23aは出入れ方向後側(奥側)が開口し、出入れ方向前側(手前側)が閉じられている。上記被係合口23aには、後述する舌状係合片部27(図4参照)が挿入係合されて受座23により受支されるようになっている。また、出入れ方向に沿った同一線上に位置するようにそれぞれ配置されている受座23が対の受座23,23をなしている(構成している)。つまり、収納ボックス11の底壁11a裏面には、2対の受座23,23が設けられている。以下、対の受座23,23のうち出入れ方向前側のものを前側受座23fと、後側のものを後側受座23rと呼ぶ。
【0027】
上記収納ボックス11の底壁11a裏面には、上記各対の受座23,23の出入れ方向と直交する方向(以下、「出入れ直交方向」という)の左右両側に、補強レール18が該受座23,23と出入れ直交方向に間隔をあけて出入れ方向前端近傍から後端近傍まで延びるように突設されている。この補強レール18は、出入れ直交方向(収納ボックス幅方向)に間隔をあけて並ぶ2枚の平行板19,19が、出入れ方向(収納ボックス前後方向)に間隔をあけて並ぶ複数のリブ20で連結された梯子形状に形成されている。図3に示す収納ボックス11では、1対の受座23,23に対し、補強レール18がその両側にそれぞれ1条ずつ設けられている。つまり、2対の受座23,23に対し、4条の補強レール18,…が突設されている。また、補強レール18の下端部19aには、下方に延びている後述する突起部19bが設けられているとともに、後述する切欠き部19cが設けられている(図11及び図12参照)。
【0028】
また、上記収納ボックス11の底壁11a裏面の出入れ方向後端近傍、つまり後側受座23rの出入れ方向前側(前壁23c(図8参照)寄り)にはストッパ25が突設されている。このストッパ25は出入れ直交方向に間隔をあけて並ぶ5本のリブ25aと出入れ方向に間隔をあけて並ぶ2本のリブ25bとが交差して形成されている。なお、両側壁11b及び後壁11dの外周には縦方向及び横方向に延びる複数本のリブ21(図7参照)が形成されている。上記ストッパ25のリブ25b(前壁11c側のリブ25b)を後側受座23rの前壁と兼用することができる。こうすることにより、ストッパ25を特別に設ける必要がなくなり構造を簡単にできるのでコストを低減できる。
【0029】
一方、筐体7の底壁9a表面の出入れ方向両端近傍には、図4及び図5に示すように、支持座29が上記受座23に対応するように2つずつ一体にそれぞれ突設されている。出入れ方向に沿った同一線上に位置するようにそれぞれ配置されている支持座29が対の支持座29,29をなしている。つまり、筐体7の底壁9a表面には、2対の支持座29,29が設けられている。以下、対の支持座29,29のうち出入れ方向前側のものを前側支持座29fと、後側のものを後側支持座29rと呼ぶ。また、上記各支持座29には、出入れ方向前側に水平に延びる舌状係合片部27がこの支持座29に一体に突設されて支持されている。さらに、後側支持座29rの後壁はなだらかに傾斜している(図8参照)が、前側支持座29fの後壁29aは収納ボックス格納部9の底壁9aに対して直角に形成されて上記ストッパ25が当接する当接部を兼ねている(図10参照)。
【0030】
また、筐体7の底壁9a表面には、出入れ方向前端近傍から後端近傍まで延びる4条の補強レール受け15,…が上記収納ボックス11の補強レール18に対応するように突設されている。この補強レール受け15は、上記補強レール18の下端(平行板19の下端)を支持する水平な上面を備えるように折り曲げ加工された板で形成されている。また、補強レール18の脱線を防ぐため、補強レール受け15の上面の出入れ直交方向の両端部は、水平な上面よりも高くなるように山折りされている(図9参照)。補強レール受け15は、上記各対の支持座29,29の出入れ直交方向両側にそれぞれ1条ずつ設けられていて、補強レール18を摺動可能に受けている。さらに、上記補強レール18は補強レール受け15に支持されているので、筐体7の底壁9aと上記収納ボックス11の底壁11aとの間には、空間が確保されている。このため、筐体7の底壁9aと上記受座23及びストッパ25とは干渉することがなく、また収納ボックス11の底壁11aと上記支持座29とは干渉することがない。
【0031】
さらに、上記筐体7の側壁9b上端の長手方向(出入れ方向)中央には、舌状の延出部33が内方に向かって側突され、上記収納ボックス11を格納した際には、該収納ボックス11の側壁11b上端に臨むように収納ボックス11内方向に延出している。この延出部33を形成するための型抜き孔35が底壁9aと側壁9bとに連続して形成されている。上記延出部33は上記収納ボックス11を収納ボックス格納部9から引き出して、上記ストッパ25が上記前側支持座29fの後壁29a(当接部)に当接している状態で、延出部33が上記収納ボックス11後端の側壁11b上端に僅かな間隔をあけて臨むようになっている。
【0032】
上記のように構成された収納ボックス格納部9に上記収納ボックス11を格納した状態では、該収納ボックス11が、収納ボックス格納部9に挿入されて、図6及び図7に示すように、筐体7の側壁9bと収納ボックス11の側壁11bに形成されたリブ21とが僅かな隙間をあけて出入れ方向への動きを許容するように収納ボックス格納部9に格納されている。このように収納ボックス11が上記収納ボックス格納部9に格納されている状態では、図8〜図10に示すように、上記筐体7及び収納ボックス11の底壁9a,11aにおける前後左右の4箇所で上記支持座29の舌状係合片部27が受座23の被係合口23aに挿入係合されて受座23により受支されている。上記支持座29と舌状係合片部27には、下方へ向けて凹部29bが設けられていると共に、上記舌状係合片部27の両側端に下方に向けてリブ27sが設けられているので上記舌状係合片部27の剛性を向上させることができる。具体的には4個の支持座29と受座23とは、上記舌状係合片部27の上下両面27d,27eが、被係合口23aの上下内面に当接しているとともに、上記舌状係合片部27の両側端が被係合口23aの両側内面に当接している。また、上記ストッパ25と上記前側支持座29fの後壁29aとは出入れ方向に大きく離れている。
【0033】
次に、本実施形態における収納ボックスの摺動部構造について詳述する。図11及び図12に示すように、上記収納ボックス11の底壁11a裏面に設けられている上記4条の補強レール18,…のうち最外側に位置する2条の補強レール18,18にのみ、その下端部19aに下方(下側)に延びている突起部(凸部)19bが1つずつそれぞれ設けられている。具体的には、上記4条の補強レール18,…のうち最外側に位置する2条の補強レール18,18にのみ、2枚の平行板19,19の下端部19aに突起部19bが形成されている。
【0034】
また、上記突起部19bは台形状であり、上記対の受座23,23の間で、かつ、後側受座23r近傍に対応する位置に設けられている。具体的には、上記突起部19bは、ストッパ25よりも出入れ方向前方に形成されている。このように補強レール18の下端部19aに突起部19bが設けられているので、補強レール18の下端と補強レール受け15の上面15aとの間隔が拡がる。
【0035】
一方、図11に示すように、各補強レール18の下端部19a、具体的には、各補強レール18の上記2枚の平行板19,19の下端部19aには、後側受座23r近傍に対応する位置に台形状に切り欠かれた切欠き部(凹部)19cが設けられている。この切欠き部19cは、4条の補強レール18,…に設けられているが、少なくとも、上記突起部19bが設けられている最外側の補強レール18,18に設けられていればいい。このように補強レール下端部19aに切欠き部19cが設けられているので、受座23近傍における補強レール18の剛性を低下させることができる。
【0036】
−効果−
本実施形態では、収納ボックス11が収納ボックス格納部9に格納されている状態では、出入れ方向両端近傍で舌状係合片部27が閉断面形状の被係合口23aに挿入係合されて収納ボックス11の上下左右方向の動きが規制されているので、上記収納ボックス11を収納ボックス格納部9にがたつくことなく安定して格納することができる。
【0037】
また、補強レール18の下端部19aに突起部19bが設けられているので、補強レールの下端と補強レール受けの上面15aとの間隔が拡がることから、車両走行中に低級音が発生するのを抑制することが可能となる。
【0038】
加えて、上記突起部19bは4条の補強レール18,…のうち最外側に位置する2条の補強レール18,18にのみ設けられている。図15に示すように、収納ボックス11の底壁11a及び補強レール18に反りが生じた場合には、中央に位置する2条の補強レール18,18では、最外側の補強レール18,18と比較して、補強レールの下端と補強レール受けの上面15aとの間隔が大きくなる。つまり、中央に位置する2条の補強レール18,18は、その下端部19aに突起部19bが設けられていなくても、低級音が発生し難くい。したがって、4条の補強レール18,…のうち最外側の補強レール18,18にのみ突起部19bが設けられていることにより、低級音の発生を効率良く抑制することができる。
【0039】
また、補強レール18下端部19aに切欠き部19cが設けられているので、突起部19bが設けられているにも拘わらず、補強レール18の受座23近傍の部分において被係合口23aと舌状係合片部27が強く係合することを抑制でき、収納ボックス11を引き出す際の摩擦抵抗が増大するのを防ぐことができる。
【0040】
さらに、上記突起部19bは後側受座23r近傍に対応する位置に設けられていることから、後側受座23rの被係合口23aと後側支持座29rの舌状係合片部27は強く係合するが、突起部19bとは反対側の(突起部19bから離れた)、前側受座23fの被係合口23aと前側支持座29fの舌状係合片部27は強く係合しない。したがって、円滑な引出し操作を行うためには、本実施形態のように、後側受座23r近傍に対応する位置に切欠き部19cを設ければよいので、補強レール18の下端部19aに切欠き部19cが設けられている箇所を減少できる。これにより、補強レール18の剛性を低下させる箇所数が少なくなるので、収納ボックス11の出入れ方向における剛性を保持することができる。
【0041】
また、収納ボックス11が収納ボックス格納部9から引出された状態においてストッパ25が当接する前側支持座29fの後壁29aが設けられていることから、図13に示すように、収納ボックス11が収納ボックス格納部9から引出された状態でも、補強レール18の後側受座23r近傍に対応する位置が補強レール受け15に支持された状態を維持できる。つまり、補強レール18の平行板19に切欠き部を設けることにより剛性が低下した部分が、補強レール受け15に支持された状態を保つことができる。このため、収納ボックス11が引出された状態で、収納ボックス11に大きな力がかかった場合でも、剛性が低下した部分に、大きな曲げ応力が発生するのを防ぐことができる。これにより、切欠き部19cが設けられている部分が破損するのを防ぐことができる。
【0042】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、受座23及び支持座29はそれぞれ4個ずつ形成したが、数はこれに限定されない。さらに、上記実施形態では、ストッパ25と受座23は別々に設けられているが、上記ストッパ25をなくして後側受座23rの前壁で兼ねるようにしてもよい。加えて、上記実施形態では、支持座29は当接部を兼ねているが、支持座29と当接部を別々に設けてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、各対の受座23,23の出入れ直交方向両側にそれぞれ1条ずつ補強レール18を設けたが、条数はこれに限定されない。さらに、上記実施形態では、2枚の平行板19,19をリブ20で連結した梯子形状の補強レール18を用いたが、補強レール18の構造はこれに限定されるものではなく、例えば、1又は複数枚の板だけでできた補強レール18や矩形断面を有する角形棒状の補強レール18等も用いることができる。
【0044】
また、上記実施形態では、突起部19bは台形状であるが、その形状はこれに限定されるものではなく、矩形、円弧形等の形状も適用できる。但し、例えば略矩形のように、その両端に略直角の角部を有する形状の突起部を設ける場合には、補強レール18を補強レール受け15上で円滑に摺動させる必要があることから、突起部の出入れ方向両端部をR加工等により面取りすることが望ましい。また、突起部19bの高さ及び出入れ方向長さも限定されるものではなく、収納ボックス11の寸法及び対の受座23,23の間隔に応じて適宜選択することができる。
【0045】
さらに、上記突起部19bは後側受座23r近傍に対応する位置に設けられているが、対の受座23,23の間に設ける限り、その設置位置は何処でもいい。但し、突起部19bが対の受座23,23の略中間に対応する位置に設けられている場合には、前側受座23fの被係合口23aと前側支持座29fの舌状係合片部27が強く係合するとともに、後側受座23rの被係合口23aと後側支持座29rの舌状係合片部27が強く係合する。よって、円滑な引出し操作を行うためには、前側受座23f近傍及び後側受座23r近傍に対応する位置に切欠き部19cを設けることが望ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、切欠き部19cは台形状であるが、補強レール18の剛性を低下できるのであれば、その形状は限定されるものではない。但し、その両端に略直角の角部を有する形状の切欠き部を設ける場合には、上記突起部19bと同様に、補強レール18を補強レール受け15上で円滑に摺動させる必要があることから、切欠き部の出入れ方向両端部を面取りすることが望ましい。
【0047】
また、上記切欠き部19cの深さ及び出入れ方向長さも限定されるものではなく、収納ボックス11及び補強レール18の寸法、材質及び形状に応じて、受座23近傍の補強レール18の剛性を低下できる深さ及び出入れ方向長さを適宜選択することができる。
【0048】
なお、上述のように、矩形断面を有する角形棒状の補強レール18を用いる場合には、凹部を設けることにより、補強レール18の剛性を低下させることができる。
【0049】
加えて、上記実施形態では、切欠き部19cは、4条の補強レール18,…に設けられているが、少なくとも、上記突起部19bが設けられている最外側の補強レール18,18に設けられていればいい。切欠き部19cが最外側の補強レール18,18に設けられていれば、最外側の補強レール18,18の剛性を確実に低下させることができる。これにより、最外側の補強レール18,18に突起部19bが設けられているにも拘わらず、最外側の補強レール18,18近傍で、受座23の被係合口23aと支持座29の舌状係合片部27が強く係合するのを防ぐことができる。したがって、収納ボックス11を引き出す際の摩擦抵抗が増大するのを確実に防ぐことができる。なお、上記実施形態のように、切欠き部19cが4条の補強レール18,…に設けられていれば、収納ボックス11を引き出す際の摩擦抵抗が増大するのをより確実に防ぐことができる。
【0050】
また、上記実施形態では、最外側の補強レール18,18に突起部19bを設けたが、すべての補強レール18に突起部19bを設ければ、より確実に低級音の発生を抑制することができる。さらに、上記実施形態では、後側受座23r近傍に対応する位置に切欠き部19cを設けたが、後側受座23r近傍に加えて、前側受座23f近傍に対応する位置にも切欠き部19cを設ければ、収納ボックス11を引き出す際の摩擦抵抗をより低減することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、後側受座23r近傍に対応する位置に突起部19bを設けたが、これとは逆に、前側受座23f近傍に対応する位置にのみ突起部19bを設けた場合には、前側受座23f近傍に対応する位置に切欠き部19cを設けることにより、上記実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。
【実施例】
【0052】
本発明の効果を確認するために、下記の試験を行い、収納ボックスの製品評価を行った。
【0053】
<試験品>
実施例、比較例1及び比較例2では、対の受座が2対突設され、かつ補強レールを4条備えた収納ボックスと、対の支持座が2対突設され、かつ補強レール受けを4条備えた筐体を用いた。
【0054】
実施例では、収納ボックスとして、上記4条の補強レールのうち最外側の補強レールにのみ、その下端部に対の受座の間で、かつ、後側受座近傍に対応する位置に高さ1mm、出入れ方向長さ60mmの下方に延びている突起部が設けられているとともに、上記4条の補強レールの下端部に、後側受座近傍に対応する位置に深さ2mm、出入れ方向長さ125mmの切欠き部が設けられているものを用いた。また、比較例1では、収納ボックスとして、上記4条の補強レールのいずれにも突起部及び切欠き部が設けられていないものを用いた。さらに、比較例2では、収納ボックスとして、上記4条の補強レールのうち最外側の補強レールにのみ、対の受座の間で、かつ、後側受座近傍に対応する位置に高さ1mm、出入れ方向長さ60mmの突起部が設けられているものを用いた。
【0055】
<試験>
車両走行時における収納ボックスからの低級音の発生を調査するとともに、収納ボックスに100N(ニュートン)の荷重を積載した状態で、該収納ボックスを筐体の収納ボックス格納部から引出す際に要した引出し力を測定した。
【0056】
<試験結果>
収納ボックスの補強レールに突起部及び切欠き部が設けられていない比較例1では、車両走行時に低級音が発生した。これに対し、収納ボックスの補強レールの下端部に突起部が設けられている実施例及び比較例2では、比較例1に比べて低級音が抑えられた。
【0057】
一方、引出しに要する力は、収納ボックスの補強レールに突起部及び切欠き部が設けられていない比較例1では65Nであったのに対し、収納ボックスの補強レールの下端部に切欠き部が設けられていない比較例2では80Nであった。このように比較例2では比較例1に比べて引出しに要する力が15N増大したため、円滑な引出し操作が困難となった。これに対し、実施例では、収納ボックスの引出しに要する力は45Nとなり、比較例1に比べて引出しに要する力が20N減少し、また比較例2に比べて引出しに要する力が35N減少した。このように実施例では、低級音の抑制効果及び引出し力の低減効果のいずれにおいても良好な結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、樹脂製収納ボックスの摺動部構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の車体後部に配置された収納ボックス及び筐体の斜視図である。
【図2】収納ボックスを表側から見た斜視図である。
【図3】収納ボックスを裏側から見た斜視図である。
【図4】筐体を表側から見た斜視図である。
【図5】筐体の平面図である。
【図6】収納ボックスの格納状態を示す斜視図である。
【図7】図6のVII−VII線の矢視断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線の矢視断面図である。
【図9】図6のIX−IX線の矢視断面図である。
【図10】図6のX−X線の矢視断面図である。
【図11】図6のXI−XI線の矢視断面図である。
【図12】図6のXII−XII線の矢視断面図である。
【図13】収納ボックスが引き出された状態を示す、図6のXIII−XIII線に相当する位置での矢視断面図である。
【図14】収納ボックスの格納状態を模式的に示す出入れ方向に切断した断面図である。
【図15】収納ボックスの格納状態を模式的に示す出入れ直交方向に切断した断面図である。
【符号の説明】
【0060】
7 筐体
9 収納ボックス格納部
9a 底壁
11 収納ボックス
11a 底壁
15 補強レール受け
18 補強レール
19a 下端部
19b 突起部
19c 切欠き部
23 受座
23a 被係合口
23f 前側受座
23r 後側受座
25 ストッパ
27 舌状係合片部
29 支持座
29a 前側支持座の後壁(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製筐体の収納ボックス格納部に水平に出入れ可能に格納される引出し式樹脂製収納ボックスの底壁裏面には、その出入れ方向両端近傍に出入れ方向に沿った同一線上に位置するようにそれぞれ配置され、かつ、出入れ方向後側に開口する閉断面形状の被係合口をそれぞれ有する対の受座が少なくとも1対突設され、
上記筐体の底壁表面には、その出入れ方向両端近傍に出入れ方向に沿った同一線上に位置するようにそれぞれ配置され、かつ、出入れ方向前側に水平に延びる舌状係合片部をそれぞれ支持する対の支持座が上記受座に対応するように少なくとも1対突設され、
上記収納ボックスが上記収納ボックス格納部に格納されている状態では、上記舌状係合片部が上記被係合口に挿入係合される樹脂製収納ボックスの摺動部構造であって、
上記収納ボックスの底壁裏面には、上記対の受座の、出入れ方向と直交する出入れ直交方向の両側に出入れ方向前端近傍から後端近傍まで延びる補強レールが設けられ、
上記筐体の底壁表面には、上記補強レールを摺動可能に支持する補強レール受けが上記補強レールに対応するように設けられ、
上記補強レールの下端部には、上記対の受座の間に対応する位置に下方に延びている突起部が設けられているとともに、上記受座近傍に対応する位置に切欠き部が設けられていることを特徴とする樹脂製収納ボックスの摺動部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製収納ボックスの摺動部構造において、
上記対の受座は、少なくとも2対突設され、
上記補強レールは、上記各対の受座の出入れ直交方向両側にそれぞれ1条ずつ設けられ、
上記突起部は、上記補強レールのうち最外側の補強レールにのみ設けられ、
上記切欠き部は、上記補強レールのうち少なくとも最外側の補強レールに設けられていることを特徴とする樹脂製収納ボックスの摺動部構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂製収納ボックスの摺動部構造において、
上記突起部は、前側受座近傍又は後側受座近傍に対応する位置に設けられ、
上記切欠き部は、上記突起部側の受座近傍に対応する位置に設けられていることを特徴とする樹脂製収納ボックスの摺動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−254574(P2008−254574A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98661(P2007−98661)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】