説明

樹脂製容器の帯電除去方法、樹脂製容器の殺菌充填方法、樹脂製容器の充填キャッピング方法、樹脂製容器の帯電除去装置および樹脂製容器の殺菌充填システム

【課題】電子線を照射して殺菌した樹脂製容器2の壁体内部に蓄積している電荷を除去する。
【解決手段】電子線殺菌装置16で殺菌した樹脂製容器2を、フィラ112に搬入して充填を行っている間に、フィラ2の外側に設置したイオナイザ134から、樹脂製容器2の壁体内に蓄積している電荷と同極性のマイナスイオンを、この樹脂製容器2の外表面に照射する。充填ノズル132はイオナイザ134側に接続してあり、充填ノズル132から樹脂製容器2内に充填される液柱Laを介してイオンの流れる経路が形成され、充填液L中のマイナスの電荷を持つイオンがイオナイザ134側に流れるとともに、プラスの電荷を持つイオンが樹脂製容器2の内表面に引き付けられ、このプラスの電荷を持つイオンによって、樹脂製容器2の壁体の内部に滞留している電荷が中和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の壁体内部に帯電している電荷を除去する樹脂製容器の帯電除去方法、樹脂製容器を殺菌し充填を行う殺菌充填装置において、殺菌を行う過程でその樹脂製容器の壁体内部に帯電した電荷を除去する樹脂製容器の殺菌充填方法、樹脂製容器の充填キャッピング方法、樹脂製容器の帯電除去装置および樹脂製容器の殺菌充填システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PETボトル等の樹脂製容器に電子線を照射して殺菌を行う電子線容器殺菌装置は従来から広く用いられている。樹脂製容器に電子線を照射して殺菌すると、樹脂製容器が帯電することが従来から知られている。このように樹脂製容器が帯電すると埃や塵を引き寄せてしまうという問題が発生する。そこで、帯電した樹脂製容器の静電気を除去する装置が各種提案されている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0003】
前記特許文献1には、帯電物の除電装置の発明が記載されている。この帯電物の除電装置は、中空のイオン化チャンバーを備え、このイオン化チャンバーの上部中央に、空気または非反応性ガスを導入する流入口が形成され、これと対向する下部中央には、流出口が形成されている。また、イオン化チャンバーの側部には、軟X線発生装置の発生部が配設され、この発生部により発生した軟X線が、イオン化チャンバーの側面部に形成された軟X線照射窓を介して、イオン化チャンバー内に照射される。そして、イオン化チャンバー内において、空気または非反応性ガスをイオン化して、正負イオンを発生させる。また、イオン化チャンバーの内面には背面電極が設置され、前記流出口の先端部には多孔板状のフィルタ電極が設置されている。さらに、イオン化チャンバーの下部には、前記フィルタ電極と同一平面上に、板状の誘導電極が取り付けられている。そして、これら背面電極、フィルタ電極および誘導電極には交流電源が接続され、各電極に印可する電圧の極性を正負交互に切り換えるようになっている。
【0004】
前記特許文献1の帯電物の除去装置を、除電対象の樹脂フィルムの上方に設置し、イオン化チャンバー内に流入口から空気または非反応性ガスを導入し、軟X線照射窓から軟X線を照射することにより、チャンバー内に正負のイオンを生成する。そして、交流電源により、背面電極、フィルタ電極および誘導電極のそれぞれに同一極性の電圧を印可することにより、イオン化チャンバーの内部において、印可電圧の極性と同一極性のイオン(単極イオン)が生成され、一方、樹脂フィルムと対向する位置にあるフィルタ電極および誘導電極によって、樹脂フィルムの表面には、印可電圧の極性とは逆極性の電荷が誘導される。このようにイオン化チャンバー内に生成された単極イオンを樹脂フィルムの表面に吹き付けることにより、樹脂フィルムの表面に誘導された電荷およびもともと樹脂フィルム上にあった電荷が中和される。そして、交流電源により印可される電圧の極性を正負交互に切り換えることにより、樹脂フィルムの表面に誘導される電荷と、イオン化チャンバー内で生成される単極イオンの極性も正負交互に切り替わるので、この操作が繰り返される結果、樹脂フィルム内部の電荷を確実に除電することができる。
【0005】
また、特許文献2には、容器本体の帯電を抑えることができる内容物入り容器の製造方法が記載されている。この製造方法では、封止前の容器本体の口頸部に蓋体を装着し、蓋体を下に向けた状態で搬送用のホルダ内に配置する。容器の蓋体と逆側にシール部は開口しており、この封止前の容器の上方から内容物の充填ノズルを挿入し、内容物を充填する。所定量の内容物が充填されたら充填を停止し、充填ノズルを引き上げて容器本体内から取り出す。その後、容器本体内に充填された内容物に導体を嵌入させて内容物に接触させ、内容物および導体を通じて容器本体の除電を行う。
【0006】
また、他の方法として、封止前の容器本体上方から、内容物の充填ノズルおよび導体を挿入し、容器本体内に内容物を充填しながら内容物と導体とを接触させ、内容物および導体を通じて容器本体の除電を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−216453号公報
【特許文献2】特開2009−51517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載された帯電物の除電装置のように、除電対象物に対しイオンを吹き付ける構成や、特許文献2に記載された内容物入り容器の製造方法のように、容器内に充填される内容物に導体を挿入した構成では、樹脂製の容器等の内部(樹脂素材の内部)に帯電した電荷を完全に除去することはできないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、前記課題を解決するために成されたもので、樹脂製容器内に液体を供給する液体供給手段と、樹脂製容器の外表面に電荷を付与させる電荷付与手段とを備え、樹脂製容器内に液体を供給しながら、この樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と同じ極性の電荷を付与することにより、供給されている液体中の樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と逆の極性の電荷を持つイオンを、樹脂製容器の内表面に引き寄せることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載した発明は、前記請求項1に記載した発明において、前記電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項3に記載した発明は、電子線を照射して樹脂製容器を殺菌する殺菌工程と、樹脂製容器内に液体を充填する充填工程とを有する樹脂製容器の殺菌充填方法において、樹脂製容器に液体を充填する充填ノズルと、樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段とを備え、樹脂製容器内に液体を充填する動作中に、この樹脂製容器の外表面に負電荷を付与させることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4に記載した発明は、前記請求項3に記載した発明において、前記負電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項5に記載した発明は、電子線を照射して樹脂製容器を殺菌する殺菌工程と、樹脂製容器内に液体を充填する充填工程と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング工程とを有する樹脂製容器の充填キャッピング方法において、
樹脂製容器内に挿入する導体と、樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段を設け、前記充填工程とキャッピング工程の間に、樹脂製容器内に充填された液体に前記導体を接触させつつ、この樹脂製容器の外表面に負電荷付与手段により、負電荷を付与させた後、キャップを装着することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項6に記載した発明は、電子線を照射して樹脂製容器を殺菌する殺菌工程と、樹脂製容器内に液体を充填する充填工程と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング工程とを有する樹脂製容器の充填キャッピング方法において、樹脂製容器内に挿入する導体と、樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段を設け、前記充填工程とキャッピング工程の間に、この樹脂製容器の外表面に負電荷付与手段により、負電荷を付与させた後、樹脂製容器内に充填された液体に前記導体を接触させて、その後、キャップを装着することを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項7に記載した発明は、前記請求項5または請求項6において、前記負電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項8に記載した発明は、供給される樹脂製容器内に液体を供給する液体供給手段と、この液体供給手段によって液体が充填されている樹脂製容器の外表面に電荷を付与させる電荷付与手段とを備え、前記液体供給手段により樹脂製容器内に液体を供給する動作中に、この樹脂製容器の外表面に前記電荷付与手段から樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と同じ極性の電荷を付与することを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項9に記載した発明は、前記請求項8に記載した発明において、前記電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項10に記載した発明は、搬送される樹脂製容器に電子線を照射して殺菌する電子線照射手段と、電子線が照射された樹脂製容器の口部上方から樹脂製容器内に液体を吐出する充填ノズルを有する充填手段と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング手段と、前記充填手段によって液体が充填されている樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段とを備え、前記充填手段により樹脂製容器内に液体を充填する動作中に、この樹脂製容器の外表面に前記負電荷付与手段により負電荷を付与させた後に、前記キャッピング手段によりキャッピングを行うことを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項11に記載した発明は、搬送される樹脂製容器に電子線を照射して殺菌する電子線照射手段と、電子線が照射された樹脂製容器内に液体を充填する充填手段と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング手段と、前記充填手段と前記キャッピング手段の間の搬送経路に設けられ、樹脂製容器内に導体を挿入する導体挿入手段と、前記導体が挿入されている樹脂製容器の外表面に負の電荷を帯電させる負電荷付与手段とを備え、前記充填手段と前記キャッピング手段の間に、樹脂製容器内に充填された液体に前記導体を接触させつつ、この樹脂製容器の外表面に前記負電荷付与手段により負電荷を帯電させた後に、前記キャッピング手段によりキャッピングを行うことを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項12に記載した発明は、搬送される樹脂製容器に電子線を照射して殺菌する電子線照射手段と、電子線が照射された樹脂製容器内に液体を充填する充填手段と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング手段と、前記充填手段と前記キャッピング手段の間の搬送経路に設けられ、樹脂製容器内に導体を挿入する導体挿入手段と、前記導体が挿入されている樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段とを備え、前記充填手段と前記キャッピング手段の間に、負電荷を付与させた後、樹脂製容器内に充填された液体に前記導体を接触させて、その後、前記キャッピング手段によりキャッピングを行うことを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項13に記載した発明は、前記請求項10ないし請求項12に記載の発明において、前記負電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂製容器の帯電除去方法は、樹脂製容器内に液体を供給しながら、この樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と同じ極性の電荷を付与することにより、供給されている液体中の樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と逆の極性の電荷を持つイオンを、樹脂製容器の内表面に引き寄せるようにしたので、樹脂製容器の壁体内部に帯電している電荷を効果的に除去することができる。また、請求項3、請求項5および請求項6に記載した樹脂製容器の殺菌充填方法および樹脂製容器の充填キャッピング方法の発明でも、前記樹脂製容器の除電方法と同様に、樹脂製容器の壁体内部に帯電している電荷を効果的に除去することができる。さらに、請求項8、請求項10ないし請求項12に記載した発明でも前記各発明と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る樹脂製容器の帯電除去方法、および樹脂製容器の殺菌充填方法を行う殺菌充填装置の全体の構成を簡略化して示す平面図である。(実施例1)
【図2】図2は前記殺菌充填装置に設けられた電子線殺菌装置の要部の縦断面図である。
【図3】図3は前記殺菌充填装置に設けられたフィラの縦断面図である。
【図4】図4は前記殺菌充填装置のフィラとキャッパとの間に設けられた中間ホイールの縦断面図である。(実施例2)
【図5】図5は樹脂製容器の帯電除去を行う構成をリンサに設けた場合を示す縦断面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0024】
樹脂製容器内に液体を充填する充填ノズル、または樹脂製容器内に洗浄液を噴射して洗浄を行う洗浄ノズル等の液体供給手段と、前記樹脂製容器の外表面に電荷を付与させる電荷付与手段を備え、前記液体供給手段を電荷付与手段のアース側に接続してあり、液体供給手段から樹脂製容器内に液体を供給しつつ、この樹脂製容器の外面側に、樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と同極性の電荷(例えば負電荷)を付与すると、外面側に付着している樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と同極性のイオンは中和されるとともに、液体中の壁体内部に滞留している電荷と逆極性のイオン(例えばプラスイオン)が、樹脂製容器の内面側の表面に引き付けられるので、この内面側のイオンによって樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷が中和され、除去される。また、充填を終了した後、この樹脂製容器内の充填液中にアース棒を挿入した状態で樹脂製容器の外面側に、壁体内部に滞留している電荷と同極性のイオンを照射すると、前記液体供給手段と同様に樹脂製容器の内表面に、樹脂製容器の内部に滞留している電荷と逆極性のイオンが引き付けられ、同様にして中和される。
【実施例1】
【0025】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は容器を殺菌した後、液体を充填しキャッピングを行う殺菌充填装置であり(全体として符号1で示す)、図1の左側が殺菌ゾーンS、右側が充填およびキャッピングゾーンF(以下、充填ゾーンと呼ぶ)である。殺菌ゾーンSは、樹脂製容器2に電子線を照射して殺菌する際に、電子線やX線(制動X線)が外部に漏れないように遮蔽する鉛製の隔壁4によって囲まれた殺菌チャンバー6内に収容されている。この殺菌チャンバー6内は、搬入ホイール8が配置されている入口側の搬入室10と、搬入ホイール8から受け渡された容器2を回転搬送する搬送ホイール12が設けられたメイン室14と、電子線照射装置16の前面側に位置し、前記搬送ホイール12に設けられたボトル支持手段18(図2参照)によって支持されて搬送される樹脂製容器2が電子線の照射を受ける照射室20と、この照射室20の出口側(図1の右側)に連続して設けられ、電子線の照射により殺菌された樹脂製容器2を無菌状態を維持したまま容器搬送経路の下流側(充填ゾーンF)に送る搬出室22とを備えており、それぞれの室10、14、20、22が内部壁24、26、28によって区画されている。これらの隔壁4および各内部壁24、26、28には、受け渡しが行われる樹脂製容器2が通過可能な開口(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0026】
前記殺菌ゾーンSで殺菌され、その下流側の充填ゾーンFにおいて液体等の内容物が充填される容器2は、PETボトル等の樹脂製の容器2である。この樹脂製容器2は、胴部の横断面がほぼ四角形をしており(図1に簡略化して示す)、その上部に円筒状の口部2aを備えている(図2(a)参照)。この口部2aの下部寄りにフランジ2bが形成されており、このフランジ2bの上方または下方をグリッパによって把持し、あるいはフランジ2bの下面側を前記ボトル支持手段18やその他の支持手段等によって支持して、吊り下げた状態で搬送する。
【0027】
この樹脂製容器2は、エア搬送コンベヤ29によって連続的に搬送され、図示しないインフィードスクリュー等によって所定の間隔に切り離された後、前記殺菌チャンバー6の入口側に配置された搬入室10内に搬入される。搬入室10内に設けられた搬入ホイール8には、円周方向等間隔で複数のグリッパ30が設けられており、各グリッパ30が前記樹脂製容器2のフランジ2bよりも上方側を把持して搬送する。搬入ホイール8のグリッパ30に保持されて回転搬送された樹脂製容器2は、メイン室14内に配置された搬送ホイール12に引き渡される。
【0028】
メイン室14内に配置された搬送ホイール12には、円周方向等間隔で複数のボトル支持手段18が設けられており(図2(a)参照)、これら各ボトル支持手段18が樹脂製容器2のフランジ2bの下面側を支持して搬送する。前記搬入ホイール8と搬送ホイール12とは同期回転しており、受け渡し位置Aにおいて、搬入ホイール8の各グリッパ30から搬送ホイール12の各ボトル支持手段18に樹脂製容器2が受け渡される。
【0029】
搬送ホイール12の各ボトル支持手段18に支持されて回転搬送される樹脂製容器2は、照射室20内を通過し、その間に上下方向の全長に亘って全体的に電子線照射装置16から電子線の照射を受けて殺菌される。殺菌された樹脂製容器2は、照射室20に連続して設けられている搬出室22に導入され、搬出ホイール34に引き渡される。搬出ホイール34は外周部に円周方向等間隔で複数のグリッパ36が設けられており、これら各グリッパ36が、前記搬送ホイール12のボトル支持手段18が支持している樹脂製容器2の、フランジ2bよりも上部を把持して受け取る。搬出ホイール34も前記搬送ホイール12と同期回転しており、受け渡し位置Bにおいて、搬送ホイール12の各ボトル支持手段18から搬出ホイール34の各グリッパ36に樹脂製容器2が受け渡される。搬出ホイール34のグリッパ36に把持された樹脂製容器2は、この搬出室22に隣接して設けられた次のチャンバー(充填ゾーンのチャンバー37)の入口側に配置されている供給ホイール39の容器支持手段(図示せず)に受け渡されて次の工程に送られる。
【0030】
前記鉛製隔壁4の照射室20が設けられている部分に開口部4aが形成され、この開口部4aに電子線照射装置16が取り付けられている。この電子線照射装置16は、図示はしないが、樹脂製容器2に電子線を照射する真空チャンバー(加速チャンバー)を備えており、周知のように、真空チャンバー内の真空中でフィラメントを加熱して熱電子を発生させ、高電圧によって電子を加速して高速の電子線ビームにした後、照射窓16aに取り付けてあるTi等の金属製の窓箔を通して大気中に取り出して被処理物(この実施例では樹脂製容器2)に電子線を当てて殺菌等の処理を行う。なお、図1では図示を省略しているが、電子線照射装置16から電子線の照射を受ける樹脂製容器2の背後には、ビームコレクター38が設置されている(図2(a)参照)。
【0031】
次に、図2(a)、(b)により、搬送ホイール12に設けられているボトル支持手段18および殺菌時に樹脂製容器2内に挿入されるアース電極の構成について簡単に説明する。搬送ホイール12は、水平な円盤状のプレート40と、この円盤状プレート40の外周に固定された環状の回転プレート41と、この回転プレート41の上方に配置されて一体的に回転する環状の中間プレート42を備えている。これら回転プレート41と中間プレート42の外周部に、円周方向等間隔で、鉛直方向を向いた円筒状の回転軸44が、それぞれボールベアリング46、48を介して回転自在に支持されている。これら円筒状回転軸44の下端に水平な取付体50が固定されている。この取付体50の下方側に、一対のグリップ部材52A、52B(図2(a)の紙面の手前側と奥側に配置されている)が設けられており、円筒状回転軸44の真下の位置で樹脂製容器2が保持されるようになっている。なお、このボトル支持手段18は、詳細な説明は省略するが、特願2008−280304に開示されたボトル支持手段18と同様の構成を有しており、前記各グリップ部材52A、52Bをそれぞれ一対の板ばね54A、54Bの下端に取り付け、これら板ばね54A、54Bのばね力によって樹脂製容器2を保持するようになっている。
【0032】
ボトル支持手段18が取り付けられている円筒状回転軸44の、前記中間プレート42よりも上方へ突出している上端部にピニオンギヤ64が固定されている。また、前記円盤状プレート40の外周に固定された環状の回転プレート41と環状の中間プレート42の、円筒状回転軸44を支持している位置の半径方向内方側に、鉛直方向の中間軸66が、それぞれボールベアリング68、70を介して回転自在に支持されている。これら各中間軸66の上端の、前記回転軸44のピニオンギヤ64とほぼ同じ高さに、セクターギヤ72が取り付けられている。このセクターギヤ72の、搬送ホイール12の半径方向外方側を向いた面に歯が形成され前記ピニオンギヤ64に噛み合っている。
【0033】
一方、セクターギヤ72の、搬送ホイール12の半径方向内方側を向いた端部(図2(a)の左端)に垂直なピン74が貫通して取り付けられており、この垂直ピン74の上端にカムフォロア76が回転自在に支持されている。また、この垂直ピン74の下端と、前記中間プレート42の内周端に固定したばね受けピン78との間に引っ張りコイルばね80が介装され、セクターギヤ72の端部を搬送ホイール12の半径方向内方側に引きつけている。前記搬送ホイール12の円盤状プレート40の上方に、回転しない円形の固定プレート82が配置されており、その外周にセクターギヤ72を揺動させるカム84が固定されている。このカム84の外周面がカム面になっており、このカム面に沿って前記カムフォロア76が回転移動する。このカムフォロア76の回転移動に伴う半径方向への揺動によって、セクターギヤ72が前記中間軸66を中心に回動してピニオンギヤ64を回転させる。上端にピニオンギヤ64が固定されている円筒状回転軸44の下端に前記ボトル支持手段18が取り付けられており、セクターギヤ72の揺動によりピニオンギヤ64が回転し、樹脂製容器2の口部2aの上方に配置されている円筒状回転軸44が回転することによって、ボトル支持手段18に支持されて搬送されている樹脂製容器2がその重心軸を中心に回転する。この実施例では、セクターギヤ72の回動によってピニオンギヤ64を回転させることにより、樹脂製容器2を正逆に約180度回転させるようになっている。
【0034】
前記水平な取付体50には、前記円筒状の回転軸44の内部孔44aと上下に一致する位置に、貫通孔50aが形成されている。なお、前記搬送ホイール12の天面および外周面はカバー88によって覆われている。また、ピニオンギヤ64の上部は天面のカバー88まで達しており、カバー88との間は摺動可能に密封されている。このように構成することで、回転軸44およびその上部に固定されたピニオンギヤ64の円孔44a、64aは、円盤状プレート40とカバー88で囲まれた内部空間を上下に貫通し、無菌状態に維持される周囲の環境と円盤状プレート40とカバー88で囲まれる内部環境を遮断している。
【0035】
前記搬送ホイール12には、ボトル支持手段18によって搬送されている樹脂製容器2に電子線を照射する際に、この樹脂製容器2の内部に挿入するアース電極90が設けられている。アース電極90は直立した支持ロッド92の下端に取り付けられており、これらアース電極90および支持ロッド92が、前記円筒状回転軸44およびその上部に固定されたピニオンギヤ64の円孔44a、64a、下方の水平な取付体50の貫通孔50a等を上下に貫通して昇降できるようになっている。
【0036】
前記アース電極90を昇降させる構成について説明する。前記カバー88上の、円筒状回転軸44が配置されている位置よりも半径方向内方側に、直立したガイド機構94が設けられている。このガイド機構94は、図2(a)および(b)に示すように、直立したガイド部材96と、このガイド部材96の上下の複数箇所に取り付けられたガイドローラ98とを備えている。ガイドローラ98は、ガイド部材96の上下の適宜の箇所にそれぞれ一対配置されており、これらガイドローラ98と前記ガイド部材96とに支持されて昇降ロッド100が昇降するようになっている。この昇降ロッド100の下端に、水平な取付部材102を介して、前記支持ロッド92およびアース電極90が取り付けられており、昇降ロッド100の昇降によってアース電極90が昇降できるようになっている。なお、アース電極90の材質としては、ステンレス、アルミニウム、チタン等の金属やその他の導電性の材料を用いることができる。さらに、形状は丸棒状の他、断面が矩形や長方形、多角形であってもよく、外周面に多数の突起を設けるなど鋸刃状に形成したり、ブラシを設けるなどして電荷を誘導し易くなるよう構成してもよい。
【0037】
前記カバー88の天面の上方に、搬送ホイール12とは独立した水平な固定体103が設置され、その外周部上に昇降カム104が取り付けられている。一方、前記昇降ロッド100には、前記取付部材102より高い位置に水平方向の昇降部材106が固定されており、この昇降部材106の先端にカムフォロア108が取り付けられている。このカムフォロア108が前記昇降カム104の上面(カム面)を回転移動し、カム形状に応じて昇降することにより前記アース電極90が昇降する。カムフォロア108が昇降カム104によって押し上げられて最も上昇したときには、アース電極90の下端が樹脂製容器2の口部2aよりも上方に位置し、最も下降したときには、図2(a)に示すように、アース電極90の下端が樹脂製容器2の底面2c近くまで挿入される。なお、この際、昇降ロッド100の下降端は、水平な取付部材102がカバー88の天面上に固定されている支持部材110に当接することにより下降を規制されるようになっており、このときには、カムフォロア108が昇降カム104のカム面に接触しない高さで停止する。この状態ではアース電極90は、それぞれ金属製の導電性の材料からなる支持ロッド92、取付部材102、支持部材110を介して金属製の導電性の材料からなるカバー88と導通可能となってアース電極90とカバー88が通電し、アース電極90からカバー88へ電荷が流れるようになる。
【0038】
前記搬送ホイール12のボトル支持手段18に支持されて搬送されている樹脂製容器2が、電子線照射装置16から電子線を照射されて殺菌された後、搬出ホイール34のグリッパ36に受け渡されて回転搬送される。前記殺菌ゾーンSの殺菌チャンバー6に隣接して、充填ゾーンFのチャンバー37が配置されており、殺菌ゾーンSの搬出ホイール34によって回転搬送された樹脂製容器2は、充填ゾーンFのチャンバー37の入口側に配置されたフィラ112への供給ホイール39に受け渡される。
【0039】
供給ホイール39に受け渡された樹脂製容器2は、回転搬送されてフィラ112に供給される。供給ホイール39から樹脂製容器2を受け取ったフィラ112は、この樹脂製容器2を保持して回転搬送する間に液体等の内容物の充填を行う。フィラ112において充填が終了した樹脂製容器2は、フィラ112の排出ホイールとキャッパの供給ホイールとを兼ねた中間ホイール114によって取り出され、キャッパ116に供給される。キャッパ116においてキャッピングが行われた樹脂製容器2は、キャッパ116からの排出ホイール118によって取り出されて、排出コンベヤ120によって排出され次の工程に送られる。
【0040】
フィラ112は、図3に示すように、回転中心となる中央の直立した回転軸124に取り付けられた回転テーブル126の外周部に、円周方向等間隔で樹脂製容器2を保持するグリッパ128が設けられている。これら各グリッパ128は、直立したスタンド130上に半径方向外方側を向けて取り付けられており、各グリッパ128に樹脂製容器2が保持されて回転搬送される。各グリッパ128に保持された樹脂製容器2の上方に、それぞれ充填ノズル132が配置されている。この充填ノズル132は、前記回転テーブル(第1回転テーブル)126の上方に配置された第2回転テーブル133の外周部に取り付けられており、前記グリッパ128に保持されて回転搬送される樹脂製容器2に対し、給液管135を介して送られた導電性を有する液体の充填を行う。前記供給ホイール39からグリッパ128に樹脂製容器2が受け渡された後、中間ホイール114に引き渡されるまでの所定の区間(図1中のC位置からD位置までが充填領域を示す)の間、充填ノズル132から樹脂製容器2内に液体が充填される。
【0041】
前記フィラ112には、グリッパ128による容器搬送経路の外方に帯電除去手段として電圧印加式のイオナイザ134が設置されている。このイオナイザ134は、フィラ112の充填終了位置Dに近い充填の後半部の外周側に配置されており、図3に示すように、樹脂製容器2の全長に亘ってイオンを照射できる高さに位置し、必要な上下のサイズを有している。この電圧印加式イオナイザ134の構成は周知であるので詳細な説明は省略するが、先端の尖った電極針に高圧電源を用いて自発的にコロナ放電を起こす構成であり、この実施例では、マイナスの高電圧をかけることによりマイナスのイオンのみを発生させるイオナイザを採用している。前記充填ノズル132は、導電性の金属からなるフィラ112の回転軸124およびこの回転軸124を支持しているベース136等を介して、前記イオナイザ134のアース138側に接続されており、後に説明するように、充填ノズル132からイオナイザ134の間を接続するイオン経路が形成される。なお、この実施例では、フィラ112の外周側のイオナイザ134を設置する位置を、フィラ112の充填区間の終了位置Dに近い後半部にしたが、必ずしも後半部に限るものではなく、充填区間の前半部に設置しても良い。但し、充填が行われている領域(C〜D)に設置する必要があり、また、樹脂製容器2内に充填された液量が多い方が好ましい。
【0042】
以上の構成に係る殺菌充填装置1の作動について説明する。この実施例に係る殺菌充填装置で殺菌される樹脂製容器2は、ネック搬送コンベヤ29によって搬送され、所定の間隔にピッチ切りされた後、鉛製の隔壁4で囲まれた無菌チャンバー6の搬入室10内に搬入される。搬入室10内に設置された搬入ホイール8は、円周方向等間隔で複数のグリッパ30が設けられており、外部から搬入室10内に搬入された樹脂製容器2の円筒状口部2aの下部寄りに形成されているフランジ2bの上方側をグリップする。グリッパ30に保持された樹脂製容器2は、搬入ホイール8の回転によって回転搬送され、搬送ホイール12への受け渡し位置Aで、搬入ホイール8のグリッパ30から搬送ホイール12に設けられたボトル支持手段18に受け渡される。
【0043】
ボトル支持手段18は、グリップ部材52A、52Bの一方を回転方向の前方に向け、他方を回転方向の後方に向けて回転移動しており、受け渡し位置Aで、搬入ホイール8のグリッパ30に把持されている樹脂製容器2の口部2aが両グリップ部材52A、52B間に押し込まれる。両グリップ部材52A、52Bはそれぞれ板ばね54A、54Bの下端に取り付けられており、板ばね54A、54Bを強制的に押し開いて樹脂製容器2の口部2aが両グリップ部材52A、52B間に押し込まれる。その後、両板ばね54A、54Bが自らのばね力によって復帰して、図2(a)に示すように樹脂製容器2のフランジ2bの下部側を保持するとともにフランジ2bの下面を支持する。
【0044】
搬送ホイール12の回転により、ボトル支持手段18に支持されている樹脂製容器2が図1の矢印R方向に回転搬送されて電子線の照射室20内に入る。この照射室20内で電子線の照射を受ける際には、アース電極90が昇降カム104によって下降されて、図2(a)に示すように、口部2aの開口部から先端(下端)が樹脂製容器2の底面2c近くに位置する高さまで挿入される。なお、この電子線の照射を受ける区間以外の区間では、アース電極90は昇降カム104によって上昇されて、先端が樹脂製容器2の口部2aよりも上方に位置している。このようにアース電極90が内部に挿入された樹脂製容器2が、電子線照射装置16の照射窓16aの前方側を移動する間に電子線の照射を受けて殺菌される。アース電極90が無い状態で樹脂製容器2に電子線を照射すると、樹脂製容器2が帯電してしまうが、この実施例のように、電子線を照射する際に樹脂製容器2の内部にアース電極90を挿入しておくと、照射により放出されて樹脂製容器2を形成する樹脂素材を透過し、また、口部2aの開口部から樹脂製容器2内に入り込んだ電子が、アース電極90に誘導されて支持ロッド92、取付部材102、支持部材110を通じてカバー88から装置全体に流れるため、樹脂製容器2の内面および壁面の樹脂素材の内部に帯電することを抑制することができる。特に、樹脂製容器2の外面に向けて放出された電子は、電子線照射時の加速による浸透力だけでなく、樹脂製容器2の内部からアース電極90に誘導されることによっても樹脂材料を透過するよう作用され、樹脂材料の内部に滞留して帯電することが抑制される。
【0045】
なお、前記ボトル支持手段18が取り付けられている円筒状回転軸44は、上端にピニオンギヤ64が固定されてセクターギヤ72に噛み合っており、さらに、このセクターギヤ72は、上方の固定プレート82の外周に取り付けられたカム84によって揺動するようになっている。このカム84によって電子線照射装置16の前面を移動する間に、円筒状回転軸44が回転されてボトル支持手段18に支持されている樹脂製容器2が正逆に約180度回転される。このように樹脂製容器2が電子線照射装置16の照射窓16aの前面で180度回転することにより、樹脂製容器2の上下方向の全長に亘って搬送方向前後両側の内外面全体が電子線の照射を受けて殺菌される。
【0046】
前記照射室20内を通過する間に電子線の照射を受けて殺菌された樹脂製容器2は、ボトル支持手段18に支持されて回転搬送され、照射室20から隣接する搬出室22へと搬入される。搬出室22内には、搬出ホイール34が設置されており、ボトル支持手段18にフランジ2bの下方側を支持されている樹脂製容器2は、受け渡し位置Bにおいて、搬出ホイール34に設けられているグリッパ36に受け渡されてフランジ2bの上方側を把持される。搬出ホイール34のグリッパ36に保持されて回転搬送された樹脂製容器2は、次のチャンバー(充填ゾーンFのチャンバー37)の入口側に配置された供給ホイール39に受け渡される。
【0047】
供給ホイール39の図示しない容器保持手段に保持されて回転搬送された樹脂製容器2は、フィラ112に供給されてグリッパ128に保持される。フィラ112のグリッパ128に保持されて回転搬送される樹脂製容器2は、前記充填ノズル132が挿入されて所定の位置(充填開始位置C)で充填が開始される。充填領域(C〜D)を回転移動しつつ充填が継続され、次第に充填量が増加して充填領域(C〜D)の後半部に来ると、この樹脂製容器2の搬送経路の外方側に配置されている電圧印加式イオナイザ134の設置された位置に到達し、このイオナイザ134からイオンの照射を受ける。この実施例では、前記電子線照射装置16によって電子線の照射を受けた際に、アース電極90を挿入するのに加え、さらに、イオナイザ134によるイオンの照射によって、樹脂製容器2の壁体の内部に滞留している電荷の除去を行う。
【0048】
この実施例では、前記殺菌ゾーンSにおいて電子線の照射を受けて殺菌されたことにより、樹脂製容器2の壁体内部に電子、すなわちマイナスの電荷が滞留しているので、樹脂製容器2の外表面に、イオナイザ134から同極性のマイナスの電荷の照射を行う。樹脂製容器2の壁体内部にマイナスの電荷が滞留していると、樹脂製容器2の外表面と内表面(樹脂製容器2の内部側の表面)にはプラスの電荷を持つイオンが付着した状態になっている。この状態の樹脂製容器2に、外面側からマイナスイオンの照射を行うと、外表面に付着しているプラスの電荷を持つイオンが中和されるとともに、マイナスの電荷を持つイオンが外面側に浮遊することになる。その結果、樹脂製容器2の外面側と壁体内部とはマイナスの電荷が大量に存在する状態になっている。また、樹脂製容器2内に充填された充填液L、および充填ノズル132から流下している液柱Laを介して、イオナイザ134と充填ノズル132とを接続するイオンの経路が形成されているので、充填液L中のプラスの電荷を持つイオンが樹脂製容器2の内面側に引き寄せられるとともに、充填液L中のマイナスの電荷を持つイオンは、流下中の液柱Laおよび充填ノズル132を介してイオナイザ134側に流れることにより、充填液L中にはプラスの電荷を持つイオンが多量に存在する状態になっている。このようにしてイオナイザ134によるマイナスイオンの照射が終了した時点では、樹脂製容器2の外面側にはマイナスの電荷を持つイオンが大量に存在するともに壁体内部にもマイナスの電荷が存在しているので、その影響により充填液L中のプラスの電荷を持つイオンが樹脂製容器2の内面側に引き寄せられ、樹脂製容器2の壁体内部に滞留するマイナスの電荷を中和する。また、イオンの中和は乾燥しているよりも水分が多い方が反応しやすく、その後の時間の経過につれて、充填液L中のプラスの電荷を持つイオンと樹脂製容器2の壁体内部に滞留するマイナスの電荷はお互いが引き寄せられて中和することになる。このように、樹脂製容器2内に充填される充填液L内に樹脂製容器2の壁体内部に滞留するマイナスの電荷と逆の極性であるプラスの電荷を持つイオンを大量に発生させることにより、イオンの中和反応が大気中よりも水中の方が促進されるという性質から、大気中でイオンを照射して中和させるよりも効果的に除電が可能になる。また、充填液Lにはプラスの電荷を持つイオンが大量に存在することから、イオナイザを照射した後でも反応が継続されることになり、樹脂製容器2の壁体内に残留しているマイナスの電荷を大幅に低減することができる。なお、この実施例では、充填ノズル132をイオナイザ134側のアース138に接続して、充填液L中のマイナスイオンをイオナイザ134側に流すようにしたが、必ずしもイオナイザ134側に接続する必要はなく、充填ノズル132をイオナイザ134と別にアースを取るようにしても良い。
【実施例2】
【0049】
前記実施例では、フィラ112による容器搬送経路の外周側に、電圧印加式イオナイザ134を設置したが、必ずしもフィラ112による充填中にイオンの照射を行う必要はなく、その他の箇所でイオンの照射を行うようにイオナイザを設置するようにしても良い。この実施例2では、イオナイザ234を、フィラ112からの排出ホイールとキャッパ116への供給ホイールを兼ねた中間ホイール114による容器搬送経路の外方側に設置している。一方、フィラ112から取り出した樹脂製容器2をキャッパ116に供給する中間ホイール114には、図4に示すように、樹脂製容器2内に充填されている充填液L中に挿入する電極棒(請求項3に記載したアース棒)140が設けられている。
【0050】
中間ホイール114は、その回転中心の直立した回転軸142の外周に第1回転ホイール144が設けられており、この第1回転ホイール144の外周部に円周方向等間隔で樹脂製容器2を保持するグリッパ146が設けられている。さらに、この第1回転ホイール144の上方に第2回転ホイール148が設けられており、この第2回転ホイール148の外周部に、前記各グリッパ146に保持されている樹脂製容器2と上下に対応するように、それぞれ電極棒140が配置されている。各電極棒140は、第2回転ホイール148に上方を向けて固定された昇降シリンダ150に、水平な取付プレート152を介して鉛直方向下方を向けて固定されており、昇降シリンダ150の作動によって昇降できるようになっている。電極棒140は、上昇時には、下方の樹脂製容器2に干渉しない位置に(図4に示す位置)、そして下降時には、樹脂製容器2の口部から充填液Lの内部まで挿入されるようになっている。この電極棒140は、いずれも導電性の金属からなる水平な取付プレート152、昇降シリンダ150、第2回転プレート148、直立した回転軸142および固定のベース154等を介して、イオナイザ234側に接続されており、電極棒140を、樹脂製容器2内に充填されている充填液L中に挿入したときには、この充填液Lを介して、電極棒140からイオナイザ234へのイオンの経路が形成される。
【0051】
この実施例2の構成では、昇降シリンダ150によって電極棒140を下降させ、充填液L中に挿入した状態で、電圧印加式イオナイザ234によって樹脂製容器2の外表面にマイナスイオンを照射する。樹脂製容器2の壁体の内部には、マイナスの電荷が滞留しており、外表面と内表面にはプラスの電荷を持つイオンが付着した状態になっている。従って、イオナイザ234によって外面側からマイナスイオンを照射すると、外面側に付着しているプラスの電荷を持つイオンが中和される。また、充填液L中のプラスの電荷を持つイオンが樹脂製容器2の内面に引き付けられるとともに、充填液L中のマイナスの電荷は、電極棒140からイオナイザ234への回路を通って流出する。この実施例でも、電子線の照射による殺菌を行ったために樹脂製容器2の壁体の内部に滞留しているマイナスの電荷を大幅に低減することができる。
【実施例3】
【0052】
前記各実施例では、電圧印加式イオナイザ134、234を、フィラ112による搬送経路の外側に、またはフィラ112からの排出ホイール(中間ホイール114)の外側に設置して、液体Lが充填されている樹脂製容器2の外表面にマイナスイオンを照射することにより、樹脂製容器2の壁体内部に滞留していたマイナスの電荷を中和して、低減するようにしたが、必ずしも液体Lが充填されている樹脂製容器2に対しイオンの照射を行う構成に限るものではなく、例えば、リンサによって洗浄液が吹き込まれている樹脂製容器に対し、外面側からイオンの照射を行うようにしても、同様に壁体内部の電荷を低減することができる。
【0053】
図5は、リンサ300の外側に電圧印加式イオナイザ334を設置した第3の実施例を示す図である。この実施例のリンサ300は、中央の回転軸302の外周面に取り付けられている回転ホイール304の外周部に円周方向等間隔で複数の洗浄ノズル306が設けられている。これら各洗浄ノズル306の半径方向内方側に、それぞれボトルグリッパ308が配置されている。これらボトルグリッパ308は水平な支点ピン310を中心に回転できるようになっており、保持している樹脂製容器2を倒立させてその口部を前記洗浄ノズル306の吐出口に向かい合う位置(図5に示す位置)と、洗浄ノズル306から外れた位置との間で往復回動できるようになっている。この洗浄ノズル306は、取り付けられている回転ホイール304、直立した回転軸302およびこの回転軸302を回転自在に支持するベース312等の導電性の金属から構成された部材を介して、電圧印加式イオナイザ334側に接続されてアースされている。
【0054】
この実施例では、前記各実施例のように樹脂製容器2内に液体Lが充填されている状態ではないが、洗浄ノズル306から樹脂製容器2の内部側の底面2cに向けて洗浄液を噴射して洗浄している間に、イオナイザ334から樹脂製容器2の外表面にマイナスイオンを照射することにより、前記各実施例と同様の作用効果を奏することができる。洗浄ノズル306から洗浄液を噴射して洗浄している間は、洗浄ノズル306から樹脂製容器2の底面2cに吹き付けられた洗浄液が、樹脂製容器2の内部側の表面に沿って流れ落ちている。この状態のときにイオンを照射すると、樹脂製容器2の内面を流下している洗浄液Lbおよび洗浄ノズル306から樹脂製容器2の底面2cに吹き付けられている液柱Lcを介して、洗浄ノズル306とイオナイザ334とが導通し、プラスの電荷を持つイオンが前述のように洗浄ノズル306、回転ホイール304、回転軸302およびベース312等を通ってイオナイザ334のアース側に流れるとともに、洗浄液Lb中のプラスの電荷を持つイオンが樹脂製容器2の内表面に引き寄せられる。このように充填された液体が入っている樹脂製容器2でなくとも、リンス中で有れば、洗浄ノズル306から噴射されている洗浄液の液柱Lcおよび樹脂製容器2の内表面を流れている洗浄液Lcを介して、洗浄ノズル306をアースすることができるので、前記各実施例と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0055】
2 樹脂製容器
132 液体供給手段(充填ノズル)
306 液体供給手段(洗浄ノズル)
134 イオン照射手段
234 イオン照射手段
334 イオン照射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製容器内に液体を供給する液体供給手段と、樹脂製容器の外表面に電荷を付与させる電荷付与手段とを備え、樹脂製容器内に液体を供給しながら、この樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と同じ極性の電荷を付与することにより、供給されている液体中の樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と逆の極性の電荷を持つイオンを、樹脂製容器の内表面に引き寄せることを特徴とする樹脂製容器の帯電除去方法。
【請求項2】
前記電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製容器の帯電除去方法。
【請求項3】
電子線を照射して樹脂製容器を殺菌する殺菌工程と、樹脂製容器内に液体を充填する充填工程とを有する樹脂製容器の殺菌充填方法において、
樹脂製容器に液体を充填する充填ノズルと、樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段とを備え、樹脂製容器内に液体を充填する動作中に、この樹脂製容器の外表面に負電荷を付与させることを特徴とする樹脂製容器の殺菌充填方法。
【請求項4】
前記負電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製容器の殺菌充填方法。
【請求項5】
電子線を照射して樹脂製容器を殺菌する殺菌工程と、樹脂製容器内に液体を充填する充填工程と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング工程とを有する樹脂製容器の充填キャッピング方法において、
樹脂製容器内に挿入する導体と、樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段を設け、前記充填工程とキャッピング工程の間に、樹脂製容器内に充填された液体に前記導体を接触させつつ、この樹脂製容器の外表面に負電荷付与手段により、負電荷を付与させた後、キャップを装着することを特徴とする樹脂製容器の充填キャッピング方法。
【請求項6】
電子線を照射して樹脂製容器を殺菌する殺菌工程と、樹脂製容器内に液体を充填する充填工程と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング工程とを有する樹脂製容器の充填キャッピング方法において、
樹脂製容器内に挿入する導体と、樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段を設け、前記充填工程とキャッピング工程の間に、この樹脂製容器の外表面に負電荷付与手段により、負電荷を付与させた後、樹脂製容器内に充填された液体に前記導体を接触させて、その後、キャップを装着することを特徴とする樹脂製容器の充填キャッピング方法。
【請求項7】
前記負電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の樹脂製容器の充填キャッピング方法。
【請求項8】
供給される樹脂製容器内に液体を供給する液体供給手段と、この液体供給手段によって液体が充填されている樹脂製容器の外表面に電荷を付与させる電荷付与手段とを備え、前記液体供給手段により樹脂製容器内に液体を供給する動作中に、この樹脂製容器の外表面に前記電荷付与手段から樹脂製容器の壁体内部に滞留している電荷と同じ極性の電荷を付与することを特徴とする樹脂製容器の帯電除去装置。
【請求項9】
前記電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とする請求項8に記載の樹脂製容器の帯電除去装置。
【請求項10】
搬送される樹脂製容器に電子線を照射して殺菌する電子線照射手段と、電子線が照射された樹脂製容器の口部上方から樹脂製容器内に液体を吐出する充填ノズルを有する充填手段と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング手段と、前記充填手段によって液体が充填されている樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段とを備え、前記充填手段により樹脂製容器内に液体を充填する動作中に、この樹脂製容器の外表面に前記負電荷付与手段により負電荷を付与させた後に、前記キャッピング手段によりキャッピングを行うことを特徴とする樹脂製容器の殺菌充填システム。
【請求項11】
搬送される樹脂製容器に電子線を照射して殺菌する電子線照射手段と、電子線が照射された樹脂製容器内に液体を充填する充填手段と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング手段と、前記充填手段と前記キャッピング手段の間の搬送経路に設けられ、樹脂製容器内に導体を挿入する導体挿入手段と、前記導体が挿入されている樹脂製容器の外表面に負の電荷を帯電させる負電荷付与手段とを備え、前記充填手段と前記キャッピング手段の間に、樹脂製容器内に充填された液体に前記導体を接触させつつ、この樹脂製容器の外表面に前記負電荷付与手段により負電荷を帯電させた後に、前記キャッピング手段によりキャッピングを行うことを特徴とする樹脂製容器の殺菌充填システム。
【請求項12】
搬送される樹脂製容器に電子線を照射して殺菌する電子線照射手段と、電子線が照射された樹脂製容器内に液体を充填する充填手段と、充填が終了した樹脂製容器にキャップを装着するキャッピング手段と、前記充填手段と前記キャッピング手段の間の搬送経路に設けられ、樹脂製容器内に導体を挿入する導体挿入手段と、前記導体が挿入されている樹脂製容器の外表面に負の電荷を付与させる負電荷付与手段とを備え、前記充填手段と前記キャッピング手段の間に、負電荷を付与させた後、樹脂製容器内に充填された液体に前記導体を接触させて、その後、前記キャッピング手段によりキャッピングを行うことを特徴とする樹脂製容器の殺菌充填システム。
【請求項13】
前記負電荷付与手段が、前記樹脂製容器の外表面にイオンを照射するものであることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれかに記載の樹脂製容器の殺菌充填システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−11775(P2011−11775A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156096(P2009−156096)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】