樹脂製熱交換器ユニット及びその製造方法、並びに熱交換器
【課題】直管部と曲管部を有する樹脂製のパイプ部と複数の樹脂製のフィン部とが一体成形され、信頼性が高く、熱交換効率が優れ、製造工程の簡単な樹脂製熱交換器ユニットを提供する。
【解決手段】直管部2と曲管部3を交互かつ連続的に有する樹脂製のパイプ部1と、該パイプ部1に連接する複数の樹脂製のフィン部4と、が一体に射出成形されてなる樹脂製熱交換器ユニット。
【解決手段】直管部2と曲管部3を交互かつ連続的に有する樹脂製のパイプ部1と、該パイプ部1に連接する複数の樹脂製のフィン部4と、が一体に射出成形されてなる樹脂製熱交換器ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換器に関し、詳しくは、パイプ部及び熱交換効率を上げるためのフィン部とが一体に成形された樹脂製熱交換器ユニット及び該ユニットを用いた熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器は、例えば金属チューブ或いはパイプに金属製フィンを溶接などの手段で接合し、これをヘッダータンクにかしめなどの手段で一体化したものが用いられている。近年、地球環境負荷を軽減するために、自動車など車両の軽量化による燃費向上のニーズが高まっている。家電OA分野でも軽量化小型化の強い要請があり、斯様なニーズに対して従来の熱交換器に対して、材料置換や形状の最適化を図る動きが活発化している。具体的には全ての構成部品を樹脂化したオール樹脂熱交換器が提案されつつある。構成部品を樹脂化することにより形状の自由度が広がり、熱交換効率を確保できれば装置全体として軽量化、小型化が図れるメリットは非常に大きいと考えられている。
【0003】
樹脂製の熱交換器の例として、例えば特許文献1には、単一の冷媒流通孔を有する樹脂チューブを複数本、キャビティを貫通するように個別に金型にセットし、その状態で射出成形することにより、樹脂チューブと座板とを接続する技術が開示されている。特許文献2には、複数の冷媒流通孔を有した扁平多孔チューブを特許文献1と同様に金型にセットし樹脂材料を射出することにより一体に成形する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、樹脂製の溝付シートを対面接合することにより、冷媒通路を有したチューブを形成すると共に、両端にタンクを形成する技術が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献4の樹脂製熱交換器は、各部材が樹脂材から構成されており、チューブの両先端に2重射出により形成されるプレート部(官群ヘッダ)が設けられ、このプレート部にヘッダータンクが接合されている。
【0006】
【特許文献1】特許3488470号公報
【特許文献2】特開2006−200816号公報
【特許文献3】特開2004−108644号公報
【特許文献4】特開2002−225138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2においては、直管チューブ、あるいはチューブを複数本纏めた物をあらかじめ準備し、これを別の金型にインサートして熱融着法にて接合するという方法であり、工程が複雑でありかつ信頼性にかけるものであった。
【0008】
さらに特許文献3の方法では、予め2枚のシートを成形しておき、さらにそれらを接合する方法であるが、接合が接着剤を用いるなど工程が複雑であるばかりでなく、接合部の信頼性にもかけるものである。また、特許文献4の方法も直管チューブとフィンからなる成形体を予め成形し、これに管群ヘッダーを熱融着法にて結合しているが、やはり工程が複雑であり、接合部の信頼性にもかけ、またフィンも管に設けられているが、2本の直管チューブを結合している部分をフィンとしており、熱交換器の熱交換効率としては充分有効とはいえないものであった。
【0009】
金属製の熱交換器の例としては、直管部、曲管部が一体となったパイプ、チューブに多数のフィンを設けたものがよく知られているが、これもフィンとパイプ、チューブとの接合は溶接などの別工程の手段であった。
【0010】
斯様に熱交換器として多数のフィン、直管部、曲管部が一体として構成された熱交換器は材料を問わず現在までに知られていない。
【0011】
そこで、本発明は、直管部と曲管部を有する樹脂製のパイプ部と複数の樹脂製のフィン部とが一体成形され、信頼性が高く、熱交換効率が優れ、製造工程の簡単な樹脂製熱交換器ユニット及び該ユニットを用いた熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の樹脂製交換器ユニットは、直管部と曲管部を交互かつ連続的に有する樹脂製のパイプ部と、該パイプ部に連接する複数の樹脂製のフィン部と、が一体に射出成形されてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の熱交換器は、上記樹脂製熱交換器ユニットの複数を、ヘッダータンクによって結合したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の樹脂製熱交換器ユニットの製造方法は、一端にフローティングコアを備えた加圧ポートを有し他端に排出口を有するパイプ部キャビティを備えた金型の該パイプ部キャビティ内に、溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して、前記フローティングコアを前記排出口側に移動させると共に該排出口から前記溶融樹脂を押し出させる工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、信頼性に富み、熱交換効率の優れた樹脂製熱交換器ユニット及びこれを用いた熱交換器を、低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の樹脂製熱交換器ユニットの一例を示す正面図である。図2は本発明の樹脂製熱交換器ユニットの他の例を示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)は左半分が部分断面図、右半分が部分底面図である。
【0018】
図1に示す樹脂製熱交換器ユニットは、直管部2と曲管部3を交互かつ連続的に有する樹脂製のパイプ部1と、パイプ部1に連接する複数の樹脂製のフィン部4とが一体に射出成形されてなり、図2に示す樹脂製熱交換器ユニットは、更に、パイプ部1との接続部12を有する外枠部13とが一体に射出成形されてなる。
【0019】
図1,2に示す樹脂製熱交換器ユニットは、パイプ部1の直管部2に、直管部2の軸方向と直交する様に、円板状のフィン部4を有する。また、一体に射出成形されてなるため、パイプ部1とフィン部4、パイプ部1と外枠部13の間には、溶着部あるいは継ぎ目を有さない。
【0020】
フィン部4の平均肉厚は、強度上の観点から、Tp/20以上(Tpはパイプ部1の平均肉厚)であることが好ましく、熱交換効率の観点およびパイプ部内面の平滑性確保の観点からは、Tp以下であることが好ましい。フィン部4の平均肉厚がTp/20未満では、フィン部4が割れやすくなる等、強度上の問題が生じる可能性がある。一方、フィン部4の平均肉厚がTpを超えると、熱交換効率が低下する可能性があるし、樹脂化による軽量化の効果が低下する可能性がある。また、フィン部4のパイプ部1に接する部分の厚みがTpを超え、パイプ部1の内面側に成形時の樹脂の収縮による窪みが生成される可能性があり、パイプ部1を通過する熱交換媒体としての流体の流れを乱したり、騒音の発生原因となるなどの問題が生じる可能性がある。
【0021】
フィン部4の先端部の厚みは、Tr/10以上Tr以下(Trはフィン部4のパイプ部1に接する部分の厚み)であることが好ましい。フィン部4の先端部の厚みがTr/10未満では、フィン部4の先端部が欠けやすくなる等の強度上の問題が生じる可能性がある。一方、フィン部4の先端部の厚みがTrを超えると、射出成形時に金型からの離型が悪くなるなどの成形性の低下をきたす可能性があり、熱交換効率が低下する可能性もある。
【0022】
フィン部4の数は、熱交換効率の観点から多いほど好ましいが、パイプ部1の長さ1cmあたり2枚〜30枚程度が好ましく、より好ましくは3枚〜20枚程度である。フィン部4の数が2枚未満では期待される熱交換効率が得られない可能性がある。一方、フィン部4の数が30枚を超えると、射出成形にて成形する際に、金型からの離型性に不都合が生じたり、フィン部4の厚みが極端に薄くなるゆえに溶融樹脂がフィン部に充填不足になったり、強度的に弱くなるなどの不都合を生じる可能性がある。
【0023】
フィン部4は、パイプ部1の直管部2の軸方向に直交するものに限られず、パイプ部1の直管部2の軸方向に平行して、或いは斜めに設けてもよいが、熱交換効率の観点及び射出成形性の観点から、パイプ部1の直管部2の軸方向に直交するものが好ましい。また、フィン部4の形状は、円板状に限られず、熱交換器の設計条件に応じて適宜設定すればよい。具体的には、図3〜図7に示すようなものが挙げられる。尚、図3〜7において、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)は左半分が部分断面図、右半分が部分底面図である。
【0024】
図3の例は、半円板状のフィン部を互い違いに設けた以外は図2と同様である。図4の例は、フィン部が方形板状である点以外は図2と同様である。図5の例は、方形板状のフィン部を互い違いに設けた以外は図2と同様である。図6の例は、フィン部が外枠部の対向する辺同士を繋ぐ方形板状である点、更に曲管部の頂部に、直管部の軸方向と平行な同様のフィン部を設けた点以外は図2と同様である。図7の例は、直管部の軸方向と直交するフィン部を互い違いに設けた以外は図6と同様である。
【0025】
本発明で用いる樹脂としては、中空体を射出成形可能なあらゆる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を挙げられるが、射出成形での中空部成形性という観点からは熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、AS,ABS等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン66、あるいはナイロン6などのポリアミド系樹脂、PET,PBTなどのポリエステル系樹脂、POM、ポリカーボネート、PPS、変性PPE、PMMA樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など種々の樹脂が挙げられ、これら樹脂にガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、カオリンなどの強化材、無機フィラーなどを添加したものでもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などもBMCとして知られている射出成形が可能な熱硬化性樹脂であれば用いることができる。
【0026】
本発明の樹脂製熱交換器ユニットは、単独で使用することもできるが、図8に示すように、複数の樹脂製熱交換器ユニット100をヘッダータンク101により結合し、熱交換器として使用すると、大型化、メンテナンスの容易化、形状の自由度の向上、等を図ることができる。樹脂製熱交換器ユニット100とヘッダータンク101との接合方法については、熱融着、機械的かしめ、接着剤による接合等、シールが可能な公知の技術が適用可能である。
【0027】
本発明の熱交換器は、パイプ部の一方から温水を流し、例えばファンなどの手段でフィン部に冷風を送ることで、温水の温度を低下させることができる。熱交換効率は、用いた樹脂材料やフィン部の数、フィン部の厚み、パイプ部径あるいはパイプ部−フィン部の長さ、樹脂製熱交換器ユニット数などで任意に設計可能である。また、従来の金属製の熱交換器に比較して、軽量、安価でかつ設計の自由度に起因して空間面積を小さくできる、等の利点を有する。更に、従来提案されている樹脂製熱交換器に比べて、パイプ部、フィン部等、熱交換器として重要な要素が一体成形されたユニットを用いているため、溶接或いは溶着などの後工程が不要となり、信頼性が高く、熱交換効率が高く、かつ製造コストの低い樹脂製熱交換器である。
【0028】
次に、本発明の樹脂製熱交換器ユニットの製造方法について説明する。
【0029】
本発明の樹脂製熱交換器ユニットを製造する方法としては、ガスアシスト射出成形法(例えば特公昭57−14968号公報等)、水アシスト射出成形(例えばプラスチックエージ(Sep.2007年、106ページ)等)、フローティングコアを用いる方法(例えば特公平7−20646号公報)等が挙げられる。こららのうちでも、パイプ内径をパイプの全領域に渡って均一に保つためにはフローティングコアを用いる射出成形法が好ましく、より好ましくは、一端にフローティングコアを備えた加圧ポートを有し他端に排出口を有するパイプ部キャビティを備えた金型の該パイプ部キャビティ内に、溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して、前記フローティングコアを前記排出口側に移動させると共に該排出口から前記溶融樹脂を押し出させる工程を有する射出成形法である。
【0030】
以下、フローティングコアを用いて図1の樹脂製熱交換器ユニットを製造する方法を説明する。
【0031】
図9は、本発明で用いる金型の一例を示す図である。
【0032】
図9に示すように、金型は、直管部キャビティ2’、曲管部キャビティ3’、フィン部キャビティ4’からなる、熱交換器ユニットの外形に沿った形状のキャビティ1’を有する。
【0033】
キャビティの一端7には、パイプ部の内径に相当する径を有するフローティングコア5が設けられていると共に、このフローティングコア5をキャビティの他端8側へ押圧移動させる加圧流体を圧入するための加圧ポート6が設けられている。
【0034】
フローティングコア5は、加圧ポート6から圧入される加圧流体で押圧できるよう、加圧ポート6を背にしてキャビティー内に設けられているもので、例えば銅、鉄、アルミ、ステンレス、鋼などの金属製とするほか樹脂製とすることができる。フローティングコア5の形状は、図示される球形の他に最大径がパイプ部の内径に相当するものであれば例えば円錐形、砲弾形、半球形等とすることもできる。
【0035】
加圧ポート6は、加圧流体を圧入・排出するための加圧流体系(図示されていない)に接続されている。加圧ポート6は、加圧流体系から供給される加圧流体をフローティングコア5の背面に作用させ、フローティングコア5をキャビティの他端8側へと押圧移動させるためのものである。加圧ポート6からの加圧流体の圧入は、キャビティ内を樹脂で満たした後に行われるもので、溶融樹脂の射出時に、フローティングコア5を浮き上がらせることなく、フローティングコア5を加圧ポート6へ押し付けながらキャビティ内を溶融樹脂で満たすことができるよう、フローティングコア5からやや離れた位置に樹脂ゲート(図示されていない)が設けられている。
【0036】
キャビティの他端8側には連通口9が設けられており、この連通口9を介してキャビティ1’に余剰樹脂収容キャビティ10が連通されている。連通口9はフローティングコア5の通過を許容する大きさであるが、ややくびれた形状にすることが後の切断工程等の容易さから好ましい。余剰樹脂収容キャビティ10はキャビティ1内を樹脂で満たした状態で加圧ポート6から加圧流体を圧入し、フローティングコア5を移動させた時にキャビティから押し出される余剰樹脂とフローティングコア5とを余裕をもって収容できる容積を有している。
【0037】
連通口9を開閉する手段は、特に限定されないが、たとえば、油圧などの手段で受け軸の進退によって連通口9を開閉する手段が挙げられる。具体的には余剰樹脂収容キャビティ10のほぼ中央を通って、連通口9に向かって進退可能に挿入された受け軸が、前進時に先端部周縁が連通口9の周壁に圧接されて連通口を閉鎖すると共に、進退時に連通口9を開閉するものである。或いは単にスライド式に開閉するバー等を用いて油圧などの手段で開閉動作させる方法も適用できる。
【0038】
次に図9に示す金型を用いた射出成形の具体的手順について説明する。
【0039】
まず、図10に示されるように、連通口9が閉鎖された状態で、溶融樹脂を射出する。この射出は、公知の射出成形装置を用いておこなうことができる。
【0040】
ついで、図11に示されるように、連通口9を開放すると共に、加圧ポート6から加圧流体を圧入する。これによりフローティングコア5は、冷却或いは加熱による固化が始まったキャビティ外周部の樹脂を残しつつ、固化が遅れる中心部の溶融樹脂を連通口9を介して余剰樹脂収容キャビティ10に押出しながら余剰樹脂収容キャビティ10に向かって前進する。最終的には、フローティングコア5は余剰樹脂収容キャビティ10に入り込み、余剰樹脂収容キャビティ10は連通口9から押出された樹脂で満たされる。フローティングコア5が通過した後には、フローティングコア5の径とほぼ等しい径の中空部11が形成される。従ってフローティングコア5の径を選択することによって、形成される中空部11の径を調整できる。そして中空部11が形成された箇所の樹脂は、圧入された加圧流体の圧力によってキャビティの周壁面に押し付けられ、その形状が維持される。
【0041】
加圧流体としては、射出成形の温度及び圧力下で使用樹脂と反応又は相溶しない気体又は液体が使用される。具体的には、例えば窒素ガス、炭酸ガス、空気、グリセリン、流動パラフィン等が使用できるが、窒素ガスをはじめとする不活性ガスが好ましい。この加圧流体の圧入は、例えば窒素ガス等の気体を用いる場合、予め圧縮機で畜圧タンク(図示されていない)内に昇圧して蓄えた加圧ガスを配管を通じて加圧ポート6に導くことや、圧縮機で直接加圧ポート6に加圧ガスを送り込んで昇圧させることでおこなう事ができる。加圧ポート6に供給する加圧ガスの圧力は、使用する樹脂の種類やフローティングコア5の大きさなどによっても相違するが、通常4.90〜29.42MPa(50〜300kg/cm2G)程度である。
【0042】
次いで、好ましくは金型内の内圧を維持しつつ樹脂を冷却し、中空部11内の加圧流体を排出した後、成形品を取り出す。加圧流体の排出は、加圧流体として気体を用いた場合には加圧ポート6を大気に開放することでも行う事ができるが、回収タンク(図示されていない)へ回収して循環利用することもできる。
【0043】
取り出された成形品から、余剰樹脂収容キャビティ10で成形された副成形品(図示されていない)を分離して、本発明の樹脂製熱交換器ユニットを得ることができる。副成形品は連通口の近傍で切断などの方法で容易に分離することができるが、連通口9をくびれ形状に予めしておくことによってさらに容易に分離切断することができる。
【実施例】
【0044】
<実施例1>
図9に示されるような金型を用い、図1に示す下記サイズの樹脂製熱交換器ユニットを、射出機(東洋機械金属社製「TP−180H」)を用いて一体に成形した。
【0045】
[パイプ部]
外径10mm、内径7mm、平均肉厚1.5mm、直管部長さ105mm・70mm、曲管部R15mm
【0046】
[フィン部]
20mmφの円板、平均肉厚0.85mm、根元厚み1mm、先端部厚み0.65mm、枚数58枚(4枚/パイプ部長さ1cm)
【0047】
フローティングコアとしては、直径7mmの鋼球を用い、加圧流体の供給にはガス中空射出成形用ガス発生装置(旭エンジニアリンク社製「エアモールド」)を用いた。加圧流体としては窒素ガスを用いた。樹脂としては、ガラス繊維を33重量%含有するポリアミド66樹脂(旭化成ケミカルズ製「レオナ1300G」)を用いた。
【0048】
まず、図10に示すように、前記樹脂を樹脂温度260℃、射出圧力11.77MPa(120kg/cm2)にて射出し、射出完了1秒後に圧力22.56MPa(230kg/cm2)の窒素ガスを圧入して、図11に示すようにフローティングコアを金型内で移動させ、30秒間冷却した後、図1に示す樹脂製熱交換器ユニットを取り出した。
【0049】
得られたユニットのパイプ部の一方から温水を通じ、他方から排出したところ、排出される温水は、温度が1.5℃下がっており(ΔT=1.5℃)、熱交換器としての機能を充分有していた。また、80℃の温水を0.15MPa(1.5kg/cm2)の内圧を負荷して1000時間流す耐久テストを実施した結果、流動抵抗の増大や亀裂の発生等の問題を生じることなく、熱交換器として耐久性にも優れていた。
【0050】
また、三つのユニットをヘッダタンクにて結合したところ、ΔT=5℃であり、熱交換器として極めて優れた性能を示していた。
【0051】
<実施例2>
フィン部の形状を矩形(18mm×18mm)の板状にした他は実施例1と同様にして樹脂製熱交換器ユニット(外枠がない以外は図4に示すものと同様)を得た。熱交換器としての性能は実施例1とほぼ同等の優れた物であった。
【0052】
<実施例3>
フィンの形状を矩形の板状であって、隣接するフィン部が連続して繋がっている形状にした他は実施例1と同様にして樹脂製熱交換器ユニット(外枠がない以外は図6に示すものと同様)を得た。耐久性に優れ、ΔT=2℃であり、熱交換器として優れた物であった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの一例を示す正面図である。
【図2】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの他の例を示す図である。
【図3】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図4】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図5】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図6】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図7】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図8】本発明の熱交換器の一例を示す図である。
【図9】本発明の製造方法に用いる金型の一例を示す図である。
【図10】本発明の製造方法の説明図で、キャビティを溶融樹脂で満たした状態を示す図である。
【図11】本発明の製造方法の説明図で、加圧流体の圧入によりフローティングコアを移動させ、余剰樹脂を収納するキャビティに樹脂が満たされた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 パイプ部
1’ キャビティ
2 直管部
2’ 直管部キャビティ
3 曲管部
3’ 曲管部キャビティ
4 フィン部
4’ フィン部キャビティ
5 フローティングコア
6 加圧ポート
7 キャビティの一端
8 キャビティの他端
9 連通口
10 余剰樹脂収容キャビティ
11 中空部
12 接続部
13 外枠部
100 樹脂製熱交換器ユニット
101 ヘッダータンク
【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換器に関し、詳しくは、パイプ部及び熱交換効率を上げるためのフィン部とが一体に成形された樹脂製熱交換器ユニット及び該ユニットを用いた熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器は、例えば金属チューブ或いはパイプに金属製フィンを溶接などの手段で接合し、これをヘッダータンクにかしめなどの手段で一体化したものが用いられている。近年、地球環境負荷を軽減するために、自動車など車両の軽量化による燃費向上のニーズが高まっている。家電OA分野でも軽量化小型化の強い要請があり、斯様なニーズに対して従来の熱交換器に対して、材料置換や形状の最適化を図る動きが活発化している。具体的には全ての構成部品を樹脂化したオール樹脂熱交換器が提案されつつある。構成部品を樹脂化することにより形状の自由度が広がり、熱交換効率を確保できれば装置全体として軽量化、小型化が図れるメリットは非常に大きいと考えられている。
【0003】
樹脂製の熱交換器の例として、例えば特許文献1には、単一の冷媒流通孔を有する樹脂チューブを複数本、キャビティを貫通するように個別に金型にセットし、その状態で射出成形することにより、樹脂チューブと座板とを接続する技術が開示されている。特許文献2には、複数の冷媒流通孔を有した扁平多孔チューブを特許文献1と同様に金型にセットし樹脂材料を射出することにより一体に成形する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、樹脂製の溝付シートを対面接合することにより、冷媒通路を有したチューブを形成すると共に、両端にタンクを形成する技術が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献4の樹脂製熱交換器は、各部材が樹脂材から構成されており、チューブの両先端に2重射出により形成されるプレート部(官群ヘッダ)が設けられ、このプレート部にヘッダータンクが接合されている。
【0006】
【特許文献1】特許3488470号公報
【特許文献2】特開2006−200816号公報
【特許文献3】特開2004−108644号公報
【特許文献4】特開2002−225138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2においては、直管チューブ、あるいはチューブを複数本纏めた物をあらかじめ準備し、これを別の金型にインサートして熱融着法にて接合するという方法であり、工程が複雑でありかつ信頼性にかけるものであった。
【0008】
さらに特許文献3の方法では、予め2枚のシートを成形しておき、さらにそれらを接合する方法であるが、接合が接着剤を用いるなど工程が複雑であるばかりでなく、接合部の信頼性にもかけるものである。また、特許文献4の方法も直管チューブとフィンからなる成形体を予め成形し、これに管群ヘッダーを熱融着法にて結合しているが、やはり工程が複雑であり、接合部の信頼性にもかけ、またフィンも管に設けられているが、2本の直管チューブを結合している部分をフィンとしており、熱交換器の熱交換効率としては充分有効とはいえないものであった。
【0009】
金属製の熱交換器の例としては、直管部、曲管部が一体となったパイプ、チューブに多数のフィンを設けたものがよく知られているが、これもフィンとパイプ、チューブとの接合は溶接などの別工程の手段であった。
【0010】
斯様に熱交換器として多数のフィン、直管部、曲管部が一体として構成された熱交換器は材料を問わず現在までに知られていない。
【0011】
そこで、本発明は、直管部と曲管部を有する樹脂製のパイプ部と複数の樹脂製のフィン部とが一体成形され、信頼性が高く、熱交換効率が優れ、製造工程の簡単な樹脂製熱交換器ユニット及び該ユニットを用いた熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の樹脂製交換器ユニットは、直管部と曲管部を交互かつ連続的に有する樹脂製のパイプ部と、該パイプ部に連接する複数の樹脂製のフィン部と、が一体に射出成形されてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の熱交換器は、上記樹脂製熱交換器ユニットの複数を、ヘッダータンクによって結合したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の樹脂製熱交換器ユニットの製造方法は、一端にフローティングコアを備えた加圧ポートを有し他端に排出口を有するパイプ部キャビティを備えた金型の該パイプ部キャビティ内に、溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して、前記フローティングコアを前記排出口側に移動させると共に該排出口から前記溶融樹脂を押し出させる工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、信頼性に富み、熱交換効率の優れた樹脂製熱交換器ユニット及びこれを用いた熱交換器を、低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の樹脂製熱交換器ユニットの一例を示す正面図である。図2は本発明の樹脂製熱交換器ユニットの他の例を示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)は左半分が部分断面図、右半分が部分底面図である。
【0018】
図1に示す樹脂製熱交換器ユニットは、直管部2と曲管部3を交互かつ連続的に有する樹脂製のパイプ部1と、パイプ部1に連接する複数の樹脂製のフィン部4とが一体に射出成形されてなり、図2に示す樹脂製熱交換器ユニットは、更に、パイプ部1との接続部12を有する外枠部13とが一体に射出成形されてなる。
【0019】
図1,2に示す樹脂製熱交換器ユニットは、パイプ部1の直管部2に、直管部2の軸方向と直交する様に、円板状のフィン部4を有する。また、一体に射出成形されてなるため、パイプ部1とフィン部4、パイプ部1と外枠部13の間には、溶着部あるいは継ぎ目を有さない。
【0020】
フィン部4の平均肉厚は、強度上の観点から、Tp/20以上(Tpはパイプ部1の平均肉厚)であることが好ましく、熱交換効率の観点およびパイプ部内面の平滑性確保の観点からは、Tp以下であることが好ましい。フィン部4の平均肉厚がTp/20未満では、フィン部4が割れやすくなる等、強度上の問題が生じる可能性がある。一方、フィン部4の平均肉厚がTpを超えると、熱交換効率が低下する可能性があるし、樹脂化による軽量化の効果が低下する可能性がある。また、フィン部4のパイプ部1に接する部分の厚みがTpを超え、パイプ部1の内面側に成形時の樹脂の収縮による窪みが生成される可能性があり、パイプ部1を通過する熱交換媒体としての流体の流れを乱したり、騒音の発生原因となるなどの問題が生じる可能性がある。
【0021】
フィン部4の先端部の厚みは、Tr/10以上Tr以下(Trはフィン部4のパイプ部1に接する部分の厚み)であることが好ましい。フィン部4の先端部の厚みがTr/10未満では、フィン部4の先端部が欠けやすくなる等の強度上の問題が生じる可能性がある。一方、フィン部4の先端部の厚みがTrを超えると、射出成形時に金型からの離型が悪くなるなどの成形性の低下をきたす可能性があり、熱交換効率が低下する可能性もある。
【0022】
フィン部4の数は、熱交換効率の観点から多いほど好ましいが、パイプ部1の長さ1cmあたり2枚〜30枚程度が好ましく、より好ましくは3枚〜20枚程度である。フィン部4の数が2枚未満では期待される熱交換効率が得られない可能性がある。一方、フィン部4の数が30枚を超えると、射出成形にて成形する際に、金型からの離型性に不都合が生じたり、フィン部4の厚みが極端に薄くなるゆえに溶融樹脂がフィン部に充填不足になったり、強度的に弱くなるなどの不都合を生じる可能性がある。
【0023】
フィン部4は、パイプ部1の直管部2の軸方向に直交するものに限られず、パイプ部1の直管部2の軸方向に平行して、或いは斜めに設けてもよいが、熱交換効率の観点及び射出成形性の観点から、パイプ部1の直管部2の軸方向に直交するものが好ましい。また、フィン部4の形状は、円板状に限られず、熱交換器の設計条件に応じて適宜設定すればよい。具体的には、図3〜図7に示すようなものが挙げられる。尚、図3〜7において、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)は左半分が部分断面図、右半分が部分底面図である。
【0024】
図3の例は、半円板状のフィン部を互い違いに設けた以外は図2と同様である。図4の例は、フィン部が方形板状である点以外は図2と同様である。図5の例は、方形板状のフィン部を互い違いに設けた以外は図2と同様である。図6の例は、フィン部が外枠部の対向する辺同士を繋ぐ方形板状である点、更に曲管部の頂部に、直管部の軸方向と平行な同様のフィン部を設けた点以外は図2と同様である。図7の例は、直管部の軸方向と直交するフィン部を互い違いに設けた以外は図6と同様である。
【0025】
本発明で用いる樹脂としては、中空体を射出成形可能なあらゆる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を挙げられるが、射出成形での中空部成形性という観点からは熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、AS,ABS等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン66、あるいはナイロン6などのポリアミド系樹脂、PET,PBTなどのポリエステル系樹脂、POM、ポリカーボネート、PPS、変性PPE、PMMA樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など種々の樹脂が挙げられ、これら樹脂にガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、カオリンなどの強化材、無機フィラーなどを添加したものでもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などもBMCとして知られている射出成形が可能な熱硬化性樹脂であれば用いることができる。
【0026】
本発明の樹脂製熱交換器ユニットは、単独で使用することもできるが、図8に示すように、複数の樹脂製熱交換器ユニット100をヘッダータンク101により結合し、熱交換器として使用すると、大型化、メンテナンスの容易化、形状の自由度の向上、等を図ることができる。樹脂製熱交換器ユニット100とヘッダータンク101との接合方法については、熱融着、機械的かしめ、接着剤による接合等、シールが可能な公知の技術が適用可能である。
【0027】
本発明の熱交換器は、パイプ部の一方から温水を流し、例えばファンなどの手段でフィン部に冷風を送ることで、温水の温度を低下させることができる。熱交換効率は、用いた樹脂材料やフィン部の数、フィン部の厚み、パイプ部径あるいはパイプ部−フィン部の長さ、樹脂製熱交換器ユニット数などで任意に設計可能である。また、従来の金属製の熱交換器に比較して、軽量、安価でかつ設計の自由度に起因して空間面積を小さくできる、等の利点を有する。更に、従来提案されている樹脂製熱交換器に比べて、パイプ部、フィン部等、熱交換器として重要な要素が一体成形されたユニットを用いているため、溶接或いは溶着などの後工程が不要となり、信頼性が高く、熱交換効率が高く、かつ製造コストの低い樹脂製熱交換器である。
【0028】
次に、本発明の樹脂製熱交換器ユニットの製造方法について説明する。
【0029】
本発明の樹脂製熱交換器ユニットを製造する方法としては、ガスアシスト射出成形法(例えば特公昭57−14968号公報等)、水アシスト射出成形(例えばプラスチックエージ(Sep.2007年、106ページ)等)、フローティングコアを用いる方法(例えば特公平7−20646号公報)等が挙げられる。こららのうちでも、パイプ内径をパイプの全領域に渡って均一に保つためにはフローティングコアを用いる射出成形法が好ましく、より好ましくは、一端にフローティングコアを備えた加圧ポートを有し他端に排出口を有するパイプ部キャビティを備えた金型の該パイプ部キャビティ内に、溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して、前記フローティングコアを前記排出口側に移動させると共に該排出口から前記溶融樹脂を押し出させる工程を有する射出成形法である。
【0030】
以下、フローティングコアを用いて図1の樹脂製熱交換器ユニットを製造する方法を説明する。
【0031】
図9は、本発明で用いる金型の一例を示す図である。
【0032】
図9に示すように、金型は、直管部キャビティ2’、曲管部キャビティ3’、フィン部キャビティ4’からなる、熱交換器ユニットの外形に沿った形状のキャビティ1’を有する。
【0033】
キャビティの一端7には、パイプ部の内径に相当する径を有するフローティングコア5が設けられていると共に、このフローティングコア5をキャビティの他端8側へ押圧移動させる加圧流体を圧入するための加圧ポート6が設けられている。
【0034】
フローティングコア5は、加圧ポート6から圧入される加圧流体で押圧できるよう、加圧ポート6を背にしてキャビティー内に設けられているもので、例えば銅、鉄、アルミ、ステンレス、鋼などの金属製とするほか樹脂製とすることができる。フローティングコア5の形状は、図示される球形の他に最大径がパイプ部の内径に相当するものであれば例えば円錐形、砲弾形、半球形等とすることもできる。
【0035】
加圧ポート6は、加圧流体を圧入・排出するための加圧流体系(図示されていない)に接続されている。加圧ポート6は、加圧流体系から供給される加圧流体をフローティングコア5の背面に作用させ、フローティングコア5をキャビティの他端8側へと押圧移動させるためのものである。加圧ポート6からの加圧流体の圧入は、キャビティ内を樹脂で満たした後に行われるもので、溶融樹脂の射出時に、フローティングコア5を浮き上がらせることなく、フローティングコア5を加圧ポート6へ押し付けながらキャビティ内を溶融樹脂で満たすことができるよう、フローティングコア5からやや離れた位置に樹脂ゲート(図示されていない)が設けられている。
【0036】
キャビティの他端8側には連通口9が設けられており、この連通口9を介してキャビティ1’に余剰樹脂収容キャビティ10が連通されている。連通口9はフローティングコア5の通過を許容する大きさであるが、ややくびれた形状にすることが後の切断工程等の容易さから好ましい。余剰樹脂収容キャビティ10はキャビティ1内を樹脂で満たした状態で加圧ポート6から加圧流体を圧入し、フローティングコア5を移動させた時にキャビティから押し出される余剰樹脂とフローティングコア5とを余裕をもって収容できる容積を有している。
【0037】
連通口9を開閉する手段は、特に限定されないが、たとえば、油圧などの手段で受け軸の進退によって連通口9を開閉する手段が挙げられる。具体的には余剰樹脂収容キャビティ10のほぼ中央を通って、連通口9に向かって進退可能に挿入された受け軸が、前進時に先端部周縁が連通口9の周壁に圧接されて連通口を閉鎖すると共に、進退時に連通口9を開閉するものである。或いは単にスライド式に開閉するバー等を用いて油圧などの手段で開閉動作させる方法も適用できる。
【0038】
次に図9に示す金型を用いた射出成形の具体的手順について説明する。
【0039】
まず、図10に示されるように、連通口9が閉鎖された状態で、溶融樹脂を射出する。この射出は、公知の射出成形装置を用いておこなうことができる。
【0040】
ついで、図11に示されるように、連通口9を開放すると共に、加圧ポート6から加圧流体を圧入する。これによりフローティングコア5は、冷却或いは加熱による固化が始まったキャビティ外周部の樹脂を残しつつ、固化が遅れる中心部の溶融樹脂を連通口9を介して余剰樹脂収容キャビティ10に押出しながら余剰樹脂収容キャビティ10に向かって前進する。最終的には、フローティングコア5は余剰樹脂収容キャビティ10に入り込み、余剰樹脂収容キャビティ10は連通口9から押出された樹脂で満たされる。フローティングコア5が通過した後には、フローティングコア5の径とほぼ等しい径の中空部11が形成される。従ってフローティングコア5の径を選択することによって、形成される中空部11の径を調整できる。そして中空部11が形成された箇所の樹脂は、圧入された加圧流体の圧力によってキャビティの周壁面に押し付けられ、その形状が維持される。
【0041】
加圧流体としては、射出成形の温度及び圧力下で使用樹脂と反応又は相溶しない気体又は液体が使用される。具体的には、例えば窒素ガス、炭酸ガス、空気、グリセリン、流動パラフィン等が使用できるが、窒素ガスをはじめとする不活性ガスが好ましい。この加圧流体の圧入は、例えば窒素ガス等の気体を用いる場合、予め圧縮機で畜圧タンク(図示されていない)内に昇圧して蓄えた加圧ガスを配管を通じて加圧ポート6に導くことや、圧縮機で直接加圧ポート6に加圧ガスを送り込んで昇圧させることでおこなう事ができる。加圧ポート6に供給する加圧ガスの圧力は、使用する樹脂の種類やフローティングコア5の大きさなどによっても相違するが、通常4.90〜29.42MPa(50〜300kg/cm2G)程度である。
【0042】
次いで、好ましくは金型内の内圧を維持しつつ樹脂を冷却し、中空部11内の加圧流体を排出した後、成形品を取り出す。加圧流体の排出は、加圧流体として気体を用いた場合には加圧ポート6を大気に開放することでも行う事ができるが、回収タンク(図示されていない)へ回収して循環利用することもできる。
【0043】
取り出された成形品から、余剰樹脂収容キャビティ10で成形された副成形品(図示されていない)を分離して、本発明の樹脂製熱交換器ユニットを得ることができる。副成形品は連通口の近傍で切断などの方法で容易に分離することができるが、連通口9をくびれ形状に予めしておくことによってさらに容易に分離切断することができる。
【実施例】
【0044】
<実施例1>
図9に示されるような金型を用い、図1に示す下記サイズの樹脂製熱交換器ユニットを、射出機(東洋機械金属社製「TP−180H」)を用いて一体に成形した。
【0045】
[パイプ部]
外径10mm、内径7mm、平均肉厚1.5mm、直管部長さ105mm・70mm、曲管部R15mm
【0046】
[フィン部]
20mmφの円板、平均肉厚0.85mm、根元厚み1mm、先端部厚み0.65mm、枚数58枚(4枚/パイプ部長さ1cm)
【0047】
フローティングコアとしては、直径7mmの鋼球を用い、加圧流体の供給にはガス中空射出成形用ガス発生装置(旭エンジニアリンク社製「エアモールド」)を用いた。加圧流体としては窒素ガスを用いた。樹脂としては、ガラス繊維を33重量%含有するポリアミド66樹脂(旭化成ケミカルズ製「レオナ1300G」)を用いた。
【0048】
まず、図10に示すように、前記樹脂を樹脂温度260℃、射出圧力11.77MPa(120kg/cm2)にて射出し、射出完了1秒後に圧力22.56MPa(230kg/cm2)の窒素ガスを圧入して、図11に示すようにフローティングコアを金型内で移動させ、30秒間冷却した後、図1に示す樹脂製熱交換器ユニットを取り出した。
【0049】
得られたユニットのパイプ部の一方から温水を通じ、他方から排出したところ、排出される温水は、温度が1.5℃下がっており(ΔT=1.5℃)、熱交換器としての機能を充分有していた。また、80℃の温水を0.15MPa(1.5kg/cm2)の内圧を負荷して1000時間流す耐久テストを実施した結果、流動抵抗の増大や亀裂の発生等の問題を生じることなく、熱交換器として耐久性にも優れていた。
【0050】
また、三つのユニットをヘッダタンクにて結合したところ、ΔT=5℃であり、熱交換器として極めて優れた性能を示していた。
【0051】
<実施例2>
フィン部の形状を矩形(18mm×18mm)の板状にした他は実施例1と同様にして樹脂製熱交換器ユニット(外枠がない以外は図4に示すものと同様)を得た。熱交換器としての性能は実施例1とほぼ同等の優れた物であった。
【0052】
<実施例3>
フィンの形状を矩形の板状であって、隣接するフィン部が連続して繋がっている形状にした他は実施例1と同様にして樹脂製熱交換器ユニット(外枠がない以外は図6に示すものと同様)を得た。耐久性に優れ、ΔT=2℃であり、熱交換器として優れた物であった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの一例を示す正面図である。
【図2】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの他の例を示す図である。
【図3】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図4】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図5】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図6】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図7】本発明の樹脂製熱交換器ユニットの更に他の例を示す図である。
【図8】本発明の熱交換器の一例を示す図である。
【図9】本発明の製造方法に用いる金型の一例を示す図である。
【図10】本発明の製造方法の説明図で、キャビティを溶融樹脂で満たした状態を示す図である。
【図11】本発明の製造方法の説明図で、加圧流体の圧入によりフローティングコアを移動させ、余剰樹脂を収納するキャビティに樹脂が満たされた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 パイプ部
1’ キャビティ
2 直管部
2’ 直管部キャビティ
3 曲管部
3’ 曲管部キャビティ
4 フィン部
4’ フィン部キャビティ
5 フローティングコア
6 加圧ポート
7 キャビティの一端
8 キャビティの他端
9 連通口
10 余剰樹脂収容キャビティ
11 中空部
12 接続部
13 外枠部
100 樹脂製熱交換器ユニット
101 ヘッダータンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部と曲管部を交互かつ連続的に有する樹脂製のパイプ部と、該パイプ部に連接する複数の樹脂製のフィン部と、が一体に射出成形されてなることを特徴とする樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項2】
前記フィン部の平均肉厚がTp/20以上Tp以下(Tpは前記パイプ部の平均肉厚)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項3】
前記フィン部の先端部の厚みがTr/10以上Tr以下(Trは前記フィン部のパイプ部に接する部分の厚み)であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項4】
前記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項5】
前記フィン部が、前記パイプ部の直管部の軸方向に直交することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項6】
更に、樹脂製の外枠部が一体に射出成形されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニットの複数を、ヘッダータンクによって結合したことを特徴とする熱交換器。
【請求項8】
一端にフローティングコアを備えた加圧ポートを有し他端に排出口を有するパイプ部キャビティを備えた金型の該パイプ部キャビティ内に、溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して、前記フローティングコアを前記排出口側に移動させると共に該排出口から前記溶融樹脂を押し出させる工程を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニットの製造方法。
【請求項1】
直管部と曲管部を交互かつ連続的に有する樹脂製のパイプ部と、該パイプ部に連接する複数の樹脂製のフィン部と、が一体に射出成形されてなることを特徴とする樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項2】
前記フィン部の平均肉厚がTp/20以上Tp以下(Tpは前記パイプ部の平均肉厚)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項3】
前記フィン部の先端部の厚みがTr/10以上Tr以下(Trは前記フィン部のパイプ部に接する部分の厚み)であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項4】
前記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項5】
前記フィン部が、前記パイプ部の直管部の軸方向に直交することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項6】
更に、樹脂製の外枠部が一体に射出成形されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニットの複数を、ヘッダータンクによって結合したことを特徴とする熱交換器。
【請求項8】
一端にフローティングコアを備えた加圧ポートを有し他端に排出口を有するパイプ部キャビティを備えた金型の該パイプ部キャビティ内に、溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して、前記フローティングコアを前記排出口側に移動させると共に該排出口から前記溶融樹脂を押し出させる工程を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂製熱交換器ユニットの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−281636(P2009−281636A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132990(P2008−132990)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
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