説明

樹脂製造装置及び樹脂製造方法

【課題】反応容器に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を軽減する。
【解決手段】樹脂製造装置1は、原料の重合により常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で生成及び収容する容器本体41と、この容器本体41の底部に配置され、溶融状態の合成樹脂を排出可能に形成された排出機構46と、容器本体41及び排出機構46を合成樹脂の溶融状態を維持可能に温調する温調機構47とを有した反応容器4と、反応容器4の下方に配設され、排出機構46から排出された合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にして送り出す冷却機構51と、この冷却機構51から送り出された合成樹脂を破砕する破砕装置5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープの粘着付与剤等に使用されるアクリルオリゴマ等の合成樹脂を製造する樹脂製造装置及び樹脂製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、原料を重合させてから小片状の合成樹脂を製造する場合には、原料を溶融混練しながら重合させ、所望の合成樹脂を生成させた後に、この合成樹脂を冷却固化して粉砕する方法が採用されている。例えば、特許文献1には、スクリュ−型加熱冷却装置や加熱型攪拌熱処理機を反応容器として用いて原料を減圧下で加熱溶融混合し、溶融物を2軸エクストルーダー等の溶融混合分散機により混合分散させた後、クーリングベルト等により冷却し、粗粉砕、微粉砕、分級させる方法が開示されている。また、特許文献2及び特許文献3には、回転腕が設けられた反応容器内に原料を投入し、原料に対して回転腕により繰り返して剪断力を付与することによって、合成樹脂の生成から小片状に粉砕するまでの一連の処理を反応容器内で行う方法が開示されている。また、特許文献4には、反応容器内に原料と粒子状の重合触媒を導入して重合させた後に、失活洗浄槽に抜き出し、その後、未反応原料を分離し、乾燥、分級等の処理を各装置でそれぞれ行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−192604号公報
【特許文献2】特開平5−112654号公報
【特許文献3】特開平5−247225号公報
【特許文献4】特開2003−137929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の製造方法において、反応容器に残留する合成樹脂を除去する場合には、反応容器内に溶剤を投入して合成樹脂を溶解させることにより洗浄することが一般的である。ところが、常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を製造する場合は、反応容器から合成樹脂を抜き出した後に残留した合成樹脂が固化した状態となって、反応容器の各部を塞いでしまうため、毎回、反応容器内に残留する合成樹脂を除去する必要がある。従って、反応容器に原料を投入する前に、反応容器内に溶剤を投入して合成樹脂を溶解させる処理を行うことが必要になるため、洗浄処理に要する時間が生産性の低下を招来し、溶剤の使用量や使用回数が増えることによる費用及び作業の負担がコストアップを招来するという問題がある。また洗浄に有機溶剤を大量に使用すると、無溶剤で作製したオリゴマーに有機溶剤のコンタミの恐れが高くなってしまい、VOC増などの品質低下を招いてしまうという問題もある。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、反応容器に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を軽減することができる樹脂製造装置及び樹脂製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂製造装置は、原料の重合により常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で生成及び収容する容器本体と、該容器本体の底部に配置され、溶融状態の前記合成樹脂を排出可能に形成された排出機構と、前記容器本体及び前記排出機構を前記合成樹脂の溶融状態を維持可能に温調する温調機構とを有した反応容器と、前記反応容器の下方に配設され、前記排出機構から排出された前記合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にして送り出す冷却機構と、該冷却機構から送り出された前記合成樹脂を破砕する破砕機構とを有した破砕装置とを有する。
【0007】
上記の構成によれば、反応容器の容器本体において、原料を重合させることにより溶融状態の合成樹脂が生成されると、生成された合成樹脂は、容器本体及び排出機構の温調機構による温調により溶融状態が維持されているため、容器本体の壁面等に付着している部分を含め、大部分が重力の作用により下降され、容器本体の底部に配置された排出機構から排出される。そして、排出された溶融状態の合成樹脂は、反応容器の下方に配設された破砕装置において、冷却及び固化状態にされた後に破砕されることによって、小片状の合成樹脂とされる。これにより、樹脂製造装置は、合成樹脂の溶融状態を維持して重力を利用しながら、合成樹脂を反応容器から排出させた後に、固化状態の合成樹脂にして破砕することができるため、反応容器の内壁面等に残留する残留量を大幅に低減することができる。この結果、反応容器に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を軽減することができる。
【0008】
また、本発明の樹脂製造装置における前記排出機構は、前記容器本体に形成された排出口と、前記排出口から前記破砕装置に向けて設けられた排出配管と、前記排出口に配置された弁体を有し、該弁体を進退移動させることにより前記排出口を開閉するY型弁と、を有していてもよい。
【0009】
上記の構成によれば、Y型弁の弁体が進退移動して排出口を開閉することにより合成樹脂が排出可能にされているため、ボールバルブ等の他種類のバルブを用いて合成樹脂を排出可能にする場合よりも、排出口を高い液密性で閉栓可能にしつつ排出口に残留する合成樹脂を低減することができる。これにより、反応容器に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を一層軽減することができる。
【0010】
また、本発明の樹脂製造装置における前記排出機構は、さらに、前記排出配管に接続され、前記合成樹脂を前記破砕装置に送り出す送出ポンプを有していてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、次工程の冷却機構及び破砕装置に合成樹脂を定量供給することができる。この結果、常に同じ条件で合成樹脂の冷却を行わせることができると共に、同じ処理量で合成樹脂を破砕して排出させることができるため、品質を安定させることができる。また、容器本体及び排出配管に存在する合成樹脂に対して、重力による下方向の流動駆動力に加えて、送出ポンプの吸引力による下方向の流動駆動力が付与されるため、反応容器からの合成樹脂の排出を短時間で終了させることができる。さらに、合成樹脂の流動速度を高めることができるため、合成樹脂の残留を低減することもできる。
【0012】
また、本発明の樹脂製造装置における前記反応容器は、前記合成樹脂及び前記原料の上面よりも下方に位置するように配置され、不活性ガスを前記容器本体内に流入させる不活性ガス流入口と、インジェクションバルブの弁体の進退移動により前記不活性ガス流入口を開閉する流入口開閉機構とを有していてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、合成樹脂や原料に不活性ガスを送り込む不活性ガス流入口をインジェクションバルブにより開閉することによって、不活性ガス流入口に残留する合成樹脂を低減することができる。
【0014】
また、本発明の樹脂製造装置は、さらに、重合終了後に残留する前記原料を、前記容器本体から外部に排出する分離装置を有していてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、重合せずに残留した原料を合成樹脂から分離することができるため、小片状にされた合成樹脂の品質を高めることができる。
【0016】
また、本発明の樹脂製造装置は、さらに、重合終了後に残留する前記原料を、前記容器本体から外部に排出する分離装置を有していてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、重合せずに残留した原料を合成樹脂から分離することができるため、小片状にされた合成樹脂の品質を高めることができる。
【0018】
また、本発明の樹脂製造装置は、前記原料が(メタ)アクリル系モノマであり、前記重合がバルク重合であり、前記合成樹脂が〈メタ〉アクリル系オリゴマであってもよい。
【0019】
上記の構成によれば、(メタ)アクリルオリゴマの製造に好適に用いることができる。
【0020】
本発明の樹脂製造方法は、反応容器の底部に形成された排出口を閉栓させながら、該反応容器に原料を投入する原料投入工程と、前記原料を重合させることにより常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で反応容器内に生成及び収容する重合工程と、前記合成樹脂の溶融状態を維持するように温調しながら前記排出口を開栓させて前記合成樹脂を排出する排出工程と、前記排出口から排出されて自然落下する前記合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にした後に破砕する破砕工程とを有する。
【0021】
上記の構成によれば、合成樹脂の溶融状態を維持して重力を利用しながら、合成樹脂を反応容器から排出させた後に、固化状態の合成樹脂にして破砕することができるため、反応容器の内壁面等に残留する残留量を大幅に低減することができる。この結果、反応容器に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を軽減することができる。さらには、無溶剤で高純度なフレーク状の樹脂を効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、反応容器に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を軽減し、生産性の向上及びコストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】樹脂製造装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】反応容器の全体構成を示す説明図である。
【図3】下側ガス供給機構の動作状態を示す説明図であり、(a)は開栓状態の説明図、(b)は閉栓状態の説明図である。
【図4】下側ガス供給機構の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(樹脂製造システム)
図1に示すように、本実施形態に係る樹脂製造装置1は、反応容器4と破砕装置5と分離装置6と制御装置7とを有している。反応容器4は、原料を重合させることにより常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で生成及び収容し、合成樹脂の溶融状態を維持するように温調しながら、底部の排出口41aから下方の破砕装置5に排出する構成にされている。
【0025】
ここで、『溶融状態』は、重力の作用を受けて移動可能な全ての状態である。また、『溶融状態の維持』は、一定の粘度を有した溶融状態に維持するという意味ではなく、製造途中で粘度が変化するしないに拘らずに溶融状態を維持、換言すれば、固化しない状態に維持するという意味である。破砕装置5は、反応容器4から排出されて自然落下する合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にした後に破砕する構成にされている。分離装置6は、反応容器4に合成樹脂を残して原料を分離する構成にされている。各装置4〜6の詳細については後述する。
【0026】
上記のように構成された樹脂製造装置1は、反応容器4の底部に形成された排出口41aを閉栓させながら、反応容器4に原料を投入する原料投入工程と、原料を重合させることにより常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で生成及び収容する重合工程と、合成樹脂の溶融状態を維持するように温調しながら排出口41aを開栓させて合成樹脂を排出する排出工程と、排出口41aから排出されて自然落下する合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にした後に破砕する破砕工程とを有した樹脂製造方法を実現している。
【0027】
原料としてアクリルモノマが使用された場合の工程の詳細を説明すると、反応容器4内に原料となる粘着付与剤となるアクリルモノマが投入される(投入工程)。その後、反応容器4の底部から窒素ガスを供給しながら攪拌翼を回転させて窒素置換を行いながら昇温される。尚、窒素置換時における温度は、使用する開始剤の分解温度によって目標温度は変わるが、開始剤の1時間(hr)半減期温度か、又はそれよりも5℃〜10℃程度低い温度が望ましい(第1窒素置換工程)。
【0028】
窒素置換開始から1時間程度経過した後で、且つ目標温度に到達した状態で連鎖移動剤および開始剤が投入される(重合開始工程)。反応容器4の底部からの窒素ガスの投入を止め、窒素ガスを反応容器4上部から投入する形態に切り替えられる(第2窒素置換工程)。重合開始工程と第2窒素置換工程とは逆にされていてもよい。反応容器4内の温度が上がり過ぎないように温度調整しながら、段階的に反応容器4の内部温度が上昇される。このように段階的に昇温させる理由は、目標温度を大幅にオーバーシュートさせないようにするためである。尚、モノマの種類によって、オリゴマの溶融温度が変わるため、一概に目標温度を決めることはできないが、例えばCHMA(シクロヘキシルメタクリレート)のオリゴマを重合する場合は、最終の目標温度(最終内部温度)は180℃程度であることが望ましい(重合工程)。
【0029】
反応容器4の内部温度が最終の目標温度に到達し、十分に反応が収束した状態になったときに、高温状態が維持されながら反応容器4内が減圧され、未反応モノマが気化分離されることによって、アクリルオリゴマの純度が上昇される。尚、反応容器4内の真空度としては低い方がより望ましいが、反応容器4の密閉度や真空ポンプの能力などから判断して、1〜5kPa(abs)程度が現実的な値である。減圧させる時間も長ければ長いほど望ましいが、処理時間に従い未反応モノマの分離効率も低下していく為、1時間〜2時間程度が現実的な処理時間である(分離工程)。この後、溶融状態のアクリルオリゴマが排出され、常温に冷却及び固化された後、破砕される(排出・破砕工程)。樹脂製造方法のより具体的な説明については後述する。
【0030】
これにより、樹脂製造装置1及び樹脂製造方法によれば、合成樹脂の溶融状態を維持して重力を利用しながら、合成樹脂を反応容器4から排出させた後に、固化状態の合成樹脂にして破砕し、粉状や粒状に小片化することができるため、反応容器4の内壁面等に残留する残留量を大幅に低減することができる。この結果、反応容器4に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を軽減することができるようになっている。
【0031】
(原料、合成樹脂)
ここで、『原料』及び『常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂』は、特に限定されるものではないが、『常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂』としては、溶媒を使用せずにモノマ100%で重合を行うバルク重合方式により生成された(メタ)アクリル系オリゴマが例示される。
【0032】
(メタ)アクリル系オリゴマは、アクリル系モノマなどの重合物により製造される粘着剤において、粘着力を向上させることが可能な粘着付与剤(タッキファイヤ)として好適に用いられる。特に、モノマ100%を光開始剤で重合するUV粘着剤においては、シート状に塗工した後に重合が行われるため、粘着付与剤を配合しようとすると、必然的に粘着剤ベースとなるアクリル系モノマと粘着付与剤が混合された状態で、UV重合を行わなければならない。その為にUV粘着剤に使用される粘着付与剤に求められる機能として、UV重合を阻害しないことも求められる。そして、ロジン系や、テルペン系、フェノール系、石油系等の一般的な粘着付与剤はUV重合を阻害させるのに対し、アクリル系オリゴマは、重合阻害が生じないことが、これまでの知見で確認されている。UV粘着剤の粘着力を向上させるのに適した配合部数としては、アクリル系粘着剤100部に対して、アクリル系オリゴマ(分子量:1000〜10000レベル)を5〜40部程度である。
【0033】
アクリル系オリゴマの原料としては、(メタ)アクリル酸エステルが例示される。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸イソボルニルのような(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0034】
また、アクリル系オリゴマは、(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な重合性不飽和結合を有するモノマを共重合させることも可能である。(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な重合性不飽和結合を有するモノマとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩等の塩;エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニルモノマ;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニルモノマ;フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステルのような含フッ素ビニルモノマ;イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸ような不飽和カルボン酸、これらの塩ならびにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニルモノマ、メタクリルアミド、N‐メチロールメタクリルアミド、N−メトキシエチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンのようなアミド基含有ビニルモノマ;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素含有ビニルモノマ;その他、ビニル基を重合したモノマ末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマ類を挙げることができる。これら単量体は単独あるいは組み合わせて、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合してもよい。
【0035】
さらに、アクリル系オリゴマは、エポキシ基またはイソシアネート基と反応性を有する官能基が導入されていてもよい。このような官能基の例としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基を挙げることができ、アクリル系オリゴマを製造する際にこうした官能基を有するモノマを使用することが好ましい。
【0036】
また、アクリル系オリゴマの分子量を調整するためにその重合中に連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物;チオグリコール酸、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステルを例示できるが、チオグリコール酸類を好適に使用することができる。
【0037】
連鎖移動剤の使用量としては、特に制限されないが、通常、アクリル系モノマ100重量部に対して、連鎖移動剤を0.1〜20重量部、好ましくは、0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部含有する。このように連鎖移動剤の添加量を調整することで、好適な分子量のアクリル系オリゴマを得ることができる。
【0038】
(反応容器4)
樹脂製造装置1に備えられた反応容器4は、図2にも示すように、アクリル系オリゴマ等の合成樹脂を溶融状態で生成及び収容する容器本体41と、容器本体41に収容された原料や合成樹脂を撹拌する撹拌機構42と、容器本体41に原料を投入可能にする蓋開閉機構43と、容器本体41に収容された原料や合成樹脂の上方に窒素ガスを供給する上側ガス供給機構44と、容器本体41に収容された原料や合成樹脂の下部側に窒素ガスを供給する下側ガス供給機構45と、合成樹脂を排出する排出機構46と、容器本体41、原料及び合成樹脂を任意の温度に温調する温調機構47とを有している。
【0039】
(反応容器4:容器本体41)
容器本体41は、上面が開口された円筒形状の収容体411と、収容体411の上面に着脱自在に設けられ、収容体411の開口を密閉状態に閉鎖する蓋体412とを有している。収容体411は、上面が開口され、水平方向の横断面が円形状の胴部4111と、胴部4111の下側周縁に接続され、中心部が最下端となるように凸状に湾曲された底部4112とを有している。
【0040】
収容体411の上方には、蓋体412が配置されている。蓋体412は、蓋開閉機構43により移動可能に支持されている。蓋開閉機構43は、油圧シリンダ装置等の少なくとも蓋体412を昇降させる機能を有しており、上昇動作による蓋体412の上昇により収容体411の上面を開口させると共に、下降動作による蓋体412の下降により収容体411の上面を密閉状態に閉鎖させるようになっている。これにより、容器本体41は、内部に気密状態の収容空間413を形成可能にされており、この収容空間413で原料を重合させて合成樹脂を生成させるようになっている。
【0041】
蓋体412には、上側ガス供給口41cと材料投入口41eとガス排出口41dとが形成されている。尚、蓋体412には、原料を投入する原料投入口が形成され、図示しない接続配管を介して原料が供給されるようになっていてもよい。上側ガス供給口41cは、上側ガス供給機構44の一部を構成している。上側ガス供給機構44は、上側ガス供給口41cと、上側ガス供給口41cを開閉するバルブ部材441と、図示しない窒素ガス供給系に接続されたガス配管442とを有している。尚、バルブ部材441は、上側ガス供給口41cが合成樹脂及び原料の上面よりも上方に位置されるため、ボールバルブ等の各種のバルブを適用可能である。材料投入口41eは、密閉された収容空間413に連鎖移動剤や重合開始剤等を投入する際に開口されるようになっている。ガス排出口41dは、図示しないバルブ部材とガス配管65とを介して分離装置6に接続されている。
【0042】
(反応容器4:撹拌機構42)
また、蓋体412には、撹拌機構42が設けられている。撹拌機構42は、撹拌駆動装置421と撹拌軸部材422と撹拌羽根423とスクレーパ424とを有している。撹拌駆動装置421は、蓋体412の上面中心部に固設されている。撹拌駆動装置421は、減速機付きの交流モータ(撹拌モータ4211)等により形成されており、駆動電力の周波数の変更により任意の回転速度に変更可能にされている。撹拌駆動装置421には、棒状の撹拌軸部材422が連結されている。撹拌軸部材422は、軸芯が鉛直方向に設定されており、蓋体412の中心点を回転自在及び気密状態に貫設されている。撹拌軸部材422は、下端が収容体411の底部の近傍に位置するように設定されている。撹拌軸部材422には、撹拌羽根423とスクレーパ424とが設けられている。撹拌羽根423は、原料や合成樹脂を撹拌するように収容体411の内周側に配置されている。スクレーパ424は、収容体411の内壁面に付着する原料や合成樹脂を掻き落とすように、収容体411の内壁面近傍に当接部材4241が位置するように形成されている。
【0043】
尚、撹拌機構42に適用可能な高粘度で攪拌可能な攪拌羽根としては、例えば一般的な形状ではヘリカルリボン羽根や、アンカー羽根等の形状が例示される。例えば、市販されている羽根形状では、(株)日立製作所製ねじり格子翼重合機や、佐竹化学機械工業(株)製スーパーミックスMR524等が例示される。
【0044】
(反応容器4:下側ガス供給機構45)
また、収容体411における胴部4111及び底部4112の少なくとも一方には、収容空間413を下部から窒素置換するための下側ガス供給機構45が設けられている。下側ガス供給機構45は、合成樹脂及び原料の上面よりも下方に位置するように配置され、収容体411内(収容空間413)に窒素ガスを流入させる不活性ガス流入口41bと、不活性ガス流入口41bを開閉する流入口開閉機構451とを有している。
【0045】
流入口開閉機構451は、図3(a)・(b)に示すように、不活性ガス流入口41bに配置された弁体4511と、弁体4511を進退移動させることにより不活性ガス流入口41bを開閉するインジェクションバルブ機構451とを有している。インジェクションバルブ機構451は、不活性ガス流入口41bに配置された弁体4511と、弁体4511に先端部が接続され、後端部が収容体411の外部に位置するように水平配置された棒状の進退部材4512と、進退部材4512の後部に連結され、進退部材4512を進退移動させる弁体駆動装置4513と、内部に進退部材4512が挿通され、一端部が不活性ガス流入口41bに液密(気密)状態に接続され、他端部が弁体駆動装置4513に液密状態に接続された筒状部材4514と、筒状部材4514の内部に窒素ガスを導入するガス配管4515とを有している。尚、液密状態及び気密状態は、何れの状態であっても、液体及び気体の漏洩を防止する状態である。
【0046】
これにより、下側ガス供給機構45は、インジェクションバルブ機構451の弁体4511が進退移動して不活性ガス流入口41bの端面を開閉することにより窒素ガスを収容空間413に供給可能にされているため、ボールバルブ等の他種類のバルブを用いて窒素ガスを供給可能にする場合よりも、不活性ガス流入口41bを高い液密性で閉栓可能にしつつ不活性ガス流入口41b等に残留する合成樹脂を低減することが可能になっている。
【0047】
さらに、下側ガス供給機構45は、筒状部材4514に溜まった原料や合成樹脂を外部に排出するバルブ清掃機構452を備えている。バルブ清掃機構452は、ガス配管4515を開閉するバルブ部材4522と、筒状部材4514に進退移動可能に設けられた押出し部材4521と、筒状部材4514に接続され、図示しない回収タンク等に連絡された清掃配管4524と、清掃配管4524を開閉するバルブ部材4523と、押出し部材4521を進退移動させる押出し部材駆動装置4525とを有している。押出し部材4521は、二重管構造を有し、先端部の外周面が筒状部材4514の内周面に摺動自在に接触されていると共に、内周側に進退部材4512が摺動自在に貫挿されている。
【0048】
これにより、バルブ清掃機構452は、図3(b)に示すように、ガス配管4515のバルブ部材4522を閉栓する一方、清掃配管4524のバルブ部材4523を開栓した後、弁体駆動装置4513側に後退された押出し部材4521を清掃配管4524側に進出させることによって、筒状部材4514に溜まった原料や合成樹脂を外部に排出することを可能にしている。尚、バルブ清掃機構452は、弁体4511が筒状部材4514内に後退可能にされていてもよく、この場合には、弁体4511を後退させることによって、進退部材4512内の原料や合成樹脂を清掃配管4524から排出させることができる。
【0049】
尚、下側ガス供給機構45は、図4に示すように、筒状部材4514が不活性ガス流入口41b側の端部を最低の高さ位置とし、後端部側に向かって高さ位置を上昇させるように、所定の傾斜角度θで傾斜されていてもよい。ここで、傾斜角度θは、特に限定されるものではないが、原料や合成樹脂を自重で収容空間413方向に移動させ易くするため、90度に近い角度であることが好ましい。この場合には、原料や合成樹脂が重力の作用を受けて、筒状部材4514内に流入し難くすることができると共に、流入した原料や合成樹脂を収容空間413に自重により戻すことが可能になる。また、このように傾斜された下側ガス供給機構45に、上述のバルブ清掃機構452が備えられていてもよく、この場合には、重力の作用で原料や合成樹脂を清掃配管4524方向に移動させることができるため、清掃が容易になる。
【0050】
(反応容器4:排出機構46)
図2に示すように、容器本体41の底部には、溶融状態の合成樹脂を排出可能に形成された排出機構46が設けられている。排出機構46は、容器本体41に形成された排出口41aと、排出口41aから破砕装置5に向けて設けられた排出配管462と、排出口41aを開閉するY型弁463と、合成樹脂を強制的に排出側に送り出す送出ポンプ461とを有している。
【0051】
Y型弁463は、排出口41aに配置された弁体4631と、弁体4631に先端部が接続され、後端部が収容体411の外部に位置するように鉛直方向に配置された棒状の進退部材4632と、進退部材4632の後部に連結され、進退部材4632を進退移動(昇降)させる弁体駆動装置4633と、内部に進退部材4632が挿通され、下端部が弁体駆動装置4633に液密状態に接続された筒状部材4634とを有している。これにより、Y型弁463は、弁体4631が進退移動して排出口41aを開閉することにより合成樹脂を排出可能にしているため、ボールバルブ等の他種類のバルブを用いて合成樹脂を排出可能にする場合よりも、排出口41aを高い液密性で閉栓可能にしつつ排出口41aに残留する合成樹脂を低減することができるようになっている。
【0052】
Y型弁463における筒状部材4634の上端部は、排出配管462の中部位置に接続されている。排出配管462は、上部側に位置する鉛直部462aと、下部側に位置する曲折部462bとを有している。鉛直部462aは、排出口41aに接続された鉛直上流端を有し、配管軸が鉛直方向に設定されている。一方、曲折部462bは、鉛直部462aの鉛直下流端に接続された曲折上流端を有し、鉛直部462aから少なくとも一部領域までの配管軸が鉛直方向に対して交差する方向であって、且つ、曲折上流端から曲折下流端にかけて高さ位置が低下する曲折条件を満足するように形成されている。具体的には、曲折部462bは、曲折上流端から曲折下流端にかけて高さ位置が低下するように凹状に湾曲されている。湾曲の状態は、曲折上流端から曲折下流端にかけて曲率半径が拡大するように設定されている。尚、曲折部462bは、上記の曲折条件を満足するものであれば、どのような形状であってもよく、例えば、曲折上流端から曲折下流端にかけて高さ位置が低下するように直線状に形成されていてもよい。
【0053】
ここで、鉛直上流端及び曲折上流端とは、排出口41aを開栓して合成樹脂を流動させた場合における流動方向に対して上流側の一方端(上端)を意味する。また、鉛直下流端及び曲折下流端とは、排出口41aを開栓して合成樹脂を流動させた場合における流動方向に対して下流側の他方端(下端)を意味する。
【0054】
上記の排出配管462には、Y型弁463の筒状部材4634が接続されている。排出配管462内部と筒状部材4634内部とを区切る接続壁は、進退部材4632の外周面に液密状態に摺接されており、排出配管462を流動する合成樹脂が筒状部材4634に流れ込むことを防止している。これにより、排出機構46は、排出口41aから排出された溶融状態の合成樹脂が、排出配管462の鉛直部462aを鉛直方向に流動した後、曲折部462bにより流動方向が強制的に変更されることによって、流動時における圧力分布が変化することから滞留部分が減少し易いものとなっている。
【0055】
上記の排出配管462は、下流端が送出ポンプ461に接続されている。送出ポンプ461は、合成樹脂を破砕装置5に送り出すように構成されている。これにより、排出機構46は、次工程の冷却機構51及び破砕装置5に合成樹脂を定量供給することができる。この結果、常に同じ条件で合成樹脂の冷却を行わせることができると共に、同じ処理量で合成樹脂を破砕して排出させることができるため、品質を安定させることができる。
【0056】
また、排出機構46は、容器本体41内の収容空間413び排出配管462に存在する合成樹脂に対して、重力による下方向の流動駆動力に加えて、送出ポンプ461の吸引力による下方向の流動駆動力が付与されるため、収容空間413からの合成樹脂の排出を短時間で終了させることが可能になっている。さらに、排出機構46は、収容空間413における合成樹脂の残量が少なくなって自重による流動速度が低下することになっても、送出ポンプ461により合成樹脂の流動速度を高めることができるため、合成樹脂の残留を低減することが可能になっている。
【0057】
(反応容器4:温調機構47)
上記のように構成された反応容器4は、さらに、温調機構47を有している。温調機構47は、容器本体41及び排出機構46に対して合成樹脂の溶融状態を維持可能に温調する構成にされている。具体的に説明すると、温調機構47は、容器本体41の収容体411の外壁面を覆う収容体ジャケット471と、送出ポンプ461を覆うポンプジャケット472と、排出配管462の外壁面に巻回されたバンドヒータ473と、排出配管462の上端部に配置された誘導加熱装置474とを有している。
【0058】
収容体ジャケット471及びポンプジャケット472は、オイルや水蒸気等の加熱媒体が供給可能にされており、加熱媒体の温度調整により収容体ジャケット471及びポンプジャケット472を所望の温度に温調可能になっている。また、バンドヒータ473は、図示しないヒータ電源に接続されており、供給電力の調整により排出配管462を所望の温度の温調可能になっている。誘導加熱装置474は、排出口41aの周囲に配置された誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルに高周波電力を供給する高周波電源装置とを有している。そして、誘導加熱装置474は、供給電力及び周波数の調整より、排出口41a周辺の収容体411の底部を電磁誘導加熱することにより所望の温度に加熱可能になっている。これにより、誘導加熱装置474は、排出口41a周辺を部分的に加熱することによって、排出口41aにおける合成樹脂の残留を防止することを可能にしている。
【0059】
尚、温調機構47は、全てがバンドヒータで構成されていてもよいし、全てがジャケットで構成されていてもよい。さらに、温調機構47は、ジャケットやバンドヒータ、誘導加熱装置等の1以上の組合せの加熱機器が、収容体411と送出ポンプ461等の加熱対象部位に個別に温調可能に設けられていてもよい。
【0060】
(破砕装置5)
上記のように構成された反応容器4の下方には、図1に示すように、破砕装置5が配設されている。破砕装置5は、排出機構46から排出された合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にして送り出す冷却機構51と、冷却機構51から送り出された合成樹脂を破砕する破砕機構52とを有している。
【0061】
冷却機構51は、水平配置された冷却ドラム511と、冷却ドラム511に冷却水を送り込む図示しない冷却水供給系と、冷却ドラム511の表面に面状に当接された冷却ベルト512と、冷却ドラム511及び冷却ベルト512を同期させながら回転させる回転機構とを有している。冷却ドラム511及び冷却ベルト512は、アクリルオリゴマ等の合成樹脂が固着しないように、例えば、シリコンやテフロン(登録商標)樹脂を合成樹脂との接触面にコーティングされていることが好ましい。
【0062】
冷却ドラム511と冷却ベルト512との当接開始位置は、反応容器4から排出された合成樹脂の落下位置に設定されている。これにより、冷却機構51は、反応容器4からの合成樹脂を冷却機構51と冷却ベルト512との間に挟み込みながら薄板状に形成した後、常温未満の温度にまで低下させて薄板状に固化された合成樹脂を形成するようになっている。
【0063】
冷却ドラム511と冷却ベルト512との離反位置には、破砕機構52が配設されている。破砕機構52は、ヘラ部材521と破砕装置522とを有している。ヘラ部材521は、先端部が冷却ドラム511の表面に当接されており、冷却ドラム511の表面に付着した合成樹脂を冷却ドラム511から離反させるようになっている。また、破砕装置522は、回転部材5222の外周方向に多数の回転翼5221を固設した構成にされている。破砕装置522は、回転部材5222の回転より回転翼5221を高速で回転させることによって、回転翼5221を合成樹脂に衝突させて破砕し、合成樹脂を粉状や粒状に小片化させるようになっている。
【0064】
これらの冷却機構51及び破砕機構52は、箱型形状の収容体53に収容されている。収容体53は、破砕機構52の下方位置が開口されており、合成樹脂の小片の飛散を防止しながら開口を介して下方に落下させるようになっている。収容体53の開口の下方には、搬送台車54が走行可能にされている。搬送台車54は、上面が開口された収容ボックス55を載置可能にされており、所定量の合成樹脂が収容ボックス55が投入されたときに収容ボックス55と共に合成樹脂を次工程に搬出可能にしている。
【0065】
尚、破砕装置5は、日本コークス工業製「ベルトドラムフレーカー」を用いることができる。また、破砕装置5は、冷却ベルト512の回転上流側に配置され、冷却ドラム511に当接された成形ロールと、成形ロールの下流側に並列配置された多数のスリット部材とを備えた成形機構を備えていてもよい。この場合には、合成樹脂を薄板状に成形すると同時に、多数のスリットや溝を幅方向に並列配置して強度の弱い部分を有した薄板状の合成樹脂とすることができるため、破砕機構52における破砕の小片化を容易に行うことができる。
【0066】
(分離装置6)
図1に示すように、反応容器4には、重合終了後に残留する原料を容器本体41から外部に排出する分離装置6が接続されている。分離装置6は、収容空間413を減圧する真空ポンプ63と、冷却機能を備えたコンデンサ61と、モノマトラップタンク62とを有している。コンデンサ61は、上端部に配置された流入口61aと、下端部に配置された流出口61bとを備えた筒状に形成されている。流入口61aは、蓋体412のガス排出口41dに連通され、反応容器4の収容空間413から気化状態の未反応原料を内部に流入させるようになっている。一方、流出口61bは、モノマトラップタンク62の第1流入口62aに連通されている。そして、コンデンサ61は、内部に流入した未反応原料を再凝集させてモノマトラップタンク62に送出するようになっている。
【0067】
モノマトラップタンク62は、コンデンサ61に接続された第1流入口62aと、真空ポンプ63に接続された第2流入口62bとを上部に有していると共に、凝集された未反応原料を排出する流出口62cを底部に有している。流出口62cは、回収バルブ64により開閉可能に接続されている。回収バルブ64は、真空ポンプ63による収容空間413の減圧時等において流出口62cを閉栓し、モノマトラップタンク62に収容された未反応原料の回収時等において流出口62cを開栓するようになっている。これにより、分離装置6は、重合せずに残留した原料を合成樹脂から分離することができるため、小片状にされた合成樹脂の品質を高めることが可能になっている。
【0068】
(制御装置7)
上記のように構成された樹脂製造装置1は、図1に示すように、制御装置7を備えている。制御装置7は、樹脂製造装置1の自動運転及び手動運転を切替え可能に制御する。制御装置7は、処理動作テーブル等の記憶形態で各種のデータを書き換え可能に記憶していると共に、製造メインルーチン等の各種のプログラムを記憶している。
【0069】
上記の構成において、樹脂製造装置1の動作を詳細に説明する。
(原料投入工程)
先ず、原料投入工程が実行される。即ち、蓋開閉機構43が作動されることによって、蓋体412が上昇されて収容体411から離反される。そして、容器本体41の排出口41a、不活性ガス流入口41b、上側ガス供給口41c、材料投入口41e、及びガス排出口41dが閉栓状態であることが確認された後、収容体411の上面開口から、原料であるCHMA(シクロヘキシルメタクリレート)モノマの50kgが投入される。この後、蓋体412が下降され、収容体411に密接されることによって、気密状態の収容空間413が容器本体41内に形成される。尚、原料モノマであるCHMAモノマは、図示しない接続配管を介して投入されてもよく、この場合には、蓋体412の昇降動作を省略することができる。
【0070】
(第1窒素置換工程)
次に、第1窒素置換構成が実行される。即ち、図2に示すように、下側ガス供給機構45における弁体4511が前進され、不活性ガス流入口41bが開栓状態にされる。また、同時に、撹拌機構42が作動され、撹拌羽根423及び当接部材4241が撹拌軸部材422を中心して60rpmで回転される。この後、窒素ガスが30L/minの供給量で収容体411の下部から投入され、原料と共に攪拌されることによって、窒素置換が行われる。そして、原料(内部温度)が90℃になるまで昇温され、この状態が60分間維持される。
【0071】
(第2窒素置換工程)
次に、第2窒素置換工程が実行される。即ち、下側ガス供給機構45における弁体4511が後退され、不活性ガス流入口41bが閉栓状態にされる。一方、上側ガス供給口41cが開栓状態にされる。これにより、原料の内部への窒素ガスの投入が停止される一方、原料の上方から窒素ガスが10L/minの供給量で投入される。
(重合開始工程)
次に、重合開始工程が実行される。即ち、材料投入口41eが開栓状態にされ、連鎖移動剤としてチオグリコール酸の1.75kgと、重合開始剤としてパーヘキシルD(日本油脂(株))の7.5gとが投入される。これにより、原料の重合反応が開始される。
【0072】
(重合工程)
次に、重合工程が実行される。即ち、反応熱を利用して段階的に内部温度が昇温され、最終的に5時間(Hr)程度をかけて、最終内部温度が180℃になるまで昇温される。
(分離工程)
次に、分離工程が実行される。即ち、上側ガス供給口41cが閉栓状態にされることによって、窒素ガスの供給が停止される。この後、収容空間413の密閉状態が維持されながら、図1に示すように真空ポンプ63が作動され、収容空間413の圧力が2kPa(abs)にまで減圧される。そして、収容空間413の温度が180℃に維持されながら、このような減圧状態が1.5hr保持されることによって、収容空間413に存在する未反応モノマがコンデンサ61で凝集されてモノマトラップタンク62に収容される。これにより、合成樹脂(アクリルオリゴマ)と原料とが分離される。
【0073】
(排出工程・破砕工程)
次に、排出・破砕工程が実行される。即ち、真空ポンプ63が停止されることによって、収容空間413が常圧に戻される。そして、上側ガス供給口41cが開栓状態にされ、蓋体412側から窒素ガスが10L/minで供給する。そして、破砕装置5が作動された後、排出口41aが開口されると共に排出ポンプ461が作動されることによって、容器本体41の底部に配置された排出口41aから、溶融状態の合成樹脂であるアクリルオリゴマが連続的に破砕装置5に向かって排出される。この際、排出中においても、収容空間413の温度や排出機構46は180℃となるように温調機構47により加温されている。これにより、アクリルオリゴマは、粘度が低い溶融状態に維持されながら排出機構46から自然落下することになる。
【0074】
溶融状態のアクリルオリゴマが破砕装置5に投入されると、冷却ドラム511と冷却ベルト512との間に挟み込まれながら、薄板状に引き伸ばされて冷却される。この結果、アクリルオリゴマが急速に常温以下に冷却されて固化状態となる。そして、薄板状のに固化されたアクリルオリゴマがヘラ部材521により冷却ドラム511から引き剥がされ、破砕装置522により小片状に破砕される。この結果、純度が高い(98%以上)フレーク状(厚み1mm程度×直径1cm程度)、即ち、小片化されたアクリルオリゴマが収容ボックス55に収容される。
【0075】
(清掃工程)
次に、清掃工程が実行される。即ち、容器本体41内の収容空間413から全てのアクリルオリゴマが排出されたら、温調機構47により加熱が停止されることによって、容器本体41の温度が低下される。このとき、下側ガス供給機構45が作動され、不活性ガス流入口41bが開栓状態とされた後、下側ガス供給機構45から窒素ガスが20L/minの噴出量で噴出される。これにより、下側ガス供給機構45から溶融状態のアクリルオリゴマが排出されることによって、下側ガス供給機構45内でアクリルオリゴマが固化することによる配管詰まりが防止される。
【0076】
(概要)
以上のように、本実施形態の樹脂製造装置1は、図1に示すように、原料の重合により常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で生成及び収容する容器本体41と、この容器本体41の底部に配置され、溶融状態の合成樹脂を排出可能に形成された排出機構46と、容器本体41及び排出機構46を合成樹脂の溶融状態を維持可能に温調する温調機構47とを有した反応容器4と、反応容器4の下方に配設され、排出機構46から排出された合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にして送り出す冷却機構51と、この冷却機構51から送り出された合成樹脂を破砕する破砕装置5とを有した破砕装置5(破砕装置)とを有した構成にされている。
【0077】
上記の構成によれば、反応容器4の容器本体41において、原料を重合させることにより溶融状態の合成樹脂が生成されると、生成された合成樹脂は、容器本体41及び排出機構46の温調機構47による温調により溶融状態が維持されているため、容器本体41の壁面等に付着している部分を含め、大部分が重力の作用により下降され、容器本体41の底部に配置された排出機構46から排出される。そして、排出された溶融状態の合成樹脂は、反応容器4の下方に配設された破砕装置5において、冷却及び固化状態にされた後に破砕されることによって、小片状の合成樹脂とされる。これにより、樹脂製造装置は、合成樹脂の溶融状態を維持して重力を利用しながら、合成樹脂を反応容器4から排出させた後に、固化状態の合成樹脂にして破砕することができるため、反応容器4の内壁面等に残留する残留量を大幅に低減することができる。この結果、反応容器4に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を軽減することができる。
【0078】
また、樹脂製造装置1における排出機構46は、容器本体41に形成された排出口41aと、排出口41aから破砕装置5に向けて設けられた排出配管462と、排出口41aに配置された弁体4631を有し、この弁体4631を進退移動させることにより排出口41aを開閉するY型弁463とを有する構成にされている。
【0079】
上記の構成によれば、Y型弁463の弁体4631が進退移動して排出口41aを開閉することにより合成樹脂が排出可能にされているため、ボールバルブ等の他種類のバルブを用いて合成樹脂を排出可能にする場合よりも、排出口41aを高い液密性で閉栓可能にしつつ排出口41aに残留する合成樹脂を低減することができる。これにより、反応容器4に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を一層軽減することができる。
【0080】
また、樹脂製造装置1における排出機構46は、さらに、排出配管462に接続され、合成樹脂を破砕装置5に送り出す排出ポンプ461を有する構成にされている。
【0081】
上記の構成によれば、次工程の冷却機構51及び破砕装置5に合成樹脂を定量供給することができる。この結果、常に同じ条件で合成樹脂の冷却を行わせることができると共に、同じ処理量で合成樹脂を破砕して排出させることができるため、品質を安定させることができる。また、容器本体41及び排出配管462に存在する合成樹脂に対して、重力による下方向の流動駆動力に加えて、排出ポンプ461の吸引力による下方向の流動駆動力が付与されるため、反応容器4からの合成樹脂の排出を短時間で終了させることができる。さらに、合成樹脂の流動速度を高めることができるため、合成樹脂の残留を低減することもできる。
【0082】
また、樹脂製造装置1における排出配管462は、排出口41aに接続された鉛直上流端を有し、配管軸が鉛直方向に設定された鉛直部462aと、鉛直部462aの鉛直下流端に接続された曲折上流端を有し、鉛直部462aから少なくとも一部領域までの配管軸が鉛直方向に対して交差する方向であって、且つ、曲折上流端から曲折下流端にかけて高さ位置が低下された曲折部462bとを有しており、Y型弁463は、弁体4631に接続され、鉛直部462a内を通過及び曲折部462bを液密状態で移動自在に貫設された進退部材4632と、曲折部462bの下方に配置され、進退部材4632を進退移動させる弁体駆動装置4633(進退駆動部)とを有した構成にされている。
【0083】
上記の構成によれば、Y型弁463による排出口41aの開閉を簡単な構成により実現することができる。さらに、排出口41aから排出された溶融状態の合成樹脂は、鉛直部462aを鉛直方向に流動した後、曲折部462bにより流動方向が強制的に変更されることによって、流動時における圧力分布が変化し、乱流状態を発生させ易くなることから滞留部分が減少し易いものとなる。これにより、排出配管462に残留する合成樹脂を低減することができる。
【0084】
また、樹脂製造装置1における反応容器4は、合成樹脂及び原料の上面よりも下方に位置するように配置され、不活性ガスを容器本体41内に流入させる不活性ガス流入口41bと、弁体4511の進退移動により不活性ガス流入口41bを開閉するインジェクションバルブ機構451(流入口開閉機構)と有した構成にされている。
【0085】
上記の構成によれば、合成樹脂や原料に不活性ガスを送り込む不活性ガス流入口41bをインジェクションバルブ機構451により開閉することによって、不活性ガス流入口41bに残留する合成樹脂を低減することができる。
【0086】
樹脂製造装置1は、さらに、重合終了後に残留する原料を、容器本体41から外部に排出する分離装置6を有した構成にされている。
【0087】
上記の構成によれば、重合せずに残留した原料を合成樹脂から分離することができるため、小片状にされた合成樹脂の品質を高めることができる。
【0088】
樹脂製造装置1は、原料が(メタ)アクリル系モノマであり、重合がバルク重合であり、合成樹脂が〈メタ〉アクリル系オリゴマである構成にされている。上記の構成によれば、(メタ)アクリルオリゴマの製造に好適に用いることができる。
【0089】
また、樹脂製造装置1は、反応容器4の底部に形成された排出口41aを閉栓させながら、この反応容器4に原料を投入する原料投入工程と、原料を重合させることにより常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で反応容器4内に生成及び収容する重合工程と、合成樹脂の溶融状態を維持するように温調しながら排出口41aを開栓させて合成樹脂を排出する排出工程と、排出口41aから排出されて自然落下する合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にした後に破砕する破砕工程とを有する樹脂製造方法を実現している。
【0090】
上記の構成によれば、合成樹脂の溶融状態を維持して重力を利用しながら、合成樹脂を反応容器4から排出させた後に、固化状態の合成樹脂にして破砕することができるため、反応容器4の内壁面等に残留する残留量を大幅に低減することができる。この結果、反応容器4に残留した固化状態の合成樹脂を除去するために要する時間及び負担を軽減することができる。さらには、無溶剤で高純度なフレーク状の樹脂を効率よく製造することができる。
【0091】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
1 樹脂製造装置
4 反応容器
5 破砕装置
6 分離装置
7 制御装置
41 容器本体
41a 排出口
41b 不活性ガス流入口
41a 排出口
46 排出機構
47 温調機構
51 冷却機構
461 排出ポンプ
462 排出配管
462a 鉛直部
462b 曲折部
463 Y型弁
4631 弁体
4632 進退部材
4633 弁体駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の重合により常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で生成及び収容する容器本体と、該容器本体の底部に配置され、溶融状態の前記合成樹脂を排出可能に形成された排出機構と、前記容器本体及び前記排出機構を前記合成樹脂の溶融状態を維持可能に温調する温調機構とを有した反応容器と、
前記反応容器の下方に配設され、前記排出機構から排出された前記合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にして送り出す冷却機構と、該冷却機構から送り出された前記合成樹脂を破砕する破砕機構とを有した破砕装置と
を有することを特徴とする樹脂製造装置。
【請求項2】
前記排出機構は、
前記容器本体に形成された排出口と、
前記排出口から前記破砕装置に向けて設けられた排出配管と、
前記排出口に配置された弁体を有し、該弁体を進退移動させることにより前記排出口を開閉するY型弁と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂製造装置。
【請求項3】
前記排出機構は、さらに、
前記排出配管に接続され、前記合成樹脂を前記破砕装置に送り出す送出ポンプを有することを特徴とする請求項2に記載の樹脂製造装置。
【請求項4】
前記反応容器は、
前記合成樹脂及び前記原料の上面よりも下方に位置するように配置され、不活性ガスを前記容器本体内に流入させる不活性ガス流入口と、
インジェクションバルブの弁体の進退移動により前記不活性ガス流入口を開閉する流入口開閉機構と
有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂製造装置。
【請求項5】
さらに、
重合終了後に残留する前記原料を、前記容器本体から外部に排出する分離装置を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂製造装置。
【請求項6】
前記原料が(メタ)アクリル系モノマであり、前記重合がバルク重合であり、前記合成樹脂が〈メタ〉アクリル系オリゴマであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂製造装置。
【請求項7】
反応容器の底部に形成された排出口を閉栓させながら、該反応容器に原料を投入する原料投入工程と、
前記原料を重合させることにより常温で固化状態となる熱可塑性の合成樹脂を溶融状態で前記反応容器内に生成及び収容する重合工程と、
前記合成樹脂の溶融状態を維持するように温調しながら前記排出口を開栓させて前記合成樹脂を排出する排出工程と、
前記排出口から排出されて自然落下する前記合成樹脂を連続的に冷却及び固化状態にした後に破砕する破砕工程と
を有することを特徴とする樹脂製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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