説明

橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法

【課題】 大掛かりな施工を要することなく、橋台の耐力を十分に高めることができる橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法を提供する。
【解決手段】 橋梁1における橋台2の背面側には、盛土3が形成されている。この橋台2および盛土3を補強するにあたり、盛土3における橋台2に隣接する部分を高圧噴射攪拌工法によって地盤改良し、補強地盤5を形成する。この補強地盤5を高圧噴射攪拌工法によって形成することにより、橋台2と一体化された状態で補強地盤5を形成する。またこの補強地盤5に対して、橋台2の表面側から鉄筋補強材7を挿入し、橋台2および盛土3の補強を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背面に盛土が設けられた橋台の補強方法として、従来、橋脚の耐震補強を目的として、橋脚から橋梁両端の橋台にケーブルを定着し、ケーブルを介して橋台を拘束することによって、橋脚の耐震性能の向上を図るものがある(たとえば、特許文献1,2参照)。また、橋桁と橋台との間にダンパーなどの装置を設け、橋桁から伝達される地震力を低減するものがある(たとえば、特許文献3,4参照)。
【0003】
橋梁の補強を行うにあたり、橋台を再構築する工法がある(たとえば、特許文献5参照)。この技術では、既設橋台背面に土留め壁を打設し、既設橋台と土留め壁との間を掘削し、土留め壁に引張芯材が挿入された引張補強材を打設した地盤を補強する。この後、掘削した空間に基礎を構築し、その後、引張補強材および土留め壁と一体化するように新設橋台を構築するというものである。
【特許文献1】特開2004−19327号公報
【特許文献2】特開2006−307444号公報
【特許文献3】特開2007−16500号公報
【特許文献4】特開2007−40097号公報
【特許文献5】特開2005−68816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1〜4に開示された補強方法は、いずれも多径間の橋梁に対して行われるものであり単径間の橋梁に対する補強については、もともと耐震性が高いことから、従来、単径間の橋梁、特に、橋台の背面に盛土が設けられた橋梁についての耐震補強はあまり開発されていないのが現状である。背面に盛土が設けられた橋台を備える橋梁の補強を行う際には、一般に、橋台背面土圧の増大に対して、基礎地盤の耐力の向上や橋台躯体の耐力向上といった方法が考えられる。しかしながら、これらの方法では、橋台躯体の安定性や耐力を十分に高くすることができないという問題がある。
【0005】
また、上記特許文献5に開示された技術によって橋台を新設する場合には、高い耐力を得ることができる。ところが、特許文献5に開示された工法では、橋台を新設する必要があり、その分施工が大掛かりにならざるを得ないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、大掛かりな施工を要することなく、橋台の安定性や耐力を十分に高めることができる橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法は、背面に盛土が設けられた橋台と、橋台に端部が支持される橋桁とを備える橋梁における橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法であって、橋台の表面側から棒状補強材を打ち込み、盛土に棒状補強材を固定して、橋台と盛土とを一体化することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法では、橋台の表面側から棒状補強材を打ち込み、盛土に棒状補強材を固定して、橋台と盛土とを一体化している。このため、橋台の耐力を十分に高めることができる。また、橋台と盛土との一体化は、棒状部材を打ち込むことによって実現されるため、その施工は容易なものとなる。この結果、大掛かりな施工を要することなく、橋台の耐力を十分に高めることができる。本発明における棒状補強材としては、鉄筋などを好適に用いることができるが、その他の金属や樹脂、ジオシンセティックス材などからなる棒状部材を用いることもできる。
【0009】
ここで、橋台の表面側から棒状補強材を打ち込み、盛土を貫通させた棒状補強材を、盛土の下方における地盤に固定する態様とすることができる。
【0010】
このように、盛土を貫通させた棒状補強材を、盛土の下方における地盤に固定することにより、棒状補強材に対して、橋台と盛土を一体化させる機能のほか、アンカーとしての機能を持たせることができる。
【0011】
また、上記課題を解決した本発明に係る橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法は、背面に盛土が設けられた橋台と、橋台に端部が支持される橋桁とを備える橋梁における橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法であって、橋台の背面における盛土の法面からパイプルーフを打設し、パイプルーフと橋台との間に補強材を打設し、橋台と盛土とを一体化することを特徴とする。
【0012】
このように、橋台の背面における盛土の法面からパイプルーフを打設し、パイプルーフと橋台との間に補強材を打設することによっても盛土を補強することができる。しかも、補強材によって橋台と盛土とを容易に一体化することができる。
【0013】
また、盛土における橋台に隣接する位置を地盤改良によって補強して補強地盤を形成し、橋台と補強地盤とを一体化することを特徴とする。
【0014】
このように、盛土における橋台に隣接する位置を地盤改良によって補強して補強地盤を形成し、橋台と補強地盤とを密着させて一体化することにより、橋台の耐力を十分に高めることができる。ここで、盛土に対して補強地盤を形成することから、盛土自体の強度が低く軟弱である場合でも、橋台の耐力を十分に高めることができる。また、橋台と補強地盤との一体化は、補強地盤の形成する際に橋台に隣接する位置まで地盤改良を行うことによって実現され、その施工は容易なものとなる。この結果、大掛かりな施工を要することなく、橋台の耐力を十分に高めることができる。
【0015】
さらに、地盤固結工法で地盤改良を行うことによって、補強地盤を形成する態様とすることができる。このように、地盤固結工法を用いることにより、容易に補強地盤を形成することができる。
【0016】
このとき、地盤固結工法として、深層混合処理工法や薬液注入工法を用いることができる。また、深層混合処理工法では、噴射攪拌式の高圧噴射攪拌工法や機械式攪拌による機械攪拌工法を用いることができる。もちろん、これらの工法を併用することもできる。特に、高圧噴射攪拌工法では、ウォータージェットやセメントミルクを噴射しながら盛土を切削するので橋台の裏面側を洗い出し、盛土における橋台に隣接する位置を容易に地盤改良することができる。その結果、橋台と盛土とを容易に密着させることができる。
【0017】
また、地盤固結工法を行う際に、盛土の法面から盛土を切削する態様とすることができる。
【0018】
このように、地盤固結工法を行う際に、盛土の法面から水平方向または水平方向に対して斜め下方向に向けて盛土を切削することにより、盛土の上面を使用することなく、地盤改良を行うことができる。このため、たとえば盛土の上面に線路が敷設されて、この線路上を列車が走行する場合に、列車の走行を妨げることなく、地盤改良を行うことができる。
【0019】
さらに、盛土における橋台に隣接する位置の盛土部分を撤去し、撤去した盛土部分に固化材を打設することによって、補強地盤を形成する態様とすることができる。
【0020】
このように、盛土部分を撤去して、固化材を打設することによっても、橋台に隣接する盛土の地盤改良を行うことができる。ここで用いられる固化材としては、モルタル、ソイルモルタル、ソイルセメントなどを用いることができる。
【0021】
そして、補強地盤の背面側における盛土部分に対して、盛土補強を施す態様とすることができる。このように、補強地盤の背面側における盛土部分に対して盛土補強を行うことにより、盛土の強度をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法によれば、大掛かりな施工を要することなく、橋台の安定性や耐力を十分に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。まず、第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る補強が行われる橋台を備える橋梁の要部平面図、図2は図1のII−II線断面図である。
【0024】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る補強方法が行われる橋梁1は、いわゆる単径間の橋梁であり、橋台2を備えている一方で、橋脚を備えていない。橋台2は、橋台躯体11を備えている。橋台躯体11の背面両側方には、それぞれ翼壁12が設けられている。さらに、橋台躯体11の下方には、橋台基礎13が設けられている。これらの橋台躯体11、翼壁12、および橋台基礎13は、一体として形成されている。
【0025】
橋台2の背面には盛土3が設けられている。この盛土3は、断面が略台形状をなしており、側面が法面とされている。また、橋台2には、橋桁となる鋼製の主桁4の一端部が支持されている。主桁4の他端部も、図示しない橋台に取り付けられており、これらの橋台2によって主桁4が支持されている。盛土3および主桁4の上面側には、線路Lが敷設されており、線路Lの上を列車が走行可能とされている。
【0026】
盛土3における橋台2と隣接する位置は、地盤改良がなされて高圧噴射改良体からなる補強地盤5とされている。補強地盤5は、いわゆる高圧噴射攪拌工法によって施工されている。さらに、盛土3には、法面からラディッシュアンカー等の盛土補強材6が打設されており、大径補強材や盛土補強材6によって盛土が補強され、法面保護がなされている。この盛土補強材6としては、ラディッシュアンカーのほか、鉄筋補強材や大径補強材等を用いることができる。
【0027】
また、橋台2には、橋台2の表面側から橋台2の裏面側に向けて、棒状補強材となる鉄筋補強材7が複数打ち込まれている。これらの鉄筋補強材7は、橋台2の表面側から補強地盤5に向けて設置されている。また、鉄筋補強材7は、橋台躯体11の表面側から定着部材8によって定着されており、橋台躯体11および補強地盤5に定着されている。
【0028】
次に、本実施形態に係る橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法の施工手順について説明する。本実施形態に係る補強方法は、既設の橋梁および新設の橋梁のいずれに対して行うことができる。ここでは、既設の橋梁に対する補強方法について説明する。このとき、盛土3については、法面から盛土補強材6が打設され、地盤改良がなされることにより、高圧噴射改良体が生成されている。
【0029】
橋台2および盛土3の補強を行うにあたり、まず、橋台2に隣接する盛土3の部分を高圧噴射攪拌工法による地盤改良を行う。高圧噴射攪拌工法では、地盤改良を行う部分の上面に敷設された線路Lの隙間から、ウォータージェットを噴射しながら盛土3を切削する。図1に示す例では、地盤改良部分における橋台2に近い側に5列、その位置に対して橋台2から離れる方向に移動した位置に5列の位置で盛土3を切削している。ここで、高圧噴射攪拌工法による地盤改良を行う部分としては、鉄筋補強材の挿入範囲と同程度の範囲とする。
【0030】
続いて、地中に硬化材を含むセメントミルクを高圧で注入して充填する。ここで、ウォータージェットは橋台2に届くようにされていることから、高圧で充填されるセメントミルクは、橋台2の裏面を洗い出すとともに、橋台2が設けられている位置まで充填されることとなる。このセメントミルクの注入により、固化体が橋台2に密着した状態で生成され、セメント固化体を養生することにより、高圧噴射改良体からなる補強地盤5となる。
【0031】
地盤改良が済んだら、橋台2の橋台躯体11および補強地盤5に鉄筋補強材7を貫通させるための貫通孔を形成する。橋台躯体11および補強地盤5に貫通孔を形成したら、貫通孔を貫通させた状態で、鉄筋補強材7を高圧噴射改良体に設置する。その後、橋台2の表面側から鉄筋補強材7を定着部材8によって定着することにより、鉄筋補強材7を橋台躯体11および補強地盤5に定着させる。また、鉄筋補強材7と貫通孔との隙間にはセメントミルク等の固化材を充填して固化させる。こうして、橋台躯体11と一体化された補強地盤5をさらに補強することにより、橋台2の耐力を高めることができる。
【0032】
このように、本実施形態に係る補強方法では、高圧噴射攪拌工法によって補強地盤5を形成している。このため、橋台2に密着状態で盛土3に容易に補強地盤5を形成することができる。ここで、橋台2を単にグランドアンカー、鉄筋補強材、大径補強材等を打設して補強した場合と比較すると、本実施形態に係る補強方法では、すべての補強材を既設の橋台躯体11に密着するマス状の地盤改良体にほぼ同じ条件で定着させている。また、橋台2に形成した孔にモルタルなどを充填しており、腐食や劣化等の影響を軽減することができる。
【0033】
また、グランドアンカーの場合には、一般的に、既設の橋台から離れた位置にグランドアンカーの定着部が位置することとなる。このため支保時の荷重に対して伸びが生じる。これに対して、本実施形態に係る補強方法では、既設の橋台2に密着した均質な改良体となっている補強地盤5に鉄筋補強材7を定着する。このため、鉄筋補強材7の伸び代が非常に小さく、しかも均質な支保バネを期待することができる。
【0034】
さらに、このように橋台2の隣接する位置に補強地盤5を形成して、橋台2と補強地盤5とを一体化することにより、橋台の耐力を十分に高めることができる。しかも、橋台2はそのまま利用することができ、新設する必要もないので、大掛かりな施工を要する必要もない。
【0035】
また、本実施形態に係る補強方法では、橋台2から鉄筋補強材7を設置している。このため、橋台2と補強地盤5とをさらに強固に一体化することができるので、橋台2の耐力をさらに高いものとすることができる。このとき、橋台2を貫通するのは細径の鉄筋補強材7とすることができるので、橋台2に形成する孔は、その径が非常に小さいものとすることができる。したがって、橋台2の損傷を小さなものとすることができる。
【0036】
さらに、盛土3には、高圧噴射改良体からなる補強地盤5が形成されるとともに、鉄筋補強材、大径補強材等の盛土補強材6が打設されている。このため、盛土全体の耐震性能を高いものとすることができ、鉄筋補強材7がアンカーとして機能することにより、橋梁1の耐震性能を高めることができる。
【0037】
ところで、補強地盤5を形成するに範囲としては、盛土3自身の地震時安定性の向上のために必要な範囲と、橋台2の鉄筋補強材7の定着に必要な範囲とを設定している。ここで、盛土3自身の地震安定性の向上のための条件で決まる範囲と、橋台2の鉄筋補強材7の定着のための条件で決まる範囲とが異なる場合がある。
【0038】
この場合には、両方の範囲のいずれをも高圧噴射攪拌工法で一体として改良することができる。あるいは、橋台2の鉄筋補強材7の定着のための条件で決まる範囲を高圧噴射攪拌工法で形成し、その他の盛土3自身の地震安定性の向上のための条件で決まる範囲について盛土の耐震補強のみを目的とした鉄筋補強材や大径補強材を用いる工法で補強することなどもできる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法は、上記第1の実施形態と比較して、補強地盤5の形成方法が主に異なっている。図3は第2の実施形態に係る補強が行われる橋台を備える橋梁の要部平面図である。図3に示すように、本実施形態に係る補強方法では、補強地盤5を形成するにあたり、上記第1の実施形態と同様、高圧噴射攪拌工法を用いている。ただし、本実施形態では、高圧噴射攪拌工法を行う際に、盛土3の法面から水平方向または水平方向に対して斜め下方向を向けて補強地盤5を形成していく。
【0040】
続いて、本実施形態に係る補強方法の手順について説明する。本実施形態に係る補強方法では、盛土3の上面に敷設された線路Lはそのままの状態として、盛土3の法面からウォータージェットを盛土3内に挿入する。次に、ウォータージェットを噴射しながら盛土3を切削する。
【0041】
続いて、地中に硬化剤を含むセメントミルクを高圧で注入して充填する。このセメントミルクの注入により、盛土3における橋台2に接触する部分を含めて、地盤改良部分に固結体となるセメント固化体を生成する。それから、セメント固化体を養生することにより、高圧噴射改良体からなる補強地盤5となる。その後の工程は、上記第1の実施形態と同様となる。
【0042】
このように、本実施形態に係る補強方法では、補強地盤5を形成する際に、盛土3の法面から水平方向または水平方向に対して斜め下方向を向けて補強地盤5を形成している。このため、補強地盤5を形成するにあたって、盛土3の上面を開放する必要がないので、線路Lを走行する列車や、盛土3の上面に道路が形成されている場合には、その道路上を走行する自動車等の交通に影響を及ぼすことなく、補強地盤5を形成することができる。
【0043】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法は、上記第1の実施形態と比較して、橋台2を貫通する鉄筋補強材7の態様が主に異なっている。本実施形態に係る補強方法では、図4に示すように、鉄筋補強材として、長尺の鉄筋補強材7を用いており、橋台2から補強地盤5を超えて、盛土3の下方における地盤Gまで到達する長さとされている。このため、鉄筋補強材7の先端は、盛土3の下方における地盤に定着される。
【0044】
このように、盛土3の下方における地盤に鉄筋補強材7が定着されることにより、鉄筋補強材7は、橋台2と補強地盤5とを一体化する機能のほか、グランドアンカーとしての機能を果たすことができる。鉄筋補強材7にグランドアンカーの機能を持たせる場合、鉄筋補強材7としては必要な耐力に応じた素材のものを用いるのが好適となる。具体的に、ここでの鉄筋補強材7としては、PC鋼棒、PC鋼線、高強度繊維などを用いることができる。
【0045】
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法は、上記第1の実施形態と比較して、補強地盤の態様が主に異なっている。図5に示すように、本実施形態に係る補強方法では、モルタル材料を充填することによって補強地盤5を形成している。
【0046】
次に、本実施形態に係る補強方法の手順について説明する。本実施形態に係る補強方法では、まず、橋台2に隣接する盛土3の部分に載置されている線路Lの軌道を仮受桁するとともに、路面に覆工を掛ける。続いて、その下方の盛土を撤去し、ソイルモルタルを充填するための空間を形成する。その後、形成された空間にモルタルを充填することによって、補強地盤5が形成される。
【0047】
このように、本実施形態に係る補強方法では、高圧噴射攪拌工法に代えて、モルタルの充填によって補強地盤5を形成している。このような態様によっても、補強地盤5を形成することができる。ここで、補強地盤を形成するために用いられるモルタルとしては、発泡モルタル、貧配合モルタル、ソイルモルタルなどを挙げることができる。
【0048】
続いて、本発明の第5の実施形態について説明する。図6(a)は第5の実施形態に係る補強が行われる橋台を備える橋梁の要部側断面図、(b)はその要部平面図である。図6に示すように、本実施形態に係る橋台2の背面側における盛土3には、その法面からパイプルーフ21が打設されている。このパイプルーフ21は、鋼管によって形成されているが、樹脂、特に繊維強化樹脂などを用いることができる。
【0049】
このパイプルーフ21へは、複数の補強材22が橋台2の方向から打設され、定着されている。補強材22は、たとえば鋼材やケーブルからなり、その一端をパイプルーフ21に定着されており、他端を定着部材23によって橋台2に定着されている。本実施形態において、補強材22は、図6(a)に示すように、鉛直方向に沿って3列、図6(b)に示すように、水平方向に沿って3段配設され、合計9本の補強材22が打設されている。また、パイプルーフ21内には、補強材22を打設した後に、固化材が充填されている。
【0050】
このように、橋台2の背面における盛土3の法面からパイプルーフ21を打設し、パイプルーフ21と橋台2との間に補強材22を打設することによっても補強地盤5を形成することができる。しかも、橋台2とパイプルーフ21との間に補強材22を打設することによって橋台2と補強地盤5とを一体化することができる。このため、橋台2と補強地盤5とを容易に一体化することができる。
【0051】
ここで、上記第5の実施形態では、3列3段の補強材22を打設しているが、3列3段とする態様に代えて、その他の本数や配置とする態様とすることもできる。ここで、補強材22を多数本打設する際には、図6(a)に一点鎖線で示す仮想線のように、複数本のパイプルーフ21を打設する態様とすることもできる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記各実施形態では、単径間の橋梁についての補強に適用しているが、多径間の橋梁についての補強に適用することもできる。
【0053】
また、上記実施形態では、補強地盤を形成するにあたって、高圧噴射攪拌工法を用いているが、補強地盤5は、深層混合処理工法や薬液注入工法を用いて行うこともできる。特に、深層混合処理工法における高圧噴射攪拌工法によって補強地盤5を形成しているが、機械式攪拌工法を用いることもできる。
【0054】
さらに、上記実施形態では、補強地盤5を形成するにあたり、盛土3の深さに係わらず、橋台躯体11の背面からの距離が略一定となる範囲にまで補強地盤5を形成している。これに対して、図2に仮想線で示すように、盛土3の深さが深いほど、橋台躯体11からの距離が遠くなる範囲にまで補強地盤5Aを形成することもできる。この場合の補強地盤5Aは、側断面形状が略台形状となる。そのほか、補強地盤の側断面形状が略三角形状となったり、略裁頭錐体台形状となったりすることもできる。
【0055】
また、上記実施形態では、盛土3が軟弱地盤であることを想定して橋台躯体11の背面に地盤改良を施しているが、盛土3の強度が高い場合などには、地盤改良を施すことなく、橋台2の表面側から直接盛土補強材6を打ち込む態様とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態に係る補強が行われる橋台を備える橋梁の要部平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る補強が行われる橋台を備える橋梁の要部平面図である。
【図4】第3の実施形態に係る補強が行われる橋台を備える橋梁の要部側断面図である。
【図5】第4の実施形態に係る補強が行われる橋台を備える橋梁の要部側断面図である。
【図6】(a)は第5の実施形態に係る補強が行われる橋台を備える橋梁の要部側断面図、(b)はその要部平面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…橋梁
2…橋台
3…盛土
4…主桁
5…補強地盤
6…盛土補強材
7…鉄筋補強材
8…定着部材
11…橋台躯体
12…翼壁
13…橋台基礎
21…パイプルーフ
22…補強材
23…定着部材
G…(盛土の下方における)地盤
L…線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面に盛土が設けられた橋台と、前記橋台に端部が支持される橋桁とを備える橋梁における前記橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法であって、
前記橋台の表面側から棒状補強材を打ち込み、前記盛土に前記棒状補強材を固定して、前記橋台と前記盛土とを一体化することを特徴とする橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項2】
橋台の表面側から棒状補強材を打ち込み、前記盛土を貫通させた前記棒状補強材を、盛土の下方における地盤に固定する請求項1に記載の橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項3】
背面に盛土が設けられた橋台と、前記橋台に端部が支持される橋桁とを備える橋梁における前記橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法であって、
前記橋台の背面における盛土の法面からパイプルーフを打設し、
前記パイプルーフと前記橋台との間に補強材を打設し、前記橋台と前記盛土とを一体化することを特徴とする橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項4】
前記盛土における前記橋台に隣接する位置を地盤改良によって補強して補強地盤を形成し、
前記橋台と前記補強地盤とを一体化する請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項5】
地盤固結工法で前記地盤改良を行うことによって、前記補強地盤を形成する請求項4に記載の橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項6】
前記地盤固結工法が深層混合処理工法である請求項5に記載の橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項7】
前記地盤固結工法が薬液注入工法である請求項5に記載の橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項8】
前記地盤固結工法を行う際に、前記盛土の法面から前記盛土を切削する請求項5〜請求項7のうちのいずれか1項に記載の橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項9】
前記盛土における前記橋台に隣接する位置の盛土部分を撤去し、撤去した盛土部分に固化材を打設することによって、前記補強地盤を形成する請求項4に記載の橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。
【請求項10】
前記補強地盤の背面側における盛土部分に対して、盛土補強を施す請求項3〜請求項9のうちのいずれか1項に記載の橋台とその背面に設けられた盛土の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−53644(P2010−53644A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221998(P2008−221998)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】