説明

橋梁架設装置

【課題】暴風対策として過大な設備を必要とせず、予測し難い突風が生じたとしても、安全性や作業性が充分に維持でき、転倒防止用に更なる仮設材も必要とせず、もって作業コストも増加させないため不経済にならない橋梁架設装置を提供することを目的とする。
【解決手段】構築すべき橋梁の長手方向へ延出され、橋脚間に設置されて橋梁を構築する橋梁架設装置であり、橋梁架設装置は、トラス状に形成された架設桁と、架設桁を支持する支持台と、架設桁の下方に橋梁セグメント用吊り移動装置とを備え、架設桁は、断面形状を上部トラス壁と上部トラス壁の両脇から垂下する両側の側部トラス壁とにより門型に形成すると共に、一対の補強片が設けられて形成され、上部トラス壁内面部からは吊り移動装置が長手方向に移動可能に取り付けられ、吊り移動装置で吊り上げられる橋梁セグメントは架設桁内部間で吊り上げ収納可能とした、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスドカンチレバー工法などの橋梁架設工法に使用される橋梁架設装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に橋梁架設工法に使用される工法としては、例えば、スパン・バイ・スパン工法やバランスドカンチレバー工法などが知られている。
ここで、前記スパン・バイ・スパン工法は、一度に1径間を施工する工法を指標するものであり、これに対し、バランスドカンチレバー工法は、橋脚から1セグメントずつを左右対称に張出し橋梁架設を行う工法を指標するものである。
【0003】
そして、使用される架設機材としては、いわゆるエレクションノーズや大型のエレクションガーダーが一般的に知られている。これら架設機材の選定は、プレキャストセグメントの搬入方法などの施工条件によって決定される。
【0004】
一般的には、多径間の大型工事の場合は、大型のエレクションガーダーが利用される。
適用スパンは、エレクションノーズ方式の場合は、特に制限はなく 100m を越えるスパンでも利用可能であるが、大型のエレクションガーダー方式の場合は、80m 程度が合理的とされている。
しかして、本発明のようなバランスドカンチレバー工法は、比較的長大スパンの施工に用いられる工法であり、いわゆる吊り移動装置の走行路は一般的に1主構の例えば箱型形状の設備が用いられる。
さらに、特に60mを超える支間の設備としてはトラス形状が多く用いられている。
【0005】
前記トラス形状に形成した場合、橋梁セグメントの供給を下方から行う場合には、比較的前記吊り移動装置のセット位置が低くすることが出来、もって安定性に比較的課題を生ずることが少ないが、いわゆる上部工上を運搬して、前記橋梁セグメントなどを供給する場合、前記橋梁セグメントなどを、前記吊り移動装置の移動桁として構成する大型のエレクションガーダーのトラス形状下面側を通過させなければならない為、セット位置をかなり高くせざるを得ないとの課題が生じていた(図6,図7,図8参照)。
【0006】
具体例で示すと、例えば、上部工のセグメントの高さが4m程度、運搬設備として2m程度、吊り移動装置の高さとして3m程度、前記吊り移動装置操作時の巻き上げ動作余裕幅として1m程度など確保するとして総計約10m程度の高さが必要となり、これにトランスガーターの高さが6m程度と必要とすると最大高さ総計16m程度に達することになってしまう(図6において符号h−1で最大高さ総計を示す)。
【0007】
比較的風の吹かない平常時ではあまり問題となることがないが、いわゆる強風が舞う暴風時には、本発明の工法で使用するエレクションガーダーの大きさと、当該装置の高さ、換言すれば当該装置の重心位置の高さから、転倒モーメントが多大となってしまうとの課題があった。
特に海上や谷あいの場合の風荷重は、場合によっては300kg/m程度の超えることもあり、暴風対策には過大な設備を要しなければならないものであった。
【0008】
台風対策としては、事前に気象情報を確認し、おおよその対処が出来るものであるが、予測し難い突風が生じたときには、装置がむやみに移動したりして、安全性や作業性に課題が生じていた。
また暴風時の対策に万全を期すあまり、そのためのアンカー設置が過大作業となり、すでに完成してある上部工にも大きな影響を与えことがあり、しかも転倒防止用に更なる仮設材も必要になり、さらに作業コストも増大し不経済との課題もあった。
【0009】
【特許文献1】特開平8−3936号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かくして本発明は前記従来の課題を解消するために創案されたものであり、比較的風の吹かない平常時ではなく、いわゆる強風が舞う暴風時においても、暴風対策として過大な設備を必要とせず、予測し難い突風が生じたとしても、装置がむやみに移動したりせずに安全性や作業性が充分に維持でき、暴風時の対策に万全を期す必要がないため、過大なアンカー設置を必要とせず、すでに完成してある上部工にダメージを与えこともなく、しかも転倒防止用に更なる仮設材も必要とせず、もって作業コストも増加させないため不経済にならない橋梁架設装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による橋梁架設装置は、
構築すべき橋梁の長手方向へ延出され、橋脚間に設置されて橋梁を構築する橋梁架設装置であり、
前記橋梁架設装置は、構築すべき橋梁の長手方向へ延出するトラス状に形成された架設桁と、該架設桁を橋脚上に所定の高さを有して支持する支持台と、前記架設桁の下方に設けられ、橋梁の長手方向へ走行する橋梁セグメント用吊り移動装置と、を備え、
前記架設桁は、当該断面形状を上部トラス壁と該上部トラス壁の両脇から垂下する両側の側部トラス壁とにより門型に形成すると共に、前記両側の側部トラス壁の下部より上部トラス壁の内面側に接続される一対の補強片が設けられて形成され、
前記一対の補強片間の上部トラス壁内面部からは前記吊り移動装置が長手方向に移動可能に取り付けられ、該吊り移動装置で吊り上げられる橋梁セグメントは前記架設桁内部間で吊り上げ収納可能とした、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による橋梁架設装置であれば、
比較的風の吹かない平常時ではなく、いわゆる強風が舞う暴風時においても、暴風対策として過大な設備を必要とせず、予測し難い突風が生じたとしても、装置がむやみに移動したりせずに安全性や作業性が充分に維持でき、暴風時の対策に万全を期す必要がないため、過大なアンカー設置を必要とせず、すでに完成してある上部工にダメージを与えこともなく、しかも転倒防止用に更なる仮設材も必要とせず、もって作業コストも増加させないため不経済にならないとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図に示す発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
本発明による橋梁架設装置1は、主に前述したバランスドカンチレバー工法の橋梁架設工法に使用される橋梁架設装置1である。
すなわち、図1から理解されるように、当該橋梁架設装置1は、構築すべき橋梁2の長手方向へ延出しており、予め敷設された橋脚3,3間に設置されて橋梁2を構築するものである。
【0014】
そして、本橋梁架設装置1は、構築すべき橋梁2の長手方向へ延出して配置されるトラス状に形成された大型で長尺な架設桁(エレクションガーダー)4と、該架設桁4を橋脚3・・・上に所定の高さを有して支持する支持台と、前記架設桁の下方に設けられ、橋梁の長手方向へ走行する橋梁セグメント用吊り移動装置5とを備えて構成されている。
【0015】
前記架設桁4について、その外形を考察すると、まず、上部トラス壁6と該上部トラス壁6の両脇から各々垂下する両側の側部トラス壁7,7とにより略門型にその外形が形成されている。
そして、前記両側の側部トラス壁7,7の下部より上部トラス壁6の内面側に接続される一対の補強片8,8が各々設けられて形成されている。
【0016】
さらに、前記一対の補強片8,8間に挟まれた上部トラス壁6の内面部からは前記吊り移動装置5用の走行用レール9が長手方向に向かって敷設されており、前記吊り移動装置5は、この走行用レール9に移動可能に吊り下げられ、取り付けられている。
そして、該吊り移動装置5で吊り上げられる橋梁セグメント10は前記架設桁4の内部の空間まで吊り上げ収納可能に形成されてなるものである。
【0017】
すなわち、本発明による橋梁架設装置1の主たる特徴は、従来三角あるいは箱形をなす四角のトラス状に形成された架設桁4の形状を、いわゆる下部壁を取り去って略門型形状にし、もって、橋梁セグメント10の取り込みスペースを、前記門型にした架設桁の内部空間内に確保し、これにより橋梁架設装置1の全体重心位置を下げることを可能としたのである。
しかも、架設桁5の施工強度は、前記一対の補強片8,8によって従来装置と比較しても決して劣らないものとなっている。
【0018】
次に、本橋梁架設装置1の使用状態につき説明する。
図1から理解されるように、敷設すべき橋梁セグメント10は図1に向かって左側に位置する既設の橋梁2の上面(上部工)に搬送される。上述したように、橋梁セグメント10の供給が下方側から行うことが出来ないのである。何故なら、下方は海の中であったり、川の中であったり、谷であったりして供給が不可能だからである。
しかして、前記既設の橋梁2の上面(上部工)から供給せざるを得ないのである。
【0019】
吊り移動装置5により吊り上げられた橋梁セグメント10は図1あるいは図3に示すように、90度回転して向きを変え、略門型に形成した架設桁4の下側空間内に入り込むまで吊り上げられる。
そして、その状態からバランスドカンチレバー工法の橋梁架設工法により、橋脚4から一つの橋梁セグメント10ずつを左右対称に張出して橋梁架設を行うのである。
【0020】
ところで、図3は図1のA−A線矢視図であり、当該図3に示すように、橋脚4に敷設された既設の橋梁2上には橋梁2の幅方向に移動可能に設置された第1支持台11が設けられている。
該第1支持台11は、既設の橋梁2上に於いて、その幅方向に移動できるように構成され、もって、敷設すべき橋梁2が直線状にではなく曲線状に敷設される場合にも対応できるものとしてある。すなわち、左側に曲がって敷設する場合には橋梁2の幅方向右側に寄せて架設桁4を設置するがごとくである。
また、前記第1支持台11の上部には第2支持台12が載置され、当該第2支持台12上に略門型状をなす本発明の架設桁4が載置されるものとなる。
【0021】
ここで、図3から理解されるように、本発明の架設桁4であれば、吊り移動装置5により橋梁セグメント10を架設桁4の下方空間内まで引き込んで吊り上げることが出来、もって橋梁2の上面より架設桁5の上部までの高さを低くすることが出来るのである。
その結果、橋梁架設装置1自体の重心位置を低くすることができ(図1において符号h−2で最大高さ総計を示す)、もってたとえ突風があったとしても転倒のおそれがないものとなる。
【0022】
また、従来の支持台14の高さ、例えば約10m程度の高さ(図7において符号h−3で示す)を例えば半分の5m(図3において符号h−4で示す)まで下げることが出来、これにより、数値の上では安定度が1.6倍に向上し、上部工への影響も低減でき、さらには経済性も高めることが出来たのである。
【0023】
なお、バランスドカンチレバー工法の橋梁架設工法では橋脚4から一つの橋梁セグメント10ずつを左右対称に張出して橋梁架設を行うのであるが、図1及び図1のB−B線矢視図である図5から理解されるように、張り出して橋梁架設を行う左右の箇所には、架設桁4に取り付けられた方形枠状に形成された作業足場13,13が一対設けられている。
しかして、作業者はこの作業足場13,13上で橋梁セグメント10の敷設作業を行うことになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による橋梁架設装置の概略構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図2】本発明による橋梁架設装置の概略構成を説明する構成説明図(その2)である。
【図3】図1のA−A線矢視図である。
【図4】本発明による橋梁架設装置の概略構成を説明する構成説明図(その3)である。
【図5】図1のB−B線矢視図である。
【図6】従来の橋梁架設装置の概略構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図7】従来の橋梁架設装置の概略構成を説明する構成説明図(その2)である。
【符号の説明】
【0025】
1 橋梁架設装置
2 橋梁
3 橋脚
4 架設桁
5 吊り移動装置
6 上部トラス壁
7 側部トラス壁
8 補強片
9 走行用レール
10 橋梁セグメント
11 第1支持台
12 第2支持台
13 作業足場
14 従来の支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築すべき橋梁の長手方向へ延出され、橋脚間に設置されて橋梁を構築する橋梁架設装置であり、
前記橋梁架設装置は、構築すべき橋梁の長手方向へ延出するトラス状に形成された架設桁と、該架設桁を橋脚上に所定の高さを有して支持する支持台と、前記架設桁の下方に設けられ、橋梁の長手方向へ走行する橋梁セグメント用吊り移動装置と、
を備え、
前記架設桁は、当該断面形状を上部トラス壁と該上部トラス壁の両脇から垂下する両側の側部トラス壁とにより門型に形成すると共に、前記両側の側部トラス壁の下部より上部トラス壁の内面側に接続される一対の補強片が設けられて形成され、
前記一対の補強片間の上部トラス壁内面部からは前記吊り移動装置が長手方向に移動可能に取り付けられ、該吊り移動装置で吊り上げられる橋梁セグメントは前記架設桁内部間で吊り上げ収納可能とした、
ことを特徴とする橋梁架設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−127317(P2009−127317A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304246(P2007−304246)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000176202)三信工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】