橋梁通過車両監視システム、橋梁通過車両監視方法、およびコンピュータプログラム
【課題】1個のひずみ計でも、軸間距離、車速、車種、および軸重を特定できる、橋梁通過車両監視システムを提供する。
【解決手段】1測定位置ごとに1個のひずみ計104を配置する。また大型車両の軸間距離のデータを軸間距離データベース32に登録すると共に、1トンの基準軸重ひずみ波形33を記憶しておく。そして、ひずみ計104で計測したひずみ波形から車軸の通過タイミングを検出し、車両の軸間比率を算出する。そして、通過タイミングから算出した軸間比率と、軸間距離データベース32に登録された軸間距離から算出される軸間比率とを比較し、車両の軸間距離、車速および車種を特定する。また、車軸の通過タイミングに合わせて、基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形とを比較し、各軸の軸重を算出する。
【解決手段】1測定位置ごとに1個のひずみ計104を配置する。また大型車両の軸間距離のデータを軸間距離データベース32に登録すると共に、1トンの基準軸重ひずみ波形33を記憶しておく。そして、ひずみ計104で計測したひずみ波形から車軸の通過タイミングを検出し、車両の軸間比率を算出する。そして、通過タイミングから算出した軸間比率と、軸間距離データベース32に登録された軸間距離から算出される軸間比率とを比較し、車両の軸間距離、車速および車種を特定する。また、車軸の通過タイミングに合わせて、基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形とを比較し、各軸の軸重を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁を通過する車両の重量を計測する橋梁通過車両監視システム、橋梁通過車両監視方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の維持管理をする上で、橋梁を通過する大型車両の車軸重量が、橋梁の損傷を予測するために重要な情報となる。軸重測定ため、橋梁の主桁に設置したひずみ計から車両通過時のひずみ値を連続測定し、軸重を算出する手法Weight In Motionが提案されている。この手法では通過する車両の車軸間隔(軸間距離)が必要となるが、既存の手法(例えば、非特許文献1を参照)では車線ごとに、車軸通過に鋭敏な2つの箇所にひずみ計(以下、車軸検知用ひずみ計)を追加設置し、以下の方法で車軸間隔を算出している。
【0003】
図13(A)は、大型トラック等の3軸車両の通過時における、車軸検知用ひずみ計による測定結果、図13(B)は、図13(A)と同じく大型トラック等の3軸車両の通過時における、車重算出用ひずみ計による測定結果を示している。以下、図13(A)および(B)の測定結果を基に、車軸間隔を算出する方法について説明する。
【0004】
まず、第1の手順として、図13(A)に示すように、ひずみは車軸が通過する前は徐々に増大し、車軸が通過した後は徐々に減少するため、ひずみ波形からピーク検出を行って車軸の通過タイミングを特定する。
【0005】
次に、第2の手順として、車両通過時には車軸の通過が複数回検出されるため、2つの車軸検知用ひずみ計の間で、車軸の通過タイミングの対応関係を特定する。
【0006】
続いて、第3の手順として、通過タイミングの対応関係を特定した結果を用いて、同じ車軸の通過タイミングの差から、2つの車軸検知用ひずみ計の間を走行した時間を算出する。
【0007】
そして、手順4として、2つの車軸検知用ひずみ計の設置間隔と走行時間から走行速度を算出する。そして、手順2により特定した各軸の通過タイミングと手順4により算出した車速から車軸間隔を算出する。
【非特許文献1】小林佑介、外2名“リアルタイム全自動処理Weight−In−Motionによる長期交通加重モニタリング”、土木学会論文集,2004年10月,No.773/I−69,pp.99-112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の方法では車線ごと(1測定位置ごとに)重量算出用のひずみ計1個と車軸検知用ひずみ計2個の計3個のひずみ計が必要となるため、多車線の橋梁では多くのひずみ計を必要とし、設置コストやデータ処理時間が増大する。また、2個の車軸検知用ひずみ計の設置位置の間で車速が変化すると車軸間隔の精度が低下する問題もある。
【0009】
そこで1個の車重算出用ひずみ計から車軸間隔を得ることができれば、ひずみ計の数を3個から1個に削減でき、測定箇所が1箇所になるため速度変更の影響を受ける可能性が小さくなる。
【0010】
しかし、測定箇所を1箇所にすると、車重算出には、車軸通過の前後でひずみがゆっくりと変化する測定箇所が望ましいため、ピーク検出のような手法では車軸間隔が狭い場合に車軸の通過タイミングを特定することが難しいという問題があった。
【0011】
具体的には、図13(B)に示すように、軸重が異なる車軸が近接している場合に、重量が軽い車軸は隣接する重い車軸の影響でピークが生じないことが多い。さらに、通過タイミングを1箇所でしか特定できないため車速を算出できず、各軸の通過タイミングからは軸間距離の比率しか決定できないという問題があった。
【0012】
このため、ひずみ計を1個に削減しても、車両の軸間距離および車速を特定でき、さらには車種を特定できる橋梁通過車両監視システムの提供が望まれていた。またさらに、ひずみ計を1個に削減しても、車両の軸重を効果的に計測できる橋梁通過車両監視システムの提供が望まれていた。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の第1の目的は、従来は1測定位置ごとに3個必要であったひずみ計を1個に削減しても、軸間距離、および車種を特定できる、橋梁通過車両監視システムを提供することにある。
【0014】
また、本発明の第2の目的は、ひずみ計を1個に削減しても、軸間距離、車速、車種、および軸重を特定できる、橋梁通過車両監視システム、橋梁通過車両監視方法、およびコンピュータプログラムを提供することにある。
【0015】
また、本発明のさらなる目的は、ひずみ計の個数を削減することにより、ひずみ計の設置や維持管理に関するコストを削減できると共に、処理・保存するデータの量を削減でき、さらには、ひずみ計を1測定位置に1個しか設置しないことにより、車速変更や車線変更の影響を受けにくい、橋梁通過車両監視システム、橋梁通過車両監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の橋梁通過車両監視システムは、橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに1個が配置されると共に、前記測定位置を車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計と、予め選定された3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記ひずみ計で計測されたひずみ波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理部と、前記車軸通過タイミング特定処理部により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理部と、前記軸間比率算出処理部により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定する軸間距離特定処理部と、を備えることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の橋梁通過車両監視システムでは、3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に軸間距離データベースに登録しておく。そして、計測したひずみ波形から車軸が通過したタイミングを検出し、この通過タイミングから、通過した車両の軸間比率を算出する。そして、通過タイミングから算出した軸間比率と、軸間距離データベースに登録された軸間距離から算出される軸間比率とを比較し、大型車両の軸間距離、車速および車種を特定する。すなわち、橋梁の維持管理を行う上では大型車両のみを監視対象とすればよく、車種も限られていることから、大型車両の軸間距離をデータベース化し、軸間距離の比率をキーとして、軸間距離を検索し、軸間距離、および車種を特定する仕組みを用意する。
これにより、従来は1測定位置ごとに3個必要であったひずみ計を1個に削減しても、軸間距離、および車種を特定できる。
【0017】
また、本発明の橋梁通過車両監視システムは、橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに1個が配置されると共に、前記測定位置を車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計と、予め選定された3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを記憶する車両辞書記憶部と、前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出部と、前記波形抽出部により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理部と、前記車軸通過タイミング特定処理部により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理部と、前記軸間比率算出処理部により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理部と、前記軸間距離特定処理部により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理部と、を備えることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の橋梁通過車両監視システムでは、3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に軸間距離データベースに登録しておく。また、所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形を記憶しておく。そして、計測したひずみ波形から車軸が通過したタイミングを検出し、この通過タイミングから、通過した車両の軸間比率を算出する。そして、通過タイミングから算出した軸間比率と、軸間距離データベースに登録された軸間距離から算出される軸間比率とを比較し、大型車両の軸間距離、車速および車種を特定する。また、車軸の通過タイミングに合わせて、基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する。
これにより、従来は1測定位置ごとに3個必要であったひずみ計を1個に削減しても、橋梁を通過する車両の軸間距離、車速、車種、および軸重を特定できる。
【0018】
また、本発明の橋梁通過車両監視システムは、前記軸重算出処理部は、前記軸間距離特定処理部により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形における第1の軸をn1倍、第2の軸をn2倍、第3の軸をn3倍、・・・、第nの軸をnn倍(n1〜nnは正の数)した結果のひずみ波形のデータと、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、最小二乗法によって、2つの波形の誤差が最小になるように、前記の各軸の倍率n1、n2、・・、nnを求めて各軸の軸重を算出することを特徴とする。
上記構成からなる本発明の橋梁通過車両監視システムでは、車軸の通過タイミングに合わせて、基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成する。そして、「各軸をn1倍、n2倍、n3倍、・・・、nn倍」した結果の波形と、実際に計測された「車両一台分のひずみデータ」とを比較し、最小二乗法によって、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、各軸の軸重を算出する。すなわち、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、各軸の倍率n1、n2、n3、・・・、nn、を求めて各軸の軸重を算出する。
これにより、1個のひずみ計により、軸重を容易に特定できる。
【0019】
また、本発明の橋梁通過車両監視システムは、前記車軸通過タイミング特定処理部は、前記ひずみ波形に含まれる変曲点を検出することによって車軸の通過タイミングを特定するように構成され、また、前記基準軸重は1トンであり、予め軸重が分かっているWトンの車軸を通過させて測定されたひずみ波形を基に、該測定されたWトンのひずみ波形の振幅を1/W倍して前記基準軸重ひずみ波形を生成するように構成されたことを特徴とする。
上記構成からなる本発明の橋梁通過車両監視システムでは、計測されたひずみ波形から車軸の通過タイミングを特定する際に、ひずみ波形を微分し、微分値が0、すなわち傾きが変化した点を車軸が通過した点として抽出する。また、基準軸重1トンのひずみ波形を求める際には、Wトンの車軸を実際に通過させてひずみ波形を測定し、該測定されたWトンのひずみ波形の振幅を1/W倍して1トンの基準軸重ひずみ波形を求める。
これにより、計測されたひずみ波形から車軸の通過タイミングを容易に特定でき、また、基準軸重ひずみ波形を容易に求めることができる。
【0020】
また、本発明の橋梁通過車両監視方法は、橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムにおける橋梁通過車両監視方法であって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに、車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計を1個配置すると共に、前記橋梁通過車両監視システム内の制御部により、予め選定された大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを車両辞書記憶部に記憶する手順と、前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出手順と、前記波形抽出手順により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理手順と、前記車軸通過タイミング特定処理手順により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理手順と、前記軸間比率算出処理手順により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理手順と、前記軸間距離特定処理手順により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理手順と、が行なわれることを特徴とする。
これにより、従来は1測定位置ごとに3個必要であったひずみ計を1個に削減しても、橋梁を通過する車両の軸間距離、車速、車種、および軸重を特定できる。
【0021】
また、本発明のコンピュータプログラムは、橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに、車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計が1個配置される橋梁通過車両監視システム内のコンピュータに、予め選定された大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを車両辞書記憶部に記憶する手順と、前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出手順と、前記波形抽出手順により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理手順と、前記車軸通過タイミング特定処理手順により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理手順と、前記軸間比率算出処理手順により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理手順と、前記軸間距離特定処理手順により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理手順と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ひずみ計の数を削減できるため、設置や維持管理に関するコストを削減できる。また、ひずみ計の数を削減できるため、処理・保存するデータの量を削減でき、計算時間の短縮や計算機資源の削減が可能となる。高速で通過する車両も対象とすると、ひずみは100Hz以上の高頻度で測定する必要があるため、データ量は膨大になり、この効果は大きい。
【0023】
また、ひずみ計を、1測定位置ごとに1箇所しか設置しないため、車速変更や車線変更の影響を受けにくくなる。従来技術の方法では、車両通過時には車軸の通過が複数回検出されるため、2つの車軸検知用ひずみ計の間で、車軸の通過タイミングの対応関係を特定する処理が必要であり、対応誤りも生じる可能性があるが、本発明であればその必要が無く、誤りの影響もない。さらに、大型車両のデータベースと照合するため、軸間距離だけでなく、車種も同時に特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[概要]
本明細書において「測定位置」とは、通過する車両の軸重を測定するための場所を意味し、この「測定位置」の1つにおいて、従来は3箇所にひずみ計(合計3個のひずみ計)を配置していたが、本発明に橋梁通過車両監視システムでは、1つの測定位置ごとに、1個のひずみ計のみを配置する。
【0025】
1測定位置当り従来は3個使用していたひずみ計を1個にした場合、車両の通過タイミングを特定することが難しいという問題に対して、本発明の橋梁通過車両監視システムでは以下のようにしている。すなわち、重量算出用のひずみ測定箇所であっても、車軸通過前にひずみが増加して通過後にひずみが減少する点は車軸検知用の測定箇所と同じであり、車軸の通過タイミングはひずみ波形において変曲点として現れる。そこで、重量算出用のひずみ波形に含まれる変曲点を検出することによって車軸の通過タイミングを特定して解決する。
【0026】
変曲点の特定方法としては様々な方法が考えられるが、例えば、ひずみ波形の方向(微分値の極性)が変化した点を変曲点とする、といった方法が考えられる。
【0027】
また、通過タイミングを1箇所でしか特定できないため、車速を算出できず、各軸の通過タイミングからは軸間距離の比率しか決定できないという問題に対して、本発明の橋梁通過車両監視システムでは、橋梁の維持管理を行う上では大型車両のみを監視対象とすればよく、車種も限られていることから、大型車両の軸間距離をデータベース化し、軸間距離の比率をキーとして、軸間距離を検索する仕組みを用意して、解決している。なお、車軸とは、車体から地面に車両の重量が加わる軸(本実施形態においては車輪の中央における垂直の軸)のことであり、車種によって、2軸(自家用車)〜3軸や4軸(トラック等)の軸を有している。
【0028】
[実施の形態の説明]
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の橋梁通過車両監視システムにおけるひずみ計の設置例を示す図である。図1(A)に示すように、本発明の橋梁通過車両監視システムでは、主桁(橋桁)12の下面にひずみ計104を貼り付け、その部分の伸びひずみを計測する(なお、ひずみ計104は、ひずみ検出センサとなる膜状のシートと、このセンサの信号を増幅する増幅器等で構成される)。
【0030】
具体的には重量車両の通過により、主桁12が下に凸にたわみ、それによって主桁12の下面が引き伸ばされた伸びひずみを計測する。
【0031】
例えば、3軸の車両が橋梁を通過した場合は、図1(B)に示すようにひずみが計測される。
【0032】
なお、ひずみとは物質の形状の変形であり、局所的には、計測箇所の伸び縮みの量になる。たとえば、ある箇所のひずみが0.1であるとは、その箇所が0.9倍の長さになったこと、つまり10%の縮小が生じた状態である。よって、ひずみは比率であり、単位は無い。
【0033】
また、図2は、橋梁の走行車線における車重算出用ひずみ計の配置例を示す図であり、図2に示すように、走行車線ごとにひずみ計104a、104bが配置される。
【0034】
また、図3は、ひずみ計の設置例の詳細を示す図であり、上下2車線ずつで主桁12が6本の場合の設置例を示す図である。
【0035】
図3(A)は、橋梁の平面図である。図3(B)は、橋脚11の断面図であり、図3(A)におけるX−X´方向の断面図である(橋脚11の部分は位置関係を示すために破線で示されている)。
【0036】
また、図3(C)は、主桁12の部分を拡大して、詳細に示した図である。図3(C)に示すように、主桁12の下面にひずみ計104が設備されている。このひずみ計104は、図3(D)の側面図に示すように、主桁12に下面であって、2つの橋脚11の中間部分に配置される。
【0037】
図4は、本発明の橋梁通過車両監視システムの構成を示す図である。
図4に示す橋梁通過車両監視システム20において、主制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む制御部であり、橋梁通過車両監視システム20内の各処理部おける処理動作を統括して制御するための処理部である。
【0038】
ひずみ計測部22は、ひずみの測定位置ごと(例えば、走行車線ごと)に配置される、ひずみ計104の計測データを収集するための処理部である。例えば、10ms程度のサンプリング周期で、各ひずみ計の計測データを収集する。収集したデータは、通過車両記憶部41等の記憶部に保存される。
【0039】
波形抽出部23は、測定されたひずみ波形から車両1台分の波形を切り出す処理を行なう。この処理では、車両が通過していないときには、当然ながらひずみは、ほぼ0(ゼロ)となる。そのため、低い値に閾値を設定し、その値を超えたときから車両が該当の橋梁に乗ったと判定し、その値を下回ったときに、車両が通過し終わったと判定し、その2つのタイミングの間のひずみデータを1台分の波形として抽出する。
【0040】
車軸通過タイミング特定処理部24は、車軸が通過したタイミングを見つける処理を行なう。一般的にひずみ計の直上を車軸が通過する場合、ひずみ値は増加から減少に転じる。連続計測データから、このような変曲点を見つける方法として、取得した振幅の連続データについて微分を行い、微分値が0、すなわち傾きが変化した点を車軸が通過した点として抽出し、通過した時刻X1〜Xnを抽出する。
【0041】
図5は、ひずみ計の計測データと微分波形の例を示す図である。図5(A)に示すように、波形抽出部23により、車両1台分の振幅波形を切り出す処理を行なう。そして、図5(B)に示すように、振幅データについて微分を行い、微分値が0、すなわち傾きが変化した点(a点およびb点)を車軸が通過した点として抽出する。
【0042】
軸間比率算出処理部25は、車軸通過タイミング特定処理部24の処理で得られた車軸が通過した時間を元に、車軸間比率を算出する。具体的には隣接する車軸の通過時間(Xi+1−Xi)(i=1〜n)の時間差を算出し、全体の時間(第1の車軸通過時間と、最後の車軸通過時間の差)で割って軸間比率を算出する。
【0043】
軸間距離特定処理部26は、車両辞書記憶部31内の軸間距離データベース32に記録された各車両の車軸間距離を基に算出される軸間比率と、車軸通過タイミングから算出された軸間比率とを比較し、車種の特定を行う。
【0044】
例えば、車両辞書記憶部31中の軸間距離データベース32から得られる軸間比率を(y1,y2)とし、車軸通過タイミングから算出された軸間比率(x1、x2)とし、(x1,x2)、(y1,y2)をベクトルとみなして内積を計算し、1に近いものを通過した車種と推定する。
【0045】
また、推定された軸間距離(mm)と計測された車軸通過時間(s)から、「(軸間距離)/(車軸通過時間)=速度(mm/s)」として速度を算出する。
【0046】
図6は、軸間距離特定処理と車種推定処理の具体例を示す図である。
例えば、車両辞書記憶部31中の軸間距離データベース32に、図6中の表に示すような軸間距離データが登録されているものとする。このデータベースに格納された車軸間距離から隣り合う車軸間の距離を計算し、1軸目から最終軸までの距離で割り、比率を算出する。
【0047】
例えば、図6の中の(例1)に示すように、表中の「3軸車、大型トラック」の場合は、1−2軸間が5870mmであり、2−3軸間は、「(1−3軸間距離)−(1−2軸間距離)」=7070−5870=1200(mm)」より、1200mmとなる。また、1軸目から最終軸(3軸目)までの距離は、7070mmである。
【0048】
従って、「3軸車、大型トラック」の軸間比率は、
5870/7050:1200/7070=0.83:0.17、となる。
【0049】
また、表中の「3軸車、大型ダンプの場合は、「1−2軸間=3200(mm)」、「2−3軸間=1320(mm)」であり、軸間比率は、
3200/4520:1320/4520=0.70:0.30、となる。
【0050】
このようにして、計測データから得られた軸間の比率と、データベースに格納された情報から得られた軸間比率を元に車種を推定する。
【0051】
この場合に、計測によって得られた軸間比率の組をベクトル(x1,x2)とし、同様にデータベースから算出された比率もベクトル(y1,y2)として、データベース内の全てのデータについて内積値を計算する。そして、内積値がもっとも1に近いものの情報を軸間距離データベース32から取得し、車種と軸間距離(mm)を特定する。
【0052】
例えば、図6の(例2)に示すように、計測で得られた軸間比率を(0.75、0.25とすると、「3軸車、大型トラック」との内積は、
(0.75、0,25)・(0.83、0.17)=0.66、となる。
一方 「3軸車、大型ダンプ」との内積は、
(0.75、0,25)・(0.70、0.30)=0.60、となる。
これにより、最も1に近い、「3軸車、大型トラック」が通過した車種と推定される。
【0053】
なお、4軸車の場合は(x1,x2、x3)のベクトルを作成し、同様の処理を行う。
また、推定された軸間距離(mm)と計測された車軸通過時間(s)から(軸間距離)/(車軸通過時間)=速度(mm/s)として速度を算出する。
【0054】
図4に戻り、軸重算出処理部27は、各軸の通過タイミングと、車速と、基準軸重ひずみ波形と、計測されたひずみ波形とを基に軸重を算出し、軸重の総和によって車重を算出する。なお、軸間比率算出処理部25における軸重算出処理については後述する。
【0055】
基準軸重ひずみ波形生成部28は、軸重の算出の事前準備として、事前に軸重が分かっている軸面を通過させ、基準軸重(例えば、1t(1トン))の車両が通過したときのひずみ波形(基準軸重ひずみ波形)を求める処理を行なう。
【0056】
例えば、4tの軸重を通過させた場合の計測データから「1tの車両が通過したときのひずみ波形」を求める。この基準軸重ひずみ波形のデータは、車両辞書記憶部31中に基準軸重ひずみ波形33として記憶される。なお、基準軸重ひずみ波形については後述する。
【0057】
統計データ生成部29は、通過車両記憶部41に保存されたデータを基に、車重別、車種別の統計データを生成する。なお、統計データの具体例については後述する。
【0058】
車両辞書記憶部31には、前述した軸間距離データベース32、および基準軸重ひずみ波形33が記憶される。また、通過車両記憶部41には、計測結果、および計測結果を集計した、車重別、車種別の統計データが保存される。
【0059】
次に、上述した軸重算出処理部27における処理の詳細について説明する。
図7は、軸重算出処理について説明するための図である。また、図8は、軸重算出処理の詳細(1)を示す図であり、図9は、軸重算出処理の詳細(2)を示す図である。以下、図7、図8および図9を参照して、軸重算出処理の詳細について説明する。
【0060】
図7(A)に示すように、1t(1トン)の車両が橋梁を通過した時に計測されるひずみを考えると、図7(B)に示すようなひずみ波形となる。そして、図7(C)に示すように、Wt(Wトン)の1軸車両が橋梁を通過した場合は、計測されるひずみはW倍になり、計測されるひずみも、図7(D)に示すように、W倍になる。
【0061】
このため、軸重の算出の事前準備として、事前に軸重が分かっている軸面を通過させ、「1tの車両が通過したときのひずみ波形」を求めておく。例えば、図8(A)に示すように、4tの軸重を通過させた場合の計測データから「1tの車両が通過したときのひずみ波形(基準軸重ひずみ波形)」を求める。
【0062】
そして、軸重算出処理の最初のステップS1として、図8(B)に示すような時間単位のひずみ波形を求める。すなわち、図8(A)に示す1tの基準軸重ひずみ波形を基に、車速を使用して、横軸を距離から時間の単位にしたひずみ波形を求める。
【0063】
次に、ステップS2として、図8(C)に示すように、3軸車両の車軸の通過タイミングに合わせて、1tの基準軸重ひずみ波形を配置する。
【0064】
それから、ステップS3として、図9(A)に示す基準軸重ひずみ波形を、車両の通過タイミングに合わせて時間軸上に配置した波形に対し、図9(B)に示すような、「各軸をa倍、b倍、c倍した結果の波形(a、b、cは正の数)」を生成する。
【0065】
そして、図9(B)に示す波形と、図9(C)に示す実際に計測された「車両一台分のひずみデータ」と比較し、最小二乗法によって、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、各軸の軸重を算出する。すなわち、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、前記の倍率a、b、cを求めて各軸の軸重を算出する。
【0066】
なお、一般のn軸の車両に対しては、第1の軸をn1倍、第2の軸をn2倍、第3の軸をn3倍、・・・、第n軸をnn倍(n1〜nnは正の数)した結果のひずみ波形のデータと、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータと比較し、最小二乗法によって、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、各軸の軸重を算出する。
【0067】
以上、説明したステップS1、S2、S3の処理により通過する車両の各軸の車重を求め、これらの総和を取ることにより車重を求めることができる。
【0068】
また、図10は、軸重算出処理の流れを示す図であり、図8および図9で説明した軸重算出処理の流れ(ステップS1、S2、S3)を整理して示した図である。以下、図10を参照して、軸重算出処理の流れについて説明する。
【0069】
最初に、図8で説明した処理手順により、車軸通過タイミングと、車速と、1tの基準軸重ひずみ波形を基に、1tのひずみを時間軸上に配置し(ステップS1、S2)、「1t×軸数分の合計ひずみ波形(図8(C)を参照)」を生成する。
【0070】
それから、図9で説明した手順により「車両一台分のひずみデータ」と「1t×軸数分の合計ひずみ」とを比較し、最小二乗法によって、誤差が最小になるように、各軸の軸重を算出し(ステップS3)、各軸の重量を求める。
【0071】
そして、各軸の重量を合計することにより(ステップS4)、車重が求まる。
【0072】
このようにして、本発明の橋梁通過車両監視システムにおいては、1つのひずみ計により、橋梁を通過する車両の軸重を計測することができる。そして、図11に示すような、車重別の統計データを得ることができる。
【0073】
図11に示す統計データは、日付ごとに、橋梁を通過する車両を車重別に集計したデータである。また、通過する車両の軸間比率から車種を特定し、車種別の統計データを得ることもできる・
【0074】
このように、統計処理を行なうことにより、車重別、車種別の通行実態把握することができる。また、路線別の比較、通過量の傾向の把握などが行なえるようになり、橋梁劣化予測、点検・補修必要箇所の特定、道路増設計画への利用、規制・指導の強化方針決定等に利用できるようになる。
【0075】
以上、本発明の橋梁通過車両監視システムについて説明したが、本発明によれば、ひずみ計の数を削減できるため、設置や維持管理に関するコストを削減できる。また、ひずみ計の数を削減できるため、処理・保存するデータの量を削減でき、計算時間の短縮や計算機資源の削減が可能となる。高速で通過する車両も対象とすると、ひずみは100Hz以上の高頻度で測定する必要があるため、データ量は膨大になり、この効果は大きい。
【0076】
また、ひずみ計を1箇所(1測定位置当り)しか設置しないため、車速変更や車線変更の影響を受けにくくなる。また、従来技術の方法では、車両通過時には車軸の通過が複数回検出されるため、2つの車軸検知用ひずみ計の間で、車軸の通過タイミングの対応関係を特定する処理が必要であり、対応誤りも生じる可能性があるが、本発明であればその必要が無く、誤りの影響もない。さらに、大型車両のデータベースと照合するため、軸間距離だけでなく、車種も同時に特定できる。
【0077】
なお、図4に示した橋梁通過車両監視システムは、内部にコンピュータシステムを有している。そして、ひずみ計測部22、波形抽出部23、車軸通過タイミング特定処理部24、軸間比率算出処理部25、軸間距離特定処理部26、軸重算出処理27、基準軸重ひずみ波形生成部28、統計データ生成部29等における処理は、CPUがプログラムを読み出して実行することにより、その機能が実現されるものである(もちろん、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい)。
【0078】
そして、上記プログラムは、例えばハードディスクやROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
【0079】
すなわち、ひずみ計測部22、波形抽出部23、車軸通過タイミング特定処理部24、軸間比率算出処理部25、軸間距離特定処理部26、軸重算出処理27、基準軸重ひずみ波形生成部28、統計データ生成部29等における、各処理は、CPU等の中央演算処理装置が上記プログラムを読み出して、情報の加工、演算処理を実行することにより、実現されるものである。
【0080】
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0081】
また、図4に示す橋梁通過車両監視システムには、周辺機器として入力装置、表示装置等(いずれも表示せず)が接続されているものとする。ここで、入力装置としては、キーボード、マウス等の入力デバイスのことをいう。表示装置とは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置等のことをいう。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の橋梁通過車両監視システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の橋梁通過車両監視システムにおけるひずみ計の設置例を示す図である。
【図2】橋梁の走行車線におけるひずみ計の配置例を示す図である。
【図3】ひずみ計の設置例の詳細を示す図である。
【図4】橋梁通過車両監視システムの構成例を示す図である。
【図5】ひずみ計の計測データと微分波形の例を示す図である。
【図6】軸間距離特定処理と車種推定処理の具体例を示す図である。
【図7】軸重算出処理について説明するための図である。
【図8】軸重算出処理の詳細(1)を説明するための図である。
【図9】軸重算出処理の詳細(2)を説明するための図である。
【図10】軸重算出処理の流れを示す図である。
【図11】車重別の統計データの例を示す図である。
【図12】従来のひずみ計の配置図である。
【図13】ひずみ計による測定結果の例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
11・・・橋脚、12・・・主桁、20・・・橋梁通過車両監視システム、21・・・主制御部、22・・・ひずみ計測部、23・・・波形抽出部、24・・・車軸通過タイミング特定処理部、25・・・軸間比率算出処理部、26・・・軸間距離特定処理部、27・・・軸重算出処理部、28・・・基準軸重ひずみ波形生成部、29・・・統計データ生成部、31・・・車両辞書記憶部、32・・・軸間距離データベース、33・・・基準軸重ひずみ波形、41・・・通過車両記憶部、103、104・・・ひずみ計
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁を通過する車両の重量を計測する橋梁通過車両監視システム、橋梁通過車両監視方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の維持管理をする上で、橋梁を通過する大型車両の車軸重量が、橋梁の損傷を予測するために重要な情報となる。軸重測定ため、橋梁の主桁に設置したひずみ計から車両通過時のひずみ値を連続測定し、軸重を算出する手法Weight In Motionが提案されている。この手法では通過する車両の車軸間隔(軸間距離)が必要となるが、既存の手法(例えば、非特許文献1を参照)では車線ごとに、車軸通過に鋭敏な2つの箇所にひずみ計(以下、車軸検知用ひずみ計)を追加設置し、以下の方法で車軸間隔を算出している。
【0003】
図13(A)は、大型トラック等の3軸車両の通過時における、車軸検知用ひずみ計による測定結果、図13(B)は、図13(A)と同じく大型トラック等の3軸車両の通過時における、車重算出用ひずみ計による測定結果を示している。以下、図13(A)および(B)の測定結果を基に、車軸間隔を算出する方法について説明する。
【0004】
まず、第1の手順として、図13(A)に示すように、ひずみは車軸が通過する前は徐々に増大し、車軸が通過した後は徐々に減少するため、ひずみ波形からピーク検出を行って車軸の通過タイミングを特定する。
【0005】
次に、第2の手順として、車両通過時には車軸の通過が複数回検出されるため、2つの車軸検知用ひずみ計の間で、車軸の通過タイミングの対応関係を特定する。
【0006】
続いて、第3の手順として、通過タイミングの対応関係を特定した結果を用いて、同じ車軸の通過タイミングの差から、2つの車軸検知用ひずみ計の間を走行した時間を算出する。
【0007】
そして、手順4として、2つの車軸検知用ひずみ計の設置間隔と走行時間から走行速度を算出する。そして、手順2により特定した各軸の通過タイミングと手順4により算出した車速から車軸間隔を算出する。
【非特許文献1】小林佑介、外2名“リアルタイム全自動処理Weight−In−Motionによる長期交通加重モニタリング”、土木学会論文集,2004年10月,No.773/I−69,pp.99-112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の方法では車線ごと(1測定位置ごとに)重量算出用のひずみ計1個と車軸検知用ひずみ計2個の計3個のひずみ計が必要となるため、多車線の橋梁では多くのひずみ計を必要とし、設置コストやデータ処理時間が増大する。また、2個の車軸検知用ひずみ計の設置位置の間で車速が変化すると車軸間隔の精度が低下する問題もある。
【0009】
そこで1個の車重算出用ひずみ計から車軸間隔を得ることができれば、ひずみ計の数を3個から1個に削減でき、測定箇所が1箇所になるため速度変更の影響を受ける可能性が小さくなる。
【0010】
しかし、測定箇所を1箇所にすると、車重算出には、車軸通過の前後でひずみがゆっくりと変化する測定箇所が望ましいため、ピーク検出のような手法では車軸間隔が狭い場合に車軸の通過タイミングを特定することが難しいという問題があった。
【0011】
具体的には、図13(B)に示すように、軸重が異なる車軸が近接している場合に、重量が軽い車軸は隣接する重い車軸の影響でピークが生じないことが多い。さらに、通過タイミングを1箇所でしか特定できないため車速を算出できず、各軸の通過タイミングからは軸間距離の比率しか決定できないという問題があった。
【0012】
このため、ひずみ計を1個に削減しても、車両の軸間距離および車速を特定でき、さらには車種を特定できる橋梁通過車両監視システムの提供が望まれていた。またさらに、ひずみ計を1個に削減しても、車両の軸重を効果的に計測できる橋梁通過車両監視システムの提供が望まれていた。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の第1の目的は、従来は1測定位置ごとに3個必要であったひずみ計を1個に削減しても、軸間距離、および車種を特定できる、橋梁通過車両監視システムを提供することにある。
【0014】
また、本発明の第2の目的は、ひずみ計を1個に削減しても、軸間距離、車速、車種、および軸重を特定できる、橋梁通過車両監視システム、橋梁通過車両監視方法、およびコンピュータプログラムを提供することにある。
【0015】
また、本発明のさらなる目的は、ひずみ計の個数を削減することにより、ひずみ計の設置や維持管理に関するコストを削減できると共に、処理・保存するデータの量を削減でき、さらには、ひずみ計を1測定位置に1個しか設置しないことにより、車速変更や車線変更の影響を受けにくい、橋梁通過車両監視システム、橋梁通過車両監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の橋梁通過車両監視システムは、橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに1個が配置されると共に、前記測定位置を車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計と、予め選定された3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記ひずみ計で計測されたひずみ波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理部と、前記車軸通過タイミング特定処理部により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理部と、前記軸間比率算出処理部により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定する軸間距離特定処理部と、を備えることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の橋梁通過車両監視システムでは、3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に軸間距離データベースに登録しておく。そして、計測したひずみ波形から車軸が通過したタイミングを検出し、この通過タイミングから、通過した車両の軸間比率を算出する。そして、通過タイミングから算出した軸間比率と、軸間距離データベースに登録された軸間距離から算出される軸間比率とを比較し、大型車両の軸間距離、車速および車種を特定する。すなわち、橋梁の維持管理を行う上では大型車両のみを監視対象とすればよく、車種も限られていることから、大型車両の軸間距離をデータベース化し、軸間距離の比率をキーとして、軸間距離を検索し、軸間距離、および車種を特定する仕組みを用意する。
これにより、従来は1測定位置ごとに3個必要であったひずみ計を1個に削減しても、軸間距離、および車種を特定できる。
【0017】
また、本発明の橋梁通過車両監視システムは、橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに1個が配置されると共に、前記測定位置を車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計と、予め選定された3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを記憶する車両辞書記憶部と、前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出部と、前記波形抽出部により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理部と、前記車軸通過タイミング特定処理部により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理部と、前記軸間比率算出処理部により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理部と、前記軸間距離特定処理部により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理部と、を備えることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の橋梁通過車両監視システムでは、3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に軸間距離データベースに登録しておく。また、所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形を記憶しておく。そして、計測したひずみ波形から車軸が通過したタイミングを検出し、この通過タイミングから、通過した車両の軸間比率を算出する。そして、通過タイミングから算出した軸間比率と、軸間距離データベースに登録された軸間距離から算出される軸間比率とを比較し、大型車両の軸間距離、車速および車種を特定する。また、車軸の通過タイミングに合わせて、基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する。
これにより、従来は1測定位置ごとに3個必要であったひずみ計を1個に削減しても、橋梁を通過する車両の軸間距離、車速、車種、および軸重を特定できる。
【0018】
また、本発明の橋梁通過車両監視システムは、前記軸重算出処理部は、前記軸間距離特定処理部により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形における第1の軸をn1倍、第2の軸をn2倍、第3の軸をn3倍、・・・、第nの軸をnn倍(n1〜nnは正の数)した結果のひずみ波形のデータと、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、最小二乗法によって、2つの波形の誤差が最小になるように、前記の各軸の倍率n1、n2、・・、nnを求めて各軸の軸重を算出することを特徴とする。
上記構成からなる本発明の橋梁通過車両監視システムでは、車軸の通過タイミングに合わせて、基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成する。そして、「各軸をn1倍、n2倍、n3倍、・・・、nn倍」した結果の波形と、実際に計測された「車両一台分のひずみデータ」とを比較し、最小二乗法によって、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、各軸の軸重を算出する。すなわち、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、各軸の倍率n1、n2、n3、・・・、nn、を求めて各軸の軸重を算出する。
これにより、1個のひずみ計により、軸重を容易に特定できる。
【0019】
また、本発明の橋梁通過車両監視システムは、前記車軸通過タイミング特定処理部は、前記ひずみ波形に含まれる変曲点を検出することによって車軸の通過タイミングを特定するように構成され、また、前記基準軸重は1トンであり、予め軸重が分かっているWトンの車軸を通過させて測定されたひずみ波形を基に、該測定されたWトンのひずみ波形の振幅を1/W倍して前記基準軸重ひずみ波形を生成するように構成されたことを特徴とする。
上記構成からなる本発明の橋梁通過車両監視システムでは、計測されたひずみ波形から車軸の通過タイミングを特定する際に、ひずみ波形を微分し、微分値が0、すなわち傾きが変化した点を車軸が通過した点として抽出する。また、基準軸重1トンのひずみ波形を求める際には、Wトンの車軸を実際に通過させてひずみ波形を測定し、該測定されたWトンのひずみ波形の振幅を1/W倍して1トンの基準軸重ひずみ波形を求める。
これにより、計測されたひずみ波形から車軸の通過タイミングを容易に特定でき、また、基準軸重ひずみ波形を容易に求めることができる。
【0020】
また、本発明の橋梁通過車両監視方法は、橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムにおける橋梁通過車両監視方法であって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに、車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計を1個配置すると共に、前記橋梁通過車両監視システム内の制御部により、予め選定された大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを車両辞書記憶部に記憶する手順と、前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出手順と、前記波形抽出手順により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理手順と、前記車軸通過タイミング特定処理手順により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理手順と、前記軸間比率算出処理手順により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理手順と、前記軸間距離特定処理手順により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理手順と、が行なわれることを特徴とする。
これにより、従来は1測定位置ごとに3個必要であったひずみ計を1個に削減しても、橋梁を通過する車両の軸間距離、車速、車種、および軸重を特定できる。
【0021】
また、本発明のコンピュータプログラムは、橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに、車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計が1個配置される橋梁通過車両監視システム内のコンピュータに、予め選定された大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを車両辞書記憶部に記憶する手順と、前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出手順と、前記波形抽出手順により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理手順と、前記車軸通過タイミング特定処理手順により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理手順と、前記軸間比率算出処理手順により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理手順と、前記軸間距離特定処理手順により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理手順と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ひずみ計の数を削減できるため、設置や維持管理に関するコストを削減できる。また、ひずみ計の数を削減できるため、処理・保存するデータの量を削減でき、計算時間の短縮や計算機資源の削減が可能となる。高速で通過する車両も対象とすると、ひずみは100Hz以上の高頻度で測定する必要があるため、データ量は膨大になり、この効果は大きい。
【0023】
また、ひずみ計を、1測定位置ごとに1箇所しか設置しないため、車速変更や車線変更の影響を受けにくくなる。従来技術の方法では、車両通過時には車軸の通過が複数回検出されるため、2つの車軸検知用ひずみ計の間で、車軸の通過タイミングの対応関係を特定する処理が必要であり、対応誤りも生じる可能性があるが、本発明であればその必要が無く、誤りの影響もない。さらに、大型車両のデータベースと照合するため、軸間距離だけでなく、車種も同時に特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[概要]
本明細書において「測定位置」とは、通過する車両の軸重を測定するための場所を意味し、この「測定位置」の1つにおいて、従来は3箇所にひずみ計(合計3個のひずみ計)を配置していたが、本発明に橋梁通過車両監視システムでは、1つの測定位置ごとに、1個のひずみ計のみを配置する。
【0025】
1測定位置当り従来は3個使用していたひずみ計を1個にした場合、車両の通過タイミングを特定することが難しいという問題に対して、本発明の橋梁通過車両監視システムでは以下のようにしている。すなわち、重量算出用のひずみ測定箇所であっても、車軸通過前にひずみが増加して通過後にひずみが減少する点は車軸検知用の測定箇所と同じであり、車軸の通過タイミングはひずみ波形において変曲点として現れる。そこで、重量算出用のひずみ波形に含まれる変曲点を検出することによって車軸の通過タイミングを特定して解決する。
【0026】
変曲点の特定方法としては様々な方法が考えられるが、例えば、ひずみ波形の方向(微分値の極性)が変化した点を変曲点とする、といった方法が考えられる。
【0027】
また、通過タイミングを1箇所でしか特定できないため、車速を算出できず、各軸の通過タイミングからは軸間距離の比率しか決定できないという問題に対して、本発明の橋梁通過車両監視システムでは、橋梁の維持管理を行う上では大型車両のみを監視対象とすればよく、車種も限られていることから、大型車両の軸間距離をデータベース化し、軸間距離の比率をキーとして、軸間距離を検索する仕組みを用意して、解決している。なお、車軸とは、車体から地面に車両の重量が加わる軸(本実施形態においては車輪の中央における垂直の軸)のことであり、車種によって、2軸(自家用車)〜3軸や4軸(トラック等)の軸を有している。
【0028】
[実施の形態の説明]
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の橋梁通過車両監視システムにおけるひずみ計の設置例を示す図である。図1(A)に示すように、本発明の橋梁通過車両監視システムでは、主桁(橋桁)12の下面にひずみ計104を貼り付け、その部分の伸びひずみを計測する(なお、ひずみ計104は、ひずみ検出センサとなる膜状のシートと、このセンサの信号を増幅する増幅器等で構成される)。
【0030】
具体的には重量車両の通過により、主桁12が下に凸にたわみ、それによって主桁12の下面が引き伸ばされた伸びひずみを計測する。
【0031】
例えば、3軸の車両が橋梁を通過した場合は、図1(B)に示すようにひずみが計測される。
【0032】
なお、ひずみとは物質の形状の変形であり、局所的には、計測箇所の伸び縮みの量になる。たとえば、ある箇所のひずみが0.1であるとは、その箇所が0.9倍の長さになったこと、つまり10%の縮小が生じた状態である。よって、ひずみは比率であり、単位は無い。
【0033】
また、図2は、橋梁の走行車線における車重算出用ひずみ計の配置例を示す図であり、図2に示すように、走行車線ごとにひずみ計104a、104bが配置される。
【0034】
また、図3は、ひずみ計の設置例の詳細を示す図であり、上下2車線ずつで主桁12が6本の場合の設置例を示す図である。
【0035】
図3(A)は、橋梁の平面図である。図3(B)は、橋脚11の断面図であり、図3(A)におけるX−X´方向の断面図である(橋脚11の部分は位置関係を示すために破線で示されている)。
【0036】
また、図3(C)は、主桁12の部分を拡大して、詳細に示した図である。図3(C)に示すように、主桁12の下面にひずみ計104が設備されている。このひずみ計104は、図3(D)の側面図に示すように、主桁12に下面であって、2つの橋脚11の中間部分に配置される。
【0037】
図4は、本発明の橋梁通過車両監視システムの構成を示す図である。
図4に示す橋梁通過車両監視システム20において、主制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む制御部であり、橋梁通過車両監視システム20内の各処理部おける処理動作を統括して制御するための処理部である。
【0038】
ひずみ計測部22は、ひずみの測定位置ごと(例えば、走行車線ごと)に配置される、ひずみ計104の計測データを収集するための処理部である。例えば、10ms程度のサンプリング周期で、各ひずみ計の計測データを収集する。収集したデータは、通過車両記憶部41等の記憶部に保存される。
【0039】
波形抽出部23は、測定されたひずみ波形から車両1台分の波形を切り出す処理を行なう。この処理では、車両が通過していないときには、当然ながらひずみは、ほぼ0(ゼロ)となる。そのため、低い値に閾値を設定し、その値を超えたときから車両が該当の橋梁に乗ったと判定し、その値を下回ったときに、車両が通過し終わったと判定し、その2つのタイミングの間のひずみデータを1台分の波形として抽出する。
【0040】
車軸通過タイミング特定処理部24は、車軸が通過したタイミングを見つける処理を行なう。一般的にひずみ計の直上を車軸が通過する場合、ひずみ値は増加から減少に転じる。連続計測データから、このような変曲点を見つける方法として、取得した振幅の連続データについて微分を行い、微分値が0、すなわち傾きが変化した点を車軸が通過した点として抽出し、通過した時刻X1〜Xnを抽出する。
【0041】
図5は、ひずみ計の計測データと微分波形の例を示す図である。図5(A)に示すように、波形抽出部23により、車両1台分の振幅波形を切り出す処理を行なう。そして、図5(B)に示すように、振幅データについて微分を行い、微分値が0、すなわち傾きが変化した点(a点およびb点)を車軸が通過した点として抽出する。
【0042】
軸間比率算出処理部25は、車軸通過タイミング特定処理部24の処理で得られた車軸が通過した時間を元に、車軸間比率を算出する。具体的には隣接する車軸の通過時間(Xi+1−Xi)(i=1〜n)の時間差を算出し、全体の時間(第1の車軸通過時間と、最後の車軸通過時間の差)で割って軸間比率を算出する。
【0043】
軸間距離特定処理部26は、車両辞書記憶部31内の軸間距離データベース32に記録された各車両の車軸間距離を基に算出される軸間比率と、車軸通過タイミングから算出された軸間比率とを比較し、車種の特定を行う。
【0044】
例えば、車両辞書記憶部31中の軸間距離データベース32から得られる軸間比率を(y1,y2)とし、車軸通過タイミングから算出された軸間比率(x1、x2)とし、(x1,x2)、(y1,y2)をベクトルとみなして内積を計算し、1に近いものを通過した車種と推定する。
【0045】
また、推定された軸間距離(mm)と計測された車軸通過時間(s)から、「(軸間距離)/(車軸通過時間)=速度(mm/s)」として速度を算出する。
【0046】
図6は、軸間距離特定処理と車種推定処理の具体例を示す図である。
例えば、車両辞書記憶部31中の軸間距離データベース32に、図6中の表に示すような軸間距離データが登録されているものとする。このデータベースに格納された車軸間距離から隣り合う車軸間の距離を計算し、1軸目から最終軸までの距離で割り、比率を算出する。
【0047】
例えば、図6の中の(例1)に示すように、表中の「3軸車、大型トラック」の場合は、1−2軸間が5870mmであり、2−3軸間は、「(1−3軸間距離)−(1−2軸間距離)」=7070−5870=1200(mm)」より、1200mmとなる。また、1軸目から最終軸(3軸目)までの距離は、7070mmである。
【0048】
従って、「3軸車、大型トラック」の軸間比率は、
5870/7050:1200/7070=0.83:0.17、となる。
【0049】
また、表中の「3軸車、大型ダンプの場合は、「1−2軸間=3200(mm)」、「2−3軸間=1320(mm)」であり、軸間比率は、
3200/4520:1320/4520=0.70:0.30、となる。
【0050】
このようにして、計測データから得られた軸間の比率と、データベースに格納された情報から得られた軸間比率を元に車種を推定する。
【0051】
この場合に、計測によって得られた軸間比率の組をベクトル(x1,x2)とし、同様にデータベースから算出された比率もベクトル(y1,y2)として、データベース内の全てのデータについて内積値を計算する。そして、内積値がもっとも1に近いものの情報を軸間距離データベース32から取得し、車種と軸間距離(mm)を特定する。
【0052】
例えば、図6の(例2)に示すように、計測で得られた軸間比率を(0.75、0.25とすると、「3軸車、大型トラック」との内積は、
(0.75、0,25)・(0.83、0.17)=0.66、となる。
一方 「3軸車、大型ダンプ」との内積は、
(0.75、0,25)・(0.70、0.30)=0.60、となる。
これにより、最も1に近い、「3軸車、大型トラック」が通過した車種と推定される。
【0053】
なお、4軸車の場合は(x1,x2、x3)のベクトルを作成し、同様の処理を行う。
また、推定された軸間距離(mm)と計測された車軸通過時間(s)から(軸間距離)/(車軸通過時間)=速度(mm/s)として速度を算出する。
【0054】
図4に戻り、軸重算出処理部27は、各軸の通過タイミングと、車速と、基準軸重ひずみ波形と、計測されたひずみ波形とを基に軸重を算出し、軸重の総和によって車重を算出する。なお、軸間比率算出処理部25における軸重算出処理については後述する。
【0055】
基準軸重ひずみ波形生成部28は、軸重の算出の事前準備として、事前に軸重が分かっている軸面を通過させ、基準軸重(例えば、1t(1トン))の車両が通過したときのひずみ波形(基準軸重ひずみ波形)を求める処理を行なう。
【0056】
例えば、4tの軸重を通過させた場合の計測データから「1tの車両が通過したときのひずみ波形」を求める。この基準軸重ひずみ波形のデータは、車両辞書記憶部31中に基準軸重ひずみ波形33として記憶される。なお、基準軸重ひずみ波形については後述する。
【0057】
統計データ生成部29は、通過車両記憶部41に保存されたデータを基に、車重別、車種別の統計データを生成する。なお、統計データの具体例については後述する。
【0058】
車両辞書記憶部31には、前述した軸間距離データベース32、および基準軸重ひずみ波形33が記憶される。また、通過車両記憶部41には、計測結果、および計測結果を集計した、車重別、車種別の統計データが保存される。
【0059】
次に、上述した軸重算出処理部27における処理の詳細について説明する。
図7は、軸重算出処理について説明するための図である。また、図8は、軸重算出処理の詳細(1)を示す図であり、図9は、軸重算出処理の詳細(2)を示す図である。以下、図7、図8および図9を参照して、軸重算出処理の詳細について説明する。
【0060】
図7(A)に示すように、1t(1トン)の車両が橋梁を通過した時に計測されるひずみを考えると、図7(B)に示すようなひずみ波形となる。そして、図7(C)に示すように、Wt(Wトン)の1軸車両が橋梁を通過した場合は、計測されるひずみはW倍になり、計測されるひずみも、図7(D)に示すように、W倍になる。
【0061】
このため、軸重の算出の事前準備として、事前に軸重が分かっている軸面を通過させ、「1tの車両が通過したときのひずみ波形」を求めておく。例えば、図8(A)に示すように、4tの軸重を通過させた場合の計測データから「1tの車両が通過したときのひずみ波形(基準軸重ひずみ波形)」を求める。
【0062】
そして、軸重算出処理の最初のステップS1として、図8(B)に示すような時間単位のひずみ波形を求める。すなわち、図8(A)に示す1tの基準軸重ひずみ波形を基に、車速を使用して、横軸を距離から時間の単位にしたひずみ波形を求める。
【0063】
次に、ステップS2として、図8(C)に示すように、3軸車両の車軸の通過タイミングに合わせて、1tの基準軸重ひずみ波形を配置する。
【0064】
それから、ステップS3として、図9(A)に示す基準軸重ひずみ波形を、車両の通過タイミングに合わせて時間軸上に配置した波形に対し、図9(B)に示すような、「各軸をa倍、b倍、c倍した結果の波形(a、b、cは正の数)」を生成する。
【0065】
そして、図9(B)に示す波形と、図9(C)に示す実際に計測された「車両一台分のひずみデータ」と比較し、最小二乗法によって、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、各軸の軸重を算出する。すなわち、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、前記の倍率a、b、cを求めて各軸の軸重を算出する。
【0066】
なお、一般のn軸の車両に対しては、第1の軸をn1倍、第2の軸をn2倍、第3の軸をn3倍、・・・、第n軸をnn倍(n1〜nnは正の数)した結果のひずみ波形のデータと、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータと比較し、最小二乗法によって、2つのひずみ波形の誤差が最小になるように、各軸の軸重を算出する。
【0067】
以上、説明したステップS1、S2、S3の処理により通過する車両の各軸の車重を求め、これらの総和を取ることにより車重を求めることができる。
【0068】
また、図10は、軸重算出処理の流れを示す図であり、図8および図9で説明した軸重算出処理の流れ(ステップS1、S2、S3)を整理して示した図である。以下、図10を参照して、軸重算出処理の流れについて説明する。
【0069】
最初に、図8で説明した処理手順により、車軸通過タイミングと、車速と、1tの基準軸重ひずみ波形を基に、1tのひずみを時間軸上に配置し(ステップS1、S2)、「1t×軸数分の合計ひずみ波形(図8(C)を参照)」を生成する。
【0070】
それから、図9で説明した手順により「車両一台分のひずみデータ」と「1t×軸数分の合計ひずみ」とを比較し、最小二乗法によって、誤差が最小になるように、各軸の軸重を算出し(ステップS3)、各軸の重量を求める。
【0071】
そして、各軸の重量を合計することにより(ステップS4)、車重が求まる。
【0072】
このようにして、本発明の橋梁通過車両監視システムにおいては、1つのひずみ計により、橋梁を通過する車両の軸重を計測することができる。そして、図11に示すような、車重別の統計データを得ることができる。
【0073】
図11に示す統計データは、日付ごとに、橋梁を通過する車両を車重別に集計したデータである。また、通過する車両の軸間比率から車種を特定し、車種別の統計データを得ることもできる・
【0074】
このように、統計処理を行なうことにより、車重別、車種別の通行実態把握することができる。また、路線別の比較、通過量の傾向の把握などが行なえるようになり、橋梁劣化予測、点検・補修必要箇所の特定、道路増設計画への利用、規制・指導の強化方針決定等に利用できるようになる。
【0075】
以上、本発明の橋梁通過車両監視システムについて説明したが、本発明によれば、ひずみ計の数を削減できるため、設置や維持管理に関するコストを削減できる。また、ひずみ計の数を削減できるため、処理・保存するデータの量を削減でき、計算時間の短縮や計算機資源の削減が可能となる。高速で通過する車両も対象とすると、ひずみは100Hz以上の高頻度で測定する必要があるため、データ量は膨大になり、この効果は大きい。
【0076】
また、ひずみ計を1箇所(1測定位置当り)しか設置しないため、車速変更や車線変更の影響を受けにくくなる。また、従来技術の方法では、車両通過時には車軸の通過が複数回検出されるため、2つの車軸検知用ひずみ計の間で、車軸の通過タイミングの対応関係を特定する処理が必要であり、対応誤りも生じる可能性があるが、本発明であればその必要が無く、誤りの影響もない。さらに、大型車両のデータベースと照合するため、軸間距離だけでなく、車種も同時に特定できる。
【0077】
なお、図4に示した橋梁通過車両監視システムは、内部にコンピュータシステムを有している。そして、ひずみ計測部22、波形抽出部23、車軸通過タイミング特定処理部24、軸間比率算出処理部25、軸間距離特定処理部26、軸重算出処理27、基準軸重ひずみ波形生成部28、統計データ生成部29等における処理は、CPUがプログラムを読み出して実行することにより、その機能が実現されるものである(もちろん、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい)。
【0078】
そして、上記プログラムは、例えばハードディスクやROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
【0079】
すなわち、ひずみ計測部22、波形抽出部23、車軸通過タイミング特定処理部24、軸間比率算出処理部25、軸間距離特定処理部26、軸重算出処理27、基準軸重ひずみ波形生成部28、統計データ生成部29等における、各処理は、CPU等の中央演算処理装置が上記プログラムを読み出して、情報の加工、演算処理を実行することにより、実現されるものである。
【0080】
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0081】
また、図4に示す橋梁通過車両監視システムには、周辺機器として入力装置、表示装置等(いずれも表示せず)が接続されているものとする。ここで、入力装置としては、キーボード、マウス等の入力デバイスのことをいう。表示装置とは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置等のことをいう。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の橋梁通過車両監視システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の橋梁通過車両監視システムにおけるひずみ計の設置例を示す図である。
【図2】橋梁の走行車線におけるひずみ計の配置例を示す図である。
【図3】ひずみ計の設置例の詳細を示す図である。
【図4】橋梁通過車両監視システムの構成例を示す図である。
【図5】ひずみ計の計測データと微分波形の例を示す図である。
【図6】軸間距離特定処理と車種推定処理の具体例を示す図である。
【図7】軸重算出処理について説明するための図である。
【図8】軸重算出処理の詳細(1)を説明するための図である。
【図9】軸重算出処理の詳細(2)を説明するための図である。
【図10】軸重算出処理の流れを示す図である。
【図11】車重別の統計データの例を示す図である。
【図12】従来のひずみ計の配置図である。
【図13】ひずみ計による測定結果の例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
11・・・橋脚、12・・・主桁、20・・・橋梁通過車両監視システム、21・・・主制御部、22・・・ひずみ計測部、23・・・波形抽出部、24・・・車軸通過タイミング特定処理部、25・・・軸間比率算出処理部、26・・・軸間距離特定処理部、27・・・軸重算出処理部、28・・・基準軸重ひずみ波形生成部、29・・・統計データ生成部、31・・・車両辞書記憶部、32・・・軸間距離データベース、33・・・基準軸重ひずみ波形、41・・・通過車両記憶部、103、104・・・ひずみ計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、
前記橋梁における車重の1測定位置ごとに1個が配置されると共に、前記測定位置を車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計と、
予め選定された3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、
前記ひずみ計で計測されたひずみ波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理部と、
前記車軸通過タイミング特定処理部により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理部と、
前記軸間比率算出処理部により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定する軸間距離特定処理部と、
を備えることを特徴とする橋梁通過車両監視システム。
【請求項2】
橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、
前記橋梁における車重の1測定位置ごとに1個が配置されると共に、前記測定位置を車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計と、
予め選定された3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを記憶する車両辞書記憶部と、
前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出部と、
前記波形抽出部により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理部と、
前記車軸通過タイミング特定処理部により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理部と、
前記軸間比率算出処理部により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理部と、
前記軸間距離特定処理部により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理部と、
を備えることを特徴とする橋梁通過車両監視システム。
【請求項3】
前記軸重算出処理部は、
前記軸間距離特定処理部により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形における第1の軸をn1倍、第2の軸をn2倍、第3の軸をn3倍、・・・、第nの軸をnn倍(n1〜nnは正の数)した結果のひずみ波形のデータと、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、最小二乗法によって、2つの波形の誤差が最小になるように、前記の各軸の倍率n1、n2、・・、nnを求めて各軸の軸重を算出すること
を特徴とする請求項2に記載の橋梁通過車両監視システム。
【請求項4】
前記車軸通過タイミング特定処理部は、
前記ひずみ波形に含まれる変曲点を検出することによって車軸の通過タイミングを特定するように構成され、
また、前記基準軸重は1トンであり、予め軸重が分かっているWトンの車軸を通過させて測定されたひずみ波形を基に、該測定されたWトンのひずみ波形の振幅を1/W倍して前記基準軸重ひずみ波形を生成するように構成されたこと
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の橋梁通過車両監視システム。
【請求項5】
橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムにおける橋梁通過車両監視方法であって、
前記橋梁における車重の1測定位置ごとに、車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計を1個配置すると共に、
前記橋梁通過車両監視システム内の制御部により、
予め選定された大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを車両辞書記憶部に記憶する手順と、
前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出手順と、
前記波形抽出手順により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理手順と、
前記車軸通過タイミング特定処理手順により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理手順と、
前記軸間比率算出処理手順により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理手順と、
前記軸間距離特定処理手順により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理手順と、
が行なわれることを特徴とする橋梁通過車両監視方法。
【請求項6】
橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに、車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計が1個配置される橋梁通過車両監視システム内のコンピュータに、
予め選定された大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを車両辞書記憶部に記憶する手順と、
前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出手順と、
前記波形抽出手順により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理手順と、
前記車軸通過タイミング特定処理手順により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理手順と、
前記軸間比率算出処理手順により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理手順と、
前記軸間距離特定処理手順により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項1】
橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、
前記橋梁における車重の1測定位置ごとに1個が配置されると共に、前記測定位置を車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計と、
予め選定された3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、
前記ひずみ計で計測されたひずみ波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理部と、
前記車軸通過タイミング特定処理部により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理部と、
前記軸間比率算出処理部により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定する軸間距離特定処理部と、
を備えることを特徴とする橋梁通過車両監視システム。
【請求項2】
橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、
前記橋梁における車重の1測定位置ごとに1個が配置されると共に、前記測定位置を車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計と、
予め選定された3軸以上の大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを記憶する車両辞書記憶部と、
前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出部と、
前記波形抽出部により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理部と、
前記車軸通過タイミング特定処理部により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理部と、
前記軸間比率算出処理部により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理部と、
前記軸間距離特定処理部により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理部と、
を備えることを特徴とする橋梁通過車両監視システム。
【請求項3】
前記軸重算出処理部は、
前記軸間距離特定処理部により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形における第1の軸をn1倍、第2の軸をn2倍、第3の軸をn3倍、・・・、第nの軸をnn倍(n1〜nnは正の数)した結果のひずみ波形のデータと、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、最小二乗法によって、2つの波形の誤差が最小になるように、前記の各軸の倍率n1、n2、・・、nnを求めて各軸の軸重を算出すること
を特徴とする請求項2に記載の橋梁通過車両監視システム。
【請求項4】
前記車軸通過タイミング特定処理部は、
前記ひずみ波形に含まれる変曲点を検出することによって車軸の通過タイミングを特定するように構成され、
また、前記基準軸重は1トンであり、予め軸重が分かっているWトンの車軸を通過させて測定されたひずみ波形を基に、該測定されたWトンのひずみ波形の振幅を1/W倍して前記基準軸重ひずみ波形を生成するように構成されたこと
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の橋梁通過車両監視システム。
【請求項5】
橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムにおける橋梁通過車両監視方法であって、
前記橋梁における車重の1測定位置ごとに、車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計を1個配置すると共に、
前記橋梁通過車両監視システム内の制御部により、
予め選定された大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを車両辞書記憶部に記憶する手順と、
前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出手順と、
前記波形抽出手順により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理手順と、
前記車軸通過タイミング特定処理手順により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理手順と、
前記軸間比率算出処理手順により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理手順と、
前記軸間距離特定処理手順により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理手順と、
が行なわれることを特徴とする橋梁通過車両監視方法。
【請求項6】
橋梁を通過する車両の車重を計測するための橋梁通過車両監視システムであって、前記橋梁における車重の1測定位置ごとに、車軸が通過する際に橋梁に生じるひずみを計測するひずみ計が1個配置される橋梁通過車両監視システム内のコンピュータに、
予め選定された大型車両の軸間距離のデータを車種と共に登録した軸間距離データベースと、前記測定位置を所定の基準軸重が通過したときの基準軸重ひずみ波形とを車両辞書記憶部に記憶する手順と、
前記ひずみ計により計測された波形データから、車両1台分の波形を切り出す波形抽出手順と、
前記波形抽出手順により抽出された車両1台分の波形から車軸が通過したタイミングを検出する車軸通過タイミング特定処理手順と、
前記車軸通過タイミング特定処理手順により検出された車軸の通過タイミングを基に、通過した車両の軸間比率を算出する軸間比率算出処理手順と、
前記軸間比率算出処理手順により算出された軸間比率のデータと、前記軸間距離データベースに登録された軸間距離を基に算出される軸間比率のデータとを比較し、通過した大型車両の軸間距離、車種を特定すると共に、前記通過タイミングと前記特定された軸間距離とを基に車速を算出する軸間距離特定処理手順と、
前記軸間距離特定処理手順により算出された車速を基に、車軸の通過タイミングに合わせて、前記基準軸重のひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、該基準軸重ひずみ波形と、実際に計測された車両一台分のひずみ波形のデータとを比較し、各軸の軸重を算出する軸重算出処理手順と、
を実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−237805(P2009−237805A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81687(P2008−81687)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、科学技術振興機構委託開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、科学技術振興機構委託開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]