説明

橋梁

【課題】橋梁上の堆雪の排雪に当たり、ランニングコストが不要であり、橋梁自体の構造を複雑化することもなく、橋梁上で融雪する代わりに排雪することによって融解水が床版内部に浸透して凍結するといった問題を解消することのできる橋梁を提供すること。
【解決手段】少なくとも床版1からなる橋梁10であって、橋梁10の一部には弾性体4(バネ、積層ゴムなど)を介して開口床版3が接続されており、橋梁10の振動(床版1の振動Z1、主桁2の振動Z2)が弾性体4に伝播された際に、弾性体4と開口床版3からなるユニット7が共振し、開口床版3上の堆雪を開口32を介して下方へ排雪するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも床版からなる橋梁に係り、橋梁の振動を利用して堆雪を効果的に排雪することのできる橋梁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪寒冷地の道路橋梁を構成するコンクリート床版は、路面に堆雪してその融解水が床版内部に浸透し、さらに凍結することによってコンクリートが砂利化する等の劣化が問題となっており、この種の劣化は凍結防止剤の影響によってより一層進むことになる。
【0003】
凍結防止剤などを使用することに代わって、道路のアスファルト舗装の内部に遠赤電熱シートを介層し、表層アスファルトに遠赤外線素子を配合し、遠赤外線を道路に提供して道路の凍結防止を図りながら融雪を可能とした道路に関する発明が特許文献1に開示されている。また、特許文献2には、相互に逆方向に温水が流れるように構成された一対の放熱管が舗装体の内部に埋設され、この構成によって舗装体全体の均一な放熱を可能とし、この均一な放熱によって舗装体表面の融雪をおこなう消雪施設に関する発明が開示されている。
【0004】
これらの従来技術は、凍結防止剤を利用するものでないものの、道路構造を複雑なものとし、さらには融雪に際して遠赤外線照射や温水循環などのランニングコストが必然的に生じるものであるなどの課題を有している。
【0005】
さらに、そもそもこれらの従来技術は道路表面で融雪するものであることから、上記する課題、すなわち、路面の堆雪の融解水が床版内部に浸透し、さらに凍結することによってコンクリートが砂利化する等の劣化の問題を何等解消するものではない。
【0006】
ところで、道路や線路上の堆雪は、通常は除雪車等によって道路側方の路肩や線路側方に押し寄せられ、道路や路線の交通利用の確保が図られている。
また、道路や線路は、その全延長の間に谷超え区間や他の道路や線路と立体交差する区間などを有し、これらの区間においては道路橋や鉄道橋といった橋梁が適用されている。
そして、道路橋や鉄道橋はその上を車両や電車が通過する際に個々の橋梁に固有の固有周期で振動することはよく知られるところである。
【0007】
本発明者等は、このような橋梁の振動に着目し、橋梁上の堆雪の排雪にこの振動を有効利用できる技術の発案に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−81710号公報
【特許文献2】特開平6−193008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、橋梁上の堆雪の排雪に当たり、ランニングコストが不要であり、橋梁自体の構造を複雑化することもなく、橋梁上で融雪する代わりに排雪することによって融解水が床版内部に浸透して凍結し、床版を劣化させるといった問題を解消することのできる橋梁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による橋梁は、少なくとも床版からなる橋梁であって、前記橋梁の一部には弾性体を介して開口床版が接続されており、橋梁の振動が弾性体に伝播された際に、弾性体と開口床版からなるユニットが共振し、開口床版上の堆雪を開口を介して下方へ排雪するようになっているものである。
【0011】
本発明の橋梁は、床版と、オープングレーチング等の開口床版を弾性体を介して接続した構成としておき、車両や電車、さらには人などが橋梁を通過する際に生じる振動を有効利用して、この振動によって弾性体と開口床版からなるユニットを共振させ、開口床版上の堆雪を開口を介して下方へ排雪するようにしたものである。
【0012】
ここで、本明細書における「共振」とは、橋梁もしくは橋梁を構成する構成要素(床版や主桁など)の振動が伝播されて、弾性体と開口床版からなるユニットが橋梁やその構成要素の振動よりも大きな振幅で揺れることを意味している。
【0013】
橋梁の構造は多様に存在し、延長が短く、作用荷重も通行人等のみの歩道橋(人道橋)の場合には、コンクリート製等の床版がその両端で支持された極めてシンプルな構造となり得るし、車両や鉄道などの走行荷重を支持する道路橋、鉄道橋などの場合は、箱桁橋やトラス橋、アーチ橋、斜張橋、吊り橋、ラーメン橋などの構造形式のものが適用できる。
【0014】
このように、本発明の橋梁は、道路橋、鉄道橋、水路橋、歩道橋のいずれであってもよく、その構造形式も特に限定されるものではないが、少なくとも床版を備えたものであり、かつ、橋梁の一部に弾性体を介して開口床版が接続された構成を有していればよい。
【0015】
開口床版は床版の側方端部、すなわち路肩に設けられており、たとえば除雪車等で床版上の堆雪が開口床版へ押出されてその上に堆雪する。
【0016】
開口床版とともにユニットを構成する弾性体は特に限定されるものではないが、たとえば、バネや積層ゴムなどを挙げることができる。
【0017】
開口床版と弾性体からなるユニットの固有周期と、橋梁の有する固有周期が同一となる、もしくは近似するように弾性体の弾性係数(バネの場合はバネ定数)を調整しておくことにより、橋梁の振動が弾性体に伝播された際に弾性体および開口床版からなるユニットを共振させることができ、橋梁の主構造である床版に比して格段に軽量な開口床版が橋梁の振幅に比して大きな振幅で振動することにより、その上の堆雪を開口床版の開口を介して下方へ効果的に排雪することができる。
【0018】
この排雪作用により、橋梁上の堆雪が融雪して床版内部に浸透し、これが凍結して橋梁構成部材が劣化するといった問題は解消される。さらに、この排雪は橋梁を車両等が通過する際に生じる橋梁自体の振動を利用するものであることから、排雪に際して電力や動力などのランニングスコストは一切不要である。
【0019】
橋梁がその主たる構造として床版のみを有する場合は、この床版と開口床版が弾性体を介して接続される。
【0020】
ここで、橋梁はその構造形式に応じて、橋梁全体として複数の固有周期を有している。たとえば、床版のみからなる場合は、床版の固有周期(1次モード、二次モードと複数の固有周期が存在し得る)が橋梁全体の固有周期となるし、床版が何らかの支持体で支持される構成の場合は、橋梁は主として床版に起因する固有周期と主として支持体に起因する固有周期といった具合に複数の固有周期を有することになる。さらに、この支持体が複数の構成部材からなる場合は、各構成部材に起因する固有周期が存在し得ることから、橋梁はその構造が複雑になればなるほど、より多くの固有周期を有することになる。
【0021】
そこで、たとえば床版のみを主たる構造とする橋梁の設計に際しては、まず、建設される橋梁の地域ごとに雪の密度や積雪量、除雪車によって押し寄せられて開口床版上で積み上げられた際の高さの設計値などに応じて、堆雪の重量をユニットの重量に加味した総重量をユニットの固有周期算定の際に考慮する必要がある。そして、床版の固有周期を算定し、床版の固有周期に同一もしくは近似した固有周期を有するユニットとなるように弾性体の仕様や材質、弾性係数などを決定する。
【0022】
ここで、橋梁の固有周期の算定方法は特に限定されるものでないが、たとえば、橋梁を構成する床版に外部から衝撃を付与してその際の床版の衝撃振動時刻歴波形を収録し、これをスペクトル解析を経て固有周期を求める方法や、一次の固有周期を与える次式、すなわち、

T:固有周期、m:床版荷重、k:床版の弾性係数
で簡易的に算定する方法などを挙げることができる。
【0023】
開口床版と弾性体からなるユニットの固有周期は、開口床版と弾性体それぞれの重量や弾性係数の比率に応じてそれぞれの値を重み付けした上でユニット全体の固有周期を設定することのほかに、ユニットの弾性係数は床版と直接接続される弾性体の弾性係数で代表させるなどの方法で設定してもよい。
【0024】
また、床版が橋梁の長手方向に延設する支持体で支持される形態において、弾性体が支持体と開口床版を接続している構造の場合には、橋梁の有する複数の固有周期の中で主として支持体に起因する固有周期によってユニットが共振するように弾性体の弾性係数等を調整しておくのがよい。なお、弾性体の弾性係数の調整においては、弾性体の仕様や材質、剛性を調整することによってその弾性係数の調整が図られるものである。
【0025】
さらに、床版が橋梁の長手方向に延設する支持体で支持される形態において、弾性体が床版と開口床版を接続する第1の弾性体と支持体と開口床版を接続する第2の弾性体からなる場合には、第1の弾性体を介して、橋梁の有する複数の固有周期の中で主として床版に起因する固有周期によってユニットが共振するように第1の弾性体の弾性係数等を調整しておき、第2の弾性体を介して、橋梁の有する複数の固有周期の中で主として支持体に起因する固有周期によってユニットが共振するように第2の弾性体の弾性係数等を調整しておくのがよい。
【0026】
ここで、支持体の形態としては、H型鋼やI型鋼、C型鋼などからなる主桁や、鋼材を組み付けてなるトラス架構、鋼材を組み付けてなる箱桁、支柱と斜材からなる斜張構造体、ワイヤからなる吊り構造体などを挙げることができる。
【0027】
たとえば、H型鋼の主桁からなる支持体で床版が支持されている形式の橋梁において、第1の弾性体を介して開口床版と床版を接続し、別途の第2の弾性体を介してH型鋼のウェブと開口床版を接続する構成とすることにより、床版の固有周期と主桁の特にウェブの固有周期のいずれかによって開口床版を共振させることが可能となる。また、床版や主桁全体の振動は主として縦振動であることから、床版や主桁のフランジに弾性体を接続した際には、これらの縦振動を開口床版に伝播させることができる。一方、主桁のウェブの振動は主として横振動(面外振動)であることから、主桁のウェブに弾性体を接続した際にはこの横振動がたとえば縦振動に変換された後の振動を開口床版に伝播させることができる。この「縦振動に変換」とは、一般に主構造である床版等に比してユニットは格段に軽量であることから、仮に主構造の一部が横方向に振動している場合でも、主構造の縦振動は横振動に比して振幅が大きく、主構造全体の振動に占める縦振動の影響が大きなことから、横振動がユニットに伝播される際にこれが縦振動に変換され易いという理由に依拠するものである。なお、開口床版は、弾性体によって縦振動する形態であっても、横振動する形態であっても、双方が組み合わされた態様で振動する形態であってもよく、橋梁が建設される地域の雪質や重量、さらには開口床版を構成する開口の大きさや形状などに応じて、効果的に排雪できる振動態様が選定されるのがよい。
【0028】
また、開口床版のみならず、床版にも排雪に供される開口を設けた構成としておいてもよく、この形態では、除雪されずに床版上に残った堆雪を床版の振動によってその開口から下方へ排雪することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明から理解できるように、本発明の橋梁によれば、橋梁の一部に弾性体を介して開口床版を接続させ、橋梁の振動が弾性体に伝播された際に弾性体および開口床版からなるユニットが共振し、開口床版上の堆雪を開口を介して下方へ排雪させるようにしたことによって、排雪に当たって電力や動力等のランニングコストは一切不要となり、橋梁上で融雪する代わりに橋梁の振動に共振する開口床版の振動によって排雪することで融解水が床版内部に浸透して凍結し、床版が劣化するといった問題を効果的に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の橋梁の一実施の形態を橋軸直角方向で切断した縦断面図である。
【図2】図1で示す橋梁を構成する床版の堆雪が床版側方の開口床版上へ押し寄せられて堆雪している状態を説明した図である。
【図3】床版上を車両が走行した際の床版、主桁の振動と、主桁の振動が弾性体および開口床版からなるユニットに伝播されてユニットが共振している状態を模擬した図である。
【図4】ユニットを拡大した図であって、ユニットの共振によって堆雪が開口床版の開口から下方へ排雪されている状態を模擬した図である。
【図5】床版と主桁からなる橋梁モデルにおいて、構成部材の振動を説明した図である。
【図6】(a)、(b)、(c)はいずれも、橋梁を構成する構成部材とユニットを接続する実施の形態を模擬した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の橋梁の実施の形態を説明する。なお、図示例は、車両が走行する道路橋を説明したものであるが、本発明の橋梁の用途は道路橋に限らず、鉄道橋や歩道橋など、橋梁の全用途を対象としたものである。また、図示例は、床版を支持体の一種である主桁が支持する構造の橋梁であるが、これ以外の構造形式である、トラス橋やアーチ橋、斜張橋、吊り橋、ラーメン橋などであってもよいことは勿論のことである。
【0032】
(橋梁の一実施の形態)
図1は本発明の橋梁の一実施の形態を橋軸直角方向で切断した縦断面図であり、図2は図1で示す橋梁を構成する床版の堆雪が床版側方の開口床版上へ押し寄せられて堆雪している状態を説明した図であり、図3は床版上を車両が走行した際の床版、主桁の振動と、主桁の振動が弾性体および開口床版からなるユニットに伝播されてユニットが共振している状態を模擬した図である。
【0033】
図1で示すように、本発明の橋梁10は、コンクリート製の床版本体12の表面に舗装11が被覆されてなる床版1を、複数の主桁2が支持した主構造を有するものであり、主桁2から側方に張り出した連絡部材83の上に載置される、弾性体である複数のバネ4とこのバネ4で支持された開口床版3からなるユニット7と、開口床版3の側方位置で該開口床版3とは縁切りされた態様で連絡部材83の上に載置される地覆5とここから立設する高欄6と、からその全体が大略構成されている。
【0034】
図1で示す断面形状が長手方向(橋軸方向)に連続して所定延長の橋梁10が構成され、橋梁10の両端部が不図示の橋台で支承されるものである。そして、図示例では、開口床版3は一箇所当たり3基のバネ4で支持されるものであるが、これが橋軸方向に間隔を置いて、複数箇所で同様の態様で開口床版3を支持するようになっている。
【0035】
なお、図示する橋梁10では、主桁2を補強する縦材82、主桁2,2間を繋ぐ水平材81や必要に応じて不図示の斜材などから対傾構が形成されており、さらに、橋梁10を上方や下方から見た際に確認できる、主桁2,2間を繋ぐ不図示の横構などによって橋梁10の立体的な剛性が確保されている。
【0036】
なお、図示例とは別途の構造形式である、トラス橋やアーチ橋、斜張橋、吊り橋、ラーメン橋などの場合には、それらの構造形式に則した支持体が適用される。
【0037】
道路橋10を構成する床版1は、中央の分離帯側から側方のユニット7に向かって所定の横断勾配を有しており、雨水や融雪水は床版1の側方に流れて排水されるようになっている。
【0038】
図1で示す橋梁10では、ユニット7が主桁2を構成するウェブ21とフランジ22の双方から側方に張り出す連絡部材83の上に支持された構成となっている。
【0039】
弾性体であるバネ4は、所望にその剛性やバネ定数を調整できるものであるが、このように弾性係数を調整できるとともに振動を伝播させて開口床版3を大きく振動自在な部材としては、積層ゴム、剛性が比較的小さくて可撓性に富む鋼材(平鋼、C型鋼、L型鋼、鋼棒など)などを適用することができる。
【0040】
図2で示すように、この橋梁10に雪が積もって2点鎖線で示すように堆雪Sした際には、たとえば除雪車によって堆雪Sが床版1の側方に押し出され、床版1の側方に位置する開口床版3の上に堆雪する。
【0041】
そして、橋梁10の床版1上を図3で示すように車両Cが走行した際には、橋梁10はその固有周期で振動することになり、より具体的には、床版1は振動Z1で振動し、主桁2は振動Z2で振動する。
【0042】
そして、橋梁10においては、構成要素であるユニット7の固有周期と、ユニット7が連絡部材83を介して直接繋がれた主桁2に主として起因する固有周期(振動Z2の固有周期)が同一となる、もしくは近似するように、弾性体であるバネ4のバネ定数が調整されている。
【0043】
したがって、橋梁10の特に主桁2の振動Z2がバネ4に伝播された際にユニット7は共振し、橋梁10の主構造である床版1や主桁2に比して格段に軽量な開口床版3が橋梁10の振幅に比して大きな振幅で振動することになる(振動Z3)。これは、有効質量比に応じて振幅が増幅されることによるものである。
【0044】
図4は、理解を容易とするために高欄や地覆等を廃した構造のユニットを拡大した図である。橋梁10の特に主桁2の振動がユニットに伝播され、ユニットが伝播された振動に共振して大きな振幅で振動Z3することにより、格子体31と格子間に画成された多数の開口32の上方の堆雪Sが開口32を介して下方へ効果的に排雪されることになる。
【0045】
ここで、橋梁10の固有周期とは、床版1と支持体である主桁2から構成される構造体としての橋梁10が有する固有周期であり、主として床版1が起因する固有周期や主として主桁2が起因する固有周期など、橋梁10は複数の固有周期を有している。
【0046】
一方、橋梁10の上に積もる雪は、橋梁10が建設される地域ごとに雪の密度や積雪量、さらには除雪車等によって開口床版上に堆雪する高さが異なっている。したがって、堆雪の重量をユニットの重量に加味した総重量をユニットの固有周期の算定の際に考慮し、主桁2の固有周期を算定し、主桁2の固有周期に同一もしくは近似した固有周期を有するユニットとなるようにバネ4の仕様や材質、バネ係数などを決定する。
【0047】
(橋梁の他の実施の形態)
以下、図5,6を参照して、橋梁の他の実施の形態に関するモデル図とその構成要素の振動態様を説明する。図5は、床版と主桁からなる橋梁モデルにおいて、構成部材の振動を説明した図であり、図6a、b、cはいずれも、橋梁を構成する構成部材とユニットを接続する実施の形態を模擬した図である。なお、図5,6で示す橋梁モデルは、図1で示す橋梁10のようにその他の構成要素の記載を省略して橋梁の主構造のみを示している点において橋梁モデルと称している。
【0048】
図5で示す橋梁モデルMは、床版モデルMをウェブWとフランジFを有するI型鋼からなる2つの主桁モデルMで支持した主構造を有するものであり、床版モデルMは振動Z1で縦振動し、主桁モデルMは振動Z2で縦振動し、さらに主桁モデルMの構成要素であるウェブWは振動Z4で横振動するものである。
【0049】
このように、橋梁モデルMはその全体構成において複数の固有周期を有し得るが、各固有周期はその主たる要因となる橋梁モデル構成要素を有している。そこで、各構成要素に起因する固有周期を利用してユニットの固有周期と略一致させてユニットを共振させるべく、たとえば、図6a,b,cで示す橋梁モデルの実施の形態を挙げることができる。なお、図示する橋梁モデルM1、M2、M3はいずれも、図5で示す主構造を共通に有するものである。
【0050】
図6aで示す橋梁モデルM1は、床版モデルMの振動Z1と開口床版モデルMおよびバネモデルMからなるユニットモデルが共振して振動Z3’するべく、床版モデルMにL型の連絡部材モデルMを繋ぎ、これにバネモデルMを載置固定したものである。
【0051】
一方、図6bで示す橋梁モデルM2は、主桁モデルMの振動Z2と開口床版モデルMおよびバネモデルMからなるユニットモデルが共振して振動Z3”するべく、主桁モデルMのフランジFに平板の連絡部材モデルMを繋ぎ、これにバネモデルMを載置固定したものである。
【0052】
一方、図6cで示す橋梁モデルM3は、主桁モデルMの縦振動Z2とウェブWの横振動Z4(が縦振動に変換された振動)をユニットモデルにそれぞれ伝播させるべく、それぞれが別途の連絡部材モデルM、Mで繋がれたものであり、これら2つの振動のいずれか、もしくは双方がユニットモデルに伝播されてユニットモデルが共振し、たとえば双方の振動の合成振動に共振して縦方向に振動Z3'''するものである。また、同図においては、ウェブWの横振動Z4がユニットモデルに伝播されてユニットモデルが横方向に共振して振動Z3''''する態様をともに示している。このように、ウェブW等の横方向の振動は、ユニットモデルの縦方向の共振振動として、もしくはユニットモデルの横方向の共振振動として、あるいは双方が混在するユニットモデルの共振振動として作用し得るものである。
【0053】
このように、本発明の橋梁は、多様な構造形式の橋梁をその対象とするものであり、橋梁の有する固有周期(各固有周期は橋梁を構成する各構成要素が主として起因している)と同一、もしくは略同一となる固有周期を有する開口床版と弾性体からなるユニットを床版の側方に有するものであり、橋梁の適宜の箇所とユニットが接続されることによって、車両や電車、歩行者等が通過した際の橋梁の振動がユニットに伝播され、橋梁の主構造に比して質量が格段に軽量なユニットがこの振動に共振してより一層大きな振幅で振動することにより、開口床版上の堆雪を開口を介して下方へ効果的に排雪することができる。
【0054】
そして、この排雪作用によって、橋梁上の堆雪が融雪して床版内部に浸透し、これが凍結して橋梁構成部材が劣化するといった問題は解消でき、さらに、この排雪は橋梁を車両等が通過する際に生じる橋梁自体の振動を利用するものであることから、排雪に際して電力や動力などのランニングコストは一切不要である。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1…床版、11…舗装、12…床版本体、2…主桁、21…ウェブ、22…フランジ、3…開口床版、31…格子体、32…開口、4…弾性体(バネ)、5…地覆、6…高欄、7…ユニット、10…橋梁(道路橋)、S…堆雪、M,M1,M2,M3…橋梁モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも床版からなる橋梁であって、
前記橋梁の一部には弾性体を介して開口床版が接続されており、
橋梁の振動が弾性体に伝播された際に、弾性体と開口床版からなるユニットが共振し、開口床版上の堆雪を開口を介して下方へ排雪するようになっている橋梁。
【請求項2】
前記弾性体が床版と開口床版を接続しており、橋梁の有する複数の固有周期の中で主として床版に起因する固有周期によって前記ユニットが共振するようになっている請求項1に記載の橋梁。
【請求項3】
前記床版は橋梁の長手方向に延設する支持体で支持されており、前記弾性体が支持体と開口床版を接続しており、橋梁の有する複数の固有周期の中で主として支持体に起因する固有周期によって前記ユニットが共振するようになっている請求項1に記載の橋梁。
【請求項4】
前記床版は橋梁の長手方向に延設する支持体で支持されており、
前記弾性体は、床版と開口床版を接続する第1の弾性体と支持体と開口床版を接続する第2の弾性体からなり、
第1の弾性体を介して、橋梁の有する複数の固有周期の中で主として床版に起因する固有周期によって前記ユニットが共振するようになっており、
第2の弾性体を介して、橋梁の有する複数の固有周期の中で主として支持体に起因する固有周期によって前記ユニットが共振するようになっている請求項1に記載の橋梁。
【請求項5】
前記支持体が、主桁、鋼材を組み付けてなるトラス架構、鋼材を組み付けてなる箱桁、支柱と斜材からなる斜張構造体、ワイヤからなる吊り構造体のうちのいずれか一種である請求項3または4に記載の橋梁。
【請求項6】
前記弾性体が、バネ、積層ゴムのいずれかからなる請求項1〜5のいずれかに記載の橋梁。
【請求項7】
前記床版も排雪に供される開口を備えている請求項1〜6のいずれかに記載の橋梁。
【請求項8】
前記橋梁は、道路橋、鉄道橋、水路橋、歩道橋のいずれかからなる請求項1〜7のいずれかに記載の橋梁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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