説明

機器基板取付け構造

【課題】端部に端子ホルダーが装着されている基板を、板金製のフレームに取り付けるときに、端子ホルダーを利用して、基板をフレームにビス止め構造を用いずに取り付ける。
【解決手段】フレーム10に基板50を固定するための取付け機構Aが、基板50の端部に結合された端子ホルダー60を有する。端子ホルダー60を係脱機構30を介してフレーム10に取り付ける。係脱機構30は、フレーム10側の貫通孔部34と、端子ホルダー60側の座部31、爪部32及び脚片部33と、キャビネット70側の位置決め機構35と、を有する。位置決め機構35を、キャビネット70の開口窓71の口縁部72,72によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器基板取付け構造、特に、板金製フレームなどでなる基板保持体に、取付けねじを用いずに基板を取り付けることができるようにするための対策が講じられた電気電子機器などの機器基板取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は機器基板取付け構造の従来例を示した概略斜視図である。この事例は、電気電子機器としての液晶型テレビジョン受像機に採用されている機器基板取付け構造であって、液晶モジュールの背部に備わっている板金製のフレーム10に基板50が取り付けられている。フレーム10はその平坦部の複数箇所に略円錐台状に絞り成形された膨出部11…を有している。これに対し、矩形の基板50には、ジャックなどの端子61やその他の必要な電気電子部品62などが搭載されている。また、基板50の端部に、上記端子61を保持している端子ホルダー60が装備されていて、基板50と端子ホルダー60とは図示していない公知の固定機構によって結合されている。そして、端子ホルダー60を装備している基板50が、上記フレーム10の膨出部11の上に載架された状態で取付けねじ12を用いて複数箇所の膨出部11の頂部にビス止めされている。
【0003】
この機器基板取付け構造において、基板50とフレーム10との相互間には膨出部11の高さに見合う隙間S1が形成されている。この隙間S1は、基板50の回路パターンや端子ピン、さらには半田盛りなどが板金製のフレーム10に接触して電気的にショートすることを防ぐスペースとして役立っている。また、この隙間S1は、基板50の裏面に実装された電気電子部品の収容スペースとしても役立っている。そして、この隙間S1には、その広さに一定の余裕度を付与することによってショートの危険性などを確実を回避するようにしている。さらに、図示していないけれども、上記端子ホルダー60もフレーム10にビス止めされている。
【0004】
図10は従来例に採用されているビス止め構造によってフレーム10に固定される基板50に加えられる禁止帯を示した説明図である。「禁止帯」とは、回路パターンを形成することが禁止されている板面上の領域や、電気電子部品(端子を含む)の実装スペースを設定することが禁止されている板面上の領域のことである。同図に示した基板50は、矩形に形成されていて、その長手方向の両端部のそれぞれにジャックなどの端子61が並べて実装されている。この基板50が、図9を参照して説明した従来例による機器基板取付け構造を採用してフレーム10に取り付けられる場合には、同図に破線ハッチングで示した箇所、すなわち並べて配列された相隣接する端子61の相互間に不可避的な禁止帯Z1を形成せざるを得なくなるだけでなく、ビス止めのための相手方部位、具体的にはフレーム10(図9参照)に設けられている膨出部11との対向箇所にも禁止帯Z2を形成せざるを得なくなる。そしてある特定のモデルについて、これらの禁止帯Z1 ,Z2を基板30の板面の全面積に対する割合を算出すると約11.5%になることが知見され、1割以上のスペースが禁止帯Z1,Z2によって占められてしまうことが判明した。
【0005】
一方、先行例には、液晶表示装置やプラズマ表示装置などに使用される回路基板を支持部材に取着する構造に関するものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1によって提案されている基板の取着構造は、支持部材側に設けた取着爪を、回路基板の非取着部に係合させることと、基板の複数箇所を支持部材にビス止めすることと、を併有している。
【0006】
また、他の先行例には、薄型液晶表示装置の電源スイッチ取付け構造が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。この特許文献2には、基板の端部に装備させたジャックホルダーをメイン基板にビス止めすることが示されている。
【0007】
これらの各先行例に対して、取付ねじを用いずに基板を固定する構造を採用した先行例も提案されている(たとえば、特許文献3参照)。この特許文献3によって提案されている構造では、表示装置のフロントキャビネットに一体に設けた左右一対のリブの相互間に細長い基板を架け渡してあると共に、一方のリブに長手方向の一端部を係合させた基板の長手方向の他端部を、フック形状のリブに係合させてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−4801号公報
【特許文献2】特許第4241805号公報 (特開2008−129369号公報)
【特許文献3】特開2009−181037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図9のようなビス止め構造を採用した従来例では、図10を参照して説明したように、基板50の板面の1割以上のスペースを禁止帯Z1,Z2として確保することが要求されることになるので、それだけ基板50の有効活用可能な面積が狭められてしまう。その結果、本来的に必要とされるサイズの基板50に比べて、上記禁止帯Z1,Z2のうちのフレーム10(図9参照)側の膨出部11との対向箇所に定められる禁止帯Z2の面積に見合うだけ大きなサイズの基板50を使用せざるを得なくなり、コスト高や基板設置スペースの大サイズ化を来しやすい、という問題があった。
【0010】
また、ビス止めを数箇所で行わねばならないという煩わしさがあるだけでなく、フレーム10の膨出部11の頂部に設けられているねじ孔に対して取付ねじ12を繰り返し着脱すると、そのねじ孔の機能が失われて所謂「バカ孔」になってしまい、その箇所に対する取付ねじ12の締付けが不可能になってしまうという問題もあった。
【0011】
一方、ビス止め構造を採用していない特許文献3のものは、ビス止めを行わねばならないという煩わしさが生じたり、ねじ孔が所謂「バカ孔」になってしまったりするという問題を生じる余地がない。しかしながら、特許文献3によって提案されている係止構造は、樹脂成形体でなるフロントキャビネットに一体に成形した左右一対のリブの相互間に細長い平坦な基板を架け渡すための構成を提案しているだけであるので、図9に示した基板のように、その端部に端子ホルダー60が装着されているような基板の取付け構造としては、端子ホルダー60がじゃまになるということを勘案すると、端子ホルダー60が装着されているような基板の取付け構造としてそのまま適用することには困難がある。
【0012】
本発明は、以上の問題や状況に鑑みてなされたものであり、端部に端子ホルダーのような部材が装着されている基板を、上記フレームのような基板保持体に取り付けるときに、基板の端部に装着されている上記部材を巧みに利用して、基板を基板保持体にビス止め構造を用いずに取り付けることのできる機器基板取付け構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る機器基板取付け構造は、基板保持体と、この基板保持体に基板を固定するための取付け機構と、を備える。そして、上記取付け機構が、上記基板保持体に装着される取付け部材と、上記基板保持体に上記取付け部材を装着するための係脱機構と、基板の端部に上記取付け部材を結合している固定機構と、を備えている。ここで、基板保持体には上記したフレームなどの平板状部材が相当している。
【0014】
さらに、上記係脱機構が、上記基板保持体に形成された貫通孔部と、上記取付け部材に設けられて上記貫通孔部の孔縁部に当接する座部と、この座部と共働して上記孔縁部を挟み付ける位置と上記貫通孔部に挿抜可能な位置との間でスライドされる爪部と、この爪部のスライド方向に変位可能に上記貫通孔部に挿通されて上記爪部と上記取付け部材とを連結している脚片部と、上記爪部が上記座部と共働して上記孔縁部を挟み付けている位置に上記取付け部材を位置決めするための位置決め機構と、を有している。
【0015】
この構成を備えた機器基板取付け構造によると、固定機構によって基板の端部に結合された取付け部材が係脱機構を介して基板保持体に装着される。そして、係脱機構による取付け部材と基板保持体との装着箇所では、座部と爪部とが基板保持体の貫通孔部の口縁部を挟み付けている。そのため、基板が取付け部材を介して基板保持体に取付けねじを用いずに装着され、その装着位置が位置決め機構によって規制される。また、係脱機構の座部と爪部と脚片部とが、取付け部材に一体に設けられているために、それらを別部品として形成する必要がない。さらに、基板を基板保持体から取り外すときには、基板保持体側の貫通孔部に挿抜可能な位置まで爪部をスライドさせてその貫通孔部から抜き出すだけで済む。
【0016】
本発明では、上記取付け部材が、基板に搭載された端子を保持している端子ホルダーによって形成されていると共に、機器が上記取付け部材を外部に露出させる開口窓を有するキャビネットを備え、上記位置決め機構が、上記端子ホルダーの幅方向両端部の両側に位置する上記開口窓の口縁部によって構成されている、という構成を採用することが特に望ましい。この構成であれば、端子を実装した基板の端部に固定機構を介して結合された端子ホルダーを取付け部材として利用しているために、別途に取付け部材を基板の端部に結合することを必要としないという利点がある。また、取付けねじを用いずに基板保持体に取り付けられた端子ホルダーが、位置決め機構としてのキャビネットの開口窓の口縁部によって位置決めされるために、端子ホルダーを位置決めするための余分な部材を必要としないという利点もある。
【0017】
本発明では、係脱機構の上記座部が、上記端子ホルダーの高さ方向で上記爪部に対向している上記端子ホルダーの端面によって形成されていることが望ましい。この構成であれば、取付け部材としての端子ホルダーの端面を係脱機構の座部として利用することが可能になる。
【0018】
本発明では、上記固定機構が、基板の端部が差し込まれた隙間空間を形成している二股状リブと、上記隙間空間に対する基板の差込み方向に直交する方向で当該基板を挟み付ける挟持片と、この挟持片に設けられて基板に形成された凹部に係合して上記隙間空間からの抜出し方向にその基板が変位することを阻止する係合爪と、を有していると共に、上記二股状リブと上記係合爪を有する上記挟持片とが上記取付け部材に樹脂で一体成形されている、という構成を採用することが可能である。この構成であれば、基板の端部に、取付け部材又は取付け部材としての端子ホルダーをビス止めする必要がない。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る機器基板取付け構造によれば、基板の端部に結合された取付け部材を、取付けねじを用いずに基板保持体に装着することができ、しかも、基板保持体に対する取付け部材の装着位置が位置決め機構によって規制される構成を採用したので、基板を基板保持体に取り付けるのに取付けねじを用いる必要がなくなる。そのため、ビス止めを数箇所で行わねばならないという煩わしさがなくなり、また、ねじ孔に所謂「バカ孔」になってしまうという問題を生じる余地がなくなる。
【0020】
特に、基板の端部に結合された端子ホルダーを取付け部材として用いることができ、そのように構成された機器基板取付け構造を、図9を参照して説明した従来例と比べると、取付けねじが省略され、しかも、取付け部材を余分に用いる必要がなくなって部品点数や組立工数が削減され、それに伴うコスト低減化を促進することが容易に可能になるという効果が奏される。また、フレームの膨出部に基板をビス止めするものに比べると、膨出部の高さ制限(高さ寸法の精度)が緩和される。その上、従来例に比べて基板の禁止帯の占める面積が削減されるために、それだけ基板のサイズを小さくしやすくなるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る機器基板取付け構造を概略で示した分解斜視図である。
【図2】基板と端子ホルダーとの結合箇所を示した要部の概略斜視図である。
【図3】基板と端子ホルダーとを示した要部の分解斜視図である。
【図4】フレームの要部を示した平面図である。
【図5】係脱機構を示した一部破断側面図である。
【図6】図5の要部を拡大した一部破断側面図である。
【図7】本発明に係る実施形態に係る基板に加えられる禁止帯を示した説明図である。
【図8】係脱機構の変形例を示した一部破断側面図である。
【図9】機器基板取付け構造の従来例を示した概略斜視図である。
【図10】従来例での基板の禁止帯を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る機器基板取付け構造を概略で示した分解斜視図である。同図の事例は、電気電子機器としての液晶型テレビジョン受像機に採用されている機器基板取付け構造を示している。図1には、液晶モジュールの背部に備わっている板金製のフレーム10、横長矩形の基板50、この基板50の長手方向の両端部にそれぞれ結合された各別の端子ホルダー(取付け部材の一例)60,60、基板50に実装されたジャックなどの端子61やその他の必要な電気電子部品62、フレーム10や基板50などを覆うキャビネット70、などが示されている。板金製のフレーム10及び端子ホルダー60は、それぞれ、本発明に係る基板保持体及び取付け部材の一例である。
【0023】
図2は基板50と端子ホルダー60との結合箇所を示した要部の概略斜視図、図3は基板50と端子ホルダー60とを示した要部の分解斜視図である。また、図4はフレーム10の要部を示した平面図、図5は係脱機構30を示した一部破断側面図、図6は図5の要部を拡大した一部破断側面図である。
【0024】
フレーム10に基板50を固定している取付け機構A(図1参照)には、上記した取付け部材としての端子ホルダー60と、図2及び図3に示した固定機構20と、図5などに示した係脱機構30と、が含まれている。
【0025】
固定機構20は、基板50の端部に端子ホルダー60を結合することに用いられている。図2及び図3のように、この固定機構20は、板片状の樹脂成形体でなる端子ホルダー60の背面に設けられた二股状リブ21と、係合爪24を一体に有して弾性を備えた挟持片23と、を備えていて、それらの二股状リブ21及び挟持片23とが端子ホルダー60と共に樹脂で一体成形されている。端子ホルダー60の横幅は、基板50の長手方向(矢印X方向)に直交する幅方向(矢印Y方向)の寸法(横幅)よりもやゝ長くなっていて、その横幅方向の両端部のそれぞれに固定機構20を備えている。なお、図2及び図3では、基板50の長手方向一端部に結合される端子ホルダー60において、その横幅方向片側に備わっている固定機構20だけを示しているけれども、その横幅方向他側に備わっている固定機構の構成は、図示固定機構20と対称になっている。そこで、以下の説明では、これら2箇所の固定機構20を左右の固定機構と称することがある。
【0026】
図3に示したように、固定機構20の二股状リブ21と挟持片23とは、端子ホルダー60の背方に突き出ている。そして、二股状リブ21の隙間空間22には、同図矢印aのように基板50の長手方向一端部が差し込まれる。また、図2のように、固定機構20の挟持片23は、二股状リブ21の隙間空間22(図3参照)に差し込まれた基板50の長手方向一端部の側部に位置している。そして、挟持片23の先端に設けられている係合爪24が、基板50の長手方向一端部の近傍箇所でその側辺に形成された凹部51に係合している。
【0027】
上記したように、固定機構20は、端子ホルダー60の横幅方向の片側及び他側に備わっていて、その構成は対称になっている。このため、左右の固定機構20の二股状リブ21の隙間空間22に、基板50のその長手方向Xの一端部の2箇所が差し込まれている。したがって、左右の固定機構20の二股状リブ21が、基板50を、図2に示した厚さ方向(矢印T方向)で挟み付けて位置決めしている。このように左右の固定機構20の二股状リブ21が基板50を厚さ方向で位置決めしていることにより、端子ホルダー60が、基板50の厚さ方向にがたつくことが防止されている(厚さ方向位置決め作用)。また、左右の固定機構20の挟持片23が、基板50の長手方向一端部において、その幅方向両側の端部に対峙し、しかも、それらの挟持片23の係合爪24が、基板50の幅方向両側の凹部51に係合している。そのため、基板50の長手方向一端部から端子ホルダー60が抜出し方向に変位して基板50から抜け落ちてしまうという事態が防止されている(端子ホルダー脱落防止作用)。さらに、左右の固定機構20の挟持片23の弾性により、基板50の幅方向両側の係合爪24が基板50を弾性的に挟み付けている。このため、端子ホルダー60が基板50の幅方向にがたつくことが防止されている(幅方向位置決め作用)。
【0028】
図2及び図3では、基板50の長手方向一端部に端子ホルダー60を結合している固定機構60の構成や作用を説明したけれども、基板50の長手方向他端部に端子ホルダー60を結合している固定機構60の構成や作用についても同様である。
【0029】
次に、係脱機構30の構成や作用を、図1、図4、図5又は図6を参照して説明する。図1のように、基板50の長手方向一端部及び他端部にそれぞれ結合されている端子ホルダー60,60は、それらの高さ方向下端部に外側(基板50から遠ざかる方向)に張り出した板片状のフランジ部65,65を一体に備えた樹脂成形体でなる。
【0030】
係脱機構30は、端子ホルダー60側に設けられている座部31、爪部32及び脚片部33と、フレーム10側に設けられている貫通孔部34と、キャビネット70側に設けられている位置決め機構35とを備えている。
【0031】
図5又は図6に示したように、端子ホルダー60に設けられている座部31は、端子ホルダー60の高さ方向で上記爪部32に対向している端子ホルダー60の端面、具体的には端子ホルダー60の下面によって形成されていて、爪部32に間隔を隔てて対向している。また、端子ホルダー60と爪部32とを脚片部33が連結している。言い換えると、端子ホルダー60から延び出た脚片部33の先端に爪部32が突き出ていて、その爪部32が座部31に間隔を隔てて対向するフックを形成している。また、座部31と爪部32との相互間隔は、フレーム10の厚さと同等又は略同等の寸法に定められている。これに対し、フレーム10側の貫通孔部34は、図4に示したように、フレーム10に形成された横長膨出部13の平坦な頂部14に形成されている。図例の貫通孔部34は横長スリット状に形成されていて、上記した爪部32を挿抜することが可能な長さを有している。さらに、キャビネット70側に設けられている位置決め機構35は、図1に示したように、キャビネット70に設けられた開口窓71の相対向している口縁部72,72によって形成されている。
【0032】
係脱機構30は、フレーム10に端子ホルダー60を装着することに用いられる。すなわち、フレーム10に端子ホルダー60を装着するときには、係脱機構30の爪部32をその脚片部33と共に貫通孔部34に挿通させることによって、図6に仮想線で示したように、爪部32をフレーム10の裏側に位置させる。次に、端子ホルダー60を図6矢印Pのように移動させると、脚片部33が貫通孔部34の内部で変位して爪部32及び座部31がフレーム10に対しスライドし、同図実線で示したように、爪部32が座部31と共働して貫通孔部34の孔縁部34aを挟み付ける。このように爪部32が座部31と共働してフレーム10の貫通孔部34の孔縁部34aを挟み付けることによって、端子ホルダー60がフレーム10に装着される。したがって、端子ホルダー60がフレーム10にビス止めすることなく仮固定され、また、基板50が端子ホルダー60を介してフレーム10にビス止めによらずに仮固定される。
【0033】
図4、図5及び図6では、係脱機構30の座部31、爪部32、脚辺部33及び貫通孔部34は、図1に示した2つの端子ホルダー60,60のうちの一方側の端子ホルダー60に対応している。他方側の端子ホルダー60に対応している係脱機構の座部なども同様の構成を有している。
【0034】
図1に示した位置決め機構35は、端子ホルダー60の爪部32が図5又は図6のように座部31と共働して貫通孔部34の孔縁部34aを挟み付けている位置に、当該端子ホルダー60を位置決めすることに用いられる。すなわち、図1に示したキャビネット70は、液晶型テレビジョン受像機のリアキャビネットに相当していて、フロントパネル(不図示)と共働して液晶モジュールのフレーム10やそのフレーム10に取り付けられている基板50などを覆う。このキャビネット70を構成しているリアキャビネットを上記フロントパネルに合わせて結合すると、その開口窓71が、端子ホルダー60によって塞がれ、その端子ホルダー60から突出しているジャックなどの端子61の差込み口63がキャビネット70の裏側で露出する。また、開口窓71の両側の孔縁部72,72が、端子ホルダー60の外面側に具備されている段付部64(図1、図5、図6参照)を端子ホルダー60の横幅方向で挟む。したがって、基板50に仮固定されていた端子ホルダー60が横幅方向に動かないように固定される。ここでは、一方側の端子ホルダー60の横幅方向での位置決めについてだけ説明したけれども、他方側の端子ホルダー60の横幅方向での位置決めについても同様である。
【0035】
上記した係脱機構30において、端子ホルダー60をフレーム10から取り外すときには、端子ホルダー60を図6矢印Pとは反対向きに後退移動させて脚片部33を貫通孔部34内で変位させることにより、爪部32を仮想線で示した位置までスライドさせる。この後、爪部32を貫通孔部34から抜き出すと、端子ホルダー60がフレーム10から取り外される。
【0036】
以上説明した実施形態では、特に、端子61を搭載している基板50の端部に固定機構20を介してビス止めすることなく結合された端子ホルダー60を取付け部材として利用しているので、基板50に取付け部材を別途結合する必要がない。そのため、端子ホルダー60とは別に取付け部材を用いる必要がなくなって、部品点数が増加することを回避することができるという利点がある。
【0037】
上記の実施形態では、係脱機構30の座部31を、端子ホルダー60のフランジ部65の下面によって形成し、かつ、貫通孔部34を、フレーム10の横長膨出部13の頂部14に形成しておくことによって、基板50とフレーム10との相互間に、横長膨出部13の高さに見合う隙間S2(図1参照)を形成する事例を示した。
【0038】
そこで、図8には、横長膨出部13を有しないフレーム10に基板50を取り付けた事例を示してある。図8は係脱機構30の変形例を示した一部破断側面図である。
【0039】
同図の事例では、端子ホルダー60の複数箇所に下向き突出部66を一体に設けておき、その下向き突出部66の下面によって係脱機構30の座部31を形成している。この構成によると、端子ホルダー60や基板50の高さ位置が、下向き突出部66の出幅分だけフレーム10から引き上げられるため、フレーム10に上記した横長膨出部13を設けなくても、基板50とフレーム10との相互間に、必要な隙間S3を確保することが可能になる。また、同様の作用は、端子ホルダー60側に設けられる固定機構20の二股状リブ21や挟持片23の高さ位置を高くすることによっても発揮させることが可能である。
【0040】
図7は本発明に係る実施形態の機器基板取付け構造によってフレーム10に固定される基板50に加えられる禁止帯を示した説明図である。同図に示した基板50は、矩形に形成されていて、その長手方向の両端部のそれぞれにジャックなどの端子61が並べて実装されている。この基板50が実施形態の機器基板取付け構造によってフレーム10に取り付けられている場合には、同図に破線ハッチングで示した箇所、すなわち並べて配列された相隣接する端子61の相互間だけに不可避的な禁止帯Z1が形成されるだけであって、図10に示したようなフレーム10の膨出部11との対向箇所の禁止帯Z2を形成する必要がない。そのため、従来例に比べて基板の禁止帯の占める面積が削減され、そのことが基板50のサイズを小さく抑えることに役立つ。
【符号の説明】
【0041】
A 取付け機構
10 フレーム(基板保持体)
20 固定機構
21 二股状リブ
22 隙間空間
23 挟持片
24 係合爪
30 係脱機構
31 座部
32 爪部
33 脚片部
34 貫通孔部
34a 貫通孔部の孔縁部
35 位置決め機構
51 凹部
60 端子ホルダー(取付け部材)
70 キャビネット
71 開口窓
72 開口窓の口縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持体と、この基板保持体に基板を固定するための取付け機構と、を備える機器基板取付け構造において、
上記取付け機構が、上記基板保持体に装着される取付け部材と、上記基板保持体に上記取付け部材を装着するための係脱機構と、基板の端部に上記取付け部材を結合している固定機構と、を備え、
上記係脱機構が、上記基板保持体に形成された貫通孔部と、上記取付け部材に設けられて上記貫通孔部の孔縁部に当接する座部と、この座部と共働して上記孔縁部を挟み付ける位置と上記貫通孔部に挿抜可能な位置との間でスライドされる爪部と、この爪部のスライド方向に変位可能に上記貫通孔部に挿通されて上記爪部と上記取付け部材とを連結している脚片部と、上記爪部が上記座部と共働して上記孔縁部を挟み付けている位置に上記取付け部材を位置決めするための位置決め機構と、を有していることを特徴とする機器基板取付け構造。
【請求項2】
上記取付け部材が、基板に搭載された端子を保持している端子ホルダーによって形成されていると共に、機器が上記取付け部材を外部に露出させる開口窓を有するキャビネットを備え、上記位置決め機構が、上記端子ホルダーの幅方向両端部の両側に位置する上記開口窓の口縁部によって構成されている請求項1に記載した機器基板取付け構造。
【請求項3】
係脱機構の上記座部が、上記端子ホルダーの高さ方向で上記爪部に対向している上記端子ホルダーの端面によって形成されている請求項2に記載した機器基板取付け構造。
【請求項4】
上記固定機構が、基板の端部が差し込まれた隙間空間を形成している二股状リブと、上記隙間空間に対する基板の差込み方向に直交する方向で当該基板を挟み付ける挟持片と、この挟持片に設けられて基板に形成された凹部に係合して上記隙間空間からの抜出し方向にその基板が変位することを阻止する係合爪と、を有していると共に、上記二股状リブと上記係合爪を有する一対の上記挟持片とが上記取付け部材に樹脂で一体成形されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した機器基板取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−222577(P2012−222577A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85765(P2011−85765)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】