機器用コネクタ
【課題】各中子が位置ずれすることを抑制すると共に、成形樹脂部内にボイドが発生することを抑制する。
【解決手段】モータに設けられた機器側バスバーに接続される複数の導電板10を合成樹脂製のコネクタハウジング50によって一体に成形してなる端子台であって、導電板10が一次成形部61と一体に成形されてなる複数の中子65と、モータケースに取り付け固定される金属板30と、互いに接触した状態に並べた複数の中子65と金属板30とを一体に成形する二次成形部70とを備え、隣り合う一対の中子65,65間には突当部66が設けられており、隣り合う一対の中子65,65は、突当部66を介して互いに接触することを特徴とする。
【解決手段】モータに設けられた機器側バスバーに接続される複数の導電板10を合成樹脂製のコネクタハウジング50によって一体に成形してなる端子台であって、導電板10が一次成形部61と一体に成形されてなる複数の中子65と、モータケースに取り付け固定される金属板30と、互いに接触した状態に並べた複数の中子65と金属板30とを一体に成形する二次成形部70とを備え、隣り合う一対の中子65,65間には突当部66が設けられており、隣り合う一対の中子65,65は、突当部66を介して互いに接触することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド車などに搭載されたモータなどの機器に接続される機器用コネクタとして、例えば、特許文献1記載のものが知られている。この機器用コネクタは、機器に設けられた機器側端子と電力供給用の電線に設けられた電線側端子とを接続する複数の金属製のバスバーと、これらのバスバーを覆う成形樹脂部とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−32500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の機器用コネクタにおいては、複雑な形状に屈曲した複数のバスバーを並べた状態でインサート成形されているため、成形樹脂部の型抜き構造が複雑となり、成形樹脂部に対して適切な肉抜きを行うことができない。そのため、成形樹脂部の厚肉部にボイド(微小な空隙)が発生する虞があり、このボイドに起因してクラックが生じ、機器用コネクタの防水性が低下する虞がある。そこで、各バスバーの一部を一次成形部で個別に覆う一次成形によって中子を複数成形し、この複数の中子を横並びに接触させた状態で二次成形金型内にセットして、一次成形部を更に二次成形部によって覆うことで、成形樹脂部内にボイドが発生することを抑制することが検討されている。
【0005】
しかしながら、中子を二次成形金型内にセットし、二次成形金型内に成形樹脂を射出すると、成形樹脂の射出圧の影響でバスバーの軸線を中心に中子が回転し、中子が位置ずれした状態で二次成形部が成形される虞がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、各中子が位置ずれすることを抑制すると共に、成形樹脂部内にボイドが発生することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、機器に設けられた機器側端子に接続される複数の金属製の導電体を合成樹脂からなる成形樹脂部によって一体に成形してなる機器用コネクタであって、前記導電体が一次成形部と一体に成形されてなる複数の中子と、前記機器に取り付け固定される金属板と、互いに接触した状態に並べた前記複数の中子と前記金属板とを一体に成形する二次成形部とを備え、前記成形樹脂部は、前記一次成形部と前記二次成形部とから構成されており、隣り合う一対の前記中子間には、突当部が設けられており、隣り合う一対の前記中子は、前記突当部を介して、成形樹脂の射出方向を含む二以上の方向に互いに接触するところに特徴を有する。
【0008】
このような構成の機器用コネクタによると、成形樹脂部を、一次成形部と二次成形部とに分けて成形することができるので、一回の成形で成形樹脂部が厚肉に形成されて内部にボイドが発生することを抑制することができる。また、一次成形部を更に分割して成形しているので、ボイドが発生することを更に抑制することができる。また、隣り合う中子の突当部同士が少なくとも二方向に当たりあうことで、中子が回転するなどして位置ずれすることを抑制することができる。これにより、各導電体を正規の位置に位置決めした状態で二次成形部を成形することができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が望ましい。
前記突当部において互いに接触する部分は、前記射出方向と交差する第一交差面と、前記射出方向に延びる第二交差面とによって構成されており、前記二次成形部を成形する成形樹脂が二次成形金型内に射出された際に、隣り合う一対の前記中子における前記第一交差面同士が互いに面接触すると共に、前記第二交差面同士が互いに面接触する構成としてもよい。
このような構成によると、複雑な構造をした突当部を設けることなく、第一交差面を互いに面接触させると共に、第二交差面を互いに面接触させるだけで、成形樹脂の射出圧によって各中子が位置ずれすることを抑制することができる。
【0010】
前記突当部において互いに接触する部分は、第一交差面と第二交差面とを連結することでクランク状に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、各中子を二次成形金型内にセットする際に、凹凸嵌合などして突当部を互いに嵌合させることなく、各中子をセットすることができ、中子の組み付け工程を簡素化することができる。また、一次成形部を成形する一次成形金型を簡素化することができ、一次成形金型の製造コストを低減させることができる。
【0011】
隣り合う一対の前記中子間には、前記二次成形部を成形する成形樹脂が進入可能な樹脂進入空間を形成しつつ前記突当部が形成されている構成としてもよい。
複数の中子を、二次成形部を成形する金型内に隙間なく接触させてセットすると、一次成形部に、中子の並び方向に延びる直線部分が形成される。そのため、一次成形部の直線部分を覆う二次成形部の長さ寸法が大きくなり、その収縮量も大きくなってしまう。そして、二次成形樹脂が冷えて固まる際に、二次成形部の収縮によって一次成形部が圧潰されてしまう虞がある。その点、上記のような構成によると、一次成形部の直線部分を樹脂進入空間によって複数に分断できるので、一次成形部の各直線部分を個別に覆う二次成形部の長さ寸法をそれぞれ短くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各中子が位置ずれすることを抑制すると共に、成形樹脂部内にボイドが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る端子台の斜視図
【図2】実施形態に係る端子台の正面図
【図3】実施形態に係る端子台の平面図
【図4】実施形態に係る端子台にシールドシェルを装着した状態を示す斜視図
【図5】図2のV−V線断面図
【図6】図3のVI-VI線断面図
【図7】図2のVII-VII線断面図
【図8】三つの中子を接触して並べた状態を示す斜視図
【図9】三つの中子を接触して並べた状態を示す平面図
【図10】三つの中子を離して並べた状態を示す平面図
【図11】左中子の側面図
【図12】上下両金型及びスライド金型によって中子を保持した状態を示す断面図
【図13】上下両金型及びスライド金型内において二次成形部を成形した状態を示す断面図
【図14】変形例1における突当部を上方から見た平面図
【図15】変形例2における突当部を上方から見た平面図
【図16】変形例3における突当部を上方から見た平面図
【図17】変形例4における突当部を上方から見た平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の一実施形態について図1乃至図13を参照して説明する。
本実施形態では、機器用コネクタの一例として、モータ(本発明の「機器」の一例)を内部に収容した図示しない金属製のモータケースに取り付けられる端子台を例示している。この端子台は、図1に示すように、モータケースに取り付け固定される金属板30と、この金属板30に一体に成形されたコネクタハウジング50と、金属板30をその板厚方向に貫通した状態でコネクタハウジング50に保持された三本の導電板10とを備えている。なお、コネクタハウジング50は、本発明の成形樹脂部に対応し、導電板10は、本発明の導電体に対応している。
【0015】
導電板10の一端は、モータケースの内部に設けられた複数の図示しない機器側バスバーにボルト締結されることで電気的に接続される。一方、インバータなどの電力を供給する電源供給装置には、モータケースに向けて複数の電線が配設されており、これらの電線の端末部には、図示しない電線側コネクタが設けられている。この電線側コネクタの内部には、電線の端末に接続された電線側端子が設けられており、この電線側端子が導電板10の他端にボルト締結されることで電気的に接続される。尚、以下の説明において、上下方向とは図2における上下方向を基準とし、左右方向とは図2における左右方向を基準として説明する。
【0016】
各導電板10は導電性の良い金属板をプレス加工して所定の形状に打ち抜いた後、図7に示すように、所定の曲げ加工を施すことにより形成されている。導電板10は、この導電板10の主体部分を構成する端子主体部11と、端子主体部11の上端から前方に向かって延出された電線側締結部12と、端子主体部の下端部に設けられた機器側締結部13とを備えて構成されている。端子主体部11は、電線側締結部12に比べて長めに形成されている。
三本の導電板10は、図2に示すように、左右方向に並んで配置されている。また、端子主体部11は、その途中位置において左右方向に僅かにクランク状に屈曲した形態をなしている。電線側締結部12および機器側締結部13には、図示しない締結ボルトが挿通可能なボルト挿通孔14がそれぞれ形成されている。
【0017】
三本の導電板10のうち中央に配された導電板10Aの端子主体部11は、図7に示すように、上下方向に延びるほぼフラットな形状とされている。三本の導電板10のうち左右両側に位置する両導電板10B,10Bの両端子主体部11,11はそれぞれ、図11に示すように、端子主体部11の上下方向略中央部から電線側締結部12と対向するように前方に向かって屈曲された折り返し部15を有し、この折り返し部15の前端が電線側締結部12の前端とほぼ同じ位置で下方に向かって屈曲した形状とされている。
【0018】
金属板30は、金属製の板材を母材としてその板材の板厚方向に貫通して形成された開口部31を有している。コネクタハウジング50は開口部31を上下方向に貫通する配置で金属板30と一体に成形され、金属板30の上側に配された電線側嵌合部51と、金属板30の高さ位置に配されて側方に張り出す板状をなすフランジ52と、金属板30の下側に配された機器側嵌合部53とを備えて構成されている。
【0019】
電線側嵌合部51は、図1に示すように、左右方向に横長な箱形状をなし、上方に開口する上端開口51Bと前方に向かって開口する前端開口51Aとを有している。図示しない電線側コネクタは、電線側嵌合部51の前端開口51Aを通って電線側嵌合部51に嵌合可能となっている。
【0020】
電線側嵌合部51の内部には、図2に示すように、3つのナット収容部55が左右方向に並んで形成されている。この3つのナット収容部55は、それぞれ前方および上方に開口する形態とされている。さらに、3つのナット収容部55は、前端開口51Aを通して一括して前方に臨んで配置され、かつ、上端開口51Bを通して一括して上方に臨んで配置されている。ナット収容部55には、ナットNの軸線が上下方向となるように、前端開口51Aを通して前方から圧入されたナットNが収容されている。
【0021】
導電板10の電線側締結部12は、図1および図2に示すように、ナット収容部55の上端開口を塞ぐように配置されている。また、各導電板10は、図7に示すように、開口部31を貫通する形態で配置され、電線側締結部12が電線側嵌合部51内においてボルト挿通孔14の周辺部を前方および後方に臨ませた状態で配置されている一方、機器側締結部13が機器側嵌合部53の下端部にてボルト挿通孔14の周辺部を後方に臨ませた状態でコネクタハウジング50に保持されている。各電線側締結部12は、電線側嵌合部51の上端開口51Bを通して外部に臨んでいる。すなわち、電線側嵌合部12の上端開口51Bはボルト締結作業を行うために工具などを挿入するサービスホールであって、電線側締結部12に電線側端子を重ね合わせ、上端開口51Bから内部に工具を挿入してナットNに対して締結ボルトを螺合することで、導電板10と電線側端子とが電気的に接続されるようになっている。尚、電線側嵌合部51の上端開口51Bには、ボルト締結後に図示しないサービスカバーが装着されるようになっており、これにより上端開口51Bが塞がれるようになっている。
【0022】
ナット収容部55の下方には、ナットNに締結ボルトを締結した際に、ナットNを貫通した締結ボルトの先端部分を逃がす逃がし凹部56が連設されている。逃がし凹部56は、ナット収容部55よりも左右方向に幅狭に形成されており、後述するスライド金型92によってナット収容部55と一体に成形される。
【0023】
また、電線側嵌合部51には、図4に示すように、その後面以外を覆う金属製のシールドシェル80が装着される。このシールドシェル80は、導電性の良い金属板をプレス加工して所定の形状に打ち抜いた後、所定の曲げ加工を施すことにより形成されている。シールドシェル80は、電線側コネクタのシールド導電路を一括して覆うように設けられた編組線をかしめリングとの間でかしめ付ける横長の円筒状をなす編組固定部81と、シールドシェル80を金属板30に固定すると共に、シールドシェル80と金属板30とを電気的に接続する固定片82とを備えて構成されている。
【0024】
フランジ52は、金属板30の外周縁部に至らない範囲で金属板30と一体に成形されているため、金属板30の外周縁部が露出した状態となっている。また、フランジ52における電線側嵌合部51側の電線側フランジ52Aは、左右方向及び後方に広がる形状をなし、機器側嵌合部53側の機器側フランジ52Bは、金属板30における機器側嵌合部53側の面をほぼ覆うように形成されている。
【0025】
開口部31は、略台形形状をなしている。また、開口部31内には、三本の導電板10のうち左右両側の導電板10の折り返し部15が配された状態となっている。一方、電線側嵌合部51の下端部から機器側嵌合部53の上端部付近は、図5乃至図7に示すように、樹脂層が厚肉に形成された厚肉部57とされている。すなわち、この厚肉部57の内部において、複雑な形状をなす三本の導電板10が金属板30の開口部31を貫通して配された状態となっている。
【0026】
また、金属板30の外周縁部には、複数の取付孔32が設けられており、この取付孔32に図示しない固定ボルトを挿通させて、機器のケースに締め付けることで、端子台をモータケースに取り付け固定するようになっている。
【0027】
機器側嵌合部53は、端子台がモータケースに固定された際に、モータケースの内側に収容されるようになっている。また、機器側嵌合部53には、図1に示すように、3つのナット収容部58が形成されている。これらのナット収容部58は、中央に位置するナット収容部58が他のナット収容部58よりも後方に引っ込んだ配置で設けられている。機器側嵌合部53のナット収容部58では、電線側嵌合部51のナット収容部54と同様に、ナットNに対して締結ボルトを螺合することで、導電板10と機器側バスバーとが電気的に接続されるようになっている。こうして、電線側端子と機器側バスバーとが導電板10を中継端子として電気的に接続される。
【0028】
さて、コネクタハウジング50は、一次成形によって三本の導電板10と一体に成形される合成樹脂製の一次成形部61と、二次成形によって一次成形部61と一体に成形される合成樹脂製の二次成形部70とから構成され、二回に分割して成形されている。
【0029】
一次成形によって成形される一次成形品60は、三本の導電板10と、三本の導電板10における端子主体部11の一部を覆う合成樹脂製の一次成形部61とを備えて構成されている。三本の導電板10は、図8及び図9に示すように、左右方向に等間隔に並んだ状態で一次成形部61に保持されている。
【0030】
一次成形部61は、図8に示すように、大まかには左右方向の横長な平面視略方形状のブロック状をなし、各導電板10の端子主体部11における上下方向略中央部を全周に亘って覆っている。また、中央に位置する導電板10Aは、一次成形部61の後方部分において、端子主体部11が上下方向に貫通した状態で覆われており、左右方向両側に位置する導電板10Bは、図11に示すように、一次成形部61の後方部分において端子主体部11が覆われると共に、一次成形部61の下方部分において折り返し部15が覆われている。換言すると、一次成形部61は、図1及び図11に示すように、各導電板10の端子主体部11においてクランク状に屈曲した部分を覆った形態をなし、この覆った部分は、左方向から射出された成形樹脂の射出圧を受けやすい構成とされている。なお、各導電板10の端子主体部11における一次成形部61に覆われた部分の下方には、接着剤を付着させた封止部11Aが設けられており、二次成形部70を成形したときに、二次成形部70と密着してコネクタハウジング50の内部に水などが浸入することを防止する。
【0031】
また、一次成形部61において左右方向に直線的に延びる前端面62及び後端面63には、図9および図10に示すように、二次成形部70を成形する際に、成形樹脂が進入可能な樹脂進入空間64が前後方向(導電板10の並び方向と交差する方向)に延びて形成されている。この樹脂進入空間64は平面視略矩形状をなし、一次成形部61における隣り合う導電板10の間と、一次成形部61において左側導電板10Bに対応する部分と、一次成形部61の前端面において中央に位置する導電板10Aに対応する部分とに形成されている。また、隣り合う導電板10の間に設けられた樹脂進入空間64は、導電板10に対応して設けられた樹脂進入空間64に比べて前後方向に大きく延びて形成されている。また、隣り合う導電板10の間に設けられた樹脂進入空間64は、樹脂進入空間64の奥端部に一次成形部61の前後方向略中央部分(後述する突当部66)を残して形成されている。すなわち、一次成形品60の前端面62における左右方向に延びる直線部分は、図9に示すように、樹脂進入空間64によって分断された結果、左右方向に連続して延びる各直線部分62A,62B,62C,62D,62Eによって構成されている。したがって、左右方向に連続して延びる各直線部分62A,62B,62C,62D,62Eの長さ寸法は、一次成形品60の前端面62を樹脂進入空間64によって分断しない場合の左右方向に連続して延びる直線部分の長さ寸法よりも短く形成されている。
【0032】
また、一次成形品60の後端面63における左右方向に延びる直線部分も、前端面62と同様に、樹脂進入空間64によって分断された結果、左右方向に連続して延びる各直線部分63A,63B,63Cによって構成されており、左右方向に連続して延びる各直線部分63A,63B,63Cの長さ寸法は、一次成形品60の後端面63を樹脂進入空間64によって分断しない場合の左右方向に連続して延びる直線部分の長さ寸法よりも短く形成されている。
【0033】
また、一次成形品60は、図9に示すように、三つの中子65,65,65を左右方向に接触させて構成されている。
【0034】
各中子65,65,65は、隣り合う導電板10,10間に設けられた樹脂進入空間64を境に分割可能に構成されており、隣り合う中子65,65同士は樹脂進入空間64の奥端部に形成された突当部66によって左右方向に接触した状態となっている。換言すると、隣り合う中子65,65同士は、突当部66を介して左右方向に接触している。
【0035】
突当部66は、左側に位置する中子65の一次成形部61から右側に向かって延びる第一繋ぎ部67と、右側に位置する中子65の一次成形部61から左側に向かって延びる第二繋ぎ部68とによって構成されている。
【0036】
各繋ぎ部67,68は、射出方向(左右方向)と直交し、且つ、左右方向にずれて配置された二つの第一面(本発明の「第一交差面」の一例)66Aと、二つの第一面66A,66Aの間に位置して第一面66Aと直交する第二面(本発明の「第二交差面」の一例)66Bとを有し、二つの第一面66A,66Aと第二面66Bとはクランク状に連結されている。また、繋ぎ部67の二つの第一面66A,66Aと繋ぎ部68の二つの第一面66A,66Aとは射出方向に面接触し、繋ぎ部67の第二面66Bと繋ぎ部68の第二面66Bとは射出方向と直交する方向に面接触する。すなわち、各繋ぎ部67,68において互いに面接触する部分は、図9に示すように、二つの第一面66Aと第二面66Bとを連結したクランク状に形成されており、隣り合う中子65,65同士は、前後左右の二方向に互いに面接触した状態となっている。
【0037】
各中子65,65,65の上部には、図8に示すように、左右方向に対向すると共に、上方に向かって立ち上がる一対の挟持部69,69が設けられている。この一対の挟持部69は、前後方向に延びて形成されており、二次成形をする際に、コネクタハウジング50のナット収容部55及び逃がし凹部56を共に成形するスライド金型92を左右方向両側から挟持するようになっている。また、一対の狭持部69,69の間には、両狭持部69,69の下端部を連結する底壁56Aが設けられている。この底壁56Aからナット収容部55の上方に配置された電線側締結部12までの長さ寸法は、コネクタハウジング50におけるナット収容部55と逃がし凹部56との高さ寸法を合わせた長さと同じに設定されており、電線側締結部12と底壁56Aとは、二次成形をする際に、スライド金型92を上下方向両側から挟持するようになっている。
【0038】
二次成形によって成形される二次成形部70は、図5および図6に示すように、金属板30の開口部31内に一次成形品60の一次成形部61を前後方向に貫通させた状態で成形され、一次成形部61と共に、前記のコネクタハウジング50を構成する。二次成形の際、二次成形部70に成形される溶融した成形樹脂は、一次成形品60の樹脂進入空間64に進入すると共に、金属板30の上下両面に回り込み、一次成形品60と金属板30とを一体に成形する。すなわち、コネクタハウジング50の厚肉部57内に一次成形品60の一次成形部61を配し、コネクタハウジング50において最も厚肉である厚肉部57を一次成形部61と二次成形部70とに分割して成形することで、コネクタハウジング50の厚肉部57内にボイドが形成されることを抑制している。これにより、ボイドに起因してコネクタハウジング50にクラックが発生し、端子台の防水性が低下することを防ぐことができる。更に、一次成形品60は、導電板10毎に三つに分割して形成されているので、一次成形部61内にボイドが発生することを更に抑制することができる。
【0039】
本実施形態の端子台は上記のような構造であって、続いて、二次成形部70の製造方法とその作用効果について説明する。
まず、二次成形用の上下方向に型開きする上下両金型90,91の下型91に各中子65,65,65を各突当部66にて面接触させた状態で左右方向に並べてセットする。このとき、隣り合う中子65,65は、クランク状をなす各繋ぎ部67,68を前後左右に面接触させるだけで下型91に中子65をセットすることができるので、繋ぎ部同士を凹凸嵌合などして互いに嵌合させる場合に比べて、下型91に中子65を組み付ける工程を簡素化することができる。また、各繋ぎ部67,68を凹凸に成形する場合に比べて、一次成形部61を成形する金型を簡素化することができ、一次成形用の金型の製造コストを低減させることができる。
【0040】
下型91に全ての中子65がセットされたところで、図13に示すように、各中子65,65,65における一対の狭持部69,69と、電線側締結部12と、底壁56Aとによって囲まれた空間に前方からスライド金型92を挿入すると共に、上下両金型90,91によって全ての中子65を上下方向両側から挟み付けるように型締めする。このとき、スライド金型92を一対の狭持部69,69によって左右方向両側から挟持するように組み付けると共に、電線側締結部12及び底壁56Aによって上下方向両側から挟持するように組み付ける。詳細には、スライド金型92は、図12および図13に示すように、ナット収容部成形部93Aと、ナット収容部成形部93Aよりも左右方向に幅狭な逃がし凹部成形部93Bとから構成される三本の成形ピン93を備えており、逃がし凹部成形部93Bが一次成形部61の一対の狭持部69,69によって左右方向両側から挟持されるように組み付けられる。なお、上下両金型90,91及びスライド金型92が本発明の二次成形金型に対応している。
【0041】
次に、上下両金型90,91の側方に設けられた図示しないゲートから例えば図13における紙面奥側から手前側に向かって溶融した成形樹脂を射出して二次成形部70を成形し、図13に示すように、コネクタハウジング50を成形する。このとき、各中子65,65,65における一次成形部61は、その左側面によって成形樹脂を受け、各中子65,65,65は、図9に示すように、成形樹脂の射出圧の影響により成形樹脂の射出方向X1や導電板10の軸線を中心として反時計回りに回転する方向X2に移動しようとする。ところが、本実施形態によると、各中子65,65,65は突当部66(第一面66A)によって相互に面接触状態で連結されていることから、全ての中子65が一体となることで、成形樹脂の射出圧に対抗し、各中子65,65,65が射出方向に位置ずれすることを抑制することができる。また、X2方向とは逆の方向である時計回りに回転する力に対しても、突当部66(第二面66B)が前後方向に面接触することで、導電板10の軸心を中心として時計回りに回転する力を規制し、各中子65,65,65が位置ずれすることを抑制することができるようになっている。
【0042】
更に、各中子65,65,65は、一対の狭持部69,69と、電線側締結部12及び底壁56Aとによって、上下左右にスライド金型92を狭持しているので、射出方向に対して位置ずれすることを更に抑制すると共に、上下方向に対しても各中子65,65,65が位置ずれすることを抑制することができるようになっている。これにより、各中子65,65,65が位置ずれすることに起因して、各導電板10が位置ずれすることを抑制することができる。なお、各中子65,65,65の一次成形部61における一対の狭持部69,69は、図6に示すように、二次成形部70と共に、コネクタハウジング50の逃がし凹部56における互いに対向する一対の内壁56B,56Bを形成するようになっている。
【0043】
以上のように、成形された二次成形部70は、冷却されることで硬化し、一次成形部61と共に、コネクタハウジング50を形成する。ところで、この冷却過程において、二次成形部70は、一次成形部61を覆った部分を押し潰すように硬化収縮する。しかしながら、本実施形態では、一次成形部61の前後端面62,63における直線部分を樹脂進入空間64によって分断し、各中子65の各直線部分62A,62B,62C,62D,62E,63A,63B,63Cを個別に覆う二次成形部70の長さ寸法を短く成形しているので、一次成形部に樹脂進入空間64が形成されていない場合に比べて、各中子65,65,65の各直線部分62A,62B,62C,62D,62E,63A,63B,63Cを個別に覆う二次成形部70の収縮量を小さくすることできる。これにより、一次成形部61が二次成形部70によって圧潰されることを抑制することができる。また、隣り合う中子65,65の間には、前後方向に延びる樹脂進入空間64が、他の部分に比べて大きく形成されているので、一次成形部61を更に効果的に分断し、二次成形部70における硬化収縮の影響を更に抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、二次成形部70を成形する際に、スライド金型92における逃がし凹部成形部93Bを一対の挟持部69,69が挟持するので、ナット収容部55を形成するナット収容部成形部93Aを狭持する一対の挟持部を設ける場合に比べて、一次成形部61の左右方向の幅寸法を短くすることができ、一次成形部61を左右方向に肉厚にすることを抑制することができる。これにより、一次成形部61内にボイドができることを更に抑制することができる。
【0045】
<変形例1>
次に、上記実施形態における突当部66の変形例1について、図14を参照して説明する。
変形例1は、上記実施形態における突当部66の第一繋ぎ部67及び第二繋ぎ部68の形状を変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0046】
変形例1における隣り合う中子90,90間には樹脂進入空間64が形成されておらず、突当部91の第一繋ぎ部92および第二繋ぎ部93における全ての第一面91Aが一次成形部61の前後両端面62,63まで延びて形成されている。したがって、第一面91Aの前後方向の長さ寸法が短い場合に比べて、隣り合う中子90,90同士が左右方向に接触する面積が大きくすることができ、隣り合う中子90をより大きな面積で連結させて全ての中子90を一体とすることができる。これにより、各中子90が成形樹脂の射出方向に位置ずれすることをより抑制することができる。
【0047】
<変形例2>
次に、上記実施形態における突当部66の変形例2について、図15を参照して説明する。
変形例2は、上記実施形態における突当部66の第一繋ぎ部67及び第二繋ぎ部68の形状を変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0048】
変形例2における突当部94の第一繋ぎ部95及び第二繋ぎ部96は、その互いに面接触する部分が櫛刃形状に形成されており、左右方向にずれて配置された複数の第一面94Aと、第一面94Aの間に連結して設けられた複数の第二面94Bとによって構成されている。第一繋ぎ部95と第二繋ぎ部96とは凹凸嵌合されるようになっており、各中子65,65,65が成形樹脂の射出圧によって、成形樹脂の射出方向は勿論、時計回り又は反時計回りのどちらに回転する場合においても位置ずれすることを抑制することができる。
【0049】
<変形例3>
次に、上記実施形態における突当部66の変形例3について、図16を参照して説明する。
変形例3は、上記実施形態における突当部66の第一繋ぎ部67及び第二繋ぎ部68の形状を変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0050】
変形例3における突当部97の第一繋ぎ部98及び第二繋ぎ部99は、その互いに面接触する部分が成形樹脂の射出方向と直交する第一面97Aと、第一面97Aと直交する第二面97Bとによってどちらも凸状に形成されている。第一繋ぎ部98と第二繋ぎ部99とは、互いの凸状部分を前後左右にクランク状に面接触させるようにして突当部97を構成し、隣り合う中子65,65を突当部97を介して接触させ、各中子65,65,65が成形樹脂の射出圧によって、射出方向や時計回り方向に位置ずれしないようにすることができる。また、上記実施形態と同様、二次成形用の下型91に各中子65,65,65をセットする際に、第一繋ぎ部98及び第二繋ぎ部99を前後左右に面接触させるだけで中子65をセットすることができ、組み付ける工程を簡素化することができる。
【0051】
<変形例4>
次に、上記実施形態における突当部66の変形例4について、図17を参照して説明する。
変形例4は、上記実施形態における突当部66の第一繋ぎ部67及び第二繋ぎ部68の形状を変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0052】
変形例4における突当部100の第一繋ぎ部101及び第二繋ぎ部102は、その互いに面接触する部分が成形樹脂の射出方向と交差する右下がりに傾斜した第一面100Aと、この第一面100Aと交差して、且つ、射出方向と交差する右上がりに傾斜した第二面100Bとを有しており、第一繋ぎ部101が略三角状に突出した形態をなし、第二繋ぎ部102が略三角状に凹んだ形状をなしている。第一繋ぎ部101と第二繋ぎ部102とは凹凸嵌合されることで、互いに斜め方向に面接触し、各中子65,65,65が成形樹脂の射出圧によって、成形樹脂の射出方向は勿論、時計回り又は反時計回りのどちらに回転する場合においても位置ずれすることを抑制することができる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、隣り合う中子65,65を一つの突当部によって接触させた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、複数の突当部によって隣り合う中子間を接触させてもよい。
(2)上記実施形態では、シールドシェル80を備えた端子台として構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、シールドシェルを不要とする端子台に対しても適用できる。
【0054】
(3)上記実施形態では、コネクタハウジング50を金属板30の開口部31内に一次成形部61を貫通させて構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、金属板30の開口部31内に一次成形部61を貫通させずに構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10:導電板(導電体)
30:金属板
50:コネクタハウジング(成形樹脂部)
61:一次成形部
64:樹脂進入空間
65,90:中子
66,91,94,97,100:突当部
66A,91A,94A,97A,100A:第一面(第一交差面)
66B,91B,94B,97B,100B:第二面(第二交差面)
70:二次成形部
90:上型(二次成形金型)
91:下型(二次成形金型)
92:スライド金型(二次成形金型)
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド車などに搭載されたモータなどの機器に接続される機器用コネクタとして、例えば、特許文献1記載のものが知られている。この機器用コネクタは、機器に設けられた機器側端子と電力供給用の電線に設けられた電線側端子とを接続する複数の金属製のバスバーと、これらのバスバーを覆う成形樹脂部とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−32500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の機器用コネクタにおいては、複雑な形状に屈曲した複数のバスバーを並べた状態でインサート成形されているため、成形樹脂部の型抜き構造が複雑となり、成形樹脂部に対して適切な肉抜きを行うことができない。そのため、成形樹脂部の厚肉部にボイド(微小な空隙)が発生する虞があり、このボイドに起因してクラックが生じ、機器用コネクタの防水性が低下する虞がある。そこで、各バスバーの一部を一次成形部で個別に覆う一次成形によって中子を複数成形し、この複数の中子を横並びに接触させた状態で二次成形金型内にセットして、一次成形部を更に二次成形部によって覆うことで、成形樹脂部内にボイドが発生することを抑制することが検討されている。
【0005】
しかしながら、中子を二次成形金型内にセットし、二次成形金型内に成形樹脂を射出すると、成形樹脂の射出圧の影響でバスバーの軸線を中心に中子が回転し、中子が位置ずれした状態で二次成形部が成形される虞がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、各中子が位置ずれすることを抑制すると共に、成形樹脂部内にボイドが発生することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、機器に設けられた機器側端子に接続される複数の金属製の導電体を合成樹脂からなる成形樹脂部によって一体に成形してなる機器用コネクタであって、前記導電体が一次成形部と一体に成形されてなる複数の中子と、前記機器に取り付け固定される金属板と、互いに接触した状態に並べた前記複数の中子と前記金属板とを一体に成形する二次成形部とを備え、前記成形樹脂部は、前記一次成形部と前記二次成形部とから構成されており、隣り合う一対の前記中子間には、突当部が設けられており、隣り合う一対の前記中子は、前記突当部を介して、成形樹脂の射出方向を含む二以上の方向に互いに接触するところに特徴を有する。
【0008】
このような構成の機器用コネクタによると、成形樹脂部を、一次成形部と二次成形部とに分けて成形することができるので、一回の成形で成形樹脂部が厚肉に形成されて内部にボイドが発生することを抑制することができる。また、一次成形部を更に分割して成形しているので、ボイドが発生することを更に抑制することができる。また、隣り合う中子の突当部同士が少なくとも二方向に当たりあうことで、中子が回転するなどして位置ずれすることを抑制することができる。これにより、各導電体を正規の位置に位置決めした状態で二次成形部を成形することができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が望ましい。
前記突当部において互いに接触する部分は、前記射出方向と交差する第一交差面と、前記射出方向に延びる第二交差面とによって構成されており、前記二次成形部を成形する成形樹脂が二次成形金型内に射出された際に、隣り合う一対の前記中子における前記第一交差面同士が互いに面接触すると共に、前記第二交差面同士が互いに面接触する構成としてもよい。
このような構成によると、複雑な構造をした突当部を設けることなく、第一交差面を互いに面接触させると共に、第二交差面を互いに面接触させるだけで、成形樹脂の射出圧によって各中子が位置ずれすることを抑制することができる。
【0010】
前記突当部において互いに接触する部分は、第一交差面と第二交差面とを連結することでクランク状に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、各中子を二次成形金型内にセットする際に、凹凸嵌合などして突当部を互いに嵌合させることなく、各中子をセットすることができ、中子の組み付け工程を簡素化することができる。また、一次成形部を成形する一次成形金型を簡素化することができ、一次成形金型の製造コストを低減させることができる。
【0011】
隣り合う一対の前記中子間には、前記二次成形部を成形する成形樹脂が進入可能な樹脂進入空間を形成しつつ前記突当部が形成されている構成としてもよい。
複数の中子を、二次成形部を成形する金型内に隙間なく接触させてセットすると、一次成形部に、中子の並び方向に延びる直線部分が形成される。そのため、一次成形部の直線部分を覆う二次成形部の長さ寸法が大きくなり、その収縮量も大きくなってしまう。そして、二次成形樹脂が冷えて固まる際に、二次成形部の収縮によって一次成形部が圧潰されてしまう虞がある。その点、上記のような構成によると、一次成形部の直線部分を樹脂進入空間によって複数に分断できるので、一次成形部の各直線部分を個別に覆う二次成形部の長さ寸法をそれぞれ短くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各中子が位置ずれすることを抑制すると共に、成形樹脂部内にボイドが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る端子台の斜視図
【図2】実施形態に係る端子台の正面図
【図3】実施形態に係る端子台の平面図
【図4】実施形態に係る端子台にシールドシェルを装着した状態を示す斜視図
【図5】図2のV−V線断面図
【図6】図3のVI-VI線断面図
【図7】図2のVII-VII線断面図
【図8】三つの中子を接触して並べた状態を示す斜視図
【図9】三つの中子を接触して並べた状態を示す平面図
【図10】三つの中子を離して並べた状態を示す平面図
【図11】左中子の側面図
【図12】上下両金型及びスライド金型によって中子を保持した状態を示す断面図
【図13】上下両金型及びスライド金型内において二次成形部を成形した状態を示す断面図
【図14】変形例1における突当部を上方から見た平面図
【図15】変形例2における突当部を上方から見た平面図
【図16】変形例3における突当部を上方から見た平面図
【図17】変形例4における突当部を上方から見た平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の一実施形態について図1乃至図13を参照して説明する。
本実施形態では、機器用コネクタの一例として、モータ(本発明の「機器」の一例)を内部に収容した図示しない金属製のモータケースに取り付けられる端子台を例示している。この端子台は、図1に示すように、モータケースに取り付け固定される金属板30と、この金属板30に一体に成形されたコネクタハウジング50と、金属板30をその板厚方向に貫通した状態でコネクタハウジング50に保持された三本の導電板10とを備えている。なお、コネクタハウジング50は、本発明の成形樹脂部に対応し、導電板10は、本発明の導電体に対応している。
【0015】
導電板10の一端は、モータケースの内部に設けられた複数の図示しない機器側バスバーにボルト締結されることで電気的に接続される。一方、インバータなどの電力を供給する電源供給装置には、モータケースに向けて複数の電線が配設されており、これらの電線の端末部には、図示しない電線側コネクタが設けられている。この電線側コネクタの内部には、電線の端末に接続された電線側端子が設けられており、この電線側端子が導電板10の他端にボルト締結されることで電気的に接続される。尚、以下の説明において、上下方向とは図2における上下方向を基準とし、左右方向とは図2における左右方向を基準として説明する。
【0016】
各導電板10は導電性の良い金属板をプレス加工して所定の形状に打ち抜いた後、図7に示すように、所定の曲げ加工を施すことにより形成されている。導電板10は、この導電板10の主体部分を構成する端子主体部11と、端子主体部11の上端から前方に向かって延出された電線側締結部12と、端子主体部の下端部に設けられた機器側締結部13とを備えて構成されている。端子主体部11は、電線側締結部12に比べて長めに形成されている。
三本の導電板10は、図2に示すように、左右方向に並んで配置されている。また、端子主体部11は、その途中位置において左右方向に僅かにクランク状に屈曲した形態をなしている。電線側締結部12および機器側締結部13には、図示しない締結ボルトが挿通可能なボルト挿通孔14がそれぞれ形成されている。
【0017】
三本の導電板10のうち中央に配された導電板10Aの端子主体部11は、図7に示すように、上下方向に延びるほぼフラットな形状とされている。三本の導電板10のうち左右両側に位置する両導電板10B,10Bの両端子主体部11,11はそれぞれ、図11に示すように、端子主体部11の上下方向略中央部から電線側締結部12と対向するように前方に向かって屈曲された折り返し部15を有し、この折り返し部15の前端が電線側締結部12の前端とほぼ同じ位置で下方に向かって屈曲した形状とされている。
【0018】
金属板30は、金属製の板材を母材としてその板材の板厚方向に貫通して形成された開口部31を有している。コネクタハウジング50は開口部31を上下方向に貫通する配置で金属板30と一体に成形され、金属板30の上側に配された電線側嵌合部51と、金属板30の高さ位置に配されて側方に張り出す板状をなすフランジ52と、金属板30の下側に配された機器側嵌合部53とを備えて構成されている。
【0019】
電線側嵌合部51は、図1に示すように、左右方向に横長な箱形状をなし、上方に開口する上端開口51Bと前方に向かって開口する前端開口51Aとを有している。図示しない電線側コネクタは、電線側嵌合部51の前端開口51Aを通って電線側嵌合部51に嵌合可能となっている。
【0020】
電線側嵌合部51の内部には、図2に示すように、3つのナット収容部55が左右方向に並んで形成されている。この3つのナット収容部55は、それぞれ前方および上方に開口する形態とされている。さらに、3つのナット収容部55は、前端開口51Aを通して一括して前方に臨んで配置され、かつ、上端開口51Bを通して一括して上方に臨んで配置されている。ナット収容部55には、ナットNの軸線が上下方向となるように、前端開口51Aを通して前方から圧入されたナットNが収容されている。
【0021】
導電板10の電線側締結部12は、図1および図2に示すように、ナット収容部55の上端開口を塞ぐように配置されている。また、各導電板10は、図7に示すように、開口部31を貫通する形態で配置され、電線側締結部12が電線側嵌合部51内においてボルト挿通孔14の周辺部を前方および後方に臨ませた状態で配置されている一方、機器側締結部13が機器側嵌合部53の下端部にてボルト挿通孔14の周辺部を後方に臨ませた状態でコネクタハウジング50に保持されている。各電線側締結部12は、電線側嵌合部51の上端開口51Bを通して外部に臨んでいる。すなわち、電線側嵌合部12の上端開口51Bはボルト締結作業を行うために工具などを挿入するサービスホールであって、電線側締結部12に電線側端子を重ね合わせ、上端開口51Bから内部に工具を挿入してナットNに対して締結ボルトを螺合することで、導電板10と電線側端子とが電気的に接続されるようになっている。尚、電線側嵌合部51の上端開口51Bには、ボルト締結後に図示しないサービスカバーが装着されるようになっており、これにより上端開口51Bが塞がれるようになっている。
【0022】
ナット収容部55の下方には、ナットNに締結ボルトを締結した際に、ナットNを貫通した締結ボルトの先端部分を逃がす逃がし凹部56が連設されている。逃がし凹部56は、ナット収容部55よりも左右方向に幅狭に形成されており、後述するスライド金型92によってナット収容部55と一体に成形される。
【0023】
また、電線側嵌合部51には、図4に示すように、その後面以外を覆う金属製のシールドシェル80が装着される。このシールドシェル80は、導電性の良い金属板をプレス加工して所定の形状に打ち抜いた後、所定の曲げ加工を施すことにより形成されている。シールドシェル80は、電線側コネクタのシールド導電路を一括して覆うように設けられた編組線をかしめリングとの間でかしめ付ける横長の円筒状をなす編組固定部81と、シールドシェル80を金属板30に固定すると共に、シールドシェル80と金属板30とを電気的に接続する固定片82とを備えて構成されている。
【0024】
フランジ52は、金属板30の外周縁部に至らない範囲で金属板30と一体に成形されているため、金属板30の外周縁部が露出した状態となっている。また、フランジ52における電線側嵌合部51側の電線側フランジ52Aは、左右方向及び後方に広がる形状をなし、機器側嵌合部53側の機器側フランジ52Bは、金属板30における機器側嵌合部53側の面をほぼ覆うように形成されている。
【0025】
開口部31は、略台形形状をなしている。また、開口部31内には、三本の導電板10のうち左右両側の導電板10の折り返し部15が配された状態となっている。一方、電線側嵌合部51の下端部から機器側嵌合部53の上端部付近は、図5乃至図7に示すように、樹脂層が厚肉に形成された厚肉部57とされている。すなわち、この厚肉部57の内部において、複雑な形状をなす三本の導電板10が金属板30の開口部31を貫通して配された状態となっている。
【0026】
また、金属板30の外周縁部には、複数の取付孔32が設けられており、この取付孔32に図示しない固定ボルトを挿通させて、機器のケースに締め付けることで、端子台をモータケースに取り付け固定するようになっている。
【0027】
機器側嵌合部53は、端子台がモータケースに固定された際に、モータケースの内側に収容されるようになっている。また、機器側嵌合部53には、図1に示すように、3つのナット収容部58が形成されている。これらのナット収容部58は、中央に位置するナット収容部58が他のナット収容部58よりも後方に引っ込んだ配置で設けられている。機器側嵌合部53のナット収容部58では、電線側嵌合部51のナット収容部54と同様に、ナットNに対して締結ボルトを螺合することで、導電板10と機器側バスバーとが電気的に接続されるようになっている。こうして、電線側端子と機器側バスバーとが導電板10を中継端子として電気的に接続される。
【0028】
さて、コネクタハウジング50は、一次成形によって三本の導電板10と一体に成形される合成樹脂製の一次成形部61と、二次成形によって一次成形部61と一体に成形される合成樹脂製の二次成形部70とから構成され、二回に分割して成形されている。
【0029】
一次成形によって成形される一次成形品60は、三本の導電板10と、三本の導電板10における端子主体部11の一部を覆う合成樹脂製の一次成形部61とを備えて構成されている。三本の導電板10は、図8及び図9に示すように、左右方向に等間隔に並んだ状態で一次成形部61に保持されている。
【0030】
一次成形部61は、図8に示すように、大まかには左右方向の横長な平面視略方形状のブロック状をなし、各導電板10の端子主体部11における上下方向略中央部を全周に亘って覆っている。また、中央に位置する導電板10Aは、一次成形部61の後方部分において、端子主体部11が上下方向に貫通した状態で覆われており、左右方向両側に位置する導電板10Bは、図11に示すように、一次成形部61の後方部分において端子主体部11が覆われると共に、一次成形部61の下方部分において折り返し部15が覆われている。換言すると、一次成形部61は、図1及び図11に示すように、各導電板10の端子主体部11においてクランク状に屈曲した部分を覆った形態をなし、この覆った部分は、左方向から射出された成形樹脂の射出圧を受けやすい構成とされている。なお、各導電板10の端子主体部11における一次成形部61に覆われた部分の下方には、接着剤を付着させた封止部11Aが設けられており、二次成形部70を成形したときに、二次成形部70と密着してコネクタハウジング50の内部に水などが浸入することを防止する。
【0031】
また、一次成形部61において左右方向に直線的に延びる前端面62及び後端面63には、図9および図10に示すように、二次成形部70を成形する際に、成形樹脂が進入可能な樹脂進入空間64が前後方向(導電板10の並び方向と交差する方向)に延びて形成されている。この樹脂進入空間64は平面視略矩形状をなし、一次成形部61における隣り合う導電板10の間と、一次成形部61において左側導電板10Bに対応する部分と、一次成形部61の前端面において中央に位置する導電板10Aに対応する部分とに形成されている。また、隣り合う導電板10の間に設けられた樹脂進入空間64は、導電板10に対応して設けられた樹脂進入空間64に比べて前後方向に大きく延びて形成されている。また、隣り合う導電板10の間に設けられた樹脂進入空間64は、樹脂進入空間64の奥端部に一次成形部61の前後方向略中央部分(後述する突当部66)を残して形成されている。すなわち、一次成形品60の前端面62における左右方向に延びる直線部分は、図9に示すように、樹脂進入空間64によって分断された結果、左右方向に連続して延びる各直線部分62A,62B,62C,62D,62Eによって構成されている。したがって、左右方向に連続して延びる各直線部分62A,62B,62C,62D,62Eの長さ寸法は、一次成形品60の前端面62を樹脂進入空間64によって分断しない場合の左右方向に連続して延びる直線部分の長さ寸法よりも短く形成されている。
【0032】
また、一次成形品60の後端面63における左右方向に延びる直線部分も、前端面62と同様に、樹脂進入空間64によって分断された結果、左右方向に連続して延びる各直線部分63A,63B,63Cによって構成されており、左右方向に連続して延びる各直線部分63A,63B,63Cの長さ寸法は、一次成形品60の後端面63を樹脂進入空間64によって分断しない場合の左右方向に連続して延びる直線部分の長さ寸法よりも短く形成されている。
【0033】
また、一次成形品60は、図9に示すように、三つの中子65,65,65を左右方向に接触させて構成されている。
【0034】
各中子65,65,65は、隣り合う導電板10,10間に設けられた樹脂進入空間64を境に分割可能に構成されており、隣り合う中子65,65同士は樹脂進入空間64の奥端部に形成された突当部66によって左右方向に接触した状態となっている。換言すると、隣り合う中子65,65同士は、突当部66を介して左右方向に接触している。
【0035】
突当部66は、左側に位置する中子65の一次成形部61から右側に向かって延びる第一繋ぎ部67と、右側に位置する中子65の一次成形部61から左側に向かって延びる第二繋ぎ部68とによって構成されている。
【0036】
各繋ぎ部67,68は、射出方向(左右方向)と直交し、且つ、左右方向にずれて配置された二つの第一面(本発明の「第一交差面」の一例)66Aと、二つの第一面66A,66Aの間に位置して第一面66Aと直交する第二面(本発明の「第二交差面」の一例)66Bとを有し、二つの第一面66A,66Aと第二面66Bとはクランク状に連結されている。また、繋ぎ部67の二つの第一面66A,66Aと繋ぎ部68の二つの第一面66A,66Aとは射出方向に面接触し、繋ぎ部67の第二面66Bと繋ぎ部68の第二面66Bとは射出方向と直交する方向に面接触する。すなわち、各繋ぎ部67,68において互いに面接触する部分は、図9に示すように、二つの第一面66Aと第二面66Bとを連結したクランク状に形成されており、隣り合う中子65,65同士は、前後左右の二方向に互いに面接触した状態となっている。
【0037】
各中子65,65,65の上部には、図8に示すように、左右方向に対向すると共に、上方に向かって立ち上がる一対の挟持部69,69が設けられている。この一対の挟持部69は、前後方向に延びて形成されており、二次成形をする際に、コネクタハウジング50のナット収容部55及び逃がし凹部56を共に成形するスライド金型92を左右方向両側から挟持するようになっている。また、一対の狭持部69,69の間には、両狭持部69,69の下端部を連結する底壁56Aが設けられている。この底壁56Aからナット収容部55の上方に配置された電線側締結部12までの長さ寸法は、コネクタハウジング50におけるナット収容部55と逃がし凹部56との高さ寸法を合わせた長さと同じに設定されており、電線側締結部12と底壁56Aとは、二次成形をする際に、スライド金型92を上下方向両側から挟持するようになっている。
【0038】
二次成形によって成形される二次成形部70は、図5および図6に示すように、金属板30の開口部31内に一次成形品60の一次成形部61を前後方向に貫通させた状態で成形され、一次成形部61と共に、前記のコネクタハウジング50を構成する。二次成形の際、二次成形部70に成形される溶融した成形樹脂は、一次成形品60の樹脂進入空間64に進入すると共に、金属板30の上下両面に回り込み、一次成形品60と金属板30とを一体に成形する。すなわち、コネクタハウジング50の厚肉部57内に一次成形品60の一次成形部61を配し、コネクタハウジング50において最も厚肉である厚肉部57を一次成形部61と二次成形部70とに分割して成形することで、コネクタハウジング50の厚肉部57内にボイドが形成されることを抑制している。これにより、ボイドに起因してコネクタハウジング50にクラックが発生し、端子台の防水性が低下することを防ぐことができる。更に、一次成形品60は、導電板10毎に三つに分割して形成されているので、一次成形部61内にボイドが発生することを更に抑制することができる。
【0039】
本実施形態の端子台は上記のような構造であって、続いて、二次成形部70の製造方法とその作用効果について説明する。
まず、二次成形用の上下方向に型開きする上下両金型90,91の下型91に各中子65,65,65を各突当部66にて面接触させた状態で左右方向に並べてセットする。このとき、隣り合う中子65,65は、クランク状をなす各繋ぎ部67,68を前後左右に面接触させるだけで下型91に中子65をセットすることができるので、繋ぎ部同士を凹凸嵌合などして互いに嵌合させる場合に比べて、下型91に中子65を組み付ける工程を簡素化することができる。また、各繋ぎ部67,68を凹凸に成形する場合に比べて、一次成形部61を成形する金型を簡素化することができ、一次成形用の金型の製造コストを低減させることができる。
【0040】
下型91に全ての中子65がセットされたところで、図13に示すように、各中子65,65,65における一対の狭持部69,69と、電線側締結部12と、底壁56Aとによって囲まれた空間に前方からスライド金型92を挿入すると共に、上下両金型90,91によって全ての中子65を上下方向両側から挟み付けるように型締めする。このとき、スライド金型92を一対の狭持部69,69によって左右方向両側から挟持するように組み付けると共に、電線側締結部12及び底壁56Aによって上下方向両側から挟持するように組み付ける。詳細には、スライド金型92は、図12および図13に示すように、ナット収容部成形部93Aと、ナット収容部成形部93Aよりも左右方向に幅狭な逃がし凹部成形部93Bとから構成される三本の成形ピン93を備えており、逃がし凹部成形部93Bが一次成形部61の一対の狭持部69,69によって左右方向両側から挟持されるように組み付けられる。なお、上下両金型90,91及びスライド金型92が本発明の二次成形金型に対応している。
【0041】
次に、上下両金型90,91の側方に設けられた図示しないゲートから例えば図13における紙面奥側から手前側に向かって溶融した成形樹脂を射出して二次成形部70を成形し、図13に示すように、コネクタハウジング50を成形する。このとき、各中子65,65,65における一次成形部61は、その左側面によって成形樹脂を受け、各中子65,65,65は、図9に示すように、成形樹脂の射出圧の影響により成形樹脂の射出方向X1や導電板10の軸線を中心として反時計回りに回転する方向X2に移動しようとする。ところが、本実施形態によると、各中子65,65,65は突当部66(第一面66A)によって相互に面接触状態で連結されていることから、全ての中子65が一体となることで、成形樹脂の射出圧に対抗し、各中子65,65,65が射出方向に位置ずれすることを抑制することができる。また、X2方向とは逆の方向である時計回りに回転する力に対しても、突当部66(第二面66B)が前後方向に面接触することで、導電板10の軸心を中心として時計回りに回転する力を規制し、各中子65,65,65が位置ずれすることを抑制することができるようになっている。
【0042】
更に、各中子65,65,65は、一対の狭持部69,69と、電線側締結部12及び底壁56Aとによって、上下左右にスライド金型92を狭持しているので、射出方向に対して位置ずれすることを更に抑制すると共に、上下方向に対しても各中子65,65,65が位置ずれすることを抑制することができるようになっている。これにより、各中子65,65,65が位置ずれすることに起因して、各導電板10が位置ずれすることを抑制することができる。なお、各中子65,65,65の一次成形部61における一対の狭持部69,69は、図6に示すように、二次成形部70と共に、コネクタハウジング50の逃がし凹部56における互いに対向する一対の内壁56B,56Bを形成するようになっている。
【0043】
以上のように、成形された二次成形部70は、冷却されることで硬化し、一次成形部61と共に、コネクタハウジング50を形成する。ところで、この冷却過程において、二次成形部70は、一次成形部61を覆った部分を押し潰すように硬化収縮する。しかしながら、本実施形態では、一次成形部61の前後端面62,63における直線部分を樹脂進入空間64によって分断し、各中子65の各直線部分62A,62B,62C,62D,62E,63A,63B,63Cを個別に覆う二次成形部70の長さ寸法を短く成形しているので、一次成形部に樹脂進入空間64が形成されていない場合に比べて、各中子65,65,65の各直線部分62A,62B,62C,62D,62E,63A,63B,63Cを個別に覆う二次成形部70の収縮量を小さくすることできる。これにより、一次成形部61が二次成形部70によって圧潰されることを抑制することができる。また、隣り合う中子65,65の間には、前後方向に延びる樹脂進入空間64が、他の部分に比べて大きく形成されているので、一次成形部61を更に効果的に分断し、二次成形部70における硬化収縮の影響を更に抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、二次成形部70を成形する際に、スライド金型92における逃がし凹部成形部93Bを一対の挟持部69,69が挟持するので、ナット収容部55を形成するナット収容部成形部93Aを狭持する一対の挟持部を設ける場合に比べて、一次成形部61の左右方向の幅寸法を短くすることができ、一次成形部61を左右方向に肉厚にすることを抑制することができる。これにより、一次成形部61内にボイドができることを更に抑制することができる。
【0045】
<変形例1>
次に、上記実施形態における突当部66の変形例1について、図14を参照して説明する。
変形例1は、上記実施形態における突当部66の第一繋ぎ部67及び第二繋ぎ部68の形状を変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0046】
変形例1における隣り合う中子90,90間には樹脂進入空間64が形成されておらず、突当部91の第一繋ぎ部92および第二繋ぎ部93における全ての第一面91Aが一次成形部61の前後両端面62,63まで延びて形成されている。したがって、第一面91Aの前後方向の長さ寸法が短い場合に比べて、隣り合う中子90,90同士が左右方向に接触する面積が大きくすることができ、隣り合う中子90をより大きな面積で連結させて全ての中子90を一体とすることができる。これにより、各中子90が成形樹脂の射出方向に位置ずれすることをより抑制することができる。
【0047】
<変形例2>
次に、上記実施形態における突当部66の変形例2について、図15を参照して説明する。
変形例2は、上記実施形態における突当部66の第一繋ぎ部67及び第二繋ぎ部68の形状を変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0048】
変形例2における突当部94の第一繋ぎ部95及び第二繋ぎ部96は、その互いに面接触する部分が櫛刃形状に形成されており、左右方向にずれて配置された複数の第一面94Aと、第一面94Aの間に連結して設けられた複数の第二面94Bとによって構成されている。第一繋ぎ部95と第二繋ぎ部96とは凹凸嵌合されるようになっており、各中子65,65,65が成形樹脂の射出圧によって、成形樹脂の射出方向は勿論、時計回り又は反時計回りのどちらに回転する場合においても位置ずれすることを抑制することができる。
【0049】
<変形例3>
次に、上記実施形態における突当部66の変形例3について、図16を参照して説明する。
変形例3は、上記実施形態における突当部66の第一繋ぎ部67及び第二繋ぎ部68の形状を変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0050】
変形例3における突当部97の第一繋ぎ部98及び第二繋ぎ部99は、その互いに面接触する部分が成形樹脂の射出方向と直交する第一面97Aと、第一面97Aと直交する第二面97Bとによってどちらも凸状に形成されている。第一繋ぎ部98と第二繋ぎ部99とは、互いの凸状部分を前後左右にクランク状に面接触させるようにして突当部97を構成し、隣り合う中子65,65を突当部97を介して接触させ、各中子65,65,65が成形樹脂の射出圧によって、射出方向や時計回り方向に位置ずれしないようにすることができる。また、上記実施形態と同様、二次成形用の下型91に各中子65,65,65をセットする際に、第一繋ぎ部98及び第二繋ぎ部99を前後左右に面接触させるだけで中子65をセットすることができ、組み付ける工程を簡素化することができる。
【0051】
<変形例4>
次に、上記実施形態における突当部66の変形例4について、図17を参照して説明する。
変形例4は、上記実施形態における突当部66の第一繋ぎ部67及び第二繋ぎ部68の形状を変更したものであって、上記実施形態と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、上記実施形態と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0052】
変形例4における突当部100の第一繋ぎ部101及び第二繋ぎ部102は、その互いに面接触する部分が成形樹脂の射出方向と交差する右下がりに傾斜した第一面100Aと、この第一面100Aと交差して、且つ、射出方向と交差する右上がりに傾斜した第二面100Bとを有しており、第一繋ぎ部101が略三角状に突出した形態をなし、第二繋ぎ部102が略三角状に凹んだ形状をなしている。第一繋ぎ部101と第二繋ぎ部102とは凹凸嵌合されることで、互いに斜め方向に面接触し、各中子65,65,65が成形樹脂の射出圧によって、成形樹脂の射出方向は勿論、時計回り又は反時計回りのどちらに回転する場合においても位置ずれすることを抑制することができる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、隣り合う中子65,65を一つの突当部によって接触させた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、複数の突当部によって隣り合う中子間を接触させてもよい。
(2)上記実施形態では、シールドシェル80を備えた端子台として構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、シールドシェルを不要とする端子台に対しても適用できる。
【0054】
(3)上記実施形態では、コネクタハウジング50を金属板30の開口部31内に一次成形部61を貫通させて構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、金属板30の開口部31内に一次成形部61を貫通させずに構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10:導電板(導電体)
30:金属板
50:コネクタハウジング(成形樹脂部)
61:一次成形部
64:樹脂進入空間
65,90:中子
66,91,94,97,100:突当部
66A,91A,94A,97A,100A:第一面(第一交差面)
66B,91B,94B,97B,100B:第二面(第二交差面)
70:二次成形部
90:上型(二次成形金型)
91:下型(二次成形金型)
92:スライド金型(二次成形金型)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に設けられた機器側端子に接続される複数の金属製の導電体を合成樹脂からなる成形樹脂部によって一体に成形してなる機器用コネクタであって、
前記導電体が一次成形部と一体に成形されてなる複数の中子と、
前記機器に取り付け固定される金属板と、
互いに接触した状態に並べた前記複数の中子と前記金属板とを一体に成形する二次成形部とを備え、
前記成形樹脂部は、前記一次成形部と前記二次成形部とから構成されており、
隣り合う一対の前記中子間には、突当部が設けられており、隣り合う一対の前記中子は、前記突当部を介して、成形樹脂の射出方向を含む二以上の方向に互いに接触することを特徴とする機器用コネクタ。
【請求項2】
前記突当部において互いに接触する部分は、前記射出方向と交差する第一交差面と、前記射出方向に延びる第二交差面とによって構成されており、
前記二次成形部を成形する成形樹脂が二次成形金型内に射出された際に、隣り合う一対の前記中子における前記第一交差面同士が互いに面接触すると共に、前記第二交差面同士が互いに面接触することを特徴とする請求項1記載の機器用コネクタ。
【請求項3】
前記突当部において互いに接触する部分は、前記第一交差面と前記第二交差面とを連結することでクランク状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の機器用コネクタ。
【請求項4】
隣り合う一対の前記中子間には、前記二次成形部を成形する成形樹脂が進入可能な樹脂進入空間を形成しつつ前記突当部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の機器用コネクタ。
【請求項1】
機器に設けられた機器側端子に接続される複数の金属製の導電体を合成樹脂からなる成形樹脂部によって一体に成形してなる機器用コネクタであって、
前記導電体が一次成形部と一体に成形されてなる複数の中子と、
前記機器に取り付け固定される金属板と、
互いに接触した状態に並べた前記複数の中子と前記金属板とを一体に成形する二次成形部とを備え、
前記成形樹脂部は、前記一次成形部と前記二次成形部とから構成されており、
隣り合う一対の前記中子間には、突当部が設けられており、隣り合う一対の前記中子は、前記突当部を介して、成形樹脂の射出方向を含む二以上の方向に互いに接触することを特徴とする機器用コネクタ。
【請求項2】
前記突当部において互いに接触する部分は、前記射出方向と交差する第一交差面と、前記射出方向に延びる第二交差面とによって構成されており、
前記二次成形部を成形する成形樹脂が二次成形金型内に射出された際に、隣り合う一対の前記中子における前記第一交差面同士が互いに面接触すると共に、前記第二交差面同士が互いに面接触することを特徴とする請求項1記載の機器用コネクタ。
【請求項3】
前記突当部において互いに接触する部分は、前記第一交差面と前記第二交差面とを連結することでクランク状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の機器用コネクタ。
【請求項4】
隣り合う一対の前記中子間には、前記二次成形部を成形する成形樹脂が進入可能な樹脂進入空間を形成しつつ前記突当部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の機器用コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−195068(P2012−195068A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56337(P2011−56337)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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