説明

機械加工装置

【課題】
各種加工に対応することができる機械加工装置を提供すること。
【解決手段】
ベッド構造6と、被加工物を保持するための被加工物保持機構10と、加工工具を保持するための加工工具保持機構14と、ベッド構造6の第1の部位に設けられた第1の案内支持手段8と、ベッド構造6の第2の部位に設けられた第2の案内支持手段と、を備え、第1の案内支持手段8に被加工物保持機構10(又は加工工具保持機構)が取り換え可能に取り付けられ、第2の案内支持手段に加工工具保持機構(又は被加工物保持機構10が取り換え可能に取り付けられている。また、ベッド構造6の一側面にスライドベース50が上下方向位置調整可能に設けられ、かかるスライドベース50に第2の案内支持手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削などの機械加工するための機械加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工装置としての例えばNC旋盤は、旋盤本体と、旋盤本体に設けられた主軸部と、旋盤本体のベッド構造に第1の軸線方向(主軸部の軸線方向)に移動自在に支持された往復支持テーブルと、この往復支持テーブルに第2の軸線方向(前記主軸部の軸線方向に対して垂直な方向)に移動自在に支持された工具テーブルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。このようなNC旋盤においは、被加工物は主軸部の主軸によって回転駆動されるチャック手段に保持され、主軸によって所定方向に回動され、また刃物などの加工工具は工具テーブルに着脱自在に取り付けられ、被加工物に対して第1及び第2方向に移動され、被加工物及び加工工具の上述した相対的移動によって、加工工具が被加工物に機械加工(例えば、切削加工)を施す。
【0003】
【特許文献1】特開2001−38502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したNC旋盤などの機械加工装置は、従来、独立した加工装置として製作されており、丸棒状加工を行う加工装置としてNC旋盤、平面状加工を行う加工装置としてフライス盤、穴あけ加工を行う加工装置としてドリリング装置などがあり、各種加工装置を並べてラインを構築する場合、各種加工機械の形状、構造及び設置スペースなどの相違に起因して、加工装置間の搬送位置、搬送距離などに細心の注意を払わなければならず、搬送機構が複雑化、大型化する問題がある。また、ラインの工程を変更する場合、特に加工装置の一部を削除したり、それらの順番を入れ替える場合、加工装置の配置変更に伴い搬送機構を最初からやり直す必要があり、その作業が非常に煩雑で、多くの工数を要するという問題がある。加えて、NC旋盤などにおいては、旋盤本体のベッド構造の上面に往復支持テーブルが移動自在に支持され、この往復支持テーブルに工具テーブルが移動自在に支持されているので、これらテーブルに関連する構成が複雑になるとともに、これらテーブルが移動する空間をベッド構造の上側に確保しなければならず、NC旋盤全体が大型化する問題がある。
【0005】
本発明の目的は、各種加工に対応することができる機械加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の機械加工装置は、ベッド構造と、被加工物を保持するための被加工物保持機構と、加工工具を保持するための加工工具保持機構と、前記ベッド構造の第1の部位に設けられた第1の案内支持手段と、前記ベッド構造の第2の部位に設けられた第2の案内支持手段と、を備え、前記第1の案内支持手段に前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構が取り換え可能に取り付けられ、前記第2の案内支持手段に前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構が取り換え可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の機械加工装置では、前記第1の部位は前記ベッド構造の上面であり、前記第1の案内支持機構は前記ベッド構造の上面に第1の方向に延びており、前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構は前記第1の案内支持機構に前記第1の方向に移動自在に支持されており、また前記第2の部位は前記ベッド構造の一側面であり、前記第2の案内支持機構は前記ベッド構造の前記一側面に前記第1の方向に対して実質上垂直な第2の方向に延びており、前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構は前記第2の案内支持機構に前記第2の方向に移動自在に支持されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の機械加工装置では、前記ベッド構造の前記一側面にはスライドベースが配設され、前記スライドベースに前記第2の案内支持手段が設けられており、また前記一側面には、上下方向に延びるキー部材又はキー溝が設けられ、前記スライドベースには、前記キー部材又は前記キー溝に案内されるキー溝又はキー部材が設けられており、前記スライドベースの上下方向の位置を調整することによって、前記第1の案内支持手段に支持された前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構と、前記第2の案内支持手段に支持された前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構との高さを調整することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の機械加工装置は、ベッド構造と、被加工物を保持するための被加工物保持機構と、加工工具を保持するための加工工具保持機構と、前記ベッド構造の上面に設けられた第1の案内支持手段と、前記ベッド構造の一側面に設けられた第2の案内支持手段と、を備え、前記第1の案内支持手段に前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構が取り付けられ、前記第2の案内支持手段に前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構が取り付けられ、前記ベッド構造の前記一側面にはスライドベースが配設され、前記スライドベースに前記第2の案内支持手段が設けられており、また前記一側面には、上下方向に延びるキー部材又はキー溝が設けられ、前記スライドベースには、前記キー部材又は前記キー溝に案内されるキー溝又はキー部材が設けられており、前記スライドベースの上下方向の位置を調整することによって、前記第1の案内支持手段に支持された前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構と、前記第2の案内支持手段に支持された前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構との高さを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の機械加工装置によれば、ベッド構造の第1の部位に設けられた第1の案内支持手段に被加工物保持機構(又は加工工具保持機構)が取り換え可能に取り付けられ、またベッド構造の第2の部位に設けられた第2の案内支持手段を介して加工工具保持手段(又は被加工物保持機構)が取り換え可能に取り付けられるので、各種の被加工物保持機構及び加工工具保持機構を用意し、被加工物保持機構及び加工工具保持機構を適切に組み合わせて第1及び第2の案内支持手段に取り付けることによって、共通のベッド構造を有する加工機本体に各種加工能力、例えば旋盤としての機能、フライス盤としての機能、ドリリング装置としての機能を持たせることができる。このようにベッド構造を共通化することによって、機械加工装置の構成を簡単にすることができ、またその組付作業も共通化してその製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の機械加工装置によれば、被加工物保持機構(又は加工工具保持機構)がベッド構造の上面に設けられた第1の案内支持手段に取り付けられ、加工工具保持機構(又は被加工物保持機構)がベッド構造の一側面に設けられた第2の案内支持手段に取り付けられるので、被加工物保持機構及び加工工具保持機構に関連する構成を簡単にすることができるとともに、これら保持機構の移動のための空間を小さくすることができ、装置全体のコンパクト化を達成することができる。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載の機械加工装置によれば、ベッド構造の一側面にスライドベースが上下方向に位置調整可能に設けられ、このスライドベースに第2の案内支持手段が設けられているので、スライドベースの上下方向の位置を調整することによって、第1の案内支持手段に支持された被加工物保持機構(又は加工工具保持機構)と第2の案内支持手段に支持された加工工具保持機構(又は被加工物保持機構)との上下方向の位置関係、即ち両者の高さを正確に調整することができ、被加工物に対して高精度の機械加工を施すことができる。また、ベッド構造の一側面に上下方向に延びるキー部材(又はキー溝)が設けられ、スライドベースにキー溝(又はキー部材)が設けられているので、これらキー部材及びキー溝によってスライドベース、即ち第2の案内支持手段に支持された加工工具保持機構(又は被加工物保持機構)を正確に上下方向に移動させて高さ調整を行うことができる。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載の機械加工装置によれば、被加工物保持機構(又は加工工具保持機構)がベッド構造の上面に設けられた第1の案内支持手段に取り付けられ、加工工具保持機構(又は被加工物保持機構)がベッド構造の一側面に設けられた第2の案内支持手段に取り付けられるので、被加工物保持機構及び加工工具保持機構に関連する構成を簡単にすることができるとともに、これら保持機構の移動のための空間を小さくすることができる。また、装置全体のコンパクト化を達成することができる。またベッド構造の一側面にスライドベースが上下方向に位置調整可能に設けられ、このスライドベースに第2の案内支持手段が設けられているので、スライドベースの上下方向の位置を調整することによって、第1の案内支持手段に支持された被加工物保持機構(又は加工工具保持機構)と第2の案内支持手段に支持された加工工具保持機構(又は被加工物保持機構)との上下方向の位置関係、即ち両者の高さを正確に調整することができ、被加工物に対して高精度の機械加工を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う機械加工装置の一実施形態について説明する。図1は、一実施形態の機械加工装置を備えた機械加工システムを簡略的に示す斜視図であり、図2は、図1の機械加工システムを示す平面図であり、図3は、図1の機械加工システムにおける加工機本体を一部分解して示す分解斜視図であり、図4は、図3の加工機本体における被加工物保持機構の支持構造を簡略的に示す断面図であり、図5は、図4の被加工物保持機構の駆動機構を簡略的に示す斜視図であり、図6は図3の加工機本体における加工工具保持機構を簡略的に示す斜視図であり、図7は、図6の加工工具保持機構の支持構造を簡略的に示す断面図である。
【0015】
図1及び図2において、この機械加工システムは、工場の床面などに設置される設置ベース体2を備え、この設置ベース体2に複数(この形態では4台)の加工機本体4A,4B,4C,4Dが取り付けられている。設置ベース本体2は機械加工システムの横方向(図1において左上から右下の方向、図2において左右方向)に細長い矩形状であり、その上面に上記横方向に間隔をおいて複数の加工機本体4A〜4Dが取り付けられている。この形態では、設置ベース体2に4台の加工機本体4A〜4Dを取り付けているが、2又は3台、或いは5台上取り付けるようにしてもよいが、取扱いなどを考慮すると2〜4台程度が望ましい。
【0016】
次に、加工機本体4A〜4Dについて説明すると、これら加工機本体4A〜4Dは実質上同一の構成であり、以下、その一つの加工機本体4A(4B〜4D)について説明する。図1及び図2とともに、図3〜図7を参照して、加工機本体4A(4B〜4D)は、略直方体状のベッド構造6を備え、このベッド構造6の第1の部位、この形態では上面に第1の案内支持手段8が取り付けられ、この第1の案内支持手段8に被加工物保持機構10が移動自在に支持されている。また、ベッド構造6の第2の部位、この形態では一側面(機械加工システム2の前面側であって、図1及び図2において手前側の側面)に第2の案内支持手段12が設けられ、この第2の案内支持手段12に加工工具保持機構14が移動自在に支持されている。このようにベッド構造6の上面に被加工物保持機構10を、またベッド構造6の一側面に加工工具保持機構14を配置することによって、被加工物保持機構10及び加工工具保持機構14の移動のための空間を小さくすることができ、これによって、加工機本体4Aのコンパクト化を図ることができる。
【0017】
主として図3〜図5を参照して被加工物保持機構10及びこれに関連する構成について説明すると、図示の被加工物保持機構10は移動ハウジング本体16を備え、この移動ハウジング本体16内に主軸(図示せず)が回転自在に支持されているとともに、主軸によって所定方向に回転される被加工物保持手段18、例えばチャック手段が内蔵され、被加工物保持手段18の先端部、即ち被加工物を保持する部位が移動ハウジング本体16から外側に突出している。
【0018】
この実施形態では、第1の案内支持手段8は、設置ベース体2の横方向(図2〜図4において左右方向)に間隔をおいて配設された一対の第1の案内支持レール20,22(図4参照)を備え、一対の第1の案内支持レール20,22はベッド構造6の上面の両側部に取り付けられ、設置ベース体2の前後方向(図1において左下から右上の方向、図2において上下方向、図3において左下から右上の方向、図4において紙面に垂直な方向)に直線状に延びている。また、移動ハウジング本体16の両側端部下面には、一対の第1の案内支持レール20,22に対応して第1のレール受け部材24,26が設けられ、これらレール受け部材24,26と第1の案内支持レール20,22とが相互に移動自在に連結されている。
【0019】
この移動ハウジング本体16に関連して、駆動機構28が設けられている。駆動機構28は、正逆転可能な移動用駆動モータ30と、この移動用駆動モータ30によって回転駆動されるねじ軸32とを備えている。駆動機構28は、更に、ボールナット部36を含み、このボールナット部36がボールナット取付部34を介して移動ハウジング本体16に結合され、このボールナット部36に上記ねじ軸32が螺合されている。このように構成されているので、移動用駆動モータ30が正転(又は逆転)すると、ねじ軸32が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動され、これによって、移動ハウジング本体16は加工工具保持機構14に近接(又は離隔)する方向、即ち図2において下方(又は上方)に移動する。尚、主軸(図示せず)には、主駆動モータ38(図1及び図2参照)が駆動連結され、この主駆動モータ38によって所定方向に回動される。
【0020】
次に、主として図3、図6及び図7を参照して加工工具保持機構14及びこれに関連する構成について説明すると、図示の加工工具保持機構14は移動テーブル本体40を備え、この移動テーブル本体40に、被加工物保持機構10に保持された被加工物(図示せず)を所要の通りに加工するための加工工具(図示せず)が取り換え可能に取り付けられ、取り付けられた加工工具は被加工物保持機構10側に突出する。
【0021】
この実施形態では、第2の案内支持手段12は、上下方向(図1、図3、図6及び図7において上下方向、図2において紙面に垂直な方向)に間隔をおいて配設された一対の第2の案内支持レール42,44(図7参照)を備え、一対の第2の案内支持レール42,44はベッド構造6の一側面(設置ベース体2の前面側の一側面)に上下方向に間隔をおいて取り付けられ、設置ベース体2の横方向(図1において左上から右下の方向、図2において左右方向、図3及び図6において左上から右下の方向、図7において紙面に垂直な方向)に直線状に延びている。また、移動テーブル本体40の両端部内面には、一対の第2の案内支持レール42,44に対応して第2のレール受け部材46,48が設けられ、これらレール受け部材46,48と第2の案内支持レール42,44とが相互に移動自在に連結されている。尚、図3、図12及び図13に示すように、ベッド構造6の一側面にスライドベース50が取り付けられ、このスライドベース50に第2の案内支持手段12を介して加工工具保持機構14が取り付けられるが、図6及び図7ではこのスライドベース50を省略して示している。
【0022】
この移動テーブル本体40に関連して、駆動機構52が設けられている。駆動機構52は、正逆転可能な移動用駆動モータ54と、移動テーブル本体40を移動させるためのねじ軸56とを備え、駆動モータ54の出力部とねじ軸56とが、一対のプーリ及びベルトから構成される駆動力伝達手段58を介して駆動連結されている。駆動機構52は、更に、移動テーブル本体40の内面に取り付けられたボールナット部60を含み、このボールナット部60に上記ねじ軸56が螺合されている。このように構成されているので、移動用駆動モータ54が正転(又は逆転)すると、ねじ軸56が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動され、これによって、移動テーブル本体40は設置ベース体2の横方向左方(又は横方向右方)に、即ち図2において左方(又は右方)に移動する。尚、切削バイトなどの加工工具(図示せず)は、移動テーブル本体40の上面に取り換え可能に取り付けられる。
【0023】
再び図1及び図2に戻って、各加工機本体4A〜4Dは、設置ベース本体2に取付け、取外し可能に取り付けられるとともに、位置調整自在に取り付けられる。この形態では、各加工機本体4A(4B〜4D)のベッド構造6の4角部に固定部62が設けられ、かかる固定部62の孔を通して固定ねじ64を設置ベース体2の上壁に螺着することによって、各加工機本体4A(4B〜4D)が設置ベース体2に取り付けられ、このように取り付けることによって、複数の加工機本体4A〜4Dを所定の位置関係に保って設置ベース体2に取り付けることができる。
【0024】
この実施形態では、設置ベース体2内に、加工機本体4A〜4Dに共通のチップ搬送コンベア66及び切削油タンク68が設けられている。切削油タンク68は、図2に示すように、設置ベース体2内のほぼ全域にわたって設けられ、加工機本体4A〜4Dの加工時に用いられる切削液がベース構造6の空間を通して切削油タンク68に回収され、かく回収された切削油が切削油供給ポンプ(図示せず)によって各加工機本体4A〜4Dの加工域に供給され、このように共通の切削油タンク68に回収された切削油が再利用される。
【0025】
また、チップ搬送コンベア66は、加工機本体4A〜4Dにわたってそれらの下方に配置され、この形態では、切削油タンク68内の一端部(図1及び図2において左端部)から他端部(図1及び図2において右端部)まで延びている。このチップ搬送コンベア66の一端側は設置ベース体2の上壁の開口を通して上方に延び、その後水平に延びており、この水平部70の下方に回収空間が存在する。回収空間にはチップ回収ボックス71が配設され、このチップ回収ボックス71には、移動を容易にするために、その底部に複数のキャスタ74が取り付けられている。各加工機本体4A〜4Dの加工域からの切削チップ及び切削油は、そのベース構造6の空間を通して下方に落下し、切削油は切削油タンク68に回収され、切削チップはチップ搬送コンベア66上に落下してチップ搬送コンベア66よって図1及び図2において左方に水平部70まで搬送され、その水平部70から下方にチップ回収ボックス71内に回収される。チップ搬送コンベア66及び切削油タンク68は複数の加工機本体4A〜4Dに共通のものとして設けられるので、これらに関連して、その構成を簡単にすることができる。
【0026】
この機械加工システムでは、また、設置ベース体2に取り付けられた加工機本体4A〜4Dに共通の電気制御ユニット72及び流体圧ユニット74(例えば、油圧ユニット)が設けられている。電気制御ユニット72は加工機本体4A〜4Dの主駆動モータ38及び移動用駆動モータ30,54などを制御するためのコントローラ(図示せず)、このコントローラに加工情報を入力するための入力手段(図示せず)などを備え、かかる電気制御ユニット72からの制御信号によって加工機本体4A〜4Dが作動制御される。また、流体圧ユニット74は、流体を溜める流体タンク76と、流体タンク76内の流体を圧力流体として供給する流体圧モータ78を備え、流体圧モータ78からの圧力流体が各加工機本体4A〜4Dの被加工物保持機構10に送給され、かかる流体圧を利用して被加工物の保持が行われる。電気制御ユニット72及び流体圧ユニット74は、設置ベース体2の背面側に設置される。このように加工機本体4A〜4Dに共通の電気制御ユニット72及び流体圧ユニット74を設けることによって、これに関連する構成を簡単にすることができる。
【0027】
この機械加工システムにおいては、被加工物保持機構10に代えて、例えば、図8及び図9に示す被加工物保持機構10Aを第1の案内支持手段8に取り付けることができる。図8及び図9において、この変形形態の被加工物保持機構10Aは移動テーブル本体72を備え、この移動テーブル本体72の両端部に第1のレール受け部材24,26が取り付けられ、かかる第1のレール受け部材24,26がベッド構造6の上面に取り付けられた第1の案内支持手段8の第1の案内支持レール20,22に移動自在に連結されている。この移動テーブル本体72は、移動ハウジング本体10を駆動するための駆動機構28と同様の駆動機構28Aによって設置ベース体2の前後方向に第1の案内支持レール20,22に沿って移動される。
【0028】
また、移動テーブル本体72の前面(設置ベース体2の前面側の面)には、案内手段78を介して被加工物取付テーブル80が取り付けられている。案内手段78は図8及び図9において左右方向に間隔をおいて配設された一対の案内レール82,84から構成され、これら案内レール82,84が移動テーブル本体72の前面に取り付けられ、上下方向に直線状に延びている。また、被加工物取付テーブル80の後面には、一対の案内レール82,84に対応してレール受け部材(図示せず)が設けられ、これらレール受け部材が案内レール82,84に移動自在に支持され、このように支持された被加工物取付テーブル80に、加工すべき被加工物86が取り付けられる。この被加工物取付テーブル80は、駆動機構28Aと同様の駆動機構88によって上下方向に移動される。尚、駆動機構88は、移動用駆動モータ90、この移動用駆動モータ90によって回動されるねじ軸92、及びねじ軸92が螺合されるボールナット部(図示せず)を含んでいる。
【0029】
この機械加工システムにおいては、加工工具保持機構14に代えて、例えば、図10及び図11に示す加工工具保持機構14Aを第2の案内支持手段12に取り付けることができる。図10及び図11において、この変形形態の加工工具保持機構14Aは移動テーブル本体102を備え、この移動テーブル本体102の両側端部に第2のレール受け部材46,48が取り付けられ、かかる第2のレール受け部材46,48がベッド構造6の一側面に取り付けられた第2の案内支持手段12の第2の案内支持レール42,44に移動自在に連結されている。この移動テーブル本体102は、加工工具保持機構14の移動テーブル本体40を駆動するための駆動機構52と同様の駆動機構52Aによって設置ベース体2の横方向に第2の案内支持レール42,44に沿って移動される。
【0030】
また、移動テーブル本体72の前面(外面)(設置ベース体2の前面側の面)には、案内手段(図示せず)を介して工具取付テーブル108が取り付けられている。この案内手段及び工具取付テーブル108を駆動するための駆動機構110は、被加工物保持機構10Aの被加工物取付テーブル80を案内するための案内手段78及びこの被加工物取付テーブル80を駆動するための駆動機構88と実質上同一の構成でよく、この工具取付テーブル108は、駆動機構110によって上下方向に移動される。
【0031】
この機械加工システムでは、被加工物保持機構10,10Aをモジュール化し、加工機本体4A〜4Dの第1の案内支持手段8に取り換え可能に取り付け、また加工工具保持機構14,14Aもモジュール化し、加工機本体4A〜4Dの第2の案内支持手段12に取り換え可能に取り付けているが、被加工物保持機構10,10A及び加工工具保持機構14,14Aを共通のモジュール化し、被加工物保持機構10,10Aを第2の案内支持手段12に、また加工工具保持機構14,14Aを第1の案内支持手段8に取り換え可能に取り付けるようにしてもよく、このように共通のモジュール化することによって、加工機本体4A〜4Dの加工能力を広げることができる。
【0032】
例えば、被加工物保持機構10,10Aとして旋盤用主軸保持機構及び被加工物固定保持機構をモジュール化して取り換え可能なユニットを構成するとともに、加工工具保持機構14,14Aとして旋盤刃物保持機構、穴あけ用刃物保持機構及びフライス用刃物保持機構をモジュール化して取り換え可能なユニットを構成するようにし、例えば旋盤用主軸保持機構と旋盤刃物保持機構とを組み合わせて用い、これらをベッド構造6の第1及び第2の案内支持手段8,12に取り付けることによって、旋盤としての加工を行うことができ、また被加工物固定保持機構と穴あけ用刃物保持機構とを組み合わせて用い、これらをベッド構造6の第1及び第2の案内支持手段8,12に取り付けることによって、ドリリング装置としての加工を行うことができ、更に被加工物固定保持機構とフライス用刃物保持機構とを組み合わせて用い、これらをベッド構造6の第1及び第2の案内支持手段8,12に取り付けることによって、フライス盤としての加工を行うことができる。
【0033】
この機械加工システムにおいては、設置ベース体2に取り付けられた加工機本体4A〜4Dが上述した構成を有する故に、被加工物保持機構及び加工工具保持機構をモジュール化された各種ユニットから適宜選定して組み付けることによって、旋盤加工の加工機、ドリリング加工の加工機、フライス加工の加工機などとして用いることができる。従って、ライン工程の変更が生じて加工機の配置を代える場合においても、加工機本体4A〜4Dのベッド構造6は配置ベース体2に取り付けた状態において、第1及び第2の案内支持手段8,12に取り付けられる被加工物保持機構及び加工工具保持機構を取り換えるのみでよく、ライン変更を効率良く短時間で行うことができる。
【0034】
このような加工機本体4A〜4Dにおいては、高精度の加工を行うためには、ベッド構造6の上面に設けられた第1の案内支持手段8に支持された被加工物保持機構10(又は加工工具保持機構)と、ベッド構造6の一側面に設けられた第2の案内支持手段12に支持された加工工具保持機構14(又は被加工物保持機構)との高さが正確に調整されることが重要であり、この高さ調整を行うために、更に、図12及び図13に示すように構成されている。
【0035】
図12及び図13において、ベッド構造6の一側面にはスライドベース50が上下方向に位置調整可能に取り付けられている。この形態では、スライドベース50には複数の取付孔(図示せず)が設けられ、これら取付孔には上下方向に隙間が存在し、各取付孔を通して取付ボルト121をベース構造6の一側面に螺着することによって、スライドベース50がベース構造6に取り付けられ、取付孔の範囲内において上下方向に位置調整可能に構成される。ベース構造6の一側面には一対のキー部材122が固定ねじ124により固定され、これらキー部材122は上下方向に延びている。尚、一対のキー部材122に代えて、一つの長いキー部材を固定するようにしてもよい。
【0036】
スライドベース50には、キー部材122に対応して、キー溝126が設けられ、このキー溝126内にキー部材122が受け入れられ、従って、スライドベース50はキー部材122に沿って上下方向に確実に移動し、設置ベース体2の横方向(図12において紙面に垂直な方向、図13において左右方向)に移動することがない。尚、上述とは反対に、ベッド構造6にキー溝を設け、スライドベース50にキー部材を取り付けるようにしてもよい。
【0037】
第2の案内支持手段12の第2の案内支持レール42,44はこのスライドベース50に取り付けられ、この第2の案内支持レール42,44に相対的に移動自在に連結された第2のレール受け部材46,48が移動テーブル本体40に取り付けられ、移動テーブル本体40は第2の案内支持手段12に支持されて設置ベース体2の横方向に移動される。
【0038】
このスライドベース50の高さ調整を行うときには、高さ調整治具132が用いられる。高さ調整治具132はブロック体134を備え、このブロック体134の上面に調整ボルト136が螺着され、調整ボルト136の頭部138の端面がスライドベース50の下面を支持するように構成されている。
【0039】
スライドベース50の上下方向の位置を調整するには、図12及び図13に示すように、スライドベース50の下側に高さ調整治具132を位置付け、調整ボルト136の頭部138をスライドベース50の下面に当接させた後に取付ボルト121を緩め、かかる状態において調整ボルト136を回動させてスライドベース50の上下方向の位置を調整する。このように高さ調整治具132を用いることによって、比較的容易に且つ高精度に高さ調整をすることができる。位置調整後は、取付ボルト121を締め付けてスライドベース50をベース構造6に固定し、その後高さ調整治具132を外せばよい。このようにスライドベース50の高さ位置を調整することによって、第1の案内支持手段8に支持された被加工物保持機構10と第2の案内支持手段12に支持された加工工具保持機構14との高さ位置を所定の位置関係に保つことができ、これによって、被加工物に対する精度の高い加工が可能となる。
【0040】
以上、本発明に従う機械加工システム及び機械加工装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0041】
例えば、上述した機械加工システムでは、各加工機本体4A〜4Dの加工工具保持機構14を設置ベース体2の前面側に配置し、電気制御ユニット72及び流体圧ユニット74を設置ベース体2の後面側に配置しているが、このような配置に代えて、例えば、各加工機本体4A〜4Dの加工工具保持機構14を設置ベース体2の後面側に配置し、電気制御ユニット72及び流体圧ユニット74を設置ベース体2の前面側に配置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の機械加工装置は、被加工物の加工に用いることができ、効率的な機械加工を行うことができる。この機械加工システムにおいては、設置ベース体に複数の加工機本体が取り付けられるので、その搬送、設置などが容易に行うことができ、また各加工機本体に取り付けられる被加工物保持機構及び加工工具保持機構を取り換え可能に構成することによって、ライン工程の変更の際に被加工物保持機構及び加工工具保持機構を交換するのみでよく、ライン変更を短時間で効率良く行うことができ、このシステムによる生産加工効率を高めることができる。また、この機械加工装置では、ベッド構造に取り付けられる被加工物保持機構及び加工工具保持機構を取り換え可能に構成しているので、モジュール化された各種被加工物保持機構及び加工工具保持機構から適切なものを選定して組み付けることによって、所望の加工を行う加工装置とすることができ、加工装置の生産の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】一実施形態の機械加工装置を備えた機械加工システムを簡略的に示す斜視図である。
【図2】図1の機械加工システムを示す平面図である。
【図3】図1の機械加工システムにおける加工機本体を一部分解して示す分解斜視図である。
【図4】図3の加工機本体における被加工物保持機構の支持構造を簡略的に示す断面図である。
【図5】図4の被加工物保持機構の駆動機構を簡略的に示す斜視図である。
【図6】図3の加工機本体における加工工具保持機構を簡略的に示す斜視図である。
【図7】図6の加工工具保持機構の支持構造を簡略的に示す断面図である。
【図8】被加工物保持機構の変形形態を簡略的に示す斜視図である。
【図9】図8の被加工物保持機構の支持構造を示す断面図である。
【図10】加工工具保持機構の変形形態を簡略的に示す斜視図である。
【図11】図10の加工工具保持機構の支持構造を示す図である。
【図12】ベッド構造に取り付けられた加工工具保持機構の支持構造を一部断面で示す断面図である。
【図13】図12の加工工具保持機構の支持構造をベッド構造の一側面側から見た図である。
【符号の説明】
【0044】
2 設置ベース体
4A,4B,4C,4D 加工機本体
6 ベッド構造
8 第1の案内支持手段
10,10A 被加工物保持機構
12 第2の案内支持手段
14,14A 加工工具保持機構
50 スライドベース
66 チップ搬送コンベア
68 切削油タンク
71 チップ回収ボックス
72 電気制御ユニット
74 流体圧ユニット
122 キー部材
126 キー溝
132 高さ調整治具
136 調整ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド構造と、被加工物を保持するための被加工物保持機構と、加工工具を保持するための加工工具保持機構と、前記ベッド構造の第1の部位に設けられた第1の案内支持手段と、前記ベッド構造の第2の部位に設けられた第2の案内支持手段と、を備え、前記第1の案内支持手段に前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構が取り換え可能に取り付けられ、前記第2の案内支持手段に前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構が取り換え可能に取り付けられていることを特徴とする機械加工装置。
【請求項2】
前記第1の部位は前記ベッド構造の上面であり、前記第1の案内支持機構は前記ベッド構造の上面に第1の方向に延びており、前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構は前記第1の案内支持機構に前記第1の方向に移動自在に支持されており、また前記第2の部位は前記ベッド構造の一側面であり、前記第2の案内支持機構は前記ベッド構造の前記一側面に前記第1の方向に対して実質上垂直な第2の方向に延びており、前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構は前記第2の案内支持機構に前記第2の方向に移動自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の機械加工装置。
【請求項3】
前記ベッド構造の前記一側面にはスライドベースが配設され、前記スライドベースに前記第2の案内支持手段が設けられており、また前記一側面には、上下方向に延びるキー部材又はキー溝が設けられ、前記スライドベースには、前記キー部材又は前記キー溝に案内されるキー溝又はキー部材が設けられており、前記スライドベースの上下方向の位置を調整することによって、前記第1の案内支持手段に支持された前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構と、前記第2の案内支持手段に支持された前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構との高さを調整することを特徴とする請求項2に記載の機械加工装置。
【請求項4】
ベッド構造と、被加工物を保持するための被加工物保持機構と、加工工具を保持するための加工工具保持機構と、前記ベッド構造の上面に設けられた第1の案内支持手段と、前記ベッド構造の一側面に設けられた第2の案内支持手段と、を備え、前記第1の案内支持手段に前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構が取り付けられ、前記第2の案内支持手段に前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構が取り付けられ、前記ベッド構造の前記一側面にはスライドベースが配設され、前記スライドベースに前記第2の案内支持手段が設けられており、また前記一側面には、上下方向に延びるキー部材又はキー溝が設けられ、前記スライドベースには、前記キー部材又は前記キー溝に案内されるキー溝又はキー部材が設けられており、前記スライドベースの上下方向の位置を調整することによって、前記第1の案内支持手段に支持された前記被加工物保持機構又は前記加工工具保持機構と、前記第2の案内支持手段に支持された前記加工工具保持機構又は前記被加工物保持機構との高さを調整することを特徴とする機械加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−254174(P2008−254174A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182224(P2008−182224)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【分割の表示】特願2004−30206(P2004−30206)の分割
【原出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【出願人】(591014835)高松機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】