説明

機械式駐車装置

【課題】健康上の問題によって倒れた人がいた場合も含めて取り残された人を確実に検出できるようにした庫内人検知装置を有する機械式駐車装置を提供する。
【解決手段】照射波に対する反射波中の脈拍成分を抽出して人を検出する無線送受信人検出装置5と、無線送受信人検出装置5からの照射波を反射する反射板6とを備え、この無線送受信人検出装置5によりトレー4上の駐車車両3の第一の位置側、例えば駐車車両3のフロントガラスを通して照射波を送って行う検出と、反射板6で反射して駐車車両3の第二の位置側、例えばサイドガラスを通して照射波を送って行う検出とを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内に取り残された人を検出する庫内人検知装置を有した機械式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の機械式駐車装置では、駐車車両を搭載可能な複数のトレーを有し、これらをエレベーター式駐車設備により昇降しながら駐車車両を収納するように構成し、駐車車両の入出口近傍に無線送受信人検出装置を設け、この無線送受信人検出装置からの照射波による反射波中に含まれた呼吸成分を抽出して駐車車両内に取り残された人がいないかどうかを検出し、いないことを確認してからエレベーター式駐車設備を作動させていた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−228679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような機械式駐車装置では、駐車車両内に取り残された人がいた場合、例えば、健康上の問題によって倒れた人がいるにも拘わらず、これを発見できずにエレベーター式駐車設備を作動させて所定位置に収納してしまうと、重大な事態になってしまう危険があるため、高い精度での検出が望まれる。しかしながら、従来の機械式駐車装置用庫内人検知装置では、呼吸成分を抽出して駐車車両内に取り残された人がいないかどうかを検出していたため、健康上の問題によって倒れた人が容易に検出できないような姿勢で、しかも呼吸停止状態になった場合には、取り残された人がいないと判断してエレベーター式駐車設備を作動させてしまうという危険があった。
【0005】
本発明の目的は、健康上の問題によって倒れた人がいた場合も含めて取り残された人を確実に検出できるようにした庫内人検知装置を有する機械式駐車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、トレー上に駐車車両を搭載したトレーを昇降しながら駐車車両を収納するエレベーター式駐車設備と、このエレベーター式駐車設備の操作前に前記トレー上の前記駐車車両内に取り残された人を検出する無線送受信人検出装置とを備えた機械式駐車装置において、前記無線送受信人検出装置は、反射波に含まれた脈拍成分を抽出して取り残された人の検出を行うように構成したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記無線送受信人検出装置からの送信波を反射する反射板を設け、前記無線送受信人検出装置は、前記駐車車両の第一の位置側から照射して行う検出と、前記反射板で反射して前記駐車車両の第二の位置側から照射して行う検出とを実施するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による機械式駐車装置によれば、健康上の問題で呼吸停止状態になり座席上あるいはフロアーマット上、もしくは駐車車両から出た後に倒れ込んだ人がいた場合でも、脈拍成分による検出によって見つけることができ、重大な事態に至るのを未然に防ぐことができる。
【0009】
また、本発明によれば、無線送受信人検出装置を用いて反射板で反射して駐車車両の異なる第二の位置側から電波を送って、車内に取り残された人がいるかどうかを検出することができ、特に、駐車車両の座席上あるいはフロアーマット上に取り残された人、または車から出た直後に倒れた人がいた場合は勿論のこと、健康上の問題で呼吸停止状態になり倒れていても、この人の脈拍成分から検出して一層確実に発見することができる。この検出によって、そのまま取り残された場合に重大な問題に発展する事態を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態による機械式駐車装置を示す平面図である。
【図2】図1に示した庫内人検知装置の使用例を示す側面図である。
【図3】図1に示した庫内人検知装置の他の使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態による機械式駐車装置を示す平面図である。
【0013】
エレベーター式駐車設備を用いた機械式駐車装置は、駐車車両を搭載するために所定間隔で配置した複数のトレーを昇降移動可能に構成しており、その入出口1の建屋壁2内には、入庫した駐車車両3を搭載するトレー4が配置されている。このトレー4上に搭載された駐車車両3をエレベーター式駐車設備を用いて所定の位置に移動して収納する前に、駐車車両3内などに取り残された人がいないことを確認するようにしている。このために入出口1の近傍の建屋壁2には、エレベーター式駐車設備の作動前に人検知を行い、取り残された人がいないことを確認してからエレベーター式駐車設備の作動を許す庫内人検知装置が構成される。この庫内人検知装置は、照射波に対する反射波中の脈拍成分を抽出して人を検出する無線送受信人検出装置5と、無線送受信人検出装置5からの照射波を反射する反射板6とを有している。
【0014】
この無線送受信人検出装置5は、トレー4上の駐車車両3の第一の位置側、例えば駐車車両3のフロントガラスを通して照射波を送って行う検出と、反射板6で反射して駐車車両3の第二の位置側、例えばサイドガラスを通して照射波を送って行う検出とを実施することができるように、二位置をとる首振り可能な構成としている。
【0015】
この無線送受信人検出装置5は、駐車車両3がトレー4上に搭載されてから降りてきた運転手の操作によってエレベーター式駐車設備を作動させたとき、または駐車車両3がトレー4上に搭載されてから所定時間が経過したとき、駐車車両3の車内またその周辺に取り残された人がいるかどうかを検出するもので、照射波に対する反射波中の脈拍成分を検出し、取り残された人がいないことを検出した場合に、エレベーター式駐車設備の作動を許可するものである。無線センサーを使用し、反射波ビートに含まれるノイズはバンドエリミネータを使用して除去し、同時にローパスフィルタを使用して不要な高い周波数成分を除去している。その後、アナログバンドパスフィルタを用いて脈拍成分を抽出し、アナログ信号をデジタル信号に変換した後、バンドパスおよびバンドエリミネータ処理を行い、データ処理している。
【0016】
駐車車両3内または近傍に人がいない場合、その反射波から上述したようにしてノイズを除去することによって脈拍成分を含まないことで検出することができる。一方、駐車車両3内または近傍に人がいる場合、反射波に含まれた脈拍成分から検出することができる。通常、脈拍は1分間に30〜180回で、その繰り返しの周期は0.5〜13Hzであるが、ここでは2.0〜10Hzで検出するようにしている。
【0017】
無線送受信人検出装置5は、第一の位置側、例えば駐車車両3のフロントガラスから電波を車内へ送って車内に取り残された人がいるかどうかを検出する。次に、無線送受信人検出装置5は、その首振り機能によって反射板6側に照射の向きを変え、建屋壁2に配置した反射板6で反射して第二の位置側、例えば駐車車両3のサイドガラス付近から電波を車内へ送って車内に取り残された人がいるかどうかを検出している。
【0018】
今、駐車車両3が入出口1から侵入してトレー4上に搭載された後、エレベーター式駐車設備の作動に先立って、駐車車両3内に人が取り残されていないかどうかを検査する。先ず、無線送受信人検出装置5を用いて、駐車車両3のフロントガラス付近から電波を車内へ送って車内に人がいるかどうかを検出する。
【0019】
このとき、図2に示したように駐車車両3内の後部座席に取り残された人7がいる場合、反射波に含まれた脈拍成分を検出して、エレベーター式駐車設備が作動しないようにしたり、エレベーター式駐車設備を作動させようとしている運転手などに注意を喚起したりすることができる。
【0020】
この無線送受信人検出装置5による検出がないときにエレベーター式駐車設備を作動してトレー4を昇降させて収納することもできるが、この無線送受信人検出装置5を用いて検出できない状況で取り残された人がいた場合、重大な事態に発展する危険がある。
【0021】
例えば、無線送受信人検出装置5を用いて検出できない状況として考えられるのは、図3に示したように健康上の問題で呼吸停止状態になり座席上またはフロアーマット上に倒れ込んでいる人8がいた場合である。上述した無線送受信人検出装置5の第一の位置での照射では、このような人8を検出できずに、駐車車両3内に人が取り残されていないと判断してエレベーター式駐車設備を作動してトレー4を昇降させてしまうと、重大な事態に至る危険がある。
【0022】
しかしながら、無線送受信人検出装置5は、第一の位置での検出だけではなく、無線送受信人検出装置5の首振り機構を用いて第二の位置での検出も行うようにしている。第二の位置での検出は、無線送受信人検出装置5からの照射波を建屋壁2に配置した反射板6で反射して、駐車車両3の第二の位置側、例えばサイドガラス付近から電波を送って、車内に取り残された人がいるかどうかを検出している。特に、この無線送受信人検出装置5による第二の位置側からの検出を行うことによって、先の第一の位置側からでは検出できない状況、つまり、駐車車両3の座席上あるいはフロアーマット上に倒れ込んだ人8、または車から出た直後に倒れた人がいた場合は勿論のこと、健康上の問題で呼吸停止状態に陥って倒れた人がいても、反射波中の脈拍成分から検出することができる。
【0023】
このようにして、脈拍成分からの検出を行う無線送受信人検出装置5によれば、呼吸成分からの検出を行っていた従来の無線送受信人検出装置では確認できなかった人8を検出することができる。駐車車両3をトレー4上に搭載させてから生じた事態を想定すればよいので、運転者が降りてからの間に呼吸停止状態に陥った人8がいたとしても、一層確実に発見することができる。この検出によって、そのまま取り残された場合に重大な問題に発展する事態を未然に防止することができる。
【0024】
この実施の形態では、1台の無線送受信人検出装置5を使用し、駐車車両3の第一の位置側から照射した検出と、反射板6を使用して駐車車両3の第二の位置側から照射した検出とを行っているため、無線送受信人検出装置5は首振り機構を付加するだけで、一台で構成することができる。しかし、他の実施の形態では、第一の位置側と第二の位置側のそれぞれの方向からの照射を行う複数台の無線送受信人検出装置を使用することもできる。
【0025】
本発明は、図1に示した構成の機械式駐車装置に限らず、他の構成のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 入出口
2 建屋壁
3 駐車車両
4 トレー
5 無線送受信人検出装置
6 反射板
7,8 人

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレー上に駐車車両を搭載したトレーを昇降しながら駐車車両を収納するエレベーター式駐車設備と、このエレベーター式駐車設備の操作前に前記トレー上の前記駐車車両内に取り残された人を検出する無線送受信人検出装置とを備えた機械式駐車装置において、前記無線送受信人検出装置は、反射波に含まれた脈拍成分を抽出して取り残された人の検出を行うように構成したことを特徴とする機械式駐車装置。
【請求項2】
前記無線送受信人検出装置からの送信波を反射する反射板を設け、前記無線送受信人検出装置は、前記駐車車両の第一の位置側から照射して行う検出と、前記反射板で反射して前記駐車車両の第二の位置側から照射して行う検出とを実施するように構成したことを特徴とする請求項1記載の機械式駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−246942(P2011−246942A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120568(P2010−120568)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000227043)日精株式会社 (68)
【Fターム(参考)】