説明

機械翻訳装置

【課題】見出し語の一部の文字を入力するだけで、終止形・原型の適切な見出し語を得ることである。
【解決手段】見出し語情報取得部23は、辞書部への語句の登録・参照・削除操作時に入力部16から見出し語として入力された情報を取得し、入力予測範囲取得部24は、翻訳対象の第一言語の原文を入力予測範囲として取得する。翻訳部25は、入力予測範囲に存在する文の形態素解析を辞書部21を用いて行い、語頭・末尾推定部26は、翻訳部25で形態素解析された語句の語頭・末尾となる部分を判断し見出し語候補を推定する。そして、終止形・原型復元部27は、見出し語候補が終止形・原型でないときは見出し語候補を終止形・原型に復元し、制御部22は、得られた見出し語候補の語句を表示部17に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一言語の文章を第二言語の文章に翻訳する機械翻訳装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際化の進行によって、外国語を用いた迅速な情報交換へのニーズが高まっており、情報交換のためのツールとして第一言語の文章を第二言語の文章に翻訳する機械翻訳装置が期待されている。ユーザは、よりよい翻訳結果を得るために、辞書部への語句の登録・参照・削除などにより辞書の編集を行っている。
【0003】
機械翻訳装置の辞書部へ新語を辞書登録を行う際には、辞書登録画面を表示し、その画面中の見出し語の入力領域にキーボードなどの入力部から見出し語を直接入力して行う。また、表示された第一言語の文章の中から見出し語として登録したい文字列を選択し、この選択した文字列を辞書登録画面の見出し語入力領域に表示させて、見出し語の入力を省略させて操作性を向上させている。
【0004】
表示された文章の中から登録したい見出し語を選択するには、画面上の当該語句の文字列をマウスの左ボタンを押したままドラッグして反転表示させる方法がある。この方法で語句を選択することは容易であるが、辞書に登録する基本形(英語では原型、日本語用言では終止形など)のままの文字列が画面上にない場合や、マウスが使えない場合には見出し語を直接キーボードから入力することになる。
【0005】
なお、入力データの補完を行うものとしては、テストケース生成システムにおいて、入力データを用語データとして、その用語データを利用して入力内容をチェックすることで入力を容易にし、また、入力精度を向上させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、表計算ソフトウェアでは、セルへの文字列の入力の際、先頭の何文字かを入力すると、既に入力されているセルの文字列と同じ書き始めであった場合に残りの文字が自動的に表示されるオートコンプリート機能を有するものもある。また、かな漢字変換ツールでは、過去に入力された文節などの履歴を保存しておき、入力文字列の書き始めと同じであった場合に残りの文字が自動的に表示されるものもある。また、Webブラウザなどは、URLの入力の際に、過去に入力されたURLと同様の書き始めであった場合に残りの文字が自動的に候補表示されるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−306046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、表計算ソフトウェア、かな漢字変換ツール、Webブラウザでは、過去に入力された文字と同様の書き始めであった場合に残りの文字が自動的に候補表示されるが、辞書登録においてはほとんどの場合に新規の語句を登録するものであることから、過去に入力された文字列を表示するだけのものでは十分ではない。
【0009】
すなわち、新規の語句の登録の場合、辞書登録画面において見出し語のすべての文字を入力する必要がある。一方、表示された第一言語の文章の中から選択した文字列を辞書登録する場合には、登録したい見出し語が動詞で活用している場合には、登録する見出し語は終止形・原型に入力変更しなければならない。例えば、「抜け出し」という原文中の単語を選択して辞書登録する場合、辞書登録画面には、そのまま「抜け出し」と表示されているため、「抜け出す」と入力文字列の修正を行わなければならない。
【0010】
本発明の目的は、見出し語の一部の文字を入力するだけで、終止形・原型の適切な見出し語を得ることができる機械翻訳装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の機械翻訳装置は、翻訳するために語句が登録された翻訳辞書を持ち、この翻訳辞書に基づいて第1言語の文章を第2言語の文章に翻訳する機械翻訳装置において、翻訳辞書に対する新しい語句の登録、登録されている語句の削除、登録されている語句の参照のいずれかの辞書の編集処理をするときに、処理対象の語句を見出し語として指定するためにユーザからの文字列の指定を受け付ける入力手段と、入力手段により入力された文字列に基づいて、見出し語の予測をするために第1の言語の文章における入力予測の対象範囲を指定する入力予測範囲指定手段と、入力手段により入力された文字列に基づいて、入力予測範囲指定手段で指定された第1の言語の文章の範囲の語句の中から、ユーザが指定しようとした見出し語の候補となる語句を予測する見出し語予測手段と、見出し語予測手段で得られた見出し語の候補となる語句を終止形または原型に変換する終止形原型復元手段と、終止形原型復元手段で終止形または原型に変換された語句を見出し語候補としてユーザに提示する提示手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の目的は、見出し語の一部の文字を入力するだけで、終止形・原型の適切な見出し語を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係わる機械翻訳装置の構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係わる機械翻訳装置の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係わる機械翻訳装置の構成図である。機械翻訳装置11は、第一言語を第二言語に翻訳して出力するものであり、例えば一般的なコンピュータに機械翻訳プログラムなどのソフトウェアプログラムがインストールされ、そのソフトウェアプログラムがマイクロプロセッサ12において実行されることにより実現される。機械翻訳装置11は、マイクロプロセッサ12、ROM(Read Only Memory)13及びRAM(Random Access Memory)14がバス15を介して接続されている。バス15には、入力部16、表示部17、ネットワークインターフェース18及び磁気ディスク装置19が接続されている。
【0015】
磁気ディスク装置19には、機械翻訳プログラム20が記憶されるとともに、辞書部21が記憶される。機械翻訳プログラム20は、制御部22、見出し語情報取得部23、入力予測範囲取得部24、翻訳部25、語頭・末尾推定部26、終止形・原型復元部27を有し、辞書部21には、図示は省略しているが、基本用語辞書、専門用語辞書、ユーザ辞書などが格納されている。
【0016】
マイクロプロセッサ12は、磁気ディスク装置19に記憶された機械翻訳プログラム20に基づいて、後述する一連の処理を実現する。
【0017】
入力部16は、第一言語として文字データ、ファイルデータ等を入力する第一言語の入力手段であり、キーボードやマウス・タッチパネルなどのポインティングデバイス、音声認識装置や文字認識装置、あるいは、CDドライブなどの外部記憶媒体読取装置、などによって実現される。
【0018】
表示部17は、翻訳対象である第一言語の文章や翻訳結果などを表示する表示手段である。表示部17は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイなどで実現される。
【0019】
磁気ディスク装置19に記憶された機械翻訳プログラム20の制御部22は、機械翻訳プログラム20全体の制御を行うものである。
【0020】
見出し語情報取得部23は、辞書部21への語句の登録・参照・削除などの辞書編集処理時に入力部16から辞書へ登録する語句、辞書を参照する語句、辞書から削除する語句の見出し語として入力された情報(見出し語の一部または全部の文字列)を見出し語情報として取得するものである。
【0021】
入力予測範囲取得部24は、翻訳対象である第一言語の文章の中からユーザによって入力部16より入力し指定された範囲を入力予測範囲として取得する。一般に辞書の編集処理をする際には、第一言語の文章が表示部17に表示されている場合である。このとき、第一言語の文章が長文の場合には表示部17の表示画面にはその全てが表示できず、一部だけが表示されることになる。従って、ユーザは、キーボードやマウスなどの入力部16を用いて、表示部17に表示されている第一言語の文章をスクロール表示させることで、その入力予測範囲を入力し指定することになる。この入力予測範囲の指定は、必須ではない。この指定が省略された場合には、その時点で表示部17の表示画面に表示されている第一言語の文章が入力予測範囲として指定されたものと見なす。これは、翻訳処理中に辞書登録・参照・削除などの辞書編集処理が行われることが多く、翻訳対象となっている文章の語句が辞書登録・参照・削除の対象になっていると考えられるためである。なお、入力部16を用いて、明示的に表示部17の表示画面に表示されている第一言語の文章が入力予測範囲として指定してもよい。
【0022】
翻訳部25は、入力部16より入力された第一言語の自然言語文の形態素解析や構文解析を行い、第一言語の自然言語文から第二言語の自然言語文への翻訳を行う。また、翻訳部25は、入力予測範囲取得部24で取得した入力予測範囲に存在する文章に対して、辞書部21の収容する自然言語文を解析・翻訳するための知識・情報を用いて、形態素解析や構文解析を行う。辞書部21の収容する対訳用語部の日本語見出し語には読み情報が付与されている。
【0023】
語頭・末尾推定部26は、入力予測範囲取得部24の取得した入力予測範囲の文章から入力部16で入力された見出し語情報(選択文字列もしくは直接入力された文字列)に基づいて辞書に登録する語句、辞書を参照する語句、辞書から削除する語句の候補(見出し語候補)を推定(入力予測)するものである。その推定の際には、翻訳部25の有する言語解析手段を利用して得られた形態素解析結果を利用して、語句の語頭・末尾を推定して見出し語となり得る原文中の語句の候補を特定する。
【0024】
終止形・原型復元部27は、語頭・末尾推定部26が入力予測した語句が活用している場合に、辞書部21の収容する形態素解析・形態素生成知識を利用して終止形・原型に変換を行うものである。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係わる機械翻訳装置の動作の一例を示すフローチャートである。辞書登録・参照・削除の操作の処理状態において、見出し語情報取得部23は、入力部16から入力された見出し語情報を取得する(S1)。見出し語情報は、見出し語を入力するために表示部17に表示されている翻訳対象である第一言語の文章の中からマウスで選択された文字列、またはキーボードから入力された文字列のいずれかである。
【0026】
入力予測範囲取得部24は見出し語情報取得部23が取得した見出し語情である文字列から見出し語を予測するための対象となる入力予測範囲を取得する(S2)。本実施例の場合、入力予測範囲は第一言語の文章のうち表示部17に表示されている文章の範囲である。しかし、これに限定せず、第一言語の文章のうち任意に指定された範囲の文章であって良い。
【0027】
翻訳部25は、入力予測範囲取得部24で取得した入力予測範囲に存在する文章に対して形態素解析を行う(S3)。
【0028】
語頭・末尾推定部26は、入力予測範囲取得部24の取得した入力予測範囲を対象として、見出し語候補となる語句を見出し語情報に基づいて検索する(S4)。その検索の際には、翻訳部25の有する言語解析手段を利用して得られた形態素解析結果から語句の語頭・末尾となり得る部分を判断し、見出し語候補を特定する。
【0029】
そして、見出し語候補となった語句が日本語の用言や英語の動詞のように、語尾が活用している場合があるので、終止形・原型復元部27は見出し語候補となった語句が終止形・原型であるか否かを判断し(S5)、終止形・原型である場合には、そのまま見出し語候補となった語句を辞書登録・参照・削除の辞書編集処理の操作画面の見出し語入力領域に表示出力する(S6)。一方、終止形・原型でない場合には、見出し語候補の語句を終止形・原型に変更し(S7)、見出し語候補の語句を見出し語入力領域に表示出力する(S6)。
【0030】
語頭・末尾推定部26では、見出し語(語句)の頭となり得る箇所、語句の末尾になり得る箇所を翻訳部25での言語解析結果を用いて判定して入力語句を予測する。
【0031】
例えば、「〜を使って入力予測をする。」という文において、語句の頭となり得る箇所は「使」「入」「予」であり、語句の末尾になり得る箇所は「て」「力」「測」とわかる。これらの情報を使って見出し語となり得る候補は「使う」「入力」「予測」「入力予測」となる。
【0032】
すなわち、登録語の品詞の種類ごとに、語頭と語末、及びその間に生起し得る形態素の条件をテーブルなどに記述して蓄積したものを作成し、それを判断ベースとして、見出し語の語句の範囲の判定を行う。得られた見出し語となり得る語句の候補を辞書部21から検索して読み情報を取得し、それらの読み情報と見出し語情報とを照合して、ユーザが見出し語として意図する語句を絞り込んで、見出し語候補を特定する。
【0033】
以上の説明では、日本語から英語に翻訳する場合の見出し語の登録について説明したが、逆の場合(英語から日本語へ)や、また、日本語と英語に限定せず、他の言語においても同様に適用できる。
【0034】
また、辞書部21が、基本辞書、ユーザ辞書、専門用語辞書など各種辞書で構成されているシステムにおいては、入力予測した見出し語候補を表示する優先順を変えることが有用である。辞書へ語句を登録する辞書編集処理操作の場合には、辞書に登録されていない語句を優先して見出し語候補として表示することが有用である。この場合、ユーザ辞書に登録されていない語句、いずれの辞書にも登録されていない語句、単独では辞書に登録されていない合成語を優先するなどの方法が考えられる。また、辞書削除する辞書編集処理操作の場合には、ユーザ辞書に登録されている語句を優先して見出し語候補として表示することが有用である。これは、ユーザが辞書の削除を行えるのはユーザ辞書であり、基本辞書や専門用語辞書はユーザが削除できない構成をとるのが一般的であるためである。また、辞書に登録されている語句を参照する辞書編集処理操作の場合には、辞書に登録されている語句を優先して見出し語候補として表示することが有用である。また、操作の種類ごとに、どのような方法で優先度を判断するかをユーザが指定できるようにすることも可能である。更に、登録、削除、参照の各辞書編集処理操作の場合に、ユーザ辞書に登録されている語句を基本用語辞書や専門用語辞書のようにシステムに初めから組み込まれているシステム辞書に登録されている語句よりも優先して表示することも有用である。これは、例えば、削除において、基本用語辞書や専門用語辞書などのシステム辞書に登録されている語句が不用意に削除されないようにするために有用である。
【0035】
また、語頭・末尾推定部26は、翻訳対象の第一言語の原文中のカーソル位置により、見出し語候補の推定の優先順を変えるようにしてもよい。例えば、カーソルが位置付けされている文から推定された語句を優先させたり、カーソルの直後の語句を優先させたりするものである。通常、ユーザは入力部16のカーソル位置で操作対象を特定するから、カーソルが位置付けされている文、もしくは、カーソルの直後の語句は、辞書登録・参照・削除の操作対象である可能性が極めて高く、見出し語として、より適切な候補を表示することができる。
【0036】
また、入力履歴によって、入力予測した語句の候補の優先順を変えるようにしてもよい。例えば、過去に登録してあるものは、登録操作時には優先しないようにするものである。過去に登録したものは優先度を低くすることにより、より適切な候補を表示することができる。
【0037】
また、自然言語の文に対するシステムの処理の確信度を算出し、この確信度の値により後編集の対象となる訳文の提示順序を制御する構成をとる場合には(参考文献:特開平7−200602号公報)、登録操作の予測候補として確信度の低い箇所の語句を優先して提示する。これは、翻訳時の確信度が低い部分ほど、ユーザが辞書登録したい語句が含まれる可能性が高いからである。
【0038】
入力予測した見出し語候補が複数あるときには、初めから一覧表示しておくようにしてもよいし、初めは第一優先の候補を表示し、入力部16の操作により別候補を出すようにしてもよい。例えば、原文にて「抜け出し」が選択されている場合に、辞書登録画面の見出し語領域に、「抜け出す」「抜け出る」を初めから選択できる一覧形式で表示したり、初めに「抜け出す」を表示して次候補キーが押されると「抜け出る」を表示するものである。
【0039】
次に、入力予測範囲が「精巧な文法定義を使って入力予測する。」の1文であり、辞書登録・参照・削除操作時に入力されたキー情報が「せ」であった場合を例にとり、入力予測候補を抽出する処理について説明する。
【0040】
まず、見出し語情報取得部23は、入力部16から入力された見出し語情報が「せ」であることを取得する。
【0041】
入力予測範囲取得部24は、表示部17に表示されている翻訳対象の第一言語の文章を取得する。この場合は、「精巧な文法定義を使って入力予測する。」を取得する。
【0042】
翻訳部25は、入力予測範囲取得部24で取得した「精巧な文法定義を使って入力予測する。」を形態素解析する。形態素解析結果を表1に示す。
【表1】

【0043】
表1の1行目に図示した第一要素は、入力文中の表層文字列である「精巧な文法定義を使って入力予測する。」を形態素に区切って図示している。2行目に図示した第二要素は、第一要素として図示した文字列の辞書に登録されている品詞を図示している。3行目に図示した第三要素は、第一要素で図示した文字列の活用形を図示している。4行目に図示した第四要素は第一要素として図示した表層の文字列を基本形に戻した文字列を図示している。5行目に図示した第五要素は、第一要素として図示した表層の文字列の「読み」情報を図示している。第二要素中の「サ変動詞」とは、「サ行変格活用動詞」の省略表記である。また、「サ変名詞」とは、語尾に「する」を付けるとサ行変格活用動詞になる名詞である。
【0044】
なお、形態素解析結果で品詞や活用の種類を割り出すには、辞書に品詞情報が登録されていること、形態素解析規則に活用情報が蓄積されていることが前提となる。
【0045】
表2に品詞情報が登録されている辞書の登録例を示す。例えば、「使う」というワ行五段活用の動詞の語句に対し、表2に示すように、「使う」について品詞情報が登録されており、表3に示すようにワ行五段活用表が蓄積されていることが前提となる。
【表2】

【表3】

【0046】
語頭・末尾推定部26は、入力予測範囲取得部24の取得した入力予測範囲の文章を対象として、見出し語候補の語句を検索する。その検索の際には、翻訳部25の有する言語解析手段を利用して得られた形態素解析結果から語句の語頭・末尾となり得る部分を判断し、見出し語候補を特定する。また、終止形・原型復元部27は、見出し語候補が終止形・原型でない場合には、見出し語候補の語句を終止形・原型に変更する、
見出し語候補の特定及び見出し語候補の語句を終止形・原型に変更するには、表4に示す候補パターン定義を予め用意しておき、この候補パターン定義を基に見出し語候補の特定及び見出し語候補の語句の終止形・原型への変更を行う。
【表4】

【0047】
表4に5つの候補パターンを定義した規則を図示した。表4での構文を説明する。『(』と『)』で囲まれた範囲は、オプションの定義であり、あってもなくてもよいことを示す。『[』と『]』で囲まれた範囲は、条件を示す。『|』より『&』の方がスコープが狭いことを示す。『,』は、定義の並びを区切っている。定義はその並び順の通りに定義される。『*』は、正規表現で、直前の定義が連続して良いことを示す。
【0048】
規則1では、名詞で終わり、その前に名詞や形容動詞語幹が任意個連続した句を定義している。規則1の定義によると、品詞として各種の名詞が該当し抽出される。規則1に基づくと、入力予測範囲としての文章「精巧な文法定義を使って入力予測する。」から、オプションの定義を含めると「文法定義」、「入力予測」の語句が該当する。また、オプションの定義を含めない場合には、「文法」、「定義」、「入力」、「予測」の語句が該当する。従って、規則1に基づいて、「文法定義」、「入力予測」「文法」、「定義」、「入力」、「予測」の語句が該当することになる
規則2のように条件部のスコープは括弧を付けて示すことができる。『*』は、直前の要素が任意個連続してもよいことを示す。『<活用=終止形>』のように、<>を使った記述は、照合された語句を候補として蓄積する際の形態を指定するためのものである。規則2に「1」とあるのは、規則1の定義をここに当て嵌めることを示す。規則2のように『[]』内で『()』を使用した定義がされている場合には、この『()』内の定義はオプションではなく、必須の定義である。規則2の定義の意味は、『品詞として形容詞又は形容動詞で、且つ、その活用が連体形の詞』が該当する。この規則2により、前方に形容詞や形容動詞連体形を伴う句が該当する。(例では「精巧な文法定義」)。
【0049】
規則3の定義に基づくと、単独の動詞が該当する。『<活用=終止形>』との定義がされているので、文章「精巧な文法定義を使って入力予測する。」においては「使う」が該当する。
【0050】
規則4の定義に基づいて、形容詞や形容動詞が該当する。上記文章においては、「著しい」、「精巧だ」が該当する。
【0051】
規則5の定義に基づいて、副詞が該当する。オプション定義の強意詞には、「とても」や「非常に」等が該当する。
【0052】
よって、規則5の定義に基づくと、オプション定義を含めない場合には、「ゆっくり」等が該当し、オプション定義を含める場合には「とてもゆっくり」や「非常にゆっくり」が該当する。表4において、5つの規則を定義したが、これが全てではなく、目的に沿って文法情報を定義すれば良い。
【0053】
語頭・末尾推定部26は、形態解析結果(表1)の語句の読みと、入力部16から入力された見出し語情報「せ」とが一致する語句があるかどうかを入力予測範囲の対象とされた文章の先頭から検索していく。まず最初の語句が「精巧な」であるので、入力部16から入力された見出し語情報「せ」と一致する。そこで、語頭・末尾推定部26は、「精巧な」について、表4の候補パターン定義の定義規則の先頭から順番に照合していく。これにより、規則1により「文法的」や「文法」が抽出され、規則4により「精巧な」が抽出され、規則2により「精巧な文法」、「精巧な文法定義」が抽出される。この結果、表5に示すように3つの見出し語候補が選択される。
【表5】

【0054】
本発明の実施の形態によれば、見出し語の先頭の何文字かを入力した場合に、入力した文字で始まる見出し語を予測して、残りの文字を自動的に入力または候補一覧を表示するので、語句入力操作を軽減できる。
【符号の説明】
【0055】
11…機械翻訳装置、12…マイクロプロセッサ、13…ROM、14…RAM、15…バス、16…入力部、17…表示部、18…ネットワークインターフェース、19…記憶装置、20…機械翻訳プログラム、21…辞書部、22…制御部、23…見出し語情報取得部、24…入力予測範囲取得部、25…翻訳部、26…語頭・末尾推定部、27…終止形・原型復元部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
翻訳するために語句が登録された翻訳辞書を持ち、この翻訳辞書に基づいて第1言語の文章を第2言語の文章に翻訳する機械翻訳装置において、
前記翻訳辞書に対する新しい語句の登録、登録されている語句の削除、登録されている語句の参照のいずれかの辞書の編集処理をするときに、処理対象の語句を見出し語として指定するためにユーザからの文字列の指定を受け付ける入力手段と、
前記入力手段により入力された文字列に基づいて、見出し語の予測をするために前記第1の言語の文章における入力予測の対象範囲を指定する入力予測範囲指定手段と、
前記入力手段により入力された文字列に基づいて、前記入力予測範囲指定手段で指定された前記第1の言語の文章の範囲の語句の中から、前記ユーザが指定しようとした見出し語の候補となる語句を予測する見出し語予測手段と、
前記見出し語予測手段で得られた見出し語の候補となる語句を終止形または原型に変換する終止形原型復元手段と、
前記終止形原型復元手段で終止形または原型に変換された語句を見出し語候補としてユーザに提示する提示手段とを具備することを特徴とする機械翻訳装置。
【請求項2】
前記見出し語予測手段は、表示装置の画面に表示されている前記第1の言語の文章の範囲の語句の中から、前記ユーザが指定しようとした見出し語の候補となる語句を予測することを特徴とする請求項1記載の機械翻訳装置。
【請求項3】
前記提示手段は、前記翻訳辞書に語句を登録する場合に前記翻訳辞書に登録されていない語句を優先して表示することを特徴とする請求項1記載の機械翻訳装置。
【請求項4】
前記提示手段は、前記翻訳辞書から語句を削除する場合に前記翻訳辞書に登録されている語句を優先して表示することを特徴とする請求項1記載の機械翻訳装置。
【請求項5】
前記提示手段は、前記翻訳辞書に登録されている語句を参照する場合に前記翻訳辞書に登録されている語句を優先して表示することを特徴とする請求項1記載の機械翻訳装置。
【請求項6】
前記提示手段は、ユーザ辞書に登録されている語句を更に優先して表示することを特徴とする請求項3記載、請求項4、請求項5記載の機械翻訳装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−211640(P2010−211640A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58721(P2009−58721)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】