機械要素接合方法
【課題】機械要素を対象部材に強固に接合できるようにする。
【解決手段】一端からボルト１が突出し且つ他端に突起４が形作ってある台座３を、突起４形成端がボルト１を取り付けるべき対象部材２の表面に向き合うように配置し、ツール本体７を回転させながら対象部材２の裏面に押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材２に台座３の突起４をめり込ませ、対象部材２の表面に台座３を拡散接合する。
更に、ツール本体７を対象部材２から引き離し、突起４がめり込んだ対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【解決手段】一端からボルト１が突出し且つ他端に突起４が形作ってある台座３を、突起４形成端がボルト１を取り付けるべき対象部材２の表面に向き合うように配置し、ツール本体７を回転させながら対象部材２の裏面に押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材２に台座３の突起４をめり込ませ、対象部材２の表面に台座３を拡散接合する。
更に、ツール本体７を対象部材２から引き離し、突起４がめり込んだ対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明はボルトやナッドなどを想定した機械要素接合方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
接合すべき部材を溶融させずに相互に接合する技法として摩擦撹拌接合がある（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
この技法では、被接合部材を重ねた被接合物に接合ツールを回転させながら押し付け、摩擦熱と塑性流動により軟化した材料を撹拌して同化させる。
【０００４】
次いで、接合ツールを被接合物から離して材料が同化した部位を硬化させ、被接合部材を相互に接合する。
【特許文献１】特開２００４−１３６３６５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
ところが特許文献１には、材質が異なる部材相互の接合についての提案はなく、炭素鋼を素材にしたボルトやナットなどの機械要素をアルミニウム合金を素材とする対象部材に接合することは達成できない。
【０００６】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、機械要素を対象部材に強固に接合できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するため本発明では、一端から機械要素が突出し且つ他端に機械要素とは同軸ではないように突起が形作られている台座を、突起形成端が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の突起に重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材に台座の突起をめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させる。
【０００８】
あるいは、一方の面から複数の機械要素が突出し且つ他方の面に機械要素ごとに突起が形作られている台座を、突起形成面が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の突起に重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材に台座の突起をめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させる。
【０００９】
つまり、摩擦熱で軟化した対象部材の材料とそれに密着した台座の材料の分子間接合、及び対象部材と台座に形作ってある突起の嵌め合いによって、台座から突出している機械要素を対象部材に接合する。
【００１０】
また、一端から機械要素が突出し且つ他端に機械要素とは同軸ではないように窪みが形作られている台座を、窪み形成端が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の窪みに重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材を台座の窪みにめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させる。
【００１１】
あるいは、一方の面から複数の機械要素が突出し且つ他方の面に機械要素ごとに窪みが形作られている台座を、窪み形成面が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の窪みに重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材を台座の窪みにめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させる。
【００１２】
つまり、摩擦熱で軟化した対象部材の材料とそれに密着した台座の材料の分子間接合、及び対象部材と台座に形作ってある窪みの嵌め合いによって、台座から突出している機械要素を対象部材に接合する。
【００１３】
更に、台座の平面形状よりも先端面が大きい接合ツールを対象部材の裏面に押し付けるようにして、対象部材と台座の密着性を高める。
【発明の効果】
【００１４】
本発明の機械要素接合方法によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【００１５】
（１）接合ツールの回転と押し付けで軟化した対象部材の表面に、台座に形作ってある突起をめり込ませるので、対象部材と台座の分子間接合、及び対象部材と突起の嵌め合いの相乗効果によって、台座とともに機械要素を対象部材に高いトルク強度で接合することができる。
【００１６】
（２）接合ツールの回転と押し付けで軟化した対象部材の表面を、台座に形作ってある窪みにめり込ませるので、対象部材と台座の分子間接合、及び対象部材と窪みの嵌め合いの相乗効果によって、台座とともに機械要素を対象部材に高いトルク強度で接合することができる。
【００１７】
（３）台座の平面形状よりも先端面が大きい接合ツールを用いれば、対象部材と台座の密着性が高まり、分子間接合がより確実になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【００１９】
図１は本発明の機械要素接合方法の第１の例であって、ボルト１を取り付けるべき対象部材２は、アルミニウム合金を素材とするパネルなどである。
【００２０】
ボルト１は平らな形状の台座３の一端から突出しており、これらは炭素鋼を素材とする一体部品で、台座３の他端には、複数の突起４がボルト１に対して同軸に位置しないように形作ってある。
【００２１】
この他に、ボルト１が下向きに入る収納穴５を有する裏当て部材６、並びに対象部材２を塑性変形させるための円柱状のツール本体７を工具として用意する。
【００２２】
裏当て部材６には、ボルト１を中心とした台座３の回動を拘束するストッパ８が設けてあり、また、ツール本体７は、耐摩耗性を有し且つ硬度が高い超硬合金を素材としている。
【００２３】
ツール本体７の先端面７ａは、台座３の平面形状よりもやや大きく形作ってある。
【００２４】
ボルト１を対象部材２に接合する際は、図１（ａ）に示すように、ボルト１が収納穴５に入るように台座３の一端を裏当て部材６に載せ、突起４に向き合うように対象部材２の表面を台座３の他端に載せる。
【００２５】
次いで、図１（ｂ）に示すように、上方からツール本体７を回転させながら対象部材２が台座３に重なっている個所の裏面に押し付け、この付近を摩擦熱により軟化させ、対象部材２の裏面側にツール本体７をめり込ませるとともに、対象部材２の表面側に台座３の突起４をめり込ませ、更に、図１（ｃ）に示すように、対象部材２の表面を台座３の他端に密着させる。
【００２６】
これにより、アルミニウム合金と炭素鋼の間に分子間接合が生じ、対象部材２の表面にボルト１と一体的な台座３が接合する。
【００２７】
対象部材２と台座３との相互性を固めるためには、当該台座３の平面形状よりも先端面７ａが大きいツール本体７を用いることが望ましい。
【００２８】
この後、図１（ｄ）に示すように、ツール本体７を対象部材２から引き離し、当該対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【００２９】
ツール本体７の外径ｄが２０ｍｍ、対象部材２の厚さｔが６ｍｍ、ボルト１の呼び径がＭ８という条件で接合を行なったところ、ボルト１及び台座３と対象部材２のトルク強度は、分子間接合、並びに突起４と対象部材２の嵌め合いの相乗効果によって、５０Ｎ・ｍを超過した。
【００３０】
また、突起４はトルク強度を考慮すると、一つよりも複数であることが望ましい。
【００３１】
図２は本発明の機械要素接合方法の第２の例であって、図中、図１と同一符号を付した部分は同一物を表わしている。
【００３２】
ボルト１は平らな形状の台座９の一端から突出しており、これらは炭素鋼を素材とする一体部品で、台座９の他端には、複数の窪み１０がボルト１に対して同軸に位置しないように形作ってある。
【００３３】
ボルト１を対象部材２に接合するのに際しては、ボルト１が収納穴５に入るように台座９の一端を裏当て部材６に載せ、窪み１０に向き合うように対象部材２の表面を台座９の他端に載せ、上方からツール本体７を回転させながら対象部材２が台座９に重なっている個所の裏面に押し付け、この付近を摩擦熱により軟化させ、対象部材２の裏面側にツール本体７をめり込ませる。
【００３４】
更に、対象部材２に由来する材料を台座９の窪み１０にめり込ませ、対象部材２の表面を台座９の他端に密着させる。
【００３５】
これにより、アルミニウム合金と炭素鋼の間に分子間接合が生じ、対象部材２の表面にボルト１と一体的な台座９が接合する。
【００３６】
この後、ツール本体７を対象部材２から引き離し、当該対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【００３７】
図３は本発明の機械要素接合方法の第３の例であって、図中、図１と同一符号を付した部分は同一物を表わしている。
【００３８】
この例では、複数のボルト１が細長い形状の台座１１の一方の面から突出し、これらは炭素鋼を素材とする一体部品で、台座１１の他方の面には複数の突起４が、各ボルト１の近くに位置するように形作ってある。
【００３９】
この他に、ボルト１が下向きに入る収納穴５を有する裏当て部材１２と、ツール本体７を工具として用意する。
【００４０】
所定のボルト１が収納穴５に入るように、台座１１の一方の面の所定範囲を裏当て部材１２に載せ、対象部材２の表面を台座１１の他方の面の全般にわたってに載せる。
【００４１】
次いで、裏当て部材１２の上方からツール本体７を回転させながら対象部材２の裏面の突起４に対応する個所に押し付け、この付近を摩擦熱と塑性流動により撹拌して軟化させ、対象部材２の裏面側にツール本体７をめり込ませるとともに、対象部材２の表面側に台座１１の突起４をめり込ませ、対象部材２の表面を台座１１の他方の面に密着させる。
【００４２】
この後、ツール本体７を対象部材２から引き離し、当該対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【００４３】
上述したような工程を繰り返し施すと、対象部材２の表面に複数のボルト１と一体的な台座１１が接合することになる。
【００４４】
図４は本発明の機械要素接合方法の第４の例であって、図中、図２と同一符号を付した部分は同一物を表わしている。
【００４５】
この例では、複数のボルト１が細長い形状の台座１３の一方の面から突出し、これらは炭素鋼を素材とする一体部品で、台座１３の他方の面には複数の窪み１０が、各ボルト１の近くに位置するように形作ってある。
【００４６】
台座１３を対象部材２に接合するのに際しては、所定のボルト１が収納穴５に入るように、台座１３の一方の面の所定範囲を裏当て部材１２に載せ、台座１３の他方の面に対象部材２を載せる。
【００４７】
次いで、裏当て部材１２の上方からツール本体７を回転させながら対象部材２の裏面の窪み１０に対応する個所に押し付け、この付近を摩擦熱と塑性流動により撹拌して軟化させ、対象部材２の裏面側にツール本体７をめり込ませるとともに、対象部材２に由来する材料を台座１３の窪み１０にめり込ませ、対象部材２の表面を台座１３の他方の面に密着させる。
【００４８】
この後、ツール本体７を対象部材２から引き離し、当該対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【００４９】
上述したような工程を繰り返し施すと、対象部材２の表面に複数のボルト１と一体的な台座１３が接合することになる。
【００５０】
なお、本発明の機械要素接合方法は、上述の実施の形態のみに限定されるものではなく、機械要素としてナットやピンなどを台座に付帯させるようにすること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【００５１】
本発明の機械要素接合方法は、様々な部品の組付工程に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】本発明の機械要素接合方法の第１の例の施工手順を示す概念図である。
【図２】本発明の機械要素接合方法の第２の例の施工完了状態を示す概念図である。
【図３】本発明の機械要素接合方法の第３の例の施工途上状態を示す概念図である。
【図４】本発明の機械要素接合方法の第４の例の施工途上状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【００５３】
１ ボルト（機械要素）
２ 対象部材
３ 台座
４ 突起
７ ツール本体（接合ツール）
９ 台座
１０ 窪み
１１ 台座
１３ 台座
【技術分野】
【０００１】
本発明はボルトやナッドなどを想定した機械要素接合方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
接合すべき部材を溶融させずに相互に接合する技法として摩擦撹拌接合がある（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
この技法では、被接合部材を重ねた被接合物に接合ツールを回転させながら押し付け、摩擦熱と塑性流動により軟化した材料を撹拌して同化させる。
【０００４】
次いで、接合ツールを被接合物から離して材料が同化した部位を硬化させ、被接合部材を相互に接合する。
【特許文献１】特開２００４−１３６３６５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
ところが特許文献１には、材質が異なる部材相互の接合についての提案はなく、炭素鋼を素材にしたボルトやナットなどの機械要素をアルミニウム合金を素材とする対象部材に接合することは達成できない。
【０００６】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、機械要素を対象部材に強固に接合できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するため本発明では、一端から機械要素が突出し且つ他端に機械要素とは同軸ではないように突起が形作られている台座を、突起形成端が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の突起に重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材に台座の突起をめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させる。
【０００８】
あるいは、一方の面から複数の機械要素が突出し且つ他方の面に機械要素ごとに突起が形作られている台座を、突起形成面が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の突起に重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材に台座の突起をめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させる。
【０００９】
つまり、摩擦熱で軟化した対象部材の材料とそれに密着した台座の材料の分子間接合、及び対象部材と台座に形作ってある突起の嵌め合いによって、台座から突出している機械要素を対象部材に接合する。
【００１０】
また、一端から機械要素が突出し且つ他端に機械要素とは同軸ではないように窪みが形作られている台座を、窪み形成端が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の窪みに重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材を台座の窪みにめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させる。
【００１１】
あるいは、一方の面から複数の機械要素が突出し且つ他方の面に機械要素ごとに窪みが形作られている台座を、窪み形成面が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の窪みに重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材を台座の窪みにめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させる。
【００１２】
つまり、摩擦熱で軟化した対象部材の材料とそれに密着した台座の材料の分子間接合、及び対象部材と台座に形作ってある窪みの嵌め合いによって、台座から突出している機械要素を対象部材に接合する。
【００１３】
更に、台座の平面形状よりも先端面が大きい接合ツールを対象部材の裏面に押し付けるようにして、対象部材と台座の密着性を高める。
【発明の効果】
【００１４】
本発明の機械要素接合方法によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【００１５】
（１）接合ツールの回転と押し付けで軟化した対象部材の表面に、台座に形作ってある突起をめり込ませるので、対象部材と台座の分子間接合、及び対象部材と突起の嵌め合いの相乗効果によって、台座とともに機械要素を対象部材に高いトルク強度で接合することができる。
【００１６】
（２）接合ツールの回転と押し付けで軟化した対象部材の表面を、台座に形作ってある窪みにめり込ませるので、対象部材と台座の分子間接合、及び対象部材と窪みの嵌め合いの相乗効果によって、台座とともに機械要素を対象部材に高いトルク強度で接合することができる。
【００１７】
（３）台座の平面形状よりも先端面が大きい接合ツールを用いれば、対象部材と台座の密着性が高まり、分子間接合がより確実になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【００１９】
図１は本発明の機械要素接合方法の第１の例であって、ボルト１を取り付けるべき対象部材２は、アルミニウム合金を素材とするパネルなどである。
【００２０】
ボルト１は平らな形状の台座３の一端から突出しており、これらは炭素鋼を素材とする一体部品で、台座３の他端には、複数の突起４がボルト１に対して同軸に位置しないように形作ってある。
【００２１】
この他に、ボルト１が下向きに入る収納穴５を有する裏当て部材６、並びに対象部材２を塑性変形させるための円柱状のツール本体７を工具として用意する。
【００２２】
裏当て部材６には、ボルト１を中心とした台座３の回動を拘束するストッパ８が設けてあり、また、ツール本体７は、耐摩耗性を有し且つ硬度が高い超硬合金を素材としている。
【００２３】
ツール本体７の先端面７ａは、台座３の平面形状よりもやや大きく形作ってある。
【００２４】
ボルト１を対象部材２に接合する際は、図１（ａ）に示すように、ボルト１が収納穴５に入るように台座３の一端を裏当て部材６に載せ、突起４に向き合うように対象部材２の表面を台座３の他端に載せる。
【００２５】
次いで、図１（ｂ）に示すように、上方からツール本体７を回転させながら対象部材２が台座３に重なっている個所の裏面に押し付け、この付近を摩擦熱により軟化させ、対象部材２の裏面側にツール本体７をめり込ませるとともに、対象部材２の表面側に台座３の突起４をめり込ませ、更に、図１（ｃ）に示すように、対象部材２の表面を台座３の他端に密着させる。
【００２６】
これにより、アルミニウム合金と炭素鋼の間に分子間接合が生じ、対象部材２の表面にボルト１と一体的な台座３が接合する。
【００２７】
対象部材２と台座３との相互性を固めるためには、当該台座３の平面形状よりも先端面７ａが大きいツール本体７を用いることが望ましい。
【００２８】
この後、図１（ｄ）に示すように、ツール本体７を対象部材２から引き離し、当該対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【００２９】
ツール本体７の外径ｄが２０ｍｍ、対象部材２の厚さｔが６ｍｍ、ボルト１の呼び径がＭ８という条件で接合を行なったところ、ボルト１及び台座３と対象部材２のトルク強度は、分子間接合、並びに突起４と対象部材２の嵌め合いの相乗効果によって、５０Ｎ・ｍを超過した。
【００３０】
また、突起４はトルク強度を考慮すると、一つよりも複数であることが望ましい。
【００３１】
図２は本発明の機械要素接合方法の第２の例であって、図中、図１と同一符号を付した部分は同一物を表わしている。
【００３２】
ボルト１は平らな形状の台座９の一端から突出しており、これらは炭素鋼を素材とする一体部品で、台座９の他端には、複数の窪み１０がボルト１に対して同軸に位置しないように形作ってある。
【００３３】
ボルト１を対象部材２に接合するのに際しては、ボルト１が収納穴５に入るように台座９の一端を裏当て部材６に載せ、窪み１０に向き合うように対象部材２の表面を台座９の他端に載せ、上方からツール本体７を回転させながら対象部材２が台座９に重なっている個所の裏面に押し付け、この付近を摩擦熱により軟化させ、対象部材２の裏面側にツール本体７をめり込ませる。
【００３４】
更に、対象部材２に由来する材料を台座９の窪み１０にめり込ませ、対象部材２の表面を台座９の他端に密着させる。
【００３５】
これにより、アルミニウム合金と炭素鋼の間に分子間接合が生じ、対象部材２の表面にボルト１と一体的な台座９が接合する。
【００３６】
この後、ツール本体７を対象部材２から引き離し、当該対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【００３７】
図３は本発明の機械要素接合方法の第３の例であって、図中、図１と同一符号を付した部分は同一物を表わしている。
【００３８】
この例では、複数のボルト１が細長い形状の台座１１の一方の面から突出し、これらは炭素鋼を素材とする一体部品で、台座１１の他方の面には複数の突起４が、各ボルト１の近くに位置するように形作ってある。
【００３９】
この他に、ボルト１が下向きに入る収納穴５を有する裏当て部材１２と、ツール本体７を工具として用意する。
【００４０】
所定のボルト１が収納穴５に入るように、台座１１の一方の面の所定範囲を裏当て部材１２に載せ、対象部材２の表面を台座１１の他方の面の全般にわたってに載せる。
【００４１】
次いで、裏当て部材１２の上方からツール本体７を回転させながら対象部材２の裏面の突起４に対応する個所に押し付け、この付近を摩擦熱と塑性流動により撹拌して軟化させ、対象部材２の裏面側にツール本体７をめり込ませるとともに、対象部材２の表面側に台座１１の突起４をめり込ませ、対象部材２の表面を台座１１の他方の面に密着させる。
【００４２】
この後、ツール本体７を対象部材２から引き離し、当該対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【００４３】
上述したような工程を繰り返し施すと、対象部材２の表面に複数のボルト１と一体的な台座１１が接合することになる。
【００４４】
図４は本発明の機械要素接合方法の第４の例であって、図中、図２と同一符号を付した部分は同一物を表わしている。
【００４５】
この例では、複数のボルト１が細長い形状の台座１３の一方の面から突出し、これらは炭素鋼を素材とする一体部品で、台座１３の他方の面には複数の窪み１０が、各ボルト１の近くに位置するように形作ってある。
【００４６】
台座１３を対象部材２に接合するのに際しては、所定のボルト１が収納穴５に入るように、台座１３の一方の面の所定範囲を裏当て部材１２に載せ、台座１３の他方の面に対象部材２を載せる。
【００４７】
次いで、裏当て部材１２の上方からツール本体７を回転させながら対象部材２の裏面の窪み１０に対応する個所に押し付け、この付近を摩擦熱と塑性流動により撹拌して軟化させ、対象部材２の裏面側にツール本体７をめり込ませるとともに、対象部材２に由来する材料を台座１３の窪み１０にめり込ませ、対象部材２の表面を台座１３の他方の面に密着させる。
【００４８】
この後、ツール本体７を対象部材２から引き離し、当該対象部材２の塑性変形部位を硬化させる。
【００４９】
上述したような工程を繰り返し施すと、対象部材２の表面に複数のボルト１と一体的な台座１３が接合することになる。
【００５０】
なお、本発明の機械要素接合方法は、上述の実施の形態のみに限定されるものではなく、機械要素としてナットやピンなどを台座に付帯させるようにすること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【００５１】
本発明の機械要素接合方法は、様々な部品の組付工程に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】本発明の機械要素接合方法の第１の例の施工手順を示す概念図である。
【図２】本発明の機械要素接合方法の第２の例の施工完了状態を示す概念図である。
【図３】本発明の機械要素接合方法の第３の例の施工途上状態を示す概念図である。
【図４】本発明の機械要素接合方法の第４の例の施工途上状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【００５３】
１ ボルト（機械要素）
２ 対象部材
３ 台座
４ 突起
７ ツール本体（接合ツール）
９ 台座
１０ 窪み
１１ 台座
１３ 台座
【特許請求の範囲】
【請求項１】
一端から機械要素が突出し且つ他端に機械要素とは同軸ではないように突起が形作られている台座を、突起形成端が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の突起に重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材に台座の突起をめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させることを特徴とする機械要素接合方法。
【請求項２】
一方の面から複数の機械要素が突出し且つ他方の面に機械要素ごとに突起が形作られている台座を、突起形成面が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の突起に重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材に台座の突起をめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させることを特徴とする機械要素接合方法。
【請求項３】
一端から機械要素が突出し且つ他端に機械要素とは同軸ではないように窪みが形作られている台座を、窪み形成端が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の窪みに重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材を台座の窪みにめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させることを特徴とする機械要素接合方法。
【請求項４】
一方の面から複数の機械要素が突出し且つ他方の面に機械要素ごとに窪みが形作られている台座を、窪み形成面が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の窪みに重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材を台座の窪みにめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させることを特徴とする機械要素接合方法。
【請求項５】
台座の平面形状よりも先端面が大きい接合ツールを対象部材の裏面に押し付けるようにする請求項１あるいは請求項３のいずれかに記載の機械要素接合方法。
【請求項１】
一端から機械要素が突出し且つ他端に機械要素とは同軸ではないように突起が形作られている台座を、突起形成端が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の突起に重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材に台座の突起をめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させることを特徴とする機械要素接合方法。
【請求項２】
一方の面から複数の機械要素が突出し且つ他方の面に機械要素ごとに突起が形作られている台座を、突起形成面が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の突起に重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材に台座の突起をめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させることを特徴とする機械要素接合方法。
【請求項３】
一端から機械要素が突出し且つ他端に機械要素とは同軸ではないように窪みが形作られている台座を、窪み形成端が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の窪みに重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材を台座の窪みにめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させることを特徴とする機械要素接合方法。
【請求項４】
一方の面から複数の機械要素が突出し且つ他方の面に機械要素ごとに窪みが形作られている台座を、窪み形成面が機械要素を取り付けるべき対象部材の表面に向き合うように配置し、次いで、接合ツールを回転させながら対象部材の裏面の窪みに重なっている個所へ押し付け、摩擦熱によって軟化した対象部材を台座の窪みにめり込ませ、この後、接合ツールを対象部材から引き離し、当該対象部材の塑性変形部位を硬化させることを特徴とする機械要素接合方法。
【請求項５】
台座の平面形状よりも先端面が大きい接合ツールを対象部材の裏面に押し付けるようにする請求項１あるいは請求項３のいずれかに記載の機械要素接合方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００７−１６０３７２（Ｐ２００７−１６０３７２Ａ）
【公開日】平成１９年６月２８日（２００７．６．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３６２２０５（Ｐ２００５−３６２２０５）
【出願日】平成１７年１２月１５日（２００５．１２．１５）
【出願人】（０００００５４６３）日野自動車株式会社 (1,484)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年６月２８日（２００７．６．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１２月１５日（２００５．１２．１５）
【出願人】（０００００５４６３）日野自動車株式会社 (1,484)
【Ｆターム（参考）】
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