機械部品組立体、機械部品組立体の製造方法、および時計
【課題】 脆性材料で構成されている機械部品に軸部材を嵌合させる際に破損せず、かつ回動させる際に機械部品と軸部材がすべらない機械部品組立体および時計を提供する。
【解決手段】 シリコンを主成分として構成され、軸部材126fを嵌合可能な貫通孔126kを有する機械部品126gと、金属材料を主成分として構成された軸部材126fと、を嵌合させた機械部品組立体126において、貫通孔126kの内周面のみが金属層126sで覆われており、金属層126sと軸部材126fをはんだ接合し、はんだ層126rを形成することで機械部品126gと軸部材126fが固定されている。
【解決手段】 シリコンを主成分として構成され、軸部材126fを嵌合可能な貫通孔126kを有する機械部品126gと、金属材料を主成分として構成された軸部材126fと、を嵌合させた機械部品組立体126において、貫通孔126kの内周面のみが金属層126sで覆われており、金属層126sと軸部材126fをはんだ接合し、はんだ層126rを形成することで機械部品126gと軸部材126fが固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品組立体、機械部品組立体の製造方法および時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、時計などの精密機械に用いられる歯車などの機械部品を軸部材に嵌合させて使用する方法が知られている。この方法では、歯車などの機械部品を回動させる際、軸部材との嵌合部ですべらないよう、両者をしっかりと固定する必要がある。そのため、しめしろを設けて圧入し、はんだで接合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、時計などの精密機械に用いられる歯車は外形が小さく、厚みも薄いため、歯車に軸部材を嵌合させる際の応力が大きい。
【0003】
さらに、近年では時計などの精密機器用の機械部品には、シリコン(Si)など、半導体加工技術で精度よく加工できる材料が用いられるようになってきた。しかし、脆性材料であるSi製の歯車に軸部材を嵌合させた場合、歯車が破損してしまうことがある。このような課題を受け、Si製歯車の強度を増す方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−23622号公報
【特許文献2】特開2009−79234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている機械部品では、はんだで接合されているので歯車を回動させてもすべることはないが、しめしろを設けて軸部材を圧入して嵌合させるので、シリコンなどの脆性材料で形成された歯車が変形・破損するおそれがあった。また、特許文献2に記載されている機械部品では、強度は増しているが、軸部材と嵌合させて使用する際にすべらないようにするため、十分にしめしろを設けて圧入する必要があり、脆性材料で構成されている歯車が破損する可能性が高かった。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、脆性材料で構成されている機械部品に軸部材を嵌合させる際に破損せず、かつ回動させる際に機械部品と軸部材がすべらない機械部品組立体および時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る機械部品組立体は、Siを主成分として構成され、軸部材を嵌合可能な貫通孔を有する機械部品と、金属材料を主成分として構成された軸部材と、を嵌合させた機械部品組立体において、貫通孔の内周面のみが金属層で覆われており、金属層と軸部材とをはんだ接合し、機械部品と軸部材が固定されていることを特徴としている。
このように構成することで、機械部品と軸部材を確実に接合することができる。
【0008】
また、機械部品の貫通孔の内径の最小許容寸法が、軸部材の外径の最大許容寸法よりも小さく、かつ機械部品の貫通孔の内径の最大許容寸法が、軸部材の外径の最小許容寸法よりも大きいことを特徴としている。
このように構成することで、機械部品に軸部材を嵌合する際に、機械部品に応力が発生しないか、発生しても非常に小さい。そのため、機械部品が破損するのを防ぐことができる。また、機械部品と軸部材との位置決め精度に優れている。
【0009】
また、金属層が貫通孔の深さよりも小さい範囲に形成されている機械部品と、軸部材と、を嵌合させた機械部品組立体において、貫通孔の軸方向少なくとも一端部に隙間があることを特徴としている。
このように構成することで、はんだをつけすぎてもはんだが隙間に溜まるので、はんだが機械部品組立体の表面にもれず、外観を損ねることがない。
【0010】
また、軸部材において、機械部品との嵌合部に金属層が形成されていることを特徴としている。
このように構成することで、軸部材の嵌合部にはんだがつきやすくなり、機械部品と軸部材との接合強度が増す。
【0011】
また、軸部材において、機械部品との嵌合部の外周にわたって少なくとも一つの溝が形成されていることを特徴としている。
このように構成することで、軸部材の嵌合部にはんだがいきわたりやすくなるので、機械部品と軸部材との接合強度が増す。
【0012】
また、金属層が、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、銀(Ag)、コバルト(Co)のいずれか、あるいはそれらの金属のうち少なくとも一つの元素を含んだ合金で構成されていることを特徴としている。
このように構成することで、よりはんだがつきやすくなり、機械部品と軸部材との接合強度が増す。
【0013】
また、機械部品組立体が軸部材を中心に回動可能に構成されていることを特徴としている。
このように構成することで、機械部品組立体を回動運動させる際に、機械部品と軸部材のすべりを抑制することができる。
【0014】
また、機械部品が歯車であることを特徴としている。
このように構成することで、歯車を回動運動させる際に、歯車と軸部材とのすべりを抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る機械部品組立体の製造方法は、軸部材を嵌合可能な貫通孔を有する機械部品と、軸部材とを嵌合させた機械部品組立体の製造方法であって、Si基板の上層における機械部品の形成領域に二酸化ケイ素(SiO2)膜を形成する工程と、SiO2膜を用いて上層を下層まで異方性エッチングするエッチング工程と、エッチングされたSi基板の表面を金属層で覆う工程と、金属層の表面にレジストを塗布する工程と、貫通孔の内部を残してレジストを除去する工程と、貫通孔の内周面を残して金属層を除去する工程と、貫通孔に軸部材を嵌合する工程と、金属層と軸部材とをはんだ接合する工程と、を有していることを特徴としている。
このように半導体プロセスを利用して機械部品を製造することにより、精密機械加工を用いることなく低コストではんだ接合のための金属層を形成することができる。また、機械部品を精度よく製造することができる。そして、軸部材を嵌合し、はんだ接合することにより、機械部品と軸部材との接合が強固な機械部品組立体を製造することができる。
【0016】
また、レジストを除去する工程で、Si基板を軸部材の嵌合方向を軸に回転させながらレジストに斜め方向から露光光を照射することを特徴としている。
このように機械部品を製造することにより、機械部品の貫通孔と軸部材との間の、機械部品の貫通孔の軸方向少なくとも一端部に、隙間が形成された機械部品組立体を製造することができる。したがって、前記隙間にはんだが溜まるので、はんだが機械部品組立体の表面に出て外観を損ねることがない。
【0017】
また、本発明に係る時計は、上述した機械部品組立体が時計の組立部品に用いられていることを特徴としている。
また、組立部品が、番車、がんぎ車およびアンクルの少なくともいずれか一つであることを特徴としている。
このように構成することで、機械部品と軸部材を嵌合する際の応力をなくすことができるので、時計の組立部品に変形が生じるのを抑制することができる。したがって、番車、がんぎ車、およびアンクルが正確に回動するために時計の精度を向上させることができる。また、機械部品と軸部材ははんだ接合で固定されているため、すべりが起こらず、番車、がんぎ車、およびアンクルは確実に回動運動することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る機械部品組立体によれば、機械部品と軸部材を嵌合すると、機械部品の貫通孔の内径と軸部材の嵌合部の外径が損傷しないで分解・組立できるはめあい公差のため、応力が発生しないか、発生したとしても非常に小さい。すなわち、機械部品が破損するのを防ぐことができる。さらに、高精度の位置決めが可能なはめあい公差を有しているため、機械部品と軸部材を精度よく組むことができる。そして、機械部品と軸部材とをはんだ接合によって固定しているため、機械部品組立体が回動運動する際に、機械部品と軸部材とがすべるのを抑制することができる。したがって、本発明の機械部品を用いた時計は、精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における機械式時計のムーブメント表側の平面図である(一部の部品を省略し、受部材は仮想線で示している)。
【図2】本発明の実施形態における香箱からがんぎ車の部分を示す概略部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるがんぎ車からてんぷの部分を示す概略部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態における三番車を示す上面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図5の三番歯車と三番かなを嵌合する前の断面図である。
【図7】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(1)である。
【図8】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(2)である。
【図9】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(3)である。
【図10】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(4)である。
【図11】図10の状態を示す平面図である。
【図12】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(5)である。
【図13】図12の状態を示す平面図である。
【図14】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(6)である。
【図15】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(7)である。
【図16】図15の状態を示す平面図である。
【図17】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(8)である。
【図18】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(9)である。
【図19】図18の状態を示す平面図である。
【図20】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(10)である。
【図21】図20の状態を示す平面図である。
【図22】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(11)である。
【図23】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(12)である。
【図24】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(13)である。
【図25】図24の状態を示す平面図である。
【図26】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(14)である。
【図27】図26の状態を示す平面図である。
【図28】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(15)である。
【図29】図28の状態を示す平面図である。
【図30】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(16)である。
【図31】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法に用いるフォトマスクを示す平面図である。
【図32】本発明の第二実施形態における三番車の断面図である。
【図33】図32の三番歯車と三番かなを嵌合する前の断面図である。
【図34】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(1)である。
【図35】図34の露光方法を示す説明図である。
【図36】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(2)である。
【図37】図36の状態を示す平面図である。
【図38】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(3)である。
【図39】図38の状態を示す平面図である。
【図40】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(4)である。
【図41】図40の状態を示す平面図である。
【図42】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(5)である。
【図43】本発明の別の実施形態における三番かなの断面図である。
【図44】本発明の別の実施形態における三番かなの断面図である。
【図45】本発明の別の実施形態における三番かなの断面図である。
【図46】本発明の別の実施形態における三番かなの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態)
次に、本発明に係る機械部品組立体の第一実施形態を図1〜図29に基づいて説明する。なお、本実施形態では、機械部品組立体として機械式時計に用いられる番車(歯車とかな)の場合について説明する。
【0021】
(機械式時計)
図1〜図3に示すように、機械式時計のムーブメント100は、ムーブメント100の基板を構成する地板102を有している。地板102の巻真案内穴102aには、巻真110が回転可能に組み込まれている。文字板104(図2参照)はムーブメント100に取り付けられる。一般に、地板102の両側のうち、文字板104が配される側をムーブメント100の裏側と称し、文字板104が配される側の反対側をムーブメント100の表側と称する。ムーブメント100の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント100の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
【0022】
おしどり190、かんぬき192、かんぬきばね194、裏押さえ196を含む切換装置により、巻真110の軸線方向の位置が決められている。きち車112は巻真110の案内軸部に回転可能に設けられている。巻真110が、回転軸線方向に沿ってムーブメント100の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真110を回転させると、つづみ車の回転を介してきち車112が回転する。丸穴車114は、きち車112の回転により回転する。また、角穴車116は、丸穴車114の回転により回転する。角穴車116が回転することにより、香箱車120に収容されたぜんまい122(図2参照)を巻き上げる。
【0023】
二番車124は、香箱車120の回転により回転する。がんぎ車130は、四番車128、三番車126、二番車124の回転を介して回転する。香箱車120、二番車124、三番車126、四番車128は表輪列を構成する。
【0024】
表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置は、てんぷ140と、がんぎ車130と、アンクル142とを含む。てんぷ140は、てん真140aと、ひげぜんまい140cとを含む。二番車124の回転に基づいて、筒かな150が同時に回転する。筒かな150に取り付けられた分針152が「分」を表示する。筒かな150には、二番車124に対するスリップ機構が設けられている。筒かな150の回転に基づいて、日の裏車の回転を介して、筒車154が回転する。筒車154に取り付けられた時針156が「時」を表示する。
【0025】
ひげぜんまい140cは、複数の巻き数をもったうずまき状(螺旋状)の形態の薄板ばねである。ひげぜんまい140cの内端部は、てん真140aに固定されたひげ玉140dに固定され、ひげぜんまい140cの外端部は、てんぷ受166に固定されたひげ持受170に取り付けたひげ持170aを介してねじ締めにより固定されている。緩急針168は、てんぷ受166に回転可能に取り付けられている。また、てんぷ140は、地板102およびてんぷ受166に対して回転可能に支持されている。
【0026】
香箱車120は、香箱歯車120dと、香箱真120fと、ぜんまい122とを備えている。香箱真120fは、上軸部120aと、下軸部120bとを含む。
【0027】
二番車124は、上軸部124aと、下軸部124bと、かな部124cと、歯車部124dと、そろばん玉部124hとを含む。二番車124のかな部124cは香箱歯車120dと噛み合うように構成されている。
【0028】
三番車126は、上軸部126aと、下軸部126bと、かな部126cと、歯車部126dとを含む。三番車126のかな部126cは歯車部124dと噛み合うように構成されている。
【0029】
四番車128は、上軸部128aと、下軸部128bと、かな部128cと、歯車部128dとを含む。四番車128のかな部128cは歯車部126dと噛み合うように構成されている。
【0030】
がんぎ車130は、上軸部130aと、下軸部130bと、かな部130cと、歯車部130dとを含む。がんぎ車130のかな部130cは歯車部128dと噛み合うように構成されている。アンクル142は、アンクル体142dと、アンクル真142fとを備えている。アンクル真142fは、上軸部142aと、下軸部142bとを含む。
【0031】
香箱車120は、地板102および香箱受160に対して回転可能に支持されている。すなわち、香箱真120fの上軸部120aは、香箱受160に対して回転可能に支持される。香箱真120fの下軸部120bは、地板102に対して、回転可能に支持される。二番車124、三番車126、四番車128、がんぎ車130は、地板102および輪列受162に対して回転可能に支持されている。すなわち、二番車124の上軸部124a、三番車126の上軸部126a、四番車128の上軸部128a、がんぎ車130の上軸部130aは、輪列受162に対して回転可能に支持される。また、二番車124の下軸部124b、三番車126の下軸部126b、四番車128の下軸部128b、がんぎ車130の下軸部130bは、地板102に対して、回転可能に支持される。
【0032】
アンクル142は、地板102およびアンクル受164に対して回転可能に支持されている。すなわち、アンクル142の上軸部142aは、アンクル受164に対して回転可能に支持される。アンクル142の下軸部142bは、地板102に対して、回転可能に支持される。
【0033】
香箱真120fの上軸部120aを回転可能に支持する香箱受160の軸受部と、二番車124の上軸部124aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、三番車126の上軸部126aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、四番車128の上軸部128aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、がんぎ車130の上軸部130aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、アンクル142の上軸部142aを回転可能に支持するアンクル受164の軸受部には、潤滑油が注油される。また、香箱真120fの下軸部120bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、二番車124の下軸部124bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、三番車126の下軸部126bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、四番車128の下軸部128bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、がんぎ車130の下軸部130bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、アンクル142の下軸部142bを回転可能に支持する地板102の軸受部には、潤滑油が注油される。この潤滑油は、精密機械用油であるのが好ましく、いわゆる時計油であるのが特に好ましい。
【0034】
地板102のそれぞれの軸受部、香箱受160の軸受部、輪列受162のそれぞれの軸受部には、潤滑油の保持性能を高めるために、円錐状、円筒状、または円錐台状の油溜め部を設けるのが好ましい。油溜め部を設けると、潤滑油の表面張力により油が拡散するのを効果的に阻止することができる。地板102、香箱受160、輪列受162、アンクル受164は、黄銅などの金属で形成してもよいし、ポリカーボネートなどの樹脂で形成してもよい。
【0035】
(番車の構造)
次に、本実施形態の番車の構造について説明する。なお、番車の構造は略同一であるため、三番車126を用いて説明する。
【0036】
図4〜図6に示すように、三番車126は、三番かな126fと、三番歯車126gとを備えている。三番車126gの厚さT0は、例えば、10μm以上10mm以下である。三番かな126fは、上軸部126aと、下軸部126bと、嵌合部126qと、かな部126cとを備えている。三番かな126fは、軸部とかな部126cを一体成型してもよいし、別々に形成し、軸部をかな部126cに嵌合させてもよい。三番歯車126gは、Si部126pと、金属部126sと、はんだ層126rとを備えている。Si部126pは、中心支持部126hと、あみだ部126j(本実施形態では、5本)と、歯車部126dとを備えている。三番かな126fは、炭素鋼などの金属で形成されている。三番歯車126gは、金属部126sはAu、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの金属や、あるいはそれらの金属のうち少なくとも一つの元素を含んだ合金で形成され、Si部126pはSiで形成され、はんだ層126rは、Sn−Cu、Sn−Ag、Sn−ビスマス(Bi)、Sn−鉛(Pb)などのはんだで形成されている。なお、金属部126sがはんだ層126rと同一の材料で形成されていてもよい。そして、三番車126は、三番歯車126gの中心に形成された貫通孔126kに三番かな126fを挿通し、はんだ層126rで固定されている。ここで、三番歯車126gのSi部126pの中心支持部126hには、直径D2の貫通孔126lが形成されている。三番歯車126gの金属部126sは、三番歯車126gの貫通孔126lの内周面に形成されている。さらに、三番歯車126gのはんだ層126rは、金属部126sの表面に形成されている。そして、三番歯車126gのはんだ層126rの内周面が、直径D1の三番歯車126gの貫通孔126kを形成している。このはんだ層126rが直径D3の三番かな126fの嵌合部126qに当接され、はんだ接合によって固定されている。金属部126sとはんだ層126rを併せた厚さT1は、例えば1μm以上100μm以下である。三番歯車126gの貫通孔126kの直径D1と、三番かな126fの嵌合部126qの直径D3は、高精度の位置決めが可能なはめあい公差を有している。そして、三番歯車126gと三番かな126fは、損傷しないで分解・組立てできるが、回動させる際には、三番歯車126gの貫通孔126kと三番かな126fの嵌合部126qとを固定させ、すべりを防止する必要がある。このようなはめあい公差は、例えば、三番歯車126gの厚さT0が3mm以下のとき、三番歯車126gの貫通孔126kの直径D1の公差が0μm〜+6μmで、三番かな126fの嵌合部126qの直径D3の公差が−2μm〜+2μmの組合せか、三番歯車126gの貫通孔126kの直径D1の公差が0μm〜+10μmで、三番かな126fの嵌合部126qの直径D3の公差が0μm〜+6μmの組合せである。また、三番歯車126gのSi部126pの貫通孔126lの直径D2は、三番歯車126gの貫通孔126kの直径D1よりも金属部126sとはんだ層126rを併せた厚さT1の2倍だけ大きい。
【0037】
(番車の製造方法)
次に、本実施形態の番車の製造方法について説明する。なお、番車の構造は略同一であるため、三番車126を用いて説明する。図7〜図29は三番車126の製造方法を説明する図である。
【0038】
図7は、三番歯車126gのSi部126pを形成するためのSi基板10である。Si基板10の厚さは、製造する三番歯車126gのSi部126pの厚さT0とする。
【0039】
図8は、SiO2膜12を形成した図である。Si基板10の上に、二酸化ケイ素(SiO2)膜12を形成する。SiO2膜12は、スパッタやCVD(Chemical Vapor Deposition)などの方法を用いて製造することができる。SiO2膜12の厚さは10nm以上10μm以下で形成する。
【0040】
図9は、フォトレジスト11を塗布した図である。SiO2膜12上にフォトレジスト11を堆積する。フォトレジスト11はネガ型でもポジ型でもよい。フォトレジスト11の厚さは1μm以上1mm以下で形成する。
【0041】
図10は、フォトレジスト11を露光・現像した図である。三番歯車126gのSi部126pに相当するパターンが形成されたフォトマスク(図29)を用いて、フォトレジスト11に紫外線やX線等の露光光を照射し、三番歯車126gのSi部126pに当たる部分のフォトレジスト11を硬化させる。そして、未硬化のフォトレジスト11部分を除去し、SiO2膜12のエッチングパターンが完成する。図11は、図10の平面図である。
【0042】
図12は、SiO2膜12をエッチングした図である。フォトレジスト11の部分を残して、露出しているSiO2膜12をエッチングする。エッチングはドライエッチングでもウエットエッチングでもよい。例えば、ドライエッチングの場合は、エッチングガスに三フッ化メタン(CHF3)などを用い、ウエットエッチングの場合は、エッチング液にフッ酸(HF)などを用いる。図13は図12の平面図である。
【0043】
図14は、フォトレジスト11を除去した図である。エッチングによってフォトレジスト11を除去する。この工程は、後の工程に差し支えなければ省略してもよい。
【0044】
図15は、Si基板をエッチングした図である。SiO2膜12の部分を残して、Si基板10を底面側まで垂直な方向に異方性エッチングする。Si基板10の異方性エッチングは、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)などのドライエッチング加工で行う。エッチングガスには、例えば六フッ化硫黄(SF6)などを用いる。図16は図15の平面図である。
【0045】
図17は、SiO2膜12を除去した図である。エッチングによってSiO2膜12を除去し、三番歯車126gのSi部126pが完成する。エッチングはドライエッチングでもウエットエッチングでもよい。例えば、ドライエッチングの場合は、エッチングガスにCHF3などを用い、ウエットエッチングの場合は、エッチング液にHFなどを用いる。この工程は、後の工程に差し支えなければ省略してもよい。
【0046】
図18は、金属層13を形成した図である。Si基板10の表面に金属層13を形成する。金属層13は、蒸着、スパッタ、めっき等の方法を用いて製造することができる。金属層13は、Si基板10の内周面10kに形成されている。なお、図18では金属層13はSi基板10の外周面10jと底面10hにも形成されているが、外周面10jと底面10hには形成しなくてもよい。金属層13を形成する材料は、この後のはんだ工程ではんだのつきやすい、Au、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの金属や、Ni−Au、Co−Auなどの合金である。金属層13の厚さは三番歯車126gの金属部126sとはんだ層126rを併せた厚さT1以下になるように形成する。図19は、図18の平面図である。
【0047】
図20は、はんだ層18を形成した図である。金属層13の表面に、さらにはんだ層18を形成する。はんだ層18は、めっき等の方法を用いて製造することができる。はんだ層18は、Si基板10の内周面10kに形成された金属層13sの表面にも形成されている。はんだ層18を形成する材料は、Sn−Cu、Sn−Ag、Sn−Bi、Sn−Pbなどである。はんだ層18の厚さは、はんだ層18と金属層13を併せた厚さが、三番歯車126gの金属部126sとはんだ層126rを併せた厚さT1になるように形成する。図21は、図20の平面図である。
【0048】
図22は、フォトレジスト25を塗布した図である。Si基板10の、三番歯車126gの貫通孔126kにあたる部分、つまり図22でははんだ層18sに囲まれた部分をネガ型のフォトレジスト25で埋める。
【0049】
図23はフォトレジスト25を露光・現像した図である。フォトレジスト25にSi基板10の底面10hの側から紫外線やX線等の露光光を照射し、はんだ層18sに囲まれた部分のフォトレジスト25を硬化させる。そして、未硬化のフォトレジスト25部分を除去し、はんだ層18sに囲まれた部分のみフォトレジスト25を残す。なお、三番歯車126gの貫通孔126kに相当するパターンが形成されたフォトマスク(不図示)を用いて露光する場合は、フォトレジスト25にポジ型を使用してもよい。
【0050】
図24ははんだ層18をエッチングした図である。Si基板10の内周に形成されたはんだ層18sを残してはんだ層18をエッチングする。このとき残ったはんだ層18sが、三番歯車126gのはんだ層126rにあたる。エッチングは、ウエットプロセスの方が簡便である。エッチング液には、例えば王水を用いる。このとき、金属層13を形成する材料がAu、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの場合、金属層13もSi基板の内周面10kに形成された金属層13sを残して同時にエッチングすることができる。図25は、図24の平面図である。
【0051】
図26は、金属層13をエッチングした図である。Si基板10の内周面10kに形成された金属層13sを残して金属層13をエッチングする。エッチングは、ウエットプロセスの方が簡便である。例えば、金属層13を形成する材料がAuの場合、エッチング液にはヨウ素とヨウ化カリウムの溶液などを用いる。このとき残った金属層13sが、三番歯車126gの金属部126sにあたる。図27は、図26の平面図である。
【0052】
図28は、フォトレジスト25を除去した図である。フォトレジスト25をエッチングあるいは物理的な力等によって除去し、三番歯車126gが完成する。図29は図28の平面図である。
【0053】
図30は、三番歯車126gに三番かな126fを嵌合した図である。三番歯車126gの貫通孔126kに三番かな126fを嵌合する。そして、この状態ではんだ層18sを形成するはんだ材料の融点まで加熱すると、はんだ層18sが溶融し、三番歯車126gの内周面126kと三番かな126fの嵌合部126qにおいて、三番歯車126gと三番かな126fが接合され、三番車126が完成する。
【0054】
このようにして製造された三番車126は、はんだ層126rによって三番歯車126gと三番かな126fを接合している。このように構成することで、三番車126を回動させる際に、三番歯車126gと三番かな126fがすべるのを抑制することができる。
【0055】
また、三番車126は、三番歯車126gの貫通孔126kと三番かな126fの嵌合部126qのはめあいが中間ばめのため、貫通孔126kに三番かな126fを嵌合する際に、三番歯車126gに応力が発生しないか、応力が発生したとしても非常に小さい。そのため、三番歯車126gが破損するのを防ぐことができる。さらに、三番歯車126gの金属部126sを軟らかい金属(例えばAu)にすれば、応力が発生した場合でも、軟らかい金属部126sが応力を緩和する。そのため、三番歯車126gに破損が生じるのを防ぐことができる。したがって、三番車126の寸法精度が向上し、三番車126を用いた機械式時計の精度を向上させることができる。
【0056】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る機械部品の第二実施形態を図32〜図42に基づいて説明する。なお、本実施形態は、第一実施形態と歯車(三番歯車)の金属部の形状が異なるのみであり、その他の部分については第一実施形態と略同一であるため、同一箇所には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、本実施形態における三番車の符号を226とし、三番歯車の符号を226g、三番かなの符号を226fとする。
【0057】
図32に示すように、三番車226は、三番かな226fと、三番歯車226gとを備えている。三番車226gの厚さT0は、例えば、10μm以上10mm以下である。三番かな226fは、上軸部226aと、下軸部226bと、嵌合部226qと、かな部226cとを備えている。三番かな226fは、軸部とかな部226cを一体成型してもよいし、別々に形成し、軸部をかな部226cに嵌合させてもよい。三番歯車226gは、Si部226pと、金属部226sと、はんだ層126rとを備えている。Si部226pは、中心支持部226hと、あみだ部226jと、歯車部226dとを備えている。三番かな226fは、炭素鋼などの金属で形成されている。三番歯車226gは、金属部226sはAu、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの金属や、あるいはそれらの金属のうち少なくとも一つの元素を含んだ合金で形成され、Si部226pはSiで形成され、はんだ層126rはSn−Cu、Sn−Ag、Sn−Bi、Sn−Pbなどのはんだで形成されている。なお、金属部226sがはんだ層126rと同一の材料で形成されていてもよい。そして、三番車226は、三番歯車226gの中心に形成された貫通孔226kに三番かな226fを挿通し、はんだ層126rで固定されている。ここで、図30に示すように、三番歯車226gのSi部226pの中心支持部226hには、直径D2の貫通孔226lが形成されている。三番歯車226gの金属部226sは、三番歯車226gのSi部226pの貫通孔226lの内周面に形成されている。ただし、金属部226sの幅W1は、三番歯車226gの厚みT0よりも小さい。さらに、三番歯車226gのはんだ層126rは、金属部226sの表面に形成されている。そして、三番歯車226gのはんだ層126rの内周面が、直径D1の三番歯車226gの貫通孔226kを形成している。このはんだ層126rが直径D3の三番かな226fの嵌合部226qに当接され、はんだ接合によって固定されている。ただし、三番歯車226gの厚みT0は金属部226sの幅W1よりも大きいので、三番歯車226gのSi部226pの貫通孔226lの内周面の一部も、三番歯車226gの貫通孔226kの内周面を形成している。そのため、三番歯車226gのSi部226pの貫通孔226lの内周面が、三番歯車226gの貫通孔226kの内周面を形成している部分と、三番かな226fの嵌合部226qとの間に、隙間226tが形成される。金属部226sとはんだ層126rを併せた厚さT1は、例えば1μm以上100μm以下である。三番歯車226gの貫通孔226kの直径D1と、三番かな226fの嵌合部226qの直径D3は、高精度の位置決めが可能なはめあい公差を有している。そして、三番歯車226gと三番かな226fは、損傷しないで分解・組立てできるが、回動させる際には、三番歯車226gの貫通孔226kと三番かな226fの嵌合部226qとを固定させ、すべりを防止する必要がある。このようなはめあい公差は、例えば、三番歯車226gの厚さT0が3mm以下のとき、三番歯車226gの貫通孔226kの直径D1の公差が0μm〜+6μmで、三番かな226fの嵌合部226qの直径D3の公差が−2μm〜+2μmの組合せか、三番歯車226gの貫通孔226kの直径D1の公差が0μm〜+10μmで、三番かな226fの嵌合部226qの直径D3の公差が0μm〜+6μmの組合せである。また、三番歯車226gのSi部226pの貫通孔226lの直径D2は、三番歯車226gの貫通孔226kの直径D1よりも金属部226sとはんだ層126rを併せた厚さT1の2倍だけ大きい。
【0058】
(番車の製造方法)
次に、本実施形態の番車(三番車226)の製造方法について説明する。図34〜図42は三番車226の製造方法を説明する図である。なお、フォトレジスト25を塗布する工程までは、第一実施形態と同様の工程なので、説明を省略する。
【0059】
図34はフォトレジスト25を露光・現像した図である。ポジ型のフォトレジスト25に紫外線やX線等の露光光を照射し、金属層13の内周面に形成されたはんだ層18sに囲まれた部分のフォトレジスト25を硬化させる。そして、未硬化のフォトレジスト25部分を除去し、三番歯車226gの金属部226sの幅W1に相当する範囲にのみフォトレジスト25を残す。
【0060】
図35は、露光方法を説明する図である。Si基板10を軸Bを基準に回転させながら、Si基板10に対して斜めに露光光46を照射する。Si基板10と露光光46の角度は、三番歯車226gの金属部226sの幅W1に応じて決まる。図32では、Si基板10の上下両側から露光光46を照射しているが、隙間を片側にしか設けない場合は、隙間を設ける側からのみ露光光46を照射すればよい。
【0061】
図36は、はんだ層18をエッチングした図である。Si基板10の内周の形成された、三番歯車226gの金属部226sの幅W1に相当する範囲のはんだ層18sを残してはんだ層18をエッチングする。このとき残ったはんだ層18sが、三番歯車126gのはんだ層126rにあたる。エッチングは、ウエットプロセスの方が簡便である。エッチング液には、例えば王水を用いる。このとき、金属層13を形成する材料がAu、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの場合、金属層13もSi基板の内周面10kに形成された金属層13sを残して同時にエッチングすることができる。図37は図36の平面図である。
【0062】
図38は、金属層13をエッチングした図である。Si基板10の内周面10kに形成された、三番歯車226gの金属部226sの幅W1に相当する範囲の金属層13sを残して金属層13をエッチングする。エッチングは、ウエットプロセスの方が簡便である。例えば、金属層13を形成する材料がAuの場合、エッチング液にはヨウ素とヨウ化カリウムの溶液などを用いる。このとき残った金属層13sが、三番歯車226gの金属部226sにあたる。図39は、図38の平面図である。
【0063】
図40は、フォトレジスト25を除去した図である。フォトレジスト25をエッチングあるいは物理的な力等によって除去し、三番歯車226gが完成する。図41は図40の平面図である。
【0064】
図42は、三番歯車226gに三番かな226fを嵌合した図である。三番歯車226gの貫通孔226kに三番かな226fを嵌合する。そして、この状態ではんだ層18sを形成するはんだ材料の融点まで加熱すると、はんだ層18sが溶融し、三番歯車226gの内周面226kと三番かな226fの嵌合部226qにおいて、三番歯車226gと三番かな226fが接合され、三番歯車226が完成する。
【0065】
このようにして製造された三番車226は、隙間226tを有している。このように構成することで、第一実施形態と略同一の作用を得られることができるとともに、はんだ層226rを溶融してもはんだが隙間226tに溜まるので、三番車226の表面にはんだがもれず、外観を損ねることがない。
【0066】
また、本実施形態では、歯車とかなが嵌合する歯車の貫通孔の内周面のみに金属部を形成した場合の説明をしたが、図43に示すように、三番かな326fの嵌合部326qの周囲に渡って金属部326mを形成してもよい。金属部326mは、Au、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどはんだのつきやすい金属や、Ni−Au、Co−Auなどの合金で形成されている。このように構成することで、三番かなの嵌合部にはんだがつきやすくなり、三番歯車と三番かなとの接合強度が増すので、三番車を回動させる際にすべりを抑制することができる。さらに、金属部326mの表面にのみはんだがのるので、溶融したはんだが三番車の表面にもれず、外観を損ねることがない。
【0067】
また、図44に示すように、三番かな424fの嵌合部424qの外周に渡って樹脂426vを上下に形成してもよい。樹脂426vは、ポリイミド、シリコーンなど、はんだ層426rを形成するはんだの融点よりも高い融点を持つ樹脂で形成する。このように構成することで、溶融したはんだが上下の樹脂426vの間に留まるので、三番車の表面にもれず、外観を損ねることがない。
【0068】
また、図45に示すように、三番かな526fの嵌合部526qの周囲に渡って溝526nを複数形成してもよい(図45では2個)。このように構成することで、溝526nにはんだが流れ込み、三番かなの嵌合部にはんだがつきやすくなるので、三番歯車と三番かなとの接合強度が増す。したがって、三番車を回動させる際にすべりを抑制することができる。
【0069】
また、図46に示すように、三番かな626fの嵌合部626qの周囲に渡って溝626nを複数形成し、さらに金属部626mを形成してもよい。このように構成することで、溝626nにはんだが流れ込み、三番かなの嵌合部にはんだがつきやすくなるので、三番歯車と三番かなとの接合強度が増す。したがって、三番車を回動させる際にすべりを抑制することができる。さらに、金属部626mがあるので三番かなの嵌合部にはんだがつきやすくなり、三番歯車と三番かな626fとの接合強度が増す。したがって、三番車を回動させる際にすべりを抑制することができる。さらに、金属部626mの表面にのみはんだがのるので、溶融したはんだが三番車の表面にもれず、外観を損ねることがない。
【0070】
そして、上述した製造方法を用いて時計の組立部品である二番車124、四番車128、がんぎ車130およびアンクル142を製造することにより、機械式時計の組立部品の破損を防ぐことができる。また、組立部品のすべりを防ぐことができる。したがって、番車124,126,128、がんぎ車130およびアンクル142が正確に回動するために機械式時計の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0071】
10…Si基板 11…フォトレジスト 12…SiO2膜 13…金属層 45…フォトマスク 124…二番車(番車) 126…三番車(番車) 126f…三番かな(軸部材) 126g…三番歯車(機械部品) 126k…貫通孔 126r…はんだ層 126s…金属部 128…四番車(番車) 130…がんぎ車 142…アンクル
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品組立体、機械部品組立体の製造方法および時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、時計などの精密機械に用いられる歯車などの機械部品を軸部材に嵌合させて使用する方法が知られている。この方法では、歯車などの機械部品を回動させる際、軸部材との嵌合部ですべらないよう、両者をしっかりと固定する必要がある。そのため、しめしろを設けて圧入し、はんだで接合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、時計などの精密機械に用いられる歯車は外形が小さく、厚みも薄いため、歯車に軸部材を嵌合させる際の応力が大きい。
【0003】
さらに、近年では時計などの精密機器用の機械部品には、シリコン(Si)など、半導体加工技術で精度よく加工できる材料が用いられるようになってきた。しかし、脆性材料であるSi製の歯車に軸部材を嵌合させた場合、歯車が破損してしまうことがある。このような課題を受け、Si製歯車の強度を増す方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−23622号公報
【特許文献2】特開2009−79234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている機械部品では、はんだで接合されているので歯車を回動させてもすべることはないが、しめしろを設けて軸部材を圧入して嵌合させるので、シリコンなどの脆性材料で形成された歯車が変形・破損するおそれがあった。また、特許文献2に記載されている機械部品では、強度は増しているが、軸部材と嵌合させて使用する際にすべらないようにするため、十分にしめしろを設けて圧入する必要があり、脆性材料で構成されている歯車が破損する可能性が高かった。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、脆性材料で構成されている機械部品に軸部材を嵌合させる際に破損せず、かつ回動させる際に機械部品と軸部材がすべらない機械部品組立体および時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る機械部品組立体は、Siを主成分として構成され、軸部材を嵌合可能な貫通孔を有する機械部品と、金属材料を主成分として構成された軸部材と、を嵌合させた機械部品組立体において、貫通孔の内周面のみが金属層で覆われており、金属層と軸部材とをはんだ接合し、機械部品と軸部材が固定されていることを特徴としている。
このように構成することで、機械部品と軸部材を確実に接合することができる。
【0008】
また、機械部品の貫通孔の内径の最小許容寸法が、軸部材の外径の最大許容寸法よりも小さく、かつ機械部品の貫通孔の内径の最大許容寸法が、軸部材の外径の最小許容寸法よりも大きいことを特徴としている。
このように構成することで、機械部品に軸部材を嵌合する際に、機械部品に応力が発生しないか、発生しても非常に小さい。そのため、機械部品が破損するのを防ぐことができる。また、機械部品と軸部材との位置決め精度に優れている。
【0009】
また、金属層が貫通孔の深さよりも小さい範囲に形成されている機械部品と、軸部材と、を嵌合させた機械部品組立体において、貫通孔の軸方向少なくとも一端部に隙間があることを特徴としている。
このように構成することで、はんだをつけすぎてもはんだが隙間に溜まるので、はんだが機械部品組立体の表面にもれず、外観を損ねることがない。
【0010】
また、軸部材において、機械部品との嵌合部に金属層が形成されていることを特徴としている。
このように構成することで、軸部材の嵌合部にはんだがつきやすくなり、機械部品と軸部材との接合強度が増す。
【0011】
また、軸部材において、機械部品との嵌合部の外周にわたって少なくとも一つの溝が形成されていることを特徴としている。
このように構成することで、軸部材の嵌合部にはんだがいきわたりやすくなるので、機械部品と軸部材との接合強度が増す。
【0012】
また、金属層が、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、銀(Ag)、コバルト(Co)のいずれか、あるいはそれらの金属のうち少なくとも一つの元素を含んだ合金で構成されていることを特徴としている。
このように構成することで、よりはんだがつきやすくなり、機械部品と軸部材との接合強度が増す。
【0013】
また、機械部品組立体が軸部材を中心に回動可能に構成されていることを特徴としている。
このように構成することで、機械部品組立体を回動運動させる際に、機械部品と軸部材のすべりを抑制することができる。
【0014】
また、機械部品が歯車であることを特徴としている。
このように構成することで、歯車を回動運動させる際に、歯車と軸部材とのすべりを抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る機械部品組立体の製造方法は、軸部材を嵌合可能な貫通孔を有する機械部品と、軸部材とを嵌合させた機械部品組立体の製造方法であって、Si基板の上層における機械部品の形成領域に二酸化ケイ素(SiO2)膜を形成する工程と、SiO2膜を用いて上層を下層まで異方性エッチングするエッチング工程と、エッチングされたSi基板の表面を金属層で覆う工程と、金属層の表面にレジストを塗布する工程と、貫通孔の内部を残してレジストを除去する工程と、貫通孔の内周面を残して金属層を除去する工程と、貫通孔に軸部材を嵌合する工程と、金属層と軸部材とをはんだ接合する工程と、を有していることを特徴としている。
このように半導体プロセスを利用して機械部品を製造することにより、精密機械加工を用いることなく低コストではんだ接合のための金属層を形成することができる。また、機械部品を精度よく製造することができる。そして、軸部材を嵌合し、はんだ接合することにより、機械部品と軸部材との接合が強固な機械部品組立体を製造することができる。
【0016】
また、レジストを除去する工程で、Si基板を軸部材の嵌合方向を軸に回転させながらレジストに斜め方向から露光光を照射することを特徴としている。
このように機械部品を製造することにより、機械部品の貫通孔と軸部材との間の、機械部品の貫通孔の軸方向少なくとも一端部に、隙間が形成された機械部品組立体を製造することができる。したがって、前記隙間にはんだが溜まるので、はんだが機械部品組立体の表面に出て外観を損ねることがない。
【0017】
また、本発明に係る時計は、上述した機械部品組立体が時計の組立部品に用いられていることを特徴としている。
また、組立部品が、番車、がんぎ車およびアンクルの少なくともいずれか一つであることを特徴としている。
このように構成することで、機械部品と軸部材を嵌合する際の応力をなくすことができるので、時計の組立部品に変形が生じるのを抑制することができる。したがって、番車、がんぎ車、およびアンクルが正確に回動するために時計の精度を向上させることができる。また、機械部品と軸部材ははんだ接合で固定されているため、すべりが起こらず、番車、がんぎ車、およびアンクルは確実に回動運動することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る機械部品組立体によれば、機械部品と軸部材を嵌合すると、機械部品の貫通孔の内径と軸部材の嵌合部の外径が損傷しないで分解・組立できるはめあい公差のため、応力が発生しないか、発生したとしても非常に小さい。すなわち、機械部品が破損するのを防ぐことができる。さらに、高精度の位置決めが可能なはめあい公差を有しているため、機械部品と軸部材を精度よく組むことができる。そして、機械部品と軸部材とをはんだ接合によって固定しているため、機械部品組立体が回動運動する際に、機械部品と軸部材とがすべるのを抑制することができる。したがって、本発明の機械部品を用いた時計は、精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における機械式時計のムーブメント表側の平面図である(一部の部品を省略し、受部材は仮想線で示している)。
【図2】本発明の実施形態における香箱からがんぎ車の部分を示す概略部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるがんぎ車からてんぷの部分を示す概略部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態における三番車を示す上面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図5の三番歯車と三番かなを嵌合する前の断面図である。
【図7】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(1)である。
【図8】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(2)である。
【図9】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(3)である。
【図10】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(4)である。
【図11】図10の状態を示す平面図である。
【図12】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(5)である。
【図13】図12の状態を示す平面図である。
【図14】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(6)である。
【図15】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(7)である。
【図16】図15の状態を示す平面図である。
【図17】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(8)である。
【図18】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(9)である。
【図19】図18の状態を示す平面図である。
【図20】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(10)である。
【図21】図20の状態を示す平面図である。
【図22】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(11)である。
【図23】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(12)である。
【図24】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(13)である。
【図25】図24の状態を示す平面図である。
【図26】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(14)である。
【図27】図26の状態を示す平面図である。
【図28】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(15)である。
【図29】図28の状態を示す平面図である。
【図30】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(16)である。
【図31】本発明の第一実施形態における三番車の製造方法に用いるフォトマスクを示す平面図である。
【図32】本発明の第二実施形態における三番車の断面図である。
【図33】図32の三番歯車と三番かなを嵌合する前の断面図である。
【図34】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(1)である。
【図35】図34の露光方法を示す説明図である。
【図36】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(2)である。
【図37】図36の状態を示す平面図である。
【図38】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(3)である。
【図39】図38の状態を示す平面図である。
【図40】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(4)である。
【図41】図40の状態を示す平面図である。
【図42】本発明の第二実施形態における三番車の製造方法を示す説明図(5)である。
【図43】本発明の別の実施形態における三番かなの断面図である。
【図44】本発明の別の実施形態における三番かなの断面図である。
【図45】本発明の別の実施形態における三番かなの断面図である。
【図46】本発明の別の実施形態における三番かなの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態)
次に、本発明に係る機械部品組立体の第一実施形態を図1〜図29に基づいて説明する。なお、本実施形態では、機械部品組立体として機械式時計に用いられる番車(歯車とかな)の場合について説明する。
【0021】
(機械式時計)
図1〜図3に示すように、機械式時計のムーブメント100は、ムーブメント100の基板を構成する地板102を有している。地板102の巻真案内穴102aには、巻真110が回転可能に組み込まれている。文字板104(図2参照)はムーブメント100に取り付けられる。一般に、地板102の両側のうち、文字板104が配される側をムーブメント100の裏側と称し、文字板104が配される側の反対側をムーブメント100の表側と称する。ムーブメント100の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント100の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
【0022】
おしどり190、かんぬき192、かんぬきばね194、裏押さえ196を含む切換装置により、巻真110の軸線方向の位置が決められている。きち車112は巻真110の案内軸部に回転可能に設けられている。巻真110が、回転軸線方向に沿ってムーブメント100の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真110を回転させると、つづみ車の回転を介してきち車112が回転する。丸穴車114は、きち車112の回転により回転する。また、角穴車116は、丸穴車114の回転により回転する。角穴車116が回転することにより、香箱車120に収容されたぜんまい122(図2参照)を巻き上げる。
【0023】
二番車124は、香箱車120の回転により回転する。がんぎ車130は、四番車128、三番車126、二番車124の回転を介して回転する。香箱車120、二番車124、三番車126、四番車128は表輪列を構成する。
【0024】
表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置は、てんぷ140と、がんぎ車130と、アンクル142とを含む。てんぷ140は、てん真140aと、ひげぜんまい140cとを含む。二番車124の回転に基づいて、筒かな150が同時に回転する。筒かな150に取り付けられた分針152が「分」を表示する。筒かな150には、二番車124に対するスリップ機構が設けられている。筒かな150の回転に基づいて、日の裏車の回転を介して、筒車154が回転する。筒車154に取り付けられた時針156が「時」を表示する。
【0025】
ひげぜんまい140cは、複数の巻き数をもったうずまき状(螺旋状)の形態の薄板ばねである。ひげぜんまい140cの内端部は、てん真140aに固定されたひげ玉140dに固定され、ひげぜんまい140cの外端部は、てんぷ受166に固定されたひげ持受170に取り付けたひげ持170aを介してねじ締めにより固定されている。緩急針168は、てんぷ受166に回転可能に取り付けられている。また、てんぷ140は、地板102およびてんぷ受166に対して回転可能に支持されている。
【0026】
香箱車120は、香箱歯車120dと、香箱真120fと、ぜんまい122とを備えている。香箱真120fは、上軸部120aと、下軸部120bとを含む。
【0027】
二番車124は、上軸部124aと、下軸部124bと、かな部124cと、歯車部124dと、そろばん玉部124hとを含む。二番車124のかな部124cは香箱歯車120dと噛み合うように構成されている。
【0028】
三番車126は、上軸部126aと、下軸部126bと、かな部126cと、歯車部126dとを含む。三番車126のかな部126cは歯車部124dと噛み合うように構成されている。
【0029】
四番車128は、上軸部128aと、下軸部128bと、かな部128cと、歯車部128dとを含む。四番車128のかな部128cは歯車部126dと噛み合うように構成されている。
【0030】
がんぎ車130は、上軸部130aと、下軸部130bと、かな部130cと、歯車部130dとを含む。がんぎ車130のかな部130cは歯車部128dと噛み合うように構成されている。アンクル142は、アンクル体142dと、アンクル真142fとを備えている。アンクル真142fは、上軸部142aと、下軸部142bとを含む。
【0031】
香箱車120は、地板102および香箱受160に対して回転可能に支持されている。すなわち、香箱真120fの上軸部120aは、香箱受160に対して回転可能に支持される。香箱真120fの下軸部120bは、地板102に対して、回転可能に支持される。二番車124、三番車126、四番車128、がんぎ車130は、地板102および輪列受162に対して回転可能に支持されている。すなわち、二番車124の上軸部124a、三番車126の上軸部126a、四番車128の上軸部128a、がんぎ車130の上軸部130aは、輪列受162に対して回転可能に支持される。また、二番車124の下軸部124b、三番車126の下軸部126b、四番車128の下軸部128b、がんぎ車130の下軸部130bは、地板102に対して、回転可能に支持される。
【0032】
アンクル142は、地板102およびアンクル受164に対して回転可能に支持されている。すなわち、アンクル142の上軸部142aは、アンクル受164に対して回転可能に支持される。アンクル142の下軸部142bは、地板102に対して、回転可能に支持される。
【0033】
香箱真120fの上軸部120aを回転可能に支持する香箱受160の軸受部と、二番車124の上軸部124aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、三番車126の上軸部126aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、四番車128の上軸部128aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、がんぎ車130の上軸部130aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、アンクル142の上軸部142aを回転可能に支持するアンクル受164の軸受部には、潤滑油が注油される。また、香箱真120fの下軸部120bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、二番車124の下軸部124bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、三番車126の下軸部126bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、四番車128の下軸部128bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、がんぎ車130の下軸部130bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、アンクル142の下軸部142bを回転可能に支持する地板102の軸受部には、潤滑油が注油される。この潤滑油は、精密機械用油であるのが好ましく、いわゆる時計油であるのが特に好ましい。
【0034】
地板102のそれぞれの軸受部、香箱受160の軸受部、輪列受162のそれぞれの軸受部には、潤滑油の保持性能を高めるために、円錐状、円筒状、または円錐台状の油溜め部を設けるのが好ましい。油溜め部を設けると、潤滑油の表面張力により油が拡散するのを効果的に阻止することができる。地板102、香箱受160、輪列受162、アンクル受164は、黄銅などの金属で形成してもよいし、ポリカーボネートなどの樹脂で形成してもよい。
【0035】
(番車の構造)
次に、本実施形態の番車の構造について説明する。なお、番車の構造は略同一であるため、三番車126を用いて説明する。
【0036】
図4〜図6に示すように、三番車126は、三番かな126fと、三番歯車126gとを備えている。三番車126gの厚さT0は、例えば、10μm以上10mm以下である。三番かな126fは、上軸部126aと、下軸部126bと、嵌合部126qと、かな部126cとを備えている。三番かな126fは、軸部とかな部126cを一体成型してもよいし、別々に形成し、軸部をかな部126cに嵌合させてもよい。三番歯車126gは、Si部126pと、金属部126sと、はんだ層126rとを備えている。Si部126pは、中心支持部126hと、あみだ部126j(本実施形態では、5本)と、歯車部126dとを備えている。三番かな126fは、炭素鋼などの金属で形成されている。三番歯車126gは、金属部126sはAu、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの金属や、あるいはそれらの金属のうち少なくとも一つの元素を含んだ合金で形成され、Si部126pはSiで形成され、はんだ層126rは、Sn−Cu、Sn−Ag、Sn−ビスマス(Bi)、Sn−鉛(Pb)などのはんだで形成されている。なお、金属部126sがはんだ層126rと同一の材料で形成されていてもよい。そして、三番車126は、三番歯車126gの中心に形成された貫通孔126kに三番かな126fを挿通し、はんだ層126rで固定されている。ここで、三番歯車126gのSi部126pの中心支持部126hには、直径D2の貫通孔126lが形成されている。三番歯車126gの金属部126sは、三番歯車126gの貫通孔126lの内周面に形成されている。さらに、三番歯車126gのはんだ層126rは、金属部126sの表面に形成されている。そして、三番歯車126gのはんだ層126rの内周面が、直径D1の三番歯車126gの貫通孔126kを形成している。このはんだ層126rが直径D3の三番かな126fの嵌合部126qに当接され、はんだ接合によって固定されている。金属部126sとはんだ層126rを併せた厚さT1は、例えば1μm以上100μm以下である。三番歯車126gの貫通孔126kの直径D1と、三番かな126fの嵌合部126qの直径D3は、高精度の位置決めが可能なはめあい公差を有している。そして、三番歯車126gと三番かな126fは、損傷しないで分解・組立てできるが、回動させる際には、三番歯車126gの貫通孔126kと三番かな126fの嵌合部126qとを固定させ、すべりを防止する必要がある。このようなはめあい公差は、例えば、三番歯車126gの厚さT0が3mm以下のとき、三番歯車126gの貫通孔126kの直径D1の公差が0μm〜+6μmで、三番かな126fの嵌合部126qの直径D3の公差が−2μm〜+2μmの組合せか、三番歯車126gの貫通孔126kの直径D1の公差が0μm〜+10μmで、三番かな126fの嵌合部126qの直径D3の公差が0μm〜+6μmの組合せである。また、三番歯車126gのSi部126pの貫通孔126lの直径D2は、三番歯車126gの貫通孔126kの直径D1よりも金属部126sとはんだ層126rを併せた厚さT1の2倍だけ大きい。
【0037】
(番車の製造方法)
次に、本実施形態の番車の製造方法について説明する。なお、番車の構造は略同一であるため、三番車126を用いて説明する。図7〜図29は三番車126の製造方法を説明する図である。
【0038】
図7は、三番歯車126gのSi部126pを形成するためのSi基板10である。Si基板10の厚さは、製造する三番歯車126gのSi部126pの厚さT0とする。
【0039】
図8は、SiO2膜12を形成した図である。Si基板10の上に、二酸化ケイ素(SiO2)膜12を形成する。SiO2膜12は、スパッタやCVD(Chemical Vapor Deposition)などの方法を用いて製造することができる。SiO2膜12の厚さは10nm以上10μm以下で形成する。
【0040】
図9は、フォトレジスト11を塗布した図である。SiO2膜12上にフォトレジスト11を堆積する。フォトレジスト11はネガ型でもポジ型でもよい。フォトレジスト11の厚さは1μm以上1mm以下で形成する。
【0041】
図10は、フォトレジスト11を露光・現像した図である。三番歯車126gのSi部126pに相当するパターンが形成されたフォトマスク(図29)を用いて、フォトレジスト11に紫外線やX線等の露光光を照射し、三番歯車126gのSi部126pに当たる部分のフォトレジスト11を硬化させる。そして、未硬化のフォトレジスト11部分を除去し、SiO2膜12のエッチングパターンが完成する。図11は、図10の平面図である。
【0042】
図12は、SiO2膜12をエッチングした図である。フォトレジスト11の部分を残して、露出しているSiO2膜12をエッチングする。エッチングはドライエッチングでもウエットエッチングでもよい。例えば、ドライエッチングの場合は、エッチングガスに三フッ化メタン(CHF3)などを用い、ウエットエッチングの場合は、エッチング液にフッ酸(HF)などを用いる。図13は図12の平面図である。
【0043】
図14は、フォトレジスト11を除去した図である。エッチングによってフォトレジスト11を除去する。この工程は、後の工程に差し支えなければ省略してもよい。
【0044】
図15は、Si基板をエッチングした図である。SiO2膜12の部分を残して、Si基板10を底面側まで垂直な方向に異方性エッチングする。Si基板10の異方性エッチングは、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)などのドライエッチング加工で行う。エッチングガスには、例えば六フッ化硫黄(SF6)などを用いる。図16は図15の平面図である。
【0045】
図17は、SiO2膜12を除去した図である。エッチングによってSiO2膜12を除去し、三番歯車126gのSi部126pが完成する。エッチングはドライエッチングでもウエットエッチングでもよい。例えば、ドライエッチングの場合は、エッチングガスにCHF3などを用い、ウエットエッチングの場合は、エッチング液にHFなどを用いる。この工程は、後の工程に差し支えなければ省略してもよい。
【0046】
図18は、金属層13を形成した図である。Si基板10の表面に金属層13を形成する。金属層13は、蒸着、スパッタ、めっき等の方法を用いて製造することができる。金属層13は、Si基板10の内周面10kに形成されている。なお、図18では金属層13はSi基板10の外周面10jと底面10hにも形成されているが、外周面10jと底面10hには形成しなくてもよい。金属層13を形成する材料は、この後のはんだ工程ではんだのつきやすい、Au、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの金属や、Ni−Au、Co−Auなどの合金である。金属層13の厚さは三番歯車126gの金属部126sとはんだ層126rを併せた厚さT1以下になるように形成する。図19は、図18の平面図である。
【0047】
図20は、はんだ層18を形成した図である。金属層13の表面に、さらにはんだ層18を形成する。はんだ層18は、めっき等の方法を用いて製造することができる。はんだ層18は、Si基板10の内周面10kに形成された金属層13sの表面にも形成されている。はんだ層18を形成する材料は、Sn−Cu、Sn−Ag、Sn−Bi、Sn−Pbなどである。はんだ層18の厚さは、はんだ層18と金属層13を併せた厚さが、三番歯車126gの金属部126sとはんだ層126rを併せた厚さT1になるように形成する。図21は、図20の平面図である。
【0048】
図22は、フォトレジスト25を塗布した図である。Si基板10の、三番歯車126gの貫通孔126kにあたる部分、つまり図22でははんだ層18sに囲まれた部分をネガ型のフォトレジスト25で埋める。
【0049】
図23はフォトレジスト25を露光・現像した図である。フォトレジスト25にSi基板10の底面10hの側から紫外線やX線等の露光光を照射し、はんだ層18sに囲まれた部分のフォトレジスト25を硬化させる。そして、未硬化のフォトレジスト25部分を除去し、はんだ層18sに囲まれた部分のみフォトレジスト25を残す。なお、三番歯車126gの貫通孔126kに相当するパターンが形成されたフォトマスク(不図示)を用いて露光する場合は、フォトレジスト25にポジ型を使用してもよい。
【0050】
図24ははんだ層18をエッチングした図である。Si基板10の内周に形成されたはんだ層18sを残してはんだ層18をエッチングする。このとき残ったはんだ層18sが、三番歯車126gのはんだ層126rにあたる。エッチングは、ウエットプロセスの方が簡便である。エッチング液には、例えば王水を用いる。このとき、金属層13を形成する材料がAu、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの場合、金属層13もSi基板の内周面10kに形成された金属層13sを残して同時にエッチングすることができる。図25は、図24の平面図である。
【0051】
図26は、金属層13をエッチングした図である。Si基板10の内周面10kに形成された金属層13sを残して金属層13をエッチングする。エッチングは、ウエットプロセスの方が簡便である。例えば、金属層13を形成する材料がAuの場合、エッチング液にはヨウ素とヨウ化カリウムの溶液などを用いる。このとき残った金属層13sが、三番歯車126gの金属部126sにあたる。図27は、図26の平面図である。
【0052】
図28は、フォトレジスト25を除去した図である。フォトレジスト25をエッチングあるいは物理的な力等によって除去し、三番歯車126gが完成する。図29は図28の平面図である。
【0053】
図30は、三番歯車126gに三番かな126fを嵌合した図である。三番歯車126gの貫通孔126kに三番かな126fを嵌合する。そして、この状態ではんだ層18sを形成するはんだ材料の融点まで加熱すると、はんだ層18sが溶融し、三番歯車126gの内周面126kと三番かな126fの嵌合部126qにおいて、三番歯車126gと三番かな126fが接合され、三番車126が完成する。
【0054】
このようにして製造された三番車126は、はんだ層126rによって三番歯車126gと三番かな126fを接合している。このように構成することで、三番車126を回動させる際に、三番歯車126gと三番かな126fがすべるのを抑制することができる。
【0055】
また、三番車126は、三番歯車126gの貫通孔126kと三番かな126fの嵌合部126qのはめあいが中間ばめのため、貫通孔126kに三番かな126fを嵌合する際に、三番歯車126gに応力が発生しないか、応力が発生したとしても非常に小さい。そのため、三番歯車126gが破損するのを防ぐことができる。さらに、三番歯車126gの金属部126sを軟らかい金属(例えばAu)にすれば、応力が発生した場合でも、軟らかい金属部126sが応力を緩和する。そのため、三番歯車126gに破損が生じるのを防ぐことができる。したがって、三番車126の寸法精度が向上し、三番車126を用いた機械式時計の精度を向上させることができる。
【0056】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る機械部品の第二実施形態を図32〜図42に基づいて説明する。なお、本実施形態は、第一実施形態と歯車(三番歯車)の金属部の形状が異なるのみであり、その他の部分については第一実施形態と略同一であるため、同一箇所には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、本実施形態における三番車の符号を226とし、三番歯車の符号を226g、三番かなの符号を226fとする。
【0057】
図32に示すように、三番車226は、三番かな226fと、三番歯車226gとを備えている。三番車226gの厚さT0は、例えば、10μm以上10mm以下である。三番かな226fは、上軸部226aと、下軸部226bと、嵌合部226qと、かな部226cとを備えている。三番かな226fは、軸部とかな部226cを一体成型してもよいし、別々に形成し、軸部をかな部226cに嵌合させてもよい。三番歯車226gは、Si部226pと、金属部226sと、はんだ層126rとを備えている。Si部226pは、中心支持部226hと、あみだ部226jと、歯車部226dとを備えている。三番かな226fは、炭素鋼などの金属で形成されている。三番歯車226gは、金属部226sはAu、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの金属や、あるいはそれらの金属のうち少なくとも一つの元素を含んだ合金で形成され、Si部226pはSiで形成され、はんだ層126rはSn−Cu、Sn−Ag、Sn−Bi、Sn−Pbなどのはんだで形成されている。なお、金属部226sがはんだ層126rと同一の材料で形成されていてもよい。そして、三番車226は、三番歯車226gの中心に形成された貫通孔226kに三番かな226fを挿通し、はんだ層126rで固定されている。ここで、図30に示すように、三番歯車226gのSi部226pの中心支持部226hには、直径D2の貫通孔226lが形成されている。三番歯車226gの金属部226sは、三番歯車226gのSi部226pの貫通孔226lの内周面に形成されている。ただし、金属部226sの幅W1は、三番歯車226gの厚みT0よりも小さい。さらに、三番歯車226gのはんだ層126rは、金属部226sの表面に形成されている。そして、三番歯車226gのはんだ層126rの内周面が、直径D1の三番歯車226gの貫通孔226kを形成している。このはんだ層126rが直径D3の三番かな226fの嵌合部226qに当接され、はんだ接合によって固定されている。ただし、三番歯車226gの厚みT0は金属部226sの幅W1よりも大きいので、三番歯車226gのSi部226pの貫通孔226lの内周面の一部も、三番歯車226gの貫通孔226kの内周面を形成している。そのため、三番歯車226gのSi部226pの貫通孔226lの内周面が、三番歯車226gの貫通孔226kの内周面を形成している部分と、三番かな226fの嵌合部226qとの間に、隙間226tが形成される。金属部226sとはんだ層126rを併せた厚さT1は、例えば1μm以上100μm以下である。三番歯車226gの貫通孔226kの直径D1と、三番かな226fの嵌合部226qの直径D3は、高精度の位置決めが可能なはめあい公差を有している。そして、三番歯車226gと三番かな226fは、損傷しないで分解・組立てできるが、回動させる際には、三番歯車226gの貫通孔226kと三番かな226fの嵌合部226qとを固定させ、すべりを防止する必要がある。このようなはめあい公差は、例えば、三番歯車226gの厚さT0が3mm以下のとき、三番歯車226gの貫通孔226kの直径D1の公差が0μm〜+6μmで、三番かな226fの嵌合部226qの直径D3の公差が−2μm〜+2μmの組合せか、三番歯車226gの貫通孔226kの直径D1の公差が0μm〜+10μmで、三番かな226fの嵌合部226qの直径D3の公差が0μm〜+6μmの組合せである。また、三番歯車226gのSi部226pの貫通孔226lの直径D2は、三番歯車226gの貫通孔226kの直径D1よりも金属部226sとはんだ層126rを併せた厚さT1の2倍だけ大きい。
【0058】
(番車の製造方法)
次に、本実施形態の番車(三番車226)の製造方法について説明する。図34〜図42は三番車226の製造方法を説明する図である。なお、フォトレジスト25を塗布する工程までは、第一実施形態と同様の工程なので、説明を省略する。
【0059】
図34はフォトレジスト25を露光・現像した図である。ポジ型のフォトレジスト25に紫外線やX線等の露光光を照射し、金属層13の内周面に形成されたはんだ層18sに囲まれた部分のフォトレジスト25を硬化させる。そして、未硬化のフォトレジスト25部分を除去し、三番歯車226gの金属部226sの幅W1に相当する範囲にのみフォトレジスト25を残す。
【0060】
図35は、露光方法を説明する図である。Si基板10を軸Bを基準に回転させながら、Si基板10に対して斜めに露光光46を照射する。Si基板10と露光光46の角度は、三番歯車226gの金属部226sの幅W1に応じて決まる。図32では、Si基板10の上下両側から露光光46を照射しているが、隙間を片側にしか設けない場合は、隙間を設ける側からのみ露光光46を照射すればよい。
【0061】
図36は、はんだ層18をエッチングした図である。Si基板10の内周の形成された、三番歯車226gの金属部226sの幅W1に相当する範囲のはんだ層18sを残してはんだ層18をエッチングする。このとき残ったはんだ層18sが、三番歯車126gのはんだ層126rにあたる。エッチングは、ウエットプロセスの方が簡便である。エッチング液には、例えば王水を用いる。このとき、金属層13を形成する材料がAu、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどの場合、金属層13もSi基板の内周面10kに形成された金属層13sを残して同時にエッチングすることができる。図37は図36の平面図である。
【0062】
図38は、金属層13をエッチングした図である。Si基板10の内周面10kに形成された、三番歯車226gの金属部226sの幅W1に相当する範囲の金属層13sを残して金属層13をエッチングする。エッチングは、ウエットプロセスの方が簡便である。例えば、金属層13を形成する材料がAuの場合、エッチング液にはヨウ素とヨウ化カリウムの溶液などを用いる。このとき残った金属層13sが、三番歯車226gの金属部226sにあたる。図39は、図38の平面図である。
【0063】
図40は、フォトレジスト25を除去した図である。フォトレジスト25をエッチングあるいは物理的な力等によって除去し、三番歯車226gが完成する。図41は図40の平面図である。
【0064】
図42は、三番歯車226gに三番かな226fを嵌合した図である。三番歯車226gの貫通孔226kに三番かな226fを嵌合する。そして、この状態ではんだ層18sを形成するはんだ材料の融点まで加熱すると、はんだ層18sが溶融し、三番歯車226gの内周面226kと三番かな226fの嵌合部226qにおいて、三番歯車226gと三番かな226fが接合され、三番歯車226が完成する。
【0065】
このようにして製造された三番車226は、隙間226tを有している。このように構成することで、第一実施形態と略同一の作用を得られることができるとともに、はんだ層226rを溶融してもはんだが隙間226tに溜まるので、三番車226の表面にはんだがもれず、外観を損ねることがない。
【0066】
また、本実施形態では、歯車とかなが嵌合する歯車の貫通孔の内周面のみに金属部を形成した場合の説明をしたが、図43に示すように、三番かな326fの嵌合部326qの周囲に渡って金属部326mを形成してもよい。金属部326mは、Au、Cu、Ni、Sn、Ag、Coなどはんだのつきやすい金属や、Ni−Au、Co−Auなどの合金で形成されている。このように構成することで、三番かなの嵌合部にはんだがつきやすくなり、三番歯車と三番かなとの接合強度が増すので、三番車を回動させる際にすべりを抑制することができる。さらに、金属部326mの表面にのみはんだがのるので、溶融したはんだが三番車の表面にもれず、外観を損ねることがない。
【0067】
また、図44に示すように、三番かな424fの嵌合部424qの外周に渡って樹脂426vを上下に形成してもよい。樹脂426vは、ポリイミド、シリコーンなど、はんだ層426rを形成するはんだの融点よりも高い融点を持つ樹脂で形成する。このように構成することで、溶融したはんだが上下の樹脂426vの間に留まるので、三番車の表面にもれず、外観を損ねることがない。
【0068】
また、図45に示すように、三番かな526fの嵌合部526qの周囲に渡って溝526nを複数形成してもよい(図45では2個)。このように構成することで、溝526nにはんだが流れ込み、三番かなの嵌合部にはんだがつきやすくなるので、三番歯車と三番かなとの接合強度が増す。したがって、三番車を回動させる際にすべりを抑制することができる。
【0069】
また、図46に示すように、三番かな626fの嵌合部626qの周囲に渡って溝626nを複数形成し、さらに金属部626mを形成してもよい。このように構成することで、溝626nにはんだが流れ込み、三番かなの嵌合部にはんだがつきやすくなるので、三番歯車と三番かなとの接合強度が増す。したがって、三番車を回動させる際にすべりを抑制することができる。さらに、金属部626mがあるので三番かなの嵌合部にはんだがつきやすくなり、三番歯車と三番かな626fとの接合強度が増す。したがって、三番車を回動させる際にすべりを抑制することができる。さらに、金属部626mの表面にのみはんだがのるので、溶融したはんだが三番車の表面にもれず、外観を損ねることがない。
【0070】
そして、上述した製造方法を用いて時計の組立部品である二番車124、四番車128、がんぎ車130およびアンクル142を製造することにより、機械式時計の組立部品の破損を防ぐことができる。また、組立部品のすべりを防ぐことができる。したがって、番車124,126,128、がんぎ車130およびアンクル142が正確に回動するために機械式時計の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0071】
10…Si基板 11…フォトレジスト 12…SiO2膜 13…金属層 45…フォトマスク 124…二番車(番車) 126…三番車(番車) 126f…三番かな(軸部材) 126g…三番歯車(機械部品) 126k…貫通孔 126r…はんだ層 126s…金属部 128…四番車(番車) 130…がんぎ車 142…アンクル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを主成分として構成され、軸部材を嵌合可能な貫通孔を有する機械部品と、金属材料を主成分として構成された軸部材と、を嵌合させた機械部品組立体において、前記貫通孔の内周面のみが金属層で覆われており、前記金属層と前記軸部材とをはんだ接合し、前記機械部品と前記軸部材とが固定されていることを特徴とする機械部品組立体。
【請求項2】
前記機械部品の貫通孔の内径の最小許容寸法が、前記軸部材の外径の最大許容寸法よりも小さく、かつ前記機械部品の貫通孔の内径の最大許容寸法が、前記軸部材の外径の最小許容寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の機械部品組立体。
【請求項3】
前記金属層が前記貫通孔の深さよりも小さい範囲に形成されている前記機械部品と、前記軸部材と、を嵌合させた機械部品組立体において、前記貫通孔の軸方向少なくとも一端部に隙間があることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項4】
前記軸部材において、前記機械部品との嵌合部に金属層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項5】
前記軸部材において、前記機械部品との嵌合部の外周にわたって少なくとも一つの溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項6】
前記金属層が、金、銅、ニッケル、スズ、銀、コバルトのいずれか、あるいはそれらの金属のうち少なくとも一つの元素を含んだ合金で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項7】
前記機械部品組立体が前記軸部材を中心に回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項8】
前記機械部品が歯車であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項9】
軸部材を嵌合可能な貫通孔を有する機械部品と、軸部材とを嵌合させた機械部品組立体の製造方法であって、シリコン基板の上層における前記機械部品の形成領域に二酸化ケイ素膜を形成する工程と、該二酸化ケイ素膜を用いて前記上層を下層まで異方性エッチングするエッチング工程と、エッチングされた前記シリコン基板の表面を金属層で覆う工程と、前記金属層の表面にレジストを塗布する工程と、前記貫通孔の内部を残して前記レジストを除去する工程と、前記貫通孔の内周面を残して前記金属層を除去する工程と、前記貫通孔に前記軸部材を嵌合する工程と、前記金属層と前記軸部材とをはんだ接合する工程と、を有していることを特徴とする機械部品組立体の製造方法。
【請求項10】
前記レジストを除去する工程で、前記シリコン基板を前記軸部材の嵌合方向を軸に回転させながら前記レジストに斜め方向から露光光を照射することを特徴とする請求項9に記載の機械部品組立体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の機械部品組立体が時計の組立部品に用いられていることを特徴とする時計。
【請求項12】
前記組立部品が、番車、がんぎ車およびアンクルの少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項11に記載の時計。
【請求項1】
シリコンを主成分として構成され、軸部材を嵌合可能な貫通孔を有する機械部品と、金属材料を主成分として構成された軸部材と、を嵌合させた機械部品組立体において、前記貫通孔の内周面のみが金属層で覆われており、前記金属層と前記軸部材とをはんだ接合し、前記機械部品と前記軸部材とが固定されていることを特徴とする機械部品組立体。
【請求項2】
前記機械部品の貫通孔の内径の最小許容寸法が、前記軸部材の外径の最大許容寸法よりも小さく、かつ前記機械部品の貫通孔の内径の最大許容寸法が、前記軸部材の外径の最小許容寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の機械部品組立体。
【請求項3】
前記金属層が前記貫通孔の深さよりも小さい範囲に形成されている前記機械部品と、前記軸部材と、を嵌合させた機械部品組立体において、前記貫通孔の軸方向少なくとも一端部に隙間があることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項4】
前記軸部材において、前記機械部品との嵌合部に金属層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項5】
前記軸部材において、前記機械部品との嵌合部の外周にわたって少なくとも一つの溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項6】
前記金属層が、金、銅、ニッケル、スズ、銀、コバルトのいずれか、あるいはそれらの金属のうち少なくとも一つの元素を含んだ合金で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項7】
前記機械部品組立体が前記軸部材を中心に回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項8】
前記機械部品が歯車であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の機械部品組立体。
【請求項9】
軸部材を嵌合可能な貫通孔を有する機械部品と、軸部材とを嵌合させた機械部品組立体の製造方法であって、シリコン基板の上層における前記機械部品の形成領域に二酸化ケイ素膜を形成する工程と、該二酸化ケイ素膜を用いて前記上層を下層まで異方性エッチングするエッチング工程と、エッチングされた前記シリコン基板の表面を金属層で覆う工程と、前記金属層の表面にレジストを塗布する工程と、前記貫通孔の内部を残して前記レジストを除去する工程と、前記貫通孔の内周面を残して前記金属層を除去する工程と、前記貫通孔に前記軸部材を嵌合する工程と、前記金属層と前記軸部材とをはんだ接合する工程と、を有していることを特徴とする機械部品組立体の製造方法。
【請求項10】
前記レジストを除去する工程で、前記シリコン基板を前記軸部材の嵌合方向を軸に回転させながら前記レジストに斜め方向から露光光を照射することを特徴とする請求項9に記載の機械部品組立体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の機械部品組立体が時計の組立部品に用いられていることを特徴とする時計。
【請求項12】
前記組立部品が、番車、がんぎ車およびアンクルの少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項11に記載の時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【公開番号】特開2012−215183(P2012−215183A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79138(P2011−79138)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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