説明

機能基板、その製造方法、エレクトロルミネッセンス素子、及びその製造方法

【課題】層厚ムラの少ない機能層を有する機能基板を提供する。
【解決手段】有機EL素子1は、AM基板10と、撥液性のバンク30と、光触媒を含有する光触媒層20と、有機層40とを有する。撥液性のバンク30は、AM基板10上に、表面を複数の領域に区画するように設けられている。光触媒層20は、各領域の周縁部分に設けられている。有機層40は、複数の領域のそれぞれに、周縁部分が光触媒層20と接触するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機能基板、その製造方法、エレクトロルミネッセンス素子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルタ基板等の機能基板やエレクトロルミネッセンス素子(以下、「EL素子」と略称する。)等の製造方法として、インクジェット法等の湿式塗布法が注目されている。
【0003】
湿式塗布法を用いることにより、機能基板やEL素子を安価に製造することができる。しかし、例えば、湿式塗布法を用いてカラーフィルタ基板やEL素子を製造した場合、画素のにじみや画素間の混色が生じやすいという問題がある。このような問題に鑑み、画素間に撥液性の隔壁(バンク)を設けることによって画素のにじみや画素間の混色を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献1等)。
【特許文献1】特開平7−35917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画素間に撥液性の隔壁を設けた場合、機能層の層厚ムラが生じやすいという問題がある。具体的には、機能層のうち隔壁に近い部分、すなわち機能層の周縁部分の層厚が中央部分の層厚よりも薄くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、層厚ムラの少ない機能層を有する機能基板、EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る機能基板は、基板と、撥液性の隔壁と、光触媒を含有する光触媒層と、機能層とを有する。撥液性の隔壁は、基板上に、基板の表面を複数の領域に区画するように設けられている。光触媒層は複数の領域のそれぞれの周縁部分に少なくとも設けられている。機能層は、複数の領域のそれぞれに、周縁部分が光触媒層と接触するように形成されている。
【0007】
尚、本明細書において、「光触媒」とは、光を照射することによって、湿式塗布法により機能層を形成する際に用いられる機能層形成インクに対して親和する性質(親液性)を発現する触媒のことをいう。光触媒そのものは本来、光が照射されることにより触媒として作用する物質である。触媒は、他の物質の化学反応に関与し、その反応の速度に影響を与えるものである。光触媒に光が照射されると、光触媒の表面構造が変化し、光触媒の表面に空気中の水分が吸着され、光触媒の表面に薄い水の膜が形成される。その結果、光触媒は光の照射により親水性を示すことが一般に知られている。
【0008】
「湿式塗布法」とは機能層を形成するための材料を溶媒(水、有機溶媒等)に溶解させたインクを用いた膜を形成する方法をいう。具体的には、インクジェット法、印刷法、スピンコート法、ディップ法、ノズルコート法等が挙げられる。
【0009】
「親液性」とは機能層形成インクに対する接触角が30度以下(好ましくは20度以下)である性質をいう。尚、「接触角」は協和界面科学株式会社製CA−W(全自動接触角計;Automatic Contact Angle Meter)により測定することができる。
【0010】
「撥液性」とは、湿式塗布法により機能層を形成するためのインクをはじく性質をいう。詳細には、湿式塗布法により機能層を形成するためのインクが30度より大きい接触角(好ましくは40度以上の接触角)で接触する性質のことをいう。
【0011】
機能基板とは、具体的に、カラーフィルタ等をいう。機能基板が具体的にカラーフィルタである場合、機能層とはカラーフィルタ層である。
【0012】
尚、例えば、光触媒層を設けなくても、隔壁全体を親液性にすることで、各領域の周縁部分にも機能層を形成することが可能となる。しかしながら、この場合、機能層形成インクが親液性の隔壁に多く付着してしまう。このため、機能層の周縁部分の層厚が厚くなり、中央部分の層厚が想定した値よりも薄くなってしまう。従って、所望の膜厚を有する機能層を形成することが困難となる。その結果、所望する層厚を有し、膜厚ムラの少ない機能層を実現することができない。
【0013】
本発明に係る機能基板は各領域の周縁部分に設けられた光触媒層を有する。この光触媒層は光(例えば紫外光)を照射することによって親液性となる。このため、湿式塗布法により機能層を形成する工程に先立って光触媒層に光照射を行っておくことで、機能層形成工程において、光触媒層の表面を比較的長時間にわたって親液性に保持することができる。従って、撥液性の隔壁に起因する機能層の層厚ムラの発生(特に機能層の周縁部分が薄くなること)を効果的に抑制することができる。すなわち、本発明に係る、層厚がほぼ均一な機能層を有する機能基板は湿式塗布法を用いることにより容易に作成することができる。
【0014】
また、本発明に係る機能基板では、隣接する領域が撥液性の隔壁によって隔離されている。このため、インクジェット法等の湿式塗布法を用いて作製する場合であっても、隣接する領域間の混色等が抑制される。
【0015】
本発明に係る機能基板では、光触媒は、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、二酸化錫(SnO2)、又は二酸化ジルコン(ZrO2)であってもよい。すなわち、光触媒層は、光触媒として二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、二酸化錫(SnO2)、及び二酸化ジルコン(ZrO2)のうち1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0016】
本発明に係る機能基板では、光触媒層は絶縁性であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る機能基板では、光触媒層の層厚が20nm以上であることが好ましい。
【0018】
光触媒層の層厚を20nm以上とすることで機能層の層厚ムラを更に効果的に抑制することができる。尚、光触媒層の層厚とは機能層と接触する周縁部分の平均層厚をいう。
【0019】
本発明に係る機能基板は光触媒層と基板との間に絶縁層をさらに有することが好ましい。絶縁層は実質的に二酸化ケイ素からなるものであってもよい。
【0020】
光触媒層と基板との間に絶縁層(例えば二酸化ケイ素(SiO2)層)をさらに設けることにより層厚ムラを更に効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明に係るEL素子は、基板と、撥液性の隔壁と、光触媒を含有する光触媒層と、機能層と、第2電極とを有する。基板の表面には複数の第1電極が設けられている。隔壁は、基板表面の相隣る第1電極の間に、基板表面を複数の領域に区画するように形成されている。光触媒層は複数の領域のそれぞれの周縁部分に少なくとも設けられている。機能層は、複数の領域のそれぞれに、周縁部分が光触媒層と接触するように形成されている。第2電極は機能層のそれぞれの上に設けられている。
【0022】
本発明に係るEL素子は各領域の周縁部分に設けられた光触媒層を有する。この光触媒層は光(例えば紫外光)を照射することによって親液性となる。このため、湿式塗布法により機能層を形成する工程に先立って光触媒層に光照射を行っておくことで、機能層形成工程において、光触媒層の表面を比較的長時間にわたって親液性に保持することができる。従って、撥液性の隔壁に起因する機能層の層厚ムラの発生(特に機能層の周縁部分が薄くなること)を効果的に抑制することができる。すなわち、本発明に係る、層厚がほぼ均一な機能層を有するEL素子は湿式塗布法を用いることにより容易に作成することができる。
【0023】
また、本発明に係るEL素子では、隣接する領域が撥液性の隔壁によって隔離されている。このため、インクジェット法等の湿式塗布法を用いて作製する場合であっても、隣接する領域間の混色等が抑制される。
【0024】
尚、本発明に係るEL素子において、機能層とは発光層、又は発光層と1層以上のバッファ層との積層である。バッファ層とは具体的にホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層である。言い換えれば、機能層は発光層と、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、及び電子輸送層ならなる群のうちの1層又は2層以上とにより構成されていてもよい。
【0025】
本発明に係るEL素子では、光触媒層が、基板上の基板表面の相隣る第1電極の間に渡って、両端が相隣る第1電極に接触するように形成されており、隔壁が、触媒層の両端が露出するように、光触媒層上に形成されていてもよい。
【0026】
本発明に係るEL素子では、光触媒は二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、二酸化錫(SnO2)、又は二酸化ジルコン(ZrO2)であってもよい。すなわち、光触媒層は、光触媒として二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、二酸化錫(SnO2)、及び二酸化ジルコン(ZrO2)のうち1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0027】
本発明に係るEL素子では、光触媒層が絶縁性であることが好ましい。そうすることによって、機能層の被覆不良が発生した場合であっても第1電極と第2電極との間の電流リークを効果的に抑制することができる。
【0028】
本発明に係るEL素子では、光触媒層の層厚が20nm以上であることが好ましい。
【0029】
光触媒層の層厚を20nm以上とすることで機能層の層厚ムラを更に効果的に抑制することができる。
【0030】
本発明に係るEL素子は、光触媒層と基板との間に設けられた絶縁層をさらに有することが好ましい。絶縁層は実質的に二酸化ケイ素からなるものであってもよい。
【0031】
光触媒層と基板との間に絶縁層(例えば、二酸化ケイ素(SiO2)層)をさらに設けることにより、光触媒層の触媒活性(親液性)を向上することができる。このため、機能層の層厚ムラを更に効果的に抑制することができる。
【0032】
本発明に係る第1の製造方法は本発明に係る機能基板を製造するための方法である。本発明に係る第1の製造方法は、基板上に光触媒層及び隔壁を形成する工程と、光触媒層に光(例えば紫外光)を照射することにより、光触媒層の表面を親液化する工程と、機能層を湿式塗布法により形成する工程とを有する。
【0033】
本発明に係る第1の製造方法では、機能層を湿式塗布法により形成する前に、光触媒層が親液化される。また、光が照射された光触媒層は比較的長い時間にわたって親液性を有する。このため、層厚ムラの少ない(特に機能層の周縁部分が中央部分と比較して薄くない)機能基板を容易に形成することができる。
【0034】
本発明に係る第2の製造方法は本発明に係るEL素子を製造するための方法である。本発明に係る第2の製造方法は、基板上に光触媒層及び隔壁を形成する工程と、光触媒層に光(例えば紫外光)を照射することにより、光触媒層の表面を親液化する工程と、機能層を湿式塗布法により形成する工程とを有する。
【0035】
本発明に係る第2の製造方法では、機能層を湿式塗布法により形成する前に、光触媒層が親液化される。また、光が照射された光触媒層は比較的長い時間にわたって親液性を有する。このため、層厚ムラの少ない(特に機能層の周縁部分が中央部分と比較して薄くない)EL素子を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、層厚ムラの少ない機能層を有する機能基板を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
(実施形態1)図1は本実施形態1に係る有機EL素子1の断面図である。
【0039】
図2は有機EL素子1の平面図である。尚、説明の便宜上、図2には上部共通電極50及び封止基板60は描画していない。
【0040】
有機EL素子1は、有機エレクトロルミネッセンス基板(以下、「有機EL基板」と略称する。)2と、封止基板60とを有する。有機EL基板2はアクティブマトリクス基板(以下、「AM基板」と略称する。)10とバンク(隔壁)30と、機能層としての有機層40と、第2電極としての上部共通電極50とを有する。
【0041】
AM基板10は、基板本体11と、基板本体11上にマトリクス状に配置されたスイッチング素子12と、スイッチング素子12の上に形成された平坦化膜13と、平坦化膜13の上にマトリクス状に設けられた、第1電極としての画素電極14とを有する。スイッチング素子12と画素電極14とは平坦化膜13に設けられたスルーホールを経由して電気的に接続されている。
【0042】
基板本体11は、有機EL素子1の機械的耐久性を担保する機能、及び有機層40等に外部から水分や酸素が進入することを抑制する機能を有する。基板本体11は、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート等のプラスティック基板等であってもよい。及びアルミナ等のセラミックス等の絶縁性材料で形成された基板であってもよい。また、基板本体11はアルミニウムや鉄等からなる金属基板の一方面をSiO2や有機絶縁性材料等の絶縁材料でコートした基板、金属基板の表面に陽極酸化等の方法で絶縁化処理を施した基板等であってもよい。尚、有機EL素子1が基板本体11側から光を出射させるボトムエミッション方式である場合は、基板本体11はガラスやプラスティック等の光透過率の高い材料により構成することが好ましい。
【0043】
スイッチング素子12は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)やMIM(Metal−Insulator−Metal)ダイオード等によって構成することができる。
【0044】
平坦化膜13はAM基板10の一方面(画素電極14側の面)を平坦にする。平坦化膜13はアクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、又はこれらの混合樹脂等により形成することができる。
【0045】
画素電極14は有機層40にホール(正孔)を注入する。画素電極14の材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、ナトリウム(Na)、ルテニウム(Ru)、マンガン(Mn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、イッテルビウム(Yb)、フッ化リチウム(LiF)等の金属材料、及び、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の導電性酸化物等が挙げられる。画素電極14は、マグネシウム(Mg)/銅(Cu)、マグネシウム(Mg)/銀(Ag)、ナトリウム(Na)/カリウム(K)、アスタチン(At)/酸化アスタチン(AtO2)、リチウム(Li)/アルミニウム(Al)、リチウム(Li)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)、又はフッ化リチウム(LiF)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)といった合金であってもよい。
【0046】
画素電極14のホール注入口率をより高くする観点から、上述した画素電極14の材料の中でも、仕事関数の大きな材料がより好ましい。仕事関数の大きな材料としては、インジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等が挙げられる。
【0047】
また、有機EL素子1が有機層40からの光をAM基板10側から取り出すボトムエミッション方式である場合は、画素電極14がインジウムスズ酸化物(ITO)等の光透過性の材料により形成されていることが好ましい。この構成によれば、有機層40からの光の画素電極14による吸収率を低くすることができ、高い輝度を実現することができる。
【0048】
一方、有機EL素子1が有機層40の発光を上部共通電極50側から取り出すトップエミッション方式である場合は、画素電極14がアルミニウム(Al)等の光反射性材料により形成されていることが好ましい。この構成によれば、有機層40から画素電極14側に向けて出射された光が画素電極14によって上部共通電極50側に高い反射率で反射される。このため、有機層40からの光の出射光率を高くすることができるので、高い輝度を実現することができる。
【0049】
画素電極14の層厚は50nm以上500nm以下であることが好ましい。50nmより小さい場合は、所望の膜強度を得ることが困難になる。また、所望の抵抗値を得ることが困難になる。500nmより大きい場合は、画素電極14の剥離が生じる虞が増大する傾向にある。
【0050】
尚、本実施形態に係る有機EL素子1では、画素電極14が略矩形に形成されているが、画素電極14は円形、楕円形等であってもよい。
【0051】
画素電極14は親液化処理が施されたものであっても構わない。湿式塗布法(インクジェット法等)により画素電極14の上に有機層40を形成する場合には、画素電極14に親液化処理を施しておくことにより、画素電極14と有機層40との親和性が向上するため、より層厚の均一な有機層40を形成することができるからである。
【0052】
AM基板10の表面の相隣る画素電極(第1電極)14の間には、格子状に形成された断面略台形の撥液性のバンク30が設けられている。バンク30はAM基板10の表面を複数の領域に区画するように設けられている。図2に示すように、本実施形態1では格子状に形成されたバンク30によりそれぞれに区画された領域は略矩形である。尚、略矩形とは矩形又は角部が鈍角化された矩形のことをいう。ここで、角部を鈍角化するとは、90度を超える角(複数でもよい)又は曲線で角部を構成することをいう。曲線と鈍角との組み合わせによって角部を構成してもよい。
【0053】
バンク30はポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ノボラック樹脂等により形成することができる。これらの樹脂を混合した材料により形成してもよい。ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、及びノボラック樹脂は有機材料の中でも耐熱性(熱的安定性)が高く、脱ガス、変色、変質、及び変形等が発生しにくい。従って、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、及びノボラック樹脂からなる群から選ばれた1種類又は2種類以上の樹脂を用いてバンク30を形成することによって、バンク30部分の安定性を向上させることができるので、長い製品寿命を有する有機EL素子1を実現することができる。
【0054】
また、バンク30は2層構造であってもよい。具体的には、バンク30の下層にSiO2、Si34、SiON等の無機絶縁層をさらに形成してもよい。そうすることによって、リーク電流や絶縁破壊をより効果的に抑制することが可能となる。
【0055】
バンク30の表面は、少なくとも撥液性であることが好ましい。表面を撥液性にすることによって、隣接する有機層40の混色等を効果的に抑制することができる。表面が撥液性であるバンク30を製造する方法としては、撥液性を有する材料によりバンク30を形成する方法、バンク30に撥液性を有する添加物を添加する方法及びバンク30部に撥液化処理を施す方法等が挙げられる。
【0056】
撥液性を有する添加物としては、フッ素系添加物、シリカ系添加物等が挙げられる。具体的に、フッ素系添加物としては、フッ化カルシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロエチレン等が挙げられる。シリカ系添加物としては、ポリシラザン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
撥液性を有する材料としては、側鎖にメチル基やフッ素基等を導入したポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0058】
光触媒層20はバンク30により区画された各領域のそれぞれの周縁部分に少なくとも設けられている。具体的には、バンク30と画素電極14との間には、光触媒層20が設けられている。更に具体的には、光触媒層20はAM基板10の表面の相隣る画素電極14の間に渡って、両端がその相隣る画素電極14に接触するように(好ましくは、両端が相隣る画素電極14の端部と重畳するように)形成されている。この光触媒層20によって、撥液性を有するバンク30はAM基板10の表面から隔離されている。
【0059】
光触媒層20は光触媒を含有する。光触媒としては、例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、二酸化錫(SnO2)、又は二酸化ジルコン(ZrO2)等が挙げられる。光触媒層20は、これらの光触媒の1種又は2種以上を含有していてもよい。また、これらの光触媒のみによって形成されていてもよい。これらの光触媒の中でも、例えばi線(365nm)の光により親液性を発現する光触媒が特に好ましい。i線(365nm)の光は例えばフォトリソグラフィー露光機等にも用いられる光であり、一般的な露光機を用いて光触媒層20を親液性にすることができるため、容易且つ安価に光触媒を活性化することができる。
【0060】
光触媒層20は絶縁性であることが好ましい。光触媒層20を絶縁性にすることにより、例えば、有機層40(特に発光層42)の被覆不良が生じた場合であっても、画素電極14と上部共通電極50との間の電流リークを効果的に抑制することができる。電流リークをより効果的に抑制する観点から光触媒層20の層厚は20nm以上であることが好ましい。
【0061】
本実施形態1では、光触媒層20が相隣る画素電極14の間に渡って、両端がその相隣る画素電極14に接触するように形成されている。しかし、本発明は何らこの構成に限定される物ではない。例えば、図3、図4に示すように、光触媒層20を設けてもよい。
【0062】
図3、図4は光触媒層20の形成例を表す断面図である。
【0063】
図3に示すように、光触媒層20を領域それぞれの周縁部分のみ(バンク30と画素電極14との接触部分近辺のみ)に設けてもよい。また、図4に示すように、バンク30の下に、バンク30と共に略台形となるように光触媒層20を設けてもよい。
【0064】
また、図5に示すように、光触媒層20の周縁部分を櫛歯状にパターニングしてもよい。
【0065】
図5は光触媒層20の周縁部分を櫛歯状にパターニングした場合を表す部分平面図である。尚、説明の便宜上、図5では、封止基板60、上部共通電極50及び有機層40は描画していない。
【0066】
図5に示すように、光触媒層20の周縁部分を櫛歯状にパターニングすることによって、画素電極14と有機層40との接触面積を増大させることができる。このため、有機層40の発光面積を増大することができる。従って、高輝度な有機EL素子1を実現することができる。
【0067】
有機層40は周縁部分が光触媒層20と接触するように形成されている。有機層40はホール輸送層41と発光層42とを有する。但し、本発明は何らこの構成に限らず、有機層40を発光層42のみにより構成してもよい。また、有機層40を発光層42とホール注入層、ホール輸送層41、電子輸送層、電子注入層等のバッファ層との積層としてもよい。
【0068】
ホール輸送層41は、画素電極14から発光層42へのホール輸送効率を向上する。ホール輸送層41を形成するためのホール輸送材料としては、ポルフィリン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリシラン、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミン置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、水素化アモルファスシリコン、水素化アモルファス炭化シリコン、硫化亜鉛、セレン化亜鉛等が挙げられる。
【0069】
発光層42は画素電極14から注入されたホールと上部共通電極50から注入された電子とを再結合させて発光する。
【0070】
発光層42を形成するための発光材料としては、金属オキシノイド化合物[8−ヒドロキシキノリン金属錯体]、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ジフェニルエチレン誘導体、ビニルアセトン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、クマリン誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、スチリル誘導体、スチリルアミン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、トリススチリルベンゼン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、アミノピレン誘導体、ピリジン誘導体、ローダミン誘導体、アクイジン誘導体、フェノキサゾン、キナクリドン誘導体、ルブレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリシラン等が挙げられる。
【0071】
上部共通電極50はバンク30及び複数の有機層40の全体を覆うように形成されている。上部共通電極50は有機層40に電子を注入する。
【0072】
上部共通電極50の材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、ナトリウム(Na)、ルテニウム(Ru)、マンガン(Mn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、イッテルビウム(Yb)、フッ化リチウム(LiF)等の金属材料、又は、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、又はインジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の導電性酸化物が挙げられる。上部共通電極50はマグネシウム(Mg)/銅(Cu)、マグネシウム(Mg)/銀(Ag)、ナトリウム(Na)/カリウム(K)、アスタチン(At)/酸化アスタチン(AtO2)、リチウム(Li)/アルミニウム(Al)、リチウム(Li)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)、又はフッ化リチウム(LiF)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)等の合金により形成されていてもよい。
【0073】
これらの材料の中でも、仕事関数の小さな材料がより好ましい。仕事関数の小さな材料により上部共通電極50を形成することにより、有機層40への電子注入効率を向上させることができるからである。仕事関数が小さい材料としては、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、フッ化リチウム(LiF)、マグネシウム(Mg)/銅(Cu)、マグネシウム(Mg)/銀(Ag)、ナトリウム(Na)/カリウム(K)、リチウム(Li)/アルミニウム(Al)、リチウム(Li)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)、又はフッ化リチウム(LiF)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)等が挙げられる。
【0074】
また、有機EL素子1が上部共通電極50側から発光層42の光を取り出すトップエミッション方式である場合は、上部共通電極50がインジウムスズ酸化物(ITO)等の光透過性の材料により形成されていることが好ましい。この構成によれば、発光層42からの光の上部共通電極50による吸収率を低くすることができるので、高い輝度を有する有機EL素子1を実現することができる。
【0075】
一方、有機EL素子1がAM基板10側から発光層42の光を取り出すボトムエミッション方式である場合は、上部共通電極50がアルミニウム(Al)等の光反射性材料により形成されていることが好ましい。この構成によれば、発光層42から上部共通電極50側に向けて出射された光が上部共通電極50によって画素電極14側に高い反射率で反射される。そのため、発光層42からの光の出射光率を高くすることができるので、高い輝度を有する有機EL素子1を実現することができる。
【0076】
上部共通電極50の上には封止基板60が設けられている。封止基板60は、周縁部分において、AM基板10に対して、シール材により接着固定されている。この封止基板60を設けることによって、素子内への水分や酸素の進入を効果的に抑制することができる。このため、長い寿命を有する有機EL素子1を実現することができる。
【0077】
封止基板60はガラス基板や石英基板等により構成することができる。封止基板60を接着するシール材としてはエポキシ樹脂等の酸素透過性及び透湿性の低い接着剤が好ましい。
【0078】
また、より長い寿命を実現する観点から、封止基板60の内側に乾燥剤を設けてもよい。
【0079】
以下、有機EL素子1の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0080】
図6〜10は有機EL素子1の製造工程を表す断面図である。
【0081】
図6はAM基板10上に光触媒層20を形成する工程を説明する断面図である。
【0082】
まず、AM基板10上に光触媒層20を形成する。光触媒層20は例えばリフトオフ法により形成することができる。具体的には、フォトレジストをスピンコート法等により塗布し、フォトマスクを用いて所望のパターンを露光した。現像液で現像し、続いて水洗いすることによりレジストパターンを形成する。例えば高周波マグネトロンスパッタ装置等を用いて、形成されたレジストパターンの上に光触媒を含有する材料を成膜する。その後、剥離液に浸し、続いて水洗いすることによりフォトレジストを剥離させることにより、光触媒層20を形成することができる。
【0083】
光触媒層20の上にバンク30を形成する。具体的には、例えば、ポリイミド樹脂等をスピンコート法により成膜する。その後、得られた薄膜をフォトパターニングすることによりバンク30を形成することができる。
【0084】
バンク30を形成したAM基板10に親液化処理を施し、画素電極14に親液性を付与する。親液化処理としてはUV/O3処理等が挙げられる。また、撥液化処理を施すことによりバンク30に撥液性を付与する。撥液化処理としてはCF4プラズマ処理が挙げられる。このように、画素電極14を親液性にし、一方バンク30を撥液性とすることにより、後に湿式塗布法により形成される有機層40の層厚の均一性を向上することができる。具体的には、有機層40を形成するためのインクの画素電極14に対する親和性が比較的高いため、インクが画素電極14全面に広がりやすくなる。このため、有機層40を各領域の周縁部分に形成しやすくなる。また、有機層40を形成するためのインクがバンク30に大量に付着することを抑制することができる。このため、有機層40の周縁部分が中央部分に対して厚くなることを抑制することができる。
【0085】
尚、CF4プラズマ処理を施す場合は、バンク30にダメージを与えないように、小さな出力且つ短時間で処理することが好ましい。処理時間は20秒から30分の間であることが好ましく、バンク30の材料により適宜決定することができる。出力は10〜1000W/m2の範囲であることが好ましい。また、バンク30に撥液性を有する添加物を添加した場合、撥液性を有する材料によりバンク30を形成した場合はバンク30の撥液化処理を行う必要はない。
【0086】
図7は光触媒層20を親液化する工程を表す断面図である。
【0087】
バンク30を形成した後、バンク30側から光(例えば、近紫外光、紫外光等)を照射することにより、光触媒層20の表面を親液化する。このようにすることによって、後に湿式塗布法で形成される有機層40が各領域の周縁部分にも好適に形成されるようになる。このため、均一性の高い有機層40を形成することができる。尚、照射する光の波長は用いる光触媒に応じて適宜決定することができる。
【0088】
尚、光触媒層20への光照射は水分濃度10%以上の雰囲気中で行うことが好ましい。そうすることによって、活性の高い(言い換えれば、親液性の高い)光触媒層20を実現することができる。
【0089】
図8は湿式塗布法によりホール輸送層41を形成する工程を表す断面図である。
【0090】
バンク30により区画された複数の領域のそれぞれに湿式塗布法(例えばインクジェット法等)によりホール輸送層41を形成する。具体的には、まずホール輸送材料を溶媒に溶かすことによりホール輸送層形成用インクを調製する。インクの濃度は例えば5重量%とすることができる。
【0091】
インクの調製に使用可能な溶媒としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、ヘミメリテン〔1,2,3−トリメチルベンゼン〕、プソイドクメン〔1,2,4−トリメチルベンゼン〕、メシチレン〔1,3,5−トリメチルベンゼン〕、クメン〔イソプロピルベンゼン〕、プレーニテン〔1,2,3,4−テトラメチルベンゼン〕、イソジュレン〔1,2,3,5−テトラメチルベンゼン〕、ジュレン〔1,2,4,5−テトラメチルベンゼン〕、p−シメン〔イソプロピルトルエン〕、テトラリン〔1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン〕、シクロヘキシルベンゼン、メリテン〔ヘキサメチルベンゼン〕、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール〔IPA;イソプロピルアルコール〕、エチレングリコール〔1,2−エタンジオール〕、ジエチレングリコール、2−メトキシエタノール〔エチレングリコールモノメチルエーテル,メチルセロソルブ〕、2−エトキシエタノール〔エチレングリコールモノエチルエーテル,セロソルブ〕、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アニソール〔メトキシベンゼン〕、水等が挙げられる。これらの溶媒を混合して用いてもよい。
【0092】
次に、調製したインクを各領域に塗布し、100℃〜250℃で0.5分〜120分間程度乾燥させることによりホール輸送層41を形成する。
【0093】
上述のように、画素電極14及び光触媒層20はホール輸送層形成用インクに対して親液性を有し、バンク30は撥液性を有する。このため、ホール輸送層形成用インクがバンク30に大量に付着することを抑制することができる。また、ホール輸送層41を各領域の隅々にまでほぼ均一な層厚で形成することができる。
【0094】
図11は光触媒層20を設けない場合の、湿式塗布法によりホール輸送層を形成する工程を表す断面図である。
【0095】
図11に示すように、光触媒層20を設けていない場合は、バンク30の撥液性に起因して、ホール輸送層形成インクが各領域の隅々にまで塗布されない。このため、均一性の高いホール輸送層41を形成することが困難となる。
【0096】
図9は湿式塗布法により発光層42を形成する工程を表す断面図である。
【0097】
ホール輸送層41のそれぞれの上に、湿式塗布法により発光層42を形成する。ホール輸送層41は一般的に発光層を形成するためのインクに対して親液性を示すため、発光層42にも、ホール輸送層41と同様に、ほぼ均一な層厚で形成可能である。
【0098】
このように、ホール輸送層41及び発光層42を各領域の周辺部分にまで高い均一性で形成することができる。言い換えれば、ホール輸送層41及び発光層42の高い被覆性を実現することができる。このため、画素電極14と上部共通電極50との間の電流リークを効果的に実現することができる。
【0099】
図10は上部共通電極50を形成する工程を表す断面図である。
【0100】
上部共通電極50は例えばスパッタ法や蒸着法等により形成することができる。
【0101】
上部共通電極50形成後、ガラス等からなる封止基板60をシール材によりAM基板10に接着固定することにより、図1及び図2に示す有機EL素子1を完成することができる。封止基板60を封止する工程は不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気中で行うことが好ましい。
【0102】
(実施形態2)図12は本実施形態2に係る有機EL素子3の断面図である。
【0103】
本実施形態2に係る有機EL素子3は、光触媒層20とAM基板10との間に光触媒層20に積層するように形成された絶縁層70が設けられている点で実施形態1に係る有機EL素子1と異なる。ここでは、絶縁層70に焦点を当てて説明する。
【0104】
尚、実施形態2において、実施形態1と実質的に同じ機能を有する構成要素を共通に参照符号で説明し、説明を省略する。
【0105】
実施形態2に係る有機EL素子3では、相隣る画素電極14の間に渡って、両端がその相隣る画素電極14に接触するように絶縁層70が設けられている。そして、その絶縁層70の表面を覆うように光触媒層20が設けられている。
【0106】
このように、光触媒層20に接触するように絶縁層70を設けることによって光触媒層20の触媒活性を向上することができる。言い換えれば、光触媒層20の親液性を向上することができる。
【0107】
尚、絶縁層70は、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、窒化シリコン(Si34)、シリコン酸化窒化膜(SiON)等によって形成することができる。特に光触媒として二酸化チタン(TiO2)を使用する場合は、絶縁層70として二酸化ケイ素層を形成することが好ましい。二酸化ケイ素と二酸化チタンとを組み合わせることにより、光触媒層20の親液性をより効果的に向上することができる。
【0108】
以上、アクティブマトリクス方式の有機EL素子1及び2を例として本発明の適用例を説明したが、本発明は何らこれに限定される物ではない。本発明は例えばパッシブマトリクス方式の有機EL素子にも適用される。また、カラーフィルタ基板、機能層として導電層を有する回路基板、機能層として有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタ基板、機能層としてレンズ層を有するマイクロレンズアレイ基板等に代表される機能基板に一般的に適用されるものである。
【実施例】
【0109】
実施例及び比較例として光触媒層20の層厚を種々変化させて実施形態1で説明した有機EL素子1と同形態の有機EL素子を作製、評価した。
【0110】
まず、インジウムスズ酸化物(ITO)からなる画素電極14がマトリクス状に形成されたAM基板10を用意した。AM基板10上に、リフトオフ法を用いて、二酸化チタン(TiO2)膜を形成、パターニングすることにより光触媒層20を形成した。成膜条件は、Tiターゲットを用い、Ar/O2ガスの分圧比を50:50として、ガス圧2Paとした。
【0111】
光触媒層20の上にポリイミド樹脂をスピンコート法により成膜し、フォトパターニングすることによりバンク30を形成した。
【0112】
バンク30を形成したAM基板10にUV/O3処理を施し、画素電極14に親液性を付与した。また、CF4プラズマ処理を施すことによりバンク30に撥液性を付与した。
【0113】
バンク30を形成した後、バンク30側から光(波長365nm)を10分間照射することにより、光触媒層20の表面を親液化した。
【0114】
バンク30により区画された複数の領域のそれぞれにインクジェット法によりホール輸送層41を形成した。ホール輸送材料としてポリチオフェン及びポリマー酸を用いた。溶媒はキシレンを用いた。調製したインクの濃度は5重量%であった。インク滴下量は0.01L/m2であった。インク滴下後、200℃で10分間焼成することによりホール輸送層41を形成した。
【0115】
ホール輸送層41のそれぞれの上に、湿式塗布法により発光層42を形成した。発光材料としてPPV誘導体《ポリ{2,5−ビスヘキシルオキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)}》を使用し、溶媒はキシレンを使用した。調製したインクの濃度は5重量%であった。インク滴下量は0.01L/m2であった。インク滴下後、200℃で10分間焼成することによりホール輸送層41を形成した。
【0116】
次に、蒸着法を用いて、層厚100nmのアルミニウム層と層厚5nmのカルシウム層との積層を形成することにより、上部共通電極50を形成した。
【0117】
最後に、封止基板60として、ガラス基板を窒素雰囲気中でエポキシ樹脂により接着固定することにより実施例及び比較例に係る有機EL素子を完成させた。
【0118】
実施例として、光触媒層20の層厚が20nmである有機EL素子、50nmである有機EL素子、100nmである有機EL素子を作製した。比較例として、光触媒層20の層厚が10nmである有機EL素子を作製した。
【0119】
これらの有機EL素子の電流リークの有無と素子耐圧性を評価した。電流リークの有無は素子に逆バイアス電圧(画素電極14にマイナス電圧、上部共通電極50にプラス電圧の直流電圧)を1V印加した時に0.01mA/cm2よりも多く流れる場合にリーク電流が有ると判定した(×)。一方、電流が0.01mA/cm2以下の場合にリーク電流がないと判定した(○)。素子耐圧性(V)は、有機EL素子に0Vから20Vまでゆっくりと順バイアス電圧(画素電極14にプラス電圧、上部共通電極50にマイナス電圧の直流電圧)を印加していき、瞬間的に10A/cm2以上流れたときの電圧値をモニターすることにより測定した。素子耐圧性(V)が15V未満のときを不良とし、15V以上のときを良品とした。下記表1にその結果を示す。
【0120】
【表1】

【0121】
表1に示すように、光触媒層20の層厚が20nm以上である場合に、電流リークがなく、優れた素子耐圧性の有機EL素子が得られることがわかった。
光触媒層20の層厚が20nmよりも薄い場合は電流リークの発生確率が高くなり、素子耐圧性が低下する傾向にあった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明に係る機能基板は、層厚ムラの少ない機能層を有するため、液晶表示装置、有機・無機EL表示装置等の表示装置等の部材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本実施形態1に係る有機EL素子1の断面図である。
【図2】有機EL素子1の平面図である。
【図3】光触媒層20の形成例を表す断面図である。
【図4】光触媒層20の形成例を表す断面図である。
【図5】光触媒層20の周縁部分を櫛歯状にパターニングした場合を表す部分平面図である。
【図6】AM基板10上に光触媒層20を形成する工程を説明する断面図である。
【図7】光触媒層20を親液化する工程を表す断面図である。
【図8】湿式塗布法により発光層42を形成する工程を表す断面図である。
【図9】湿式塗布法により発光層42を形成する工程を表す断面図である。
【図10】上部共通電極50を形成する工程を表す断面図である。
【図11】光触媒層20を設けない場合の、湿式塗布法によりホール輸送層を形成する工程を表す断面図である。
【図12】実施形態2に係る有機EL素子3の断面図である。
【符号の説明】
【0124】
1、3 有機EL素子
2 有機EL基板
10 AM基板
11 基板本体
12 スイッチング素子
13 平坦化膜
14 画素電極
20 光触媒層
30 バンク
40 有機層
41 ホール輸送層
42 発光層
50 上部共通電極
60 封止基板
70 絶縁層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に設けられ、該基板の表面を複数の領域に区画する撥液性の隔壁と、
上記複数の領域のそれぞれの周縁部分に少なくとも設けられた光触媒を含有する光触媒層と、
上記複数の領域のそれぞれに、周縁部分が上記光触媒層と接触するように形成された機能層と、
を有する機能基板。
【請求項2】
請求項1に記載された機能基板において、
上記光触媒は、二酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、タンタル酸カリウム、二酸化錫、又は二酸化ジルコンである機能基板。
【請求項3】
請求項1に記載された機能基板において、
上記光触媒層は絶縁性である機能基板。
【請求項4】
請求項3に記載された機能基板において、
上記光触媒層の層厚が20nm以上である機能基板。
【請求項5】
請求項1に記載された機能基板において、
上記光触媒層と上記基板との間に絶縁層をさらに有する機能基板。
【請求項6】
請求項5に記載された機能基板において、
上記絶縁層は実質的に二酸化ケイ素からなる機能基板。
【請求項7】
表面に設けられた複数の第1電極を有する基板と、
上記基板表面の相隣る第1電極の間に形成され、該基板表面を複数の領域に区画する撥液性の隔壁と、
上記複数の領域のそれぞれの周縁部分に少なくとも設けられた光触媒を含有する光触媒層と、
上記複数の領域のそれぞれに、周縁部分が上記光触媒層と接触するように形成された機能層と、
上記機能層のそれぞれの上に設けられた第2電極と、
を有するエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項7に記載されたエレクトロルミネッセンス素子において、
上記光触媒層は、上記基板上の上記基板表面の相隣る第1電極の間に渡って、両端が該相隣る第1電極に接触するように形成されており、
上記隔壁は、上記光触媒層の上記両端が露出するように、上記光触媒層上に設けられているエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項7に記載されたエレクトロルミネッセンス素子において、
上記光触媒は、二酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、タンタル酸カリウム、二酸化錫、又は二酸化ジルコンであるエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項7に記載されたエレクトロルミネッセンス素子において、
上記光触媒層は絶縁性であるエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
請求項10に記載されたエレクトロルミネッセンス素子において、
上記光触媒層の層厚が20nm以上であるエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
請求項7に記載されたエレクトロルミネッセンス素子において、
上記光触媒層と上記基板との間に、上記光触媒層に積層するように形成された絶縁層をさらに有するエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
請求項12に記載されたエレクトロルミネッセンス素子において、
上記絶縁層は実質的に二酸化ケイ素からなるエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
請求項1に記載された機能基板の製造方法であって、
上記基板上に上記光触媒層及び上記隔壁を形成する工程と、
上記光触媒層に光を照射することにより、該光触媒層の表面を親液化する工程と、
上記機能層を湿式塗布法により形成する工程と、
を有する機能基板の製造方法。
【請求項15】
請求項7に記載されたエレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
上記基板上に上記光触媒層及び上記隔壁を形成する工程と、
上記光触媒層に光を照射することにより、該光触媒層の表面を親液化する工程と、
上記機能層を湿式塗布法により形成する工程と、
を有するエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−35347(P2007−35347A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214029(P2005−214029)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】