説明

機能性まるごとニンニクの製造方法

【課題】
本発明は、無臭化された皮付きニンニク球をまるごと酵素分解して工程と廃棄物を省いて、品質の保全と優良化をはかり、滑らかで穏やかな風味を保有する機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーを生成して高度利用、高付加価値化して広く社会に提供する。
【解決手段】
無臭化処理皮付きニンニク球を酵素技術と機械的微粉砕技術の相乗作用により外皮を有するニンニク球を短時間に効率よくまるごと処理して風味のよい機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮付きニンニク球をまるごと酵素分解及び機械的微粉砕の相乗作用によりニンニク球をペースト及びパウダーに生成する発明に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクにはアリインが多く含まれており、酵素アリーナーゼがアリインに触媒作用して強い臭いを発してアリシンを生成する、熱に弱いアリーナーゼを高温で加熱して酵素の失活を図るものが多くあるが充分ではない。また、ニンニク球をまるごと醗酵させてニンイク臭と辛みを少なくする製法など、いろいろ提案と発明がなされているが、皮付きのままニンニク球をまるごと分解して省力、簡便に美味しく生成する製造方法は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4033296号
【特許文献2】特許第3660435号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】永井勝次著(平成5年)ニンニク療法・社団法人家の光協会
【非特許文献2】根本幸夫監修、ニンニク健康法・永岡書店
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、無臭化皮付きニンニク球をまるごと酵素分解して加工工程と廃棄物を省き、辛みを抑え、穏やかな風味に生成して健康食品、隠し味調味料としてまるごとペースト及びパウダーを製造しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するもので、下記構成のまるごと加熱処理した皮付きニンニク球、または、醗酵処理した皮付きニンニク球を低分子に酵素分解して省力、簡便に美味しく利用できるまるごとニンニクペースト及びパウダーを製造するものである。
【0007】
生ニンニク球をまるごと120〜150℃の低温でゆっくり油揚げし、ニンニクのアリイナ−ゼ酵素を失活させ無臭化処理した皮付きのニンニク球を、粗砕して機械的微粉砕装置(以下バイオミルリアクターと称する)に投入し、原料に対して0.5〜1.5倍のpH4.0〜7.0の温水と植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素分解反応条件は、添加量0.1〜1.0%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0008】
生ニンニク球をまるごと電子レンジで瞬間的に高温加熱してニンニクのアリイナ−ゼ酵素を失活し無臭化処理した皮付きのニンニク球を、粗砕してバイオミルリアクターに投入し、原料に対して0.5〜1.5倍の温水50℃と植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素分解反応条件は、添加量0.1〜1.0%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0009】
生ニンニクを醗酵により無臭化処理した皮付きのニンニク球を、粗砕してバイオミルリアクターに投入し、原料に対して0.5〜1.5倍の温水50℃と植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素分解反応条件は、添加量0.1〜1.0%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0010】
無臭化処理され皮付きニンニク球を粗砕してバイオミルリアクターに投入し、原料に対して0.5〜1.5倍の温水75℃と澱粉液化酵素を添加混合して糖質を液化し、続いて、温度を50℃に調整して植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素分解反応条件は、添加量0.1〜1.0%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0011】
澱粉質液化酵素はBacillus subtilis属菌株の産生するα−アミラーゼを用いてpH 4.0〜7.0、温度65〜80℃、添加量0.05〜1.0%重量でニンニクの糖質を液化してオリゴ糖とデキストリンを生成し、粘度の低下と品質の向上を図るまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0012】
皮付きニンニク球を低分子にする植物組織崩壊酵素・繊維素分解混合酵素はRhizopus sp.属菌株の産生するペクチナーゼ、ヘミセルラーゼとTricoderma viride
属菌株及びAspergillus nigerの産生するセルラーゼ、ヘミセルラーゼの混合酵素で高力価を含有し、pH4.0〜7.0%重量、反応温度40〜60℃でニンニクの植物組織を崩壊し、硬い繊維素を分解してニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0013】
まるごとニンニクペーストのタンパク質変性、油脂の変敗、及び離水を防止し、また、冷凍耐性、矯味、矯臭作用を有する糖類トレハロースを用いて品質の保全と優良化を図り、かつ0.5〜5.0%重量のトレハロースを添加混合してまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0014】
まるごとニンニクを生成する過程に於いてクラスターデキストリンを10.0〜40.0%重量を添加して矯臭、矯味を包接し、スプレードライヤー,または、フリズドライヤーで乾燥する乾燥賦形剤としてパウダーの品質の保全と優良化を図りまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、皮付き加熱無臭化処理ニンニク球、皮付き醗酵無臭化処理ニンニク球をまるごと酵素分解して加工工程と廃棄物を減少し、機能性健康食品及び調理隠し味としてまるごとニンニクペースト及びニンニクパウダーを生成する、酵素を失活して無臭化したニンニクはアリインを体内の酵素やビタミンB6の作用で有効成分アリシンに変えて有効利用できるので、食品素材としても製麺、製菓、健康食品、介護食品に高付加価値化して人の健康と環境を守り広く社会に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本醗明の実施方法を示した説明図である。
【図2】本発明の実施機械的微粉砕装置の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態は、図の示す通りである。
本発明の一様態を実施例によって説明する。
本発明の実施形態として
図1は、無臭化処理ニンニクに対して、澱粉質液化酵素と植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素の存在下で酵素分解を施してまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する製造形態である。
図2は、酵素分解を相乗的に作用させる機械微粉砕装置で、固形物粒子の表面部を更新して表面積の拡大し、それに伴い酵素との接触面積が増大して、酵素反応を相乗的に高めることができ、攪拌、循環、微粉砕、温度調整機能を有する機械装置である。
【0018】
本発明のまるごとニンニクの製造方法は、無臭化処理をした皮付きニンニク球を粗砕してバイオリアクターに投入し、原料の0.5〜1.5倍、pH4.0〜7.0の温水50℃に植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素反応の条件は添加量0.1〜1.0%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒度100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0019】
無処理化された皮付きニンニク球を粗砕してバイオミルリアクターに投入し原料に対して0.5〜1.5倍、pH4.0〜7.0の75℃の温水と澱粉質液化酵素を添
加攪拌して糖質を液化し、続いて温度を50℃に調整して植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素反応の条件は添加量0.1〜1.0%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒度100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成する。
【0020】
まるごとニンニク生成の過程に於いて原料の品種及び無臭化の方法により、味の不揃いや雑味を生じることもあり、これに対して風味、旨み、コクを保全して優良化するためにトレハロース及びクラスターデキストリンを添加混合して風味を包接し、乾燥を容易にして平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成することができる。
以下に、本発明の実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0021】
生ニンニク球1kgを120〜140℃の低温にてゆっくり食油でから揚げし、無臭化処理した皮付きニンニク球を、粗砕してバイオミルリアクターに投入し、原料に対してpH7.0の温水50℃、1Lと植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素4g及びトレハロース20gを添加して90分間酵素反応を施し、電動篩機で100mesh assさせ、これを耐熱袋に充填して80℃、10分間殺菌して1.6Lのまるごとニンニクペーストを生成した。このまるごとニンニクペーストを−20℃以下で冷凍保存した。
【実施例2】
【0022】
生ニンニク球を耐熱性ガラス容器に生ニンニク球1kgを電子レンジに入れて160℃レンジ強で20分間加熱して無臭化し、この無臭化処理した皮付きニンニク球1kgをチヨッパーで粗砕してバイオミルリアクターに投入しpH 7.0の水1Lと植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素4gとトレハロース20gを添加し90分間酵素反応を施して電動篩機で100mesh pass以下して、これを耐熱袋に充填して80℃、15分間殺菌して1.53Lのまるごとニンニクペーストを生成した。このまるごとニンニクペーストを−20℃以下で冷凍保存した。
【実施例3】
【0023】
無臭化処理した皮付き醗酵ニンニク球1kgをチヨッパーで粗砕してバイオミルリターに投入しpH 7.0の水1Lと植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素4gとトレハロース20g及びクラスターデキストリン300gを添加し90分間酵素反応を施して電動篩機で100mesh passして、1.75Lのまるごとニンニクペーストを生成し、これをフリーズドライして1.1kgのニンニクパウダーを生成した。

<醗酵黒ニンニクの成分>
エネルギー :231kcal/100g
水 分 : 4.2g/100g
タンパク質 :10.1g/100g
脂 質 : 0.7g/100g
炭水化物 :46.1g/100g
灰 分 : 1.9g/100g
ナトリウム : 9.6g/100g
カルシウム :21.0mg/100g
カリウム : 927mg/100g
マグネシウム:38.5mg/100g
鉄 : 1.2mg/100g
亜鉛 : 2.2mg/100g
ビタミンB1 :0.03mg/100g
(財団法人 食品分析開発センターSUNATEC)
【実施例4】
【0024】
無臭化処理した皮付きニンニク球10kgをチヨッパーで粗砕してバイオミルリアクターに投入し75℃、pH 7.0の温水10Lと澱粉質液化酵素20gを添加して糖質を液化し、続いて植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素40gを添加し90分間酵素反応を施してニンニクの組織を低分子に分解し、電動篩機で100mesh passして、クラスターデキストリン3kgを添加混合して1.95Lのまるごとニンニクペーストを生成した。このまるごとニンニクペーストを150℃のスプレードライヤーで乾燥して11.5kgのまるごとニンニクパウダーを生成した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、無臭化皮付きニンニク球をまるごと酵素分解して低分子化して品質を優 良化し、滑らかで美味しいまるごとニンニクを生成する、廃棄物を最小限に止め、加工工程と加工時間を短縮してまるごとニンニクの品質の向上と生産効率を高め、驚くべきまるごとニンニクの機能性を発揮し、薬効が健康食品、調理の隠し味として高付加価値化した。この食効が健康維持、精力増進、疲労回復、更に生活習慣病、美容・美肌効果をもたらして、身近に利用できる万能薬的役割をする。また、無臭化され製麺、製菓、健康食品、病人、介護食にも使用でき、健康食品素材、隠し味調味料として健康と環境に役立ち広く社会に提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
1.微粉砕機能
2.攪拌機能
3.温度調整タンク
4.循環パイプ
5.モーター
6.原料タンク
7.製品出口
8.原料投入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ニンニク球をまるごと120〜150℃の低温でゆっくり油揚げし、無臭化処理した皮付きのニンニク球を、粗砕してバイオミルリアクターに投入し、原料に対して0.5〜1.5倍のpH4.0〜7.0の温水と植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素分解反応条件は、添加量0.1〜1.0%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成し、品質の保全と優良化を図ることを特徴とする機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーの製造方法。
【請求項2】
ニンニク球をまるごと電子レンジで高温160〜180℃、10〜30分間加熱し、無臭化処理した皮付きのニンニク球を、粗砕してバイオミルリアクターに投入し、原料に対して0.5〜1.0倍の、pH4.0〜7.0の温水と植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素分解反応条件は、添加量0.1〜1.5%量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成し、品質の保全と優良化を図ることを特徴とする機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーの製造方法。
【請求項3】
無臭化処理された皮付き醗酵ニンニク球を粗砕してバイオミルリアクターに投入し、原料に対して0.5〜1.0倍、pH4.0〜7.0の温水50℃と植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素分解反応条件は、添加量0.1〜1.5%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成し、品質の保全と優良化を図ることを特徴とする機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーの製造方法。
【請求項4】
無臭化処理された皮付きまるごとニンニク球を粗砕してバイオミルリアクターに投入し、原料に対して0.5〜1.5倍、pH4.0〜7.0の温水75℃と澱粉質液化酵素を添加混合して糖質を液化し、続いて温度を50℃に調整して植物組織崩壊・繊維素分解混合酵素を添加して酵素反応を施し、かつ上記酵素分解反応条件は、添加量0.1〜1.0%重量、反応温度40〜60℃、反応時間60〜120分間とし、平均粒径を100mesh pass以下のまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成し、品質の保全と優良化を図ることを特徴とする機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーの製造方法。
【請求項5】
澱粉質液化酵素はBacillus subtilis属菌株の産生するα−アミラーゼを用いてpH 4.0〜7.0、温度65〜80℃、添加量0.05〜1.0%重量でニンニクの糖質を液化してオリゴ糖とデキストリンを生成し、粘度低下と品質の向上を図りまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成することを特徴とする機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーの製造方法。
【請求項6】
皮付きニンニク球を低分子にする植物組織崩壊酵素・繊維素分解混合酵素はhizopus sp.属菌株の産生するペクチナーゼ、ヘミセルラーゼとTricoderma viride属菌株の産生するセルラーゼ、ヘミセルラーゼの混合酵素で高力価を含み、pH4.0〜7.0%重量、反応温度40〜60℃でニンニクの植物組織を崩壊し、硬い繊維素を分解してまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成し、品質の保全と優良化を図ることを特徴とする機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーの製造方法。
【請求項7】
まるごとニンニクペーストのタンパク質変性、油脂の変敗、離水を防止し、また、冷凍耐性、矯味、矯臭作用を有する糖類トレハロースを用いる、かつ0.5〜5.0%重量のトレハロースを添加混合してまるごとニンニクペースト及びパウダーを生成して品質の保全と優良化を図ることを特徴とする機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーの製造方法。
【請求項8】
まるごとニンニクを生成する過程に於いてクラスターデキストリンを10.0〜40.0%重量を添加して矯臭、矯味を包接しスプレードライ、または、フリ−ズドライの乾燥賦形剤としてニンニクペースト及びパウダーを生成し、品質の保全と優良化を図ることを特徴とする機能性まるごとニンニクペースト及びパウダーの製造方法。















【図1】
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【図2】
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