説明

機能性シート及びその製造方法

【課題】印刷性に優れ、また、艶消層、印刷層等を積層することにより、化粧シート、印刷シート等の作製に好適な機能性シート、並びに、表面に艶消層が配設された積層型の機能性シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の機能性シート1は、アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体11と、薄肉体11の少なくとも一方の面に形成されたコロナ処理層12とを備え、コロナ処理層12の表面におけるぬれ指数(JIS K6768に準拠)が40mN/m以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐白化性、低収縮性及び印刷性に優れ、また、艶消層、印刷層等を積層することにより、化粧シート、印刷シート等の作製に好適な機能性シート、並びに、表面に艶消層が配設された積層型の機能性シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建物内の廊下、天井、台所、浴室等の壁面、各種家具等の表面を化粧し、外部からの汚染、傷、更には水、湿気、熱、カビ等から表面を保護するために配設される化粧シート、粘着シート等の基体シートの材料として、塩化ビニル系樹脂等を含有する樹脂組成物や、厚紙等が用いられてきた(例えば、特許文献1)。しかし、環境問題を背景として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AES樹脂等を含有する樹脂組成物への代替が検討されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−277460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化粧シートは、用途によっては、高級感を演出する等の目的で、基体シートの表面に、(印刷可能な)艶消層等の加飾層が配設される。また、加飾層を積層せずに基体シートに直接印刷する場合もある。基体シートの構成材料によっては、衝撃等により、加飾層、印刷像が剥離する場合があり、また、外観性が低下する場合、高温下で変形する場合等がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐白化性、低収縮性、及び印刷性(印刷像の定着性)に優れ、また、艶消層等の加飾層、印刷層(インク受理層)等を、高い接着性をもって形成することができる機能性シート、並びに、艶消層が配設された積層型の機能性シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示される。
1.アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体と、該薄肉体の少なくとも一方の面に形成されたコロナ処理層とを備える機能性シートであって、該コロナ処理層の表面におけるぬれ指数(JIS K6768に準拠)が40mN/m以上であることを特徴とする機能性シート。
2.上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物が、体積平均粒子径が60〜500nmのアクリル系ゴム質重合体の存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなり、且つ、グラフト率が20〜170%のアクリル系ゴム強化樹脂を含有する上記1に記載の機能性シート。
3.上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物が、グラフト化アクリル系ゴム質重合体を含み、且つ、芳香族ビニル化合物からなる単位及びシアン化ビニル化合物からなる単位を含むアクリル系ゴム強化樹脂を含有する組成物であり、上記アクリル系ゴム強化樹脂は、グラフト率が20〜170%であり、上記グラフト化アクリル系ゴム質重合体の数平均粒子径が60〜200nmであり、アセトニトリル可溶分の極限粘度が0.4〜0.8dl/gであり、該アセトニトリル可溶分の結合シアン化ビニル化合物量が3〜40質量%であり、且つ、液体クロマトグラフィーにより測定された上記結合シアン化ビニル化合物量の分布の標準偏差が5以下である上記1に記載の機能性シート。
4.上記薄肉体の厚さが、30〜500μmである上記1乃至3のいずれかに記載の機能性シート。
5.上記薄肉体の熱収縮率(JIS K7133に準拠、温度80℃で30分間状態粗調節)が、縦方向で1%以下であり、且つ、横方向で1%以下である上記1乃至4のいずれかに記載の機能性シート。
6.上記コロナ処理層の表面に、更に、艶消層を備える上記1乃至5のいずれかに記載の機能性シート。
7.上記艶消層が、高分子及び無機化合物から選ばれた少なくとも1種からなる微粒子を含む上記6に記載の機能性シート。
8.上記艶消層の厚さが、0.5〜10μmである上記6又は7に記載の機能性シート。
9.上記6乃至8のいずれか1項に記載の機能性シートの製造方法であって、アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体の少なくとも一方の面にコロナ処理を行い、コロナ処理層を形成するコロナ処理工程と、該コロナ処理層の表面に、水系であり、且つ、高分子及び無機化合物から選ばれた少なくとも1種からなる微粒子を含む艶消剤組成物を塗布する塗布工程と、を備えることを特徴とする機能性シートの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の機能性シートによれば、アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体と、該薄肉体の少なくとも一方の面に形成されたコロナ処理層とを備え、該コロナ処理層の表面におけるぬれ指数(JIS K6768に準拠)が40mN/m以上であることから、この機能性シートのコロナ処理層の表面において、耐白化性、低収縮性、及び印刷性に優れ、また、艶消層等の加飾層、印刷層、粘着層等を、高い接着性をもって形成することができる。
上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物が、アクリル系ゴム強化樹脂を含有する場合には、コロナ処理層の表面におけるぬれ指数が十分に高くなるため、加飾層、印刷層、粘着層等との接着性に特に優れる。また、折り曲げた場合に、耐白化性に優れることから、所定形状に加工する際に外観を損なうこともない。更に、薄肉体の熱収縮率が低いため、上記の加飾層、印刷層、粘着層等を積層した後、高温下に放置した場合に、あるいは、各種印刷手法において、加熱を伴う場合においてしわの発生や変形が抑制される。
本発明の機能性シートが、艶消層を更に備える場合、高級外観を有する化粧シート、粘着シート等とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
尚、本明細書において、「シート」は、フィルムを含む意味で用いられる。また、「粘着」は、接着を含む意味で用いられる。更に、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0008】
1.機能性シート
本発明の機能性シートは、アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体と、該薄肉体の少なくとも一方の面に形成されたコロナ処理層とを備える。
【0009】
上記薄肉体を構成するアクリル系ゴム強化樹脂組成物は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体の(共)重合体の一部がアクリル系ゴム質重合体の表面にグラフトしているグラフト化アクリル系ゴム質重合体と、グラフトしていない、上記ビニル系単量体の(共)重合体とからなるアクリル系ゴム強化樹脂を含有する組成物である。但し、このアクリル系ゴム強化樹脂には、未グラフト化アクリル系ゴム質重合体が含まれていてもよい。
【0010】
上記グラフト化アクリル系ゴム質重合体(但し、未グラフトのアクリル系ゴム質重合体が含まれていてもよい。)は、その形状が限定されることなく、定形及び不定形のいずれでもよい。その形状が粒子状である場合、その数平均粒子径は、60〜500nmであり、より好ましくは60〜400nm、更に好ましくは60〜200nmである。この数平均粒子径が上記範囲にあると、フィルム等の薄肉体とした場合、形状安定性及び強度に優れ、折り曲げた場合の耐白化性に優れる。尚、上記グラフト化アクリル系ゴム質重合体の数平均粒子径は、本発明に係る薄肉体から作製した薄片を、OsO又はRuOの溶液に浸漬することにより染色した後、透過型電子顕微鏡で観察し、例えば、100個のグラフト化アクリル系ゴム質重合体の粒子について測定された粒子径の平均値とすることができる。
【0011】
上記アクリル系ゴム強化樹脂におけるグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは20〜150%、更に好ましくは30〜150%である。このグラフト率が低すぎると、シート等の薄肉体を形成した際に、表面にフローマークが発生する場合があり、機械的強度が十分でない場合がある。また、グラフト率が高すぎると、アクリル系ゴム強化樹脂組成物の粘度が高くなる場合があり、薄肉化が困難な場合がある。
【0012】
上記グラフト率は、下記式(1)により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100 (1)
上記式中、Sはアクリル系ゴム強化樹脂1グラムをアセトニトリル20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で4時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはアクリル系ゴム強化樹脂1グラムに含まれるアクリル系ゴム質重合体の質量(g)である。このアクリル系ゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
【0013】
上記アクリル系ゴム強化樹脂のアセトニトリル可溶分の極限粘度(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.0dl/gであり、より好ましくは0.4〜0.8dl/g、更に好ましくは0.4〜0.7dl/gである。上記極限粘度がこの範囲にあると、薄肉体の形成が容易となる。
【0014】
上記アクリル系ゴム強化樹脂は、好ましくは、体積平均粒子径が60〜500nmのアクリル系ゴム質重合体の存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなり、且つ、グラフト率が20〜170%の樹脂である。
【0015】
上記アクリル系ゴム質重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体からなる重合体であり、好ましくは、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)の(共)重合体であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)及び多官能性ビニル化合物(m2)を含む単量体の共重合体である。
【0016】
アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができるが、得られる(共)重合体のガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−10℃以下となるように選択される。これらの化合物のうち、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0017】
上記「多官能性ビニル化合物」とは、分子中に2つ以上の重合性不飽和結合を有する化合物をいう。上記多官能性ビニル化合物(m2)としては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の2官能性芳香族ビニル化合物;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、アクリル酸アリル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジメタクリレート、メタクリル酸アリル等の2官能性(メタ)アクリル酸エステル;トリメチルロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の3官能性(メタ)アクリル酸エステル;(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ジアリルマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル等が挙げられる。
これらの化合物のうち、メタクリル酸アリル、トリアリルシアヌレートが好ましい。また、これら多官能性ビニル化合物(m2)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
尚、上記アクリル系ゴム質重合体とするために、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)及び上記多官能性ビニル化合物(m2)を用いる以外に、これらと共重合可能な他の化合物(m3)とを併用してもよい。
上記他の化合物(m3)としては、単官能性芳香族ビニル化合物、ジエン化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記単官能性芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレンが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記アクリル系ゴム質重合体とするための各単量体の使用量は、これらの合計を100質量%とした場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)、多官能性ビニル化合物(m2)及び他の化合物(m3)の順に、それぞれ、好ましくは、80〜99.99質量%、0.01〜5質量%及び0〜19.99質量%であり、より好ましくは、90〜99.5質量%、0.1〜2.5質量%及び0〜9.9質量%である。各単量体の使用量を上記範囲とすることで、本発明の目的とする効果を高水準なものとすることができる。
【0021】
上記アクリル系ゴム質重合体は、上記単量体と、乳化剤と、重合開始剤と、水とを含む混合物を攪拌しながら、常法により乳化重合することで得られる。尚、上記混合物には、連鎖移動剤(分子量調節剤)、電解質等を配合してもよい。
【0022】
乳化剤としては、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、これらを不均化反応させた不均化ロジン、精製したロジン等のロジン酸(通常、アビエチン酸を主成分とする。)のアルカリ金属塩(ナトリウム塩又はカリウム塩)等のロジン酸塩;高級アルコールの硫酸エステル、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
上記乳化剤の使用量は、上記単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0023】
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0.01〜3質量部、好ましくは0.05〜2質量部である。
【0024】
連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記連鎖移動剤の使用量は、上記単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0〜5質量部、好ましくは0〜3質量部である。
【0025】
上記アクリル系ゴム質重合体の体積平均粒子径は、好ましくは60〜500nm、より好ましくは60〜400nm、更に好ましくは60〜200nmである。この体積平均粒子径が上記範囲にあると、膜厚の小さい薄肉体とした場合であっても、形状安定性及び強度に優れ、折り曲げた場合の耐白化性が改良される。尚、上記アクリル系ゴム質重合体の体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
上記アクリル系ゴム質重合体の体積平均粒子径は、該アクリル系ゴム質重合体の製造時において、乳化剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合速度(重合温度、重合開始剤の添加方法等)、攪拌速度等を適宜、選択することにより調整することができる。
【0026】
上記アクリル系ゴム質重合体のゲル含率は、好ましくは20〜99%、より好ましくは30〜98%、更に好ましくは40〜98%である。ゲル含率が上記範囲にあると、カレンダー成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
尚、上記ゲル含率は、以下の方法により求めることができる。まず、アクリル系ゴム質重合体の1グラムをアセトニトリル20mlに投入し、25℃の温度条件下で、攪拌機を用い、1,000rpmで2時間攪拌する。その後、遠心分離機(回転数;22,000rpm)で1時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分を秤量(質量をWグラムとする。)し、下記式により算出する。
ゲル含率(%)=〔W(g)/1(g)〕×100
尚、ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、多官能ビニル化合物の種類及び量、分子量調節剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜選択することにより調整される。
上記アクリル系ゴム質重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
一方、上記ビニル系単量体は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む。
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、メチル−α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、トリブロムスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
尚、上記ビニル系単量体は、上記の芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物のほか、これらと共重合可能な他の化合物を用いてもよい。他の化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物、官能基含有不飽和化合物(例えば、不飽和酸、エポキシ基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物等)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、共重合樹脂にマレイミド系単量体単位を導入するために、無水マレイン酸を(共)重合させ、後イミド化してもよい。
【0032】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記ビニル系単量体としては、目的、用途等に応じてその種類及び使用量が選択されるが、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を主として用いる場合には、これらの化合物の合計量は、ビニル系単量体全量に対して、好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは、60〜85質量%及び15〜40質量%、更に好ましくは、70〜80質量%及び20〜30質量%である。
尚、透明感のある、あるいは、透明性を有するアクリル系ゴム強化樹脂組成物を得るためには、上記ビニル系単量体として、更に(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。この(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、ビニル系単量体全量に対して、好ましくは40〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%である。残部は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物であり、これらの使用比率は、上記と同様である。
【0036】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造方法は、特に限定されず、公知の重合法、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等を適用することができる。これらのうち、乳化重合が好ましい。尚、アクリル系ゴム質重合体及びビニル系単量体の使用量の組み合わせは、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは、5〜70質量%及び30〜95質量%であり、更に好ましくは、10〜65質量%及び35〜90質量%である。
【0037】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造する場合、重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、電解質、水等が用いられる。尚、乳化剤及び連鎖移動剤は、状況により使用しない場合もあるが、通常は、使用される。
重合開始剤は、上記アクリル系ゴム質重合体の製造方法の説明において例示した化合物を用いることができる。上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。
乳化剤及び連鎖移動剤についても、上記において例示した化合物を用いることができる。尚、上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部である。また、上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部である。
【0038】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造する場合、アクリル系ゴム質重合体及びビニル系単量体の使用方法は、アクリル系ゴム質重合体全量の存在下に、ビニル系単量体を一括添加して重合してもよく、分割もしくは連続添加しながら重合してもよい。また、アクリル系ゴム質重合体の一部の存在下に、ビニル系単量体を一括添加して重合し、重合途中でアクリル系ゴム質重合体の残部を添加しながら重合してもよいし、ビニル系単量体を分割もしくは連続添加して重合し、重合途中でアクリル系ゴム質重合体の残部を添加しながら重合してもよい。
尚、乳化重合の際の重合温度は、通常、30〜95℃、好ましくは40〜90℃である。
【0039】
乳化重合により得られたラテックスからゴム強化ビニル系樹脂(A1)を取り出すには、通常、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩;硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸等の酸等の凝固剤を添加することにより行われる。その後、凝固したゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、水洗、乾燥することによって、粉体として得られる。
【0040】
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を溶液重合、塊状重合又は懸濁重合により製造する場合、常法で行うことができる。溶液重合の場合、通常、ビニル系単量体を、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の不活性重合溶媒に溶解させ、重合開始剤の存在下に重合してよいし、あるいは、重合開始剤の非存在下に熱重合してもよい。
【0041】
上記の方法で得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、通常、ビニル系単量体の(共)重合体の一部がアクリル系ゴム質重合体の表面にグラフトしているグラフト化アクリル系ゴム質重合体と、ビニル系単量体の(共)重合体である未グラフト成分とを含む。尚、上記アクリル系ゴム強化樹脂に残存するビニル系単量体の残存量は、通常、10,000ppm以下、好ましくは、5,000ppm以下である。
【0042】
上記アクリル系ゴム強化樹脂は、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の1種のみからなるものであってよいし、2種以上からなるものであってもよい。
【0043】
また、上記アクリル系ゴム強化樹脂は、前述のように、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってよいし、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)との混合物であってもよい。このビニル系単量体としては、重合性不飽和結合を有するものであれば、特に限定されず、例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物、官能基含有不飽和化合物(例えば、不飽和酸、エポキシ基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物等)等が挙げられる。これらの各単量体は、上記アクリル系ゴム強化樹脂の説明において例示した化合物を用いることができる。
上記ビニル系単量体は、上記アクリル系ゴム強化樹脂の形成に用いられたビニル系単量体と同じ種類の化合物であってよいし、異なる化合物であってもよい。また、同じ種類の化合物を複数用いる場合は、使用割合が同じでも異なってもよい。
尚、透明感のある、あるいは、透明性を有するアクリル系ゴム強化樹脂組成物を得るためには、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、又は、(メタ)アクリル酸エステルと他のビニル系単量体との共重合体を(共)重合体(A2)として用いることが好ましい。
【0044】
上記(共)重合体(A2)は、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等により得ることができる。
上記(共)重合体(A2)の極限粘度(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.25〜0.9dl/gである。
【0045】
上記アクリル系ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、(共)重合体(A2)との混合物である場合、(共)重合体(A2)の配合割合は、アクリル系ゴム強化樹脂中の(ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられた)アクリル系ゴム質重合体の含有量が、後述のように所定の範囲内となるように調整されている。
【0046】
尚、上記アクリル系ゴム強化樹脂におけるグラフト率は、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間等を適宜、選択することにより調整することができる。
また、上記アクリル系ゴム強化樹脂における極限粘度についても、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の製造に用いる、連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜、選択することにより調整することができる。
【0047】
上記アクリル系ゴム強化樹脂のアセトニトリル可溶分の結合シアン化ビニル化合物量(以下、「結合VC量」ともいう。)は、好ましくは3〜40質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%である。この結合VC量が上記範囲にあると、アクリル系ゴム強化樹脂組成物の成形加工性に優れ、得られる薄肉体の外観性及び耐薬品性にも優れる。尚、上記結合VC量は、重合時に添加するシアン化ビニル化合物の比率により調整することができ、その値は、グラフト率を求める際の前処理において得られたアセトニトリル可溶分を測定試料とし、後述する実施例に記載された条件を適用した液体クロマトグラフィーにより得ることができる。
【0048】
上記アクリル系ゴム強化樹脂として、更に好ましくは、芳香族ビニル化合物からなる単位及びシアン化ビニル化合物からなる単位を含む樹脂であり、そのグラフト率が20〜170%であり、グラフト化アクリル系ゴム質重合体の数平均粒子径が60〜200nmであり、アセトニトリル可溶分の極限粘度が0.4〜0.8dl/gであり、上記アセトニトリル可溶分の結合シアン化ビニル化合物量が3〜40質量%であり、且つ、液体クロマトグラフィーにより測定された上記結合シアン化ビニル化合物量の分布の標準偏差が5以下の樹脂である。
上記グラフト率は、より好ましくは30〜160%、更に好ましくは80〜160%である。
上記数平均粒子径は、より好ましくは60〜180nm、更に好ましくは70〜150nmである。
上記極限粘度は、より好ましくは0.5〜0.8dl/gであり、更に好ましくは0.5〜0.7dl/gである。
上記結合シアン化ビニル化合物量(結合VC量)は、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは20〜30質量%である。この結合VC量が上記範囲にあると、薄膜体の外観性に優れる。尚、上記結合VC量の分布の標準偏差は、後述する実施例に記載された条件を適用した液体クロマトグラフィーにより得ることができる。
また、上記結合シアン化ビニル化合物量(結合VC量)の標準偏差は、より好ましくは4以下である。この標準偏差が大きすぎると、薄肉体の表面にフローマークが顕著となる場合がある。尚、上記結合VC量の分布の標準偏差は、該樹脂を構成するゴム強化ビニル系樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の各製造工程において、反応系内の単量体成分のシアン化ビニル化合物の比率を共重合反応性比から得られる値とすることで調整されている。
【0049】
本発明に係るアクリル系ゴム強化樹脂組成物は、上記アクリル系ゴム強化樹脂のみからなるものであってよいし、このアクリル系ゴム強化樹脂と、他の成分とを含有するものであってもよい。他の成分としては、重合体、添加剤等が挙げられる。
【0050】
上記重合体としては、ABS樹脂、AES樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂(PET、PBT等)、ポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。これらの重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
上記添加剤としては、紫外線吸収剤、耐候剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤等が挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記アクリル系ゴム強化樹脂を含む全重合体100質量部に対して、通常、0.05〜5質量部である。
【0053】
耐候剤としては、有機リン系化合物、有機硫黄系化合物、ヒドロキシル基を含有する有機化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記耐候剤の含有量は、上記アクリル系ゴム強化樹脂を含む全重合体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部である。
【0054】
充填剤としては、タルク、酸化チタン、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記アクリル系ゴム強化樹脂を含む全重合体100質量部に対して、通常、0.05〜20質量部である。
【0055】
本発明に係るアクリル系ゴム強化樹脂組成物中のアクリル系ゴム質重合体の含有量は、好ましくは2〜45質量%、より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは5〜35質量%である。アクリル系ゴム質重合体の含有量がこの範囲にあると、上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体が十分な強度を備える。
【0056】
本発明に係る薄肉体は、上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなるものであり、カレンダー成形、インフレーション成形、Tダイ押出成形等により製造することができる。その厚さは、通常、30〜500μmである。
また、上記薄肉体の表面は、平滑面であってよいし、ヘアライン加工、エンボス加工等により、規則模様又は不規則模様を有してもよい。
【0057】
上記薄肉体の熱収縮率(JIS K7133に準拠、温度80℃で30分間状態粗調節)は、好ましくは、縦方向で1%以下、且つ、横方向で1%以下であり、より好ましくは縦方向で0.8%以下、且つ、横方向で0.8%以下である。従って、加飾層、印刷層、粘着層等を積層した後、高温下に放置した場合、あるいは、各種印刷手法において、加熱を伴う場合においてしわの発生や変形が抑制され、良好な印刷適性及び外観性を維持することができる。尚、この熱収縮率は、コロナ処理層を形成した場合も同様である。
【0058】
本発明の機能性シートは、上記薄肉体の表面に、コロナ処理層を備える。このコロナ処理層は、公知のコロナ処理装置を用いて得られたものである(詳細な方法は、後述の機能性シートの製造方法における「コロナ処理工程」と同様である)。このコロナ処理層の表面は、未処理の表面に比べて、>C=O、−COOH等の官能基が増加しており、JIS K6768に準拠するぬれ指数は40mN/m以上、好ましくは43mN/m以上、より好ましくは45mN/m以上である。このぬれ指数が小さすぎると、艶消層等の加飾層、印刷層等を形成した場合に、剥離をまねく場合がある。
本発明の機能性シートを図示すると、薄肉体11と、この薄肉体11の表面に形成されているコロナ処理層12とを備える(図1参照)。
尚、上記コロナ処理層(12,12a、12b)は、図1のように上記薄肉体11の片面のみにあってよいし、図2に示す機能性シート1’のように、両面にあってもよい。
【0059】
本発明の機能性シートは、薄肉体の製造及びコロナ処理を連続的に行って製造することができる。例えば、上記の成形方法により所定厚さの薄肉体とし、冷却後、そのままコロナ発生装置内へ誘導して処理を行い、巻き取ってロール状とすることができる。尚、コロナ処理の後、必要に応じて、コロナ処理層表面に対してヘアライン加工、エンボス加工等の表面加工を行ってもよい。
【0060】
本発明の機能性シートは、コロナ処理層の表面に対して、直接、オフセット印刷等の印刷を行うことができ、印刷像が剥がれることなく、優れた密着性(定着性)を有する。
また、本発明の機能性シートは、コロナ処理層の表面に対して、艶消層、印刷層、粘着層等を更に積層する場合に好適である。
印刷層を積層する場合には、コロナ処理層の表面に、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等各種印刷手法に適した印刷層形成用組成物により印刷層が形成される。尚、この印刷層の形成に際しては、予め、コロナ処理層の表面に、プライマー層等を形成しておいてもよい。このプライマー層を形成することにより、印刷層の密着性、印刷層の平滑性等を向上させることができる。
粘着層を積層する場合には、コロナ処理層の表面に、高分子、粘着付与剤、固体可塑剤等を含有する粘着層形成用組成物(粘着剤組成物)を直接塗布してよいし、必要に応じて、プライマー層等を形成した後、粘着層形成用組成物を塗布してもよい。このプライマー層を形成することにより、粘着層形成用組成物の塗工性、形成される粘着層の平滑性等を向上させることができる。いずれの場合も、粘着剤組成物の塗布後、適宜、乾燥させる等し、剥離紙等が配設される。粘着層が感熱型粘着層である場合には、剥離紙を配設しなくてもよい。
【0061】
2.艶消層を有する機能性シート
他の本発明の機能性シートは、例えば、図3に示すような、積層型の機能性シート2であって、上記薄肉体11と、この薄肉体11の表面に形成されたコロナ処理層12と、このコロナ処理層12の表面に配された艶消層13とを備える。図4の機能性シート2’は、薄肉体11と、この薄肉体11の両面に形成されたコロナ処理層12a及び12bと、コロナ処理層12aの表面に配された艶消層13とを備える態様である。
【0062】
上記艶消層は、通常、艶消材と、結着剤とを含む層である。
艶消材としては、平均粒径が0.1〜6μmの範囲にある微粒子が好ましく、高分子からなる微粒子(以下、「高分子微粒子」ともいう。)、無機化合物からなる微粒子等がより好ましい。平均粒径がこの範囲にあることで、外観性に優れた艶消効果が得られる。
高分子としては、ポリスチレン系重合体;ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・エチレングリコールジメタクリレート共重合体等のアクリル系重合体;ポリアミド系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、単独で含まれてよいし、組み合わせて含まれてもよい。
無機化合物としては、シリカ、チタニア、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、クレー、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、単独で含まれてよいし、組み合わせて含まれてもよい。
上記の高分子微粒子と、無機化合物からなる微粒子とが組み合わせて含まれてもよい。
【0063】
また、結着剤としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、シリコ−ン系樹脂、セルロ−ス誘導体、ウレタン系樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0064】
上記艶消層は、必要に応じて、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、造膜助剤、pH調整剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、耐候剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤等を含んでもよい。
また、上記艶消層の厚さは、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは0.8〜8μm、更に好ましくは1〜8μmである。この範囲であれば、十分な艶消効果が得られる。
【0065】
他の本発明である、艶消層を有する機能性シートは、アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体の少なくとも一方の面にコロナ処理を行い、コロナ処理層を形成するコロナ処理工程と、該コロナ処理層の表面に、水系であり、且つ、高分子及び無機化合物から選ばれた少なくとも1種からなる微粒子を含む艶消剤組成物を塗布する塗布工程と、を備える方法(以下、「本製造方法」という。)により製造することができる。
【0066】
本製造方法に係るコロナ処理工程においては、通常、接地された誘電体被覆ロール(一般的に、ロール芯は、鉄又はアルミニウムからなり、誘電体は、シリコン、ハイパイロン、EPT、セラミックからなる。)と、それに数mmの間隔で配設されたナイフ状等の電極との間に高電圧をかけてコロナ放電を発生させ、この放電中の電極−ロール間に、アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなり、厚さが30〜500μmの薄肉体を通過させる。
コロナ処理は、薄肉体の片面のみに対して行ってよいし、両面に行ってもよい。
【0067】
コロナ処理は、通常、大気雰囲気で行われるが、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。処理条件は、放電量が、通常、40W・分/m以上、好ましくは43〜80W・分/m、より好ましくは48〜80W・分/mである。
上記放電量は、放電電極長さをL(m)、薄肉体の速度をV(m/分)、放電電力をP(W)とした場合、下記式により求められる。

【0068】
コロナ処理を大気雰囲気で行う場合、高電圧を印可すると、電極と薄肉体との間にコロナ放電が生じてオゾンOが発生する。そして、このオゾンOが放電エネルギーを受けて酸素ラジカル(遊離基)O・が発生する。更に、この酸素ラジカルO・が、薄肉体を構成するアクリル系ゴム強化樹脂に含まれた−CH、−CH−等を酸化してカルボニルC=Oを形成する。
【0069】
本製造方法に係る塗布工程においては、上記コロナ処理工程により形成されたコロナ処理層の表面に、水系の艶消剤組成物を塗布する。
この艶消剤組成物は、高分子及び無機化合物から選ばれた少なくとも1種からなる微粒子を含み、その他、塗膜形成用重合体、添加剤等を含んでもよい。また、この組成物は、架橋型及び非架橋型のいずれでもよい。
【0070】
上記微粒子を構成する高分子としては、ポリスチレン系重合体;ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・エチレングリコールジメタクリレート共重合体等のアクリル系重合体;ポリアミド系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。また、無機化合物としては、シリカ、チタニア、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、クレー、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記微粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜6μm、より好ましくは0.2〜5μmである。平均粒径が小さすぎると、所望の艶消表面が得られない場合がある。一方、平均粒径が大きすぎると、外観性が低下する場合がある。
【0072】
上記艶消剤組成物における微粒子の含有量は、塗膜形成用重合体(固形分)を100質量部とした場合、通常、10〜150質量部、好ましくは50〜130質量部である。
【0073】
上記塗膜形成用重合体としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、シリコ−ン系樹脂、セルロ−ス誘導体、ウレタン系樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。従って、組成物の調製の際には、アクリル樹脂エマルション、アクリルウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコーンエマルション、アルキド樹脂エマルション、酢酸ビニルエマルション、酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルション、エチレン・酢酸ビニルエマルション、ウレタン樹脂エマルション、ポリウレタンエマルション等のエマルション;天然ゴムもしくは合成ゴムラテックス;水溶性アクリル樹脂、ポリビニルアルコ−ル等が用いられる。
【0074】
上記添加剤としては、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、造膜助剤、pH調整剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、耐候剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤等が挙げられる。
【0075】
上記艶消剤組成物の媒体は、水を主とする水系媒体であり、水単独でよいし、水を主成分とし、必要に応じて、アルコール、エステル、ケトン及びエーテルから選ばれた少なくとも1種の有機化合物が添加された混合媒体であってもよい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エーテルとしては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記艶消剤組成物の固形分濃度は、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。
【0076】
上記艶消剤組成物の塗布方法は、組成物の種類、粘度等により、吹付け塗り、刷毛塗り、ローラ塗り、コテ塗り、フローコータ塗工、ロールコータ塗工、ナイフ塗工、グラビア塗工、静電塗装等から選択される。
上記塗布工程の後、必要に応じて、加熱する等により、塗膜を乾燥させ、艶消層を得ることができる。
【0077】
他の本発明の機能性シートが、図4に示す構造を有する場合、コロナ処理層12bの表面(図4におけるコロナ処理層12bの下方側)に粘着層等が更に配されたものとすることができる。
粘着層を形成する場合には、コロナ処理層12bの表面に、上記のように、粘着層形成用組成物を用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下に、例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
【0079】
1.機能性シートの製造及び評価
1−1.アクリル系ゴム強化樹脂及びポリブタジエンゴム強化樹脂
下記の製造例1、2、3及び4により得られたゴム強化ビニル系樹脂、並びに、後述するアクリロニトリル・スチレン共重合体を用いて、アクリル系ゴム強化樹脂及びポリブタジエンゴム強化樹脂を調製した。
(1)ゴム強化ビニル系樹脂(A1)
製造例1
表1に示す原料成分を用い、下記要領でゴム強化ビニル系樹脂(A1−1)を製造した。
反応器に、アクリル酸n−ブチル99部と、メタクリル酸アリル1部とを乳化重合して得られた、体積平均粒子径100nm及びゲル含率90%のアクリル系ゴム質重合体を含む固形分濃度40%のラテックス50部(固形分換算)を入れ、更に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及びイオン交換水150部を入れて希釈した。その後、反応器内を窒素ガスで置換し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄0.005部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加え、攪拌しながら60℃まで昇温した。
一方、容器に、スチレン37.5部及びアクリロニトリル12.5部の混合物50部に、ターピノーレン1.0部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を溶解し、その後、容器内を窒素ガスで置換し、単量体組成物を得た。
次いで、上記単量体組成物を、5時間かけて、一定流量で上記反応器に添加しながら70℃で重合を行い、ラテックスを得た。このラテックスに、硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、水洗、更に乾燥することによりゴム強化ビニル系樹脂(A1−1)を得た。
【0080】
製造例2
体積平均粒子径が40nmのアクリル系ゴム質重合体を用い、アクリロニトリル及びスチレンの各使用量を、表1に示す量とした以外は、製造例1と同様にして、ゴム強化ビニル系樹脂(A1−2)を得た。
【0081】
製造例3
アクリロニトリル及びスチレンの各使用量を、表1に示す量とした以外は、製造例1と同様にして、ゴム強化ビニル系樹脂(A1−3)を得た。
【0082】
製造例4
体積平均粒子径が110nmのポリブタジエンゴム質重合体を用いた以外は、製造例3と同様にして、ゴム強化ビニル系樹脂(A1−4)を得た。
【0083】
【表1】

【0084】
(2)アクリロニトリル・スチレン共重合体(A2)
結合VC量(結合アクリロニトリル量)が24.0%、極限粘度(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)が0.45dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体を用いた。
【0085】
(3)アクリル系ゴム強化樹脂及びポリブタジエンゴム強化樹脂
下記の各実験で用いたアクリル系ゴム強化樹脂は、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の3種類である。樹脂(B−1)及び(B−2)は、上記のゴム強化ビニル系樹脂(A1)とアクリロニトリル・スチレン共重合体(A2)とを、表2に記載の割合でヘンシェルミキサーに投入して混合し、その後、混合物を二軸押出機に供給して温度200〜240℃で溶融混練し、ペレットとして得た。また、樹脂(B−3)及び(B−4)は、そのまま、二軸押出機に供給して温度200〜240℃で溶融混練し、ペレットとして得た。これらの樹脂(B−1)〜(B−4)について、グラフト率、グラフト化アクリル系ゴム質重合体又はグラフト化ポリブタジエンゴム質重合体の数平均粒子径、アセトニトリル可溶分の極限粘度及び結合VC量(結合アクリロニトリル量)、並びに、この結合アクリロニトリル量の標準偏差を測定し、表2に併記した。尚、上記アセトニトリル可溶分における結合アクリロニトリル量は、高速液体クロマトグラフィーにより以下の方法にて測定した。
【0086】
<結合アクリロニトリル量(結合VC量)及びその分布の標準偏差の測定方法>
上記アクリル系ゴム強化樹脂のアセトニトリル可溶分20mgを、体積比6/4のアセトニトリル/1,2−ジクロロエタン混合溶媒5mlに溶解させ、24時間放置した。その後、0.5μmのフィルターで濾過し、液体クロマトグラフィー用試料を調製した。この試料を下記条件で分析し、得られた溶出曲線を用い、溶出量%と、アクリロニトリル量とから、結合アクリロニトリル量及びその分布の標準偏差を得た。このとき、標準サンプルとして、結合アクリロニトリル量をCHN元素分析法で決定したアクリロニトリル・スチレン共重合体を用いた。
カラム TSKgel Silica−60 15cm(東ソー社製)
溶離液 A液 n−ヘプタン/1,2−ジクロロエタン(体積比7/3)
B液 アセトニトリル/1,2−ジクロロエタン(体積比6/4)
グラジエント条件 B液;25%→100%(19分、リニアグラジエント)、100 %(10分、ホールド)、100%→25%(5分、リニアグ ラジエント)、25%(5分、ホールド)
流速 1ml/分
カラム温度 30℃
注入量 20μl
検出器 UV(波長260nm)
【0087】
【表2】

【0088】
1−2.機能性シートの製造及び評価
実施例1
上記で調製したアクリル系ゴム強化樹脂(B−1)を、アクリル系ゴム強化樹脂組成物として用いた。
まず、上記アクリル系ゴム強化樹脂(B−1)からなるペレットを180〜190℃で溶融し、熱ロールを用いて更に混練した。その後、混練物を、温度190℃に調整されたカレンダーロールを備えるカレンダー装置を用いて圧延し、幅1,000mm及び厚さ150μmの長尺状のフィルム[F1]を作製した。このフィルム[F1]を、温度80℃の乾燥機内に30分間静置し、JIS K7133に準じて熱収縮率を測定したところ、製造時の流れ方向(縦方向)で0.7%、それに直角の幅方向(横方向)で0.7%であった。
その後、クォーツ電極(放電電極長0.28m)を備えるテーブル式処理装置(高周波電源型式「AGI−021S」、春日電機社製)の所定位置に、A4サイズ(縦297mm及び横210mm)の大きさに裁断したフィルム[F1]を、電極とフィルムとの間隔が1.5mmとなるようにセットし、周波数15kHz、放電量100W、及び、フィルムの走行速度7m/分の条件(放電量51W・分/m)でコロナ処理を行い、機能性シートを得た。
【0089】
得られた機能性シートについて、各種評価を行った。評価項目及びその方法を以下に示す。結果は表4のとおりである。
〔a〕熱収縮率
上記と同様にして、コロナ処理により得られた機能性シートを、温度80℃の乾燥機内に30分間静置し、JIS K7133に準じて熱収縮率を測定した。
〔b〕ぬれ指数
ぬれ張力試験用混合液(エチレングリコールモノエチルエーテルアミド、和光純薬工業社製)を、綿棒(商品名「HUBY−340 CA−002 コットンアプリケーター」、山洋社製)により、機能性シートのコロナ処理面に塗布し、ぬれ性を、JIS K6768に準じて判定した。
【0090】
〔c〕印刷適性
表3に示す4種のインキ(いずれも東洋インキ社製)を用い、機能性シートのコロナ処理面に展色印刷し、その後、温度23℃及び湿度50%RHの恒温恒湿室に24時間静置した。印刷面について、下記の密着性及び傷付き性を評価した。
【表3】

尚、展色印刷の条件は、RIテスター4分割ロールにインキを0.075cc盛、空冷メタルハライドランプ1灯を、出力112W/cm及び速度30m/分で照射し、インキを固化させた。
(1)密着性(印刷定着性)
印刷面に、幅18mm及び長さ約75mmの粘着テープ(ニットウ社製)を貼り付け、指圧でしごいて密着させ、その後、一気に剥がした。印刷像が残存しているかどうかを目視判定した。尚、粘着テープの貼り付け及び引き剥がしは、JIS K5600−5−6に準じて行った。判定基準として、「○」は、密着性が良好であり、実用上問題ないことを、「△」は、密着性がやや劣ることを、「×」は、印刷像が剥離したことを、それぞれ意味する。
(2)傷付き性
印刷面に対し、爪先により引っ掻き、目視判定を行った。判定基準として、「○」は、傷が見られないことを、「△」は、若干傷が観察されることを、「×」は、傷が顕著であることを、それぞれ意味する。
【0091】
〔d〕折り曲げ耐白化性
得られた機能性シートを、温度23℃で180度折り曲げ、折り曲げた部分を観察し、下記基準で評価した。
○ ; 白化がほとんどなく、良好である。
× ; 白化が確認され、不良である。
【0092】
実施例2
実施例1で作製したフィルム[F1]を、周波数15kHz、放電量100W、及び、フィルムの走行速度7.4m/分の条件(放電量48W・分/m)の条件でコロナ処理を行った以外は、実施例1と同様にして機能性シートを製造し、各種評価を行った。その結果を表4に示す。
【0093】
比較例1
実施例1で作製したフィルム[F1]を、周波数15kHz、放電量100W、及び、フィルムの走行速度10.8m/分の条件(放電量33W・分/m)の条件でコロナ処理を行った以外は、実施例1と同様にして機能性シートを製造し、各種評価を行った。その結果を表4に示す。
【0094】
実施例3及び4
上記で調製したアクリル系ゴム強化樹脂(B−2)及び(B−3)を、それぞれ、アクリル系ゴム強化樹脂組成物として用い、実施例1と同様にして、幅1,000mm及び厚さ100μmの長尺状のフィルム[F2]及び[F3]を作製し、表4に記載の条件でコロナ処理を行うことにより機能性シートを製造し、各種評価を行った。その結果を表4に示す。
【0095】
比較例2
上記で調製したポリブタジエンゴム強化樹脂(B−4)を用いて、幅1,000mm及び厚さ100μmの長尺状のフィルム[F4]を作製した以外は、実施例1と同様にして機能性シートを製造し、各種評価を行った。その結果を表4に示す。
【0096】
【表4】

【0097】
2.艶消層を有する機能性シートの製造及び評価
実施例5
イオン交換水280部と、イソプロピルアルコール120部と、アクリル系共重合体粒子を含むエマルション(商品名「サイビノールPG−4」、サイデン化学社製、固形分濃度34%)147部と、ポリウレタン樹脂水分散液(商品名「タケラックXW−725−B186C」、三井武田ケミカル社製、固形分濃度50%)100部とを、ミキサーで混合して、艶消剤組成物を調製した。その後、この艶消剤組成物を、バーコーター(#10)により、実施例1で作製したフィルム[F1]のコロナ処理面に塗布し、温度80℃で3分間乾燥させ、艶消層を有する機能性シートを得た。
この機能性シートにおける艶消層の表面に、幅18mm及び長さ約75mmの粘着テープ(ニットウ社製)を貼り付け、指圧でしごいて密着させ、その後、一気に剥がしたところ、艶消層は剥離することなく、接着性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の機能性シートは、日用雑貨;住宅等の建物内の廊下、天井、床、台所、浴室等の壁面;各種家具;各種電気製品等に用いられる、化粧シート、粘着シート、ラミネートフィルム、マスキングフィルム、印刷シート、保護フィルム、壁紙等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】機能性シートの一例を示す概略断面図である。
【図2】機能性シートの他の例を示す概略断面図である。
【図3】艶消層を有する積層型の機能性シートの一例を示す概略断面図である。
【図4】艶消層を有する積層型の機能性シートの他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1及び1’;機能性シート
11;薄肉体
12、12a及び12b;コロナ処理層
13;艶消層
2及び2’;積層型の機能性シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体と、該薄肉体の少なくとも一方の面に形成されたコロナ処理層とを備える機能性シートであって、該コロナ処理層の表面におけるぬれ指数(JIS K6768に準拠)が40mN/m以上であることを特徴とする機能性シート。
【請求項2】
上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物が、体積平均粒子径が60〜500nmのアクリル系ゴム質重合体の存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなり、且つ、グラフト率が20〜170%のアクリル系ゴム強化樹脂を含有する請求項1に記載の機能性シート。
【請求項3】
上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物が、グラフト化アクリル系ゴム質重合体を含み、且つ、芳香族ビニル化合物からなる単位及びシアン化ビニル化合物からなる単位を含むアクリル系ゴム強化樹脂を含有する組成物であり、上記アクリル系ゴム強化樹脂は、グラフト率が20〜170%であり、上記グラフト化アクリル系ゴム質重合体の数平均粒子径が60〜200nmであり、アセトニトリル可溶分の極限粘度が0.4〜0.8dl/gであり、該アセトニトリル可溶分の結合シアン化ビニル化合物量が3〜40質量%であり、且つ、液体クロマトグラフィーにより測定された上記結合シアン化ビニル化合物量の分布の標準偏差が5以下である請求項1に記載の機能性シート。
【請求項4】
上記薄肉体の厚さが、30〜500μmである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の機能性シート。
【請求項5】
上記薄肉体の熱収縮率(JIS K7133に準拠、温度80℃で30分間状態粗調節)が、縦方向で1%以下であり、且つ、横方向で1%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の機能性シート。
【請求項6】
上記コロナ処理層の表面に、更に、艶消層を備える請求項1乃至5のいずれか1項に記載の機能性シート。
【請求項7】
上記艶消層が、高分子及び無機化合物から選ばれた少なくとも1種からなる微粒子を含む請求項6に記載の機能性シート。
【請求項8】
上記艶消層の厚さが、0.5〜10μmである請求項6又は7に記載の機能性シート。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の機能性シートの製造方法であって、アクリル系ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体の少なくとも一方の面にコロナ処理を行い、コロナ処理層を形成するコロナ処理工程と、該コロナ処理層の表面に、水系であり、且つ、高分子及び無機化合物から選ばれた少なくとも1種からなる微粒子を含む艶消剤組成物を塗布する塗布工程と、を備えることを特徴とする機能性シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−211219(P2007−211219A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35678(P2006−35678)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】