説明

機能性建築板

【課題】最終工程でも塗装工程の意匠に影響せず、透明であり、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドの両方のアルデヒドを吸着分解する機能をもった塗装を有し、防汚機能も兼ね備えた建築板を提供する。
【解決手段】塗装が施された基材の塗膜表面に、コロイダルシリカ主成分にアルデヒド捕捉剤としてカルボジヒドラジドを添加した処理液を塗布する。即ち本発明でアルデヒド捕捉剤を塗膜表面に固定するために塗料を使用しないので、塗料の樹脂によるアルデヒド捕捉剤の阻害もなく透明な被覆層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを吸着し分解する機能を有する建築板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物等の内装に使用される建築板は、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを吸着し分解する機能を保有することが望ましい。建物の内装材や家具の材料である建築板には、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドからなるアルデヒド類を含む接着剤やバインダーが使用されており、これが原因で室内にアルデヒド類が放出される結果、シックハウス症候群という大きな問題が引き起こされている。国土交通省は、シックハウス対策の強化を目的として平成15年7月1日に建築基準法の改正を施行し、上記するアルデヒド類のうち、ホルムアルデヒドの基準値は設定したものの、目下のところアセトアルデヒドの基準値については設定していない。
【0003】
従来より、内装建築板にシックハウスガスのホルムアルデヒドを吸着し分解性を付与ために、建築板のトップ層にホルムアルデヒドを分解する機能を有するエマルジョン塗料とコロイダルシリカ、多孔質無機焼成物、粉末状炭を含む水性無機質塗料を塗布した構成(例えば特許文献1参照)、または、主材である石膏にホルムアルデヒド捕捉性物質を配合する石膏系建材が使用されている(例えば特許文献2参照)。または、ホルムアルデヒドを物理吸着する多孔質材料に化学吸着する化合物を含有する塗料を塗布したホルムアルデヒド吸着内装材(例えば特許文献3参照)等が提供されている。
または、軟質繊維板にゼオライトとヒドラジド誘導体を混合した分散溶液を塗布してアンモニアやホルムアルデヒドを吸着捕捉して分解する機能性繊維板も使用されている(例えば特許文献4参照)。一方、防汚機能も注目されており防汚機能としては、シリカ微粒子が定着被覆された表面が、超親水性を有し、水が接触すると該シリカ微粒子が水を吸収し、表面に付着している汚れが浮上って水と共に流れ落ちるセルフクリーニング機能がある(例えば特許文献5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−331682
【特許文献2】特開2001−323637
【特許文献3】特開2000−356022
【特許文献4】特開2002−212900
【特許文献5】特開2005−095815
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
、 上記従来の技術ではアルデヒド捕捉剤を塗料に混合して基材に塗布するから、アルデヒド捕捉剤が塗料の主成分である樹脂に阻害され、塗膜表面に存在するアルデヒド捕捉剤の成分が少なくなり、アルデヒド捕捉剤の有するアルデヒド捕捉効果が充分に発揮されないと云う問題点がある。 また、アルデヒド捕捉剤を基材に混合した場合には、該基材表面の部分のみがアルデヒドガスを捕捉するので大量に混入させなければ効果がないと云う問題点もある。更に、多孔質材料にアルデヒドを化学吸着する化合物を塗布すると塗装乾燥工程で、100°〜150℃程度の加熱乾燥が行なわれるが、上記加熱乾燥によってアルデヒド捕捉剤が凝集や変性劣化してしまうおそれがある。また、アルデヒド類を捕捉すると云うヒドラジン誘導体でも、ホルムアルデヒドには捕捉分解するがアセトアルデヒドにはまったく効果がないものもある。
【0006】
また、一般的に、建築板は、何層にも塗装工程を行って意匠製品とするが、最終工程のトップ層にこうした塗装をするとその塗料の色や塗膜状態に左右され意匠が大きく限定されてしまうという問題点もある。そのため、最終工程でも塗装工程の意匠に影響せず、透明であり、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドの両方のアルデヒドを吸着分解する機能をもった塗装が望まれていた。また、防汚機能も兼ね備えた建築板が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、表面に塗膜が形成された建築板であって、更に該塗膜の表面にアルデヒド捕捉剤を含み、コロイダルシリカを主成分とする被覆層が形成されていることを特徴とする建築板である。前記アルデヒド捕捉剤は、カルボジヒドラジドであることを特徴とし、前記アルデヒド捕捉剤は、ホルムアルデヒド及び又はアセトアルデヒドを捕捉することを特徴とする。前記建築板は、木質セメント板であることを特徴としている。また、水とアルコールとからなる混合溶媒に界面活性剤を添加し、コロイダルシリカの分散液を第1の処理液として調製する第1の工程と前記第1の工程によって得られた第1の処理液に、更に、カルボジヒドラジド液を添加することにより第2の処理液として調製する第2の工程と前記第2の工程によって得られた第2の処理液を予め塗装が施された建築板表面に供給する第3の工程と前記第3の工程によって得られた建築板を乾燥することにより第2の処理液による表面層を形成する第4の工程とからなることを特徴とする建築板の製造方法を開示している。
【発明の効果】
【0008】
〔作用〕 本発明の処理液は、コロイダルシリカ水性分散液中にアルデヒド捕捉剤を添加したものであり、樹脂を主成分とする塗料等は使用していないから、該アルデヒド捕捉剤は樹脂によって阻害されることなくコロイダルシリカ表面の微小凹凸に定着し、該コロイダルシリカは基材表面の塗膜に水素結合を介して固定される。
【0009】
〔効果〕 したがって本発明では基材の塗膜表面にコロイダルシリカを媒体としてアルデヒド捕捉剤が高濃度で存在するから、アルデヒド捕捉剤の捕捉効果が効率良く発揮され、少量のアルデヒド捕捉剤の使用でも大きな捕捉効果を有する機能性建築板が得られる。また該アルデヒド捕捉剤はコロイダルシリカを媒体として塗装表面に強固に固定されるから、耐久性のあるアルデヒド捕捉効果が得られる。また、防汚処理剤としては、シリカ微粒子が定着被覆された表面には、超親水性が付与され、水が接触すると該シリカ微粒子が水を吸収し、表面に付着している汚れが浮上って水と共に流れ落ちるセルフクリーニング機能がある。更に、非常に超微細な微粒子のため、表面は透明のまま意匠性を阻害しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を以下に詳細に説明する。〔基材〕 本発明の対象とする建築板の基材は、木片、木質パルプ、木質繊維やパルプ等の木質補強材を添加したセメント板(木質セメント板)、セメント押出成形板、パルプセメント板、石膏板、ケイ酸カルシウム板、炭酸マグネシウム板、セメント板等である。こうした無機質系の基材は、表面に凹凸があり、巣穴やピンホールが一部あり多孔質な面と平面質な面となっている。通常、基材の状態の透水量は、1000〜5000g/m2程度となる。
【0011】
〔塗装〕 上記基材表面には塗装が施されるが、通常塗装は下塗り塗装、中塗り塗装、上塗り塗装、クリアー塗装の多重塗装が適用される。上記下塗り塗装、中塗り塗装、上塗り塗装、クリアー塗装共にアクリル樹脂水性エマルジョン塗料、シリコン−アクリル樹脂水性エマルジョン塗料等の水性エマルジョン塗料を使用することが望ましいが、例えばアクリル樹脂クリアー溶剤型塗料等の溶剤型塗料も使用されてもよく、また水性エマルジョン塗料と溶剤型塗料とを併用してもよい。こうした塗装を多層にすることにより、基材の巣穴やピンホールの多孔質を防水し意匠が高められる。塗装後の透水量は、塗布量にも影響されるが、0〜200g/m2程度になる。
【0012】
〔コロイダルシリカ水性分散液〕 本発明の処理液に使用するコロイダルシリカとは粒径5〜10nmの一次微粒子が10個程度会合して二次微粒子を形成したものであり、表面に微小凹凸が形成されており、酸化ケイ素の他酸化アルミニウム等他の成分を若干含有してもよい。また、コロイダルシリカはOHラジカルの親水性を示し、この二次微粒子の隙間にアルデヒド捕捉剤が吸着し定着すると考えられる。その他バインダーとしてケイ素化合物やケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどのケイ酸塩を若干含有してもよい。
【0013】
〔アルデヒド捕捉剤〕アルデヒド捕捉剤としてはカルボジヒドラジドを用い、これを水に溶解させて水溶液として使用する。なお、ここでいうアルデヒドとは、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの双方を包含するものである。カルボジヒドラジドは、NH2NH−CO−NHNH2で表される化合物であり、両末端にアミノ基(−NH)を有している。
【0014】
捕捉剤の成分として、カルボジヒドラジド単独でもホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの捕捉性能(消臭性能)は充分であるが、有機酸ジヒドラジドを加えることによりその捕捉性能はさらに向上する。有機酸ジヒドラジドとしては、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジドなどを挙げることができる。
【0015】
これらのうち、水に対する溶解性の高いものは限られており、アジピン酸ジヒドラジドを消臭剤成分として用いた場合には、DNPH化してHPLC分析
(DNPH化とは、2,4-Dinitrophenylhydrazineをコーティングした球状シリカゲルが充填されたアルデヒド類、ケトン類の捕集、誘導体化用アクティブサンプラーです。充填剤は120μm球状シリカゲルを使用しているため破砕状シリカゲルと比較して通気性に優れており、高い捕集効率と低ブランクのカートリッジです。HPLCとは高速液体クロマトグラフィーのことである)
こうした分析の結果、ホルムアルデヒドガスに対する消臭効果は非常に優れているもののアセトアルデヒドガスに対する消臭効果は全く無く、むしろその放散量が増える傾向にある。しかし、カルボジヒドラジドとアジピン酸ジヒドラジドとを併用すると相乗効果がみられ、ホルムアルデヒドガスおよびアセトアルデヒドガスの双方に対する消臭効果が向上する。このとき、アジピン酸ジヒドラジドの含有量が10質量%以上の場合には、基材によってはアセトアルデヒドガスの放散量が増える傾向にあるため、その含有量は10重量%未満が望ましい。
【0016】
また、コハク酸ジヒドラジドを消臭剤成分として用いた場合には、DNPH化してHPLC分析した場合、アジピン酸ジヒドラジドとは異なり、アセトアルデヒドガスに対する消臭効果は非常に優れているもののホルムアルデヒドガスに対する消臭効果は全く無く、むしろその放散量が増える傾向にある。しかし、カルボジヒドラジドとコハク酸ジヒドラジドとを併用すると相乗効果がみられ、ホルムアルデヒドガスおよびアセトアルデヒドガスの双方に対する消臭効果が向上する。このとき、コハク酸ジヒドラジドの含有量が10重量%以上の場合には、基材によってはアセトアルデヒドガスの放散量が増える傾向にあるため、その含有量は10重量%未満が望ましい。そのほかの有機酸ジヒドラジド等を用いた場合、水に対する溶解性は低く、また、アルデヒドガスに対する消臭効果は弱い。
【0017】
以上の理由より、カルボジヒドラジドと併用する有機酸ジヒドラジドとしては、アジピン酸ジヒドラジドまたはコハク酸ジヒドラジドを使用することが好ましく、さらには、その含有量を10質量%未満に調整するのが望ましい。
【0018】
また、カルボジヒドラジド、有機酸ジヒドラジドにグアニジン塩をさらに加えて捕捉剤(消臭剤)を生成してもよい。グアニジン塩としては、塩酸グアニジン、塩酸アミノグアニジン、重炭酸アミノグアニジン、スルファミン酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、硝酸グアニジン等を挙げることができる。
【0019】
これらのうち、スルファミン酸グアニジンを単独で使用した場合、ホルムアルデヒドガスおよびアセトアルデヒドガスに対する消臭効果は弱いものの、カルボジヒドラジドおよびアジピン酸ジヒドラジドまたはコハク酸ジヒドラジドと併用することにより、その効果は大きく向上する。また、スルファミン酸グアニジンの含有量が10質量%以上の場合には基材にべたつきが生じたりするため、その含有量は10質量%未満が望ましい。
【0020】
そのほかのグアニジン塩を併用した場合、スルファミン酸グアニジンに比べてホルムアルデヒドガスおよびアセトアルデヒドガスに対する消臭効果が極端に低下したり、基材が変色したり、べたつきが生じたりする。そこで、アルデヒドに対する消臭性能、特にアセトアルデヒドに対する消臭性能を勘案した場合、スルファミン酸グアニジンを使用するのが好ましい。
【0021】
〔アルコール〕 本発明においては、上記コロイダルシリカの分散媒体として水にアルコールを添加することが望ましい。本発明に使用するアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性のものが望ましい。該アルコールは本発明の処理液の表面張力を低下せしめ、更に該アルデヒド捕捉液と下側の塗膜との親和性を高めて該処理液の濡れ性を向上せしめる。
【0022】
〔界面活性剤〕 本発明のアルデヒド捕捉液には分散剤として界面活性剤を添加することが望ましい。上記界面活性剤としては、通常のアニオン性、ノニオン性、カチオン性の界面活性剤のいずれも用いられ、例えばアニオン性界面活性剤としては高級アルコールサルフェート(Na塩またはアミン塩)、アルキルアリルスルフォン酸塩(Na塩またはアミン塩)、アルキルナフタレンスルフォン酸塩(Na塩またはアミン塩)、アルキルナフタレンスルフォン酸塩縮合物、アルキルフォスフェート、ジアルキルスルフォサクシネート、ロジン石鹸、脂肪酸塩Na塩またはアミン塩)等があり、ノニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキロールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアマイド、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等があり、カチオン性界面活性剤としてはオクタデシルアミンアセテート、イミダゾリン誘導体アセテート、ポリアルキレンポリアミン誘導体またはその塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニド等が例示される。また界面活性剤は二種以上混合使用されてもよい。また上記例示は本発明を限定するものではない。 該界面活性剤はアルコールと共に本発明の処理液の表面張力を低下せしめ、更にコロイダルシリカを処理液中に良好に分散せしめ、そして下の塗膜との親和性も高める。
【0023】
本発明の処理液において、通常該コロイダルシリカは0.1〜6.0質量%、アルコールは2〜10質量%、界面活性剤は0.01〜0.5質量%配合され、残余は水とする。 上記アルコールが2質量%よりも少なく含有されている場合には該アルデヒド捕捉液の濡れ性が悪くなり、また10質量%を越えて含有されている場合には、溶媒の揮発性が大きくなり、塗装作業に悪影響がもたらされる。また上記界面活性剤が0.01質量%よりも少なく添加されている場合には界面活性剤による表面張力の低下効果やコロイダルシリカの分散効果が顕著でなくなり、また0.5質量%を越えて添加されている場合には形成されるアルデヒド捕捉膜の強度、耐水性、耐久性等に悪影響がもたらされる。
【0024】
〔処理液の塗布方法〕 上記基材表面に下塗り層、中塗り層、上塗り層、クリアー層の塗装を施した後、最終乾燥工程では塗膜は通常100〜150℃の温度で加熱乾燥される。最終のクリアー層の塗膜の加熱乾燥後は常温下に基材を放置し冷却する。処理液の塗布は該塗膜の温度が望ましくは80℃以下、更に望ましくは70℃以下に下がった状態で行なう。上記温度以下においては、処理液の熱変性のおそれがない。通常上記処理液の塗布はスプレー塗布が適用されるが、その他フローコーター塗布、ロールコーター塗布等周知の方法が適用されてよい。
【0025】
塗布量は特に限定されないが、通常処理液塗布後乾燥して得られる処理液層の厚みが30〜80nm程度になるような塗布量とする。
【0026】
上記処理液において、上記したようにコロイダルシリカは一次微粒子が複数個会合凝集した二次微粒子となっており、したがって粒子表面に微小凹凸が形成されているから、該アルデヒド捕捉剤はコロイダルシリカ表面の微小凹凸に捕捉され吸着される。そして該アルデヒド捕捉剤を捕捉吸収したコロイダルシリカは、水素結合によって基材の塗膜(クリヤ塗膜)表面に定着されると考えられる。
【0027】
以下に本発明を更に具体的に説明するための実施例をあげる。 実施例の前に、処理液を構成する2つの溶液A.Bを調製する。A、コロイダルシリカ水性分散液を調製した。 コロイダルシリカ(二次粒子径50〜100nm) 4 質量% エタノール 4 〃 界面活性剤* 0.25 〃 残余 水 91.75 〃* :ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルB、カルボジヒドラジド液を調製した。 カルボジヒドラジド 15 質量%残余 水 85 質量%上記のコロイダルシリカ水性分散液に、15%濃度のカルボジヒドラジド液を混合して処理液とした。実施例ではその割合濃度を調整した。
【0028】
(実施例1) パルプ混入スラグセメントパーライト板である無塗装基材のモエンサイディング12mmのシャトーウォール調(ニチハ製)にアクリル樹脂水性エマルジョン塗料によって下塗り塗装、中塗り塗装、上塗り塗装、およびアクリル樹脂溶液型塗料によってクリアー塗装を施し、100℃〜110℃の加熱炉で20分間加熱乾燥した。 上記加熱乾燥後該塗装基材を加熱炉から取出し室温に放置して冷却した。クリヤ塗膜表面温度が65℃にまで下がった時、上記処理液をスプレー塗装し、その後常温に放置してクリヤ塗膜の余熱によって該処理液塗膜を乾燥させ、厚み50nmのアルデヒド捕捉層を形成した。この時、この塗装品にコロイダルシリカ水性分散液とカルボジヒドラジド液を100:1の割合で混合して3.6g/尺2塗布した。
【0029】
(実施例2)上記のコロイダルシリカ水性分散液に、15%濃度のカルボジヒドラジド液を混合し、カルボジヒドラジド液を5質量%、100:5の割合でそれ以外は実施例1と同様とした。
【0030】
(実施例3)上記のコロイダルシリカ水性分散液に、15%濃度のカルボジヒドラジド液を混合し、カルボジヒドラジド液を10質量%、100:10の割合でそれ以外は実施例1と同様とした。
【0031】
(実施例4)上記のコロイダルシリカ水性分散液に、5%のカルボジヒドラジドとアジピン酸ジヒドラジド5質量%とスルファミン酸グアニジン5質量%と残余を水とした混合液を、カルボジヒドラジド液混合体として10質量%、100:10としそれ以外は実施例1と同様とした。
【0032】
(比較例1) 比較として、該塗装基材に上記処理液を塗布しないもの、通常の塗装したモエンサイディング12mmのシャトーウォール調の塗装建築板を比較例1とした。
【0033】
(比較例2)また、該塗装基材表面にコロイダルシリカ水性分散液を含まないカルボジヒドラジド液15%濃度のみを3.6g/尺2を直接塗布したものを比較例2とした。
【0034】
上記実施例1.2.3.と比較例1.2について、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの吸着試験と再放出試験を行い、得られた結果を表1と表2に示す。
【0035】
(試験方法)吸着試験方法 テドラーバック法として、(1)30Lのテドラーバックに規定濃度のガスを作成する。(ホルムアルデヒド:40ppm アセトアルデヒド:100ppm)(2)5Lのテドラーバックに表面以外の5面をアルミテープで覆った試料(5×15cm)を入れ密栓する。(3) 作成したガスを5Lのテドラーバックに注入し、室温にて放置する。(4) 一定時間経過後、ホルムアルデヒドガス濃度を、ガス検知管を用いて測定。
* ガス検知管…ホルムアルデヒド:株式会社ガステック製ホルムアルデヒド測定。
再放出確認方法(1)吸着効果確認試験終了後の試験片を取り出し、別のテトラーバッグに入れ密封する。(2)密封したテトラーバッグに空気を注入し、50℃恒温槽に放置する。(3)24時間経過後、ガス検知管にて濃度を測定した。ガス検知管は、吸着効果確認試験と同様とした。
【0036】
(表1)

【0037】
(表2)

【0038】
表1、2より、ホルムアルデヒドのppm濃度は6時間後には急激に捕捉され、24時間ではほぼ100%捕捉されている。アセトアルデヒドのppm濃度は、やや添加量の少ないものは効果が弱いが10%のCDHは100%捕捉されている。また、比較例1の塗装した塗装建築板も捕捉されているが、これは、ポーラス表面のセメント基材の一部にある巣穴やピンホールの物理的な吸着であり、そのため、50℃加熱では、再放出が確認できる。また、カルボジヒドラジド液の原液を塗布した比較例2は、乾燥と同時に表面にカルボジヒドラジド液の凝集が発生して外観不良となった。これは、塗膜表面で、基材に吸着されないため残存したカルボジヒドラジド液のものである。このことにより、コロイダルシリカ分散液とカルボジヒドラジド液の濃度が、わずかな量を添加した処理液は、外観不良の凝集もせず、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドの捕捉効果があることが実証確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明では、建築板に耐久性のあるかつ効率の良いアルデヒド捕捉効果を与えることが出来、更に防汚性を付与することも出来るため産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に塗膜が形成された建築板であって、更に該塗膜の表面にアルデヒド捕捉剤を含み、コロイダルシリカを主成分とする被覆層が形成されていることを特徴とする建築板。
【請求項2】
前記アルデヒド捕捉剤は、カルボジヒドラジドであることを特徴とする請求項1記載の建築板。
【請求項3】
前記アルデヒド捕捉剤は、ホルムアルデヒド及び又はアセトアルデヒドを捕捉することを特徴とする請求項2記載の建築板。
【請求項4】
前記建築板は、木質セメント板であることを特徴とする請求項1〜請求項3記載の建築板。
【請求項5】
水とアルコールとからなる混合溶媒に界面活性剤を添加し、コロイダルシリカの分散液を第1の処理液として調製する第1の工程と前記第1の工程によって得られた第1の処理液に、更に、カルボジヒドラジド液を添加することにより第2の処理液として調製する第2の工程と前記第2の工程によって得られた第2の処理液を予め塗装が施された建築板表面に供給する第3の工程と前記第3の工程によって得られた建築板を乾燥することにより第2の処理液による表面層を形成する第4の工程とからなることを特徴とする建築板の製造方法。

【公開番号】特開2008−190179(P2008−190179A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24495(P2007−24495)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】