説明

機能性高分子の単離方法

本発明は、サンプル、例えば、生物学的混合物中の機能性高分子、例えば、ペプチド、リン酸化ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドもしくはリン脂質を、微量溶出プレートに充填されたアルミナ吸着剤での固相抽出を用いて、単離、精製、分析および/または検出する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年9月6日出願の米国仮特許出願第60/967,667号の優先権を主張し、この仮特許出願の全内容は参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
固相抽出(SPE)は、定量的化学分析、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくはガスクロマトグラフィ−(GC)と共にしばしば用いられるクロマトグラフィー技術である。SPEの目標は不要の混入物を含有する複合サンプルマトリックスから標的分析物を単離することである。単離された標的分析物は定量的分析に適合する溶液中に回収される。標的化合物を含有するこの最終溶液は分析に直接用いることができ、または、標的化合物をさらに濃縮する目的で、蒸発させてより少ない体積の他の溶液に戻すことができ、この標的化合物を検出および測定により馴染みやすくする。
【0003】
固相抽出は液体から分析物を抽出してこれらの分析の準備を整えるのに用いられている。タンパク質および核酸物質は、関心分子が吸着される固相を収容する充填カラムおよびカートリッジにタンパク質および核酸物質を通すことにより、生物学的サンプルから頻繁に単離される。カラムにサンプルを通過させてサンプル分子が吸着した後、溶媒を用いて関心分子を脱着させ、濃縮溶液を形成する。
【0004】
ポリペプチドおよび多糖のような非ポリヌクレオチド生体分子を精製および濃縮できることが特に重要である。すなわち、これらの分子が核酸で定型的に用いられる増幅技術のタイプに馴染まないためである。多くのタンパク質およびペプチドは極めて低い濃度で、並びに大過剰の混入タンパク質および他の細胞構成物質の存在下で発現するのみである。このため、分析技術、例えば、MS、SPR、NMR、X線結晶学等の実施に先立ち、関心タンパク質サンプルを精製および濃縮することがしばしば必要である。これらの技術は、典型的には、サンプル小体積のみを必要とするが、これは十分に高濃度で存在しなければならず、邪魔になる混入物は除去しなければならない。従って、最小限のサンプル損失で、小サンプル体積の操作および処理を可能にするサンプル調製方法に対する必要性が存在する。
【0005】
サンプル調製技術の他の望ましい属性はタンパク複合体を精製および操作する能力である。多くの用途においては、精製されたタンパク質がこの生来の機能を保持することも重要である。
【0006】
SPE用に設計された装置は、典型的には、使用者が標的成分を優先的に保持することを可能にするクロマトグラフィー吸着剤を含む。ひとたびサンプルを吸着剤に載せたら、次々と適合した洗浄および溶出液をこの装置に通し、混入物質を標的サンプル成分から分離した後、標的サンプル成分をさらなる分析のために収集する。
【0007】
SPE装置は、典型的には、サンプル保持リザーバ、吸着剤を収容するための手段並びに流体導管もしくは装置を退出する流体を適切な収集容器に導くための吐出口を含む。SPE装置は、サンプル少量を調製する上で好都合および費用効率であるシングルウェル形式であっても、サンプル多数を平行して調製するのに非常に適するマルチウェル形式であってもよい。
【0008】
マルチウェル形式は、通例、ロボット式流体分配システムと共に用いられる。典型的なマルチウェル形式には、48−、96−および384−ウェル標準プレート形式が含まれる。流体は、通常、特別に設計された真空マニホールドで装置を横断して真空を引くことにより、または遠心もしくは重力を用いることにより、SPE装置を介して収集容器内に押し込まれる。遠心力は意図する目的のために特別に設計された遠心機にSPE装置を適切な収集トレイと共に入れることによって生成する。
【0009】
典型的なSPE法は、各々が特定の目的を有する、工程の系列を含む。「コンディショニング」工程と呼ばれる第1工程では、サンプルを受容するための装置を準備する。この初期すすぎには、一般には、pHバッファもしくは他の調節剤をしばしば含有する、水性の高い溶媒のすすぎが続き、これにより標的サンプル成分を優先的に保持するクロマトグラフィー吸着剤が用意される。ひとたびコンディショニングがなされると、SPE装置はサンプルを受容する準備が整う。
【0010】
「ローディング」工程と呼ばれる第2工程はサンプルを装置に通すことを含む。ローディングの最中、サンプル成分は多くの妨害物と共にクロマトグラフィー吸着剤に吸着する。ひとたびローディングが完了したら、標的化合物を吸着剤上に保持されたままにしながら、「洗浄」工程を用いて妨害混入物をすすぎ落とす。この洗浄工程には「溶出」工程が続き、この工程は、典型的には、有機溶媒、例えば、メタノールもしくはアセトニトリルを高いパーセンテージで含有する流体を用いる。溶出溶媒は、標的化合物をクロマトグラフィー吸着剤から適切なサンプル容器に効率的に放出するように選択される。
【0011】
多くの場合、SPEサンプルは蒸発乾固(「ドライダウン(drydown)」した後、HPLCシステムへの注入に先立ち、より水性の混合物中で戻す(「戻し」)ことができる。SPE装置では、広範囲にわたるクロマトグラフィー極性標的化合物を保持する高い能力を有し、サンプル混入物を洗浄して廃棄しながら標的化合物保持の維持を可能とし、次いで可能な限り少ない溶出体積で標的化合物を溶出する能力を提供し、それによりSPEの最中に得られる標的化合物濃度の程度を最大化することが有利である。
【0012】
伝統的なSPE装置の設計は吸着剤材料用に以下を含む:吸着剤粒子の充填床、メンブラン内の埋め込み吸着剤粒子およびクロマトグラフィー粒子を含有するガラス繊維系抽出ディスク。他の一般的な例には、オクタデシル(C18)またはオクチル(C)官能基で表面誘導体化されている多孔性シリカが含まれる。固相抽出において用いるための充填材料には、無機基質を用いるもの、例えば、シリカゲルの表面がオクタデシル基での化学修飾を受けて充填材料の表面が疎水性になっている化学結合型シリカゲル、または有機基質を用いるもの、例えば、スチレン−ジビニルベンゼンに代表される合成ポリマーも典型的に含まれる。有機ポリマーをベースとする多孔性粒子も広く用いられる。
【0013】
機能性化合物、特には、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質の単離は独自の挑戦を提示する。伝統的なSPE装置、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)法および二酸化チタンクロマトグラフィーがこのような化合物の単離または濃縮に用いられている。より最近では、金属酸化物/水酸化物親和性クロマトグラフィー(MOAC)を用いる複合混合物からのリン酸化タンパク質およびペプチドの濃縮が記述されている。Proteomics 5:4389−4397(2005)。しかしながら、これらの方法は、標的化合物と同時に生じる望ましくない化合物の共吸着の扱いに失敗する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Proteomics 5:4389−4397(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、複合混合物、特には、生体液/サンプルより得られるものからの機能性化合物、即ち、ペプチド、リン酸化ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、リンタンパク質、オリゴヌクレオチドもしくはリン脂質の選択的単離、精製、検出並びに/または同定を容易にする方法に対する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様において、本発明は、機能性高分子をサンプルから選択的に単離するための方法であって、
a)機能性高分子を含むサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置に、機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;および
b)吸着した機能性高分子をアルミナ吸着剤から溶出し、それにより機能性高分子をサンプルから選択的に単離する工程、
を含む方法を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、機能性高分子複数をサンプルから選択的に単離するための方法であって、
a)機能性高分子複数を含むサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む第1固相抽出(SPE)装置に、機能性高分子複数がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;および
b)吸着した機能性高分子をアルミナ吸着剤から溶出する工程;
c)少なくとも1つの画分を収集する工程;
d)少なくとも1つの画分を、充填アルミナ吸着剤を含む第2固相抽出(SPE)装置に、少なくとも2つの機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;および
c)少なくとも2つの吸着した機能性高分子を第2固相抽出(SPE)装置のアルミナ吸着剤から溶出し、それにより機能性高分子複数をサンプルから選択的に単離する工程、
を含む方法を提供する。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、サンプルに含まれる機能性高分子を精製するための方法であって、
a)機能性高分子を含むサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置に、機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードし;および
b)吸着した機能性高分子をアルミナ吸着剤から溶出し、それにより機能性高分子をサンプルから選択的に単離し、それにより機能性高分子を精製する、
ことを含む方法を提供する。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、サンプル中の機能性高分子を検出するための方法であって、
a)機能性高分子を含むサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置に、機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;および
b)吸着した機能性高分子をアルミナ吸着剤から溶出し、それにより機能性高分子をサンプルから選択的に単離し、それにより機能性高分子を精製する工程;および
c)機能性高分子を検出する工程、
を含む方法を提供する。
【0020】
本発明の別の態様は、生物学的混合物を含むサンプルからリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質を選択的に単離するための方法であって、
a)酸および有機溶媒を含む溶液中にサンプルを溶解する工程;
b)溶解したサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む固相溶出プレートまたはカラムに、リン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;
c)塩基性移動相を用いてリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質をアルミナから溶出する工程;および
d)単離されたリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質を収集し、それによりリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質を選択的に単離する工程、
を含む方法を提供する。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、充填アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置を含む固相抽出(SPE)装置および本発明の方法に従って用いるための取扱説明書を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】A)4種類の合成リン酸化ペプチド(T18_1P、T19_1P、T43_1PおよびT43_2P;トリプシン酵母エノラーゼペプチドの修飾体)および非修飾酵母エノラーゼトリプシンペプチドの1:10モル比での混合物を含む対照サンプル;B)IMAC法を用いて保持される4種類のリン酸化ペプチド;並びにC)本発明によるアルミナB吸着剤での固相抽出を用いて保持されるリン酸化ペプチドのMALDI−TOF MSスペクトルを示す。
【図2】A)TiO SPEを用いて、酵母エノラーゼトリプシンペプチドから誘導される4種類のリン酸化ペプチドおよび非修飾エノラーゼトリプシンペプチドの1:50モル比での混合物から抽出されるペプチド;並びにB)本発明によるアルミナB吸着剤で、酵母エノラーゼトリプシンペプチドから誘導される4種類のリン酸化ペプチドおよび非修飾エノラーゼトリプシンペプチドの1:50モル比での混合物から単離されるリン酸化ペプチドのLC/MS分析の比較を示す。
【図3】TiO SPEを用い、ローディング工程において置換剤(displacement agent)40mgを混合物に添加して、酵母エノラーゼトリプシンペプチドから誘導される4種類のリン酸化ペプチドおよび非修飾エノラーゼトリプシンペプチドの1:50モル比での混合物から抽出されるペプチド;並びにB)本発明によるアルミナB吸着剤での固相抽出を用い、ローディング工程において置換剤8mgを混合物に添加して、酵母エノラーゼトリプシンペプチドから誘導される4種類のリン酸化ペプチドおよび非修飾エノラーゼトリプシンペプチドの1:50モル比での混合物から単離されるリン酸化ペプチドのLC/MS分析の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本発明のさらなる説明に先立ち、本発明をより容易に理解できるように、便宜上まず特定の用語を定義してここに集める。
【0024】
「高分子」という用語にはポリマー、例えば、オリゴマー、例えば、DNA、RNA、タンパク質、脂質および多糖が含まれるが、(典型的には、500Da以下の分子量を有する)小有機分子は除外される。例示的な高分子には、ペプチド、リン酸化ペプチド、ポリペプチド、糖ペプチド、タンパク質、リンタンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、リン脂質、合成または天然ポリマーおよびこれらの混合物が含まれる。
【0025】
「機能性高分子」という用語には官能基を有する高分子が含まれる。機能性高分子は、さまざまな化学、生化学および臨床的なシナリオで、しばしば「関心分析物」と呼ばれる。
【0026】
「官能基」という用語は、化合物の化学的、形態学的、生理学的、生化学的または環境上の挙動の原因である、1以上の原子の特定の構造を指す。高分子の1以上の原子、例えば、炭素および/または水素原子を官能基で置換して本発明の機能性高分子を得ることができる。従って、本発明による機能性高分子は、例えばアミン、カルボン酸、ホスホネート、スルホン酸、シアリレート等を含む、官能基を有する。例示的な本発明による機能性高分子には、高酸性側鎖またはリン酸、スルホン酸もしくはシアリレート基を含む化合物が含まれる。
【0027】
本発明による機能性高分子は、サンプル、例えば、生物学的サンプル中に見出される他の化合物とは異なる官能基を有する。例えば、リン酸化ペプチドおよび天然ペプチドを含有するサンプルにおいて、機能性高分子はリン酸化ペプチドである。機能性高分子のさらなる例には、これらに限定されるものではないが、リン酸化ペプチド、シアル化糖ペプチド、スルホン化ペプチド、スルホン化ペプチド、スルホン化糖ペプチド、リンオリゴヌクレオチドおよびリン脂質が含まれる。
【0028】
「高酸性側鎖」という用語は、アスパラギン酸の側鎖(pKa=3.9)よりも酸性である側鎖を含めようとするものである。
【0029】
「固相抽出(SPE)装置」という用語には伝統的な固相抽出装置、例えば、微量溶出プレート(micro elution plates)、クロマトグラフィーカラム、薄層プレート、サンプル浄化装置(sample cleanup devices)、注入カートリッジ、マイクロタイタープレート、好ましくは生物学的分析物を薄膜として堆積させることができる固相を有するクロマトグラフィー準備装置、例えば、「短」浄化カラム、メンブラン等が含まれる。本発明に従って用いるための例示的なSPE装置には溶出プレートおよびカラムが含まれる。
【0030】
「アルミナ」、「アルミナ吸着剤」および「アルミナ充填材料」という用語は同じ意味で用いられ、Alの実験式(empiral formula)を有するアルミナを含めようとするものである。製造されたアルミナは、これらのpHに基づき、3つの異なる形態で存在する:アルミナAは酸性(pH4.5)を意味し、アルミナBは塩基性(pH9.5)を意味し、アルミナNは中性(pH7)を意味する。クロマトグラフィー級アルミナは、例えば、MP Biomedicals、Sigma AldrichおよびCole−Parmerから商業的に入手可能である。
【0031】
「置換剤」という用語は、機能性高分子、例えば、リン酸化ペプチドよりもアルミナ吸着剤に対する結合親和性が弱い化合物、例えば、ペプチドを除去(もしくは置換)することが可能な薬剤を含めようとするものである。例示的な置換剤には、カルボン酸部分を含む1以上の試薬が含まれる。
【0032】
「サンプル」という用語には機能性高分子を単離しようとする化合物の混合物を含有するあらゆる媒体が含まれる。サンプルには、化合物の複合混合物を含む生物学的サンプル、例えば、血液、尿、脊髄液、滑液、痰、精液、唾液、涙並びにこれらの抽出物および/または希釈液/溶液、実験サンプル、例えば、反応混合物、調製用HPLC、クロマトグラフィー溶離液、画分等並びに環境サンプルであるサンプル、またはこれらのサンプルから誘導されるサンプルが含まれる。
【0033】
発明の概要
本発明は、アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置であって、アルミナ吸着剤がSPE装置に充填される装置を用いて、機能性高分子もしくは機能性高分子の混合物を選択的に単離/分離、精製、検出および/もしくは分析するための方法を提供する。本発明の方法は化合物の複合混合物を分離し、それにより分解(resolving)することが可能であり、これによりこのような混合物の成分化合物の迅速な単離/分離、精製、検出および/または分析を可能にする。
【0034】
標的物質、即ち、機能性高分子に関する限り、本発明の方法は極性化合物、非極性化合物、酸性化合物、中性化合物、塩基性化合物およびこれらの混合物に対して良好に作動する。従って、サンプル中に存在する機能性高分子は、例えば、(例えば、ペプチド合成または、タンパク質もしくはタンパク質の混合物の消化を含む、生物学的サンプルから生じる)ペプチド、リン酸化ペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくはリンタンパク質、(例えば、生物学的サンプルもしくは合成ポリヌクレオチドからの)核酸、オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、リン脂質、合成もしくは天然ポリマーまたはこれらの物質の混合物であり得る。本発明の方法およびシステムはペプチド、特には、リン酸化ペプチド、リン脂質およびオリゴヌクレオチドの分離において特に有利である。
【0035】
ある実施形態において、機能性高分子はペプチド、ポリペプチド、リン酸化ペプチド、糖ペプチド、タンパク質、リンタンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、リン脂質、合成もしくは天然ポリマーおよびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0036】
一実施形態において、機能性高分子はペプチド、リン酸化ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよびリン脂質から選択される。別の実施形態において、機能性高分子はリン酸化ペプチドである。別の実施形態において、機能性高分子はオリゴヌクレオチドである。さらに別の実施形態において、機能性高分子はリン脂質である。
【0037】
特定の実施形態において、機能性高分子はペプチド、ポリペプチドまたは高酸性側鎖を含むタンパク質である。他の実施形態においては、ペプチド、ポリペプチドまたはリン酸、スルホン酸もしくはシアリレート基を含むタンパク質である。
【0038】
さらに別の実施形態において、機能性高分子はリン酸化ペプチド、シアル化糖ペプチド、スルホン化ペプチドまたはスルホン化糖ペプチドである。
【0039】
具体的な実施形態において、ペプチドはリン酸化ペプチドである。特には、リン酸化ペプチドはT18_P、T19_1P、T43_1PおよびT43_2Pから選択される。
【0040】
別の具体的な実施形態において、機能性高分子はオリゴヌクレオチドである。さらに別の具体的な実施形態において、機能性高分子はリン脂質である。
【0041】
ある実施形態においては、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が酸性ペプチド、中性ペプチドまたは塩基性ペプチドを上回って選択的に単離される。特定の実施形態においては、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が酸性ペプチドを上回って選択的に単離される。
【0042】
本発明に方法によると、固相抽出(SPE)装置にアルミナ吸着剤が充填される。一実施形態において、アルミナ吸着剤粒子のサイズは約18から約32μmの範囲をとる。
【0043】
ある実施形態において、アルミナ吸着剤はHPLC級である。他の実施形態において、アルミナ吸着剤はアルミナA、アルミナNおよびアルミナBから選択される。一実施形態において、アルミナAは約4.5のpHを有する。別の実施形態において、アルミナNは約7のpHを有する。さらに別の実施形態において、アルミナBは約10のpHを有する。特定の実施形態において、アルミナ吸着剤はアルミナBである。
【0044】
様々な固相抽出(SPE)装置を本発明の方法に従って用いることができる。一実施形態において、SPE装置は微量溶出プレート、クロマトグラフィーカラム、薄層プレート、サンプル浄化装置、注入カートリッジ、マイクロタイタープレートおよびクロマトグラフィー準備装置からなる群より選択される。
【0045】
ある実施形態において、SPE装置は溶出プレート、例えば、微量溶出プレートである。特定の実施形態において、微量溶出プレートは96のウェルを含み、HPLC級アルミナ吸着剤が充填されている。さらに特定の実施形態において、アルミナはアルミナBである。さらに別のさらなる実施形態において、アルミナ吸着剤粒子のサイズは約18から約32μmの範囲をとる。
【0046】
別の実施形態において、SPE装置はカラム、例えば、マイクロボアカラム、キャピラリーカラムまたはナノカラムである。
【0047】
本発明の方法は様々なサンプルからの機能性高分子の選択的単離、精製および/もしくは検出に用いることができる。一実施形態において、サンプルは、血液、尿、脊髄液、滑液、痰、精液、唾液、涙、胃液並びにこれらの抽出物および/または希釈液/溶液からなる群より選択される生体液であるか、またはこれらの生体液から誘導される。ある実施形態において、サンプルは化合物の生物学的混合物を含む。
【0048】
別の実施形態において、サンプルは反応混合物、調製用HPLC、クロマトグラフィー溶離液もしくは画分または環境サンプルであるか、またはこれらから誘導される。
【0049】
ある実施形態においては、サンプル、例えば、生物学的混合物を酸溶液/有機溶液の混合物に溶解し、アルミナ吸着剤にロードする。一実施形態において、酸溶液は約0から約4の範囲のpHを有する。さらなる実施形態において、酸溶液は約1から約3の範囲のpHを有する。
【0050】
ある実施形態において、酸溶液はトリフルオロ酢酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、パラ−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、重酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸または酢酸の水溶液から選択される。
【0051】
別の実施形態において、有機溶液は有機溶媒または有機溶媒および非有機溶媒の混合液である。ある実施形態において、有機溶媒はアセトニトリル、アセトン、エタノール、メタノール、2−プロパノール、エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、クメン、塩化メチレン、トリクロロメタン、四塩化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン−2−オンおよびジメチルスルホキシドから選択される。一実施形態において、非有機溶媒は水である。
【0052】
一実施形態においては、機能性化合物、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質がアルミナ吸着剤に吸着する。
【0053】
別の実施形態においては、機能性化合物、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質を、アルミナ吸着剤から、塩基性移動相溶液を用いて溶出する。ある実施形態において、塩基性移動相溶液は水酸化アンモニウム溶液、トリエチルアミンまたはリン酸ジアンモニウムから選択される。
【0054】
さらに別の実施形態においては、サンプル、例えば、生物学的混合物を第1pHを有する溶液に溶解し、機能性化合物、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質をアルミナに吸着させることによってサンプルから分離し、機能性化合物、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドもしくはリン脂質を第2pHを有する移動相溶液でアルミナから溶出する。
【0055】
ある実施形態において、本発明の方法は、ローディング工程で置換剤を添加する工程をさらに含む。ある実施形態において、置換剤は置換カルボン酸誘導体である。
【0056】
他の実施形態において、本発明の方法は、機能性化合物、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質を検出する工程をさらに含む。さらなる実施形態において、検出工程は質量分析または液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)を含む。さらなる実施形態において、質量分析はMALDI−TOF分析法である。
【0057】
別の実施形態においては、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が酸性ペプチド、中性ペプチドまたは塩基性ペプチドを上回って選択的に単離される。さらなる実施形態においては、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が酸性ペプチドを上回って選択的に単離される。さらに別の実施形態において、選択的に単離されるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質はリン酸化ペプチド、シアル化糖ペプチド、スルホン化ペプチドまたはスルホン化糖ペプチドである。さらに別の実施形態においては、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質が選択的に単離される。
【0058】
固相抽出装置
本発明によると、固相抽出(SPE)装置は、器具または容器、例えば、溶出プレートのリザーバ、カラムまたはカートリッジに充填される、アルミナ吸着剤を含む。装置において用いられるアルミナ吸着剤粒子には、これらに付着する、標的または妨害物質のいずれかの、少なくとも1つの物質を有することが可能であるあらゆるアルミナ粒子物質が含まれる。当業者は、過度の負担または実験なしに、並びに本発明の範囲を逸脱することなしに、吸着剤粒子のサイズ、形状、表面積および細孔容積を決定することができる。
【0059】
本発明によるアルミナ吸着剤にはHPLC級アルミナ(Al)吸着剤が含まれる。本発明に従って用いるためのアルミナの例示的なタイプには以下が含まれる:アルミナA、アルミナNおよびアルミナB。アルミナAは約4.5の表面pHを有し、アルミナNは約7の表面pHを有し、アルミナBは約10の表面pHを有する。本発明の特定の態様においては、塩基性表面pH、例えば、アルミナBによってもたらされるものを強酸ローディング溶液(pH<1)との組み合わせで用いることで、リン酸、スルホン酸もしくはシアリレート基を有するペプチド、リン酸化ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質に対する有利な選択性が、このような官能性のない化合物からの非特異的結合における劇的な減少と共にもたらされる。
【0060】
複雑性の高い程度を有するサンプル、例えば、タンパク分解性酵素で消化された全細胞溶解物については、置換剤を用いて、機能性化合物、例えば、リン酸化ペプチドを指向するアルミナBの選択性をさらに強化することができる。適切な置換剤には、カルボン酸官能性、特には、置換カルボン酸を含有する1以上の試薬が含まれる。本発明の方法に従って用いるための例示的な置換剤はWaters Corporation(Milford、MA)から入手可能なEnhancer(商標)である。
【0061】
容器のリザーバに充填されるアルミナ吸着剤の量は粒子のかさ密度またはサンプルの濃度に依存して変化する。本発明の様々な実施形態において、充填される量は、各々の場合において約3mLの体積を基準にして、約30から約500mg、好ましくは約50から約300mgの範囲をとる。
【0062】
装置において用いられるアルミナ吸着剤粒子には、これらに付着する、標的または妨害物のいずれかの、少なくとも1つの物質を有することが可能であるあらゆる粒状物質がさらに含まれ得る。本発明において用いることができるさらなる吸着剤粒子の実例には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる:イオン交換吸着剤、逆相吸着剤および正常相吸着剤。より格別には、さらなる吸着剤粒子は無機材料、例えば、SiOまたは有機ポリマー材料、例えば、ポリ(ジビニルベンゼン)であり得る。幾つかの実施形態においては、さらなる吸着剤粒子を有機官能基、例えば、C−C22、好ましくはC−C18官能基で処理することができる。当業者は、過度の負担なしに、および本発明の範囲から逸脱することなしに、さらなる吸着剤粒子のサイズ、形状、表面積および細孔容積を決定し、特定の用途に適合するように他の修飾をなすことができる。
【0063】
器具もしくは容器の形状並びに構成材料は、この容器が溶離液として用いられる有機溶媒に不要であり、固相抽出の操作の最中に容器これ自体から不純物が溶出しない限り、特に限定されるものではない。カートリッジまたはカラムの構成材料の例には、無機材料、例えば、ステンレス鋼およびガラス並びに合成樹脂材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエーテルエーテルケトンが含まれる。
【0064】
本発明の一実施形態において、容器または器具は円筒形容器を含む。ある実施形態において、円筒形容器は、内部にアルミナ吸着剤の床が充填される、クロマトグラフィーカラムを含む。クロマトグラフィーカラムには、例えば、調製用カラム、半調製用カラム、マイクロボアカラム、キャピラリーカラム、ナノカラムが含まれる。
【0065】
ある実施形態においては、充填材料の流出を防止するため、容器の端部がフリットまたはフィルターを含む多孔性プレートによって止栓されている。ある実施形態においては、このプレートの細孔の直径は約5から約200μm、好ましくは約10から約50μmの範囲にある。多孔性プレートフィルターまたはフリットの構成材料は特に限定されるものではなく、これらの例にはステンレス鋼、ガラス、ポリエチレンおよびポリテトラフルオロエチレンが含まれる。このフリットまたはフィルターは孔を有するキャップによって固定される。
【0066】
ある実施形態において、容器、例えば、カートリッジこれ自体は、このカートリッジを介する流体流動を容易にするため、コネクタを有していない。しかしながら、容器は、有利には、エンドフィッティングに適応するように設計される。エンドフィッティングは、有利には、フリットまたはフィルターと共にジョイントコネクタを含む。従って、容器を流体リザーバに直接接続することができ、エンドフィッティングが流体リザーバから容器を介して流体が流動することを可能にする。
【0067】
本発明のアルミナ充填材料および関連装置はいかなる特定の用途にも限定されるものではない。しかしながら、上述のように、これらはサンプル中の分析物、例えば、リン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドおよび/またはリン脂質を単離および/または検出するための固相抽出法における使用に非常に適する。
【0068】
本発明のアルミナ充填材料および関連装置は、例えばカラム切替法における、サンプル前処理に用いることもできる。様々な方法がカラム切替によるサンプル前処理について公知である。
【0069】
これらの方法には、例えば、固体抽出用のカラムもしくはカートリッジを分析用カラムの前に固定する方法;一緒に存在する不純物もしくは混入物を固相抽出用のカラムもしくはカートリッジによって吸着し、必要な画分のみを分析用カラムに供給する方法;並びに前処理に用いられるカラムもしくはカートリッジを、分析を継続しながら、弁を切り替えることによって別の溶離液で洗浄する方法が含まれる。別の方法においては、必要な画分のみを固相抽出用のカラムまたはカートリッジに1回吸着させ、妨害成分が流出した後、弁を切り替えて吸着された成分を新たに別の溶離液と共に分析用カラムに導入する。
【0070】
本発明は、標的成分を効率的に保持および溶出させることによって固相抽出装置の性能を強化する、球状フィルターの間に収容される円錐形状充填床に対する備えもある。より大きい第1球状フィルターは同等のサイズの円筒形フィルターの面積の約2倍である表面積をもたらす。例えば、0.1”の直径の球の上半分の表面積は直径0.14”のディスクの頂部の表面積に等しい。より小さい第2フィルターは、不利な不完全性がない床長さを創出するのに必要なアルミナ吸着剤の量を最小化するのに役立つ。
【0071】
従って、一実施形態において、SPE装置はテーパ状内壁外形を有する円筒状容器内にアルミナ吸着剤粒子の充填床を含む。1つがより大きく、1つがより小さくてテーパ状外形をもたらす2つの多孔性フィルターが円筒状容器の各端部に存在する。リザーバは第1多孔性フィルター(例えば、より大きい多孔性フィルター)の上流に位置し、吐出口が第2多孔性フィルター(例えば、より小さい多孔性フィルター)の下流に位置する。吐出口は装置を退出する流体を適切な収集容器に導く。テーパ状内壁外形は、アルミナ吸着剤床および第1フィルター間の最小内部空隙容積を可能にしながら、外来サンプル微粒子を、これらがアルミナ吸着剤床およびより小さい下流フィルターに到達する前に捕獲するための、大濾過面積を有する上流第1多孔性フィルターを提供する役目を果たす。
【0072】
関連する実施形態において、本発明によるSPE装置は、ウェル形状容器、例えば、マルチウェルプレートにおけるウェル内にアルミナ吸着剤の充填床を含む。テーパ状円筒形容器の実施形態におけるものと同様に、球状多孔性フィルターを用いることができ、このフィルターは組み立ての最中の扱いが容易であり、特殊な挿入器具を必要としない。さらに、球状フィルターは、ウェルの穴に配置するときに自己整列し、球状フィルターとウェルの内表面との厳密な寸法的寛容性の必要性なしに穴壁を容易に密閉する。テーパ状ウェルデザインも同じSPE装置内での吸着剤質量一続きを許容し、それによりこの装置を異なる用途にあつらえる柔軟性をもたらす。これは、単に球状多孔性フィルターの直径を変更し、それにより、ウェルの穴を変化させることなしに、フィルターおよび充填吸着剤床をテーパ状装置内でより上またはより下のいずれかに位置付けることによって達成される。
【0073】
円筒状容器はテーパ状内壁外形を有し、このテーパ状内壁外形は、望ましくない流動チャンネルを形成する傾向が相当に少なく、それによりアルミナ吸着剤粒子と適切に接触することなしに床を迂回するサンプル成分を妨げる、アルミナ吸着剤床形状をもたらす。状態調節およびローディング工程の最中にアルミナ吸着剤床を通過する流体はテーパ状充填床を統合するように作用し、しっかりと形成された床構造を生じる。これらの構成は、サンプルと吸着剤床との効率的な接触、ローディングの最中にサンプルの突破のより少ない可能性並びに洗浄および溶出流体の効率的な使用を促進する。
【0074】
本発明の装置は、少ない吸着剤質量を用いて、大きい床高さ対頂部床直径比を提供する。この大きい床高さ対床直径比は、標的化合物の保持を強化し、ロードおよび洗浄工程の最中のこれらの化合物の突破を妨げるのに役に立つ。SPEにおいて、第1フィルターおよび吸着剤床の頂部は不溶性サンプル成分の除去においてデプスフィルターと同様に作用する。床の上部のより大きい直径およびより直径の大きい第1フィルターは、閉塞が生じる前に、下部床直径と同じ上部床直径を有する装置を介して引き出すことができるものよりも多いサンプル体積を装置が引き出すことを可能にする。より小さい第2フィルターは、装置のホールドアップ体積を減少させて必要とされる溶出体積を最小化しながら、吸着剤の所定の質量の床高さ対床直径比を増加させる。
【0075】
他の実施形態において、本発明は、チャンネルを含む固相抽出装置、例えば、キャピラリーおよびこれを溶液からの分析物の抽出に用いる方法を提供する。「チャンネル」という用語は、これらに限定されるものではないが、クロマトグラフィーおよびキャピラリー電気泳動のような用途に用いられる通常のキャピラリー管系の様々な形態を包含する。従って、この用語は、各々が導入口および排出口を有する1以上のキャピラリー流動通路を有する、同様の寸法の他の開放チャンネルをも包含する。例には、キャピラリー管、管束、これらを通して走る1以上の通路もしくはフローセルを有する固体ブロックまたはチップ、例えば、微量流体工学装置(micro fluidics device)、例えば、BiaCore,Inc.(Piscataway、N.J.)、Gyros,Inc.(Uppsala、スウェーデン)、Caliper Technologies,Inc.(Mountain View、Calif.)に関わるもの等が含まれる。通路は直線または非直線中心軸を有することができ、例えば、これらは螺旋状、屈曲状または直線状であり得る。通路の断面外形は、このチャンネルを抽出チャンネルとして機能させる限り、重要ではない。例えば、円形断面外形を有するキャピラリー管は良好に作動し、多くの販売者から購入することができる。しかしながら、他の外形、例えば、楕円、長方形もしくは他の多角形形状またはこのような形状の組み合わせを用いることもできる。
【0076】
ある実施形態において、抽出チャンネルは開放される;即ち、チャンネルには樹脂もしくは通常のクロマトグラフィーにおいて用いられるクロマトグラフィービーズの他の形態が充填されない。どちらかと言えば、チャンネルは開放され、抽出相はチャンネル表面に直接または間接的に結合するアルミナ抽出表面からなる。この抽出法は、溶媒、例えば、サンプル溶媒、脱着溶媒および、場合により、洗浄溶媒を、開放チャンネルもしくはチャンネルのある部分を通して流動させることを含む。ある実施形態において、開放チャンネルはキャピラリー、例えば、抽出キャピラリーである。
【0077】
チャンネルの外形がどのようなものであっても、この寸法は、抽出法の過程の最中に分析物が抽出表面と有効に相互作用可能することができ、流体がチャンネルを通して移動できる、例えば、チャンネルを通してポンプ送りできるようなものでなければならない。従って、大きな生物学的高分子では、チャンネル長さあたりのチャンネル表面積のチャンネル体積に対する比が、サンプルがチャンネル内に存在する時間の最中、分析物が表面まで有効に拡散するのを許容するのに十分な大きさであることが望ましい。一般には、チャンネル周囲(もしくは、円形チャンネルの場合には、円周)の内部断面積に対する比が大きくなるほど、サンプル溶液から抽出表面への分析物の輸送または拡散が大きくなる。円形チャンネルの場合、これは、単に、キャピラリーの所定の長さについて、およびサンプル体積、流速、滞留時間等の所定の条件の下で、キャピラリーの内径が小さいほど輸送がより有効であることを意味する。もちろん、キャピラリー抽出表面との相互作用が増加する見返りは、より短いチャンネル周囲でのより低い流動能力およびより小さい表面積によるより低い抽出能力である。加えて、周囲(例えば、円周)が非常に短い場合、サンプル中に存在し得るあらゆる粒状物質等、例えば、未処理細胞溶解物による詰塞に関連する問題が存在し得る。当業者は、適切な溶液流動および抽出能力を維持しながら抽出表面への分析物の有効な輸送を可能にする寸法を有する、適切なキャピラリーを容易に選択することができる。
【0078】
抽出表面積のキャピラリー体積に対する比を高める代わりとして、チャンネルを長くすることによってかさ高い分析物の抽出表面への輸送を改良することができ、チャンネルを通過する流速を増加させることができ、サンプルをチャンネルに前後に複数回通過させることができ、サンプルをチャンネル内で所定の期間温置することができ、および/またはサンプル溶液を、これがチャンネルを介して流動するとき、(例えばキャピラリーを巻くことによって、流動経路に捻れを導入することにより)、ビーズまたは他の特徴をキャピラリーに導入する等により、攪拌することができる。流動特性を調節するためにキャピラリーに導入される特徴、例えば、ビーズが、分析物に浸透可能であったり、開放チャンネルを通した溶媒の自由流動に反するものである、非掃引死体積(unswept dead volume)を導入したりしてはならないことに注意されたい。
【0079】
チャンネルの内壁は比較的平滑でも、粗面でも、テクスチャード加工されていても、パターン化されていてもよい。好ましくはこれらは比較的非多孔性である。内面は不規則構造、例えば、Paul Kenis,et al.,(2000)Acc.Chem.Res.,33:84およびPaul Kenis,et al.,(1999)Science,285:83によって記述されるものを有することができる。管は、これが液体通過のためのチャンネルを有するのであれば、モノリス構造を含むことができる。キャピラリーの内部構造がどのようなものであろうと、抽出法における脱着工程に先立つ、キャピラリーからの溶液の有効な除去を妨げる死体積または面積を最小化することが重要である。
【0080】
キャピラリーチャンネルは異なる材料の幾つかで構成することができる。これらの材料には、アルミナ、溶融シリカ、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、(ニッケル)金属キャピラリー管系および炭素ナノチューブが含まれる。ポリマー管は直管系またはマルチホール管系として入手可能である(Paradigm Optics,Inc.、Pullman、Wash.)。固相抽出を実施するのにキャピラリー管表面上に官能基が必要となることがある。ポリマーに化学基を結合する方法は以下の有機合成テキストに記載され、これらのテキストは参照によりこれらの全体がここに組み込まれる、Jerry March ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY,3rd ed.,Wiley Interscience:New York(1985);Herbert House,MODERN SYNTHETIC REACTIONS,2.sup.nd ed.,Benjamin/Cummings Publishing Co.,California(1972);およびJames Fritz,et al.,ION CHROMATOGRAPHY,3rd、ed.,Wiley−VCH,New York(2002);およびORGANIC SYNTHESIS ON SOLID PHASE,F.Dorwald Wiley VCH Verlag Gmbh,Weinheim 2002。ニッケル管系はValco Instrument,Inc.、Houston、Texから入手可能である。
【0081】
本発明の抽出チャンネルはこれらのチャンネルアスペクト比の観点で特徴付けることができる。「チャンネルアスペクト比」はチャンネル長さの平均チャンネル内径に対する比である。例えば、1メートルの長さおよび100ミクロンの内径を有する抽出キャピラリーは約10,000のチャンネルアスペクト比を有する。本発明のキャピラリーチャンネルのチャンネルアスペクト比は、典型的には、10から1,000,000の範囲内、例えば、10、100、1000、10,000もしくは100,000の下限および1000、10,000、100,000もしくは1,000,000の上限を有する範囲内にある。
【0082】
抽出チャンネルの体積は分析物の性質、抽出化学、チャンネル受容能および特定の用途に必要な精製分析物の量に依存して変化し得る。様々な実施形態において、抽出カラムの体積はリットル、ミリリットル、マイクロリットルもしくはナノリットルのオーダーであり得る。
【0083】
キャピラリー管系を用いる本発明の実施形態において、管系は、有利には、柔軟なコーティング物質、典型的には、ポリマーまたは樹脂でコートされる。好ましいコーティング物質には、ポリイミド、シリコーン、ポリアクリレート、アルミニウムまたはフルオロポリマー、特には、半導体級ポリイミドが含まれる。
【0084】
他の実施形態において、チャンネルは液体の移動および除去を許容する特性を有する。この点において、チャンネルは、粗さおよび突出部またはビーズもしくはモノリス構造をも含む二次構造を、この二次構造において形成されるチャンネルが性能に実質的に衝撃を与える非掃引体積を生じない限り、含むことができる。カプセル封入およびモノリス構造の詳細はRonald Majors,2002 Pittsburgh Conference,Part I,LC/GC Europe,April 2002,pp 215に示される。
【0085】
開放チャンネルにおける流動通路の性質のため、タンパク質と比較してさえ比較的大きい構造を有する分子もしくは分子群を捕獲、精製および濃縮することができる。表面上に適切な結合官能性を有する抽出チャンネルは、剪断または(フリットもしくは裏引床(frit or backed bed))濾過のような問題なしに、これらの構造を結合および抽出することができる。
【0086】
固相抽出装置は当分野において公知であり、少なくとも以下の米国特許に記述される:第5,911,883号;第5,688,370号;第5,595,649号;第5,472,600号;第5,415,779号;および第5,279,742号。
【0087】
微量溶出プレート
ある実施形態において、本発明において用いられる固相抽出装置は微量溶出プレートを含む。これらの実施形態において、アルミナ吸着剤粒子の床は微量溶出プレートに充填される。
【0088】
一実施形態において、微量溶出プレートは複数のウェルを含む。ある実施形態において、ウェルの数は約25から約250の範囲をとり;ある場合には、約90から約100;ある場合には、96である。このような実施形態において、アルミナは、有利にはフリットの頂部の、ウェルに充填される。有利には、別のフリットを頂部に配置し、ウェル内にフリット・アルミナ・フリット構造を創出する。
【0089】
ある実施形態において、微量溶出プレートはアルミナBが約0.5mgから約5.0mg充填された複数のウェルを含む。他の実施形態において、ウェルはアルミナBが約2.0mgから約3.0mg充填される。
【0090】
有利な実施形態において、ウェルはテーパ状内部外形を有し、この外形は外来サンプル微粒子がアルミナ吸着剤床に到達する前に捕獲するための大濾過面積を有する上流第1多孔性フィルターおよびより小さい下流フィルターの包含を、アルミナ吸着剤床および第1フィルターの間の最小内部空隙容積を可能としながら、容易にする。球状フィルターの有効濾過面積はこのフィルターの露出半球部に基づき、これは等しい直径の平坦ディスクフィルターの面積よりも2倍大きい。
【0091】
球状フィルターは組み立ての最中の取り扱いが容易であり、特殊な挿入器具を必要としない。さらに、球状フィルターは、テーパ状のウェルの穴に配置するときに自己整列し、球状フィルターとウェルの内面との厳密な寸法的寛容性の必要性なしに穴壁を容易に密閉する。テーパ状ウェルデザインも同じSPE装置内での吸着剤質量一続きを許容し、それによりこの装置を異なる用途にあつらえる柔軟性をもたらす。これは、単に球状多孔性フィルターの直径を変更し、それにより、ウェルの穴を変化させることなしに、フィルターおよび充填アルミナ吸着剤床をテーパ状装置内でより上またはより下のいずれかに位置付けることによって達成される。
【0092】
テーパ状ウェル外形は、望ましくない流動チャンネルを形成する傾向が相当に少なく、それによりアルミナ吸着剤粒子と適切に接触することなしに床を迂回するサンプル成分を妨げる、吸着剤床形状をもたらすため、通常の円筒形デザインとは異なる。状態調節およびローディング工程の最中にアルミナ吸着剤床を通過する流体はテーパ状充填床を統合するように作用し、しっかりと形成された床構造を生じる。
【0093】
これは、サンプルとアルミナ吸着剤床との効率的な接触、ローディングの最中にサンプルの突破のより少ない可能性並びに洗浄および溶出流体の効率的な使用を生じる。本発明のこの実施形態は、固相抽出の技術の現状から大幅に減少されている体積での溶出で、広範囲にわたるクロマトグラフィー的極性を有する標的化合物の保持を可能にする。この溶出体積の減少は、分析に必要な高いサンプル濃度を依然として維持しながら、水性溶液で希釈することができる標的化合物含有溶液をもたらす。
【0094】
別の実施形態において、装置は、反応容器をその内部に受容し、該反応容器を微量溶出プレート内の複数のウェルと整列させるように構成される、輸送および流体送達手段をさらに含む。
【0095】
本発明は、固相抽出を実施する方法であって、溶出溶媒の体積が蒸発工程の必要性を排除するのに十分な少なさである方法をも提供する。この方法は、有機溶媒最少量、典型的には、10−40μLで標的化合物を抽出し、次にこれを高度に水性の流体で希釈して水性有機サンプル混合物を形成することを含む。この混合物はHPLCによる直接分析に適し、それにより、標的化合物(1以上)濃度の高い程度を依然として維持しながら、蒸発および戻し工程に関連する時間、経費および潜在的なサンプルの損失を排除する。
【0096】
具体的には、本発明の方法は上述のSPE装置を提供する工程およびサンプル媒体中の妨害成分から標的物質を単離する工程を含み、標的物質は50μL未満の体積で実質的に溶出される。
【0097】
本発明の一実施形態において、本発明の単離工程は、好ましくはSPE装置を有機溶媒で状態調節し;SPE装置を水性溶液で平衡化し;標的物質および妨害成分を含有する調製サンプルをSPE装置に添加し;SPE装置を水性溶液で洗浄して妨害成分を除去し;および吸着された標的物質を溶出することを含む。
【0098】
別の実施形態においては、依然としてSPE流体移送に用いられる処理ステーション上で、水性希釈液をSPE装置を介して直接添加する。このようにすることで、残留溶出溶媒が装置を介して収集容器内に一掃され、そこで水性流体によって希釈されて移送の最後にウェルを介して引かれる穏やかな気流によって混合される。このアプローチは希釈工程を実施する別のピペット操作の必要性を排除する利点を有する。
【0099】
本発明は、従来技術のSPE装置でこれまで可能であるものよりも少ない溶出体積を用いて、分析に先立つサンプルの精製、即ち、サンプル媒体中の妨害物質からの望ましい標的物質の単離に用いることができる。具体的には、および好ましい実施形態においては、本発明の方法は、まず、装置およびアルミナ吸着剤粒子の表面を湿潤させることが可能であるあらゆる有機溶媒でSPE装置を状態調節することを含む。この状態調節工程において用いることができる有機溶媒の実例には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる:極性もしくは非極性有機溶媒、例えば、メタノールおよびアセトニトリル。SPE装置の状態調節に用いられる有機溶媒の量は変化してもよく、この有機溶媒がSPE装置を湿潤させる量で用いられる限り、本発明にとって重要ではない。本発明の方法のこの工程において用いられる溶媒がSPE装置から混入物を除去する役目をも果たすことに注意されたい。
【0100】
状態調節工程の後、水性溶液を用いて状態調節されたSPE装置を平衡化する。SPE装置の平衡化に用いられる水性溶液の量は変化してもよく、本発明にとって重要なものではない。
【0101】
抽出方法
本発明の方法は、典型的には、関心分析物をサンプル溶液から固相抽出装置のアルミナ抽出表面上に吸着させ、吸着した分析物をアルミナ抽出表面に結合させたままにしながらサンプル溶液を実施的に排出し、脱着溶液中でチャンネルから分析物を溶出することを含む。脱着した分析物は収集することができ、典型的には、幾つかの技術(このうちの幾つかはここでより詳細に説明される。)のうちのいずれかによって分析される。幾つかの実施形態においては、溶出に先立ち、アルミナ抽出表面を洗浄する。この抽出法は、一般には、分析物もしくは関心分析物の濃厚化(entichment)、濃縮(concentration)および/または精製を生じる。
【0102】
一般には、これらの方法は、関心分析物を含有するサンプル溶液を、分析物をアルミナ吸着剤の抽出表面と相互作用させてそこに吸着させるような方法でアルミナ吸着剤床が充填される容器、例えば、カラム、ウェル、チャンネル等に導入することを含む。サンプル溶液は一端を介して充填床抽出容器に入り、容器を通過し、最終的に容器端部の同じ端部のいずれかを介して(through either at the same end of the of the container end)チャンネルを退出する。充填床容器へのサンプル溶液の導入は、クロマトグラフィー装置によって液体を分割もしくは引き出すための技術の幾つかのうちのいずれかによって達成することができる。例には、ポンプ(例えば、シリンジ、加圧容器、遠心ポンプ、電気運動ポンプもしくは誘導ベースの流体工学ポンプ(induction based fluidics pump))、重力、遠心力、毛管作用もしくはキャピラリーを通して流体を移動させる気体圧が含まれる。サンプル溶液は、好ましくはサンプルとアルミナ抽出表面との適切な接触時間を可能にする流速で容器を通して移動させる。
【0103】
サンプル溶液は、溶液を同じ方向に2回以上循環させることにより、またはサンプルを前後に2回以上通過させることにより、容器に1回を上回って通過させることができる。幾つかの実施形態において、ポンプが空気を送り出し、従って、液体を充填床抽出カラムまたは抽出チャンネルから噴出させることが可能であることが重要である。好ましいポンプは、液体の所定の体積の吸引、注入および/または操作に用いることができるように、良好な精度、良好な確度および最小限のヒステリシスを有し、小体積を操作することが可能であり、コンピュータまたは他の自動化手段によって直接または間接的に制御することができる。
【0104】
流体操作に必要とされる確度および精度は、抽出手順における工程、望まれる複数の分析物およびSPEの寸法に依存して変化する。
【0105】
本発明の幾つかの実施形態において、サンプル溶液を抽出表面に露出して分析物を吸着させた後、サンプル溶液を装置から実質的に除去する。溶出に先立ってサンプル溶液を装置から除去することが常に必要なわけではないが、これが、最後には溶出タンパク質にするサンプル溶液から望ましくない混入種の存在を減少させ、装置における脱着溶液の制御を容易にもするため、通常は望ましい。本発明の幾つかの実施形態においては、空気もしくは気体を吹き通すことにより、残留サンプル溶液を装置からより完全に除去することができる。しかしながら、典型的には、精製におけるサンプルローディングおよび溶出工程の間で洗浄工程を行うため、これは通常は必要ではない。
【0106】
サンプル溶液は分析物もしくは関心分析物を含有するあらゆる溶液であり得る。それでもやはり、装置に導入する前に粗製サンプルを、例えば遠心もしくは濾過によって、清浄化することがしばしば有用である。サンプル溶液の例には、細胞溶解物、血清非含有ハイブリドーマ(hyridoma)成長培地、組織もしくは器官抽出物、生体液、細胞非含有翻訳もしくは転写反応または有機合成反応混合物が含まれる。幾つかの場合、サンプル溶液は生物学的または化学的サンプルに分析物を溶解または抽出するのに用いられる溶媒中の分析物である。この溶媒は分析物のアルミナ抽出表面への十分な吸着を保証するのに十分な弱さでなければならない。理想的には、吸着は等量的であり、ほぼ等量的であり、もしくは分析物の実質的な量を少なくとも含む。それでもやはり、全分析物の幾らか少ない画分のみが吸着される方法は、分析物の性質、出発物質の量および分析物を処理する目的に依存して、依然として非常に有用である。
【0107】
本発明の幾つかの実施形態においては、サンプルローディングの後、および分析物溶出の前に、容器(カラム、カートリッジ、ウェル、チャンネル等)を洗浄する。この工程は場合によるものであるが、容器が混入物をアルミナ抽出表面から除去し、従って溶出生成物の純度を改善するため、望ましいことが多い。吸着した分析物を、可能な程度まで、アルミナ抽出表面に吸着させたままにしながら、混入物をアルミナ抽出表面から洗浄する洗浄溶液(即ち、すすぎ溶液)を用いるべきである。洗浄溶液は、分析物分子または抽出表面に損傷を与えないものでもあるべきである。幾つかの場合、例えば、分析物がタンパク質またはタンパク質複合体である場合、分析物を変性または分解しない洗浄溶液を用い、機能性未変性タンパク質の回収を容易にする。
【0108】
洗浄溶液の正確な性質および組成は変化し得るものであり、幾らかの程度までは、分析物の性質、アルミナ抽出表面および吸着の性質によって決定される。理想的には、洗浄溶液は、吸着した分析物を結合したままにしながら、混入物を可溶化し、並びに/またはカラムもしくはチャンネルおよび抽出表面から洗浄することができる。ある程度までは、洗浄溶液の選択はサンプル純度対サンプル回収の相対的な重要性に依存する。
【0109】
抽出カラムまたはチャンネルからの吸着した分析物の溶出に先立ち、あらゆる残留溶液を容器からパージすることが;即ち、残留溶液をカラムまたはチャンネルから追放することがしばしば望ましい。これは、気体、例えば、空気もしくは窒素をカラムもしくはチャンネルに通すことによって達成することができる。より有効なパージは、幾つかの場合、パージの望ましい程度を達成するのに十分な時間だけカラムまたはチャンネルに気体を吹き込むことによって達成することができる。この残留溶液は、典型的には、このようなものが用いられる場合、洗浄溶液であるか、または、洗浄工程が存在しない場合、サンプル溶液である。幾つかの実施形態において、パージ工程は(例えば、残留サンプル溶液を除去する)洗浄工程の前および洗浄工程の後に行うことができるが、パージは、通常は、洗浄工程の前には必ずしも必要ではない。ある実施形態においては、複数の洗浄工程が用いられる。例えば、幾つかの実施形態においては、溶出に先立ち、重水素化溶媒中でさらなるDO洗浄を行う。望ましい場合、このような余分な工程の後、パージを達成することができる。
【0110】
一実施形態において、この目的は、アルミナ抽出表面を脱水もしくは脱溶媒化することなしに、すべてのバルク液をカラムまたはチャンネルから実質的に除去することである。抽出表面およびあらゆる結合分析物、例えば、結合タンパク質は水和したまま、およびこれらの未変性の状態のままであり、それに対して溶出分析物の最終的な純度および濃度を低下させ得るあらゆるバルク溶液は除去される。これはカラムまたはチャンネルを通して適切な時間気体を吹き込むことによって達成することができる。時間は抽出表面の性質、キャピラリー内の溶液の性質等に依存して変化する。
【0111】
カラムまたはチャンネルからの流体の置換の程度は用いられる抽出プロトコルおよびシステムの要求に依存して変化し得る。例えば、パージ工程の結果として、抽出カラムもしくはチャンネルはバルク液を少なくとも20%含まず、またはバルク液を少なくとも30%含まず、またはバルク液を少なくとも40%含まず、またはバルク液を少なくとも50%含まず、またはバルク液を少なくとも60%含まず、またはバルク液を少なくとも70%含まず、またはバルク液を少なくとも80%含まず、またはバルク液を少なくとも90%含まず、またはバルク液を少なくとも95%含まず、またはバルク液を少なくとも98%含まず、またはバルク液を少なくとも95%含まず、またはバルク液を実質的に含まない。
【0112】
従って、一実施形態において、本発明は、実質的にバルク液を含まない、結合分析物を含有する抽出カラムまたはチャンネルを提供する。特には、結合分析物は生体分子、例えば、生物学的高分子(例えば、ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質)であり得る。好ましい実施形態において、分析物はタンパク質またはタンパク質含有複合体である。実質的にバルク溶液はないものの、分析物および/または抽出表面は十分に水和させることができる。生体分子、例えば、タンパク質の場合、この水和は結合相互作用並びに分子の構造的および機能的一体性を安定化し得る。結合水和生体分子は含有するが他の点では実質的にバルク水を含まない抽出キャピラリーは、カラムもしくはチャンネルを適切な時間パージすることによって用意することができる。カラムもしくはチャンネルを過乾燥させないことが重要であり得るが、これは、過乾燥が結合生体分子の変性を生じる可能性があり、機能的分子の回収を阻害もしくは妨害する可能性があるためである。適切な条件の下で、カラムまたはチャンネルおよび結合分析物は、特には適切な水和が維持される場合、適切な期間安定である。このカラムまたはチャンネルは吸着した分析物の純粋な濃縮サンプルをもたらし、これはここに記述される適切な溶出プロトコルを用いることによって回収することができる。幾つかの実施形態において、アルミナ抽出表面は三次元である。
【0113】
最後に、場合によるあらゆる洗浄および/またはパージ工程を行った後、吸着した分析物をカラムまたはチャンネルから脱着により脱着溶液中に溶出する。脱着溶液はサンプル溶液および/または洗浄溶液に用いたものと同じであるか、もしくは異なる機構により、カラムもしくはチャンネル内に引き入れ、もしくは押し込み、およびそこから引き出し、もしくは追い出すことができる。用いられる脱着溶液の量は溶出される分析物の最終濃度を決定する。
【0114】
一般には、サンプル溶液および/または脱着溶液をカラムもしくはチャンネルに通す回数を増加させることにより、または流速を低下させることにより、感度および選択性を改善することができる。両者はアルミナ抽出表面への分析物のより長期間の露出を生じる。しかしながら、両者はより長期間かかる抽出プロセスをも生じ、従って改善された感度および選択性のより低い処理能力とのトレードオフが存在し得る。感度および選択性対処理能力の相対的な重要性に依存して、適切な通過の回数および流速を選択することができる。
【0115】
幾つかの実施形態においては、複数回通過溶液(multiple−pass solution)を抽出カラムまたはチャンネルの少なくとも幾らか実質的な部分に少なくとも2回通過させ、ある実施形態においては、望ましい効果を達成するため、少なくとも4回、少なくとも8回、少なくとも12回、またはさらに多く通過させることができる。複数回通過は、溶液をカラムまたはチャンネルに複数回同じ方向に通すことによって達成することができ、または溶液の流れを、これがカラムもしくはチャンネルを通して前後に流動するように、逆転させることによって達成することができる。
【0116】
洗浄溶液および脱着溶媒はいずれの端部から導入することもでき、カラムまたはチャンネル内を前後に移動させることができる。これらはカラムもしくはチャンネル並びに気体および液体、例えば、状態調節流体、サンプル、洗浄流体および脱着流体用のポンプの組み合わせを含むことができる。ポンプは、例えば、シリンジ(圧力もしくは真空)、圧力容器(バイアル)または遠心装置であり得る。揚水力は好ましくはバルク液に対するものであり、好ましくは電気浸透力によるものではない;流体はカラムまたはチャンネルを通して制御された様式で移動する。一般には、これは、作用を受ける液体の体積が指定された体積の積極的な置換もしくは移動、揚水作用のタイミングまたはカラムもしくはチャンネルを通して汲み上げられる流体の体積の制御によって制御されることを意味する。適切なポンプの例には、シリンジもしくはピストン、蠕動、回転翼、ダイアフラム、加圧もしくは真空チャンバ、重力、遠心および遠心力、毛管作用、圧電、圧電運動(piexo−kinetic)並びに電気運動ポンプが含まれる。
【0117】
本発明は、より少ない溶出体積を用いて、分析に先立つサンプルの精製に、即ち、サンプル媒体中の望ましいリン酸化ペプチドまたはオリゴヌクレオチドの単離に用いることができる。具体的には、一実施形態において、本発明は、まず装置およびアルミナ吸着剤粒子の表面を湿潤させることができるあらゆる有機溶媒でSPE装置を状態調節することを含む方法を提供する。この状態調節工程において用いることができる有機溶媒の実例には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる:極性また非極性有機溶媒、例えば、高純度水、メタノールおよびアセトニトリル。SPE装置の状態調節に用いられる有機溶媒の量は変化してもよく、SPE装置を湿潤させる量で用いられる限り、本発明にとって重要ではない。この工程において用いられる溶媒がSPE装置から混入物を除去する役割をも果たすことに注意されたい。
【0118】
状態調節工程の後、水性溶液を用いて状態調節されたSPE装置を平衡化する。SPE装置の平衡化に用いられる水性溶液の量は変化してもよく、本発明にとって重要ではない。
【0119】
その後、少なくとも1種類のリン酸化ペプチドを含有する調製サンプルを、当業者に周知である通常の手段を用いて、SPE装置に添加する。次に、トリフルオロ酢酸、アセトニトリル、水およびこれらの組み合わせの水溶液を用いてサンプルの残りをSPE装置から除去した後、アルミナ吸着剤粒子に吸着している標的物質を、吸着した標的物質をSPE装置から除去することができる有機溶離液を用いて、SPE装置から溶出する。
【0120】
次に、水性溶液を用いて妨害物質をSPE装置から除去した後、アルミナ吸着剤粒子に吸着している標的物質を、吸着した標的物質をSPE装置から除去することができる有機溶離液を用いて、SPE装置から溶出する。
【0121】
ある実施形態において、本発明の方法は、(a)関心化合物を装置上に析出させ、および(b)不純物を洗い流しながら、これら、例えば、充填マトリックスの大表面積を用いて析出した関心化合物を支持することに用いられる固相抽出装置を提供する。要するに、この方法はアルミナ吸着剤を薄膜堆積用の支持マトリックスに変化させる。このようにすることで、望ましくない成分または不純物を完全に可溶化し、(a)不純物を除去するのに十分な強さではあるが、(b)アルミナ吸着剤の表面上またはこの細孔内に薄膜として保持される関心化合物(例えば、タンパク質、ペプチドまたはリン酸化ペプチド)は除去しない洗浄溶液で、装置を通して、もしくはこの外部にすすぎ出すことができる。この析出工程は特定の用途に適する様々な方法によって達成することができる。一実施形態においては、溶媒を除去し、アルミナ吸着剤上に析出を生じさせるのに真空を用いることができる。その代わりに、アルミナ吸着剤に吸着させた後、気体流の送達により、もしくは、初期洗浄溶媒を同時に交換し、析出を生じる洗浄溶媒の送達(要するに、磨砕工程)により、関心化合物を析出させることができる。
【0122】
ペプチドに関しては、粗製合成ペプチドサンプルをアルミナ固体支持体に吸着させる。支持体は水、アセトニトリルもしくはトリフルオロ酢酸(「TFA」)または、TFA/アセトニトリル/水溶液を含む、これらの組み合わせで洗浄する。塩および他の不純物をカラムを通して洗浄し、廃棄する。この時点で、残留するサンプル混合物のすべての成分が固相アルミナ吸着剤および残留溶媒(水もしくはTFA/水)に分配される。しかしながら、平衡は吸着剤の側までほど遠い。
【0123】
第2工程において、アルミナ吸着剤からの溶媒(水、トリフルオロ酢酸および揮発性有機物質)の除去に乾燥工程を用いる。乾燥後、分配系はもはや存在せず、サンプル成分はアルミナ吸着剤に吸着するか、もしくはこれと固体混合物を形成する。この乾燥工程は関心化合物および不純物をSPE粒子の表面上に析出させる。この段階で、関心化合物および不純物は、マトリックスの表面もしくは細孔に支持される、固体形態にある。
【0124】
第3工程において、例えばこれらが望ましいペプチド生成物ではない不純物を〜できるよう(such that they can impurities)に溶媒を、選択する。このような溶媒の選択は当分野における者の技術の範囲内にある。望ましい生物学的分析物(1以上)としてのペプチドまたはタンパク質では、トリフルオロ酢酸、HCl、HBr、硫酸、硝酸、リン酸、アセトニトリル、アセトンもしくはメタノールおよびこれらの組み合わせのような溶媒を用いてカラムを通して洗浄し、不純物を運び去って固相表面上に捕獲された不溶化/析出ペプチドを残すことができる。
【0125】
さらなる工程においては、洗浄溶液を用いて関心化合物を溶出する。この最終洗浄溶媒は、アルミナからの脱着を生じる条件下で、関心化合物を可溶化する。
【0126】
段階および多元溶出
本発明の幾つかの実施形態においては、脱着溶媒勾配、段階溶出および/もしくは多元溶出を行う。勾配の使用はクロマトグラフィーの分野においては周知であり、例えば、ここで引用される一般的なクロマトグラフィー参考文献の幾つかに詳細に記載される。本発明の抽出チャンネルに適用する場合、基本原理には、分析物をアルミナ抽出表面に吸着させた後、脱着溶媒勾配で溶出することが含まれる。この勾配は溶媒の少なくとも1つの特徴の変化、例えば、pH、イオン強度、極性もしくは結合相互作用の強度に影響を及ぼす幾つかの薬剤の濃度の変化を指す。勾配は、相互作用、特には、特異的結合相互作用を妨害またはこれを安定化する化学的実体の濃度に関するものであり得る。
【0127】
本発明の脈絡において用いられる勾配は漸進的なものであっても、段階的に加えられるものであってもよい。段階溶出は、特に空気によって留められている脱着溶液の分割物および/または他の非混和性流体が用いられるとき、特に適用可能である。一実施形態においては、1以上の次元で変化する脱着溶媒の2以上のプラグが用いられる。例えば、2以上のプラグはpH、イオン強度、疎水性等が変化し得る。分割物はキャピラリーよりも大きいか、または小さい体積を有することができ、即ち、1を上回る管濃縮率を各々のプラグで達成することができる。場合により、カラムまたはチャンネルを、脱着溶液プラグ1以上の導入に先立ち、気体でパージすることができる。一実施形態においては、キャピラリーの同じ末端にプラグを導入し、排出させる。プラグは前後に1回以上カラムを通過させる。ここで他所に記載されるように、幾つかの場合、キャピラリーを通した脱着溶液の流速を低下させることにより、および/または通過の回数、即ち、キャピラリーを通した前後への溶媒の流動を増加させることにより、脱着の効率が改善される。
【0128】
別の実施形態においては、脱着溶媒の2以上のプラグの一繋がりをカラムもしくはチャンネルを通して、空気の分割物で隔てて、連続的に流す。この実施形態においては、空気分離分割物は1以上の次元で変化する。溶媒のプラグは同じ、もしくは異なる端部からキャピラリーに入り、退出することができ、または一端からキャピラリーに入り、他方から退出することができる。
【0129】
溶媒
本発明の抽出は、典型的には、サンプル溶液中のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質分析物のローディング、すすぎ溶液での場合による洗浄および脱着溶液中への分析物の溶出を含む。好ましい場合において、分析物はリン酸化ペプチドである。サンプル溶液に関しては、これは、典型的には、溶媒に溶解した分析物からなり、この溶媒中では分析物が可溶であり、分析物がアルミナ抽出表面に結合する。好ましくはこの結合は強力であって分析物の実質的な部分の結合を生じ、最適には、この手順において用いられるローディングプロトコルの下で分析物の実質的にすべてが結合する。溶媒は、分析物の本来の構造および機能がアルミナ抽出表面からの脱着時に保持されるように、穏やかでもなければならない。典型的には、溶媒は、緩衝剤、塩および/または表面活性剤を典型的に含んで分析物を可溶化および安定化する、水性溶液である。サンプル溶液の例には、細胞溶解物、ハイブリドーマ成長培地、細胞非含有翻訳または転写反応混合物、組織、器官もしくは生物学的サンプルからの抽出物および生体液から誘導される抽出物が含まれる。
【0130】
サンプル溶媒は分析物を可溶化するだけではなく、アルミナ抽出相への結合に適合することが重要である。サンプルの性質および抽出法に依存して、他の構成成分、例えば、還元剤、洗浄剤、安定化剤、変性剤、キレート剤、金属等が有益であり得る。
【0131】
洗浄溶液は、用いられる場合、これが結合分析物の最小限の損失または損傷で望ましくない混入物を除去するように選択するべきである。洗浄溶液の特性は、典型的には、サンプルおよび脱着溶液の中間である。
【0132】
脱着溶媒は溶媒流または溶媒プラグのいずれかとして導入することができる。溶媒のプラグが用いられる場合、サンプルが標的上に堆積するときに緩衝剤も堆積して堆積したサンプルに適切なpHをもたらすように、緩衝剤プラグに脱着プラグの後を追わせることができる。その後、堆積した物質を、例えばSPRチップ上の堆積により、分析することができる。
【0133】
脱着溶媒は、強力に結合した妨害物質は後に残しながら、分析物を定量的に脱着させるのに十分な強さでなければならない。これらの溶媒は分析物および最終検出法に適合するように選択される。一般には、用いられる溶媒は公知の従来の溶媒である。適切な溶媒を選択することができる典型的な溶媒には、水酸化アンモニウム、トリエチルアミン、リン酸ジアンモニウム、塩化メチレン、(塩基性もしくは酸性改質剤少量を含むかまたは含まない)アセトニトリル、(改質剤、例えば、酢酸もしくはトリエチルアミンまたは水とメタノールもしくはアセトニトリルのいずれかとの混合液をより多量に含有する)メタノール、酢酸エチル、クロロホルム、ヘキサン、イソプロパノール、アセトン、アルカリ性緩衝剤、高イオン強度緩衝剤、酸性緩衝剤、強酸、強塩基、酸/塩基との有機混合液、酸性もしくは塩基性メタノール、テトラヒドロフランおよび水が含まれる。脱着溶媒は吸着溶媒とは異なる混和性であってもよい。
【0134】
抽出が特定の同族リガンド分子、例えば、固定化金属への分析物の結合を含む場合、脱着溶媒はこのような結合を妨害する分子、例えば、固定化金属の場合にはイミダゾールまたは金属キレート剤を含むことができる。
【0135】
タンパク質のクラスの精製
混合物中に存在する分析物または化合物は、例えば、(例えば、ペプチド合成または、タンパク質もしくはタンパク質の混合物の消化を含む、生物学的サンプルからの)ペプチドもしくはポリペプチド、(例えば、生物学的サンプルもしくは合成ポリヌクレオチドからの)核酸もしくはポリヌクレオチド、合成もしくは天然ポリマーまたはこれらの物質の混合物であり得る。化合物のタイプは、ここに記載されるように、化合物分離用に選択されるクロマトグラフィー法によってのみ制限される。ある好ましい実施形態において、検出、分析または精製しようとする分析物はペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、特には、リン酸化ペプチドである。
【0136】
ある実施形態において、本発明のSPEは多タンパク質複合体の抽出および/もしくは処理に用いられる。これは、典型的には、タンパク質複合体または関心複合体の破壊を生じない十分に非変性性であるサンプル溶液を用いることによって達成され、即ち、複合体は、複合体の構成成分間の会合を安定化するサンプル溶液および抽出条件を用いて生物学的サンプルから抽出される。
【0137】
幾つかの実施形態においては、多タンパク質複合体を抽出表面に吸着させ、複合体の一体性が全体を通して保持されるような条件下で脱着させる。即ち、抽出の生成物は無傷の複合体であり、次にこれを収集して保存するか、または、例えばここに記述される分析方法論のいずれかにより、(複合体もしくはタンパク質の混合物のいずれかとして)直接分析することができる。
【0138】
一例には、この天然相互作用パートナーと複合体を形成する、組換え「ベイト(bait)」タンパク質の使用が含まれる。これらの多タンパク質複合体は、次に、「ベイト」に取り付けられた融合タグによって精製する。これらのタグ付け「ベイト」タンパク質はキャピラリーの表面に取り付けられた基、例えば、金属−キレート基、抗体、カルモジュリンまたは組換えタンパク質の精製に用いられる他の表面基のいずれかによって精製することができる。その後、同族タンパク質の素性を様々な手段のいずれか、例えば、MSによって決定することができる。
【0139】
「未変性」(即ち、非組み換え)タンパク質複合体を融合タグによって精製すべきことなしに精製することも可能である。例えば、これは、多タンパク質複合体内のタンパク質の1つに対する抗体を親和性結合試薬として用いることによって達成することができる。この方法はしばしば「共免疫沈降」と呼ばれる。多タンパク質複合体は、例えば、低pHで溶出することができる。
【0140】
幾つかの実施形態においては、多タンパク質複合体をSPEに複合体としてロードし、複合体全体または1以上の構成成分を脱着させて溶出する。他の実施形態においては、1以上の複合体構成成分をまず抽出表面に吸着させ、続いて、複合体形成が抽出表面で生じるように、1以上の他の構成成分を抽出表面に適用する。
【0141】
別の実施形態においては、本発明のSPEを複合体の性質を分析するツールとして用いることができる。例えば、タンパク質複合体を抽出表面に脱着させた後、複合体の状態を溶媒変動の関数として監視する。複合体を一体に保持する相互作用の幾らかまたはすべての破壊を生じ、それにより残りは吸着させたままにしながら複合体の幾つかのサブセットが放出される、脱着溶媒または脱着溶媒の一続きを用いることができる。放出されたタンパク質の素性および状態(例えば、翻訳後修飾)はしばしば、例えばMSを用いて、決定することができる。従って、この方法では、タンパク質複合体の構成成分および/または下位複合体を個別に溶出および分析することができる。脱着溶媒の性質は、タンパク質複合体を一体に保持する相互作用、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、ファン・デル・ワールス力および共有結合相互作用、例えば、ジスルフィド架橋に対して有利に、または不利に調整することができる。例えば、脱着溶媒の極性を低下させることにより、疎水性相互作用は弱められる−還元剤(例えば、メルカプトエタノールまたはジチオトレイトール(dithiothrietol))の包含はジスルフィド架橋を破壊する。他の溶液変動には、pHの変更、イオン強度の変化および/またはタンパク質−タンパク質相互作用またはタンパク質またはタンパク質複合体と非タンパク質生体分子との相互作用に特異的に、もしくは非特異的に影響を及ぼす構成成分の包含が含まれる。
【0142】
一実施形態においては、2以上の脱着溶媒の一続きを連続的に用い、溶離液を監視して特定の溶媒でどのタンパク質構成成分が流れ落ちるのかを決定する。このようにすることで、複合体内の相互作用の強さおよび性質を評価することができる。例えば、強さが増加する(例えば、イオン強度の増加、極性の低下、pHの変化、イオン組成の変化等)脱着溶媒の一続きを用いる場合、より緩やかに結合するタンパク質または下位複合体が最初に溶出し、よりしっかりと結合する複合体は脱着溶媒の強さが増加する場合にのみ溶出する。
【0143】
幾つかの実施形態においては、用いられる脱着溶液の少なくとも1つがイオン相互作用をもたらす薬剤を含む。この薬剤は多タンパク質複合体の2以上のタンパク質構成成分間の特異的相互作用に関与する分子であり得る。タンパク質相互作用に影響を及ぼし得る他の薬剤は変性剤、例えば、尿素、塩化グアナジニウム(guanadinium chloride)およびイソチアシアネート、洗浄剤、例えば、トリトンX−100(商標)、キレート化基、例えば、EDTA等である。
【0144】
実験の他の組においては、タンパク質複合体の一体性をタンパク質の1以上における修飾(例えば、翻訳後の、もしくは突然変異)によって精査することができる。ここに記述される方法を用いて、複合体の安定性もしくは他の特性に対する修飾の効果を決定することができる。
【0145】
一実施形態においては、本発明のSPEおよび方法を機能的な、活性の、および/またはこれらの未変性状態にある、即ち、非変性のタンパク質の精製に用いる。これは非変性条件下で抽出方法を実施することによって達成される。この非変性条件は、サンプル溶液、洗浄溶液(用いられる場合)、脱着溶液、抽出相および抽出が達成される条件を含む、全タンパク質抽出を包含する。タンパク質安定性に影響を及ぼす一般的なパラメータは当分野において周知であり、これには温度(通常、低温が好ましい。)、pH、イオン強度、還元剤の使用、表面活性剤、プロテアーゼ活性の排除、物理的剪断または破壊からの保護、放射線等が含まれる。特定のタンパク質、タンパク質のクラスまたはタンパク質含有組成物に最も適する特定の条件はタンパク質からタンパク質で幾らか変化する。
【0146】
非変性抽出を容易にする本発明のSPE技術の特定の態様の1つはこの方法を低温で達成できることである。特には、SPEを介する溶液流動を装置の加熱なしに行うことができるため、この方法を低温で行うことができる。低温は室温または、例えば、この方法を低温室内で行うか、もしくは冷却装置をSPEの冷却に用いる場合、より低いものであり得る。例えば、SPEは、0℃、2℃または4℃という低さの、例えば、0℃から30℃、0℃から20℃、2℃から30℃、2℃から20℃、4℃から30℃または4℃から20℃の範囲の温度で行うことができる。
【0147】
未変性タンパク質の精製が考慮されるここに記述されるSPEの別の態様は、この抽出方法を迅速に完了させることができ、従ってサンプル溶液中に存在するプロテアーゼまたは他の変性剤からのタンパク質の迅速な分離を可能にすることである。この方法の速度はサンプル溶液から目的とする分析装置まで、またはタンパク質の安定性を促進する保存条件まで、タンパク質を迅速に送ることを可能にする。本発明の様々な実施形態において、本発明の抽出は1分未満、2分未満、5分未満、10分未満、15分未満、20分未満、60分未満または120分未満で達成することができる。
【0148】
別の態様においては、抽出されたタンパク質を、時折、抽出方法の最中に水和形態に維持することによって安定化する。例えば、脱着に先立ってSPEからバルク液(即ち、液体分割物)を除去するのにパージ工程を用いる場合、過度の時間SPEを通して気体を吹き込むことはしない。このようにしてSPE装置の乾燥並びに、おそらくは、抽出相および/もしくはタンパク質の脱溶媒和を回避することを確かなものとするように注意を払う。
【0149】
別の実施形態においては、タンパク質を不可逆的に変性させることのない条件下で抽出法を行う。このようにすることで、たとえタンパク質が変性した状態で溶出されるとしても、タンパク質を復元して未変性および/または機能的タンパク質を回復することができる。この実施形態においては、タンパク質を不可逆的に変性させることのない条件下でタンパク質を抽出表面に吸着させ、タンパク質を不可逆的に変性させることのない条件下でタンパク質を溶出する。不可逆的変性を防止するのに必要な条件は非変性性であるものに類似するが、これらの要求は厳密ではない場合もある。例えば、変性剤、例えば、尿素、イソチオシアネートまたは塩化グアニジニウムの存在は不可逆的変性を生じ得る。溶出したタンパク質は変性しているが、当分野において公知の技術、例えば、変性剤を除去する透析を用いて未変性タンパク質を回復することができる。同様に、特定のpH条件またはイオン条件は、溶出したタンパク質のpHまたは緩衝剤組成を変化させることによって迅速に逆転し、可逆的変性を生じ得る。
【0150】
非変性、未変性、機能的および/または活性タンパク質の回復は、成功させるためにタンパク質を変性させることが必要な方法において用いるための調製工程として特に有用である。このような方法の非限定的な例には、分析方法、例えば、結合研究、活性アッセイ、酵素アッセイ、X線結晶学およびNMRが含まれる。
【0151】
分析技術
本発明の抽出チャンネルおよび関連方法には、様々な技術によって分析または検出するための分析物のサンプルの調製における格別の有用性が見出される。特には、これらの方法は、生物学的サンプル、例えば、生体液を起源とする生体分子からの分析物、分析物のクラス、分析物の凝集体(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質および/もしくはリン酸化ペプチド)等の精製に有用である。多くの場合、分析のこれらの形態の結果は分析物濃度を高めることによって改善される。本発明の幾つかの実施形態において、関心分析物はタンパク質であり、抽出は分析に先立ってタンパク質を精製および濃縮する役割を果たす。これらの方法はラベルフリーの検出方法または機能的、未変性(即ち非変性タンパク質)を必要とする方法での使用に特に適するが、あらゆる関心タンパク質または核酸に一般に有用である。
【0152】
ある場合において、これらの方法はプロテオーム研究、タンパク質−タンパク質相互作用の研究等への適用に特に適する。タンパク質−タンパク質相互作用網の解明は、好ましくはデータの他のタイプとの組み合わせで、細胞機能の新規タンパク質への割り当ておよび新規生物学的経路の派生を許容する。例えば、Curr Protein Pept Sci.2003 4(3):15981を参照のこと。
【0153】
ある実施形態において、本発明は、介在するいかなるサンプル処理工程、例えば、濃縮、脱塩等もがない、抽出チャンネルから溶出した分析物の直接分析を含む。従って、例えば、サンプルをキャピラリーから溶出し、MS、SPR等によって直接分析することができる。これは、分析に先立って濃縮、脱塩または他の処理工程を必要とする他のサンプル調製方法を上回る明確な利点である。これらの余分の工程は実験の時間および複雑性を増加させる可能性があり、豊富さに欠ける分析物および小体積で作業するときに大きな問題を引き起こす、重大なサンプル損失を生じる可能性がある。
【0154】
このような分析技術の一例は質量分析(MS)である。生体分子の分析への質量分析の適用において、これらの分子は液相または固相から気相および真空相へ移送される。多くの生体分子は巨大で脆い(タンパク質が主要な例である)ため、真空相に生体分子を移送するための最も有効な方法のうちの2つはマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)またはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)である。これらの方法の使用およびサンプル調製必要条件の幾つかの態様は当分野における通常の技術を有する者に公知である。一般には、ESIがより高感度であり、それに対してMALDIは高速である。重要なことには、幾つかのペプチドはESIよりもMALDIモードにおいてより良好にイオン化し、逆もまた同様である(Genome Technology,June 220,p 52)。本発明の抽出チャンネル法および装置は、MS分析用のサンプル、特には、生体分子サンプル、例えば、タンパク質の調製に特に適する。本発明の重要な利点は、介在する処理工程、例えば、濃縮または脱塩の必要性なしに直接分析することができる、濃縮サンプルの調製を可能にすることである。
【0155】
ESIは、サンプルを揮発性酸および有機溶媒と混合し、高電圧で帯電した導電性ニードルを介して注入することによって行う。ニードル端部から噴霧(または注入)される帯電した液滴は質量分析計に向かい、これらが飛行するに従って熱および真空によって乾燥される。液滴が乾燥した後、残りの帯電分子は電磁レンズによって質量検出器に向けられ、質量分析される。一実施形態においては、溶出したサンプルをキャピラリーからエレクトロスプレーノズル内に直接堆積させ、例えば、キャピラリーがサンプルローダーの機能を果たす。別の実施形態においては、キャピラリーこれ自体が抽出装置およびエレクトロスプレーノズルの両者の機能を果たす。
【0156】
MALDIについては、分析物分子(例えば、タンパク質)を金属標的上に堆積させ、有機マトリックスと共に共結晶化する。サンプルを乾燥させて質量分析計に挿入し、典型的には、飛行時間(time−of−flight)(TOF)検出によって分析する。一実施形態においては、溶出したサンプルをキャピラリーから金属標的上に直接堆積させ、例えば、キャピラリーこれ自体がサンプルローダーとして機能する。一実施形態においては、抽出した分析物をMALDI標的上に堆積させ、MALDIイオン化マトリックスを添加し、サンプルをイオン化して、例えばTOF検出により、分析する。
【0157】
本発明の他の実施形態においては、チャンネル抽出をMSの他の形態、例えば、他のイオン化モードと共に用いる。一般には、これらの方法の利点は、これらがサンプルの「ジャスト・イン・タイム」精製およびイオン化環境への直接導入を可能にすることである。様々なイオン化および検出モードが、用いられる脱着溶液の性質にこれら自体の制約を導入することに注意することが重要であり、脱着溶液が両者と適合することが重要である。例えば、多くの用途におけるサンプルマトリックスは低イオン強度を有していなければならず、または特定のpH範囲になければならない等である。ESIにおいては、サンプル中の塩は、イオン化を弱め、またはノズルを詰まらせることにより、検出を妨害する可能性がある。この問題は、分析物を低塩で提示することによって、または揮発性塩を用いることによって取り組む。MALDIの場合、分析物は標的上への点置および用いられるイオン化マトリックスに適合する溶媒中に存在しなければならない。
【0158】
幾つかの実施形態において、本発明は、固体基質の表面上での結合現象の検出を含む分析方法において用いるための、分析物の調製に用いられる。これらの固体基質は、本明細書では「結合検出チップ」と一般に呼ばれ、この例にはハイブリダイゼーションマイクロアレーおよび様々なタンパク質チップが含まれる。ここで用いられる場合、「タンパク質チップ」という用語は、この上に分離された別々のタンパク質サンプルのアレー(もしくは「ドット」)が堆積されるか、または堆積されている、小プレートもしくは表面として定義される。一般には、別々のリガンド(例えば、タンパク質)のアレーを坦持するチップを設計し、これらのドットの1以上の表面に結合する能力を有するかどうかわからない1以上の生体分子を有するサンプルと接触させ、次に各ドット上でのこのような結合の発生または不在を決定する。タンパク質チップの一般的なタイプおよび機能を記述する参考文献はGavin MacBeath,Nature Genetics Supplement,32:526(2002)である。Ann.Rev.Biochem.,2003 72:783 812も参照のこと。
【0159】
一般には、これらの方法は、チップ結合部分「A」とこの同族結合剤「B」との結合の検出;即ち、ABの形成が、直接または間接的に、検出可能な信号を生じる、反応A+B=ABの検出を含む。この脈絡において、「チップ」という用語は、Aを固定化し、Bの結合を検出することができるあらゆる固体基体、例えば、ガラス、金属、プラスチック、セラミック、メンブラン等を指し得ることに注意されたい。チップ技術の多くの重要な用途において、Aおよび/またはBは生体分子、例えば、DNAハイブリダイゼーションアレー中のDNAもしくはタンパク質チップ中のタンパク質である。その上、多くの場合、チップは複数の小さな立体的にアドレス可能な分析物のスポットのアレーを含み、小スケールでの複数の結合実験の効率的な同時実施を可能にする。
【0160】
幾つかの実施形態においては、この技術が、光学バイオセンサ技術、例えば、SRU Biosystems(Woburn、Mass.)からのBINDバイオセンサによる検出に先立つサンプルの調製に用いられる。このタイプのラベルフリー検出の様々な形態が以下の参考文献に記載される:B.Cunningham,P.Li,B.Lin,J.Pepper,「Colorimetric resonant reflection as a direct biochemical assay technique,」Sensors and Actuators B、Volume 81,p.316 328,Jan.5,2002;B.Cunningham,B.Lin,J.Qiu,P.Li,J.Pepper,B.Hugh,「A Plastic Colorimetric Resonant Optical Biosensor for Multiparallel Detection of Label−Free Biochemical Interactions,」Sensors & Actuators B,volume 85,number 3,pp 219 226,(November 2002);B.Lin,J.Qiu,J.Gerstemnaier,P.Li,H.Pien,J.Pepper,B.Cunningham,「A Label−Free Optical Technique for Detecting Small Molecule Interactions,」Biosensors and Bioelectronics,Vol.17,No.9,p.827 834,September 2002;Cunningham,J.Qiu,P.Li,B.Lin,「Enhancing the Surface Sensitivity of Colorimetric Resonant Optical Biosensors,」Sensors and Actuators B,Vol.87,No.2,p.365 370,December 2002,「Improved Proteomics Technologies,」Genetic Engineering News,Volume 22,Number 6,pp 74 75,Mar.15,2002;および「A New Method for Label−Free Imaging of Biomolecular Interactions,」P.Li,B.Lin,J.Gerstemnaier,and B.T.Cunningham,Accepted July,2003,Sensors and Actuators B。
【0161】
光学バイオセンサ技術の幾つかの形態においては、比色共鳴回折格子(colorimetric resonant dffractive grating)表面を表面結合プラットフォームとして用いる。誘導モード共鳴現象を用いて、白色光を照射するときに単一の波長のみを反射するように設計される光学表面を製造する。分子がこの表面に結合するとき、格子に関連付けられている光の光学経路の変化により、反射波長(色)がシフトする。格子表面に受容体分子を連結することにより、蛍光プローブまたは粒子標識のあらゆる種類を用いることなしに、相補的結合分子を検出することができる。医薬化合物ライブラリの高処理能力スクリーニングおよびプロテオミスクのためのタンパク質−タンパク質相互作用のマイクロアレースクリーニングがこのアプローチに馴染み得る用途の例である。
【0162】
幾つかの実施形態において、本発明は、音響検出技術、例えば、Akubio Ltd.(Cambridge、UK)によって商品化されているものによる検出のための分析物の調製に用いられる。このタイプのラベルフリー検出の様々な形態が以下の参考文献に記載される:M.A.Cooper,「Label−free screening of molecular interactions using acoustic detection,」Drug Discovery Today 2002,6(12)Suppl.;M.A.Cooper 「Acoustic detection of pathogens using rupture event scanning(REVS),」Directions in Science,2002,1,12;およびM.A.Cooper,F.N.Dultsev,A.Minson,C.Abell,P.Ostanin and D.Klenerman,「Direct and sensitive detection of a human virus by rupture event scanning,」Nature Biotech.,2001,19,833 837。
【0163】
幾つかの実施形態において、本発明は、原子間力顕微鏡法、走査型力顕微鏡法(scanning force microscopy)および/またはナノアレー技術、例えば、BioForce Nanosciences Inc.(Ames、Iowa)によって商品化されているものによる検出のための分析物の調製に用いられる。
【0164】
幾つかの実施形態において、本発明は、活性ベースのタンパク質プロファイリングに関連する技術、例えば、ActivX、Inc.(La Jolla、Calif.)によって商品化されているものによる検出のための分析物の調製に用いられる。この方法論の様々な形態が以下の参考文献に記載される:Kidd et al.(2001)Biochemistry 40:4005 4015;Adam et al.(2000)Chemistry and Biiology 57:1 16;Liu et at.(1999)PNAS 96(26):146940 14699;Cravatt and Sorensen(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.4:663 668;Patricelli et al.(2001)Proteomics 1 1067 71。
【0165】
幾つかの実施形態において、本発明は、結合平衡除外アッセイ(kinetic exclusion assay)に関与する技術、例えば、Sapidyne Instruments Inc.(Boise、Id.)によって商品化されているものによる分析のための分析物の調製に用いられる。例えば、Glass,T.(1995)Biomedical Products 20(9):122 23;およびOhumura et al.(2001)Analytical Chemistry 73(14):3 3 92 99を参照のこと。
【0166】
液体を採取して抽出キャピラリーに分配するのに用いられる技術は、サンプルの非常に少量を採取してキャピラリーに分配するキャピラリー電気泳動機器に用いられるものに類似し得る。これは、DNA配列決定に用いられるキャピラリーユニットと同様に、96および384キャピラリーアレーにおいて行うこともできる。関連技術がAndre Marziali,et al.,Annu.Rev.Biomet.Eng.,3:195(2001)に記載される。ある場合には、固相抽出に用いられるキャピラリーの端部はこれ自体がスポッタ(spotter)であり得る。関連技術がMICROARRAY BIOCHIP TECHNOLOGY,Chapter 2 − Microfluidic Technologies and Instrumentation for Printing DNA Microarrays,Mark Schena(Editor),Telechem International,Eaton Publishing,ISBN 1−881299−3 7−6(2000)に記載される。
【0167】
幾つかの実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、結晶化のための、特には、X線結晶学ベースのタンパク構造決定において用いるためのタンパク質サンプルの調製に有用である。本発明は高処理能力タンパク質結晶化法に関連して用いるためのサンプルの調製に特に適する。これらの方法は、典型的には、試験する結晶化条件につき比較的濃縮された純粋タンパク質を少量、例えば、1μLのオーダーで必要とする。高処理能力結晶化を実施するための機器および試薬は、例えば、Hampton Research Corp.(Aliso Viejo、Calif)、RoboDesign International Inc.(Carlsbad、Calif.)、Genomic Solutions、Inc.(Ann Arbor、Mich.)およびCorning Life Sciences(Kennebunk、Me.)から入手可能である。典型的には、タンパク質結晶化は、タンパク質を母液と混合してタンパク質液滴を形成した後、この液滴を観察して適切な結晶、例えばシッティングドロップ(sitting drop)またはハンギングドロップ(hanging drop)法、が形成されるかどうかを確認することを含む。適切な結晶化条件の決定が依然としてほとんど経験主義であるため、通常は、異なる条件多数の下での結晶化についてタンパク質を試験し、例えば、幾つかの異なる候補母液を用いる。タンパク質は、母液との混合に先立ち、チャンネル抽出によって精製することができる。サンプルは中間保持容器に収集することができ、次にこの容器からウェルに移送して母液と混合する。もしくは、タンパク質液滴をチャンネルからウェルに直接分配することもできる。本発明は、タンパク質の液滴をウェル、例えば、マルチウェルプレート(例えば、94、384ウェル等)、例えば、Corning(Corning Life Sciences、Kennebunk Me.)からのCrystalEX 384プレートの幾つかのウェルに導入する、高処理能力形態における使用に特に適する。タンパク質液滴および/または母液は、高精度液体分配システム、例えば、Cartesian.Dispensing System Honeybee(Genomic Solutions,Inc.、Ann Arbor、Mich.)を用いてマイクロウェルに分配することができる。高処理能力形態においては、例えば、高処理能力結晶イメージャ、例えば、RoboMicroscope III(RoboDesign International Inc.、Carlsbad、Calif)を用いて、結晶試験分析のプロセスを自動化することが望ましい。
【0168】
本発明のある実施形態と共に用いるのに適する他の分析技術には、表面固定化アッセイ、免疫学的アッセイ、様々なリガンド置換/競合アッセイ、直接遺伝子試験、生物物理学的方法、直接力測定、NMR、電子顕微鏡法(cryo−EMを含む。)、微量比色、質量分析、IRおよび他の方法、例えば、結合検出チップの脈絡において論じられたものであるが非チップの脈絡において用いることもできるものが含まれる。
【0169】
本発明に従い、当分野の技術内にある通常の化学、生物学および分析技術を用いることができる。このような技術は文献において十分に説明される。例えば、Antibody Purification Handbook,Amersham Biosciences,Edition AB,18−1037−46(2002);Protein Purification Handbook,Amersham Biosciences,Edition AC,18−1132−29(2001);Affinity Chromatography Principles and Methods,Amersham Pharmacia Biotech,Edition AC,18−1022−29(2001);The Recombinant Protein Handbook,Amersham Pharmacia Biotech,Edition AB,18−1142−75(2002);およびProtein Purification:Principles,High Resolution Methods,and Applications,Jan−Christen Janson(Editor),Lars G.Ryden(Editor),Wiley,John & Sons,Incorporated(1989);Chromatography,5.sup.th edition,PART A:FUNDAMENTALS AND TECHNIQUES,editor:E.Heftmann,Elsevier Science Publishing Company,New York,pp A25(1992);ADVANCED CHROMATOGRAPHIC AND ELECTROMIGRATION METHODS IN BIOSCIENCES,editor:Z.Deyl,Elsevier Science BV,Amsterdam,The Netherlands,pp 528(1998);CHROMATOGRAPHY TODAY,Colin F.Poole and Salwa K.Poole,and Elsevier Science Publishing Company,New York,pp 394(1991);F.Dorwald ORGANIC SYNTHESIS ON SOLID PHASE,Wiley VCH Verlag Gmbh,Weinheim 2002を参照のこと。
【0170】
装置およびキット
本発明は、上述の固相抽出装置並びにこのような装置およびこの装置をここに記述される本発明の方法に従って用いるための取扱説明書を含むキットを提供する。
【0171】
ある実施形態において、SPE装置は微量溶出プレート、クロマトグラフィーカラム、薄層プレート、サンプル浄化装置、注入カートリッジ、マイクロタイタープレートおよびクロマトグラフィー準備装置からなる群より選択される。
【0172】
特定の実施形態において、SPE装置は微量溶出プレートまたはクロマトグラフィーカラムである。
【0173】
一実施形態において、SPE装置はマルチウェル微量溶出プレート、例えば、96−ウェル微量溶出プレートである。別の実施形態において、SPE装置はクロマトグラフィーカラム、例えば、マイクロボアカラム、キャピラリーカラムまたはナノカラムである。
【0174】
SPE装置にはアルミナ吸着剤、例えば、HPLC級アルミナ吸着剤が充填される。ある実施形態において、アルミナ吸着剤はアルミナA、アルミナNおよびアルミナBからなる群より選択される。特定の実施形態において、SPE装置はアルミナBが充填された微量溶出プレートである。
【0175】
ある実施形態において、アルミナ吸着剤粒子のサイズは約18から約32μmの範囲をとる。
【0176】
実施例
本発明を以下の例によってさらに説明するが、これらの例はさらに限定するものと解釈されてはならない。
【0177】
材料および方法
試験サンプルは、4種類の合成リン酸化ペプチド(トリプシンエノラーゼペプチドの修飾体であるT18_1P、T19_1P、T43_1PおよびT43_2P)を非修飾酵母エノラーゼトリプシンペプチドと1:10モル比で混合することによって調製した。試験サンプルは、SPE装置にロードするため、低pH(<1)、高有機溶媒(例えば、80%アセトニトリル)で戻した。SPEは同じ低pH、高有機溶媒で洗浄した。親和性結合した分析物は高塩基性pHの溶離液(>10)で溶出した。
【実施例1】
【0178】
この例においては、本発明によるアルミナB吸着剤を用いる固相抽出をIMAC NTA−Fe(III)法と比較した。ウェルあたり2.5mgアルミナB吸着剤(粒子サイズは18−32μmであった)を充填した96−ウェルSPE微量溶出プレート装置を調製した。(アルミナHPLC/UPLC粒子を、オンライン・リン酸化ペプチド単離とこれに続くナノLC−MS分析に適するカラムおよびトラッピングカラムに充填することもできる。)0.2から0.5%トリフルオロ酢酸(pH<1)極性有機溶媒(80%アセトニトリル)混合液を用いてサンプルを微量溶出プレートにロードした。0.3N水酸化アンモニウム溶液を用いて親和性吸着したリン酸化ペプチドを溶出した。
【0179】
A)対照としての試験サンプル;B)IMAC法を用いるサンプルの処理から得られる溶離液;およびC)本発明によるアルミナB吸着剤を用いる固相抽出から得られる溶離液に対して、MALDI−TOF質量分析を行った。分光結果を図1に示す。図1Aはリン酸化ペプチドが検出されないことを示す。図1Bおよび1Cの比較は、リン酸化ペプチドに対する最良の選択性が本発明によるアルミナB吸着剤を用いる固相抽出で達成されたことを示す(図1C)。
【実施例2】
【0180】
この例においては、本発明によるアルミナB吸着剤を用いる固相抽出をTiO親和性クロマトグラフィーと比較した。試験サンプルは上述の通りの調製した。A)試験サンプルをTiO親和性クロマトグラフィーに処することから得られる抽出物 B)試験サンプルを本発明によるアルミナB吸着剤を用いる固相抽出に処することから得られる抽出物に対して液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を行った。この分析の結果を図2に示す。図2Aおよび2Bの比較からわかるように、本発明の方法(図2B)はリン酸化ペプチドを単離される主要種として含有する著しく清浄な抽出物をもたらし、対照的に、TiO親和性クロマトグラフィー(図2A)は非リン酸化ペプチドの有意の共抽出を示す。
【実施例3】
【0181】
この例は、置換剤(Enhancer(商標)、Waters Corporation、Milford、MAから入手可能)を両方法のローディング工程で用いて選択性を改善したことを除いて、実施例2に記述される通りに行った:TiO親和性クロマトグラフィー法のローディング工程においては置換剤40mgを用い;および本発明のアルミナB法のローディング工程においては置換剤8mgを用いた。A)試験サンプルをTiO2親和性クロマトグラフィーに処することで得られる抽出物 B)試験サンプルを本発明によるアルミナB吸着剤を用いる固相抽出に処することから得られる抽出物に対してLC/MS分析を行った。この分析の結果を図3に示す。
【0182】
図3Aおよび3Bからわかるように、本発明の方法(図3B)は、置換剤を著しく少なく用いて、TiO親和性クロマトグラフィー(図3A)と比較して同等であるか、またはより良好な、リン酸化ペプチドに対する選択性をもたらす。置換剤をより少量用いることは、固相抽出の最中のリン酸化ペプチドの損失を減少させる。
【0183】
参照による組み込み
本出願を通して引用されるすべての参考文献(参考文献、発行特許、公開特許出願および同時係属特許出願を含む。)の内容は参照によりこれらの全体がここに明白に組み込まれる。
【0184】
等価物
当業者は本明細書に記述される発明の特定の実施形態の多くの等価物を認めるか、または、定型的な実験に収まるものを用いて、確認することができる。このような等価物は、以下の請求の範囲によって包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性高分子をサンプルから選択的に単離するための方法であって、
a)機能性高分子を含有するサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置に、機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;および
b)吸着した機能性高分子をアルミナ吸着剤から溶出し、それにより機能性高分子をサンプルから選択的に単離する工程、
を含む方法。
【請求項2】
複数の機能性高分子をサンプルから選択的に単離するための方法であって、
a)複数の機能性高分子を含むサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む第1固相抽出(SPE)装置に、複数の機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;および
b)吸着した機能性高分子をアルミナ吸着剤から溶出する工程;
c)少なくとも1つの画分を収集する工程;
d)少なくとも1つの画分を、充填アルミナ吸着剤を含む第2固相抽出(SPE)装置に、少なくとも2つの機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;および
c)少なくとも2つの吸着した機能性高分子を第2固相抽出(SPE)装置のアルミナ吸着剤から溶出し、それにより複数の機能性高分子をサンプルから選択的に単離する工程、
を含む方法。
【請求項3】
サンプルに含まれる機能性高分子を精製するための方法であって、
a)機能性高分子を含むサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置に、機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードすること、および
b)吸着した機能性高分子をアルミナ吸着剤から溶出し、それにより機能性高分子をサンプルから選択的に単離し、それにより機能性高分子を精製すること、
を含む方法。
【請求項4】
サンプル中の機能性高分子を検出するための方法であって、
a)機能性高分子を含むサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置に、機能性高分子がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;および
b)吸着した機能性高分子をアルミナ吸着剤から溶出し、それにより機能性高分子をサンプルから選択的に単離し、それにより機能性高分子を精製する工程;および
c)機能性高分子を検出する工程、
を含む方法。
【請求項5】
機能性高分子がペプチド、ポリペプチド、リン酸化ペプチド、糖ペプチド、タンパク質、リンタンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、リン脂質、合成または天然ポリマーおよびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
機能性高分子がペプチド、ポリペプチド、タンパク質、リン酸化ペプチドおよびオリゴヌクレオチドおよびリン脂質からなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
機能性高分子が高酸性側鎖を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
機能性高分子がリン酸、スルホン酸もしくはシアリレート基を含むペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ペプチドがリン酸化ペプチドである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
リン酸化ペプチドがT18_P、T19_1P、T43_1PおよびT43_2Pからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
機能性高分子が酸性ペプチド、中性ペプチドまたは塩基性ペプチドを上回って選択的に単離される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
機能性高分子が酸性ペプチドを上回って選択的に単離される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
機能性高分子がリン酸化ペプチド、シアル化糖ペプチド、スルホン化ペプチドまたはスルホン化糖ペプチドである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
機能性高分子がリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
機能性高分子がシアル化糖ペプチドである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
SPE装置が微量溶出プレート、クロマトグラフィーカラム、薄層プレート、サンプル浄化装置、注入カートリッジ、マイクロタイタープレートおよびクロマトグラフィー準備装置からなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
SPE装置が微量溶出プレートまたはクロマトグラフィーカラムである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
SPE装置が96−ウェル微量溶出プレートである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
SPE装置がクロマトグラフィーカラムである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
アルミナ吸着剤がアルミナA、アルミナNおよびアルミナBからなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
アルミナAが約4.5のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アルミナNが約7のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
アルミナBが約10のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
アルミナ吸着剤がアルミナBである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
アルミナ吸着剤がHPLC級である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
カラムがマイクロボアカラム、キャピラリーカラムもしくはナノカラムである、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
微量溶出プレートにHPLC級アルミナ吸着剤が充填される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
アルミナがアルミナBである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アルミナ吸着剤粒子のサイズが約18から約32μmの範囲をとる、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
サンプルが血液、尿、脊髄液、滑液、痰、精液、唾液、涙、胃液およびこれらの抽出物並びに/または希釈液/溶液からなる群より選択される生体液であるか、またはこれらから誘導される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
サンプルが化合物の生物学的複合体(complex biological of compounds)を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
サンプルが反応混合物、調製用HPLC、クロマトグラフィー溶離液もしくは画分または環境サンプルであるか、またはこれらから誘導される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
サンプルを、ローディングに先立ち、酸溶液/有機溶液の混合液に溶解する、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
酸溶液が約0から約4の範囲のpHを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
酸溶液が約1から約3の範囲のpHを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
酸溶液がトリフルオロ酢酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、パラ−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、重酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸もしくは酢酸の水溶液から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
有機溶液が有機溶媒または有機溶媒および非有機溶媒の混合液である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
有機溶媒がアセトニトリル、アセトン、エタノール、メタノール、2−プロパノール、エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、クメン、塩化メチレン、トリクロロメタン、四塩化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジン−2−オンおよびジメチルスルホキシドから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
非有機溶媒が水である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
吸着した機能性高分子を塩基性移動相溶液でアルミナ吸着剤から溶出する、請求項8に記載の方法。
【請求項41】
塩基性移動相溶液が水酸化アンモニウム溶液、トリエチルアミンもしくはリン酸ジアンモニウムから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
サンプルを第1pHを有する溶液に溶解し、固相抽出(SPE)装置にロードし、第2pHを有する移動相溶液で機能性高分子をアルミナから溶出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ローディング工程で置換剤を添加することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
置換剤が置換カルボン酸誘導体である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
機能性高分子を検出する工程をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
検出工程が質量分析もしくは液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
生物学的混合物を含むサンプルからリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質を選択的に単離するための方法であって、
a)酸および有機溶媒を含む溶液中にサンプルを溶解する工程;
b)溶解したサンプルを、充填アルミナ吸着剤を含む固相溶出プレートまたはカラムに、リン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質がアルミナ吸着剤に選択的に吸着するような条件下でロードする工程;
c)塩基性移動相を用いてリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質をアルミナから溶出する工程;および
d)単離されたリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはリン脂質を収集し、それによりリン酸化ペプチド、オリゴヌクレオチドもしくはリン脂質を選択的に単離する工程、
を含む方法。
【請求項48】
溶出プレートが微量溶出プレートである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
カラムがマイクロボアカラム、キャピラリーカラムまたはナノカラムである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
微量溶出プレートが96のウェルを含み、HPLC級アルミナ吸着剤で充填される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
アルミナがアルミナBである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
アルミナ吸着剤粒子のサイズが約18から約32μmの範囲をとる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
機能性高分子がリン酸化ペプチドである、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
機能性高分子がオリゴヌクレオチドである、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
機能性高分子がリン脂質である、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
充填アルミナ吸着剤を含む固相抽出(SPE)装置を含む固相抽出(SPE)装置および請求項1から55に記載のいずれか一項に記載の方法に従って用いるための取扱説明書を含むキット。
【請求項57】
SPE装置が微量溶出プレート、クロマトグラフィーカラム、薄層プレート、サンプル浄化装置、注入カートリッジ、マイクロタイタープレートおよびクロマトグラフィー準備装置からなる群より選択される、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
SPE装置が微量溶出プレートまたはクロマトグラフィーカラムである、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
SPE装置が96−ウェル微量溶出プレートである、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
SPE装置がクロマトグラフィーカラムである、請求項56に記載のキット。
【請求項61】
カラムがマイクロボアカラム、キャピラリーカラムまたはナノカラムである、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
アルミナ吸着剤がアルミナA、アルミナNおよびアルミナBからなる群より選択される、請求項56から61のいずれか一項に記載のキット。
【請求項63】
アルミナ吸着剤がHPLC級である、請求項56から61のいずれか一項に記載のキット。
【請求項64】
アルミナ吸着剤粒子のサイズが約18から約32μmの範囲をとる、請求項56から61のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−538299(P2010−538299A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524031(P2010−524031)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/010396
【国際公開番号】WO2009/032293
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(509131764)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (46)
【Fターム(参考)】