説明

機能水噴霧装置

【課題】機能水を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる機能水噴霧装置を提供することを目的とする。
【解決手段】機能水を生成する電解槽と、前記機能水を噴霧する噴霧装置と、前記電解槽により生成された気液混合状態の前記機能水から気体を分離する気液分離手段と、を備えたことを特徴とする機能水噴霧装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能水噴霧装置に関し、具体的には機能水を噴霧して、殺菌及び衛生性の維持を図る機能水噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機能水は、例えば、水道水を電解槽に通水することにより、殺菌作用をもつ次亜塩素酸を生成して作られることが知られている。水道水を電解して機能水を生成する場合、水素、酸素といった気体が次亜塩素酸と同時に生成される。
【0003】
このとき、電解槽に備えられた電極間に通電する電流を大きくすると、次亜塩素酸を高濃度化でき、強い殺菌作用を得ることができるが、電解により発生する水素や酸素などの気体の体積も増加するため、気液混合状態の機能水が生成される。
水道水を前述した電解槽に通水して生成した機能水を便器ボウル面に噴霧した場合、機能水の殺菌作用により便器ボウル面の衛生性を長期間維持することができ、汚れの付着が低減されるため掃除の回数を減らすことができる。
【0004】
しかし、この機能水を霧状に微細化する噴霧口を備えた噴霧装置から便器ボウル面に噴霧すると、機能水の生成時に発生した気体によって、噴霧装置から機能水が狙った範囲に噴霧されない場合がある。
【0005】
例えば、噴霧装置内に大きな気泡が発生すると、噴霧の噴霧口を気泡混じりの機能水が通過する際に、噴霧の向きが不安定になったり、機能水が便器ボウル面に不均一に噴霧されるおそれがある。そうすると、機能水が行き届かない場所ができ、不十分な殺菌となり、便器ボウル面に菌が繁殖しやすくなるおそれがある。また、意図しない方向に噴霧された機能水が便座や床を濡らし、濡れた便座に着座した人に不快感を与えたり、濡れた床が脱色等の作用で劣化が進行するおそれがある。
【0006】
これに対して、電解により発生した気泡を除去することができる水処理装置や、アルカリイオン水の清澄装置や、アルカリイオン水整水器がある(特許文献1〜3)。
しかしながら、特許文献1〜3に記載された装置などは、飲料用や殺菌洗浄用の利用が目的であるため、一般的に吐水流量が多い。そのため、気液混合状態の機能水を吐水口から吐水しても、前述した機能水が狙った範囲に噴霧されないという課題がそもそも発生しない。
【0007】
特許文献1〜3に記載された装置などが気泡を除去する目的は、白濁した水が使用者に不快感を与えること、気泡に含まれる有害な塩素ガスを除去すること、給水タンク内にガスが貯留されるのを防止することなどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−097854号公報
【特許文献2】特開平7−171568号公報
【特許文献3】特開平7−323282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、機能水を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる機能水噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、機能水を生成する電解槽と、前記機能水を噴霧する噴霧装置と、前記電解槽により生成された気液混合状態の前記機能水から気体を分離する気液分離手段と、を備えたことを特徴とする機能水噴霧装置である。
【0011】
請求項1記載の発明によれば、電解槽で生成した気液混合状態の機能水に含まれる気体を、気液分離手段により機能水から分離して、機能水を噴霧装置から噴霧することにより、気体が分離された状態の機能水が噴霧装置から噴霧されるので、狙いの範囲に万遍なく機能水を噴霧することができる。
【0012】
請求項2の発明は、前記気液分離手段によって分離された気体を系外に排出する気体排出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の機能水噴霧装置である。
請求項2の発明によれば、機能水から分離された気体は、気体排出手段により系外に排出されるので、系内に気体を蓄積するスペースを設けることなく、気体を分離した機能水を噴霧することができる。
【0013】
請求項3の発明は、前記気液分離手段と、前記気体排出手段と、が一体化されたことを特徴とする請求項2記載の機能水噴霧装置である。
請求項3記載の発明によれば、気液分離手段と気体排出手段とを一体化することで、気液混合状態の機能水から分離された気体を直ちに大気中へ排出することができ、機能水噴霧装置を小型化することができる。
【0014】
請求項4の発明は、前記気液分離手段に鉛直方向に接続された水路をさらに備え、前記気液分離手段は、気体の浮力を利用して気体と液体とを分離することを特徴とする請求項1記載の機能水噴霧装置である。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、電解により気液混合状態となった機能水は、気液分離手段に略鉛直に設けられた水路を下方に向けて流れる。略鉛直に設けられた水路の下端には噴霧装置が備えられており、噴霧装置から機能水が噴霧される。
このとき、機能水に含まれる気体は浮力によって略鉛直に設けられた水路を上昇し、略鉛直に設けられた水路の上端に集められ、水路の上端には気体槽が形成される。
【0016】
請求項5の発明は、前記気液分離手段は、集泡器を有することを特徴とする請求項1記載の機能水噴霧装置である。
請求項5記載の発明によれば、気液混合状態の機能水は、この集泡器を通過することにより気体が取り除かれる。
【0017】
請求項6の発明は、前記気体排出手段は、フロート弁を有することを特徴とする請求項2記載の機能水噴霧装置である。
請求項6記載の発明によれば、気液混合状態の機能水から分離された気体は、このフロート弁を備えた気体排出手段により大気中へ排出される。
【0018】
請求項7の発明は、前記気体排出手段は、前記機能水を透過させずに前記気体を透過させる性質の気液分離膜を有することを特徴とする請求項2記載の機能水噴霧装置である。 請求項7記載の発明によれば、気体排出手段が有する気液分離膜は、機能水を透過しないが、気体を透過させる構造をもつ膜で、気液混合状態の機能水に含まれる気体を、気液分離膜に透過させて大気中へ排出される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、機能水を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる機能水噴霧装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態にかかる機能水噴霧装置を表す斜視模式図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる機能水噴霧装置を温水洗浄便座に搭載した例を表すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる機能水噴霧装置を温水洗浄便座に搭載した際の水路構成の例のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかるフロート弁を備えた気体排出手段の断面模式図である。
【図5】本発明の第1の変形例にかかる気液分離手段、気体排出手段を一体化した機構の断面模式図である。
【図6】本発明の第2の変形例にかかる気液分離手段、第1の変形例にかかる気体排出手段の断面模式図である。
【図7】本変形例にかかる自動気体排出弁の断面模式図である。
【図8】本発明の第3の変形例にかかる集泡器を有する気液分離手段、第2の変形例にかかる気液分離膜を有する気体排出手段の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる機能水噴霧装置を表す斜視模式図である。
【0022】
給水源から電解槽1へ向けて水道水5を流動する水路31があり、その下流には電解槽1が設けてある。電解槽1は、その内部に陽極板及び陰極板を有し、コントローラからの通電の制御によって、内部にある水道水5を電気分解する機能を持つ。水道水5を電気分解すると水道水中に含まれる塩素との電気化学反応によって、次亜塩素酸や、気泡状の水素や酸素を含んだ気体が生成され、気液混合状態の機能水6となる。
【0023】
電解槽1の下流には、気液分離手段3が設けられ、気液分離手段3には略鉛直下方に噴霧装置2へ伸びる水路35が接続され、その水路35の下端には噴霧装置2が設けられる。本実施形態では、噴霧装置2の噴霧方向には便器ボウル面51がある。
【0024】
一方、気液分離手段3には略鉛直上方に気体排出手段4へ向けて伸びる水路37が接続され、その水路37の上端には気体排出手段4が設けられる。気体排出手段4は、弁や膜などを介して大気に解放されている。
【0025】
給水源から電解槽1へ向けて流動する水道水5は、電解槽1で電気分解され、気液混合状態の機能水6となる。気液混合状態の機能水6は、電解槽1から気液分離手段3まで流動される。気液分離手段3では、略鉛直上下方向に水路が分岐する。つまり、電解槽1に接続された水路33は、気液分離手段3において水路35と水路37とに分岐されている。
【0026】
気液混合状態の機能水6に含まれる気泡(気体)は、自らの浮力により略鉛直に設けられた水路37を上昇し、略鉛直に設けられた水路37の上端に設けてある気体排出手段4に到達する。なお、本願明細書において「鉛直」という範囲には、水平面からみて完全に垂直方向であることだけではなく、機能水に含まれる気泡(気体)が自らの浮力により上昇することができる程度の上下方向も包含されるものとする。なお、気液分離手段3と気体排出手段4は通水路を介さず、接触していてもよく、それぞれの機能が一体化された構造となっていてもよい。
【0027】
一方、気液分離手段3で気泡が水路37を上昇することにより抜気された機能水7は、気液分離手段3から略鉛直に設けられた水路35の下端に設けられた噴霧装置2に向けて流動する。抜気された機能水7は噴霧装置2に到達すると、便器ボウル面51に向けて噴霧される。
これにより、機能水7を噴霧装置2から噴霧する前に気泡は分離され、便器ボウル面51へ機能水7を安定して噴霧することが可能となる。つまり、本実施形態にかかる機能水噴霧装置は、機能水7を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる。
【0028】
気液混合状態の機能水6に含まれる気泡が、自らの浮力によって略鉛直に設けられた水路37を上昇して気液分離され、抜気した機能水7が得られるまでには気泡が上昇するための時間が数十秒程度必要となる。
便器ボウル面51の衛生性を長期間維持するには、次亜塩素酸を高濃度化した機能水を噴霧する必要がある。
【0029】
しかし、水道水5を電気分解して得られる次亜塩素酸の生成効率は、水道水5の水質に依存して変化するため、あらゆる地域の水道水で高濃度化した次亜塩素酸を短時間で大量に生成することは難しい。
そこで、高濃度化した次亜塩素酸を得る方法としては、例えば、噴霧装置2の噴霧流量を絞ることや、電解槽1の電極面積を大きくすることや、電解槽1の電極間に大電流を通電することなどが挙げられる。
【0030】
しかし、電解槽1の収納スペースやコスト、耐久性を考えた場合、電極面積の拡大や、大電流を通電することによる次亜塩素酸の高濃度化には限界があるため、噴霧装置2の噴霧流量を絞ることがより好ましい。
噴霧装置2の噴霧流量が小さい場合、略鉛直に設けられた水路35内の機能水7の流れも遅くなるため、気泡が上昇するための時間が十分に確保することができ、抜気した機能水7を得ることが可能となる。
【0031】
図2は、本発明の実施の形態にかかる機能水噴霧装置を温水洗浄便座に搭載した例を表すブロック図である。
本実施形態では、機能水噴霧装置を温水洗浄便座70に搭載し、噴霧装置2を便器50のリムの温水洗浄便座70の機能部側の近くに配置する。
【0032】
これにより、便器ボウル面51と噴霧装置2との距離が接近するため、便器ボウル面51に対し機能水を噴霧する場合に、意図する位置に機能水を噴霧することや、均一な噴霧を実施することが容易になり、便器ボウル面51の衛生性を長期間維持できる。なお、このとき、噴霧装置2は便座73、便ふた75を閉じた状態でも、便器ボウル面51に機能水を噴霧することができる。
【0033】
また、便器ボウル面51と噴霧装置2との距離が近いため、噴霧した機能水が風に流され、便器ボウル面51へ不均一な噴霧が実施されたり、便座73や床が濡れる恐れを低減することができる。
さらに、便座73、便ふた75を閉じた状態においても、便器ボウル面51に機能水を噴霧することができるため、噴霧した機能水が便器ボウル面51の外に飛散することを防止できる。
【0034】
噴霧装置2を可動式とし、噴霧装置2が温水洗浄便座70の機能部に収納及び、進出できる機構とすれば、機能水を噴霧しない場合には、噴霧装置2を温水洗浄便座70内に収納し、噴霧時のみ噴霧装置2を便器ボウル面51に進出させることができる。
これにより、噴霧装置2に汚物等が付着する恐れがなくなるため、噴霧装置2を衛生的に保つことが可能となり、温水洗浄便座70の清掃時に、噴霧装置2が邪魔になることがなく、外観を向上することができる。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態にかかる機能水噴霧装置を温水洗浄便座に搭載した際の水路構成の例のブロック図である。
バルブ701は給水源に接続され、バルブ701の下流には熱交換機703が設けられる。熱交換機703の下流には電解槽1があり、電解槽1の下流には三方弁705が設置されている。三方弁705の下流には2つの水路があり、気液分離手段3及び電磁ポンプ707へ接続される。電磁ポンプ707の下流には水路を介して流調・水路切替弁709が接続され、別々の水路を介して吐水ノズル711及び、ノズル洗浄室713へと接続される。
一方、気液分離手段3の下流には別々の水路35、37を介して噴霧装置2と気体排出手段4とが設けられる。
【0036】
給水源からバルブ701へ流動された水道水は、圧力を調整されて熱交換機703へ流動される。熱交換機703で水道水は加熱されると、電解槽1へと流動される。水道水を電解槽1で電気分解して生成された気液混合状態の機能水6は、電解槽1から三方弁705に向け流動すると、三方弁705で気液分離手段への水路33a及び、電磁ポンプ707への水路33bに切り替えられて流動する。
【0037】
気液分離手段3に到達した気液混合状態の機能水6は、気液分離手段3において気液分離される。気液分離手段3で抜気された機能水7は、噴霧装置2へ向けて流動し、噴霧装置2から便器ボウル面51へ噴霧される。気液分離手段3において気液混合状態の機能水から分離された気体は、気体排出手段4によって大気中へ排出される。
【0038】
一方、三方弁705から電磁ポンプ707へ向けて流動した気液混合状態の機能水は、電磁ポンプ707によって脈動を付与されて、流調・水路切替弁709へと流動される。脈動を付与された、気液混合状態の機能水は流調・水路切替弁709で流量を制御され、吐水ノズル711へ向かう水路38及び、吐水ノズル711を洗浄するノズル洗浄室713へ向かう水路39に切り替えられる。吐水ノズル711へ到達した機能水は吐水ノズル711から吐水され、吐水ノズル711を洗浄するノズル洗浄室713へ到達した機能水は吐水ノズル711を洗浄する。
【0039】
上記の水路構成とした場合、1つの電解槽1で便器ボウル面51への機能水噴霧及び、機能水でのおしり洗浄、吐水通水路の機能水洗浄、吐水ノズル711の機能水洗浄を実施することが可能となる。
なお、三方弁705を気液分離手段3の下流に配置すれば、抜気された機能水7を電磁ポンプ707に流動することが可能となり、ノズル洗浄を実施する際に、均一な機能水洗浄が行える。また、電解槽1において電気分解を実施しなければ、吐水ノズル711から水道水を吐水することや、水道水でノズル洗浄を実施することや、噴霧装置2から水道水を噴霧することができる。
【0040】
次に、本実施形態の気体排出手段および気液分離手段の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態にかかるフロート弁を備えた気体排出手段の断面模式図である。
【0042】
気体排出手段4は、略鉛直に設けられた水路8の上端にあり、この水路8は気体排出手段4の内部の下部に形成された第1空間T1に接続されている。第1空間T1の上方には気体収集室としての第2空間T2が形成されており、第1空間T1と第2空間T2とは多孔板16で仕切られている。第2空間T2の内部にはフロート弁9が収納されており、第2空間T2の上部には気体排出管15が接続されている。第2空間T2と気体排出管15の境界には多孔板14が配設されており、その下部にはシール部材13が設けられている。
【0043】
略鉛直に設けられた水路8を、自らの浮力によって上昇してきた気泡(気体11、12)は、気体排出手段4に流れ込むと、多孔板16を通過して第2空間T2に集められる。 これによって、機能水6に混合していた気体11、12は集められる。
また、第2空間T2内にはフロート弁9があり、このフロート弁9は、満水時及びその内部の気体が少ない場合には最上部へ浮上してシール部材13に接して機能水の漏れ出しを防止している。
【0044】
電解が進み、第2空間T2内の気体の体積が増加してくると、フロート弁9は、シール部材13を挟んだ気体排出手段4の内部圧力、フロート弁9のシール面面積と自重と浮力などの合力のバランスにより、下方へ下がって開弁状態となる。
このとき、気体は大気中へ排出され、排出とともにフロート弁9は再び上昇してシール部材13に接して閉弁状態に戻る。
【0045】
以上の様な開弁閉弁動作を気体の発生量に応じて繰り返すことによって、気液混合状態の機能水6に含まれる気体11、12を自動的に収集、排出できる。
これにより、噴霧装置2は、便器ボウル面51へ機能水を安定して噴霧することが可能となる。つまり、本実施形態にかかる機能水噴霧装置は、機能水7を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる。
【0046】
図5は、本発明の第1の変形例にかかる気液分離手段、気体排出手段を一体化した機構の断面模式図である。
第一空間T1の側部には、抜気した機能水を噴霧装置2へ流動する抜気水水路10が設けられる。この第1空間T1には、電解槽1の下流から図5に示す気液分離手段3と気体排出手段4の機能を一体化した機構へ向けた水路8の上端部が突入しているので、二重円筒形状になっている。
【0047】
気液混合状態の機能水6が、電解槽1の下流から図5に示す気液分離手段3と気体排出手段4の機能を一体化した機構へ向けた水路8を流動し、第1空間T1へ到達すると、機能水6に含まれる気泡(気体11、12)は、自らの浮力によって上昇し、多孔板16を通過して第2空間T2に集められる。
【0048】
これによって抜気された機能水は抜気水水路10を通り、抜気水水路10端に設けられた噴霧装置2から噴霧される。
これにより、噴霧装置2は、便器ボウル面51へ機能水7を安定して噴霧することが可能となる。つまり、本実施形態にかかる機能水噴霧装置は、機能水7を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる。
【0049】
図6は、本発明の第2の変形例にかかる気液分離手段、第1の変形例にかかる気体排出手段の断面模式図である。
また、図7は、本変形例にかかる自動気体排出弁の断面模式図である。
なお、図7(a)は、排出口が閉状態の場合を表す断面模式図であり、図7(b)は、排出口が開状態の場合を表す断面模式図である。
【0050】
気液分離手段17は、図6に示すように上下を閉じた筒状の筐体17aと、この筐体17a内に配置した筒状のフィルタ17bと、を有する。
また筐体17aには、その基底部に、抜気した機能水の通水路100を形成する配管100aを接続してあるとともに、頂部に開口17dを形成してあり、そこに、フィルタ17bで除去した気体を自動的に機能水の通水路100外へ排出するための自動気体排出弁18を接続してある。
【0051】
またフィルタ17bの筒の上端は、蓋体17cによって閉じてあるとともに、下端は、筐体17aの底面に形成した仕切り17e、17fと接続してあり、これによって筐体17a内は、抜気した機能水の通水路の上流側(図において左側、およびフィルタ17bの筒の外側)と、下流側(図において右側、およびフィルタ17bの筒の内側)とに仕切ってある。
【0052】
フィルタ17bは、天然あるいは化学繊維製の不織布などの多孔質体、とくに電解水に対して耐性を有するポリ塩化ビニルやポリオレフィン(ポリエチレン)製の多孔質体にて形成してあるとともに、その開口径を、ポンプを作動させることで抜気した機能水の通水路に発生する、あらかじめ設定された水圧が筒の外側に加わった際に、水は筒の内側に通すが、水中に混入した気体は通さない大きさに設定してある。
【0053】
上記気液分離手段17においては、図中に実線の矢印で示すように抜気した機能水の通水路の上流側から電解処理した水が供給されると、当該水が、まず筐体17a内の、フィルタ17bによって仕切られた筒の外側の領域に流入したのち、フィルタ17bを通して筒の内側に流入する。
【0054】
ところが、水に混入した気体は、上述したフィルタ17bの機能によって筒の外側に留め置かれる。また、筒の外側に留め置かれた気体は、自身の持つ浮力によって、筐体17aの頂部の開口17dを通して自動気体排出弁18内に流入する。
【0055】
自動気体排出弁18は、図7(a)、(b)に示すように、上記開口17dを介して筐体17a内と繋がれた、上を閉じた筒状の筐体18aと、この筐体18a内に上下動自在に配置したフロート18bと、筐体18aの頂部に形成した気体の排出口18cと、フロート18bの上下動に応じて排出口18cを閉じる〔図7(a)〕、または開く〔図7(b)〕ための、リンク機構18dつきの蓋体18eと、を備える。
【0056】
気液分離手段17によって機能水から分離された気体gは、前記のように自身の持つ浮力によって少しずつ、開口17dを通して自動気体排出弁18内に流入した後、筐体18aとフロート18bとの隙間を通して、当該筐体18a内の、フロート18bより上の領域に移動する。
【0057】
図7(a)に示すようにフロート18bが上昇位置にあり、蓋体18eが排出口18cを閉じた閉状態において気体gの流入、移動が続くと、当該筐体18a内の、フロート18bより上の領域に気体gが徐々に蓄積されてその内圧が徐々に上昇し、それに伴ってフロート18bが徐々に下降を開始する。
そしてフロート18bが図7(b)に示す位置まで下降すると、リンク機構18dによって蓋体18eが回動し、排出口18cが開かれて開状態となる。そうすると気体gの内圧が低下するため、今度は機能水の水圧によってフロート18bが徐々に上昇を開始し、それに伴って筐体18a内の、フロート18bより上の領域に蓄積された気体gが、排出口18cを通して大気中に排出される。
【0058】
そして気体gの排出が進んで、フロート18bが図7(a)に示す位置まで上昇すると、リンク機構18dによって蓋体18eが回動して排出口18cを閉じるため、再び閉状態となって気体gの蓄積が開始される。
【0059】
自動気体排出弁18は、以上の動作を繰り返すことによって、気体gを自動的に大気中に排出する働きをする。
これにより、噴霧装置2は、便器ボウル面51へ機能水を安定して噴霧することが可能となる。つまり、本実施形態にかかる機能水噴霧装置は、機能水7を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる。
【0060】
図8は、本発明の第3の変形例にかかる集泡器を有する気液分離手段、第2の変形例にかかる気液分離膜を有する気体排出手段の模式斜視図である。
給水源から電解槽1へ向けて水道水5を流動する水路31があり、その下流には電解槽1が設けてある。電解槽1の下流の水路33には集泡器19が接続され、集泡器19と大気とは気液分離膜20で隔てられる。集泡器19の下流の水路35の端には噴霧装置2が設けられる。
【0061】
集泡器は集泡機能を有するものであればいずれでもよく、フィルタを使用する集泡器に限定されるものではない。例えば、オリフィスにより水圧を急激に降下させることによって、集泡機能を有する集泡器も挙げられる。フィルタを使った集泡器において、フィルタについては通常知られるポリアミド、ポリエステル及びポリプロピレンなどを素材とした不織布、その他の繊維状物、網状物又は多孔質体も使用できる。
【0062】
特に、ポリエステル不織布が好適である。例えば、使用される不織布は、繊度約0.1〜1000デニール程度、目付け約2〜20000g/m程度 が好ましい。フィルタ層の厚みは約2〜200mm程度が好ましいので、不織布を所望により約1〜100枚程度重ねてフィルター層を形成させる。
【0063】
電解槽1で電気分解され、気液混合状態となった機能水6は、集泡器19へ向けて流動される。集泡器19は水を透過させるが、気泡を透過できないため、抜気された機能水7が集泡器19から噴霧装置2に向けた水路35に流動され、噴霧装置2から便器ボウル面51へ噴霧される。つまり、本変形例の気液分離手段は、集泡器19を有する。
【0064】
集泡器19によって集められた気体は、いずれ自らの浮力によって、集泡器19から離れる。集泡器19から離れた気体は通水路内にある壁面に設けられた、気液分離膜20に到達する。
【0065】
気液分離膜20はフッ素系樹脂製の多孔質体の疎水性膜や、脱気膜などで機能水を透過させずに気体を透過させることができる。つまり、本変形例の気体排出手段は、気液分離膜20を有する。
これにより、集泡器19によって集められた気体は気液分離膜20を透過して、大気中へ排出される。
【0066】
気液分離膜20は、脱気膜の場合、たとえば外径185μm、内径110μm程度の中空状の管を多数束ねた構造となっており、中空状の管の側壁には微小な孔が多数空いている。中空状の管の一方から入った水に含まれる気泡は、水が中空状の管の他方から抜ける間に、管の側壁の微小な孔を通して外部に抜ける。
【0067】
この孔を通過する溶存ガスの比率は、大気中に含まれるガス比率に関係し、大気中にほとんど含まれていない水素や塩素は、この孔を通過して容易に大気中へ移動する。
酸素も、そのガス比率が大気の20%程度であるため、速やかに大気中へ移動する。
水素、酸素、塩素等の微小気泡に取り込まれた炭酸も、この孔を通過して容易に大気中へ排出される。なお、除去効率を向上させるため、気相をロータリーポンプあるいはアスピレータ等を使って減圧する場合もある。
これにより、噴霧装置2は、噴霧する機能水から気体を分離することができ、便器ボウル面51へ機能水を安定して噴霧することが可能となる。つまり、本実施形態にかかる機能水噴霧装置は、機能水7を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる。
【0068】
本発明において、機能水を噴霧する対象は便器ボウル面に限定するものではなく、汚れの発生を抑制したり、衛生性を維持したい対象であればよい。
例えば、台所のシンクやお風呂の床などの衛生性維持に利用してもよい。
給水源から電解槽に向けて流動させる水は、水道水に限定するものではなく、たとえば井戸水のような液体でもよい。
気体排出手段が機能水に含まれていた気体を排出する先は、大気中に限定するものではなく、機能水が流動する水路系外であればよい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、機能水を噴霧する噴霧装置と、気液混合状態の機能水から気体を分離する気液分離手段と、分離した気体を排出する気体排出手段と、が設けられている。電解槽で生成した気液混合状態の機能水に含まれる気体を、気液分離手段により機能水から分離し、気体排出手段により気体を大気中へ排出して、機能水を噴霧装置から噴霧することができる。そのため、機能水を所定の範囲に万遍なく噴霧することができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、気液分離手段3や気体排出手段4などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや噴霧装置2の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0071】
1…電解槽、 2…噴霧装置、 3…気液分離手段、 4…気体排出手段、 5…水道水、 6…機能水(気液混合状態)、 7…機能水(抜気後)、 8…水路、 9…フロート弁、 10…抜気水水路、 11…気体、 12…気体 、 13…シール部材、 14…多孔板、 15…気体排出管、 16…多孔板、 T1…第1空間、 T2…第2空間、 17…気液分離手段、 17a…筐体、 17b…フィルタ、 17c…蓋体、 17d…開口、 17e、17f…仕切り、 18…自動気体排出弁、 18a…筐体、 18b…フロート、 18c…排出口、 18d…リンク機構、 18e…蓋体、 19…集泡器、 20…気液分離膜、 31、33、33a、33b、35、37、38、39…水路、 50…便器、 51…便器ボウル面、 70…温水洗浄便座、 73…便座、 75…便ふた、 100…通水路、 100a…配管、 701…バルブ、 703…熱交換機、 705…三方弁、 707…電磁ポンプ、 709…流調・水路切替弁、 711…吐水ノズル、 713…ノズル洗浄室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能水を生成する電解槽と、
前記機能水を噴霧する噴霧装置と、
前記電解槽により生成された気液混合状態の前記機能水から気体を分離する気液分離手段と、
を備えたことを特徴とする機能水噴霧装置。
【請求項2】
前記気液分離手段によって分離された気体を系外に排出する気体排出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の機能水噴霧装置。
【請求項3】
前記気液分離手段と、前記気体排出手段と、が一体化されたことを特徴とする請求項2記載の機能水噴霧装置。
【請求項4】
前記気液分離手段に鉛直方向に接続された水路をさらに備え、
前記気液分離手段は、気体の浮力を利用して気体と液体とを分離することを特徴とする請求項1記載の機能水噴霧装置。
【請求項5】
前記気液分離手段は、集泡器を有することを特徴とする請求項1記載の機能水噴霧装置。
【請求項6】
前記気体排出手段は、フロート弁を有することを特徴とする請求項2記載の機能水噴霧装置。
【請求項7】
前記気体排出手段は、前記機能水を透過させずに前記気体を透過させる性質の気液分離膜を有することを特徴とする請求項2記載の機能水噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−206691(P2011−206691A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77285(P2010−77285)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】