機電一体型の電動駆動装置
【課題】電力変換装置に設けられたコンデンサモジュールをより効果的に冷却することができる機電一体型の電動駆動装置の提供。
【解決手段】電動駆動装置1は回転電機900と電力変換装置200とを一体にしたものであって、回転電機900にはセンターブラケット909およびハウジング912によって流路919が形成されている。電力変換装置200はハウジング912の外周に固定される。電力変換装置200のケース12は、コンデンサモジュール500が配置される収納空間405と流路19とが形成された流路形成部12gを備えている。そして、電力変換装置200は、コンデンサモジュール500が配置された収納空間405の底面部405fがハウジング912の外周に接触するようにハウジング912に固定されている。
【解決手段】電動駆動装置1は回転電機900と電力変換装置200とを一体にしたものであって、回転電機900にはセンターブラケット909およびハウジング912によって流路919が形成されている。電力変換装置200はハウジング912の外周に固定される。電力変換装置200のケース12は、コンデンサモジュール500が配置される収納空間405と流路19とが形成された流路形成部12gを備えている。そして、電力変換装置200は、コンデンサモジュール500が配置された収納空間405の底面部405fがハウジング912の外周に接触するようにハウジング912に固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機とそれを駆動するための電力変換装置とが一体に設けられた機電一体型の電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機(以下では、モータ、ジェネレータ、及びモータジェネレータを総称して回転電機と呼ぶことにする)と電力変換装置とが一体に設けられた機電一体型の電動駆動装置として、例えば、特許文献1に記載されるものがある。特許文献1に記載の例では、モータハウジングに取り付けられるケース内に、ケース底部側からスイッチング素子パワーモジュール、平滑コンデンサ、制御基板の順に配置されている。スイッチング素子パワーモジュールは、ケースに設けられたヒートシンクに載置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−199363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転電機を制御する機電一体型の電力変換装置においては、スイッチング素子パワーモジュールだけでなく、電力変換装置に使用される電子部品(特に、温度上昇しやすい平滑コンデンサ)も合せて効率良く冷却することが望ましい。例えば、回転電機が発生する回転トルクにより車両を走行する電気自動車や、エンジンとモータの両方の出力に基づいて走行するハイブリット自動車では、電力変換装置が取り付けられた回転電機はエンジンルームに収納され、周囲環境温度が高くなりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による機電一体型の電動駆動装置は、ロータ、ステータ、および第1の冷媒流路が形成されてステータを保持するハウジングを有する回転電機と、インバータ回路を有しハウジングの外周に固定される電力変換装置と、を備えた機電一体型の電動駆動装置であって、電力変換装置は、インバータ回路の直流入力側に設けられた平滑用コンデンサと、第2の冷媒流路と平滑コンデンサが配置される凹部とが形成された流路形成部を有するインバータケースと、電力変換用のパワー半導体素子が収納された有底筒状のモジュールケースを有し、該モジュールケースの少なくとも一部が第2の冷媒流路内に配置される複数のパワー半導体モジュールと、を備え、電力変換装置は、平滑コンデンサが配置された凹部の底面部がハウジングの外周に接触するように該ハウジングに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、回転電機側の冷却系を利用することで、電力変換装置に設けられた回路部品であるコンデンサモジュールをより効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施の形態の電動駆動装置が搭載されたハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【図2】電力変換装置200を説明するブロック図である。
【図3】インバータ回路140の電気回路の構成を説明する図である。
【図4】本実施形態における電動駆動装置1の外観斜視図である。
【図5】回転電機900と電力変換装置200とを分離した状態を示す斜視図である。
【図6】回転電機900と電力変換装置200とを分離した状態を示す斜視図である。
【図7】回転電機900の断面図である。
【図8】電動駆動装置1における冷媒の流れを示す図である。
【図9】電力変換装置200の分解斜視図である。
【図10】電力変換装置200の分解斜視図である。
【図11】ケース12の平面図である。
【図12】ケース12の底面側を示す図である。
【図13】ケース12を底面側から見た斜視図である。
【図14】パワーモジュール300Uの斜視図である。
【図15】パワーモジュール300Uの斜視図である。
【図16】パワーモジュール300Uの回路構成を示す回路図である。
【図17】コンデンサモジュール500の外観斜視図である。
【図18】コンデンサモジュール500の外観斜視図である。
【図19】ケース12にパワーモジュール300U〜300W、コンデンサモジュール500、交流バスバー802が組みつけられた状態を示す平面図である。
【図20】パワーモジュール300U〜300Wの各端子と交流バスバー802U〜802Wとの接続状態を詳細に示す斜視図である。
【図21】電力変換装置200と、電力変換装置200が取り付けられている回転電機900の一部とを示す断面図である。
【図22】図21のA−A断面を示す図である。
【図23】電力変換装置200の内部構造を示す図であって、電力変換装置200からケース12と蓋8を削除した外観斜視図である。
【図24】ケース12を、入口配管13および出口配管14の中心で水平に断面した図である。
【図25】パワーモジュール300U〜300Wの配置を説明するための模式図である。
【図26】電動駆動装置1を軸方向に対して垂直に断面した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、ハイブリッド自動車(以下「HEV」と記述する)の制御ブロックを示す図である。エンジンEGNおよび回転電機900は車両の走行用トルクを発生する。また、回転電機900は回転トルクを発生するだけでなく、回転電機900に外部から加えられる機械エネルギーを電力に変換する機能を有する。
【0009】
回転電機900は、例えば同期機あるいは誘導機であり、上述のごとく、運転方法によりモータとしても発電機としても動作する。回転電機900を自動車に搭載する場合には、小型で高出力を得ることが望ましく、ネオジウムなどの磁石を使用した永久磁石型の同期電動機が適している。また、永久磁石型の同期電動機は誘導電動機に比べて回転子の発熱が少なく、この観点でも自動車用として優れている。
【0010】
エンジンEGNの出力側の出力トルクは、動力分配機構TSMを介して回転電機900に伝達される。そして、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいは回転電機900が発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達される。一方、回生制動の運転時には、車輪から回転トルクが回転電機900に伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は、後述するように電力変換装置200により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ136を充電する。充電された電力は、再び走行エネルギーとして使用される。
【0011】
次に、図2を参照して、電力変換装置200について説明する。インバータ回路140は、バッテリ136と直流コネクタ(不図示)を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140との相互において電力の授受が行われる。回転電機900をモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ(不図示)を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生する。その交流電力は、交流バスバー802(802U〜802W)を介して回転電機900に供給される。
【0012】
なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって回転電機900をモータとして作動させることにより、回転電機900の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、エンジン120の動力或いは車輪からの動力によって、回転電機900を発電機として作動させることにより、バッテリ136の充電を行う。
【0013】
また、図1では省略したが、バッテリ136はさらに補機用のモータを駆動するための電源としても使用される。補機用のモータとしては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータなどがある。バッテリ136から直流電力が補機用パワーモジュールに供給され、補機用パワーモジュールは交流電力を発生して補機用のモータに供給する。補機用パワーモジュールはインバータ回路140と基本的には同様の回路構成および機能を持ち、補機用のモータに供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。なお、電力変換装置200は、インバータ回路140に供給される直流電力を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
【0014】
電力変換装置200は、上位の制御装置(不図示)から指令を受けたり、あるいは上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための通信用のコネクタ21を備えている。電力変換装置200は、コネクタ21から入力される指令に基づいて制御回路172で回転電機900の制御量を演算する。さらに、電力変換装置200は、モータとして運転するか発電機として運転するかを演算し、演算結果に基づいて制御パルスを発生し、その制御パルスをドライバ回路174へ供給する。ドライバ回路174は、供給された制御パルスに基づいて、インバータ回路140を制御するための駆動パルスを発生する。
【0015】
次に、図3を用いてインバータ回路140の電気回路の構成を説明する。なお、以下で半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166とで、上下アームの直列回路150が構成される。インバータ回路140は、この直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相の3相に対応して備えている。
【0016】
これらの3相は、この実施の形態では回転電機900の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150は、直列回路の中点部分である中間電極169から交流電流を出力する。この中間電極169は、交流端子159を通して、回転電機900への交流電力線である以下に説明の交流バスバー802と接続される。
【0017】
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は、正極端子157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506に電気的に接続されている。また、下アームのIGBT330のエミッタ電極は、負極端子158を介してコンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504に電気的に接続されている。
【0018】
上述のように、制御回路172は上位の制御装置からコネクタ21を介して制御指令を受け、これに基づいて制御パルスを発生し、ドライバ回路174に供給する。この制御パルスは、インバータ回路140に設けられた各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための制御信号である。
【0019】
ドライバ回路174は、上記制御パルスに基づき、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための駆動パルスを各相のIGBT328やIGBT330に供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力は回転電機900に供給される。
【0020】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極155との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極165との間に電気的に接続されている。
【0021】
スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子としては、IGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
【0022】
コンデンサモジュール500は、正極側のコンデンサ端子506と負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とを備えている。電源端子509,508にはバッテリ136が接続されており、バッテリ136から高電圧の直流電力が入力され、コンデンサ端子506,504からインバータ回路140へ出力される。
【0023】
一方、インバータ回路140によって交流電力から変換された直流電力は、コンデンサ端子506,504からコンデンサモジュール500に供給され、電源端子509,508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
【0024】
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報としては、回転電機900に対して要求される目標トルク値、直列回路150から回転電機900に供給される電流値、及び回転電機900の回転子の磁極位置がある。
【0025】
目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180による検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、回転電機900に設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサ180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
【0026】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいて回転電機900のd軸,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電流指令値と、検出されたd軸,q軸の電流値との差分に基づいてd軸,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。
【0027】
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0028】
また、制御回路172内のマイコンは、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、直列回路150を保護している。このため、制御回路172にはセンシング情報が入力されている。例えば、各アームの信号用のエミッタ電極155及び信号用のエミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT330を過電流から保護する。
【0029】
直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0030】
図4は本実施形態における電動駆動装置1の外観斜視図である。電動駆動装置1は、図1に示した回転電機900と電力変換装置200とを一体構造としたものである。また、図5,6は回転電機900と電力変換装置200とを分離した状態を示したものである。詳細は後述するが、回転電機900は外装部品としてハウジング912、フロントブラケット908、リヤブラケット910を有しており、それらは、通常アルミに代表される金属のダイカストや鋳造で作られる。
【0031】
図4に示すように、電力変換装置200は、回転電機900の径方向位置であるハウジング912の外周面に固定されている。ハウジング912の軸方向両端にはフロントブラケット908、リヤブラケット910が設けられている。フロントブラケット908の中央からはロータシャフト920が突出している。
【0032】
電力変換装置200を構成する回路部品が収納されるケース12は、略立方体形状を成しており、上部開口部に蓋8が固定されている。詳細は後述するが、ケース12には冷却媒体を流すための流路が形成されており、ケース12の側壁には冷却媒体を流入するための入口配管13および冷却媒体を排出するための出口配管14が設けられている。上述したコネクタ21は、ケース12の側壁12bおよび蓋8に形成された開口12h,8a(図5,6参照)から外部に露出している。
【0033】
図5に示すように、ケース12が固定されるハウジング912の取り付け面912eには回転電機900の交流端子902U,902V,902Wが配置され、交流端子902U,902V,902Wに隣接するように凹部状の平坦な面912fが形成されている。ケース12をハウジング912に固定すると、ケース12の底面側に形成された底面部405fが面912fに接触するような構成になっている。なお、放熱シートやグリス等を挟んで間接的に接触するような構成としても良い。図6に示すように、底面部405fは、ケース12の四方に設けられた側壁12a〜12dの下端よりも突出するように形成されている。420は流路の底面側を覆っている下カバーである。
【0034】
このように、本実施の形態では、電力変換装置200と回転電機900とを一体化する際に、電力変換装置200のケース12が回転電機900のハウジング912のみに接触するような構成としている。そのため、回転電機900側においては、取付面精度を確保する為の機械加工はハウジング912にのみに行えば良く、その他のフロントブラケット908やリヤブラケット910には不要となるため生産性が向上する。
【0035】
ケース12の底面側には、上述した底面部405fとは別に、底面部405fよりも窪んでいる面12eが形成されている。この面12eには貫通穴12iが形成されており、この貫通穴12iを上側から下側へと交流バスバー802U,802V,802Wが折れ曲がっている。交流バスバー802U,802V,802Wは、ハウジング912の取り付け面912eに配置された交流端子902U,902V,902Wと接続されている。
【0036】
図7は、回転電機900の断面図である。3相分の電機子巻線が設けられたステータ940は、センターブラケット909に固定されている。ロータ930が固定されたロータシャフト920は、両端がフロントブラケット908およびリヤブラケット910に回転自在に保持されている。ロータ930は、ステータ940内で回転自在となるように半径方向に若干の隙間を設けて収納されている。
【0037】
センターブラケット909の外周には、溝がステータ940を囲むような形状で形成されている。センターブラケット909はハウジング912の内側に収納され、センターブラケット909の溝とハウジング912の内周面とにより流路919b,919cが形成される。流路919bと流路919cとは連結しており、一つの繋がった流路919を形成している。すなわち、センターブラケット909とハウジング912とにより、流路919を備えたモータハウジングが形成されている。そして、このような流路を備えたモータハウジングの内周側にステータ940を保持することにより、冷媒によるステータ940の冷却が行われている。交流端子902U〜902Wはハウジング912の面912eから突出するように設けられており、各々にはステータ940の対応する電機子巻線が接続されている。
【0038】
図8は電動駆動装置1における冷媒の流れを示す図であり、矢印は冷媒の流れを示している。冷媒は、電力変換装置200のケース12に設けられた入口配管13から供給され、ケース内に形成された流路(詳細は後述する)へと流入する。ケース12の流路を流れた冷媒は出口配管14から排出される。出口配管14は中継部材14aを介して回転電機900のハウジング912の外周に設けられた入口配管913と接続されており、出口配管14から排出された冷媒は、入口配管913から図7に示した流路919bへと流入する。そして、冷媒は流路919b、流路919cの順に流れ、ハウジング912の外周に設けられて流路919cに連結している出口配管914から排出される。
【0039】
このように、冷媒がケース12の流路および回転電機900の流路919b、919cを流れることで、ケース12内に設けられた回路部品および回転電機900が冷却されると共に、回転電機900のステータ940が冷却される。なお、本実施の形態では、図8に示すように、連通配管である中継部材14aを用いて冷媒の流れを電力変換装置200から回転電機900まで一つに連結したが、中継部材14aを使わずに電力変換装置200および回転電機900のそれぞれに、個別に冷媒を流入・排出させてもなんら問題は無い。また、冷媒としては、例えば水、LLC(ロング・ライフ・クーラント:不凍液)が用いられる場合が多いが、以下では冷却水として説明する
【0040】
次に、電力変換装置200の詳細構造について説明する。図9,10は電力変換装置200の分解斜視図である。ケース12は、平面形状が略正方形の直方体を成し、制御回路基板20、ドライバ回路基板22、交流バスバー802U,802V,802W等が収納される上部収納空間と、流路形成部12gが形成された下部収納空間とを有している。コネクタ21を有する制御回路基板20には図2に示した制御回路172が実装され、ドライバ回路基板22にはドライバ回路174が実装されている。制御回路基板20とドライバ回路基板22とはフラットケーブル25によって接続される。ケース12の上部開口は、蓋8によって覆われる。蓋8とケース12には、図4に示したようにコネクタ21用の開口8a,12hが形成されている。電力変換装置200内の制御回路を動作させる低電圧の直流電力は、コネクタ21から供給される。
【0041】
詳細は後述するが、流路形成部12gには冷却水が流れる流路19(図12参照)が形成されている。流路19は、ケース12の3つの側壁(図6に示した側壁12a〜12c)に対して平行に流れるコの字形状に形成されており、冷却水は、ケース12の側壁12dに設けられた入口配管13から流路内に流入し、側壁12dに設けられた出口配管14から流出する。なお、側壁12dは、配管13,14が設けられている部分が段差状に形成されている。
【0042】
図11はケース12の平面図であり、図12はケース12の底面側を示す図である。また、図13は、ケース12を底面側から見た斜視図である。流路19が形成された流路形成部12gの上面側には、流路19と連通する3つの開口部402a〜402cが形成されている。それらの開口部400a〜400cから、図3の直列回路150を構成する電子部品を内蔵したパワーモジュール300U,300V,300Wが流路19内に挿入される(図9参照)。パワーモジュール300UにはU相の直列回路150が内蔵され、パワーモジュール300VにはV相の直列回路150が内蔵され、パワーモジュール300WにはW相の直列回路150が内蔵されている。これら3つのパワーモジュール300U〜300Wは同一構成になっており、外観形状も同一形状である。開口部402a〜402cは、挿入されたパワーモジュール300U〜300Wのフランジ部によって塞がれる。
【0043】
流路形成部12gの中央部には、コンデンサモジュール500が収納される凹部である収納空間405が形成されている。収納空間405は、コの字形状の流路19によって囲まれるように形成されている。収納空間405の各側面405a〜405dは、底面部405f上に配置されたコンデンサモジュール500の側面とほぼ接触するように形成されている。収納空間405に収納されたコンデンサモジュール500は、流路19内を流れる冷却水によって冷却される。なお、コンデンサモジュール500の側面と側面405a〜405dとの接触状態をより向上させるために、コンデンサモジュール500の側面と側面405a〜405dとの隙間にゲルやグリースを充填するようにしても良い。コンデンサモジュール500に設けられた直流端子509、508は、ケース12の12jから突出し直流配線(不図示)でバッテリ136に接続される。
【0044】
図12,13に示すように、流路形成部12gの下側の面12eには流路19に沿うようにコの字形状の開口部404が形成されている。開口部404は、コの字形状の下カバー420によって塞がれる。下カバー420とケース12の面12eとの間にはシール部材409eが設けられ、気密性が保たれている。なお、収納空間405の底面部405fの外周面は、流路形成部12gの面12eよりも下側に突出している。
【0045】
コの字形状を成す流路19は、冷却水の流れる方向によって3つの流路区間19a,19b,19cに分けられる。詳細は後述するが、第1の流路区間19aは、配管13,14が設けられた側壁12dと対向する側壁12aに沿って設けられ、第2の流路区間19bは側壁12aの一方の側に隣接する側壁12bに沿って設けられ、第3の流路区間19cは側壁12aの他方の側に隣接する側壁12cに沿って設けられている。上流側の流路区間19bは、入口配管13が取り付けられた連通路12kと連通している。下流側の流路区間19cは、出口配管14が取り付けられた連通路12mと連通している。図12に示すように、冷却水は入口配管13から流路区間19bに流入し、破線矢印で示すように流路区間19b、流路区間19a、流路区間19cの順に流れ、出口配管14から流出される。
【0046】
上述した開口部402aは、長手方向が側壁12aと平行となるように、流路形成部上面の流路区間19aに対向する位置に形成されている。開口部402bは、長手方向が側壁12bと平行となるように、流路形成部上面の流路区間19bに対向する位置に形成されている。開口部402cは、長手方向が側壁12cと平行となるように、流路形成部上面の流路区間19cに対向する位置に形成されている。これらの開口部402a〜402cを通して、パワーモジュール300U〜300Wが流路19内に挿入される。パワーモジュール300U〜300Wとケース12との間にはシール部材409a〜409cが設けられ気密性が保たれている。
【0047】
図10に示すように、下カバー420には、上述した開口部402a〜402cと対向する位置に、ケース12の底部方向に突出する凸部406がそれぞれ形成されている。図9からも分かるように、これらの凸部406は流路19側から見ると窪みとなっており、開口部402a〜402cから挿入されたパワーモジュール300U〜300Wの下端部分が、これらの窪みに入り込む。ケース12は、開口部404と開口部402a〜402cとが対向するように形成されているので、アルミ鋳造により製造し易い構成になっている。
【0048】
コンデンサモジュール500の上方およびケース12の上部収納空間には、交流バスバー802U〜802Wが配置されている。各交流バスバー802U〜802Wの一端は対応するパワーモジュールの交流端子320Bに接続され、他端は流路形成部12gに形成された貫通穴12iを通ってハウジング912の取り付け面912eに設けられた交流端子902U〜902Wに接続される(図5参照)。貫通穴12iの部分においては、交流バスバー802U〜802Wと流路形成部12gとの間に絶縁シート950が設けられている。尚、交流バスバー802U〜802Wは、図示しない電流センサ180により電流値を測定できるようになっている。
【0049】
回転電機900の動作状況によって、交流バスバー802U〜802Wに回転電機900の交流端子902U〜902Wからの熱が伝熱し、交流バスバー802U〜802Wが炙られ高温になる場合がある。しかし本実施形態では、交流バスバー802U〜802Wが、流路19と収納空間405の間ではなく、流路形成部12gの側壁12aと流路19との間のに設けられた貫通穴12iを通って回転電機900の交流端子902U〜902Wと接続されている。このため、交流端子902U〜902Wから伝達される熱のコンデンサモジュール500への影響を低減することができる。
【0050】
上述したように、ドライバ回路基板22は、交流バスバー802U〜802Wの上方に配置され、制御回路基板20とドライバ回路基板22とはフラットケーブル25によって接続されている。このように、パワーモジュール300U〜300Wとドライバ回路基板22と制御回路基板20とがケース高さ方向に階層的に配置され、制御回路基板20が強電系のパワーモジュール300U〜300Wから最も遠い場所に配置されるので、制御回路基板20側にスイッチングノイズ等が混入するのを低減することができる。なお、ケース12はアルミ等の金属材で形成されている。
【0051】
図14乃至図16を用いて、インバータ回路140に使用されるパワーモジュール300U〜300Wの詳細構成を説明する。上記パワーモジュール300U〜300Wはいずれも同じ構造であり、代表してパワーモジュール300Uの構造を説明する。尚、図14乃至図16において、信号端子325Uは図3に開示したゲート電極154および信号用エミッタ電極155に対応し、信号端子325Lは図3に開示したゲート電極164およびエミッタ電極165に対応する。また、直流正極端子315Bは図3に開示した正極端子157と同一のものであり、直流負極端子319Bは図3に開示した負極端子158と同一のものである。さらにまた、交流端子320Bは図2に開示した交流端子159と同じものである。
【0052】
図16は、パワーモジュール300Uの回路構成を示す回路図である。上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極は、導体板315を介して接続される。同様に、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極は、導体板320を介して接続される。また、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極は、導体板318を介して接続される。同様に、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極は、導体板319を介して接続される。導体板318と320は中間電極329によって接続される。こうした回路構成により上下アーム直列回路が形成される。
【0053】
図14,15に示すCAN型冷却器である有底筒状のモジュールケース304内には、図16に示した上下アームの直列回路150を構成するパワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)が収納されている。モジュールケース304内の隙間には封止樹脂351が充填され、収納されているパワー半導体素子等は封止樹脂351により封止されている。
【0054】
モジュールケース304は、電気伝導性を有する部材、例えばアルミ合金材料(Al,AlSi,AlSiC,Al−C等)で構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。有底筒状のモジュールケース304は、挿入口306以外に開口を設けない構造であり、挿入口306にはフランジ304Bが形成されている。また、図14,15に示されるように、扁平なモジュールケース304の対向する広い面は、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bを構成している。第1放熱面307Aおよび第2放熱面307Bには、複数のフィン305がそれぞれ均一に分布するように形成されている。
【0055】
モジュールケース304内の各パワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)は、これらの放熱面307A,307Bに対向するように配置されている。第1放熱面307Aと第2放熱面307Bと繋ぐ3つの面(2つの側面と底面)は、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bより幅が狭い。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角の部分が図14,15に示す如く曲面を成していても良い。
【0056】
このような形状の金属製のケースを用いることで、モジュールケース304を水や油などの冷却媒体が流れる流路19内に挿入しても、冷媒に対するシールをフランジ304Bにて確保できるため、冷却媒体がモジュールケース304の内部に侵入するのを簡易な構成で防ぐことができる。
【0057】
モジュールケース304の挿入口306の外側には、コンデンサモジュール500と電気的に接続するための金属製の直流正極配線315Aおよび直流負極配線319Aが設けられており、その先端部に直流正極端子315B(157)と直流負極端子319B(158)がそれぞれ形成されている。また、回転電機900に交流電力を供給するための金属製の交流配線320Aが設けられており、その先端に交流端子320B(159)が形成されている。
【0058】
さらに、挿入口306の外側には、ドライバ回路174と電気的に接続するための金属製の信号配線324Uおよび324Lが設けられており、その先端部に信号端子325U(154,155)と信号端子325L(164,165)がそれぞれ形成されている。本実施形態では、図16に示す如く、信号配線324UはIGBT328と接続され、信号配線324LはIGBT330と接続される。
【0059】
直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lは、樹脂材料で成形された配線絶縁部608によって相互に絶縁された状態で、補助モールド体600として一体に成型される。配線絶縁部608は、各配線を支持するための支持部材としても作用し、これに用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。これにより、直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。
【0060】
補助モールド体600の直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lは、図16に示す如く一端が上下アーム直列回路に金属接合される。この金属接合には、たとえばTIG溶接などを用いることができる。一体に成型された補助モールド体600は、配線絶縁部608がネジ309によってモジュールケース304に固定される。
【0061】
その後、モジュールケース304内の隙間には封止樹脂351が充填され、上下アーム直列回路150を構成する電子部品はモジュールケース304内に封止される。その結果、金属接合された接続部も、封止樹脂351によりモジュールケース304内で封止される。これにより、接続部とモジュールケース304との間で必要な絶縁距離を安定的に確保することができるため、封止しない場合と比較してパワーモジュール300Uの小型化が実現できる。
【0062】
図17,18は、コンデンサモジュール500の外観斜視図である。コンデンサモジュール500内には複数のコンデンサセルが設けられている。コンデンサモジュール500の上面には、コンデンサ端子503a〜503cが突出するように設けられている。コンデンサ端子503a〜503cは、各パワーモジュール300U〜300Wの正極端子157及び負極端子158に対応するように設けられている。コンデンサ端子503a〜503cは同一形状をしている。各コンデンサ端子503a〜503cを構成する負極側コンデンサ端子504と正極側コンデンサ端子506との間には絶縁シート507が設けられ、端子間の絶縁が確保されている。
【0063】
コンデンサモジュール500の側面500d側には電源端子508(N),509(P)が設けられている。コンデンサモジュール500を図11に示す収納空間405の底面部405fに配置すると、コンデンサモジュール500の側面500a,500b,500c,500dが流路形成部12gの収納空間405の側面405a,405b,405c,405dに対向する。
【0064】
図19は、ケース12にパワーモジュール300U〜300W、コンデンサモジュール500、交流バスバー802が組みつけられた状態を示す平面図である。収納空間405にコンデンサモジュール500が収納され、流路形成部12gの開口部402a〜402cにパワーモジュール300U〜300Wが挿入される。交流バスバー802U〜803Wの一端は、パワーモジュール300U〜300Wの交流端子320Bに接続されている。
【0065】
図20は、パワーモジュール300U〜300Wの直流正極端子315B、直流負極端子319B及び交流端子320B、コンデンサモジュール500の正極側コンデンサ端子506,負極側コンデンサ端子504、および交流バスバー802U〜802Wの接続部805の接続状態を、詳細に示す斜視図である。各パワーモジュール300U〜300Wとコンデンサモジュール500との接続部においては、直流正極端子315Bが正極側コンデンサ端子506溶接され、直流負極端子319Bが負極側コンデンサ端子504と溶接されている。また、パワーモジュール300U〜300Wと交流バスバー802U〜802Wとの接続部においては、交流端子320Bがバスバーの接続部805に溶接されている。尚、直流正極端子315B,直流負極端子319B,正極側コンデンサ端子506,負極側コンデンサ端子504,接続部805は先端が凹凸形状をしており、溶接時にこの凹凸部分に熱が集中するような形状となっている。
【0066】
図21〜23は、電動駆動装置1における電力変換装置200と回転電機900との接続構造を説明する図である。図21は、電力変換装置200と、電力変換装置200が取り付けられている回転電機900の一部とを示す断面図である。図22は、図21のA−A断面図である。図23は、電力変換装置200の内部構造を示す図であって、電力変換装置200からケース12と蓋8を削除した外観斜視図である。
【0067】
図23に示すように、パワーモジュール300U〜300Wの信号端子325U,325Lは、パワーモジュール300U〜300Wの上方(上部収納空間)に配置されたドライバ回路基板22のスルーホールに挿入され、半田等で接続されている。これにより図3に示した上アームのゲート電極154および信号用エミッタ電極155と下アームのゲート電極164および信号用エミッタ電極165がドライバ回路174に接続される。
【0068】
交流バスバー802U〜802Wは、図19,20に示すように、それらの一端に設けられた接続部805が対応するパワーモジュール300U〜300Wの交流端子320Bに接続されている。これらの交流バスバー802U〜802Wは、図21,23に示すように、パワーモジュール300U〜300Wの交流端子320Bから流路形成部12gに形成された貫通穴12iの方向に引き延ばされ、その貫通穴12iの部分でケース12底面方向へL字形状に折り曲げられている。そして、折り曲げられた各交流バスバー802U〜802Wの端部は、ボルト905により交流端子902U〜902Wに固定されている。
【0069】
図22に示すように、交流端子902U〜902Wには回転電機900の3相電機子巻線が接続されている。そのため、本実施の形態のように交流バスバー802U〜802Wを交流端子902U〜902Wに直に接続する構造の場合、3相電機子巻線からの伝熱で交流バスバー802U〜802Wが炙られるおそれがある。
【0070】
ところが、本実施の形態では、交流バスバー802U〜Wと交流端子902U〜Wとの接続位置が、コの字形状流路19の外側の領域、すなわち、図12の領域BCと領域ADとで示される矩形領域よりも外側の領域に設けられている。そのため、高温となった交流バスバー802U〜802Wとコンデンサモジュール500との間に冷却水の流れる流路19が形成されているため、コンデンサモジュール500への熱影響を低減することができる。
【0071】
さらに、本実施の形態では、図21に示す貫通穴12iの領域において、交流バスバー802U〜802Wを、絶縁シート950のような絶縁部材を介して流路形成部12gに接触させるようにした。このような構造とすることで、回転電機900の3相電機子巻線からの伝熱があったとしても、その熱は接触している流路形成部12gから流路19を流れる冷却水へと放熱され、交流バスバー802U〜802Wの温度上昇を抑えることができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、交流端子902U〜902Wの配置の都合上、パワーモジュール300Vが配置されている部分の流路19の外側において交流バスバー802U〜802Wを流路形成部12gに間接接触させたが、接触場所はここに限定されるものではない。例えば、交流端子902U〜902Wの位置が側壁12bの側にあった場合、開口部402bの外側に交流バスバー802U〜802Wを通す貫通穴を形成し、その部分において流路形成部12gに接触させるようにする。すなわち、流路19の外側において、交流バスバー802U〜802Wと交流端子902U〜902Wとの接続を行わせる。
【0073】
なお、本実施の形態では略L字状の交流バスバー802U〜802Wをそれぞれ一つの部材としたが、複数の部材を繋いで構成してもかまわない。また不図示の電流センサ180などを通過してもなんら問題は無い。一般に、交流バスバー802U〜802Wは回転電機900を駆動する為の電流が流れるので高温になりやすく、周辺の部材に熱の影響を与えてしまうことがある。特に、コンデンサモジュール500は、パワーモジュール300U〜300Wのように流路19の冷却水中に直接配置されているわけではないので、熱影響に関する注意が必要である。
【0074】
ところで、コンデンサモジュール500の側面500a〜500cは、流路19の近くの側面405a〜405cに近接して対向している。そのため、側面500a〜500cからの放熱は効果的に行われるが、コンデンサモジュール500のその他の面については放熱の点で劣っている。
【0075】
そこで、本実施の形態では、コンデンサモジュール500の冷却性能をより向上させるために、コンデンサモジュール500の底面500fが接触している底面部405fの外周面を、冷却水によって冷却されているハウジング912の取り付け面912e、より正確には取り付け面912eに形成された面912fに接触させるようにした。その結果、コンデンサモジュール500は、ハウジング912によって形成される流路919(919b,919c)を流れる冷却水によっても冷却されることになる。
【0076】
図24は、パワーモジュール300U〜300Wおよびコンデンサモジュール500が配置されたケース12を、入口配管13および出口配管14の中心で水平に断面した図である。上述したように、ケース12の流路形成部12gにはコの字形状の流路19が形成されており、図示左側の側壁12bに沿って形成された流路区間19bには、U相のパワーモジュール300Uが配置されている。同様に、入口配管13および出口配管14が設けられた側壁12dと反対側の側壁12aに沿って形成された流路区間19aには、V相のパワーモジュール300Vが配置され、右側の側壁12cに沿って形成された流路区間19cにはW相のパワーモジュール300Wが配置されている。
【0077】
本実施の形態では、平面形状が略正方形のケース12の3つの側壁12a〜12cに沿ってコの字形状の流路19を形成し、パワーモジュール300U〜300Wを各流路区間19a〜19cに配置する際に、扁平なパワーモジュール300U〜300Wを各側壁12a〜12cに平行に配置するようにした。そして、流路19によって囲まれた中央領域(収納空間405)に、電装部品であるコンデンサモジュール500を収納するようにした。このような配置とすることにより、パワーモジュール300U〜300Wおよびコンデンサモジュール500が収納されるケース12の小型化が図れ、回転電機900のハウジング912への取り付けが容易になる効果がある。
【0078】
なお、3つのパワーモジュール300U〜300Wをコの字形状に配置する場合、図24に示すように、平行に配置された一対のパワーモジュール300U,300Wの間に配置されるパワーモジュール300Vの少なくとも一部が、パワーモジュール300Uと300Wとで挟まれた領域に入り込むように配置することで、より小型化を図ることができる。
【0079】
図25は、パワーモジュール300U〜300Wの配置を説明するための模式図である。なお、パワーモジュール300U〜300Wは同一構造、同一形状を有している。ケース12の側壁12b、12cの幅(平面視における長さ)は、少なくともパワーモジュール300U〜300Wの流路に沿った長さL1と連通路12k、12mの長さL2との合計程度が必要である。一方、側壁12aに関しては、少なくとも寸法L1程度が必要になる。もちろん、実際上は、図24に示すように、流路区間の接続部分など冷却水の流れを考慮して寸法を若干調整する必要がある。
【0080】
そのため、電力変換装置200の設置面積をなるべく小さくしようとした場合、平面視で見たときの形状(平面形状)を略正方形とすることで、電力変換装置200の小型化を図ることが考えられる。上述のように側壁12b,12cに沿った方向に関しては連通路が必要であるため、小型化の観点から、図25に示すように、一対のパワーモジュール300U,300Wの間の領域S1にパワーモジュール300Vの一部が含まれるように、パワーモジュール300Vを配置するのが好ましい。
【0081】
図25における配置スペースの図示横方向の寸法(側壁12aの幅寸法)は、パワーモジュールの厚さをL3とすると、少なくともL1+2・L3程度となる。そこで、縦方向の寸法L1+L2+(L3−L4)がL1+L3と同程度となるように、L3およびL4を設定すれば、平面視における面積をより小さくすることができ、略正方形とすることも可能となる。このとき流路区間19aは、図24に示すようにパワーモジュール300U,300Wの間の領域を通るように形成される。なお、図24に示す例では、コンデンサモジュール500の寸法による制約のために、パワーモジュール300U,300Wの間隔は、パワーモジュール300Vの寸法L1よりも若干大きくなっている。
【0082】
配管13,14の位置を一つの側壁12dに集約することで、入口配管13から流路区間19bまで、および流路区間19cから出口配管14までの冷却水の流れが直線状になるので、圧損を極力小さくすることができる。また、配管の突出による装置の設置スペースが大きくなるのを抑えることができると共に、車載性の向上を図ることができる。さらに、配管13,14を連通路12k,12mに圧入する際に、筐体の一面のみでの圧入作業であるため、作業性および生産性が向上する。
【0083】
また、コンデンサモジュール500の3辺を囲むように流路19が設けられているため、コンデンサモジュール500を効果的に冷却することができる。ところで、電動駆動装置1は、一般的にエンジンルーム内に配置される場合が多い。エンジンルーム内はエンジンや回転電機900などからの熱により比較的高温となるため、電力変換装置200に対する周囲からの熱侵入が問題となる。しかし、図24に示すように、コンデンサモジュール500は冷却水が流れる流路19によって3辺を囲まれているので、装置周囲からの熱侵入を効果的に遮断することができる。さらに、電力変換装置200を回転電機900のハウジング912に取り付ける際に、コンデンサモジュール500が載置される底面部405fの外周面を、冷却水が流れているハウジング912に接触させるようにしたので、コンデンサモジュール500の冷却効果をより高めることができる。
【0084】
図26は、電動駆動装置1を軸方向に対して垂直に断面した図であり、フロントブラケット908方向から見た断面図である。上述したように、流路形成部12gに形成された開口部402a〜402cは、パワーモジュール300U〜300Wのモジュールケース304に設けられたフランジ304Bによって塞がれる。パワーモジュール300U〜300Wは、放熱用のフィン305が形成された放熱面307A,307Bが流路19内に配置され、フィン305が設けられていない下端部分は、下カバー420に形成された凸部406の内側窪みの内部に収納されている。これにより、フィン305が形成されていない空間に冷却水が流れ込むのを防止することができ、冷却効果の低下を防止できるる。
【0085】
本実施の形態の機電一体の電動駆動装置1では、図26に示すように比較的に重量の重いコンデンサモジュール500を電力変換装置200の下部中央に配置している。そのため、電力変換装置200の重心バランスが良く、振動が加わった際に電力変換装置200部分が暴れ難く、機電一体構造に大変適している。
【0086】
図26において、電力変換装置200は、ケース12の側壁12a〜12cとは異なる底面部405fが、ハウジング912の回転電機半径方向に設けられた取付面912eの面912fに接触するように固定されている。底面部405fは面912fに直接接触していても良いし、不図示の放熱シート、グリス等を挟んで間接的に接触していても良い。
【0087】
図26に示すような冷却構造とすることで、コンデンサモジュール500の流路19に対向していない底面500fを、回転電機900を収納するハウジング912の流路919b、919cを流れる冷却水により冷却することができる。すなわち、コンデンサモジュール500は、電力変換装置200の流路19を流れる冷却水だけでなく、回転電機900の流路919b、919cを流れる冷却水も用いてダブルで冷却することができる。その結果、コンデンサモジュール500の冷却効果が向上する。
【0088】
次に、図24、26を用いて、電力変換装置200のハウジング912への取り付け位置に関して説明する。本実施の形態では、上述したように回転電機900の半径方向に電力変換装置200を取り付ける際に、ケース12の底面部405fをハウジング912の面912fに接触させるようにした。ハウジング912の流路919は、図26に示すようにハウジング912の周方向にリング状に形成されており、コンデンサモジュール500の熱の一部は、矢印Hのように底面部405f、面912fを通して流路919の冷却水へと放熱される。そのため、より好適にコンデンサモジュール500を冷却する為には、可能な限りケース12の底面部405fと回転電機900の軸芯Jとの半径方向距離を小さくしてハウジング912の流路919に近づけるのが良い。この時、コンデンサモジュール500の底面500fはバランスよく冷却する必要があり、底面500fから回転電機900の流路919b,919cまでの最小距離Rminと最大距離Rmaxとの差が小さくなるのが望ましい。
【0089】
そのため、回転電機900の中心軸の位置(回転電機900の軸芯Jから面912fに引いた垂線の足)が、面912fとケース12の底面部405fとの接触領域に入るように、ケース12をハウジング912に固定するのが良い。より好ましくは、底面部405fの中央位置(図26の左右方向位置に関する中央位置)と回転電機900の軸芯Jの位置とが一致するのが良い。そのような配置とすることで、コンデンサモジュール500の底面500fから回転電機900の流路919までの距離に関して、最小距離Rminと最大距離Rmaxとの差が極小となる。その結果、コンデンサモジュール500の底面500f内における冷却バランスが向上する。
【0090】
上記のように、コンデンサモジュール500の6面の内、3つの側面500a〜500cは、流路区間19a〜19cの冷却水により冷却され、底面500fについてはハウジング912を流れる冷却水を利用して冷却することができる。そして、残り二つの面500g,500d(図17参照)に関して検討すると以下のようになる。
【0091】
まず、側面500dを冷却するには、ケース12の側壁12dをハウジング912に設けられた取付面912eに固定する必要がある。しかし、側壁12dには冷却水の入口配管13と出口配管14が設けられているため、ケース12をハウジング912に取り付ける際の障害となり、最良の選択とは言えない。したがって、側壁12dと対向するコンデンサモジュールの側面500dはダブル冷却(流路19の冷却水による冷却と、流路919の冷却水による冷却)に不適である。
【0092】
また、面500gの上方側には、ドライバ回路基板22や制御回路基板20や、補助モールド体600の信号端子325U,325L及び直流正極端子315B、直流負極端子319B、交流端子320Bや、交流バスバー802U〜802W等が配置される。そのため、面500gを取付面912eの面912fに直接または間接に接触させるのは困難である。したがって、側壁12gと対向するコンデンサモジュールの側面500gはダブル冷却に不適である。
【0093】
一方、コンデンサモジュール500の底面500fの場合には、ケース12の底面部405fに接触しているので、底面部405fを介してハウジング912の面912fに容易に接触させることができる。これは、本実施の形態の電力変換装置200では、3つのパワーモジュール300U〜Wの形状が扁平状であって、図24に示すように、パワーモジュール300U〜300Wがケース12の側壁12a〜12cにそれぞれ平行になるように、流路19に沿って配置されている。そのような構成としたことで、コンデンサモジュール500の底面500f側に、ケース12の底面部405fおよび下カバー420が配置されるような構造とすることができる。その結果、底面部405fの外周面を下カバー420の凸部406よりも下方に突出させることで、回転電機900のハウジング912に容易に接触させることができ、コンデンサモジュール500の500f面をハウジング912を流れる冷却水を利用して冷却することができる。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態に記載の機電一体型の電動駆動装置1は以下のような効果を奏する。
【0095】
(1)電動駆動装置1は、ロータ930、ステータ940、および流路919が形成されてステータ940を保持するモータハウジング(センターブラケット909、ハウジング912)を有する回転電機900と、インバータ回路140を有しハウジング912の外周に固定される電力変換装置200と、を備える。そして、電力変換装置200は、インバータ回路140の直流入力側に設けられた平滑用のコンデンサモジュール500と、流路19とコンデンサモジュール500が配置される凹部である収納空間405とが形成された流路形成部12gを有するケース12と、電力変換用のパワー半導体素子が収納された有底筒状のモジュールケース304を有し、モジュールケース304の少なくとも一部が流路19内に配置される複数のパワーモジュール300U〜300Wと、を備え、電力変換装置200は、コンデンサモジュール500が配置された収納空間405の底面部405fがハウジング912の外周に接触するように該ハウジング912に固定されている。
【0096】
そのため、コンデンサモジュール500は、流路形成部12gの流路19を流れる冷媒によって冷却されると共に、底面部405fおよびハウジング912を介して流路919を流れる冷媒によっても冷却されることになる。その結果、コンデンサモジュール500に対する冷却性能を向上させることができる。
【0097】
なお、上述した実施形態では、モータハウジングをセンターブラケット909とハウジング912とで構成して流路919を形成したが、モータハウジングを一部品としても構わない。また、交流バスバー802U〜802Wを回転電機900の交流端子902U〜902Wに直結しているが、直結する代わりにケーブルを介して接続した構成でも、同様の作用効果を奏することができる。
【0098】
(2)また、流路19は、コンデンサモジュール500を挟むように平行に設けられた流路区間19b,19cと、流路区間19b,19cの相対する一端同士を連通する流路区間19aと、を備え、収納空間405が、流路区間19a〜19cによって囲まれた領域に配置されるようにするのが好ましい。このように、コンデンサモジュール500が配置される収納空間405を流路区間19a〜19cによって囲むことにより、コンデンサモジュール500から流路19を流れる冷媒への放熱効果を高めることができると共に、電力変換装置200の周囲からコンデンサモジュール500へ侵入する熱を低減することができる。
【0099】
なお、上述した実施の形態では、3つの流路区間19a〜19cの各々にパワーモジュールを配置したが、流路区間19bに2つ、流路区間19cに1つ配置するような構成でも良い。また、3相に限らず2相や6相等の場合にも同様に適用することができる。
【0100】
(3)さらに、ハウジング912の外周には回転電機900の電機子巻線に接続された複数の交流端子902U〜902Wがそれぞれ配置され、電力変換装置200に設けられた交流バスバー802U〜802Wは、流路19を跨ぐようにパワーモジュール300U〜300Wから流路区間19a〜19cによって囲まれた領域の外側の領域まで延在し、該外側の領域において交流端子と接続されている。
【0101】
交流端子902U〜902Wは電機子巻線の発熱により高温となり、交流端子902U〜902Wに接続された交流バスバー802U〜802Wも温度が上昇する。しかし、接続部分が、流路区間19a〜19cによって囲まれた領域の外側の領域であるため、接続部分からの輻射熱は流路形成部12gによって遮られ、コンデンサモジュール500への熱的な影響を防止することができる。
【0102】
(4)また、交流端子902U〜902Wに接続された交流バスバー802U〜802Wを、図21に示すように外側の領域において、電気的絶縁性部材である絶縁シート950を介して流路形成部12gに接触させるようにしても良い。そうすることで交流バスバー802U〜802Wが冷却され、交流バスバー802U〜802Wの温度上昇を、さらには、それによるコンデンサモジュール500への熱的な影響を低減することができる。
【0103】
(5)さらに、図26に示すように、電力変換装置200をハウジング912に固定する際に、は、回転電機900の軸芯から底面部405fが接触するハウジング912の面912fへ引いた垂線が底面部405fと交わるようにすることで、底面500fと流路919との距離が底面500f内においてより均一化され、底面500fをより均一に冷却することができる。また、底面500fと流路919との平均距離もより小さくなるので、流路919の冷媒による冷却効率をより高めることができる。
【0104】
(6)また、有底筒状のモジュールケース304の底部がケース12のハウジング固定方向を向くように、パワーモジュール300U〜300Wを流路19内に配置するようにすると、パワーモジュール300U〜300Wの端子等が底面部405fと反対方向を向くので、容易に底面部405fをハウジング912の面912fに接触させることができる。
【0105】
(7)電力変換装置200を回転電機900のハウジング912に取り付ける際に、電力変換装置200がハウジング912のみに固定されるような構造とすることで、取付面精度確保のための機械加工はハウジング912のみに行えばよく、生産性が向上する。
【0106】
(8)流路919と流路19とを連通する連通配管である中継部材14aを備え、流路19に供給された冷媒が、中継部材14aを介して流路919へと導かれるようにすることで、冷却系が簡素化される。この場合、冷媒の流れの上流側に流路19を配置することで、電力変換装置200の冷却を効果的に行うことができる。
【0107】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では流路19はコの字形状に形成されているが、流路区間19b、19cのような平行な流路のみを設け、配管13,14が設けられていない側の端部をケース外まで貫通させ、両端部を配管で連通するようにしても良い。
【符号の説明】
【0108】
1:電動駆動装置、12:ケース、12a〜12d:側壁、12i:貫通穴、19,919,919b,919c:流路、19a〜19c:流路区間、20:制御回路基板、22:ドライバ回路基板、136:バッテリ、140:インバータ回路、200:電力変換装置、300U〜300W:パワーモジュール、304:モジュールケース、405:収納空間、405a〜405d:側面、405f:底面部、500:コンデンサモジュール、507,950:絶縁シート、802,802U〜802W:交流バスバー、900:回転電機、902U〜902W:交流端子、908:フロントブラケット、909:センターブラケット、910:リヤブラケット、912:ハウジング、930:ロータ、940:ステータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機とそれを駆動するための電力変換装置とが一体に設けられた機電一体型の電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機(以下では、モータ、ジェネレータ、及びモータジェネレータを総称して回転電機と呼ぶことにする)と電力変換装置とが一体に設けられた機電一体型の電動駆動装置として、例えば、特許文献1に記載されるものがある。特許文献1に記載の例では、モータハウジングに取り付けられるケース内に、ケース底部側からスイッチング素子パワーモジュール、平滑コンデンサ、制御基板の順に配置されている。スイッチング素子パワーモジュールは、ケースに設けられたヒートシンクに載置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−199363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転電機を制御する機電一体型の電力変換装置においては、スイッチング素子パワーモジュールだけでなく、電力変換装置に使用される電子部品(特に、温度上昇しやすい平滑コンデンサ)も合せて効率良く冷却することが望ましい。例えば、回転電機が発生する回転トルクにより車両を走行する電気自動車や、エンジンとモータの両方の出力に基づいて走行するハイブリット自動車では、電力変換装置が取り付けられた回転電機はエンジンルームに収納され、周囲環境温度が高くなりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による機電一体型の電動駆動装置は、ロータ、ステータ、および第1の冷媒流路が形成されてステータを保持するハウジングを有する回転電機と、インバータ回路を有しハウジングの外周に固定される電力変換装置と、を備えた機電一体型の電動駆動装置であって、電力変換装置は、インバータ回路の直流入力側に設けられた平滑用コンデンサと、第2の冷媒流路と平滑コンデンサが配置される凹部とが形成された流路形成部を有するインバータケースと、電力変換用のパワー半導体素子が収納された有底筒状のモジュールケースを有し、該モジュールケースの少なくとも一部が第2の冷媒流路内に配置される複数のパワー半導体モジュールと、を備え、電力変換装置は、平滑コンデンサが配置された凹部の底面部がハウジングの外周に接触するように該ハウジングに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、回転電機側の冷却系を利用することで、電力変換装置に設けられた回路部品であるコンデンサモジュールをより効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施の形態の電動駆動装置が搭載されたハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【図2】電力変換装置200を説明するブロック図である。
【図3】インバータ回路140の電気回路の構成を説明する図である。
【図4】本実施形態における電動駆動装置1の外観斜視図である。
【図5】回転電機900と電力変換装置200とを分離した状態を示す斜視図である。
【図6】回転電機900と電力変換装置200とを分離した状態を示す斜視図である。
【図7】回転電機900の断面図である。
【図8】電動駆動装置1における冷媒の流れを示す図である。
【図9】電力変換装置200の分解斜視図である。
【図10】電力変換装置200の分解斜視図である。
【図11】ケース12の平面図である。
【図12】ケース12の底面側を示す図である。
【図13】ケース12を底面側から見た斜視図である。
【図14】パワーモジュール300Uの斜視図である。
【図15】パワーモジュール300Uの斜視図である。
【図16】パワーモジュール300Uの回路構成を示す回路図である。
【図17】コンデンサモジュール500の外観斜視図である。
【図18】コンデンサモジュール500の外観斜視図である。
【図19】ケース12にパワーモジュール300U〜300W、コンデンサモジュール500、交流バスバー802が組みつけられた状態を示す平面図である。
【図20】パワーモジュール300U〜300Wの各端子と交流バスバー802U〜802Wとの接続状態を詳細に示す斜視図である。
【図21】電力変換装置200と、電力変換装置200が取り付けられている回転電機900の一部とを示す断面図である。
【図22】図21のA−A断面を示す図である。
【図23】電力変換装置200の内部構造を示す図であって、電力変換装置200からケース12と蓋8を削除した外観斜視図である。
【図24】ケース12を、入口配管13および出口配管14の中心で水平に断面した図である。
【図25】パワーモジュール300U〜300Wの配置を説明するための模式図である。
【図26】電動駆動装置1を軸方向に対して垂直に断面した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、ハイブリッド自動車(以下「HEV」と記述する)の制御ブロックを示す図である。エンジンEGNおよび回転電機900は車両の走行用トルクを発生する。また、回転電機900は回転トルクを発生するだけでなく、回転電機900に外部から加えられる機械エネルギーを電力に変換する機能を有する。
【0009】
回転電機900は、例えば同期機あるいは誘導機であり、上述のごとく、運転方法によりモータとしても発電機としても動作する。回転電機900を自動車に搭載する場合には、小型で高出力を得ることが望ましく、ネオジウムなどの磁石を使用した永久磁石型の同期電動機が適している。また、永久磁石型の同期電動機は誘導電動機に比べて回転子の発熱が少なく、この観点でも自動車用として優れている。
【0010】
エンジンEGNの出力側の出力トルクは、動力分配機構TSMを介して回転電機900に伝達される。そして、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいは回転電機900が発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達される。一方、回生制動の運転時には、車輪から回転トルクが回転電機900に伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は、後述するように電力変換装置200により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ136を充電する。充電された電力は、再び走行エネルギーとして使用される。
【0011】
次に、図2を参照して、電力変換装置200について説明する。インバータ回路140は、バッテリ136と直流コネクタ(不図示)を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140との相互において電力の授受が行われる。回転電機900をモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ(不図示)を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生する。その交流電力は、交流バスバー802(802U〜802W)を介して回転電機900に供給される。
【0012】
なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって回転電機900をモータとして作動させることにより、回転電機900の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、エンジン120の動力或いは車輪からの動力によって、回転電機900を発電機として作動させることにより、バッテリ136の充電を行う。
【0013】
また、図1では省略したが、バッテリ136はさらに補機用のモータを駆動するための電源としても使用される。補機用のモータとしては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータなどがある。バッテリ136から直流電力が補機用パワーモジュールに供給され、補機用パワーモジュールは交流電力を発生して補機用のモータに供給する。補機用パワーモジュールはインバータ回路140と基本的には同様の回路構成および機能を持ち、補機用のモータに供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。なお、電力変換装置200は、インバータ回路140に供給される直流電力を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
【0014】
電力変換装置200は、上位の制御装置(不図示)から指令を受けたり、あるいは上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための通信用のコネクタ21を備えている。電力変換装置200は、コネクタ21から入力される指令に基づいて制御回路172で回転電機900の制御量を演算する。さらに、電力変換装置200は、モータとして運転するか発電機として運転するかを演算し、演算結果に基づいて制御パルスを発生し、その制御パルスをドライバ回路174へ供給する。ドライバ回路174は、供給された制御パルスに基づいて、インバータ回路140を制御するための駆動パルスを発生する。
【0015】
次に、図3を用いてインバータ回路140の電気回路の構成を説明する。なお、以下で半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166とで、上下アームの直列回路150が構成される。インバータ回路140は、この直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相の3相に対応して備えている。
【0016】
これらの3相は、この実施の形態では回転電機900の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150は、直列回路の中点部分である中間電極169から交流電流を出力する。この中間電極169は、交流端子159を通して、回転電機900への交流電力線である以下に説明の交流バスバー802と接続される。
【0017】
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は、正極端子157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506に電気的に接続されている。また、下アームのIGBT330のエミッタ電極は、負極端子158を介してコンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504に電気的に接続されている。
【0018】
上述のように、制御回路172は上位の制御装置からコネクタ21を介して制御指令を受け、これに基づいて制御パルスを発生し、ドライバ回路174に供給する。この制御パルスは、インバータ回路140に設けられた各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための制御信号である。
【0019】
ドライバ回路174は、上記制御パルスに基づき、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための駆動パルスを各相のIGBT328やIGBT330に供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力は回転電機900に供給される。
【0020】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極155との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極165との間に電気的に接続されている。
【0021】
スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子としては、IGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
【0022】
コンデンサモジュール500は、正極側のコンデンサ端子506と負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とを備えている。電源端子509,508にはバッテリ136が接続されており、バッテリ136から高電圧の直流電力が入力され、コンデンサ端子506,504からインバータ回路140へ出力される。
【0023】
一方、インバータ回路140によって交流電力から変換された直流電力は、コンデンサ端子506,504からコンデンサモジュール500に供給され、電源端子509,508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
【0024】
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報としては、回転電機900に対して要求される目標トルク値、直列回路150から回転電機900に供給される電流値、及び回転電機900の回転子の磁極位置がある。
【0025】
目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180による検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、回転電機900に設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサ180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
【0026】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいて回転電機900のd軸,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電流指令値と、検出されたd軸,q軸の電流値との差分に基づいてd軸,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。
【0027】
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0028】
また、制御回路172内のマイコンは、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、直列回路150を保護している。このため、制御回路172にはセンシング情報が入力されている。例えば、各アームの信号用のエミッタ電極155及び信号用のエミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT330を過電流から保護する。
【0029】
直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0030】
図4は本実施形態における電動駆動装置1の外観斜視図である。電動駆動装置1は、図1に示した回転電機900と電力変換装置200とを一体構造としたものである。また、図5,6は回転電機900と電力変換装置200とを分離した状態を示したものである。詳細は後述するが、回転電機900は外装部品としてハウジング912、フロントブラケット908、リヤブラケット910を有しており、それらは、通常アルミに代表される金属のダイカストや鋳造で作られる。
【0031】
図4に示すように、電力変換装置200は、回転電機900の径方向位置であるハウジング912の外周面に固定されている。ハウジング912の軸方向両端にはフロントブラケット908、リヤブラケット910が設けられている。フロントブラケット908の中央からはロータシャフト920が突出している。
【0032】
電力変換装置200を構成する回路部品が収納されるケース12は、略立方体形状を成しており、上部開口部に蓋8が固定されている。詳細は後述するが、ケース12には冷却媒体を流すための流路が形成されており、ケース12の側壁には冷却媒体を流入するための入口配管13および冷却媒体を排出するための出口配管14が設けられている。上述したコネクタ21は、ケース12の側壁12bおよび蓋8に形成された開口12h,8a(図5,6参照)から外部に露出している。
【0033】
図5に示すように、ケース12が固定されるハウジング912の取り付け面912eには回転電機900の交流端子902U,902V,902Wが配置され、交流端子902U,902V,902Wに隣接するように凹部状の平坦な面912fが形成されている。ケース12をハウジング912に固定すると、ケース12の底面側に形成された底面部405fが面912fに接触するような構成になっている。なお、放熱シートやグリス等を挟んで間接的に接触するような構成としても良い。図6に示すように、底面部405fは、ケース12の四方に設けられた側壁12a〜12dの下端よりも突出するように形成されている。420は流路の底面側を覆っている下カバーである。
【0034】
このように、本実施の形態では、電力変換装置200と回転電機900とを一体化する際に、電力変換装置200のケース12が回転電機900のハウジング912のみに接触するような構成としている。そのため、回転電機900側においては、取付面精度を確保する為の機械加工はハウジング912にのみに行えば良く、その他のフロントブラケット908やリヤブラケット910には不要となるため生産性が向上する。
【0035】
ケース12の底面側には、上述した底面部405fとは別に、底面部405fよりも窪んでいる面12eが形成されている。この面12eには貫通穴12iが形成されており、この貫通穴12iを上側から下側へと交流バスバー802U,802V,802Wが折れ曲がっている。交流バスバー802U,802V,802Wは、ハウジング912の取り付け面912eに配置された交流端子902U,902V,902Wと接続されている。
【0036】
図7は、回転電機900の断面図である。3相分の電機子巻線が設けられたステータ940は、センターブラケット909に固定されている。ロータ930が固定されたロータシャフト920は、両端がフロントブラケット908およびリヤブラケット910に回転自在に保持されている。ロータ930は、ステータ940内で回転自在となるように半径方向に若干の隙間を設けて収納されている。
【0037】
センターブラケット909の外周には、溝がステータ940を囲むような形状で形成されている。センターブラケット909はハウジング912の内側に収納され、センターブラケット909の溝とハウジング912の内周面とにより流路919b,919cが形成される。流路919bと流路919cとは連結しており、一つの繋がった流路919を形成している。すなわち、センターブラケット909とハウジング912とにより、流路919を備えたモータハウジングが形成されている。そして、このような流路を備えたモータハウジングの内周側にステータ940を保持することにより、冷媒によるステータ940の冷却が行われている。交流端子902U〜902Wはハウジング912の面912eから突出するように設けられており、各々にはステータ940の対応する電機子巻線が接続されている。
【0038】
図8は電動駆動装置1における冷媒の流れを示す図であり、矢印は冷媒の流れを示している。冷媒は、電力変換装置200のケース12に設けられた入口配管13から供給され、ケース内に形成された流路(詳細は後述する)へと流入する。ケース12の流路を流れた冷媒は出口配管14から排出される。出口配管14は中継部材14aを介して回転電機900のハウジング912の外周に設けられた入口配管913と接続されており、出口配管14から排出された冷媒は、入口配管913から図7に示した流路919bへと流入する。そして、冷媒は流路919b、流路919cの順に流れ、ハウジング912の外周に設けられて流路919cに連結している出口配管914から排出される。
【0039】
このように、冷媒がケース12の流路および回転電機900の流路919b、919cを流れることで、ケース12内に設けられた回路部品および回転電機900が冷却されると共に、回転電機900のステータ940が冷却される。なお、本実施の形態では、図8に示すように、連通配管である中継部材14aを用いて冷媒の流れを電力変換装置200から回転電機900まで一つに連結したが、中継部材14aを使わずに電力変換装置200および回転電機900のそれぞれに、個別に冷媒を流入・排出させてもなんら問題は無い。また、冷媒としては、例えば水、LLC(ロング・ライフ・クーラント:不凍液)が用いられる場合が多いが、以下では冷却水として説明する
【0040】
次に、電力変換装置200の詳細構造について説明する。図9,10は電力変換装置200の分解斜視図である。ケース12は、平面形状が略正方形の直方体を成し、制御回路基板20、ドライバ回路基板22、交流バスバー802U,802V,802W等が収納される上部収納空間と、流路形成部12gが形成された下部収納空間とを有している。コネクタ21を有する制御回路基板20には図2に示した制御回路172が実装され、ドライバ回路基板22にはドライバ回路174が実装されている。制御回路基板20とドライバ回路基板22とはフラットケーブル25によって接続される。ケース12の上部開口は、蓋8によって覆われる。蓋8とケース12には、図4に示したようにコネクタ21用の開口8a,12hが形成されている。電力変換装置200内の制御回路を動作させる低電圧の直流電力は、コネクタ21から供給される。
【0041】
詳細は後述するが、流路形成部12gには冷却水が流れる流路19(図12参照)が形成されている。流路19は、ケース12の3つの側壁(図6に示した側壁12a〜12c)に対して平行に流れるコの字形状に形成されており、冷却水は、ケース12の側壁12dに設けられた入口配管13から流路内に流入し、側壁12dに設けられた出口配管14から流出する。なお、側壁12dは、配管13,14が設けられている部分が段差状に形成されている。
【0042】
図11はケース12の平面図であり、図12はケース12の底面側を示す図である。また、図13は、ケース12を底面側から見た斜視図である。流路19が形成された流路形成部12gの上面側には、流路19と連通する3つの開口部402a〜402cが形成されている。それらの開口部400a〜400cから、図3の直列回路150を構成する電子部品を内蔵したパワーモジュール300U,300V,300Wが流路19内に挿入される(図9参照)。パワーモジュール300UにはU相の直列回路150が内蔵され、パワーモジュール300VにはV相の直列回路150が内蔵され、パワーモジュール300WにはW相の直列回路150が内蔵されている。これら3つのパワーモジュール300U〜300Wは同一構成になっており、外観形状も同一形状である。開口部402a〜402cは、挿入されたパワーモジュール300U〜300Wのフランジ部によって塞がれる。
【0043】
流路形成部12gの中央部には、コンデンサモジュール500が収納される凹部である収納空間405が形成されている。収納空間405は、コの字形状の流路19によって囲まれるように形成されている。収納空間405の各側面405a〜405dは、底面部405f上に配置されたコンデンサモジュール500の側面とほぼ接触するように形成されている。収納空間405に収納されたコンデンサモジュール500は、流路19内を流れる冷却水によって冷却される。なお、コンデンサモジュール500の側面と側面405a〜405dとの接触状態をより向上させるために、コンデンサモジュール500の側面と側面405a〜405dとの隙間にゲルやグリースを充填するようにしても良い。コンデンサモジュール500に設けられた直流端子509、508は、ケース12の12jから突出し直流配線(不図示)でバッテリ136に接続される。
【0044】
図12,13に示すように、流路形成部12gの下側の面12eには流路19に沿うようにコの字形状の開口部404が形成されている。開口部404は、コの字形状の下カバー420によって塞がれる。下カバー420とケース12の面12eとの間にはシール部材409eが設けられ、気密性が保たれている。なお、収納空間405の底面部405fの外周面は、流路形成部12gの面12eよりも下側に突出している。
【0045】
コの字形状を成す流路19は、冷却水の流れる方向によって3つの流路区間19a,19b,19cに分けられる。詳細は後述するが、第1の流路区間19aは、配管13,14が設けられた側壁12dと対向する側壁12aに沿って設けられ、第2の流路区間19bは側壁12aの一方の側に隣接する側壁12bに沿って設けられ、第3の流路区間19cは側壁12aの他方の側に隣接する側壁12cに沿って設けられている。上流側の流路区間19bは、入口配管13が取り付けられた連通路12kと連通している。下流側の流路区間19cは、出口配管14が取り付けられた連通路12mと連通している。図12に示すように、冷却水は入口配管13から流路区間19bに流入し、破線矢印で示すように流路区間19b、流路区間19a、流路区間19cの順に流れ、出口配管14から流出される。
【0046】
上述した開口部402aは、長手方向が側壁12aと平行となるように、流路形成部上面の流路区間19aに対向する位置に形成されている。開口部402bは、長手方向が側壁12bと平行となるように、流路形成部上面の流路区間19bに対向する位置に形成されている。開口部402cは、長手方向が側壁12cと平行となるように、流路形成部上面の流路区間19cに対向する位置に形成されている。これらの開口部402a〜402cを通して、パワーモジュール300U〜300Wが流路19内に挿入される。パワーモジュール300U〜300Wとケース12との間にはシール部材409a〜409cが設けられ気密性が保たれている。
【0047】
図10に示すように、下カバー420には、上述した開口部402a〜402cと対向する位置に、ケース12の底部方向に突出する凸部406がそれぞれ形成されている。図9からも分かるように、これらの凸部406は流路19側から見ると窪みとなっており、開口部402a〜402cから挿入されたパワーモジュール300U〜300Wの下端部分が、これらの窪みに入り込む。ケース12は、開口部404と開口部402a〜402cとが対向するように形成されているので、アルミ鋳造により製造し易い構成になっている。
【0048】
コンデンサモジュール500の上方およびケース12の上部収納空間には、交流バスバー802U〜802Wが配置されている。各交流バスバー802U〜802Wの一端は対応するパワーモジュールの交流端子320Bに接続され、他端は流路形成部12gに形成された貫通穴12iを通ってハウジング912の取り付け面912eに設けられた交流端子902U〜902Wに接続される(図5参照)。貫通穴12iの部分においては、交流バスバー802U〜802Wと流路形成部12gとの間に絶縁シート950が設けられている。尚、交流バスバー802U〜802Wは、図示しない電流センサ180により電流値を測定できるようになっている。
【0049】
回転電機900の動作状況によって、交流バスバー802U〜802Wに回転電機900の交流端子902U〜902Wからの熱が伝熱し、交流バスバー802U〜802Wが炙られ高温になる場合がある。しかし本実施形態では、交流バスバー802U〜802Wが、流路19と収納空間405の間ではなく、流路形成部12gの側壁12aと流路19との間のに設けられた貫通穴12iを通って回転電機900の交流端子902U〜902Wと接続されている。このため、交流端子902U〜902Wから伝達される熱のコンデンサモジュール500への影響を低減することができる。
【0050】
上述したように、ドライバ回路基板22は、交流バスバー802U〜802Wの上方に配置され、制御回路基板20とドライバ回路基板22とはフラットケーブル25によって接続されている。このように、パワーモジュール300U〜300Wとドライバ回路基板22と制御回路基板20とがケース高さ方向に階層的に配置され、制御回路基板20が強電系のパワーモジュール300U〜300Wから最も遠い場所に配置されるので、制御回路基板20側にスイッチングノイズ等が混入するのを低減することができる。なお、ケース12はアルミ等の金属材で形成されている。
【0051】
図14乃至図16を用いて、インバータ回路140に使用されるパワーモジュール300U〜300Wの詳細構成を説明する。上記パワーモジュール300U〜300Wはいずれも同じ構造であり、代表してパワーモジュール300Uの構造を説明する。尚、図14乃至図16において、信号端子325Uは図3に開示したゲート電極154および信号用エミッタ電極155に対応し、信号端子325Lは図3に開示したゲート電極164およびエミッタ電極165に対応する。また、直流正極端子315Bは図3に開示した正極端子157と同一のものであり、直流負極端子319Bは図3に開示した負極端子158と同一のものである。さらにまた、交流端子320Bは図2に開示した交流端子159と同じものである。
【0052】
図16は、パワーモジュール300Uの回路構成を示す回路図である。上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極は、導体板315を介して接続される。同様に、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極は、導体板320を介して接続される。また、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極は、導体板318を介して接続される。同様に、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極は、導体板319を介して接続される。導体板318と320は中間電極329によって接続される。こうした回路構成により上下アーム直列回路が形成される。
【0053】
図14,15に示すCAN型冷却器である有底筒状のモジュールケース304内には、図16に示した上下アームの直列回路150を構成するパワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)が収納されている。モジュールケース304内の隙間には封止樹脂351が充填され、収納されているパワー半導体素子等は封止樹脂351により封止されている。
【0054】
モジュールケース304は、電気伝導性を有する部材、例えばアルミ合金材料(Al,AlSi,AlSiC,Al−C等)で構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。有底筒状のモジュールケース304は、挿入口306以外に開口を設けない構造であり、挿入口306にはフランジ304Bが形成されている。また、図14,15に示されるように、扁平なモジュールケース304の対向する広い面は、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bを構成している。第1放熱面307Aおよび第2放熱面307Bには、複数のフィン305がそれぞれ均一に分布するように形成されている。
【0055】
モジュールケース304内の各パワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)は、これらの放熱面307A,307Bに対向するように配置されている。第1放熱面307Aと第2放熱面307Bと繋ぐ3つの面(2つの側面と底面)は、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bより幅が狭い。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角の部分が図14,15に示す如く曲面を成していても良い。
【0056】
このような形状の金属製のケースを用いることで、モジュールケース304を水や油などの冷却媒体が流れる流路19内に挿入しても、冷媒に対するシールをフランジ304Bにて確保できるため、冷却媒体がモジュールケース304の内部に侵入するのを簡易な構成で防ぐことができる。
【0057】
モジュールケース304の挿入口306の外側には、コンデンサモジュール500と電気的に接続するための金属製の直流正極配線315Aおよび直流負極配線319Aが設けられており、その先端部に直流正極端子315B(157)と直流負極端子319B(158)がそれぞれ形成されている。また、回転電機900に交流電力を供給するための金属製の交流配線320Aが設けられており、その先端に交流端子320B(159)が形成されている。
【0058】
さらに、挿入口306の外側には、ドライバ回路174と電気的に接続するための金属製の信号配線324Uおよび324Lが設けられており、その先端部に信号端子325U(154,155)と信号端子325L(164,165)がそれぞれ形成されている。本実施形態では、図16に示す如く、信号配線324UはIGBT328と接続され、信号配線324LはIGBT330と接続される。
【0059】
直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lは、樹脂材料で成形された配線絶縁部608によって相互に絶縁された状態で、補助モールド体600として一体に成型される。配線絶縁部608は、各配線を支持するための支持部材としても作用し、これに用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。これにより、直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。
【0060】
補助モールド体600の直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lは、図16に示す如く一端が上下アーム直列回路に金属接合される。この金属接合には、たとえばTIG溶接などを用いることができる。一体に成型された補助モールド体600は、配線絶縁部608がネジ309によってモジュールケース304に固定される。
【0061】
その後、モジュールケース304内の隙間には封止樹脂351が充填され、上下アーム直列回路150を構成する電子部品はモジュールケース304内に封止される。その結果、金属接合された接続部も、封止樹脂351によりモジュールケース304内で封止される。これにより、接続部とモジュールケース304との間で必要な絶縁距離を安定的に確保することができるため、封止しない場合と比較してパワーモジュール300Uの小型化が実現できる。
【0062】
図17,18は、コンデンサモジュール500の外観斜視図である。コンデンサモジュール500内には複数のコンデンサセルが設けられている。コンデンサモジュール500の上面には、コンデンサ端子503a〜503cが突出するように設けられている。コンデンサ端子503a〜503cは、各パワーモジュール300U〜300Wの正極端子157及び負極端子158に対応するように設けられている。コンデンサ端子503a〜503cは同一形状をしている。各コンデンサ端子503a〜503cを構成する負極側コンデンサ端子504と正極側コンデンサ端子506との間には絶縁シート507が設けられ、端子間の絶縁が確保されている。
【0063】
コンデンサモジュール500の側面500d側には電源端子508(N),509(P)が設けられている。コンデンサモジュール500を図11に示す収納空間405の底面部405fに配置すると、コンデンサモジュール500の側面500a,500b,500c,500dが流路形成部12gの収納空間405の側面405a,405b,405c,405dに対向する。
【0064】
図19は、ケース12にパワーモジュール300U〜300W、コンデンサモジュール500、交流バスバー802が組みつけられた状態を示す平面図である。収納空間405にコンデンサモジュール500が収納され、流路形成部12gの開口部402a〜402cにパワーモジュール300U〜300Wが挿入される。交流バスバー802U〜803Wの一端は、パワーモジュール300U〜300Wの交流端子320Bに接続されている。
【0065】
図20は、パワーモジュール300U〜300Wの直流正極端子315B、直流負極端子319B及び交流端子320B、コンデンサモジュール500の正極側コンデンサ端子506,負極側コンデンサ端子504、および交流バスバー802U〜802Wの接続部805の接続状態を、詳細に示す斜視図である。各パワーモジュール300U〜300Wとコンデンサモジュール500との接続部においては、直流正極端子315Bが正極側コンデンサ端子506溶接され、直流負極端子319Bが負極側コンデンサ端子504と溶接されている。また、パワーモジュール300U〜300Wと交流バスバー802U〜802Wとの接続部においては、交流端子320Bがバスバーの接続部805に溶接されている。尚、直流正極端子315B,直流負極端子319B,正極側コンデンサ端子506,負極側コンデンサ端子504,接続部805は先端が凹凸形状をしており、溶接時にこの凹凸部分に熱が集中するような形状となっている。
【0066】
図21〜23は、電動駆動装置1における電力変換装置200と回転電機900との接続構造を説明する図である。図21は、電力変換装置200と、電力変換装置200が取り付けられている回転電機900の一部とを示す断面図である。図22は、図21のA−A断面図である。図23は、電力変換装置200の内部構造を示す図であって、電力変換装置200からケース12と蓋8を削除した外観斜視図である。
【0067】
図23に示すように、パワーモジュール300U〜300Wの信号端子325U,325Lは、パワーモジュール300U〜300Wの上方(上部収納空間)に配置されたドライバ回路基板22のスルーホールに挿入され、半田等で接続されている。これにより図3に示した上アームのゲート電極154および信号用エミッタ電極155と下アームのゲート電極164および信号用エミッタ電極165がドライバ回路174に接続される。
【0068】
交流バスバー802U〜802Wは、図19,20に示すように、それらの一端に設けられた接続部805が対応するパワーモジュール300U〜300Wの交流端子320Bに接続されている。これらの交流バスバー802U〜802Wは、図21,23に示すように、パワーモジュール300U〜300Wの交流端子320Bから流路形成部12gに形成された貫通穴12iの方向に引き延ばされ、その貫通穴12iの部分でケース12底面方向へL字形状に折り曲げられている。そして、折り曲げられた各交流バスバー802U〜802Wの端部は、ボルト905により交流端子902U〜902Wに固定されている。
【0069】
図22に示すように、交流端子902U〜902Wには回転電機900の3相電機子巻線が接続されている。そのため、本実施の形態のように交流バスバー802U〜802Wを交流端子902U〜902Wに直に接続する構造の場合、3相電機子巻線からの伝熱で交流バスバー802U〜802Wが炙られるおそれがある。
【0070】
ところが、本実施の形態では、交流バスバー802U〜Wと交流端子902U〜Wとの接続位置が、コの字形状流路19の外側の領域、すなわち、図12の領域BCと領域ADとで示される矩形領域よりも外側の領域に設けられている。そのため、高温となった交流バスバー802U〜802Wとコンデンサモジュール500との間に冷却水の流れる流路19が形成されているため、コンデンサモジュール500への熱影響を低減することができる。
【0071】
さらに、本実施の形態では、図21に示す貫通穴12iの領域において、交流バスバー802U〜802Wを、絶縁シート950のような絶縁部材を介して流路形成部12gに接触させるようにした。このような構造とすることで、回転電機900の3相電機子巻線からの伝熱があったとしても、その熱は接触している流路形成部12gから流路19を流れる冷却水へと放熱され、交流バスバー802U〜802Wの温度上昇を抑えることができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、交流端子902U〜902Wの配置の都合上、パワーモジュール300Vが配置されている部分の流路19の外側において交流バスバー802U〜802Wを流路形成部12gに間接接触させたが、接触場所はここに限定されるものではない。例えば、交流端子902U〜902Wの位置が側壁12bの側にあった場合、開口部402bの外側に交流バスバー802U〜802Wを通す貫通穴を形成し、その部分において流路形成部12gに接触させるようにする。すなわち、流路19の外側において、交流バスバー802U〜802Wと交流端子902U〜902Wとの接続を行わせる。
【0073】
なお、本実施の形態では略L字状の交流バスバー802U〜802Wをそれぞれ一つの部材としたが、複数の部材を繋いで構成してもかまわない。また不図示の電流センサ180などを通過してもなんら問題は無い。一般に、交流バスバー802U〜802Wは回転電機900を駆動する為の電流が流れるので高温になりやすく、周辺の部材に熱の影響を与えてしまうことがある。特に、コンデンサモジュール500は、パワーモジュール300U〜300Wのように流路19の冷却水中に直接配置されているわけではないので、熱影響に関する注意が必要である。
【0074】
ところで、コンデンサモジュール500の側面500a〜500cは、流路19の近くの側面405a〜405cに近接して対向している。そのため、側面500a〜500cからの放熱は効果的に行われるが、コンデンサモジュール500のその他の面については放熱の点で劣っている。
【0075】
そこで、本実施の形態では、コンデンサモジュール500の冷却性能をより向上させるために、コンデンサモジュール500の底面500fが接触している底面部405fの外周面を、冷却水によって冷却されているハウジング912の取り付け面912e、より正確には取り付け面912eに形成された面912fに接触させるようにした。その結果、コンデンサモジュール500は、ハウジング912によって形成される流路919(919b,919c)を流れる冷却水によっても冷却されることになる。
【0076】
図24は、パワーモジュール300U〜300Wおよびコンデンサモジュール500が配置されたケース12を、入口配管13および出口配管14の中心で水平に断面した図である。上述したように、ケース12の流路形成部12gにはコの字形状の流路19が形成されており、図示左側の側壁12bに沿って形成された流路区間19bには、U相のパワーモジュール300Uが配置されている。同様に、入口配管13および出口配管14が設けられた側壁12dと反対側の側壁12aに沿って形成された流路区間19aには、V相のパワーモジュール300Vが配置され、右側の側壁12cに沿って形成された流路区間19cにはW相のパワーモジュール300Wが配置されている。
【0077】
本実施の形態では、平面形状が略正方形のケース12の3つの側壁12a〜12cに沿ってコの字形状の流路19を形成し、パワーモジュール300U〜300Wを各流路区間19a〜19cに配置する際に、扁平なパワーモジュール300U〜300Wを各側壁12a〜12cに平行に配置するようにした。そして、流路19によって囲まれた中央領域(収納空間405)に、電装部品であるコンデンサモジュール500を収納するようにした。このような配置とすることにより、パワーモジュール300U〜300Wおよびコンデンサモジュール500が収納されるケース12の小型化が図れ、回転電機900のハウジング912への取り付けが容易になる効果がある。
【0078】
なお、3つのパワーモジュール300U〜300Wをコの字形状に配置する場合、図24に示すように、平行に配置された一対のパワーモジュール300U,300Wの間に配置されるパワーモジュール300Vの少なくとも一部が、パワーモジュール300Uと300Wとで挟まれた領域に入り込むように配置することで、より小型化を図ることができる。
【0079】
図25は、パワーモジュール300U〜300Wの配置を説明するための模式図である。なお、パワーモジュール300U〜300Wは同一構造、同一形状を有している。ケース12の側壁12b、12cの幅(平面視における長さ)は、少なくともパワーモジュール300U〜300Wの流路に沿った長さL1と連通路12k、12mの長さL2との合計程度が必要である。一方、側壁12aに関しては、少なくとも寸法L1程度が必要になる。もちろん、実際上は、図24に示すように、流路区間の接続部分など冷却水の流れを考慮して寸法を若干調整する必要がある。
【0080】
そのため、電力変換装置200の設置面積をなるべく小さくしようとした場合、平面視で見たときの形状(平面形状)を略正方形とすることで、電力変換装置200の小型化を図ることが考えられる。上述のように側壁12b,12cに沿った方向に関しては連通路が必要であるため、小型化の観点から、図25に示すように、一対のパワーモジュール300U,300Wの間の領域S1にパワーモジュール300Vの一部が含まれるように、パワーモジュール300Vを配置するのが好ましい。
【0081】
図25における配置スペースの図示横方向の寸法(側壁12aの幅寸法)は、パワーモジュールの厚さをL3とすると、少なくともL1+2・L3程度となる。そこで、縦方向の寸法L1+L2+(L3−L4)がL1+L3と同程度となるように、L3およびL4を設定すれば、平面視における面積をより小さくすることができ、略正方形とすることも可能となる。このとき流路区間19aは、図24に示すようにパワーモジュール300U,300Wの間の領域を通るように形成される。なお、図24に示す例では、コンデンサモジュール500の寸法による制約のために、パワーモジュール300U,300Wの間隔は、パワーモジュール300Vの寸法L1よりも若干大きくなっている。
【0082】
配管13,14の位置を一つの側壁12dに集約することで、入口配管13から流路区間19bまで、および流路区間19cから出口配管14までの冷却水の流れが直線状になるので、圧損を極力小さくすることができる。また、配管の突出による装置の設置スペースが大きくなるのを抑えることができると共に、車載性の向上を図ることができる。さらに、配管13,14を連通路12k,12mに圧入する際に、筐体の一面のみでの圧入作業であるため、作業性および生産性が向上する。
【0083】
また、コンデンサモジュール500の3辺を囲むように流路19が設けられているため、コンデンサモジュール500を効果的に冷却することができる。ところで、電動駆動装置1は、一般的にエンジンルーム内に配置される場合が多い。エンジンルーム内はエンジンや回転電機900などからの熱により比較的高温となるため、電力変換装置200に対する周囲からの熱侵入が問題となる。しかし、図24に示すように、コンデンサモジュール500は冷却水が流れる流路19によって3辺を囲まれているので、装置周囲からの熱侵入を効果的に遮断することができる。さらに、電力変換装置200を回転電機900のハウジング912に取り付ける際に、コンデンサモジュール500が載置される底面部405fの外周面を、冷却水が流れているハウジング912に接触させるようにしたので、コンデンサモジュール500の冷却効果をより高めることができる。
【0084】
図26は、電動駆動装置1を軸方向に対して垂直に断面した図であり、フロントブラケット908方向から見た断面図である。上述したように、流路形成部12gに形成された開口部402a〜402cは、パワーモジュール300U〜300Wのモジュールケース304に設けられたフランジ304Bによって塞がれる。パワーモジュール300U〜300Wは、放熱用のフィン305が形成された放熱面307A,307Bが流路19内に配置され、フィン305が設けられていない下端部分は、下カバー420に形成された凸部406の内側窪みの内部に収納されている。これにより、フィン305が形成されていない空間に冷却水が流れ込むのを防止することができ、冷却効果の低下を防止できるる。
【0085】
本実施の形態の機電一体の電動駆動装置1では、図26に示すように比較的に重量の重いコンデンサモジュール500を電力変換装置200の下部中央に配置している。そのため、電力変換装置200の重心バランスが良く、振動が加わった際に電力変換装置200部分が暴れ難く、機電一体構造に大変適している。
【0086】
図26において、電力変換装置200は、ケース12の側壁12a〜12cとは異なる底面部405fが、ハウジング912の回転電機半径方向に設けられた取付面912eの面912fに接触するように固定されている。底面部405fは面912fに直接接触していても良いし、不図示の放熱シート、グリス等を挟んで間接的に接触していても良い。
【0087】
図26に示すような冷却構造とすることで、コンデンサモジュール500の流路19に対向していない底面500fを、回転電機900を収納するハウジング912の流路919b、919cを流れる冷却水により冷却することができる。すなわち、コンデンサモジュール500は、電力変換装置200の流路19を流れる冷却水だけでなく、回転電機900の流路919b、919cを流れる冷却水も用いてダブルで冷却することができる。その結果、コンデンサモジュール500の冷却効果が向上する。
【0088】
次に、図24、26を用いて、電力変換装置200のハウジング912への取り付け位置に関して説明する。本実施の形態では、上述したように回転電機900の半径方向に電力変換装置200を取り付ける際に、ケース12の底面部405fをハウジング912の面912fに接触させるようにした。ハウジング912の流路919は、図26に示すようにハウジング912の周方向にリング状に形成されており、コンデンサモジュール500の熱の一部は、矢印Hのように底面部405f、面912fを通して流路919の冷却水へと放熱される。そのため、より好適にコンデンサモジュール500を冷却する為には、可能な限りケース12の底面部405fと回転電機900の軸芯Jとの半径方向距離を小さくしてハウジング912の流路919に近づけるのが良い。この時、コンデンサモジュール500の底面500fはバランスよく冷却する必要があり、底面500fから回転電機900の流路919b,919cまでの最小距離Rminと最大距離Rmaxとの差が小さくなるのが望ましい。
【0089】
そのため、回転電機900の中心軸の位置(回転電機900の軸芯Jから面912fに引いた垂線の足)が、面912fとケース12の底面部405fとの接触領域に入るように、ケース12をハウジング912に固定するのが良い。より好ましくは、底面部405fの中央位置(図26の左右方向位置に関する中央位置)と回転電機900の軸芯Jの位置とが一致するのが良い。そのような配置とすることで、コンデンサモジュール500の底面500fから回転電機900の流路919までの距離に関して、最小距離Rminと最大距離Rmaxとの差が極小となる。その結果、コンデンサモジュール500の底面500f内における冷却バランスが向上する。
【0090】
上記のように、コンデンサモジュール500の6面の内、3つの側面500a〜500cは、流路区間19a〜19cの冷却水により冷却され、底面500fについてはハウジング912を流れる冷却水を利用して冷却することができる。そして、残り二つの面500g,500d(図17参照)に関して検討すると以下のようになる。
【0091】
まず、側面500dを冷却するには、ケース12の側壁12dをハウジング912に設けられた取付面912eに固定する必要がある。しかし、側壁12dには冷却水の入口配管13と出口配管14が設けられているため、ケース12をハウジング912に取り付ける際の障害となり、最良の選択とは言えない。したがって、側壁12dと対向するコンデンサモジュールの側面500dはダブル冷却(流路19の冷却水による冷却と、流路919の冷却水による冷却)に不適である。
【0092】
また、面500gの上方側には、ドライバ回路基板22や制御回路基板20や、補助モールド体600の信号端子325U,325L及び直流正極端子315B、直流負極端子319B、交流端子320Bや、交流バスバー802U〜802W等が配置される。そのため、面500gを取付面912eの面912fに直接または間接に接触させるのは困難である。したがって、側壁12gと対向するコンデンサモジュールの側面500gはダブル冷却に不適である。
【0093】
一方、コンデンサモジュール500の底面500fの場合には、ケース12の底面部405fに接触しているので、底面部405fを介してハウジング912の面912fに容易に接触させることができる。これは、本実施の形態の電力変換装置200では、3つのパワーモジュール300U〜Wの形状が扁平状であって、図24に示すように、パワーモジュール300U〜300Wがケース12の側壁12a〜12cにそれぞれ平行になるように、流路19に沿って配置されている。そのような構成としたことで、コンデンサモジュール500の底面500f側に、ケース12の底面部405fおよび下カバー420が配置されるような構造とすることができる。その結果、底面部405fの外周面を下カバー420の凸部406よりも下方に突出させることで、回転電機900のハウジング912に容易に接触させることができ、コンデンサモジュール500の500f面をハウジング912を流れる冷却水を利用して冷却することができる。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態に記載の機電一体型の電動駆動装置1は以下のような効果を奏する。
【0095】
(1)電動駆動装置1は、ロータ930、ステータ940、および流路919が形成されてステータ940を保持するモータハウジング(センターブラケット909、ハウジング912)を有する回転電機900と、インバータ回路140を有しハウジング912の外周に固定される電力変換装置200と、を備える。そして、電力変換装置200は、インバータ回路140の直流入力側に設けられた平滑用のコンデンサモジュール500と、流路19とコンデンサモジュール500が配置される凹部である収納空間405とが形成された流路形成部12gを有するケース12と、電力変換用のパワー半導体素子が収納された有底筒状のモジュールケース304を有し、モジュールケース304の少なくとも一部が流路19内に配置される複数のパワーモジュール300U〜300Wと、を備え、電力変換装置200は、コンデンサモジュール500が配置された収納空間405の底面部405fがハウジング912の外周に接触するように該ハウジング912に固定されている。
【0096】
そのため、コンデンサモジュール500は、流路形成部12gの流路19を流れる冷媒によって冷却されると共に、底面部405fおよびハウジング912を介して流路919を流れる冷媒によっても冷却されることになる。その結果、コンデンサモジュール500に対する冷却性能を向上させることができる。
【0097】
なお、上述した実施形態では、モータハウジングをセンターブラケット909とハウジング912とで構成して流路919を形成したが、モータハウジングを一部品としても構わない。また、交流バスバー802U〜802Wを回転電機900の交流端子902U〜902Wに直結しているが、直結する代わりにケーブルを介して接続した構成でも、同様の作用効果を奏することができる。
【0098】
(2)また、流路19は、コンデンサモジュール500を挟むように平行に設けられた流路区間19b,19cと、流路区間19b,19cの相対する一端同士を連通する流路区間19aと、を備え、収納空間405が、流路区間19a〜19cによって囲まれた領域に配置されるようにするのが好ましい。このように、コンデンサモジュール500が配置される収納空間405を流路区間19a〜19cによって囲むことにより、コンデンサモジュール500から流路19を流れる冷媒への放熱効果を高めることができると共に、電力変換装置200の周囲からコンデンサモジュール500へ侵入する熱を低減することができる。
【0099】
なお、上述した実施の形態では、3つの流路区間19a〜19cの各々にパワーモジュールを配置したが、流路区間19bに2つ、流路区間19cに1つ配置するような構成でも良い。また、3相に限らず2相や6相等の場合にも同様に適用することができる。
【0100】
(3)さらに、ハウジング912の外周には回転電機900の電機子巻線に接続された複数の交流端子902U〜902Wがそれぞれ配置され、電力変換装置200に設けられた交流バスバー802U〜802Wは、流路19を跨ぐようにパワーモジュール300U〜300Wから流路区間19a〜19cによって囲まれた領域の外側の領域まで延在し、該外側の領域において交流端子と接続されている。
【0101】
交流端子902U〜902Wは電機子巻線の発熱により高温となり、交流端子902U〜902Wに接続された交流バスバー802U〜802Wも温度が上昇する。しかし、接続部分が、流路区間19a〜19cによって囲まれた領域の外側の領域であるため、接続部分からの輻射熱は流路形成部12gによって遮られ、コンデンサモジュール500への熱的な影響を防止することができる。
【0102】
(4)また、交流端子902U〜902Wに接続された交流バスバー802U〜802Wを、図21に示すように外側の領域において、電気的絶縁性部材である絶縁シート950を介して流路形成部12gに接触させるようにしても良い。そうすることで交流バスバー802U〜802Wが冷却され、交流バスバー802U〜802Wの温度上昇を、さらには、それによるコンデンサモジュール500への熱的な影響を低減することができる。
【0103】
(5)さらに、図26に示すように、電力変換装置200をハウジング912に固定する際に、は、回転電機900の軸芯から底面部405fが接触するハウジング912の面912fへ引いた垂線が底面部405fと交わるようにすることで、底面500fと流路919との距離が底面500f内においてより均一化され、底面500fをより均一に冷却することができる。また、底面500fと流路919との平均距離もより小さくなるので、流路919の冷媒による冷却効率をより高めることができる。
【0104】
(6)また、有底筒状のモジュールケース304の底部がケース12のハウジング固定方向を向くように、パワーモジュール300U〜300Wを流路19内に配置するようにすると、パワーモジュール300U〜300Wの端子等が底面部405fと反対方向を向くので、容易に底面部405fをハウジング912の面912fに接触させることができる。
【0105】
(7)電力変換装置200を回転電機900のハウジング912に取り付ける際に、電力変換装置200がハウジング912のみに固定されるような構造とすることで、取付面精度確保のための機械加工はハウジング912のみに行えばよく、生産性が向上する。
【0106】
(8)流路919と流路19とを連通する連通配管である中継部材14aを備え、流路19に供給された冷媒が、中継部材14aを介して流路919へと導かれるようにすることで、冷却系が簡素化される。この場合、冷媒の流れの上流側に流路19を配置することで、電力変換装置200の冷却を効果的に行うことができる。
【0107】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では流路19はコの字形状に形成されているが、流路区間19b、19cのような平行な流路のみを設け、配管13,14が設けられていない側の端部をケース外まで貫通させ、両端部を配管で連通するようにしても良い。
【符号の説明】
【0108】
1:電動駆動装置、12:ケース、12a〜12d:側壁、12i:貫通穴、19,919,919b,919c:流路、19a〜19c:流路区間、20:制御回路基板、22:ドライバ回路基板、136:バッテリ、140:インバータ回路、200:電力変換装置、300U〜300W:パワーモジュール、304:モジュールケース、405:収納空間、405a〜405d:側面、405f:底面部、500:コンデンサモジュール、507,950:絶縁シート、802,802U〜802W:交流バスバー、900:回転電機、902U〜902W:交流端子、908:フロントブラケット、909:センターブラケット、910:リヤブラケット、912:ハウジング、930:ロータ、940:ステータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ、ステータ、および第1の冷媒流路が形成されて前記ステータを保持するハウジングを有する回転電機と、
インバータ回路を有し前記ハウジングの外周に固定される電力変換装置と、を備えた機電一体型の電動駆動装置であって、
前記電力変換装置は、
前記インバータ回路の直流入力側に設けられた平滑用コンデンサと、
第2の冷媒流路と前記平滑コンデンサが配置される凹部とが形成された流路形成部を有するインバータケースと、
電力変換用のパワー半導体素子が収納された有底筒状のモジュールケースを有し、該モジュールケースの少なくとも一部が前記第2の冷媒流路内に配置される複数のパワー半導体モジュールと、を備え、
前記電力変換装置は、前記平滑コンデンサが配置された前記凹部の底面部が前記ハウジングの外周に接触するように該ハウジングに固定されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記第2の冷媒流路は、前記平滑コンデンサを挟むように平行に設けられた第1および第2の流路区間と、前記第1および第2の流路区間の相対する一端同士を連通する第3の流路区間と、を備え、
前記凹部は、前記第1乃至第3の流路区間によって囲まれた領域に配置されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記ハウジングの外周には前記回転電機の電機子巻線に接続された複数の交流端子がそれぞれ配置され、
前記電力変換装置は、前記複数のパワー導体モジュールと前記複数の交流端子とを接続する複数の交流バスバーを備え、
前記交流バスバーの各々は、前記第2の冷媒流路を跨ぐように前記パワー導体モジュールから前記流路区間によって囲まれた領域の外側の領域まで延在し、該外側の領域において前記交流端子と接続されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記複数の交流バスバーは、前記外側の領域において電気的絶縁性部材を介して前記流路形成部と接していることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記電力変換装置は、前記回転電機の軸芯から前記底面部が接触するハウジング接触面へ引いた垂線が前記底面部と交わるように、前記ハウジングに固定されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記パワー半導体モジュールは、前記有底筒状のモジュールケースの底部が前記ケースのハウジング固定方向を向くように、前記第2の冷媒流路内に配置されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記回転電機は、前記ハウジングの軸方向一端に固定されるフロントブラケットと、前記ハウジングの軸方向他端に固定されるリアブラケットと、を備え、
前記電力変換装置は、前記ハウジングのみに固定されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記第1の冷媒流路と前記第2の冷媒流路とを連通する連通配管を備え、
前記第2の冷媒流路に供給された冷媒が、前記連通配管を介して前記第1の冷媒流路へと導かれていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項1】
ロータ、ステータ、および第1の冷媒流路が形成されて前記ステータを保持するハウジングを有する回転電機と、
インバータ回路を有し前記ハウジングの外周に固定される電力変換装置と、を備えた機電一体型の電動駆動装置であって、
前記電力変換装置は、
前記インバータ回路の直流入力側に設けられた平滑用コンデンサと、
第2の冷媒流路と前記平滑コンデンサが配置される凹部とが形成された流路形成部を有するインバータケースと、
電力変換用のパワー半導体素子が収納された有底筒状のモジュールケースを有し、該モジュールケースの少なくとも一部が前記第2の冷媒流路内に配置される複数のパワー半導体モジュールと、を備え、
前記電力変換装置は、前記平滑コンデンサが配置された前記凹部の底面部が前記ハウジングの外周に接触するように該ハウジングに固定されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記第2の冷媒流路は、前記平滑コンデンサを挟むように平行に設けられた第1および第2の流路区間と、前記第1および第2の流路区間の相対する一端同士を連通する第3の流路区間と、を備え、
前記凹部は、前記第1乃至第3の流路区間によって囲まれた領域に配置されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記ハウジングの外周には前記回転電機の電機子巻線に接続された複数の交流端子がそれぞれ配置され、
前記電力変換装置は、前記複数のパワー導体モジュールと前記複数の交流端子とを接続する複数の交流バスバーを備え、
前記交流バスバーの各々は、前記第2の冷媒流路を跨ぐように前記パワー導体モジュールから前記流路区間によって囲まれた領域の外側の領域まで延在し、該外側の領域において前記交流端子と接続されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記複数の交流バスバーは、前記外側の領域において電気的絶縁性部材を介して前記流路形成部と接していることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記電力変換装置は、前記回転電機の軸芯から前記底面部が接触するハウジング接触面へ引いた垂線が前記底面部と交わるように、前記ハウジングに固定されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記パワー半導体モジュールは、前記有底筒状のモジュールケースの底部が前記ケースのハウジング固定方向を向くように、前記第2の冷媒流路内に配置されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記回転電機は、前記ハウジングの軸方向一端に固定されるフロントブラケットと、前記ハウジングの軸方向他端に固定されるリアブラケットと、を備え、
前記電力変換装置は、前記ハウジングのみに固定されていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の機電一体型の電動駆動装置において、
前記第1の冷媒流路と前記第2の冷媒流路とを連通する連通配管を備え、
前記第2の冷媒流路に供給された冷媒が、前記連通配管を介して前記第1の冷媒流路へと導かれていることを特徴とする機電一体型の電動駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−115903(P2013−115903A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259228(P2011−259228)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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