欠陥判定装置および欠陥判定方法
【課題】的確に検査対象の表面上の欠陥の有無を判定する欠陥判定技術を提供する。
【解決手段】載置台3の載置面3fにワークWを載置し、ワークWの被検査面Wfは、照明1により光が照射され、カメラ2により撮影される。カメラ2は、移動機構4により、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向と、載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向との少なくとも一方が変更されつつ撮影を行う。カメラ2により撮影された撮影データは画像データ取得部により取得され、特徴量抽出部はその画像データに基づいて被検査面Wfの反射特性を表す特徴量を抽出する。欠陥判定部は、抽出された特徴量に基づいて被検査面Wfの欠陥の種別を判定する。
【解決手段】載置台3の載置面3fにワークWを載置し、ワークWの被検査面Wfは、照明1により光が照射され、カメラ2により撮影される。カメラ2は、移動機構4により、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向と、載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向との少なくとも一方が変更されつつ撮影を行う。カメラ2により撮影された撮影データは画像データ取得部により取得され、特徴量抽出部はその画像データに基づいて被検査面Wfの反射特性を表す特徴量を抽出する。欠陥判定部は、抽出された特徴量に基づいて被検査面Wfの欠陥の種別を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の表面上の欠陥の有無を判定する欠陥判定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品等のアルミ等の鋳物(以下、ワークと称する)には種々の欠陥が生じることが知られている。欠陥は、例えば、空洞状の鋳巣、ワークがチャックによりつかまれる際に切粉がワーク表面に押し付けられて生じる圧痕、ワークの剛性のばらつきにより生じるビビリ等がある。このような欠陥は製品の品質を低下させるため、望ましくない。
【0003】
そのため、従来は目視によりワークの表面の欠陥を検査し、製品の品質を保っていた。しかしながら、目視での欠陥検査は検査員の負荷が大きく、また、主観的な評価のため検査品質のばらつきが大きいという問題が生じていた。
【0004】
このような問題を解決するために、ワークの検査面を面照明により照射し、ワークの検査面によって反射された反射光をカメラにより撮影し、このカメラによって撮影された画像に基づいてワークの検査面の欠陥を検出する欠陥検査方法が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1の技術では、カメラによりワークの検査面を撮影する際に、照明の強さを調整することにより、ワークの検査面のうち欠陥以外の部分に対応する撮像素子が飽和するように設定されている。
【0005】
そのため、特許文献1の技術では、不規則な切削面を有するワークの表面であっても鋳巣や圧痕等の欠陥を安定的に抽出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−208259号公報(段落番号0026,図1〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、上述したように照明を調整し一部の撮像素子が飽和するように設定されているために、反射光が強いビビリ等の浅い欠陥部分に対応する撮像素子は欠陥のない正常部位と同様に飽和してしまう。したがって、特許文献1の技術では、ビビリ等の浅い欠陥の検出精度が低くなるという問題を有している。
【0008】
本発明の目的は、このような課題に鑑み、的確に検査対象の表面上の欠陥の有無を判定する欠陥判定技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の欠陥判定装置は、ワークの被検査面の欠陥を判定する欠陥判定装置であって、前記ワークを載置する平面である載置面を有する載置台と、前記ワークの被検査面に光を照射する照明と、前記ワークの被検査面を撮影するカメラと、前記載置面に対する前記照明の光軸の相対方向と、前記載置面に対する前記カメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更する移動機構と、前記移動機構により前記相対方向を変更しながら前記カメラが撮影した撮影データから画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データに基づいて前記被検査面の反射特性を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記抽出された特徴量に基づき欠陥の種別を判定する欠陥判定部と、を備えている。
【0010】
この構成では、載置面に対する照明の光軸の相対方向と、載置面に対するカメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更しながらカメラにより撮影が行われる。したがって、ワークの被検査面を所定の角度から撮影した画像データを取得することができる。この画像データの画素値は、ワークの被検査面の反射特性(反射強度)を反映した値であるため、上述のように複数方向から撮影した画像データを用いれば、その撮影方向に対する反射特性を求めることができる。また、欠陥はその種別によって特異な反射特性を有しているため、上述のようにして求めた反射特性と、各欠陥種別の反射特性とを比較することにより、ワークの被検査面に生じている欠陥の種別を判定することができる。なお、欠陥の種別には欠陥が生じていない正常部位が含まれている。したがって、欠陥の種別を判定するとは、欠陥の有無および欠陥が生じている場合にはその欠陥の種別を判定することを意味している。
【0011】
本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の最小画素値と最大画素値との少なくとも一方に基づいて前記特徴量を抽出する。
【0012】
本発明の発明者らの実験によって、鋳巣の反射強度は他の欠陥や正常部位の反射強度よりも小さいことが判明している。そのため、反射強度の最大値を用いれば、鋳巣とそれ以外の欠陥種別を判定することができる。また、反射強度の最大値と最小値との比を用いても判別は可能である。さらに、本発明の発明者らは、ビビリ以外の欠陥種別の反射特性は、被検査面に対して直交する方向への反射強度が最も高く、ビビリの反射強度は被検査面に対して直交方向では最大とならないことが判明している。したがって、最大反射強度をとる撮影方向に基づけばビビリを判定することができる。
【0013】
本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記移動機構は、変更する前記相対方向を表す方向ベクトルが前記載置面と直交する所定の平面内に拘束されるように当該相対方向を変更し、前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の画素値に基づいて前記被検査点の2次元的な反射分布を求め、当該2次元的な反射分布に基づいて前記特徴量を抽出する。
【0014】
この構成では、ワークの被検査面の2次元的な反射特性を求めることができる。そのため、より詳細な反射特性を表す特徴量を求めることができ、欠陥種別の判定精度を向上させることができる。さらに、上述の構成では判定が困難な圧痕や水滴をも判定することができる。
【0015】
本発明の発明者らの実験により、ビビリは切削方向に平行な方向から撮影した場合には顕著な反射特性が表れるが、切削方向に垂直な方向から撮影した場合には、他の欠陥種別の反射特性と有意な差が表れないことが判明している。したがって、上述の構成では方向依存性が高いビビリのような欠陥を的確に判定することは困難である。そのため、本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記移動機構は、変更する前記相対方向を表す方向ベクトルが前記載置面上の所定の半球内に拘束されるように当該相対方向を変更し、前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の画素値に基づいて前記被検査点の3次元的な反射分布を求め、当該3次元的な反射分布に基づいて前記特徴量を抽出する。
【0016】
この構成では、ワークの被検査面の3次元的な反射特性を求めることができる。そのため、特定方向にのみ顕著な特徴を有するビビリのような欠陥をも的確に判定することができる。
【0017】
反射特性は様々な値で定量化することができる。そのため、本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記特徴量抽出部は、前記特徴量として前記反射分布の反射強度、当該反射強度が最小または最大となる前記相対方向、前記反射分布の広がりの少なくとも一つを用いる。このような値を特徴量として欠陥を判定することにより、簡易な演算で欠陥の判定を行うことができる。
【0018】
本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記照明は、前記カメラの光軸と同軸に設けられている。この構成では、照明を同軸照明としたため、装置を小型化しつつ的確な照明を行うことができる。
【0019】
本発明の欠陥判定装置の技術的特徴は、同様の欠陥判定方法にも利用することができる。例えば、載置台に形成された平面である載置面に載置されるとともに照明により光が照射されたワークの被検査面の欠陥を判定する欠陥判定方法であって、前記載置面に対する前記照明の光軸の相対方向と、前記載置面に対するカメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更しつつ、前記ワークの被検査面を撮影するカメラにより撮影された撮影データから画像データを取得するステップと、前記画像データに基づいて前記被検査面の反射特性を表す特徴量を抽出するステップと、前記抽出された特徴量に基づき欠陥の有無を判定するステップと、を備えた欠陥判定方法に用いることができる。当然ながら、このような欠陥判定方法にも、上述した欠陥判定装置の付加的特徴を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】欠陥判定装置の構成図である。
【図2】欠陥判定装置に用いる照明の断面図である。
【図3】載置面に対する照明およびカメラの光軸の相対方向の移動を表す図である。
【図4】演算装置の機能ブロック図である。
【図5】実施例1の形態における処理の流れを表すフローチャートである。
【図6】実施例1の形態における特徴量抽出処理の流れを表すフローチャートである。
【図7】実施例1の形態における欠陥判定処理の流れを表すフローチャートである。
【図8】欠陥の断面図である。
【図9】各欠陥種別の反射特性を表す図である。
【図10】実施例2の形態における処理の流れを表すフローチャートである。
【図11】実施例2の形態における欠陥判定処理の流れを表すフローチャートである。
【図12】反射強度分布に方向依存性がある欠陥の例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の欠陥判定装置の実施形態を説明する。図1は、本発明の欠陥判定装置の構成図である。図に示すように、本実施形態における欠陥判定装置は、ワークWの被検査面Wfに光を照射する照明1、ワークWの被検査面Wfを撮影するカメラ2、ワークWを載置する載置台3、載置台3の載置面3fの傾きを変更する移動機構4、および欠陥判定装置全体の制御を行うとともにカメラ2により撮影された撮影データに基づいてワークWの被検査面Wfの欠陥を判定する演算装置5から構成されている。本実施形態では、初期位置では、載置面3fは水平であり、載置面3fの中心を原点として載置面3f上にXY座標軸を設定し、載置面3fの法線方向にZ座標軸を設定すると、照明1とカメラ2とは、Z軸上かつ載置面3fの上方に光軸が原点を通るように設定されている。すなわち、初期位置では、カメラ2の光軸および照明1の光軸が載置面3fと直交している。
【0022】
〔照明〕
図2は照明1の断面図である。本実施形態では、照明1は同軸落射型の同軸照明を用いている。そのため、照明1は、筐体11の内部にカメラ2の光軸と直交する方向に光を照射するLED12、同軸落射照明12からの照射光をワークWの方向に反射し、ワークWからの反射光をカメラ2の方向に透過するハーフミラー13を備えている。なお、LED12に代えて種々の光源を用いることができる。
【0023】
〔カメラ〕
本実施形態では、カメラ2としてCCD(Charge Coupled Device)等の光学素子を用いたモノクロのデジタルカメラを用いている。また、本実施形態では、カメラ2の出力は8ビットであり、画素値は0〜255とする。本実施形態では、ワークWの被検査面Wfの非欠陥部位の画素値が150程度となるように、照明等が調整されている。当然ながら、カメラ2としてカラーデジタルカメラを用いてもよいし、アナログカメラを用いても構わない。なお、アナログカメラを用いた場合には、後述する演算装置5の画像データ取得部53にA/Dコンバータを接続する必要がある。
【0024】
〔移動機構〕
上述したように、本実施形態では移動機構4によって載置面3fの傾きを変更する構成としている。そのため、図1に示すように、本実施形態における移動機構4は、載置台3の下方に備えられた4本のアクチュエータ41により構成されている。このアクチュエータ41は、演算装置5からの制御信号により作動し、載置面3fの中心位置を固定した状態で、載置面3fの法線方向を任意の方向とすることができる。すなわち、載置面3fはX軸およびY軸周りでの回転が可能となっている。したがって、照明1およびカメラ2を固定し、移動機構4によって載置面3fの傾きを変更すれば、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向および載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向を変更することができる。
【0025】
図3は、載置面3fに対する照明1およびカメラ2の光軸の相対方向の変化を示す図である。なお、本実施形態では同軸照明を用いているため、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向と、載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向とは一致している。そのため、以下の説明ではこれらは区別せず、単に相対方向と称する。上述したように照明1、カメラ2、載置台3が設置され、載置面3fの傾きが変更されるように制御が行われるため、相対方向を表すベクトル(以下、相対方向ベクトルと称する)は図4に示すように載置面3fのXYZ座標系の原点を中心とする半球内に拘束される。すなわち、相対方向ベクトルは、半球の中心と半球面上の点により規定されるベクトルとなる。そのため、本実施例では相対方向ベクトルを極座標(θ,φ)として表現する。ここで、θはX軸からの偏角(以下、第1偏角と称する)であり、φはZ軸からの偏角(以下、第2偏角と称する)である。なお、本実施形態では、各々の偏角の範囲は0°≦θ<360°、0°≦φ<60°であり、10°ピッチで移動させている。当然ながら、第1偏角θおよび第2偏角φの範囲および移動ピッチは適宜変更可能である。
【0026】
〔演算装置〕
図4は、本実施形態における演算装置5の機能ブロック図を示している。図に示すように、演算装置5は、欠陥判定処理全体を制御する制御部51、移動機構4のアクチュエータ41を制御するアクチュエータ制御部52、カメラ2に対し撮影指示をするとともに、カメラ2により撮影された撮影データから画像データを生成し、取得する画像データ取得部53、画像データ取得部53により取得された基準画像データ(後述)と変角画像データ(後述)間の対応点を探索する対応点探索部54、対応点探索部54により探索された対応点の座標に基づいて変角画像データの視点変換を行う視点変換部55、視点変換部55により視点変換された画像データに基づいて特徴量を抽出する特徴量抽出部56、特徴量抽出部56により抽出された特徴量に基づいて欠陥を判定する欠陥判定部57を備えている。本実施形態では、演算装置5は汎用コンピュータにより構成されており、各機能部はCPU(Central Processing Unit)を中核としてソフトウェアにより構成されている。
【0027】
アクチュエータ制御部52は、載置台3の載置面3fの傾きを所望の方向とするための移動機構4の各アクチュエータ41の伸縮量を演算し、信号線を通じて、各アクチュエータ41を駆動する機能を有している。
【0028】
画像データ取得部53は、カメラ2に対して信号線を介して撮影指示の信号を送信し、カメラ2により撮影された撮影データから画像データを取得する機能を有している。カメラ2がデジタルスチルカメラの場合には、画像データ取得部53は、撮影データを画像データとして取得する。一方、カメラ2がデジタルムービーカメラであれば、撮影指示の信号は不要であり、ムービーデータとしての撮影画像データから1フレームを抽出し画像データとする。
【0029】
対応点探索部54は、基準画像データと変角画像データとの間の対応点を探索する機能を有している。本実施形態では載置面3fの傾きを変更しながらカメラ2による撮影が行われる。そのため、ワークWの被検査面Wf上の任意の点(以下、被検査点と称する)は、各画像データ上で同じ座標には位置しなくなる。そのため、被検査点の欠陥を判定するためには、各々の撮影位置で撮影された画像データ間の画素の対応を求める必要がある。具体的には、載置面3fが基準位置、すなわち水平な状態で撮影された画像データ(以下、基準画像データと称する)上の一の画素を被検査点として設定する。その被検査点を中心として所定サイズのウィンドウを設定し、公知のマッチング手法により、載置面3fの傾きが変更された状態で撮影された画像データ(以下、変角画像データと称する)上で対応点の探索が行われる。なお、マッチング手法としては、位相限定相関法、正規化相関法、幾何相関法等の方法をはじめ、公知の手法から適宜選択可能である。
【0030】
視点変換部55は、変角画像データを基準位置で撮影された画像データ(以下、視点変換画像データと称する)に変換する機能を有している。視点変換部55は、制御部51から変角画像データを撮影した際の載置面3fの傾き、すなわち、相対方向ベクトルを取得するとともに、対応点探索部54から各被検査点の対応点の座標を取得し、これらに基づいてアフィン変換等の公知の方法により変角画像データの視点を第2偏角φ=0°の位置に変換した画像データを生成する。
【0031】
特徴量抽出部56は、視点変換画像データに基づいて、各被検査点の特徴量を抽出する。なお、被検査点はワークWの被検査面Wf上の任意の点を意味するものであるが、処理上は基準画像データ上の各画素を被検査点とみなしている。
【0032】
このような構成により、載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向を異ならせつつ被検査面Wfを撮影することにより、各被検査点の相対方向ごと反射強度(本発明の反射分布の例であり、以下、反射強度分布と称する)を求めることができる。すなわち、被検査点を様々な方向から撮影した際の反射強度が求められる。
【実施例1】
【0033】
実施例1の形態では、載置面3fの法線がXY軸周りで回転するように移動機構4が制御される。すなわち、相対方向ベクトルを規定する第1偏角θおよび第2偏角φのいずれもが変更されつつ、カメラ2による撮影が行われる。また、本実施例における被検査点の特徴量とは、各撮影位置から見たその被検査点の最大/最小画素値およびそのときの第2偏角φの値を用いる。したがって、基準画像データ上の被検査点をP(x,y)(x,yは座標値)とすると、被検査点の特徴量はF(x,y)=((Imin,φmin),(Imax,φmax))と表すことができる。なお、Imin,Imaxはそれぞれ被検査点を様々な方向から撮影した場合の最小および最大画素値を表し、φmin,φmaxはそれぞれ最小画素値および最大画素値となった際の第2偏角φを表している。
【0034】
以下に、図5のフローチャートを用いて本実施例の形態における処理の流れを説明する。先ず、制御部51はアクチュエータ41を駆動し、載置面3fが水平となる位置(基準位置)となるように制御を行う(#01)。このとき、制御部51は画像データ取得部53に対して画像データを取得するよう指示を送信し、この指示を受けた画像データ取得部53は画像データを基準画像データとして取得する(#02)。取得された基準画像データは図示しないメモリに記憶される。また、各被検査点Pの特徴量F(x,y)を((I(x,y),0),(I(x,y),0))で初期化する(#03)。なお、I(x,y)は基準画像データ上の被検査点P(x,y)の画素値である。
【0035】
次に、制御部51は載置面3fの傾きが所定の方向となるようにアクチュエータを駆動する(#04)。本実施形態では、制御部51には相対方向ベクトル(θ,φ)が複数記憶されており、制御部51はその相対方向ベクトルに応じてアクチュエータを駆動する。具体的には、制御部51には相対方向ベクトルdk=(θi,φj)(i=1,・・・,m、j=1,・・・,n、k=1,・・・,m×n)が記憶されており、制御部51はこれから一の相対方向ベクトルdkを選択する。
【0036】
ここでは、先ずkを1で初期化し、相対方向ベクトルd1を取得し、その偏角に応じてアクチュエータ41を駆動する(#04)。
【0037】
制御部51は、アクチュエータ41の駆動が完了すると画像データ取得部53に対して画像データを取得するよう指示を送信する。指示を受けた画像データ取得部53は、画像データを変角画像データとして取得する(#05)。取得された変角画像データは図示しないメモリに記憶される。
【0038】
次に、制御部51は対応点探索部54に対して、メモリに記憶されている変角画像データ上から、メモリに記憶されている基準画像データの各画素の対応点を探索するよう指示を出す。この指示を受けた対応点探索部54は、メモリから基準画像データおよび変角画像データを取得し、上述したように相関法等の方法により対応点を探索する(#06)。対応点探索部54により求められた対応点の情報は、メモリに一時的に記憶される。具体的には、基準画像データ上の画素の座標(x,y)と変角画像データ上の対応点の座標(xd,yd)とが関連付けられてメモリ上に記憶される。なお、対応点の座標に代えて、基準画像データ上の座標からの変位量(xd―x,yd―y)を用いても構わない。
【0039】
対応点探索が完了すると、制御部51は視点変換部55に対して、メモリに記憶されている変角画像データから視点変換画像データを作成するよう指示を送信する。このとき、制御部51は現在の相対方向ベクトルdkも合わせて送信する。制御部51からの指示を受けた視点変換部55は、相対方向ベクトルdkおよび各被検査点とその対応点との位置関係に基づいて変角画像データから視点変換画像データを生成する(#07)。生成された視点変換画像データはメモリに記憶される。
【0040】
視点変換画像データの生成が完了すると、制御部51は特徴量抽出部56に対して特徴量抽出処理の指示を送信する。制御部51からの指示を受けた特徴量抽出部56は、メモリに記憶されている視点変換画像データに基づいて特徴量を抽出する(#08)。上述したように、本実施例の形態では特徴量として様々な角度から見た各被検査点の最大/最小画素値を用いている。そのため、特徴量抽出部56は、基準画像データ上の各画素値と視点変換画像データ上の対応点の画素値とを比較し、各被検査点の最大/最小画素値を求める。具体的には、図6のフローチャートの処理を行う。
【0041】
まず、基準画像データ上の一の画素(被検査点)P(x,y)を選択し(#21)、その画素値I(x,y)を取得する(#22)。次に、取得した画素値I(x,y)と現時点の特徴量F(x,y)=((Imin,φmin),(Imax,φmax))との比較をおこない、特徴量を更新する。具体的には、I(x,y)>Imaxであれば(#23のYes分岐)、Imax=I(x,y)として最大画素値を更新するとともに、最大画素をとるときの偏角として現在の第2偏角φjの値を設定する(#24)。また、I(x,y)<Iminであれば(#25のYes分岐)、Imin=I(x,y)として最小画素値を更新するとともに、最小画素をとるときの偏角として現在の第2偏角φjの値を設定する(#26)。
【0042】
これらの処理(#21〜#26)を未処理の画素がなくなるまで(#27のNo分岐)繰り返す。
【0043】
制御部51は、一の変角画像データに対する特徴量抽出が完了すると未処理の相対方向ベクトルdkの有無をチェックし(#09)、未処理の相対方向ベクトルdkが存在する場合には(#09のYes分岐)、kをインクリメントして次の未処理の相対方向ベクトルdkを指定し、処理を#04に移行させる。
【0044】
上述の処理により、各被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y)の抽出が完了する。これを受けて制御部51は、欠陥判定部57に対して欠陥判定処理を行うよう指示を送信し、その指示に対して欠陥判定部57は、ワークWの被検査面Wfの欠陥を判定する(#10)。
【0045】
図7は、本実施例の形態における欠陥判定の処理の流れを表すフローチャートである。先ず、欠陥判定部57は、被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y)に基づいて、被検査点P(x,y)の欠陥種別を判定する(#31)。なお、本実例の施形態では欠陥種別とは、欠陥なし、鋳巣、ビビリを用いる。
【0046】
図8は、各欠陥種別の欠陥を持つワークWのX軸に沿った断面図である。図8(a)(b)(d)はそれぞれ、欠陥がない正常部位、鋳巣、ビビリである。図から明らかなように、正常部位は平面であり、鋳巣は凹部である。また、ビビリは切削面方向に鋸歯状の凹凸面を形成している。
【0047】
図9は、Y軸方向から見た、欠陥種別ごとの反射強度分布を表す図である。すなわち、基準画像データおよび第1偏角θ=0°,180°、第2偏角φ=φj(j=1,・・・,n)として撮影された変角画像データに基づいて得られた各被検査点の画素値である。すなわち、視点変換画像データ上の被検査点の画素値を動径と、その視点変換画像データの元となった変角画像データを撮影した際の第2変角φの値を偏角として2次元平面上にプロットしたものである。図9(a)(b)(d)はそれぞれ、正常部位、鋳巣、ビビリの反射強度分布である。
【0048】
図9(a)から明らかなように、正常部位では第2偏角φが20°以下の範囲で反射強度は略一定であり、第2偏角φが大きくなるに連れて反射強度が低下している。また、正常部位の反射強度はZ軸に対して略対称となっており、第1偏角θには影響されていないことが分かる。
【0049】
一方、図9(b)の鋳巣の反射強度は第2偏角=0°付近が最大となっているが、この最大反射強度は正常部位の最大反射強度と比べて極めて小さいことが分かる。したがって、被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y)=((Imin,φmin),(Imax,φmax))のうちImaxと所定の閾値THとを比較することにより、その被検査点P(x,y)が正常部位であるか、鋳巣であるかを判定することができる。すなわち、被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y)の最大反射強度Imax>THであれば、被検査点P(x,y)は正常部位、さもなければ鋳巣と判定する。
【0050】
また、正常部位の最小反射強度と鋳巣の最小反射強度とは有意差が見られない。そのため、特徴量F(x,y)の最小反射強度Iminと最大反射強度Imaxとの比率と所定の閾値とを比較することでも正常部位と鋳巣とを判定することができる。すなわち、Imax/Imin>THあれば、被検査点P(x,y)は正常部位、さもなければ鋳巣と判定する。
【0051】
一方、図9(d)から明らかなように、ビビリの反射強度はφ=0°では最大となっていない。これは、ビビリが生じている検査面は載置面3fに対して傾斜しているため、その傾斜方向に対する反射強度が最大となるためである。したがって、反射強度が最大となるときの第2偏角φによりビビリを判定することができる。すなわち、φmax≧Δφであれば、その被検査点はビビリであると判定される。なお、測定誤差等による影響を排除するために微小偏角Δφを用いている。
【0052】
このようにして判定された結果はメモリ上に確保された基準画像データと同次元の2次元配列L[y][x]の要素として代入される(#32)。具体的には、正常部位を0、鋳巣を1と表すと、被検査点P(x,y)が正常部位であると判定されればL[y][x]=0、鋳巣であると判定されればL[y][x]=1とする。これにより、欠陥種別を表す2次元データを生成することができる。この2次元データは、欠陥種別を画素値とする画像データとみなすことができるため、以下ではこの2次元データを欠陥画像データと称する。
【0053】
欠陥判定部57は、全ての被検査点P(x,y)の欠陥判定が完了するまで(#33のNo分岐)まで、上述の処理(#31〜#32)を繰り返す。
【0054】
全ての被検査点P(x,y)の欠陥判定が完了すると(#33のNo分岐)、欠陥判定部57は、欠陥画像データ上で隣接し、同じ値を持つ画素を一つの領域(以下、欠陥領域と称する)にまとめる処理を行う(#34)。例えば、欠陥画像データに対して多値ラベリング処理を行う。この結果、同一ラベルを持つ画素は同じ欠陥領域に属することとなる。
【0055】
欠陥判定部57は、ラベリングデータに基づき、各欠陥領域の特徴量を抽出する(#35)。ここでの特徴量とは、欠陥領域の面積、外接矩形の大きさ、外接矩形の各辺の比率、フィレ径等を用いることができる。
【0056】
その後、欠陥判定部57は、各欠陥領域の欠陥種別と特徴量とに基づいて、欠陥判定の結果が妥当であるか否かを検証する(#36)。例えば、鋳巣の大きさの上限は予測可能であるため、鋳巣として判定された欠陥領域の面積が所定の閾値よりも大きい場合には、その欠陥領域は鋳巣でないと再判定する。また、製品穴は規定の径であり、鋳巣は様々な形状があるため、製品穴と鋳巣との区別は、面積,直径,穴の円形度等から区別することができる。当然ながら、欠陥領域の特徴量や検証の方法は適宜変更可能である。
【0057】
このようにして、反射強度分布に基づいて各被検査点の欠陥種別を判定した後、同一の欠陥種別を持つ被検査点を欠陥領域として統合し、欠陥領域が欠陥であるか否かを検証することにより、欠陥の判定精度を向上させている。
【実施例2】
【0058】
本実施例の形態では、相対方向ベクトルは第1偏角θを0°,180°に限定している。そのため、本実施例の制御部51には、相対方向ベクトルdk=(θi,φj)(i=1,2、j=1,・・・,n、k=1,・・・,2×n)が記憶されている。なお、θ1=0°,θ2=180°である。すなわち、本実施形態では、第1偏角θを規制することにより、相対方向ベクトルは載置面3fに直交するXZ平面上に拘束されることとなる。換言すると、本実施例の形態では、カメラ2および照明1は、載置面3f上の半球の緯度0°および180°の緯線に沿って載置面3fに対して相対的に移動することとなる。
【0059】
図10は本実施例の形態における処理の流れを表すフローチャートである。まず、実施例1と同様に制御部51はアクチュエータ41を制御して載置面3fを水平とし、画像データ取得部53に対して画像データを取得するよう指示を送信する。これに対して、画像データ取得部53はカメラ2の撮影データに基づいて画像データを基準画像データとして取得する(#41)。取得された基準画像データは、メモリに記憶される。
【0060】
続いて制御部51は、載置面3fの傾きが所定の方向となるようにアクチュエータ41を駆動する(#42)。上述したように、本実施例の形態では相対方向ベクトルdk=(θi,φj)が記憶されているため、制御部51は一の相対方向ベクトルdkを選択する。ここでは先ずkを1で初期化し、相対方向ベクトルd1を取得し、その偏角に応じてアクチュエータ41を駆動する(#42)。
【0061】
制御部51は、アクチュエータ41の駆動が完了すると画像データ取得部53に対して画像データを取得するよう指示を送信し、この指示を受けた画像データ取得部53は画像データを変角画像データとして取得する(#43)。取得された変角画像データは図示しないメモリに記憶される。
【0062】
基準画像データと一の撮影位置における変角画像データとが取得されると、実施例1における処理#06〜#07と同様の処理により、視点変換画像データが生成される(#44〜#45)。
【0063】
視点変換画像データが生成されると、制御部51は特徴量抽出部56に対して特徴量の抽出を指示し、指示を受けた特徴量抽出部56は視点変換画像データに基づいて特徴量を抽出する(#46)。本実施例の形態では、特徴量として反射強度分布を用いる。すなわち、基準画像データ上の被検査点P(x,y)の特徴量はF(x,y,dk)=I(G(x,y))と表すことができる。なお、ここでG(x,y)は、視点変換画像データ上における基準画像データ上の被検査点P(x,y)の対応点の座標を返す関数であり、対応点探索部54の処理により求めることができる。また、I()は視点変換画像データの画素値を表している。
【0064】
制御部51は、一の変角画像データに対する処理が完了すると、未処理の相対方向ベクトルdkの有無をチェックする(#47)。未処理の相対方向ベクトルdkが存在する場合には(#47のYes分岐)、kをインクリメントした後処理を#42に移行させる。
【0065】
上述の処理により所定の相対方向ベクトルdkに対する処理が全て完了すると(#47のNo分岐)、制御部51は欠陥判定部57に対して欠陥判定処理の実行を指示する。この指示を受けて欠陥判定部57は、特徴量抽出部56により抽出された特徴量に基づいて欠陥判定を行う(#48)。
【0066】
図11は、本実施例の形態における欠陥判定処理の流れを表すフローチャートである。先ず、欠陥判定部57は、特徴量抽出部56により抽出された特徴量F(x,y,dk)に基づいて基準画像データ上の被検査点P(x,y)の欠陥種別を判定する(#51)。ここで、欠陥種別とは欠陥なしを含め、鋳巣、圧痕、ビビリおよび水滴である。
【0067】
図9に示したように、各欠陥は特有の反射強度分布を有している。図9(c)は圧痕の反射強度分布であり、全体的には正常部位の反射強度分布と類似した分布をしている。しかしながら、正常部位の特徴量F(x,y,(0°,20°))からF(x,y,(0°,30°))への変化量よりも、圧痕の特徴量F(x,y,(0°,20°))からF(x,y,(0°,30°))への変化量の方がかなり小さくなっている。逆に、正常部位の特徴量F(x,y,(180°,20°))からF(x,y,(180°,30°))への変化量よりも圧痕の特徴量F(x,y,(180°,20°))からF(x,y,(180°,30°))への変化量の方がかなり大きくなっている。
【0068】
一方、ビビリは上述のように、最大反射強度をとる角度がφ=0°からずれている。他方、水滴の反射強度分布は図9(e)に示すように、水滴の反射強度分布はZ軸に対しての対称性が低く、全体として図中X軸正方向に偏った分布をしている。また、正常部位と鋳巣との反射強度分布は上述したような特徴を持っている。
【0069】
したがって、各々の欠陥種別の反射強度分布の特徴を定量化した値(以下、分布特徴と称する)を特徴量として抽出することにより、これらの欠陥種別を判定することができる。分布特徴とは、例えば、反射強度分布の包絡線の形状を用いることができる。この場合には、特徴量F(x,y,dk)の分布特徴は、XZ平面上に偏角φ、動径F(x,y,dk)の点をプロットし、これらの点の包絡線の形状を求めればよい。分布特徴はこれに限定されるものではなく、例えば、反射強度が最大となる相対方向ベクトル、上述の包絡線を閉曲線とした際の閉曲線に囲まれる面積、XZ平面上にプロットされた点の密度分布等、反射強度分布から算出可能であり、本発明の目的を達せられるものであれば様々な値を用いることができる。
【0070】
このようにして、基準画像データ上の被検査点P(x,y)の欠陥種別を判定すると、その判定結果は実施例1と同様に、欠陥画像データに代入される(#52)。本実施形態では、欠陥種別を表す数字を、正常部位:0、鋳巣:1、圧痕:2、ビビリ:3、水滴:0として2次元配列に代入する。
【0071】
欠陥判定部57は、全ての被検査点P(x,y)の欠陥判定が完了するまで(#53のNo分岐)まで、上述の処理(#51〜#52)を繰り返す。
【0072】
全ての被検査点P(x,y)の欠陥判定が完了すると(#53のNo分岐)、欠陥判定部57は、この欠陥画像データに基づいて、被検査点を欠陥種別ごとにグループ化して欠陥領域を求める(#54)。グループ化は、例えば、公知の多値ラベリング等の手法を用いることができる。
【0073】
次に、欠陥判定部57は、実施例1と同様に各欠陥領域の特徴量を抽出する(#55)。その後、欠陥判定部57は、各欠陥領域の欠陥種別と特徴量とに基づいて、欠陥判定の結果が妥当であるか否かを検証する(#56)。
【0074】
このように、本実施例の形態では、正常部位、鋳巣、圧痕、ビビリ、水滴等の判別が可能である。そのため、従来技術では欠陥と判定されがちな水滴を的確に判定し、歩留まりの低下を防ぐことができる。また、浅い圧痕をも的確に判定することができ、製品の精度を高めることができる。
【実施例3】
【0075】
本実施例は、実施例2が相対方向ベクトルdk=(θi,φj)(i=1,2、j=1,・・・,n、k=1,・・・,2×n)を用いたのに対して、相対方向ベクトルdk=(θi,φj)(i=1,・・・,m、j=1,・・・,n、k=1,・・・,m×n)を用いる点において異なっている。すなわち、本実施例の形態では、カメラ2は載置面3f上の半球面上から画像を撮影することとなる。
【0076】
本実施例における処理は実施例2の処理と同様である。ただし、上述のような相対方向ベクトルdkを用いるため、一の被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y,dk)は、実施例2では2次元的な分布となるが、本実施例では3次元的な分布となる。したがって、本実施例の特徴量F(x,y,dk)の分布特徴も、例えば、包絡面の表面積等の3次元的な特徴量を用いることができる。一方、特徴量F(x,y,dk)からθおよびθ+180°の特徴量を抽出し、抽出した特徴量から実施例2と同様に2次元的な分布特徴を求めることもできる。この場合には、θを変更しつつ、複数方向における分布特徴を求めることが望ましい。
【0077】
上述したように、ビビリの分布特徴は切削方向に対して顕著に現れるため、実施例2のように2次元的に特徴量を抽出した場合には、撮影方向と切削方向がずれていると分布特徴にビビリの特徴が現れにくい。そのため、相対ベクトルの設定によっては、ビビリの検出漏れを生じる可能性がある。しかしながら、本実施例のように3次元的な特徴量を用いれば、ビビリのように特定方向にのみ顕著な特徴が現れる欠陥も的確に判別することができる。
【0078】
例えば、図12に示すように、ワークWの被検査面Wfに各々の異なる方向依存性がある反射強度分布を持つ欠陥61,62が存在しているとする。欠陥61はX軸方向に沿って顕著な反射強度分布を持ち、欠陥62はY軸方向に沿って顕著な反射強度分布を持っているとする。このとき、相対方向ベクトルdkを(0°,φ1)・・・(0°,φn)(180°,φ1)・・・(180°,φn)とすると、欠陥61は判定可能であるが、欠陥62を判定することは困難である。一方、相対方向ベクトルを(90°,φ1)・・・(90°,φn)(270°,φ1)・・・(270°,φn)とすると欠陥62は判定可能であるが、欠陥61を判定することは困難である。しかしながら、本実施例の形態のように反射強度分布を3次元的に求めることにより、方向依存性が高い反射強度分布を持つ欠陥をも的確に判定することができる。
【0079】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、カメラ2は固定していたが、一度の撮影でワークWの被検査面全体を撮影できない場合には、カメラ2または載置台3を水平移動させる構成としても構わない。
【0080】
(2)上述の実施形態では、載置台3を傾けることにより載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向および載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向を変更する構成としたが、他の構成により相対方向を変更しても構わない。例えば、載置台3を固定し照明1やカメラ2を移動させることにより、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向および載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向を変更しても構わない。また、載置台3およびカメラ2を固定し、照明1を移動させることにより、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向のみを変更する構成としても構わない。さらに、照明1とカメラ2とを独立に移動させることにより、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向および載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向、さらには、照明1の光軸とカメラ2の光軸の相対方向を変更する構成としても構わない。この場合には、特徴量はBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function;双方向反射率分布関数)となる。
【0081】
(3)上述の実施形態では、視点変換画像データの画素値を特徴量の算出に用いたが、視点変換画像データの画素値を正規化した値を特徴量算出に用いても構わない。画素値を正規化することにより、照明1の照度やワークWの物質の反射特性をキャンセルできるため、好適である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、被検査体の表面上の欠陥の有無を判定する欠陥判定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
W:ワーク
Wf:被検査面
1:照明
11:筐体
12:LED
13:ハーフミラー
2:カメラ
3:載置台
3f:載置面
4:移動機構
41:アクチュエータ
5:演算装置
51:制御部
52:アクチュエータ制御部
53:画像データ取得部
54:対応点探索部
55:視点変換部
56:特徴量抽出部
57:欠陥判定部
61:欠陥
62:欠陥
θ:第1偏角
φ:第2偏角
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の表面上の欠陥の有無を判定する欠陥判定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品等のアルミ等の鋳物(以下、ワークと称する)には種々の欠陥が生じることが知られている。欠陥は、例えば、空洞状の鋳巣、ワークがチャックによりつかまれる際に切粉がワーク表面に押し付けられて生じる圧痕、ワークの剛性のばらつきにより生じるビビリ等がある。このような欠陥は製品の品質を低下させるため、望ましくない。
【0003】
そのため、従来は目視によりワークの表面の欠陥を検査し、製品の品質を保っていた。しかしながら、目視での欠陥検査は検査員の負荷が大きく、また、主観的な評価のため検査品質のばらつきが大きいという問題が生じていた。
【0004】
このような問題を解決するために、ワークの検査面を面照明により照射し、ワークの検査面によって反射された反射光をカメラにより撮影し、このカメラによって撮影された画像に基づいてワークの検査面の欠陥を検出する欠陥検査方法が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1の技術では、カメラによりワークの検査面を撮影する際に、照明の強さを調整することにより、ワークの検査面のうち欠陥以外の部分に対応する撮像素子が飽和するように設定されている。
【0005】
そのため、特許文献1の技術では、不規則な切削面を有するワークの表面であっても鋳巣や圧痕等の欠陥を安定的に抽出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−208259号公報(段落番号0026,図1〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、上述したように照明を調整し一部の撮像素子が飽和するように設定されているために、反射光が強いビビリ等の浅い欠陥部分に対応する撮像素子は欠陥のない正常部位と同様に飽和してしまう。したがって、特許文献1の技術では、ビビリ等の浅い欠陥の検出精度が低くなるという問題を有している。
【0008】
本発明の目的は、このような課題に鑑み、的確に検査対象の表面上の欠陥の有無を判定する欠陥判定技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の欠陥判定装置は、ワークの被検査面の欠陥を判定する欠陥判定装置であって、前記ワークを載置する平面である載置面を有する載置台と、前記ワークの被検査面に光を照射する照明と、前記ワークの被検査面を撮影するカメラと、前記載置面に対する前記照明の光軸の相対方向と、前記載置面に対する前記カメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更する移動機構と、前記移動機構により前記相対方向を変更しながら前記カメラが撮影した撮影データから画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データに基づいて前記被検査面の反射特性を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記抽出された特徴量に基づき欠陥の種別を判定する欠陥判定部と、を備えている。
【0010】
この構成では、載置面に対する照明の光軸の相対方向と、載置面に対するカメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更しながらカメラにより撮影が行われる。したがって、ワークの被検査面を所定の角度から撮影した画像データを取得することができる。この画像データの画素値は、ワークの被検査面の反射特性(反射強度)を反映した値であるため、上述のように複数方向から撮影した画像データを用いれば、その撮影方向に対する反射特性を求めることができる。また、欠陥はその種別によって特異な反射特性を有しているため、上述のようにして求めた反射特性と、各欠陥種別の反射特性とを比較することにより、ワークの被検査面に生じている欠陥の種別を判定することができる。なお、欠陥の種別には欠陥が生じていない正常部位が含まれている。したがって、欠陥の種別を判定するとは、欠陥の有無および欠陥が生じている場合にはその欠陥の種別を判定することを意味している。
【0011】
本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の最小画素値と最大画素値との少なくとも一方に基づいて前記特徴量を抽出する。
【0012】
本発明の発明者らの実験によって、鋳巣の反射強度は他の欠陥や正常部位の反射強度よりも小さいことが判明している。そのため、反射強度の最大値を用いれば、鋳巣とそれ以外の欠陥種別を判定することができる。また、反射強度の最大値と最小値との比を用いても判別は可能である。さらに、本発明の発明者らは、ビビリ以外の欠陥種別の反射特性は、被検査面に対して直交する方向への反射強度が最も高く、ビビリの反射強度は被検査面に対して直交方向では最大とならないことが判明している。したがって、最大反射強度をとる撮影方向に基づけばビビリを判定することができる。
【0013】
本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記移動機構は、変更する前記相対方向を表す方向ベクトルが前記載置面と直交する所定の平面内に拘束されるように当該相対方向を変更し、前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の画素値に基づいて前記被検査点の2次元的な反射分布を求め、当該2次元的な反射分布に基づいて前記特徴量を抽出する。
【0014】
この構成では、ワークの被検査面の2次元的な反射特性を求めることができる。そのため、より詳細な反射特性を表す特徴量を求めることができ、欠陥種別の判定精度を向上させることができる。さらに、上述の構成では判定が困難な圧痕や水滴をも判定することができる。
【0015】
本発明の発明者らの実験により、ビビリは切削方向に平行な方向から撮影した場合には顕著な反射特性が表れるが、切削方向に垂直な方向から撮影した場合には、他の欠陥種別の反射特性と有意な差が表れないことが判明している。したがって、上述の構成では方向依存性が高いビビリのような欠陥を的確に判定することは困難である。そのため、本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記移動機構は、変更する前記相対方向を表す方向ベクトルが前記載置面上の所定の半球内に拘束されるように当該相対方向を変更し、前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の画素値に基づいて前記被検査点の3次元的な反射分布を求め、当該3次元的な反射分布に基づいて前記特徴量を抽出する。
【0016】
この構成では、ワークの被検査面の3次元的な反射特性を求めることができる。そのため、特定方向にのみ顕著な特徴を有するビビリのような欠陥をも的確に判定することができる。
【0017】
反射特性は様々な値で定量化することができる。そのため、本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記特徴量抽出部は、前記特徴量として前記反射分布の反射強度、当該反射強度が最小または最大となる前記相対方向、前記反射分布の広がりの少なくとも一つを用いる。このような値を特徴量として欠陥を判定することにより、簡易な演算で欠陥の判定を行うことができる。
【0018】
本発明の欠陥判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記照明は、前記カメラの光軸と同軸に設けられている。この構成では、照明を同軸照明としたため、装置を小型化しつつ的確な照明を行うことができる。
【0019】
本発明の欠陥判定装置の技術的特徴は、同様の欠陥判定方法にも利用することができる。例えば、載置台に形成された平面である載置面に載置されるとともに照明により光が照射されたワークの被検査面の欠陥を判定する欠陥判定方法であって、前記載置面に対する前記照明の光軸の相対方向と、前記載置面に対するカメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更しつつ、前記ワークの被検査面を撮影するカメラにより撮影された撮影データから画像データを取得するステップと、前記画像データに基づいて前記被検査面の反射特性を表す特徴量を抽出するステップと、前記抽出された特徴量に基づき欠陥の有無を判定するステップと、を備えた欠陥判定方法に用いることができる。当然ながら、このような欠陥判定方法にも、上述した欠陥判定装置の付加的特徴を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】欠陥判定装置の構成図である。
【図2】欠陥判定装置に用いる照明の断面図である。
【図3】載置面に対する照明およびカメラの光軸の相対方向の移動を表す図である。
【図4】演算装置の機能ブロック図である。
【図5】実施例1の形態における処理の流れを表すフローチャートである。
【図6】実施例1の形態における特徴量抽出処理の流れを表すフローチャートである。
【図7】実施例1の形態における欠陥判定処理の流れを表すフローチャートである。
【図8】欠陥の断面図である。
【図9】各欠陥種別の反射特性を表す図である。
【図10】実施例2の形態における処理の流れを表すフローチャートである。
【図11】実施例2の形態における欠陥判定処理の流れを表すフローチャートである。
【図12】反射強度分布に方向依存性がある欠陥の例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の欠陥判定装置の実施形態を説明する。図1は、本発明の欠陥判定装置の構成図である。図に示すように、本実施形態における欠陥判定装置は、ワークWの被検査面Wfに光を照射する照明1、ワークWの被検査面Wfを撮影するカメラ2、ワークWを載置する載置台3、載置台3の載置面3fの傾きを変更する移動機構4、および欠陥判定装置全体の制御を行うとともにカメラ2により撮影された撮影データに基づいてワークWの被検査面Wfの欠陥を判定する演算装置5から構成されている。本実施形態では、初期位置では、載置面3fは水平であり、載置面3fの中心を原点として載置面3f上にXY座標軸を設定し、載置面3fの法線方向にZ座標軸を設定すると、照明1とカメラ2とは、Z軸上かつ載置面3fの上方に光軸が原点を通るように設定されている。すなわち、初期位置では、カメラ2の光軸および照明1の光軸が載置面3fと直交している。
【0022】
〔照明〕
図2は照明1の断面図である。本実施形態では、照明1は同軸落射型の同軸照明を用いている。そのため、照明1は、筐体11の内部にカメラ2の光軸と直交する方向に光を照射するLED12、同軸落射照明12からの照射光をワークWの方向に反射し、ワークWからの反射光をカメラ2の方向に透過するハーフミラー13を備えている。なお、LED12に代えて種々の光源を用いることができる。
【0023】
〔カメラ〕
本実施形態では、カメラ2としてCCD(Charge Coupled Device)等の光学素子を用いたモノクロのデジタルカメラを用いている。また、本実施形態では、カメラ2の出力は8ビットであり、画素値は0〜255とする。本実施形態では、ワークWの被検査面Wfの非欠陥部位の画素値が150程度となるように、照明等が調整されている。当然ながら、カメラ2としてカラーデジタルカメラを用いてもよいし、アナログカメラを用いても構わない。なお、アナログカメラを用いた場合には、後述する演算装置5の画像データ取得部53にA/Dコンバータを接続する必要がある。
【0024】
〔移動機構〕
上述したように、本実施形態では移動機構4によって載置面3fの傾きを変更する構成としている。そのため、図1に示すように、本実施形態における移動機構4は、載置台3の下方に備えられた4本のアクチュエータ41により構成されている。このアクチュエータ41は、演算装置5からの制御信号により作動し、載置面3fの中心位置を固定した状態で、載置面3fの法線方向を任意の方向とすることができる。すなわち、載置面3fはX軸およびY軸周りでの回転が可能となっている。したがって、照明1およびカメラ2を固定し、移動機構4によって載置面3fの傾きを変更すれば、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向および載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向を変更することができる。
【0025】
図3は、載置面3fに対する照明1およびカメラ2の光軸の相対方向の変化を示す図である。なお、本実施形態では同軸照明を用いているため、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向と、載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向とは一致している。そのため、以下の説明ではこれらは区別せず、単に相対方向と称する。上述したように照明1、カメラ2、載置台3が設置され、載置面3fの傾きが変更されるように制御が行われるため、相対方向を表すベクトル(以下、相対方向ベクトルと称する)は図4に示すように載置面3fのXYZ座標系の原点を中心とする半球内に拘束される。すなわち、相対方向ベクトルは、半球の中心と半球面上の点により規定されるベクトルとなる。そのため、本実施例では相対方向ベクトルを極座標(θ,φ)として表現する。ここで、θはX軸からの偏角(以下、第1偏角と称する)であり、φはZ軸からの偏角(以下、第2偏角と称する)である。なお、本実施形態では、各々の偏角の範囲は0°≦θ<360°、0°≦φ<60°であり、10°ピッチで移動させている。当然ながら、第1偏角θおよび第2偏角φの範囲および移動ピッチは適宜変更可能である。
【0026】
〔演算装置〕
図4は、本実施形態における演算装置5の機能ブロック図を示している。図に示すように、演算装置5は、欠陥判定処理全体を制御する制御部51、移動機構4のアクチュエータ41を制御するアクチュエータ制御部52、カメラ2に対し撮影指示をするとともに、カメラ2により撮影された撮影データから画像データを生成し、取得する画像データ取得部53、画像データ取得部53により取得された基準画像データ(後述)と変角画像データ(後述)間の対応点を探索する対応点探索部54、対応点探索部54により探索された対応点の座標に基づいて変角画像データの視点変換を行う視点変換部55、視点変換部55により視点変換された画像データに基づいて特徴量を抽出する特徴量抽出部56、特徴量抽出部56により抽出された特徴量に基づいて欠陥を判定する欠陥判定部57を備えている。本実施形態では、演算装置5は汎用コンピュータにより構成されており、各機能部はCPU(Central Processing Unit)を中核としてソフトウェアにより構成されている。
【0027】
アクチュエータ制御部52は、載置台3の載置面3fの傾きを所望の方向とするための移動機構4の各アクチュエータ41の伸縮量を演算し、信号線を通じて、各アクチュエータ41を駆動する機能を有している。
【0028】
画像データ取得部53は、カメラ2に対して信号線を介して撮影指示の信号を送信し、カメラ2により撮影された撮影データから画像データを取得する機能を有している。カメラ2がデジタルスチルカメラの場合には、画像データ取得部53は、撮影データを画像データとして取得する。一方、カメラ2がデジタルムービーカメラであれば、撮影指示の信号は不要であり、ムービーデータとしての撮影画像データから1フレームを抽出し画像データとする。
【0029】
対応点探索部54は、基準画像データと変角画像データとの間の対応点を探索する機能を有している。本実施形態では載置面3fの傾きを変更しながらカメラ2による撮影が行われる。そのため、ワークWの被検査面Wf上の任意の点(以下、被検査点と称する)は、各画像データ上で同じ座標には位置しなくなる。そのため、被検査点の欠陥を判定するためには、各々の撮影位置で撮影された画像データ間の画素の対応を求める必要がある。具体的には、載置面3fが基準位置、すなわち水平な状態で撮影された画像データ(以下、基準画像データと称する)上の一の画素を被検査点として設定する。その被検査点を中心として所定サイズのウィンドウを設定し、公知のマッチング手法により、載置面3fの傾きが変更された状態で撮影された画像データ(以下、変角画像データと称する)上で対応点の探索が行われる。なお、マッチング手法としては、位相限定相関法、正規化相関法、幾何相関法等の方法をはじめ、公知の手法から適宜選択可能である。
【0030】
視点変換部55は、変角画像データを基準位置で撮影された画像データ(以下、視点変換画像データと称する)に変換する機能を有している。視点変換部55は、制御部51から変角画像データを撮影した際の載置面3fの傾き、すなわち、相対方向ベクトルを取得するとともに、対応点探索部54から各被検査点の対応点の座標を取得し、これらに基づいてアフィン変換等の公知の方法により変角画像データの視点を第2偏角φ=0°の位置に変換した画像データを生成する。
【0031】
特徴量抽出部56は、視点変換画像データに基づいて、各被検査点の特徴量を抽出する。なお、被検査点はワークWの被検査面Wf上の任意の点を意味するものであるが、処理上は基準画像データ上の各画素を被検査点とみなしている。
【0032】
このような構成により、載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向を異ならせつつ被検査面Wfを撮影することにより、各被検査点の相対方向ごと反射強度(本発明の反射分布の例であり、以下、反射強度分布と称する)を求めることができる。すなわち、被検査点を様々な方向から撮影した際の反射強度が求められる。
【実施例1】
【0033】
実施例1の形態では、載置面3fの法線がXY軸周りで回転するように移動機構4が制御される。すなわち、相対方向ベクトルを規定する第1偏角θおよび第2偏角φのいずれもが変更されつつ、カメラ2による撮影が行われる。また、本実施例における被検査点の特徴量とは、各撮影位置から見たその被検査点の最大/最小画素値およびそのときの第2偏角φの値を用いる。したがって、基準画像データ上の被検査点をP(x,y)(x,yは座標値)とすると、被検査点の特徴量はF(x,y)=((Imin,φmin),(Imax,φmax))と表すことができる。なお、Imin,Imaxはそれぞれ被検査点を様々な方向から撮影した場合の最小および最大画素値を表し、φmin,φmaxはそれぞれ最小画素値および最大画素値となった際の第2偏角φを表している。
【0034】
以下に、図5のフローチャートを用いて本実施例の形態における処理の流れを説明する。先ず、制御部51はアクチュエータ41を駆動し、載置面3fが水平となる位置(基準位置)となるように制御を行う(#01)。このとき、制御部51は画像データ取得部53に対して画像データを取得するよう指示を送信し、この指示を受けた画像データ取得部53は画像データを基準画像データとして取得する(#02)。取得された基準画像データは図示しないメモリに記憶される。また、各被検査点Pの特徴量F(x,y)を((I(x,y),0),(I(x,y),0))で初期化する(#03)。なお、I(x,y)は基準画像データ上の被検査点P(x,y)の画素値である。
【0035】
次に、制御部51は載置面3fの傾きが所定の方向となるようにアクチュエータを駆動する(#04)。本実施形態では、制御部51には相対方向ベクトル(θ,φ)が複数記憶されており、制御部51はその相対方向ベクトルに応じてアクチュエータを駆動する。具体的には、制御部51には相対方向ベクトルdk=(θi,φj)(i=1,・・・,m、j=1,・・・,n、k=1,・・・,m×n)が記憶されており、制御部51はこれから一の相対方向ベクトルdkを選択する。
【0036】
ここでは、先ずkを1で初期化し、相対方向ベクトルd1を取得し、その偏角に応じてアクチュエータ41を駆動する(#04)。
【0037】
制御部51は、アクチュエータ41の駆動が完了すると画像データ取得部53に対して画像データを取得するよう指示を送信する。指示を受けた画像データ取得部53は、画像データを変角画像データとして取得する(#05)。取得された変角画像データは図示しないメモリに記憶される。
【0038】
次に、制御部51は対応点探索部54に対して、メモリに記憶されている変角画像データ上から、メモリに記憶されている基準画像データの各画素の対応点を探索するよう指示を出す。この指示を受けた対応点探索部54は、メモリから基準画像データおよび変角画像データを取得し、上述したように相関法等の方法により対応点を探索する(#06)。対応点探索部54により求められた対応点の情報は、メモリに一時的に記憶される。具体的には、基準画像データ上の画素の座標(x,y)と変角画像データ上の対応点の座標(xd,yd)とが関連付けられてメモリ上に記憶される。なお、対応点の座標に代えて、基準画像データ上の座標からの変位量(xd―x,yd―y)を用いても構わない。
【0039】
対応点探索が完了すると、制御部51は視点変換部55に対して、メモリに記憶されている変角画像データから視点変換画像データを作成するよう指示を送信する。このとき、制御部51は現在の相対方向ベクトルdkも合わせて送信する。制御部51からの指示を受けた視点変換部55は、相対方向ベクトルdkおよび各被検査点とその対応点との位置関係に基づいて変角画像データから視点変換画像データを生成する(#07)。生成された視点変換画像データはメモリに記憶される。
【0040】
視点変換画像データの生成が完了すると、制御部51は特徴量抽出部56に対して特徴量抽出処理の指示を送信する。制御部51からの指示を受けた特徴量抽出部56は、メモリに記憶されている視点変換画像データに基づいて特徴量を抽出する(#08)。上述したように、本実施例の形態では特徴量として様々な角度から見た各被検査点の最大/最小画素値を用いている。そのため、特徴量抽出部56は、基準画像データ上の各画素値と視点変換画像データ上の対応点の画素値とを比較し、各被検査点の最大/最小画素値を求める。具体的には、図6のフローチャートの処理を行う。
【0041】
まず、基準画像データ上の一の画素(被検査点)P(x,y)を選択し(#21)、その画素値I(x,y)を取得する(#22)。次に、取得した画素値I(x,y)と現時点の特徴量F(x,y)=((Imin,φmin),(Imax,φmax))との比較をおこない、特徴量を更新する。具体的には、I(x,y)>Imaxであれば(#23のYes分岐)、Imax=I(x,y)として最大画素値を更新するとともに、最大画素をとるときの偏角として現在の第2偏角φjの値を設定する(#24)。また、I(x,y)<Iminであれば(#25のYes分岐)、Imin=I(x,y)として最小画素値を更新するとともに、最小画素をとるときの偏角として現在の第2偏角φjの値を設定する(#26)。
【0042】
これらの処理(#21〜#26)を未処理の画素がなくなるまで(#27のNo分岐)繰り返す。
【0043】
制御部51は、一の変角画像データに対する特徴量抽出が完了すると未処理の相対方向ベクトルdkの有無をチェックし(#09)、未処理の相対方向ベクトルdkが存在する場合には(#09のYes分岐)、kをインクリメントして次の未処理の相対方向ベクトルdkを指定し、処理を#04に移行させる。
【0044】
上述の処理により、各被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y)の抽出が完了する。これを受けて制御部51は、欠陥判定部57に対して欠陥判定処理を行うよう指示を送信し、その指示に対して欠陥判定部57は、ワークWの被検査面Wfの欠陥を判定する(#10)。
【0045】
図7は、本実施例の形態における欠陥判定の処理の流れを表すフローチャートである。先ず、欠陥判定部57は、被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y)に基づいて、被検査点P(x,y)の欠陥種別を判定する(#31)。なお、本実例の施形態では欠陥種別とは、欠陥なし、鋳巣、ビビリを用いる。
【0046】
図8は、各欠陥種別の欠陥を持つワークWのX軸に沿った断面図である。図8(a)(b)(d)はそれぞれ、欠陥がない正常部位、鋳巣、ビビリである。図から明らかなように、正常部位は平面であり、鋳巣は凹部である。また、ビビリは切削面方向に鋸歯状の凹凸面を形成している。
【0047】
図9は、Y軸方向から見た、欠陥種別ごとの反射強度分布を表す図である。すなわち、基準画像データおよび第1偏角θ=0°,180°、第2偏角φ=φj(j=1,・・・,n)として撮影された変角画像データに基づいて得られた各被検査点の画素値である。すなわち、視点変換画像データ上の被検査点の画素値を動径と、その視点変換画像データの元となった変角画像データを撮影した際の第2変角φの値を偏角として2次元平面上にプロットしたものである。図9(a)(b)(d)はそれぞれ、正常部位、鋳巣、ビビリの反射強度分布である。
【0048】
図9(a)から明らかなように、正常部位では第2偏角φが20°以下の範囲で反射強度は略一定であり、第2偏角φが大きくなるに連れて反射強度が低下している。また、正常部位の反射強度はZ軸に対して略対称となっており、第1偏角θには影響されていないことが分かる。
【0049】
一方、図9(b)の鋳巣の反射強度は第2偏角=0°付近が最大となっているが、この最大反射強度は正常部位の最大反射強度と比べて極めて小さいことが分かる。したがって、被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y)=((Imin,φmin),(Imax,φmax))のうちImaxと所定の閾値THとを比較することにより、その被検査点P(x,y)が正常部位であるか、鋳巣であるかを判定することができる。すなわち、被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y)の最大反射強度Imax>THであれば、被検査点P(x,y)は正常部位、さもなければ鋳巣と判定する。
【0050】
また、正常部位の最小反射強度と鋳巣の最小反射強度とは有意差が見られない。そのため、特徴量F(x,y)の最小反射強度Iminと最大反射強度Imaxとの比率と所定の閾値とを比較することでも正常部位と鋳巣とを判定することができる。すなわち、Imax/Imin>THあれば、被検査点P(x,y)は正常部位、さもなければ鋳巣と判定する。
【0051】
一方、図9(d)から明らかなように、ビビリの反射強度はφ=0°では最大となっていない。これは、ビビリが生じている検査面は載置面3fに対して傾斜しているため、その傾斜方向に対する反射強度が最大となるためである。したがって、反射強度が最大となるときの第2偏角φによりビビリを判定することができる。すなわち、φmax≧Δφであれば、その被検査点はビビリであると判定される。なお、測定誤差等による影響を排除するために微小偏角Δφを用いている。
【0052】
このようにして判定された結果はメモリ上に確保された基準画像データと同次元の2次元配列L[y][x]の要素として代入される(#32)。具体的には、正常部位を0、鋳巣を1と表すと、被検査点P(x,y)が正常部位であると判定されればL[y][x]=0、鋳巣であると判定されればL[y][x]=1とする。これにより、欠陥種別を表す2次元データを生成することができる。この2次元データは、欠陥種別を画素値とする画像データとみなすことができるため、以下ではこの2次元データを欠陥画像データと称する。
【0053】
欠陥判定部57は、全ての被検査点P(x,y)の欠陥判定が完了するまで(#33のNo分岐)まで、上述の処理(#31〜#32)を繰り返す。
【0054】
全ての被検査点P(x,y)の欠陥判定が完了すると(#33のNo分岐)、欠陥判定部57は、欠陥画像データ上で隣接し、同じ値を持つ画素を一つの領域(以下、欠陥領域と称する)にまとめる処理を行う(#34)。例えば、欠陥画像データに対して多値ラベリング処理を行う。この結果、同一ラベルを持つ画素は同じ欠陥領域に属することとなる。
【0055】
欠陥判定部57は、ラベリングデータに基づき、各欠陥領域の特徴量を抽出する(#35)。ここでの特徴量とは、欠陥領域の面積、外接矩形の大きさ、外接矩形の各辺の比率、フィレ径等を用いることができる。
【0056】
その後、欠陥判定部57は、各欠陥領域の欠陥種別と特徴量とに基づいて、欠陥判定の結果が妥当であるか否かを検証する(#36)。例えば、鋳巣の大きさの上限は予測可能であるため、鋳巣として判定された欠陥領域の面積が所定の閾値よりも大きい場合には、その欠陥領域は鋳巣でないと再判定する。また、製品穴は規定の径であり、鋳巣は様々な形状があるため、製品穴と鋳巣との区別は、面積,直径,穴の円形度等から区別することができる。当然ながら、欠陥領域の特徴量や検証の方法は適宜変更可能である。
【0057】
このようにして、反射強度分布に基づいて各被検査点の欠陥種別を判定した後、同一の欠陥種別を持つ被検査点を欠陥領域として統合し、欠陥領域が欠陥であるか否かを検証することにより、欠陥の判定精度を向上させている。
【実施例2】
【0058】
本実施例の形態では、相対方向ベクトルは第1偏角θを0°,180°に限定している。そのため、本実施例の制御部51には、相対方向ベクトルdk=(θi,φj)(i=1,2、j=1,・・・,n、k=1,・・・,2×n)が記憶されている。なお、θ1=0°,θ2=180°である。すなわち、本実施形態では、第1偏角θを規制することにより、相対方向ベクトルは載置面3fに直交するXZ平面上に拘束されることとなる。換言すると、本実施例の形態では、カメラ2および照明1は、載置面3f上の半球の緯度0°および180°の緯線に沿って載置面3fに対して相対的に移動することとなる。
【0059】
図10は本実施例の形態における処理の流れを表すフローチャートである。まず、実施例1と同様に制御部51はアクチュエータ41を制御して載置面3fを水平とし、画像データ取得部53に対して画像データを取得するよう指示を送信する。これに対して、画像データ取得部53はカメラ2の撮影データに基づいて画像データを基準画像データとして取得する(#41)。取得された基準画像データは、メモリに記憶される。
【0060】
続いて制御部51は、載置面3fの傾きが所定の方向となるようにアクチュエータ41を駆動する(#42)。上述したように、本実施例の形態では相対方向ベクトルdk=(θi,φj)が記憶されているため、制御部51は一の相対方向ベクトルdkを選択する。ここでは先ずkを1で初期化し、相対方向ベクトルd1を取得し、その偏角に応じてアクチュエータ41を駆動する(#42)。
【0061】
制御部51は、アクチュエータ41の駆動が完了すると画像データ取得部53に対して画像データを取得するよう指示を送信し、この指示を受けた画像データ取得部53は画像データを変角画像データとして取得する(#43)。取得された変角画像データは図示しないメモリに記憶される。
【0062】
基準画像データと一の撮影位置における変角画像データとが取得されると、実施例1における処理#06〜#07と同様の処理により、視点変換画像データが生成される(#44〜#45)。
【0063】
視点変換画像データが生成されると、制御部51は特徴量抽出部56に対して特徴量の抽出を指示し、指示を受けた特徴量抽出部56は視点変換画像データに基づいて特徴量を抽出する(#46)。本実施例の形態では、特徴量として反射強度分布を用いる。すなわち、基準画像データ上の被検査点P(x,y)の特徴量はF(x,y,dk)=I(G(x,y))と表すことができる。なお、ここでG(x,y)は、視点変換画像データ上における基準画像データ上の被検査点P(x,y)の対応点の座標を返す関数であり、対応点探索部54の処理により求めることができる。また、I()は視点変換画像データの画素値を表している。
【0064】
制御部51は、一の変角画像データに対する処理が完了すると、未処理の相対方向ベクトルdkの有無をチェックする(#47)。未処理の相対方向ベクトルdkが存在する場合には(#47のYes分岐)、kをインクリメントした後処理を#42に移行させる。
【0065】
上述の処理により所定の相対方向ベクトルdkに対する処理が全て完了すると(#47のNo分岐)、制御部51は欠陥判定部57に対して欠陥判定処理の実行を指示する。この指示を受けて欠陥判定部57は、特徴量抽出部56により抽出された特徴量に基づいて欠陥判定を行う(#48)。
【0066】
図11は、本実施例の形態における欠陥判定処理の流れを表すフローチャートである。先ず、欠陥判定部57は、特徴量抽出部56により抽出された特徴量F(x,y,dk)に基づいて基準画像データ上の被検査点P(x,y)の欠陥種別を判定する(#51)。ここで、欠陥種別とは欠陥なしを含め、鋳巣、圧痕、ビビリおよび水滴である。
【0067】
図9に示したように、各欠陥は特有の反射強度分布を有している。図9(c)は圧痕の反射強度分布であり、全体的には正常部位の反射強度分布と類似した分布をしている。しかしながら、正常部位の特徴量F(x,y,(0°,20°))からF(x,y,(0°,30°))への変化量よりも、圧痕の特徴量F(x,y,(0°,20°))からF(x,y,(0°,30°))への変化量の方がかなり小さくなっている。逆に、正常部位の特徴量F(x,y,(180°,20°))からF(x,y,(180°,30°))への変化量よりも圧痕の特徴量F(x,y,(180°,20°))からF(x,y,(180°,30°))への変化量の方がかなり大きくなっている。
【0068】
一方、ビビリは上述のように、最大反射強度をとる角度がφ=0°からずれている。他方、水滴の反射強度分布は図9(e)に示すように、水滴の反射強度分布はZ軸に対しての対称性が低く、全体として図中X軸正方向に偏った分布をしている。また、正常部位と鋳巣との反射強度分布は上述したような特徴を持っている。
【0069】
したがって、各々の欠陥種別の反射強度分布の特徴を定量化した値(以下、分布特徴と称する)を特徴量として抽出することにより、これらの欠陥種別を判定することができる。分布特徴とは、例えば、反射強度分布の包絡線の形状を用いることができる。この場合には、特徴量F(x,y,dk)の分布特徴は、XZ平面上に偏角φ、動径F(x,y,dk)の点をプロットし、これらの点の包絡線の形状を求めればよい。分布特徴はこれに限定されるものではなく、例えば、反射強度が最大となる相対方向ベクトル、上述の包絡線を閉曲線とした際の閉曲線に囲まれる面積、XZ平面上にプロットされた点の密度分布等、反射強度分布から算出可能であり、本発明の目的を達せられるものであれば様々な値を用いることができる。
【0070】
このようにして、基準画像データ上の被検査点P(x,y)の欠陥種別を判定すると、その判定結果は実施例1と同様に、欠陥画像データに代入される(#52)。本実施形態では、欠陥種別を表す数字を、正常部位:0、鋳巣:1、圧痕:2、ビビリ:3、水滴:0として2次元配列に代入する。
【0071】
欠陥判定部57は、全ての被検査点P(x,y)の欠陥判定が完了するまで(#53のNo分岐)まで、上述の処理(#51〜#52)を繰り返す。
【0072】
全ての被検査点P(x,y)の欠陥判定が完了すると(#53のNo分岐)、欠陥判定部57は、この欠陥画像データに基づいて、被検査点を欠陥種別ごとにグループ化して欠陥領域を求める(#54)。グループ化は、例えば、公知の多値ラベリング等の手法を用いることができる。
【0073】
次に、欠陥判定部57は、実施例1と同様に各欠陥領域の特徴量を抽出する(#55)。その後、欠陥判定部57は、各欠陥領域の欠陥種別と特徴量とに基づいて、欠陥判定の結果が妥当であるか否かを検証する(#56)。
【0074】
このように、本実施例の形態では、正常部位、鋳巣、圧痕、ビビリ、水滴等の判別が可能である。そのため、従来技術では欠陥と判定されがちな水滴を的確に判定し、歩留まりの低下を防ぐことができる。また、浅い圧痕をも的確に判定することができ、製品の精度を高めることができる。
【実施例3】
【0075】
本実施例は、実施例2が相対方向ベクトルdk=(θi,φj)(i=1,2、j=1,・・・,n、k=1,・・・,2×n)を用いたのに対して、相対方向ベクトルdk=(θi,φj)(i=1,・・・,m、j=1,・・・,n、k=1,・・・,m×n)を用いる点において異なっている。すなわち、本実施例の形態では、カメラ2は載置面3f上の半球面上から画像を撮影することとなる。
【0076】
本実施例における処理は実施例2の処理と同様である。ただし、上述のような相対方向ベクトルdkを用いるため、一の被検査点P(x,y)の特徴量F(x,y,dk)は、実施例2では2次元的な分布となるが、本実施例では3次元的な分布となる。したがって、本実施例の特徴量F(x,y,dk)の分布特徴も、例えば、包絡面の表面積等の3次元的な特徴量を用いることができる。一方、特徴量F(x,y,dk)からθおよびθ+180°の特徴量を抽出し、抽出した特徴量から実施例2と同様に2次元的な分布特徴を求めることもできる。この場合には、θを変更しつつ、複数方向における分布特徴を求めることが望ましい。
【0077】
上述したように、ビビリの分布特徴は切削方向に対して顕著に現れるため、実施例2のように2次元的に特徴量を抽出した場合には、撮影方向と切削方向がずれていると分布特徴にビビリの特徴が現れにくい。そのため、相対ベクトルの設定によっては、ビビリの検出漏れを生じる可能性がある。しかしながら、本実施例のように3次元的な特徴量を用いれば、ビビリのように特定方向にのみ顕著な特徴が現れる欠陥も的確に判別することができる。
【0078】
例えば、図12に示すように、ワークWの被検査面Wfに各々の異なる方向依存性がある反射強度分布を持つ欠陥61,62が存在しているとする。欠陥61はX軸方向に沿って顕著な反射強度分布を持ち、欠陥62はY軸方向に沿って顕著な反射強度分布を持っているとする。このとき、相対方向ベクトルdkを(0°,φ1)・・・(0°,φn)(180°,φ1)・・・(180°,φn)とすると、欠陥61は判定可能であるが、欠陥62を判定することは困難である。一方、相対方向ベクトルを(90°,φ1)・・・(90°,φn)(270°,φ1)・・・(270°,φn)とすると欠陥62は判定可能であるが、欠陥61を判定することは困難である。しかしながら、本実施例の形態のように反射強度分布を3次元的に求めることにより、方向依存性が高い反射強度分布を持つ欠陥をも的確に判定することができる。
【0079】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、カメラ2は固定していたが、一度の撮影でワークWの被検査面全体を撮影できない場合には、カメラ2または載置台3を水平移動させる構成としても構わない。
【0080】
(2)上述の実施形態では、載置台3を傾けることにより載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向および載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向を変更する構成としたが、他の構成により相対方向を変更しても構わない。例えば、載置台3を固定し照明1やカメラ2を移動させることにより、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向および載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向を変更しても構わない。また、載置台3およびカメラ2を固定し、照明1を移動させることにより、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向のみを変更する構成としても構わない。さらに、照明1とカメラ2とを独立に移動させることにより、載置面3fに対する照明1の光軸の相対方向および載置面3fに対するカメラ2の光軸の相対方向、さらには、照明1の光軸とカメラ2の光軸の相対方向を変更する構成としても構わない。この場合には、特徴量はBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function;双方向反射率分布関数)となる。
【0081】
(3)上述の実施形態では、視点変換画像データの画素値を特徴量の算出に用いたが、視点変換画像データの画素値を正規化した値を特徴量算出に用いても構わない。画素値を正規化することにより、照明1の照度やワークWの物質の反射特性をキャンセルできるため、好適である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、被検査体の表面上の欠陥の有無を判定する欠陥判定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
W:ワーク
Wf:被検査面
1:照明
11:筐体
12:LED
13:ハーフミラー
2:カメラ
3:載置台
3f:載置面
4:移動機構
41:アクチュエータ
5:演算装置
51:制御部
52:アクチュエータ制御部
53:画像データ取得部
54:対応点探索部
55:視点変換部
56:特徴量抽出部
57:欠陥判定部
61:欠陥
62:欠陥
θ:第1偏角
φ:第2偏角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被検査面の欠陥を判定する欠陥判定装置であって、
前記ワークを載置する平面である載置面を有する載置台と、
前記ワークの被検査面に光を照射する照明と、
前記ワークの被検査面を撮影するカメラと、
前記載置面に対する前記照明の光軸の相対方向と、前記載置面に対する前記カメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更する移動機構と、
前記移動機構により前記相対方向を変更しながら前記カメラが撮影した撮影データから画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データに基づいて前記被検査面の反射特性を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記抽出された特徴量に基づき欠陥の種別を判定する欠陥判定部と、を備えた欠陥判定装置。
【請求項2】
前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の最小画素値と最大画素値との少なくとも一方に基づいて前記特徴量を抽出する請求項1記載の欠陥判定装置。
【請求項3】
前記移動機構は、変更する前記相対方向を表す方向ベクトルが前記載置面と直交する所定の平面内に拘束されるように当該相対方向を変更し、
前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の画素値に基づいて前記被検査点の2次元的な反射分布を求め、当該2次元的な反射分布に基づいて前記特徴量を抽出する請求項1記載の欠陥判定装置。
【請求項4】
前記移動機構は、変更する前記相対方向を表す方向ベクトルが前記載置面上の所定の半球内に拘束されるように当該相対方向を変更し、
前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の画素値に基づいて前記被検査点の3次元的な反射分布を求め、当該3次元的な反射分布に基づいて前記特徴量を抽出する請求項1記載の欠陥判定装置。
【請求項5】
前記特徴量抽出部は、前記特徴量として前記反射分布の反射強度、当該反射強度が最小または最大となる前記相対方向、前記反射分布の広がりの少なくとも一つを用いる請求項3または4記載の欠陥判定装置。
【請求項6】
前記照明は、前記カメラの光軸と同軸に設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の欠陥判定装置。
【請求項7】
載置台に形成された平面である載置面に載置されるとともに照明により光が照射されたワークの被検査面の欠陥を判定する欠陥判定方法であって、
前記載置面に対する前記照明の光軸の相対方向と、前記載置面に対するカメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更しつつ、前記ワークの被検査面を撮影するカメラにより撮影された撮影データから画像データを取得するステップと、
前記画像データに基づいて前記被検査面の反射特性を表す特徴量を抽出するステップと、
前記抽出された特徴量に基づき欠陥の有無を判定するステップと、を備えた欠陥判定方法。
【請求項1】
ワークの被検査面の欠陥を判定する欠陥判定装置であって、
前記ワークを載置する平面である載置面を有する載置台と、
前記ワークの被検査面に光を照射する照明と、
前記ワークの被検査面を撮影するカメラと、
前記載置面に対する前記照明の光軸の相対方向と、前記載置面に対する前記カメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更する移動機構と、
前記移動機構により前記相対方向を変更しながら前記カメラが撮影した撮影データから画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データに基づいて前記被検査面の反射特性を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記抽出された特徴量に基づき欠陥の種別を判定する欠陥判定部と、を備えた欠陥判定装置。
【請求項2】
前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の最小画素値と最大画素値との少なくとも一方に基づいて前記特徴量を抽出する請求項1記載の欠陥判定装置。
【請求項3】
前記移動機構は、変更する前記相対方向を表す方向ベクトルが前記載置面と直交する所定の平面内に拘束されるように当該相対方向を変更し、
前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の画素値に基づいて前記被検査点の2次元的な反射分布を求め、当該2次元的な反射分布に基づいて前記特徴量を抽出する請求項1記載の欠陥判定装置。
【請求項4】
前記移動機構は、変更する前記相対方向を表す方向ベクトルが前記載置面上の所定の半球内に拘束されるように当該相対方向を変更し、
前記特徴量抽出部は、前記画像データにおいて前記被検査面を構成する被検査点の画素値に基づいて前記被検査点の3次元的な反射分布を求め、当該3次元的な反射分布に基づいて前記特徴量を抽出する請求項1記載の欠陥判定装置。
【請求項5】
前記特徴量抽出部は、前記特徴量として前記反射分布の反射強度、当該反射強度が最小または最大となる前記相対方向、前記反射分布の広がりの少なくとも一つを用いる請求項3または4記載の欠陥判定装置。
【請求項6】
前記照明は、前記カメラの光軸と同軸に設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の欠陥判定装置。
【請求項7】
載置台に形成された平面である載置面に載置されるとともに照明により光が照射されたワークの被検査面の欠陥を判定する欠陥判定方法であって、
前記載置面に対する前記照明の光軸の相対方向と、前記載置面に対するカメラの光軸の相対方向との少なくとも一方の相対方向を変更しつつ、前記ワークの被検査面を撮影するカメラにより撮影された撮影データから画像データを取得するステップと、
前記画像データに基づいて前記被検査面の反射特性を表す特徴量を抽出するステップと、
前記抽出された特徴量に基づき欠陥の有無を判定するステップと、を備えた欠陥判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−163916(P2011−163916A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26766(P2010−26766)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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