説明

欠陥検査方法および欠陥検査装置

【課題】パターン中の信号の小さい欠陥の視認性を向上する一方で、レビュー領域全体の情報を可能な限り失わない欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】実施形態の欠陥検査方法は、被検査パターンが形成された試料に荷電粒子線を照射し、前記試料から生成される荷電粒子を検出し、得られる信号の時間に対するプロファイルを生成する工程と、前記被検査パターンの頂面に対応する試料の箇所からの荷電粒子により得られた信号の強度がさらに高まることを抑制しつつ前記被検査パターンの底面に対応する試料の箇所からの荷電粒子により得られた信号の強度を高めることにより、信号強度の高低差が縮められた荷電粒子像の撮像方法を、前記プロファイルを用いて決定する工程と、決定した撮像方法で前記被検査パターンの荷電粒子像を取得する工程と、取得した荷電粒子像から前記被検査パターンの欠陥を検査する工程と、を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、欠陥検査方法および欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの三次元構造化に伴い、パターンの内部などに発生した欠陥の検査およびレビューが非常に重要になってきている。従来から、微細パターンの欠陥を高精度に観察・解析するためにSEM(Scan−ning Electron Microscopy)レビューが用いられている。
【0003】
しかしながら、深い溝や深い穴構造の内部の欠陥については、欠陥からの信号が殆ど検出できず、このため、SEMレビュー装置の検出結果からは、パターンの深い箇所における欠陥の確認および解析が困難であった。
【0004】
そこで、SEMレビューにおいて視認性の低いパターン内部の欠陥を強調するために、レビュー装置で検出した信号を増幅したり、撮像した画像に対して画像処理を行ったりすることが一般に行われている。より具体的には、例えば自動コントラスト・ブライトネス調整機構を用いて、検出器で検出した信号を撮像時に増幅する手法などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、このような場合、基板から電子が多く発生する領域、例えば最表層などは画像にした際に、その領域が最大階調値で飽和してしまい、最表層にある欠陥の情報が却って失われてしまうという可能性がある。
【0006】
そこで、検出器からの電気信号を増幅するときに、検出器の電気信号を非線形に画像に変換するγ補正を加えることで、最表層などの基板から電子が多く発生する領域の情報の損失を防ぐという方法が存在する。
【0007】
しかしながら、γ補正は撮像前に決定した一つの非線形変換方法で画像を生成するため、ローカル帯電等の影響で局所的に見え方が変わる場合、適切な輝度で撮像ができないという問題がある。
【0008】
また、視認性の低いパターン内部の欠陥を画像処理により強調する手法も存在するが、その場合、検出した信号を量子化する際に、信号の小さい欠陥の情報が失われないように高階調画像を生成し、処理を行なわなければならない。高階調の画像はデータ容量が大きく、画像の生成・処理に時間が掛かるため、コンピュータ資源の有効活用を妨げる上、スループットの低下、画像保存コストの増大などを招き、画像処理による信号増幅方法でのデメリットとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−329081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、パターン中の信号の小さい欠陥の視認性を向上する一方で、レビュー領域全体の情報を可能な限り失わない欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の欠陥検査方法は、
被検査パターンが形成された試料に荷電粒子線を照射し、前記試料から生成される荷電粒子を検出し、得られる信号の時間に対するプロファイルを生成する工程と、
前記被検査パターンの頂面に対応する試料の箇所からの荷電粒子により得られた信号の強度がさらに高まることを抑制しつつ前記被検査パターンの底面に対応する試料の箇所からの荷電粒子により得られた信号の強度を高めることにより、信号強度の高低差が縮められた荷電粒子像の撮像方法を、前記プロファイルを用いて決定する工程と、
決定した撮像方法で前記被検査パターンの荷電粒子像を取得する工程と、
取得した荷電粒子像から前記被検査パターンの欠陥を検査する工程と、を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の一形態によるレビューSEMの概略構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施の形態によるパターン検査方法の概略手順を示すフローチャート。
【図3】配線パターンの深い溝内部にある欠陥の一例の模式図。
【図4】図3のパターンをレビューSEMで撮像した際の画像の一例を示す図。
【図5A】レビューSEMが検出した信号の強度−ピクセル数の分布の一例を示す図。
【図5B】図5Aの分布図における信号を256階調の画像にした際に、信号の一部が失われる可能性があることを示した図。
【図6】第1の実施の形態における検出電子プロファイルを生成するための、電子ビームの照射方法の一例を示す図。
【図7】第1の実施の形態により求められた検出電子プロファイルの一例を示す図。
【図8】図7に示す検出電子プロファイルの逆数を求めることにより得られたプロファイルの一例の図。
【図9A】第1の実施の形態のパターン検査方法により得られる効果をSEM像の態様で模式的に表した図。
【図9B】第1の実施の形態のパターン検査方法により得られる効果を256階調のピクセル分布の態様で説明する図。
【図10】第2の実施の形態によるパターン検査方法の概略手順を示すフローチャート。
【図11A】第2の実施の形態のパターン検査方法に用いられる被検査パターンの一例をSEMで撮像した際の画像を示す図。
【図11B】図11AのパターンをレビューSEMで検出した信号の強度−ピクセル数の分布図における信号を256階調の画像にした際に、信号の一部が失われる可能性があることを示した図。
【図12】第2の実施の形態における検出電子プロファイルを生成するための、電子ビームの照射方法の一例を示す図。
【図13】第2の実施の形態により求められた検出電子プロファイルの一例を示す図。
【図14】図13に示す検出電子プロファイルの逆数を求めることにより得られたプロファイルの一例の図。
【図15A】第2の実施の形態のパターン検査方法により得られる効果の説明図。
【図15B】第2の実施の形態のパターン検査方法により得られる効果の説明図。
【図16】図1のレビューSEMの部分拡大図であって、第3の実施の形態によるパターン検査方法の説明図。
【図17】図1のレビューSEMの部分拡大図であって、第4の実施の形態によるパターン検査方法の説明図。
【図18】第6の実施の形態によるパターン検査方法における検出信号プロファイルをその最大値、最小値とともに示す図。
【図19】図18に示す検出信号プロファイルから得られた画像変換関数の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態のいくつかについて、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の各図において、同一の部分には同一の参照符号を付し、その重複説明は必要な場合に限り行う。
【0014】
(A)欠陥検査装置
図1は、実施の一形態によるレビューSEMの概略構成を示すブロック図であり、後に詳述する第1乃至第6の実施の形態による欠陥検査方法に適用されるものである。
【0015】
図1に示すレビューSEMは、電子光学系10と、各種制御部19,20,33と、処理制御部21と、EWS(Engineering Work Station)25とを備える。
【0016】
処理制御部21は、画像生成部22と、撮像方法決定部23と、メモリ24とを含み、EWS25、電子銃制御部33、走査制御部20、ステージ制御部19の他、外部メモリ26に接続される。外部メモリ26には、後述する本実施形態の欠陥検査方法の具体的処理手順を記述したレシピファイルが格納される。
【0017】
処理制御部21は、外部メモリ26からレシピファイルを読み込み、そのファイルに記述された処理手順に従ってレビューSEMの各構成要素を制御することにより、欠陥を検査する。
【0018】
電子光学系10は、高真空の状態に保持された鏡筒内に設けられ、電子銃12と、コンデンサレンズ11と、走査偏向器13と、対物レンズ14と、反射板28と、ステージ18と、検出器15,16とを含む。ステージ18は、被検査パターンが表面に形成された試料であるウェーハWを載置するとともに、ステージ制御部19を介して処理制御部21から送られる制御信号に従って所望の検査箇所が視野内に入るようにウェーハWを移動させる。
【0019】
電子銃12は、電子銃制御部33を介して処理制御部21から制御信号が送られて電子ビームEBを生成し、ウェーハWに向けて照射する。本実施形態において電子ビームEBは、例えば荷電粒子線に対応する。
【0020】
コンデンサレンズ11は、図示しないコンデンサレンズ制御部を介して処理制御部21から送られる制御信号に従って磁界又は電界を生成し、適切なビーム径となるように電子ビームEBを集束させる。
【0021】
対物レンズ14は、図示しない対物レンズ制御部を介して処理制御部21から送られる制御信号に従って磁界又は電界を生成し、電子ビームEBがウェーハW上にジャストフォーカスで照射するように電子ビームEBを再度集束させる。
【0022】
走査偏向器13は、走査制御部20を介して処理制御部21から送られる制御信号に従い、電子ビームEBを偏向するための電界または磁界を生成し、これにより、ウェーハWを電子ビームEBで二次元的に走査する。
【0023】
検出器15,16は、電子ビームEBの照射によりウェーハWの表面から発生する荷電粒子CPを検出する。
【0024】
検出器15は、荷電粒子CPのうち、相対的にエネルギーが高い反射電子を検出する。反射電子は、電子ビームEBの照射でウェーハWへ入射した電子の一部がウェーハWの内部で弾性散乱により反射されて再び真空中へ放出された電子であり、後方散乱電子と呼ばれる場合もある。
【0025】
検出器16は、ウェーハWから見て検出器15よりも高い位置に配置され、荷電粒子CPのうち、相対的にエネルギーが低い二次電子を検出する。二次電子は、電子ビームEBの照射でウェーハWへ入射した電子がウェーハW内の電子を真空中へ叩き出すことにより発生する電子である。
【0026】
検出器15,16の出力信号は検出信号処理部31に送られて所定の処理を経た後に処理制御部21に送られる。検出信号処理部31は、検出器15,16からの信号を増幅するアンプ(図示せず)を含む。
【0027】
反射板28は、検出器16の上方(偏向器13の側)に設けられてウェーハWからの荷電粒子CPが検出器16に検出されるように荷電粒子CPを反射させる。
【0028】
EWS25は、図示しない入力部を介してユーザの指令を受けて処理制御部21に供給するほか、処理制御部21を介して検出信号処理部31から送られる検出信号に対して画像処理を行い、後述するように、平均L/SプロファイルP(x)や検出信号プロファイルH(t)を生成して撮像方法決定部23へ送る。
【0029】
EWS25はさらに、撮像方法決定部23により決定された撮像方法で読み込まれて画像生成部22により生成されたSEM像のデータが送られ、該SEM像に対して欠陥検出またはその結果を踏まえた総合判定を行う。なお、各種SEM像および画像処理結果はEWS25のモニタ画面で視認可能である。本実施形態において、EWS25は、例えばプロファイル生成手段および検査手段に対応する。
【0030】
画像生成部22は、検出信号処理部31の出力信号からSEM像を生成し、メモリ24に格納する。画像生成部22は、本実施形態において例えば荷電粒子像生成手段に対応する。
【0031】
撮像方法決定部23は、EWS25から平均L/SプロファイルP(x)や検出信号プロファイルH(t)のデータが送られてこれらを処理することにより、撮像方法を決定する。
【0032】
(B)欠陥検査方法
(1)第1の実施の形態
図1のレビューSEMを用いた欠陥検出の具体的方法について図面を参照しながら説明する。図2は、第1の実施の形態による欠陥検出方法の概略手順を示すフローチャートである。
【0033】
先ず、欠陥検査に先立って、ステージ18を移動させながら電子銃12等により被検査パターンへ電子ビームEBのプレスキャンを行う。プレスキャンによりウェーハWから発生した荷電粒子CPを検出器15,16が検出し、その検出信号を検出信号処理部31が処理して処理制御部21を介してEWS25に送り、該検出信号をEWS25が処理することにより検出電子の暫定プロファイルが取得される(ステップS101)。
【0034】
次に、撮像方法決定部23は、EWS25から暫定プロファイルのデータが送られてこれに所定の演算処理を行うことにより、検出電子のプロファイルにおいて信号強度の高低差が縮められたSEM像を得るための撮像方法を決定する(ステップS102)。このとき、撮像方法決定部23は、被検査パターンの溝の底面に対応するウェーハWの箇所からの荷電粒子CPにより得られた信号の強度が高められる一方で、被検査パターンの頂面に対応するウェーハWの箇所からの荷電粒子CPにより得られた信号の強度がさらに高まることが抑制されることで信号強度の高低差が縮小される撮像方法を決定する。
【0035】
続いて、処理制御部21は、撮像方法決定部23により決定された撮像方法を用いて各種制御部19,20,33を介して電子光学系10およびステージ18を駆動して被検査パターンへのスキャンを行い、被検査パターンから発生する荷電粒子CPの検出信号を画像生成部22が処理することにより、SEM像を読み込み(ステップS103)、得られたSEM像に対してEWS25が欠陥検出を行う(ステップS104)。
【0036】
最後に、検出した欠陥の座標から、電子光学系10およびステージ18により、欠陥形状の解析に必要な所望の解像度でパターン中の信号の小さな欠陥の信号を強調した高倍率のSEM像を改めて撮像し、EWS25によりレビューを行う(ステップS105)。
【0037】
図3は、本実施形態における被検査パターンの一例を示す平面図および断面図である。図3に示すパターンは、ウェーハWの表面層に形成された、アスペクト比が10を上回るライン・アンド・スペース(以下、単に「L/S」という)パターンである。深い溝をなすスペースパターンの1つの底部には微小欠陥DF1が形成されている。このように、配線パターンの深い溝内部にある欠陥は、図4のSEM像Img1中の点線に示すように、輝度が小さいために視認性が非常に低いものとなる。
【0038】
図5Aは、図3に示すパターンについてレビューSEMにより検出された信号の強度−ピクセル数の分布を示す図である。図5Aにおいて、符号Stは溝(スペースパターン)TR1からの検出信号に対応し、符号Susはパターンの最表層USからの検出信号に対応し、そして、符号Sdは溝(スペースパターン)内の欠陥DF1からの検出信号に対応する。
【0039】
図5Bは、図5Aの分布図における信号を256階調の画像にした場合の階調値−ピクセル数の分布を示す。図5Aに示すように、溝(スペースパターン)TR1の底部とパターンの最表層US1との間で輝度の差が大きく、溝TR1の輝度Stと欠陥DF1の輝度Sdとの差と、溝TR1の輝度Stとパターン最表層US1の輝度Susの差との比が256よりも小さくなる場合((Sd−St)/(Sus−St)<256)、検出信号を256階調値に量子化した際に、図5Bの点線で示す領域において欠陥DF1と溝(スペースパターン)TR1の差が一階調内に収まってしまい、欠陥DF1からの検出信号に対応する部分が検出できず、レビューSEM等により擬似欠陥と見なされて削除され、その結果、溝(スペースパターン)TR1内の信号の一部が失われてしまうという現象が発生することも考えられる。この場合は、欠陥の視認性のより一層の低下をもたらす。
【0040】
そこで、本実施形態では、パターン中の信号の小さい欠陥の視認性を上げ、かつレビュー領域の情報を可能な限り失わないような撮像方法を撮像方法決定部23が決定する。
【0041】
以上の各手順のうち、ステップS101とS102について、図6乃至図9Bを参照しながらより詳細に説明する。
【0042】
(i)ステップS101
プレスキャンでは、例えば図6に示すように、L/Sの被検査パターンに対してパターンの長手方向に直交する方向SC1〜SC3に沿って複数箇所で電子ビームEBをスキャンし、それぞれの場所でウェーハWから生成された荷電粒子CPの検出信号のプロファイルを取得する。
【0043】
(ii)ステップS102
得られた複数箇所のプロファイルに対し、EWS25が相互相関関数fij(τ)
【数1】

を計算する。ここで、gi(x)は縦方向のスキャン位置xに関する場所iにおけるプロファイルである。本実施形態において、上述した式1は、例えば第2の関数に対応する。
【0044】
次いで、EWS25は、全てのij組み合わせの中で、fij(τ)の最大値が一番大きくなる2つのプロファイルの組み合わせを求め、これを構成する2つプロファイルを正常なプロファイルと判別し、この一方、その他の組み合せのプロファイルを正常でないプロファイルと判別して排除する。図6に示す例では、スキャン方向SC1,SC3に対応するプロファイルの組合せが正常なプロファイルであり、その他の組合せ、例えばスキャン方向SC1,SC2の組合せやスキャン方向SC2,SC3の組合せに対応するプロファイルは正常でないプロファイルと判別する。
【0045】
続いて、EWS25は、求めた2つの正常なプロファイルのデータから平均L/SプロファイルP(x)
【数2】

を求め、撮像方法決定部23に送る。本実施形態において、平均L/SプロファイルP(x)は、例えば暫定プロファイルの平均値に対応する。
【0046】
図7は図6のパターンで求めた平均L/SプロファイルP(x)のグラフである。
【0047】
次に、撮像方法決定部23は、EWS25から与えられた平均L/SプロファイルよりSEMの撮像方法を決定する。本実施形態において、撮像方法決定部23は、検出器15,16が検出した電気信号の増幅率を変える方法を採用する。より具体的には、平均L/SプロファイルP(x)の逆数P−1(x)を用いて検出器15,16にかけるアンプの時間依存性G(t)を
【数3】

と決定する。ここで、tはスキャン時間、Tは1スキャンにかかる時間、vはスキャン速度、Δtは1Pixel分のスキャンに必要な時間、さらに、αは比例定数である。本実施形態において、上述した式3は、例えば第1の関数に対応する。
【0048】
そして、処理制御部21は、検出信号処理部31内に設けられた、検出器15,16からの信号にかけるアンプ(図示せず)を、求めた時間依存性G(t)で動作させながら、各種制御部19,20,33を介して電子光学系10およびステージ18を動作させることによりSEM像を撮像する(ステップS103)。これにより、図9AのSEM像Img11に示すように、元々暗い所は明るく、元々明るいところは明るくなり過ぎず、検出した電子の信号を増幅できる。その結果、図9Bに示すように、256階調に量子化した際に溝(スペースパターン)内の信号が失われる可能性を少なくしたSEM像が得られる。
【0049】
(2)第2の実施の形態
図10は、第2の実施の形態によるパターン検査方法の概略手順を示すフローチャートである。
【0050】
本実施形態では、図11AのSEM像Img2に示すように、疎密の程度が不規則な被検査パターンに好適な形態である。図11Bは、図11Aの被検査パターンからの検出信号を256階調の画像にした場合の階調値−ピクセル数の分布を示す図である。図5Bに示す場合と同様に、図11Bにおいても、検出信号を256階調値に量子化した際に、図5Bの点線で示す領域において欠陥DF2からの検出信号に対応する部分がレビューSEM等により擬似欠陥と見なされて削除され、その結果、溝(スペースパターン)TR2内の信号の一部が失われてしまうという現象が発生することも考えられ、欠陥の視認性が低下する可能性がある。
【0051】
そこで、本実施形態では、被検査パターンに対するプレスキャンとして、図12に示すように撮像領域FOV(Field of View)全体を一回スキャンする。これにより、EWS25は、検出信号処理部31を介して送られる検出器15,16からの荷電粒子CPの検出信号を処理し、図13に示すようなスキャン時間に対する検出信号プロファイルH(t)を生成して撮像方法決定部23へ送る(図10、ステップS201)。
【0052】
そして、撮像方法決定部23は、送られたプロファイルH(t)の逆数H−1(t) を求め、検出信号処理部31内に設けられた、検出器15,16からの信号へのアンプ(図示せず)の時間依存性G(t)を
【数4】

と決定する(図10、ステップS202)。ここで、tはスキャン時間、αは比例定数である。図14は、このようにして得られたプロファイルの一例を示す。本実施形態において、上述した式4は、例えば第1の関数に対応する。
【0053】
そして、前述した第1の実施の形態と同様に、検出信号処理部31が、検出器15,16からの信号へのアンプ(図示せず)を、式4で求めた時間依存性G(t)で動作させながら、各種制御部19,20,33を介して電子光学系10およびステージ18を駆動させることによりSEM像を撮像する(図10、ステップS203)。これにより、図15AのSEM像Img12に示すように、元々暗い所は明るく、元々明るいところは明るくなり過ぎず、検出した電子の信号を増幅できる。その結果、図15Bに示すように、256階調に量子化した際に溝(スペースパターン)内の信号が失われる可能性を小さくしたSEM像が得られる。
【0054】
その後は前述した第1の実施の形態と同様に、図10のステップS203により得られた、パターン中の小さな欠陥からの信号を強調したSEM像を用いてEWS25が欠陥を検出する(ステップS204)。さらに、検出した欠陥の座標から、処理制御部21が電子光学系10およびステージ18を駆動することにより、欠陥形状の解析に必要な所望の解像度でパターン中の信号の小さな欠陥の信号を強調した高倍率のSEM像を改めて撮像し、EWS25によりレビューを行う(ステップS205)。
【0055】
(3)第3の実施の形態
本実施形態では、撮像方法決定部23が、第2の実施の形態において式4を求める過程で得られる検出信号プロファイルH(t)を、検出器15,16に印加する電圧に適用することにより撮像方法を決定する。ここでは、検出器16を取り挙げて説明するが、検出器15を用いる場合も、検出器15と16の双方を用いる場合も同様である。
【0056】
図16に示すように、検出器16の上方(偏向器13の側)に設けられた反射板28と検出器16との間に可変電源PS1により電圧Vdを印加する。可変電源PS1は処理制御部21に接続されて制御信号が送られる。処理制御部21は、検出信号プロファイルH(t)を用いて可変電源PS1の電圧Vdを、
【数5】

に規定するように時間に依存して変化させながら撮像を行う。ここで、αおよびCは定数で、特にα<0とする。
【0057】
これにより、プレスキャン時に検出信号の強度が高い明るい領域に対応する電圧Vdの値が、プレスキャン時に検出信号の強度が低い暗い領域に対応する電圧Vdの値に比較して小さくなる。その結果、反射板28から検出器16に入って来る荷電粒子CPの数は、元々明るい領域で抑えられ、元々暗い領域で多く取り込まれることとなる。
【0058】
前述した第2の実施の形態と同様に、本実施形態の撮像方法を用いることにより、図15Aに示すように、元々暗い所は明るく、明るいところは明るくなり過ぎず、図15Bに示すように、256階調に量子化した際に溝(スペースパターン)内の信号が失われる可能性を低くしたSEM像を得ることができる。
【0059】
(4)第4の実施の形態
本実施形態では、撮像方法決定部23が、第2の実施の形態において式4を求める過程で得られる検出信号プロファイルH(t)を反射板28に印加する電圧に適用することにより撮像方法を決定する。
【0060】
反射板28に印加する電圧Vrは、電子ビームEBの照射によりウェーハWから生成された荷電粒子CPが反射板28に入射するときの運動エネルギーを調整し、反射板28から生成される荷電粒子CPの放出量(本実施形態では反射板の二次電子放出係数)を変える作用がある。
【0061】
図17は本実施形態のパターン検査方法を説明するためのレビューSEMの部分拡大図である。図17に示すように、可変電源PS2により反射板28にはウェーハWとの間で電圧Vrが印加される。可変電源PS2は処理制御部21に接続されて制御信号が送られる。処理制御部21は、検出信号プロファイルH(t)を用いて可変電源PS2の電圧Vrを、
【数6】

に規定するように時間に依存して変化させながら撮像を行う。ここで、βおよびCは定数であり、検出信号プロファイルH(t)の最小値Hminで、反射板28の二次電子放出係数が最大になるようにβ、Cを決定する。
【0062】
このように反射板28への印加電圧Vrを時間に依存して変化させることにより、プレスキャン時に検出信号強度が高い明るい領域は、プレスキャン時に検出信号強度が低い暗い領域に比べ、反射板28で生成される二次電子の数が少なくなる。
【0063】
前述した第2の実施の形態と同様に、本実施形態の撮像方法を用いることにより、図15Aに示すように、元々暗い所は明るく、元々明るいところは明るくなり過ぎず、256階調に量子化した際には、図15Bに示すように、溝(スペースパターン)内の信号が失われる可能性を低くしたSEM像を得ることができる。
【0064】
(5)第5の実施の形態
本実施形態では、撮像方法決定部23が、第2の実施の形態において式4を求める過程で得られる検出信号プロファイルH(t)をプローブ電流量Ipに適用することにより撮像方法を決定する。
【0065】
即ち、検出信号プロファイルH(t)を用いてプローブ電流Ipを、
【数7】

に規定するように時間に依存して変化させながら撮像を行う。ここで、αおよびCは定数であり、特にα<0とする。これにより、プレスキャン時に検出信号の強度が高い明るい領域は低いプローブIpで、プレスキャン時に検出信号の強度が低い暗い領域は高いプローブIpで電子ビームEBのスキャンを行うことができる。
【0066】
このような撮像方法を用いることで、明るい領域の信号強度は低くなり、暗い部分の信号強度は高くなるため、図15Aに示すように元々暗い所は明るく、元々明るいところは明るくなり過ぎず、図15Bに示すように、256階調に量子化した際に溝(スペースパターン)内の信号が失われる可能性を低くしたSEM像を得ることができる。
【0067】
(6)第6の実施の形態
本実施形態では、撮像方法決定部23が、第2の実施の形態において式4を求める過程で得られる検出信号プロファイルH(t)を、画像変換関数I(h)に適用することにより撮像方法を決定する。
【0068】
ここでは、検出器の信号hを画像に変換する際に使用する関数として画像変換関数I(h)を規定し、検出信号の増幅時、または画像処理時に適用する。図18に示すように、検出信号プロファイルH(t)の最大値をHMaxとし、その最小値をHminとする。さらに、画像変換関数I(h)を、
【数8】

【数9】

と定義する。ここで、GMaxとは画像に変換する際に最大階調値となる値である。この検出信号プロファイルから得られた画像変換関数I(h)のグラフの一例を図19に示す。これにより、プレスキャン時に検出信号強度が高い明るい領域は、プレスキャン時の検出信号強度に対する増幅率変化が小さいため低コントラストに、プレスキャン時に検出信号強度が低い暗い領域は、プレスキャン時の検出信号強度に対する増幅率変化が大きいため高コントラストになった画像が画像生成部22によって生成される。
【0069】
プレスキャンで暗い部分の信号量が増加するので、図15Aに示すように、元々暗いところは明るくなる一方で、元々明るいところは明るくなり過ぎず、図15Bに示すように、256階調に量子化した際に溝(スペースパターン)内の信号が失われる可能性を小さくしたSEM像を得ることができる。
【0070】
本実施形態の手法には、既存のγ補正では対応できなかったローカル帯電等で局所的に見え方が変わる場合にも適切に増幅率を決定できるというメリットがある。
【符号の説明】
【0071】
10:電子光学系
12:電子銃
15,16:検出器
21:処理制御部
22:画像生成部
23:撮像方法決定部
25:計算機
26:外部メモリ
28:反射板
31:検出信号処理部
33:電子銃制御部
CP:荷電粒子
EB:電子ビーム
Img1,Img2,Img11,Img12:SEM画像
PS1,PS2:可変電源
Vd:反射板−検出器間電圧
Vr:反射板電圧
W:ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査パターンが形成された試料に荷電粒子線を照射し、前記試料から生成される荷電粒子を検出し、得られる信号の時間に対するプロファイルを生成する工程と、
前記被検査パターンの頂面に対応する試料の箇所からの荷電粒子により得られた信号の強度がさらに高まることを抑制しつつ前記被検査パターンの底面に対応する試料の箇所からの荷電粒子により得られた信号の強度を高めることにより、信号強度の高低差が縮められた荷電粒子像の撮像方法を、前記プロファイルを用いて決定する工程と、
決定した撮像方法で前記被検査パターンの荷電粒子像を取得する工程と、
取得した荷電粒子像から前記被検査パターンの欠陥を検査する工程と、
を備える欠陥検査方法。
【請求項2】
前記撮像方法は、前記プロファイルの逆数に任意の変数変換処理を行った第1の関数を用いて決定されることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記プロファイルを生成する工程は、
前記試料表面の複数の箇所で荷電粒子線を走査して複数の暫定プロファイルを取得する工程と、
相互相関関数である第2の関数を用いて各暫定プロファイルが正常なパターンのプロファイルかどうかを判別する工程と、
を含み、
前記プロファイルは、正常なパターンの暫定プロファイルが複数ある場合に、これら複数の暫定プロファイルの平均値を求めることにより生成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記プロファイルは、撮像領域全体を走査して得られる信号の走査時間に対するプロファイルを含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の欠陥検査方法。
【請求項5】
前記荷電粒子像を取得する工程は、前記荷電粒子により得られた信号の電流値を、前記プロファイルに基づいて変化する増幅率で増幅する工程を含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記荷電粒子像を取得する工程は、前記荷電粒子を検出する検出器に、前記プロファイルに基づいて変化する電圧を印加する工程を含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査方法。
【請求項7】
前記荷電粒子の一部は、反射板に反射して検出器に検出され、
前記荷電粒子像を取得する工程は、前記反射板に、前記プロファイルに基づいて変化する電圧を印加する工程を含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査方法。
【請求項8】
前記荷電粒子像を取得する工程は、前記プロファイルに基づいて変化するドーズ量で前記荷電粒子線を生成する工程を含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
前記荷電粒子像を取得する工程は、前記プロファイルから画像変換関数を求め、該画像変換関数に基づいて前記荷電粒子から得られる信号を前記荷電粒子像に変換する工程を含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査方法。
【請求項10】
荷電粒子線を生成し、被検査パターンが形成された試料に照射する荷電粒子線照射手段と、
前記荷電粒子線の照射により前記試料から生成される荷電粒子を検出する検出手段と、
前記検出手段から得られる信号から前記被検査パターンの荷電粒子像を生成する荷電粒子像生成手段と、
前記検出手段から得られる信号の時間に対するプロファイルを生成するプロファイル生成手段と、
前記被検査パターンの頂面に対応する試料の箇所からの荷電粒子により得られた信号の強度がさらに高まることを抑制しつつ前記被検査パターンの底面に対応する試料の箇所からの荷電粒子により得られた信号の強度を高めることにより、信号強度の高低差が縮められた荷電粒子像の撮像方法を、前記プロファイルを用いて決定する撮像方法決定手段と、
前記撮像方法決定手段により決定された撮像方法で前記荷電粒子線照射手段、前記検出手段および前記荷電粒子像生成手段を制御して前記荷電粒子像を取得する制御手段と、
取得した荷電粒子像から前記被検査パターンの欠陥を検査する検査手段と、
を備える欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−112899(P2012−112899A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264151(P2010−264151)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】