説明

次亜塩素酸の検出のための試薬

次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩を、直接又は間接的に、測定、検出及び/又はスクリーニングするための試薬として使用できる化合物又は次亜塩素酸プローブが、本件明細書に提供される。化学試料並びに生体中の細胞及び組織などの生物学的試料中の次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩の量を、直接又は間接的に測定するために使用できる方法も、本件明細書に提供される。具体的には、該方法は、本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを試料と接触させ、1種以上の蛍光化合物を形成する工程及び該蛍光化合物の蛍光特性を測定する工程を含む。次亜塩素酸或いは化学試料及び生物学的試料中の次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩の濃度を直接又は間接的に上昇又は低下させることのできる化合物を検出又はスクリーニングするための高スループットスクリーニング蛍光法も、本件明細書に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩を、直接又は間接的に測定、検出またはスクリーニングするための試薬として使用可能な次亜塩素酸プローブが本件明細書に提供される。該次亜塩素酸プローブを製造する方法及び該次亜塩素酸を細胞アッセイ試薬として使用する方法も本件明細書に提供される。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸塩(OCl-)及びそのプロトン化された形態の次亜塩素酸(HOCl)は、1787年に最初に発見されて以来周知であり、商業的に利用され(例えば、白化剤及び酸化剤)大いに利用されている。1825年には、下水、トイレ、死体安置所、病棟、船舶及び刑務所の一般的な衛生のための次亜塩素酸カルシウムの使用が報告されている。さらに、19世紀の末までに、次亜塩素酸ナトリウムが、病原性細菌に対して効果的であると見いだされたので、次亜塩素酸塩は150年以上万能な消毒剤として広く使用されてきた。
【0003】
生体内では、次亜塩素酸塩は、炎症領域で活性化された食細胞により分泌される酵素ミエロペルオキシダーゼ(MPO)により触媒される化学反応で、過酸化水素と塩素イオンからインビボで合成できる。求核性非ラジカル酸化剤として、次亜塩素酸塩は、殺菌剤として使用できる(Thomas, E.L., Infect. Immun., 1979, 23, 522-531)。さらに、バクテリア及び通常の健康な細胞は、その触媒的解毒に必要な酵素がないため、そのどちらもその毒作用を中和することができない(Lapenna, D.及びCuccurullo, F., Gen. Pharmacol., 1996, 27, 1145-1147)。
【0004】
一般的に、次亜塩素酸塩は、細菌細胞の殺傷及び/又はヒトの疾病において重要な役割を果たすことがあるいくつかのタンパク質と反応できる(Thomas, E. L., Infect. Immun., 1979, 23, 522-531; McKenna, S. M.及びDavies, K. J. A., Biochem. J., 1988, 254, 685-692; Hazell, L. J.及びStacker, R., Biochem. J., 1993, 290, 165-172; Hazell, L. J., van den Berg, J. J. 及びStacker, R., Biochem. J., 1994, 302, 297-304)。タンパク質と接触する時、次亜塩素酸はタンパク質に損傷を与えることがある。例えば、次亜塩素酸塩は、タンパク質の構造を変え、且つ/又はタンパク質の分裂及び二量体化を起こすことがある。強力な酸化剤として、次亜塩素酸塩は、低密度リポタンパク(LDL)を迅速に酸化することもできる。さらに、次亜塩素酸塩とDNAの反応は、DNAの化学修飾及び構造変化の両方を引き起こすことがある(Hawkins, C. L.及びDavies, M. J., Chem. Res. Toxicol, 2002, 15, 83-92; Prutz, W. A., Arch. Biochem. Biophys., 1996, 332, 110-120; Arch. Biochem. Biophys., 1998, 349, 183-191; Arch. Biochem. Biophys., 1999, 371, 107-114)。
【0005】
次亜塩素酸塩及びその共役酸、すなわち次亜塩素酸の上述の使用及び役割のため、インビボ検出及び測定を含む、次亜塩素酸及び次亜塩素酸塩を直接又は間接に検出及び測定する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩、すなわち次亜塩素酸の共役塩基を、直接又は間接に測定、検出又はスクリーニングする次亜塩素酸プローブとして使用できる化合物が、本件明細書において提供される。いくつかの実施態様において、本件明細書に開示される該次亜塩素酸プローブは、次亜塩素酸を、選択的且つ特異的に検出、測定又はスクリーニングできる。他の実施態様において、本件明細書に開示される該次亜塩素酸プローブは、1O2、NO、O2・-OH、ONOO-及びアルキルペルオキシラジカル(ROO)などの他の反応性酸素及び/又は窒素種の存在下で、次亜塩素酸と選択的に反応できる。ある実施態様において、該化合物又は次亜塩素酸プローブは式(I)により表される:
【化1】

(式中、Xはハロであり;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、スルホニル、ホスホニル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、-C(=O)-Y又は-C(=O)-Q-Yであり、Yは、水素、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、カルバメート、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ、ヘテロアルキル又は3から7の環原子を持つヘテロシクリルであり;Qは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アラルキレン又はアルカリーレンであり、或いはR1及びR2又はR2及びR3又はR4及びR5又はR5及びR6が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
Zは、結合又は二価の連結基であり;
Rは、式(IIIA)、(IVA)及び(VA)の1つを有し:
【化2】

式中、R7、R8及びR9のそれぞれは独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、カルバメート、アミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ又はヘテロアルキルであり、或いは式(IIIA)、(IVA)又は(VA)のR7及びR8又は式(IVA)のR8及びR9が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
Q1及びQ2のそれぞれは、Q1及びQ2が両方アミノではないという条件で、独立にアミノ又は-O-Q3であり、Q3は、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。)。
【0007】
いくつかの実施態様において、Rは、式(IIIB)、(IVB)及び(VB)の1つを有する一価二酸素化アリール基である:
【化3】

(式中、R7、R8及びR9のそれぞれは、上記で定義されたとおりであり;R10及びR11のそれぞれは独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。)。
【0008】
いくつかの実施態様において、XはFである。他の実施態様において、Zは結合である。さらなる実施態様において、Zは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン又はヘテロアリーレンである。
【0009】
ある実施態様において、R1及びR2は共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。他の実施態様において、R4及びR5は共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。さらなる実施態様において、R2及びR3は共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。なおさらなる実施態様において、R5及びR6は共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。なおさらなる実施態様において、R7及びR8は共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。
【0010】
ある実施態様において、R3及びR6のそれぞれは独立に、水素又は-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれは独立に、水素、アルキル又はアリールである。さらなる実施態様において、式(I)のR3及びR6のそれぞれは-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれはアルキルである。さらなる実施態様において、R3及びR6のそれぞれは、-C(=O)N(CH2CH3)2である。
【0011】
いくつかの実施態様において、式(IIIB)〜(VB)のいずれかのR10及びR11のそれぞれは独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。さらなる実施態様において、R10はメチルであり、R11は水素である。
【0012】
ある実施態様において、該化合物又は次亜塩素酸プローブは、式(VI)により表される:
【化4】

(式中、Xはハロであり;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、スルホニル、ホスホニル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、-C(=O)-Y又は-C(=O)-Q-Yであり、Yは、水素、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、カルバメート、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ、ヘテロアルキル又は3から7の環原子を持つヘテロシクリルであり;Qは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アラルキレン又はアルカリレーンであり、或いはR1及びR2又はR2及びR3又はR4及びR5又はR5及びR6は共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
R7、R8及びR9のそれぞれは独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、カルバメート、アミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ又はヘテロアルキルであり、或いはR7及びR8は共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
R10及びR11のそれぞれは独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。)。
【0013】
他の実施態様において、該化合物又は次亜塩素酸プローブは、式(VII)又は(VIII)により表される:
【化5】

(式中、R10はアルキルであり;R11はアルキルであり;R3及びR6のそれぞれは独立に、水素又は-C(=O)-Yであり、Yは、水素、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ又は三員から七員のヘテロシクリル環である。)。いくつかの実施例において、R3及びR6のそれぞれは、-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれはアルキルである。
【0014】
他の実施態様において、該次亜塩素酸プローブは、化合物(5)若しくは(6)又はその異性体である:
【化6】

【0015】
試料中の次亜塩素酸を測定するための組成物であって、本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを含む組成物も本件明細書において提供される。いくつかの実施態様において、該組成物は、溶媒、酸、塩基、緩衝溶液又はこれらの組み合わせをさらに含む。
【0016】
試料中の次亜塩素酸を測定する方法であって、
a)本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを試料と接触させ、蛍光化合物を形成する工程;及び
b)該蛍光化合物の蛍光特性を測定し、該試料中の次亜塩素酸の量を測定する工程
を含む方法も、本件明細書に提供される。
【0017】
いくつかの実施態様において、該試料は、化学試料又は生物学的試料である。他の実施態様において、該試料は、微生物或いは動物由来の細胞又は組織を含む生物学的試料である。
【0018】
試料中の次亜塩素酸を検出するための高スループットスクリーニング蛍光法であって、
a)本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを試料と接触させ、1種以上の蛍光化合物を形成する工程;及び
b)該蛍光化合物の蛍光特性を測定し、該試料中の次亜塩素酸の量を測定する工程
を含む方法も、本件明細書に提供される。
【0019】
次亜塩素酸の濃度を上昇又は低下させることのできる1種以上の標的化合物をスクリーニングするための高スループット法であって、
a)本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを標的化合物と接触させ、1種以上の蛍光化合物を形成する工程;及び
b)該蛍光化合物の蛍光特性を測定し、該標的化合物を定性的又は定量的に測定する工程
を含む方法も、本件明細書に提供される。
【0020】
式(I)の化合物又は次亜塩素酸プローブの製造方法であって、
a)式(IXA)及び(IXB)のピロールを
【化7】

酸触媒の存在下で式(X)のアルデヒドと反応させる工程;
【化8】

b)該反応混合物にベンゾキノンを加え、式(XI)のジピロールを形成する工程;及び
【化9】

c)式(XI)のジピロールを、三ハロゲン化ホウ素エーテラート及びトリエチルアミンと反応させる工程
を含み、式中、X、R、Z、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれが上記で定義されたとおりである方法も、本件明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】25℃で測定したジクロロメタン中の化合物5の10mM溶液のUV可視吸収スペクトルを表す。
【0022】
【図2】0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中の化合物5の10μM溶液の蛍光スペクトルを表す。蛍光強度は、520nmでの励起で測定した。
【0023】
【図3】0から5当量の種々の量の次亜塩素酸塩との反応の2分後にとった、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中の化合物5の10μM溶液の蛍光スペクトルを表す。全溶液で、全体の体積変化は1%未満であった。蛍光強度は、520nmでの励起で測定した。
【0024】
【図4】化合物5の10μM溶液の蛍光強度と次亜塩素酸塩の濃度の間の直線的な関係を表す。蛍光強度は、520nmでの励起により、541nmで測定した。
【0025】
【図5】種々の反応性酸素種(ROS)及び反応性窒素種(RNS)生成系での化合物5の10μM溶液の蛍光強度を表す。全溶液で、全体の体積変化は1%未満であった。蛍光強度は、520nmでの励起により、541nmで測定した。
【0026】
【図6】種々のpH値で10μM次亜塩素酸塩との反応の2分後にとった、0.1Mリン酸カリウム緩衝液中の化合物5の10μM溶液の蛍光スペクトルを表す。全溶液で、全体の体積変化は1%未満であった。蛍光強度は、520nmでの励起で測定した。
【0027】
【図7】MPO/ H2O2/ Cl-系における化合物5の10μM溶液の蛍光スペクトルを表す。化合物5は、MPO(1U/100mL)及びNaCl(150mM)を含むリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.4)に37℃で加えられた。下の線は、H2O2の非存在下での溶液のバックグラウンド蛍光特性を示す(ブランク)。上の線は、最終濃度5μMでのH2O2存在下での溶液の蛍光特性を示す。
【0028】
【図8】濃度20μMの化合物5とともにインキュベートされた刺激を受けたマウスJ774.1マクロファージの画像を表す。左の画像は位相差画像であり、右の画像は蛍光画像である。マクロファージは種々の刺激剤により処理され、次いで化合物5(20μM)とともに1時間インキュベートされた。8Aは、刺激剤のないコントロールの画像であった。8Bは、リポ多糖(LPS)(1μg/mL)及びインターフェロン-γ(IFN-γ)(50ng/mL)で4時間処理された後、PMA(10nM)で0.5時間処理された細胞の画像であった。8Cは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ(TEMPO)(100μM)、LPS(1μg/mL)及びIFN-γ(50ng/mL)で4時間処理された後、PMA(10nM)で0.5時間処理された細胞の画像であった。蛍光画像は、刺激剤で処理した20分後に取得された。
【0029】
【図9】濃度20μMの化合物5とともにインキュベートされた刺激を受けたマウスRAW264.7マクロファージの画像を表す。左の画像は位相差画像であり、右の画像は蛍光画像である。マクロファージは種々の刺激剤により処理され、次いで化合物5(20μM)とともに1時間インキュベートされた。9aは、刺激剤のないコントロールの画像であった。9bは、リポ多糖(LPS)(1μg/mL)及びインターフェロン-γ(IFN-γ)(50ng/mL)で4時間処理された後、PMA(10nM)で0.5時間処理された細胞の画像であった。9cは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ(TEMPO)(100μM)、LPS(1μg/mL)及びIFN-γ(50ng/mL)で4時間処理された後、PMA(10nM)で0.5時間処理された細胞の画像であった。蛍光画像は、刺激剤で処理した20分後に取得された。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(定義)
本件明細書に開示される主題の理解を助けるため、本件明細書で使用される多くの用語、略語又は他の省略表現が以下に定義される。定義されない用語、略語又は省略表現は、本件出願の提出と同時代の当業者により使用される通常の意味を持つと理解される。
【0031】
「アミノ」は、任意に置換されていてよい第一級、第二級又は第三級アミンを意味する。複素環の要素である第二級又は第三級アミン窒素原子も具体的には含まれる。例えば、アシル部分により置換されている第二級又は第三級アミノ基も具体的には含まれる。アミノ基の非限定的な例には-NR14R15があり、R14及びR15のそれぞれは独立に、H、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキル、アシル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルである。
【0032】
「アルキル」は、炭素及び水素を含み、分岐鎖でも直鎖でもよい完全に飽和した鎖状一価基を意味する。いくつかの実施態様において、アルキルは約1から約25の炭素原子を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ヘプチル、n-ヘキシル、n-オクチル及びn-デシルである。「低級アルキル」は、メチル、エチル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、イソアミル、n-ペンチル及びイソペンチルに例示されるとおり、1から6の炭素原子のアルキル基を意味する。
【0033】
「ヘテロアルキル」は、O、S及びNなどのヘテロ原子により置換されたアルキル基内に1つ以上の炭素原子を有するアルキル基を意味する。いくつかの実施態様において、ヘテロアルキル基は1つ以上のO原子を含む。他の実施態様において、ヘテロアルキル基は、1つ以上のS原子を含む。さらなる実施態様において、ヘテロアルキル基は、1つ以上のアミニレン基を含む。ある実施態様において、ヘテロアルキル基は、2つ以上のO、S、アミニレン又はこれらの組み合わせを含む。
【0034】
「アルケニル」又は「アルケニレン」は、それぞれ、少なくとも1つの二重結合を有する一価又は二価のヒドロカルビル基を意味する。アルケニル又はアルケニレン基は、環状でも、分岐鎖でも、直鎖でもよい。いくつかの実施態様において、アルケニル又はアルケニレン基は、二重結合を1つのみ含む。他の実施態様において、アルケニル又はアルケニレン基は、2つ以上の二重結合を含む。さらなる実施態様において、アルケニル又はアルケニレン基は、主鎖に2から8つの炭素原子を含む低級アルケニル又はアルケニレンのことがある。さらなる実施態様において、アルケニル又はアルケニレン基は、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニルなどに例示されるとおり、1つの二重結合及び最大25の炭素原子を持つことがある。
【0035】
「アルキニル」又は「アルキニレン」は、それぞれ、少なくとも1つの三重結合を有する一価又は二価のヒドロカルビル基を意味する。いくつかの実施態様において、アルキニル又はアルキニレン基は、三重結合を1つのみ含む。他の実施態様において、アルキニル又はアルキニレン基は、2つ以上の三重結合を含む。さらなる実施態様において、アルキニル又はアルキニレン基は、主鎖に2から8の炭素原子を含む低級アルキニル又はアルキニレンであることがある。さらなる実施態様において、アルキニル又はアルキニレン基は、エチニル、プロピニル、イソプロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニルなどに例示されるとおり、1つの三重結合及び最大20の炭素原子を持つことがある。
【0036】
「芳香族」又は「芳香族基」は、アリール又はヘテロアリールを意味する。
【0037】
「アリール」は、任意に置換されている炭素環芳香族基を意味する。いくつかの実施態様において、アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニル又は置換ナフチルなど、環の部分に6から12の炭素原子を含む単環又は二環基を含む。他の実施態様において、アリール基はフェニル又は置換フェニルである。
【0038】
「アラルキル」は、アリール基により置換されているアルキル基を意味する。アラルキルのいくつかの非限定的な例には、ベンジル及びフェネチルがある。
【0039】
「アルカリール」は、アルキル基により置換されているアリール基を意味する。アルカリールのいくつかの非限定的な例には、メチルフェニル及びメチルナフチルがある。
【0040】
「アシル」は、-C(=O)H、-C(=O)-アルキル、-C(=O)-アリール、-C(=O)-アラルキル又は-C(=O)-アルカリールの式の一価の基を意味する。
【0041】
「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
【0042】
「ヘテロ原子」は、炭素及び水素以外の原子を意味する。
【0043】
「ヘテロシクロ」又は「ヘテロシクリル」は、少なくとも1つの環の中にO、S、N、B及びPなどの少なくとも1つのヘテロ原子を有する、任意に置換された、完全に飽和又は不飽和の、単環又は二環の芳香族又は非芳香族基を意味する。芳香族ヘテロシクリル(すなわち、ヘテロアリール)基は、環の中に1又は2の酸素原子、1又は2の硫黄原子、及び/又は1から4の窒素原子を持つことができ、炭素又はヘテロ原子により分子の残りの部分に結合していることがある。ヘテロアリールのいくつかの非限定的な例には、フリル、チエニル、チアゾリル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル又はイソキノリニルなどがある。
【0044】
「炭化水素」又は「ヒドロカルビル」は、炭素及び水素の元素のみからなる有機化合物又は基を意味する。ヒドロカルビルには、アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリール基がある。ヒドロカルビルは、他の脂肪族、環式又はアリール炭化水素基により置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル及びアリール部分、例えばアルカリール、アルケンアリール及びアルキンアリールもある。いくつかの実施態様において、「炭化水素」又は「ヒドロカルビル」は1から30の炭素原子を含む。
【0045】
「ヒドロカルビレン」は、炭化水素から2つの水素原子を除くことにより形成される二価の基であって、その自由原子価が二重結合に関わっていない基を意味し、例えば、アリーレン、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アラルキレン又はアルカリーレンがある。
【0046】
本件明細書において化合物又は化学部分を説明するために使用される「置換された」は、その化合物又は化学部分の少なくとも1つの水素原子が第2の化学部分と交換したことを意味する。置換基の非限定的な例には、本件明細書に開示される例示的な化合物及び実施態様に見いだされるもの並びにハロゲン;アルキル;ヘテロアルキル;アルケニル;アルキニル;アリール;ヘテロアリール;ヒドロキシ;アルコキシル;アミノ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナート;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;オキソ;ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル);単環でも縮合又は非縮合多環でもよい炭素環カルボシクリル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル)或いは単環でも縮合又は非縮合多環でもよいヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モノフォリニル又はチアジニル);炭素環又は複素環の、単環或いは縮合又は非縮合多環アリール(例えば、フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニル又はベンゾフラニル);アミノ(第一級、第二級又は第三級);o-低級アルキル;o-アリール、アリール;アリール-低級アルキル;-CO2-CH3;-CONH2;-OCH2CONH2;-NH2;-SO2NH2;-OCHF2;-CF3;-OCF3;-NH(アルキル);-N(アルキル)2;-NH(アリール);-N(アルキル)(アリール);-N(アリール)2;-CHO;-CO(アルキル);-CO(アリール);-CO2(アルキル);及び-CO2(アリール)があり;そのような部分も、縮合環構造または橋かけ、例えば-OCH2O-により任意に置換されてよい。これらの置換基は、そのような群から選択される置換基によりさらに任意に置換されることがある。本件明細書に開示される全ての化学基は、特に記載のない限り、置換されていてよい。例えば、本件明細書に開示される「置換された」アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロカルビル又は複素環部分は、ヒドロカルビル部分、置換ヒドロカルビル部分、ヘテロ原子又は複素環により置換されている部分である。さらに、置換基は、炭素原子が、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄又はハロゲン原子などのヘテロ原子により置換されている部分を含むことがある。これらの置換基には、ハロゲン、複素環、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステル及びエーテルがある。
【0047】
「蛍光団」は、分子を蛍光性にする分子の一部分を意味する。一般的に、それは、特定の波長の放射を吸収し、異なる特定の波長で放射を再放出できる官能基である。放出された放射の強度及び波長は、一般的に、蛍光団及び蛍光団の化学的環境の両方に依存する。
【0048】
「キノリン」は、同じ六員環の中に2つのカルボニル基を有する芳香族化合物を意味する。キノリンのいくつかの非限定的な例には、1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、アントラキノン、フェナントラキノンなどがある。
【0049】
「電子受容体」は、他の化合物、一般的には電子供与体から移された少なくとも1つの電子を受容する化合物を意味する。
【0050】
「電子供与体」は、他の化合物、一般的には電子受容体に少なくとも1つの電子を供与する化合物を意味する。
【0051】
「次亜塩素酸プローブ」は、次亜塩素酸と反応して蛍光化合物を形成できる化合物を意味する。いくつかの実施態様において、本件明細書に開示された次亜塩素酸プローブは、反応性酸素種及び反応性窒素種と実質的に反応しない。他の実施態様において、本件明細書に開示された次亜塩素酸プローブは、反応性酸素種及び反応性窒素種と実質的に反応することがある。
【0052】
「反応性酸素種」又はROSは、酸素を含有するイオン、フリーラジカル並びに非ラジカル種を意味する。反応性酸素種のいくつかの非限定的な例には、1O2、O2・-、ROOOH、OCl-及びH2O2がある。
【0053】
「反応性窒素種」又はRNSは、窒素を含有するイオン、フリーラジカル並びに非ラジカル種を意味する。反応性窒素種のいくつかの非限定的な例には、一酸化窒素(NO)二酸化窒素(NO2)、亜硝酸塩(NO2-)及びペルオキシ亜硝酸塩(ONOO-)がある。
【0054】
「反応する(reacting)」、「加える(adding)」などは、1つの反応物、試薬、溶媒、触媒、反応性基などを、他の反応物、試薬、溶媒、触媒、反応性基などと接触させることを意味する。反応物、試薬、溶媒、触媒、反応性基などは、個別に、同時に又は別々に加えることができ、且つどのような順番でも加えることができる。それらは、熱の存在下でも、非存在下でも加えることができ、且つ任意に不活性雰囲気下で加えることができる。いくつかの実施態様において、「反応する」は、反応性基が同じ分子内にある場合のインサイチュ形成又は分子内反応を意味する。
【0055】
「実質的に反応する」は、反応の少なくとも1種の反応物が、約75モル%より多い量で、約80モル%より多く、約85モル%より多く、約90モル%より多く消費されることを意味する。いくつかの実施態様において、「実質的に反応する」は、反応物が、約95モル%より多く消費されることを意味する。他の実施態様において、「実質的に反応する」は、反応物が約97モル%より多く消費されることを意味する。さらなる実施態様において、「実質的に反応する」は、反応物が、約99モル%より多く消費されることを意味する。
【0056】
「高スループット法」は、大量の試料を自律的に処理又は評価できる方法を意味する。いくつかの実施態様において、インフォマティクスシステムを、該高スループット法に利用及び実施できる。該インフォマティクスシステムは、該高スループット法に利用される物理的装置のソフトウェア制御を与えることができ、且つ該高スループット法により生じる電子データを整理及び記憶できる。
【0057】
(発明の詳細な説明)
次亜塩素酸を、特異的及び/又は選択的に、検出、測定及び/又はスクリーニングするための次亜塩素酸プローブとして使用できる化合物が、本件明細書に提供される。該化合物又は次亜塩素酸プローブは、一般的に以下の式により表すことができる:
D-L-A
(式中、Dは電子供与体であり;Aは電子受容体であり;Lは結合又は二価の連結基である。)。
【0058】
いくつかの実施態様において、Lは結合である。他の実施態様において、Lは、O、S、アミニレン基(例えば、Rが水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、アシル、アリール又はヘテロシクリルである-NR-基)、スルホニル、有機連結基又はこれらの組み合わせなどの二価の連結基である。本件明細書に開示された有機連結基は、分子の2つの断片(例えば、D及びA基)を共に接続する二価の有機連結基のことがある。二価の有機連結基のいくつかの非限定的な例には、カルボニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリーレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアリーレン及びこれらの組み合わせがある。二価の有機連結基の他の非限定的な例には、-(CH2)m-基があるが、式中、mは1及び20を含めて1から20の整数であり、メチレン基の1つ以上が任意に、O、S、N、C、B、Si、P、C=O、O=S=O、ヘテロシクリレン、アリーレン、NRa基、CRb基、CRcRd基、SiReRf基、BRg基又はP(=O)Rh基により置換されており、式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhはそれぞれ独立に、結合、水素、ヒドロキシ、チオ、カルボキシル、アミノ、ハロ、アシル、アルコキシ、アルキルスルファニル、アルケニル、例えばビニル、アリル及び2-フェニルエテニル基など、アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、環状基の一部、例えばシクロアルキル、ヘテロシクリル及びベンゾなど或いはアルキル基の水素の1つ以上が、アリール、ヒドロキシ、チオ、カルボキシル、アミノ又はハロにより任意に置換されているアルキルである。
【0059】
いくつかの実施態様において、電子供与体Dは蛍光団基である。好適な蛍光団基のいくつかの非限定的な例には、ボロンジピリメテン基(boron dipyrrimethene)或いは置換又は非置換フルオレセイン、ポルフィリン、スルホローダミン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、オーラミン O、オイキサンチン、ルシフェリン、ベンズアントロン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、5,12-ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、カルセイン、カルボキシフルオレセイン、1-クロロ-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、7-ヒドロキシクマリンなどのクマリン、シアニン、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、臭化エチジウム、ペリレン、フィコビリン、フィコエリトリン、フィコエリトロビリン、ローダミン、ルブレン、スチルベン、テキサスレッド、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質又はこれらの誘導体から1つの水素を除去して誘導される一価の基がある。
【0060】
ある実施態様において、本件明細書に開示された蛍光化合物は式D-L-Aにより表すことができるが、式中、Aは電子受容体であり;Lは結合又は連結基であり;Dは式(II)を有するボロンジピリメテン基である:
【化10】

(式中、Xはハロであり;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、スルホニル、ホスホニル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、-C(=O)-Y又は-C(=O)-Q-Yであり、Yは、水素、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、カルバメート、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ、ヘテロアルキル又は3から7の環原子を持つヘテロシクリルであり;Qは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アラルキレン又はアルカリレーンであり、或いはR1及びR2又はR2及びR3又はR4及びR5又はR5及びR6が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。)。いくつかの実施態様において、式(II)のR3及びR6のそれぞれは独立に、水素又は-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれは独立に、水素、アルキル又はアリールである。さらなる実施態様において、式(II)のR3及びR6のそれぞれは-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれはアルキルである。さらなる実施態様において、R3及びR6のそれぞれは、-C(=O)N(CH2CH3)2である。
【0061】
他の実施態様において、Aは、次亜塩素酸と反応して、1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、アントラキノン、フェナントラキノンなどのキノンを形成できる一価の二酸素化アリール基である。さらなる実施形態において、Aは、式(IIIA)、(IVA)及び(VA)の1つを有する:
【化11】

(式中、R7、R8及びR9のそれぞれは独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、カルバメート、アミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ又はヘテロアルキルであり、或いは式(IIIA)、(IVA)又は(VA)のR7及びR8又は式(IVA)のR8及びR9が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
Q1及びQ2のそれぞれは、電子供与性基である。)。いくつかの実施態様において、Q1及びQ2のそれぞれは、Q1及びQ2が両方アミノではないという条件で、独立にアミノ又は-O-Q3であり、式中、Q3は、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。さらなる実施態様において、Q1及びQ2のそれぞれは、-O-Q3である。さらなる実施態様において、Q1は-O-Q3であり、Q2はアミノである。さらなる実施態様において、Q1はアミノであり、Q2は-O-Q3である。
【0062】
ある実施態様において、Rは、式(IIIB)、(IVB)及び(VB)の1つを有する一価の二酸素化アリール基である:
【化12】

(式中、R7、R8及びR9のそれぞれは本件明細書に定義されたとおりであり;R10及びR11のそれぞれは独立に、水素又は電子供与性基である。)。いくつかの実施態様において、R10及びR11のそれぞれは独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。
【0063】
いくつかの実施態様において、式(IIIA)、(IVA)、(VA)、(IIIB)、(IVB)又は(VB)のR7及びR8は、共に環を形成する。他の実施態様において、R7及びR8は、共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。さらなる実施態様において、R7及びR8は、共に、ベンゾ、ナフタ、アントラキサ、ピリド、ピリダジノ、ピリミド、ピラジノ、トリアジノ、テトラジノ、ピラゾロ、トリアゾロ又はピロロ環を形成する。ある実施態様において、R7及びR8は、共に、ベンゾ環を形成する。
【0064】
ある実施態様において、式(IVA)又は(IVB)のR8及びR9は、共に環を形成する。いくつかの実施態様において、R8及びR9は、共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。他の実施態様において、R8及びR9は、共に、ベンゾ、ナフタ、アントラキサ、ピリド、ピリダジノ、ピリミド、ピラジノ、トリアジノ、テトラジノ、ピラゾロ、トリアゾロ又はピロロ環を形成する。さらなる実施態様において、R8及びR9は、共に、ベンゾ環を形成する。
【0065】
式(IIIB)、(IVB)又は(VB)の一価二酸素化アリール基は、以下のスキーム(A)に示されるとおり、次亜塩素酸と反応して、それぞれキノン(IIIC)、(IVC)又は(VC)を形成することができる。
【化13】

【0066】
いくつかの実施態様において、R10は、保護又は未保護のヒドロキシル基であり、R11は、メトキシなどのアルコキシである。他の実施態様において、R11は、保護又は未保護のヒドロキシル基であり、R10は、メトキシなどのアルコキシである。さらなる実施態様において、スキーム(A)の式(IIIB)、(IVB)又は(VB)の二酸素化アリール基は、室温で、約7.4から約8.2のpH範囲で、次亜塩素酸により酸化され、それぞれ(IIIC)、(IVC)又は(VC)のキノンを形成することができる。
【0067】
他の実施態様において、Aは、1,4-又は1,2-二置換アリーレン又はヘテロアリーレン基であり、該置換基は独立に、アルコキシ基或いは保護又は未保護ヒドロキシル基である。さらなる実施態様において、アリーレン基はフェニレンである。
【0068】
さらに、本件明細書に開示された化合物又は次亜塩素酸プローブは、ボロンジピロメテン(BODIPY)タイプの蛍光団を含む。いくつかの実施態様において、一般式(I)、(VI)、(VII)及び(VIII)により表される化合物又は次亜塩素酸プローブは、実質的に非蛍光性である。他の実施態様において、一般式(I)、(VI)、(VII)及び(VIII)により表される化合物又は次亜塩素酸プローブは、生理学的条件下で次亜塩素酸と効率よく反応して、強い蛍光シグナルを与えることができる。さらなる実施態様において、次亜塩素酸の量は、酸化された次亜塩素酸プローブの蛍光シグナルを測定することにより、非常に高い特異性及び選択性で測定することができる。
【0069】
いくつかの実施態様において、本件明細書に開示された化合物又は次亜塩素酸プローブは、式(I)により表される:
【化14】

(式中、X、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは、本件明細書に定義されたとおりであり;
Zは、結合又はアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン及びヘテロアリーレンなどの二価の連結基であり;
Rは、式(IIIA)、(IVA)及び(VA)の1つを有する;
【化15】

式中、R7、R8及びR9のそれぞれは独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、カルバメート、アミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ又はヘテロアルキルであり、或いは式(IIIA)、(IVA)又は(VA)のR7及びR8又は式(IVA)のR8及びR9は共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
Q1及びQ2のそれぞれは、電子供与性基である。)。いくつかの実施態様において、Q1及びQ2が両方アミノではないという条件で、Q1及びQ2のそれぞれは独立に、アミノ又は-O-Q3であり、Q3は、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。さらなる実施態様において、Q1及びQ2のそれぞれは、-O-Q3である。さらなる実施態様において、Q1は-O-Q3であり、Q2はアミノである。さらなる実施態様において、Q1はアミノであり、Q2は-O-Q3である。
【0070】
ある実施態様において、Rは、式(IIIB)、(IVB)及び(VB)の1つを有する一価二酸素化アリール基である:
【化16】

(式中、R7、R8及びR9のそれぞれは、本件明細書に定義されたとおりであり;R10及びR11のそれぞれは独立に、水素又は電子供与性基である。)。
【0071】
いくつかの実施態様において、R10及びR11のそれぞれは独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。他の実施態様において、R11は水素である。さらなる実施態様において、R10は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどのアルキルである。さらなる実施態様において、R11は水素であり、R10はメチルである。
【0072】
他の実施態様において、Zは結合である。他の実施態様において、Zはアリーレンである。さらなる実施態様において、Zは、式(a)-(p)の1つを有するアリーレンである:
【化17】

さらなる実施態様において、式(a)-(p)の1つ以上は任意に置換されている。
【0073】
ある実施態様において、本件明細書に開示された化合物又は次亜塩素酸プローブは、式(VI)により表される:
【化18】

(式中、X、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11のそれぞれは、本件明細書に定義されたとおりである。)。いくつかの実施態様において、R11は水素である。他の実施態様において、R10は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどのアルキルである。さらなる実施態様において、R11は水素であり;R10はメチルである。ある実施態様において、2つのX基は異なる。他の実施態様において、2つのX基は同じである。さらなる実施態様において、2つのX基のそれぞれはFである。いくつかの実施態様において、R1、R2、R4及びR5のそれぞれは水素であり、R3及びR6のそれぞれは-C(=O)-Yであり、Yはジエチルアミノである。
【0074】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(VI)のR3及びR6のそれぞれは独立に、水素又は-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれは独立に、水素、アルキル又はアリールである。さらなる実施態様において、式(VI)のR3及びR6のそれぞれは-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれはアルキルである。さらなる実施態様において、R3及びR6のそれぞれは-C(=O)N(CH2CH3)2である。
【0075】
他の実施態様において、式(I)、(II)又は(VI)のR2及びR3は、共に環を形成する。他の実施態様において、R2及びR3基は、共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。さらなる実施態様において、R2及びR3基は、共に、ベンゾ、ナフタ、アントラキサ、ピリド、ピリダジノ、ピリミド、ピラジノ、トリアジノ、テトラジノ、ピラゾロ、トリアゾロ又はピロロ環を形成する。いくつかの実施態様において、R及びR基は、共に、ベンゾ環を形成する。
【0076】
さらなる実施態様において、式(I)、(II)又は(VI)のR5及びR6は、共に環を形成する。他の実施態様において、R5及びR6基は、共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。さらなる実施態様において、R5及びR6基は、共に、ベンゾ、ナフタ、アントラキサ、ピリド、ピリダジノ、ピリミド、ピラジノ、トリアジノ、テトラジノ、ピラゾロ、トリアゾロ又はピロロ環を形成する。いくつかの実施態様において、R5及びR6基は、共に、ベンゾ環を形成する。
【0077】
さらなる実施態様において、式(I)、(II)又は(VI)のR及びRは、共に環を形成する。他の実施態様において、R及びR基は、共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。さらなる実施態様において、R1及びR2基は、共に、ベンゾ、ナフタ、アントラキサ、ピリド、ピリダジノ、ピリミド、ピラジノ、トリアジノ、テトラジノ、ピラゾロ、トリアゾロ又はピロロ環を形成する。いくつかの実施態様において、R及びR基は、共に、ベンゾ環を形成する。
【0078】
さらなる実施態様において、式(I)、(II)又は(VI)のR4及びRは、共に環を形成する。他の実施態様において、R4及びR5基は、共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。さらなる実施態様において、R4及びR5基は、共に、ベンゾ、ナフタ、アントラキサ、ピリド、ピリダジノ、ピリミド、ピラジノ、トリアジノ、テトラジノ、ピラゾロ、トリアゾロ又はピロロ環を形成する。いくつかの実施態様において、R4及びR5基は、共に、ベンゾ環を形成する。
【0079】
さらなる実施態様において、式(VI)のR7及びR8は、共に環を形成する。他の実施態様において、R7及びR8基は、共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。さらなる実施態様において、R7及びR8基は、共に、ベンゾ、ナフタ、アントラキサ、ピリド、ピリダジノ、ピリミド、ピラジノ、トリアジノ、テトラジノ、ピラゾロ、トリアゾロ又はピロロ環を形成する。いくつかの実施態様において、R7及びR8基は、共に、ベンゾ環を形成する。
【0080】
ある実施態様において、本件明細書に開示された化合物又は次亜塩素酸プローブは、式(VII)又は(VIII)により表される:
【化19】

(式中、R10はアルキルであり;R11はアルキルであり;R3及びR6のそれぞれは独立に、水素又は-C(=O)-Yであり、Yは、水素、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ又は三員から七員のヘテロシクリル環である。)。いくつかの実施例において、R3及びR6のそれぞれは、-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれはアルキルである。さらなる実施態様において、R3及びR6のそれぞれは、-C(=O)N(CH2CH3)2である。
【0081】
いくつかの実施態様において、本件明細書に開示された次亜塩素酸プローブは、化合物(5)若しくは(6)又はその異性体である:
【化20】

【0082】
化学試料或いは微生物又は動物由来の細胞若しくは組織などの生物学的試料中の次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩を、直接又は間接的に測定するための試薬組成物も、本件明細書に提供される。該試薬組成物は、本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを含む。いくつかの実施態様において、該試薬組成物は、溶媒、酸、塩基、緩衝溶液又はこれらの組み合わせ、塩基、緩衝溶液又はこれらの組み合わせをさらに含む。
【0083】
試料中の次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩を直接又は間接的に測定する方法も、本件明細書に提供される。いくつかの実施態様において、該方法は、a)本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを試料と接触させ、蛍光化合物を形成する工程;及びb)該蛍光化合物の蛍光特性を測定する工程を含む。いくつかの実施態様において、蛍光特性は、本件明細書に開示される方法又は当業者に公知の方法により測定される。他の実施態様において、試料は、化学試料又は生物学的試料である。さらなる実施態様において、試料は、微生物或いは動物由来の細胞又は組織を含む生物学的試料である。
【0084】
試料中の次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩を直接又は間接的に検出するための高スループットスクリーニング蛍光法も、本件明細書に提供される。いくつかの実施態様において、該高スループットスクリーニング蛍光法は、a)本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを試料と接触させ、1種以上の蛍光化合物を形成する工程;及びb)該蛍光化合物の蛍光特性を測定する工程を含む。他の実施態様において、蛍光特性は、本件明細書に開示される方法又は当業者に公知の方法により測定される。
【0085】
次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩の濃度を直接又は間接的に上昇又は低下させることのできる1種以上の標的化合物をスクリーニングするための高スループット法も、本件明細書に提供される。いくつかの実施態様において、該高スループット法は、a)本件明細書に開示される次亜塩素酸プローブを標的化合物と接触させ、1種以上の蛍光化合物を形成する工程;及びb)該蛍光化合物の蛍光特性を測定し、該標的化合物を定性的又は定量的に測定する工程を含む。他の実施態様において、蛍光特性は、本件明細書に開示される方法又は当業者に公知の方法により測定される。
【0086】
いくつかの実施態様において、インフォマティクスシステムを、本件明細書に開示された高スループット法に利用及び実施できる。他の実施態様において、該インフォマティクスシステムは、該高スループット法に利用される物理的装置のソフトウェア制御を与えることができる。他の実施態様において、該インフォマティクスシステムは、該高スループット法により生じる電子データを整理する。さらなる実施態様において、該インフォマティクスシステムは、該高スループット法により生じる電子データを記憶する。
【0087】
(一般的な合成手順)
本件明細書に開示された化合物又は次亜塩素酸プローブは、公知の有機合成並びに本件明細書に開示された種々の一般的又は特定の合成手順により当業者により作ることができる。例えば、式(I)の次亜塩素酸プローブは、以下のスキーム(B)に示される一般的な手順に従い合成できる。
【化21】

【0088】
スキーム(B)のR、X、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは、上記で定義されたとおりである。式(IXA)及び(IXB)のピロールは、酸触媒の存在下、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンなどの適切な溶媒中で、室温から80℃の温度範囲で、式(X)のアルデヒドと反応できる。式(X)のアルデヒドの相当な量が式(IXA)及び(IXB)のピロールと反応した後、ベンゾキノンなどの酸化剤を反応混合物に加えて、式(XI)のジピロールを形成することができる。好適なベンゾキノンのいくつかの非限定的な例には、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)及び2,3,5,6-テトラクロロ-パラベンゾキノンがある。式(XI)のジピロールは、洗浄、濾過、抽出、蒸発、蒸留、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の技術により精製できる。
【0089】
好適な酸触媒のいくつかの非限定的な例には、トリフルオロ酢酸(TFA)、4-(トリフルオロメチル)安息香酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、無水酢酸、ルイス酸(例えば、EtAlCl、EtAlCl2、BF3、SnCl4、AlCl3、Ti(イソプロポキシド)4及びTiCl4)並びにこれらの組み合わせがある。いくつかの実施態様において、該酸触媒はトリフルオロ酢酸である。
【0090】
いくつかの実施態様において、式(IXA)のピロールは式(IXB)のピロールと同じである。他の実施態様において、式(IXA)のピロールと式(IXB)のピロールは異なる。式(IXA)及び(IXB)のピロールは、Aldrich Chemicalなどの供給業者から購入できるが、公知の方法により調製もできる。ピロールの化学的性質及び調製は、引用により本件明細書に組み込まれているRichard Alan Jonesらの書籍「ピロールの化学(Chemistry of Pyrroles)」、Academic Press (1977)に開示されている。
【0091】
式(X)のアルデヒドは、Aldrich Chemicalなどの供給業者から購入できるが、当業者に公知の方法により調製もできる。例えば、式(X)のアルデヒドは、R及びZが上記で定義されたとおりの式R-Z-Hを有するアリール化合物のホルミル化により調製できる。いくつかの実施態様において、式(X)のアルデヒドは、式(IIID)、(IVD)及び(VD)の1つを有するアリール化合物のホルミル化により調製できる:
【化22】

(式中、R7、R8、R9、Q1及びQ2のそれぞれは、本件明細書に定義されたとおりである。)。
【0092】
ある実施態様において、式(X)のアルデヒドは、式(IIIE)、(IVE)及び(VE)の1つを有するアリール化合物のホルミル化により調製できる:
【化23】

(式中、R7、R8、R9、R10及びR11のそれぞれは、本件明細書に定義されたとおりである。)。
【0093】
Rがフェノール基であるか、又はフェノール基を含む場合、ホルミル化は、パラホルムアルデヒドのみで実施できる。その代わりに、Zがアリーレン基である場合、ホルミル化は、ジメチルホルムアミドとオキシ塩化リンの混合物により、ビルスマイヤー・ハック反応を介して実施できる。同様に、Zが結合であり、Rが二酸素化アリール基である場合、式(X)のアルデヒドは、式R-Hを有する二酸素化アリール化合物のホルミル化により調製できる。その代わりに、ライマー・チーマン反応、ダフ反応、ガッターマン・コッホ反応及びガッターマン反応を利用して、適切な出発原料により式(X)のアルデヒドを調製できる。
【0094】
次に、式(XI)のジピロールを、ジクロロメタンなどの好適な溶媒中で、三ハロゲン化ホウ素エーテラート及びトリエチルアミンで処理して、式(I)の次亜塩素酸プローブを形成できる。いくつかの実施態様において、三ハロゲン化ホウ素は、BF3、BCl3、BBr3又はこれらの組み合わせである。式(I)の次亜塩素酸プローブは、洗浄、濾過、抽出、蒸発、蒸留、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の技術により精製できる。
【0095】
同様に、式(VI)の化合物又は次亜塩素酸プローブは、以下のスキーム(C)に示される一般的な手順に従い、合成できる。
【化24】

【0096】
スキーム(C)のR、X、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10のそれぞれは、本件明細書に定義されたとおりである。式(IXA)及び(IXB)のピロールは、上記スキーム(B)に開示されたとおり、酸触媒の存在下で、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンなどの適切な溶媒中で、室温から80℃の温度で式(XII)のアルデヒドと反応できる。いくつかの実施態様において、式(IXA)のピロールは、式(IXB)のピロールと同じである。他の実施態様において、式(IXA)のピロールと式(IXB)のピロールは異なる。
【0097】
式(XII)のアルデヒドは、Aldrich Chemicalなどの供給業者から購入できるが、当業者に公知の方法により調製もできる。例えば、式(XII)のアルデヒドは、式(XIV)を有するアリール化合物のホルミル化により調製できる:
【化25】

(式中、R7、R8、R9及びR10のそれぞれは、本件明細書に定義されたとおりである。)。式(XIV)のアリール化合物のホルミル化は、パラホルムアルデヒドのみで実施できる。その代わりに、ホルミル化は、ジメチルホルムアミドとオキシ塩化リンの混合物により、ビルスマイヤー・ハック反応を介して実施できる。
【0098】
式(XIV)のアルデヒドが完全に反応した後、ベンゾキノンなどの酸化剤を反応混合物に加えて、式(XIII)のジピロールを形成できる。式(XIII)のジピロールは、洗浄、濾過、抽出、蒸発、蒸留、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の技術により精製できる。
【0099】
次に、式(XIII)のジピロールを、スキーム(B)に開示されたとおり、ジクロロメタンなどの好適な溶媒中で、三ハロゲン化ホウ素エーテラート及びトリエチルアミンで処理して、式(VI)の次亜塩素酸プローブを形成できる。式(VI)の次亜塩素酸プローブは、洗浄、濾過、抽出、蒸発、蒸留、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の技術により精製できる。
【0100】
スキームB及びCの式中のいくつかの官能基は、保護基により保護できる。いくつかの実施態様において、スキームB及びCは、異なる保護基を使用して最適化することができる。保護基の化学的性質は、引用により本件明細書に組み込まれているGreene, T. W.及びWuts, P. G. M.の書籍「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、3版、John Wiley & Sons, Inc.、1999などの文献に見いだすことができる。
【実施例】
【0101】
以下の実施例1〜4は、一般式(I)、(VI)、(VII)及び(VIII)により表されるいくつかの次亜塩素酸プローブを製造し使用する方法を詳細に説明する。詳細な開示は、本件開示の一部を形成する上述の一般的な合成手順の範囲内であり、それを例示するのに役立つ。これらの実施例は、例示の目的のみに示され、本件開示の範囲を限定するものではない。
【0102】
(実施例1-化合物5の合成スキーム)
(ピロール-2-カルボン酸の合成)
【化26】

ピロール-2-カルボキサルデヒド(10.0g、105mmol)を50mLのメタノールに溶解させ、次いで500mLの蒸留水で希釈した。ピロール-2-カルボキサルデヒド溶液に、新鮮な酸化銀(48.3g、210mmol)及び水酸化ナトリウム(8.5g、212mmol)を加えた。反応混合物を1時間室温で攪拌した後、沈殿を濾過して除き、熱水で洗浄した。合わせた炉液及び洗液をジエチルエーテル(500mL)で抽出し、0℃で37%塩化水素により酸性化した。溶液をジエチルエーテル(200mL×4)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発させると、9.9gのピロール-2-カルボン酸(収率85%)を得た。
【0103】
(化合物1の合成)
【化27】

ピロール-2-カルボン酸(10.0g、90mmol)を250mLのジクロロメタンに溶解させた。その後、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(20.4g、99mmol)、4-ジメチル-アミノピリジン(DMAP)(2.2g、18mmol)及びジエチルアミン(10.2mL、99mmol)を、0℃で、アルゴン雰囲気下で加えた。反応混合物を0℃で30分攪拌し、次いで、室温で8時間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し固形物を濾過して除いた後、炉液を希塩酸で洗浄し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで溶媒を減圧下で蒸発させた。n-ヘキサン中の35%EtOAcを希釈液として使用するカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製すると、白色固体として10.5gの化合物1を得た(収率70%)。
【0104】
(2-ヒドロキシ-5-メトキシベンズアルデヒドの合成)
【化28】

化合物p-メトキシフェノール(3g、24.2mmol)、無水塩化マグネシウム(3.48g、37.0mmol)及び乾燥トリエチルアミン(12.8mL、92.1mmol)を100mLのアセトニトリルに加えた混合物に、乾燥パラホルムアルデヒド(5g、167mmol)を加えた。反応混合物を8時間還流し、室温まで冷却した。次いで、反応混合物を5%HCl(300mL)中に注ぎ、ジエチルエーテル(200mL)で3回抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4で乾燥し、濾過し、蒸発させた。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン中の20%EtOAc)で精製すると、3.35gの2-ヒドロキシ-5-メトキシベンズアルデヒドを得た(収率91%)。
【0105】
(化合物2の合成)
【化29】

60mLのTHFに2-ヒドロキシ-5-メトキシベンズアルデヒド(3.3g、21.7mmol)を溶かした溶液に、臭化アリル(3.2mL、32.7mmol)及びK2CO3(12g、86.2mmol)を加えた。反応混合物を10時間還流した。次いで、混合物を20mLの水で2回洗浄した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4で乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗化合物を、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン中の20%EtOAc)で精製すると、無色の油として3.33gの化合物2が得られた(収率80%)。化合物2を以下の物性によりキャラクタリゼーションした:
【化30】

【0106】
(化合物3の合成)
【化31】

化合物1(4.2g、25.4mmol)及び化合物2(2.44g、12.7mmol)を20mLの無水1,2-ジクロロエタンにアルゴン雰囲気下で溶解させた。一滴のトリフルオロ酢酸(TFA)を加え、溶液を還流下で加熱した。TLC(シリカ;CH2Cl2)モニタリングが化合物2の完全な消費を示した後、40mLのCH2Cl2に溶かしたDDQ(2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン)(2.89g、12.7mmol)の溶液を加え、20分間攪拌を継続した。反応混合物を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗化合物を、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン中40%EtOAc、20%CH2Cl2)で精製すると、茶褐色の油として化合物3を得た(1.51g、収率62%)。化合物3を以下の物性によりキャラクタリゼーションした:
【化32】

【0107】
(化合物4の合成)
【化33】

化合物3(2.2g、4.38mmol)及びトリエチルアミン(12.3mL、87.5mmol)を、アルゴン雰囲気下で137mLの無水ジクロロメタンに溶解させ、溶液を室温で10分間攪拌した。BF3-OEt2(12.3mL、96.3mmol)を加え、攪拌を4時間継続した。反応混合物を水及び2NのNaOHで洗浄した。水溶液をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4で乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗化合物を、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン中40%EtOAc、20%CH2Cl2)で精製すると、固体として化合物4を得た(1.47g、収率61%)。化合物3を以下の物性によりキャラクタリゼーションした:融点、72.0-73.9℃;
【化34】

【0108】
(化合物5の合成)
【化35】

50mLのエタノールに溶かした化合物4(400mg、0.725mmol)の溶液に、アルゴンガスを30分間バブリングし溶存酸素を除去した。次いで、Pd(PPh3)4(83.7mg、0.0725mmol)を、強いアルゴン流の下でゆっくりと加えた。反応混合物を6時間還流した。固形物を濾過して除き、炉液をMgSO4で乾燥した。溶媒を、減圧下で蒸発させた。残渣を、カラムクロマトグラフィー(CHCl3中5%MeOH)により精製すると、固体として化合物5を得た(258mg、収率70%)。化合物5を以下の物性によりキャラクタリゼーションした:融点、89.6-91.2 ℃;
【化36】

【0109】
(実施例2-化合物5による次亜塩素酸の検出)
(化合物5のUV-可視吸収スペクトル)
実施例1で得られた化合物5をジクロロメタンに溶解させ、10mM溶液を形成した。化合物5の10mM溶液の吸収スペクトルを測定し、図1に示す。図1のデータは、化合物5の吸収極大が約520nmであることを示す。
【0110】
(化合物5の発光スペクトル)
実施例1で得られた化合物5をDMFに溶解させて10mMの濃度にし、次いで溶液を0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)により10μMに希釈した。化合物5の10μM溶液の蛍光特性を、日立F2500分光蛍光光度計を用いて測定し、光電子倍増管の電圧は700Vであった。スリット幅は、励起及び発光の両方で2.5nmであった。測定は、励起波長520nmで実施した。化合物5自体が非蛍光性であることを示す図2に結果を示す。
【0111】
(化合物5による次亜塩素酸の検出)
実施例1で得られた化合物5をDMFに溶解させて10mMの濃度にし、次いで溶液を0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)により10μMに希釈した。市販の漂白剤がNaOClの源であった。NaOClの濃度は、KIO3による滴定により標定したチオ硫酸ナトリウムによる滴定により測定した。次いで、NaOClを加え、最終濃度0、3、4、5、6及び8μMとした。上述の条件と同じ条件下で2分後に溶液の蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトルを図3に示す。図3に明らかに示されているとおり、化合物5の蛍光強度は、次亜塩素酸塩の添加後に著しく増加する。さらに、図4は、541nmでの蛍光強度が、次亜塩素酸塩の濃度増加とともに直線的に増加することを示している。
【0112】
(実施例3-種々の反応性酸素種及び反応性窒素種との化合物5の特異性の比較)
OCl-、H2O21O2、NO、O2・-OH、ONOO-及びアルキルペルオキシラジカル(ROO)を含む、種々の反応性酸素種(ROS)及び反応性窒素種(RNS)に対する化合物5の反応性を比較した。種々の反応性酸素種及び反応性窒素種を、化合物5の対応する溶液(0.1Mリン酸カリウム緩衝液中10μM)の5mLに独立に加えた。処理の前後の蛍光強度の変化を測定した。結果を図5に示す。図5の試料(a)-(h)は以下のとおり調製した。
a.H2O2(最終100μM)を加え、次いで25℃で1時間攪拌した。
b.(3-(1,4-ジヒドロ-1,4-エピジオキシ-1-ナフチル)プロピオン酸)(最終100μM)を加え、次いで25℃で1時間攪拌した。
c.2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(最終100μM)を加え、次いで25℃で1時間攪拌した。
d.SNP(ニトロフェリシアン化(III)ナトリウム二水和物)(最終100μM)を加え、次いで25℃で1時間攪拌した。
e. O2・-は、キサンチン及びキサンチンオキシダーゼにより発生させた。キサンチンオキシダーゼを最初に加えた。キサンチンオキシダーゼを溶解させた後、キサンチン(最終100μM)を加え、混合物を25℃で1時間攪拌した。
f.塩化第一鉄(最終10μM)を、10当量のH2O2(100μM)の存在下で加えた。
g.ONOO-(最終10μM)を25℃で加えた。
h.NaOCl(最終10μM)を25℃で加えた。
【0113】
図5は、次亜塩素酸塩との反応時にのみ蛍光が増大することを示す。これらの結果は、化合物5が、非生物的な系において、ROS及びRNSの中で次亜塩素酸塩に対してはるかに高い反応性を有することを示した。さらに、化合物5のフェノール誘導体と、生物系に存在する他の反応性酸素種又は反応性窒素種との間に類似の反応は進行しない。
【0114】
(実施例4-種々のpH値での化合物5による次亜塩素酸の検出)
実施例1で得られた化合物5をDMFに溶解させて10mMの濃度にし、次いで溶液を、種々のpH値(約4.0から約12.0)を持つ0.1Mリン酸カリウム緩衝液により10μMに希釈した。市販の漂白剤がNaOClの源であった。NaOClの濃度は、KIO3による滴定により標定したチオ硫酸ナトリウムによる滴定により測定した。次いで、NaOClを加え、最終濃度を10μMとした。上述の条件と同じ条件下で2分後に溶液の蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトルを図6に示す。図6に明らかに示されているとおり、化合物5の蛍光強度は、他のpH値でよりも約5から約7.5のpH範囲で著しく高い。次亜塩素酸のpKaが7.6であることを考慮すると、化合物5が次亜塩素酸塩よりも一般的に次亜塩素酸を検出しそうである。
【0115】
(実施例5-MPO/ H2O2/Cl-系における化合物5による次亜塩素酸の検出)
生体内の次亜塩素酸は、酵素MPOに触媒される反応で過酸化水素及び塩化物イオンから主に合成されており(Hidalgo, E.; Bartolome, R.; Dominguez, C , Chem. Biol. Interact. 2002, 139, 265-282)、発明者らは、化合物5をMPO/ H2O2/Cl-系に適用した(図7)。化合物5を添加すると蛍光強度は劇的に増加したが、コントロール実験(H2O2の非存在下)ではほとんど全く蛍光が検出されなかった。化合物5はH2O2と反応しないので、観察された蛍光の増大は次亜塩素酸の形成に帰することができ、すなわち、本件明細書に開示された次亜塩素酸プローブは酵素系における次亜塩素酸の産生を検出できる。
【0116】
(実施例6-細胞アッセイ)
マウスJ774.1マクロファージ(ATCC、米国)を使用し、生細胞における次亜塩素酸の検出のための化合物5の可能性を調査した。第1に、マウスJ774.1細胞を、リポ多糖(LPS)(1μg/mL)及びインターフェロン-γ(IFN-γ)(50ng/mL)により4時間刺激した。化合物5(20μM)と共に1時間インキュベートした後、細胞をPBS緩衝液で3回洗浄し、さらにPMAにより0.5時間さらに刺激した。図8Aに示されるとおり、刺激剤での処理前に細胞中に明らかな蛍光は観察されなかった。蛍光細胞が、LPS/IFN-γに次いでPMAによる処理の後で観察されたことは、注目すべきことである(図8B)。図8Cは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)での処理後に蛍光が消光したことを示している。それ自体フリーラジカルとして、TEMPOは、次亜塩素酸の前駆体であるスーパーオキシドラジカルを除去できる(Muijsers, R. B. R.; van den Worm, E.; Folkerts, G.; Beukelman, C. J.; Koster, A. S.; Postma, D. S.; Nijkamp, F. P., Br. J. Pharmacol, 2000, 130, 932-936)。これらの結果は、マクロファージが刺激剤での処理時に実際にOCl-を産生し、次亜塩素酸の形成が、化合物5の使用により視覚化できることを示唆している。
【0117】
(実施例7-細胞アッセイ2)
マウスマクロファージセルラインRAW264.7は、刺激を受けるとMPOを産生する(Adachi, Y.; Kindzelskii, A. L.; Petty, A. R.; Huang, J. B.; Maeda, N.; Yotsumoto, S.; Aratani, Y.; Ohno, N.; Petty, H. R., J. Immunol. 2006, 176, 5033-5040)。さらに、LPS/IFN-γ(インターフェロン-γ)及びホルボールミリステートアセテート(PMA)などの刺激物にマクロファージを暴露させると、他のROS及びRNSの生成が活性化するであろう。この実験では、RAW264.7をモデルとして使用し、刺激の下にMPO/H2O2/Cl-系により生成したOCl-の検出に化合物5を使用可能かどうか試験した。発明者らは、刺激剤による処理の前に細胞中に明らかな蛍光を全く観察しなかった(図9a)。蛍光細胞が、LPS/IFN-γに次いでPMAによる処理の後に現れたことは注目に値する(図9b)。図9cは、スーパーオキシドラジカルを除去できるフリーラジカルである2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)による処理後に蛍光が消光したことを示している。これらの結果は、刺激を受けるとマクロファージがOCl-を産生でき、この過程が化合物5の使用により視覚化できることを確認する。
【0118】
先に示したとおり、本件明細書に開示された実施態様は、次亜塩素酸を検出、測定及び/又はスクリーニングするための次亜塩素酸プローブとして使用できる種々の化合物を提供する。本件開示は、限られた数の実施態様に関して記載されてきたが、1実施態様の特定の特徴は、本件特許の他の実施態様に帰するべきではない。どの単一の実施態様も、本件開示の全ての態様を表すものではない。いくつかの実施態様において、組成物又は方法は、本件明細書に言及されてない多くの化合物又は工程を含むことがある。他の実施態様において、組成物又は方法は、本件明細書に列挙されていない化合物又は工程を含まず、又は実質的に含まない。記載された実施態様からの変形及び改良が存在する。例えば、本件明細書に開示された試薬組成物は、本件明細書に開示された次亜塩素酸プローブのみを含む必要はない。それは、次亜塩素酸プローブに一般的に好適などのような種類の化合物も含むことができる。本件明細書に開示された次亜塩素酸プローブを製造し使用する方法が多くの工程と関連して記載されることが留意される。これらの工程は、どのような順番でも実施できる。1つ以上の工程を省略又は組み合わせることができるが、それでも実質的に同じ結果を得ることができる。添付された請求項は、そのような変形及び改良の全てを、本件開示の範囲内であるとして含むものである。
【0119】
本件明細書に言及された全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個別の刊行物又は特許出願が具体的且つ個別に引用により組み込まれると示されたのと同じ程度に、引用により本件明細書に組み込まれる。本件開示が、当業者に、本件特許、その原理及びその実際的な用途を知らせるために、説明及び例示のために詳細に記載されてきたことを理解されたい。さらに、述べられた本件明細書に提供された特定の実施態様は、網羅的でも本件開示を限定するものでもなく、上記の実施例及び詳細な説明に照らして、多くの代替物、改良及び変形が当業者には明らかであろう。従って、本件開示は、以下の請求項の精神及び範囲に含まれるそのような代替物、改良及び変形の全てを包含するものである。上記の実施例及び説明のいくつかは、化合物、組成物及び方法が機能する仕方についていくつかの結論を含むが、発明者らは、これらの結論及び機能により拘束されることを意図せず、現状の理解に照らして可能性のある説明としてのみそれらを発表する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

(式中、Xがハロであり;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれが独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、スルホニル、ホスホニル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、-C(=O)-Y又は-C(=O)-Q-Yであり、Yが、水素、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、カルバメート、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ、ヘテロアルキル又は3から7の環原子を持つヘテロシクリルであり;Qが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アラルキレン又はアルカリーレンであり、或いはR1及びR2又はR2及びR3又はR4及びR5又はR5及びR6が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
Zが、結合又は二価の連結基であり;
Rが、式(IIIA)、(IVA)及び(VA)の1つを有し;
【化2】

式中、R7、R8及びR9のそれぞれが独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、カルバメート、アミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ又はヘテロアルキルであり、或いは式(IIIA)、(IVA)又は(VA)のR7及びR8又は式(IVA)のR8及びR9が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
Q1及びQ2のそれぞれが、Q1及びQ2が両方アミノではないという条件で、独立にアミノ又は-O-Q3であり、Q3が、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。)。
【請求項2】
Rが、式(IIIB)、(IVB)及び(VB)の1つを有する一価二酸素化アリール基である、請求項1記載の化合物:
【化3】

(式中、R7、R8及びR9のそれぞれが独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、カルバメート、アミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ又はヘテロアルキルであり、或いは式(IIIB)-(VB)のR7及びR8又は式(IVB)のR8及びR9が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
R10及びR11のそれぞれが独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。)。
【請求項3】
XがFである、請求項1〜2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
Zが結合である、請求項1〜2のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Zが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン又はヘテロアリーレンである、請求項1〜2のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
R1及びR2が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
R4及びR5が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
R2及びR3が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
R5及びR6が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
R3及びR6のそれぞれが独立に、水素又は-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれが独立に、水素、アルキル又はアリールである、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
式(I)のR3及びR6のそれぞれが-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれがアルキルである、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
R3及びR6のそれぞれが、-C(=O)N(CH2CH3)2である、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
R7及びR8が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成する、請求項1〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
R10及びR11のそれぞれが独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである、請求項2〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
R10がメチルであり、R11が水素である、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
式(VI)を有する、請求項1記載の化合物:
【化4】

(式中、Xがハロであり;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれが独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、スルホニル、ホスホニル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、-C(=O)-Y又は-C(=O)-Q-Yであり、Yが、水素、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、カルバメート、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ、ヘテロアルキル又は3から7の環原子を持つヘテロシクリルであり;Qが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アラルキレン又はアルカリレーンであり、或いはR1及びR2又はR2及びR3又はR4及びR5又はR5及びR6が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
R7、R8及びR9のそれぞれが独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、カルバメート、アミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ又はヘテロアルキルであり、或いはR7及びR8が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
R10及びR11のそれぞれが独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである。)。
【請求項17】
式(VII)又は(VIII)を有する、請求項16記載の化合物:
【化5】

(式中、R10がアルキルであり;R11がアルキルであり;R3及びR6のそれぞれが独立に、水素又は-C(=O)-Yであり、Yが、水素、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ又は三員から七員のヘテロシクリル環である。いくつかの実施態様において、R3及びR6のそれぞれが、-C(=O)NR12R13であり、R12及びR13のそれぞれがアルキルである。)。
【請求項18】
化合物(5)若しくは(6)又はその異性体である、請求項17記載の化合物:
【化6】


【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を含む、次亜塩素酸を測定するための組成物。
【請求項20】
溶媒、酸、塩基、緩衝溶液又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
試料中の次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩を直接又は間接的に測定する方法であって、
a)請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を試料と接触させ、蛍光化合物を形成する工程;及び
b)該蛍光化合物の蛍光特性を測定する工程
を含む、前記方法。
【請求項22】
前記試料が、化学試料又は生物学的試料である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記試料が、微生物或いは動物由来の細胞又は組織を含む生物学的試料である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
試料中の次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩を直接又は間接的に検出するための高スループットスクリーニング蛍光法であって、
a)請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を試料と接触させ、1種以上の蛍光化合物を形成する工程;及び
b)該蛍光化合物の蛍光特性を測定し、該試料中の次亜塩素酸の量を測定する工程
を含む、前記方法。
【請求項25】
次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩の濃度を直接又は間接的に上昇又は低下させる1種以上の標的化合物をスクリーニングするための高スループット法であって、
a)請求項1〜18のいずれかに記載の化合物を標的化合物と接触させ、1種以上の蛍光化合物を形成する工程;及び
b)該蛍光化合物の蛍光特性を測定し、該標的化合物を定性的又は定量的に測定する工程
を含む、前記方法。
【請求項26】
請求項1記載の化合物の製造方法であって、
a)式(IXA)及び(IXB)のピロールを
【化7】

酸触媒の存在下で式(X)のアルデヒドと反応させる工程;
【化8】

b)該反応混合物にベンゾキノンを加え、式(XI)のジピロールを形成する工程;及び
【化9】

c)式(XI)のジピロールを、式BX3を有する三ハロゲン化ホウ素及びトリエチルアミンと反応させる工程
を含み、
式中、Xがハロであり;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれが独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、スルホニル、ホスホニル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、-C(=O)-Y又は-C(=O)-Q-Yであり、Yが、水素、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、カルバメート、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルチオ、ヘテロアルキル又は3から7の環原子を持つヘテロシクリルであり;Qが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アラルキレン又はアルカリーレンであり;
Zが、結合又は二価の連結基であり;
Rが、式(IIIA)、(IVA)及び(VA)の1つを有し;
【化10】

式中、R7、R8及びR9のそれぞれが独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヒドロキシ、チオ、アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、カルバメート、アミド、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、ジアリールアミノ又はヘテロアルキルであり、或いは式(IIIA)、(IVA)又は(VA)のR7及びR8又は式(IVA)のR8及びR9が共に、五員、六員又は七員のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリール環を形成し;
Q1及びQ2のそれぞれが、Q1及びQ2が両方アミノではないという条件で、独立にアミノ又は-O-Q3であり、Q3が、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、アルキルアミド、アルコキシアミド、アルコキシカルボニル、ハロゲン化アルキル又はヘテロアルキルである、前記方法。
【請求項27】
前記反応が溶媒中で起こる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記ベンゾキノンが、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記酸触媒がトリフルオロ酢酸である、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記三ハロゲン化ホウ素が、BF3、BCl3、BBr3又はこれらの組み合わせである、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記式(IXA)のピロールが、式(IXB)のピロールと同じである、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−520895(P2010−520895A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552990(P2009−552990)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際出願番号】PCT/CN2008/000449
【国際公開番号】WO2008/110063
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509255923)ベルスイテクフ リミテッド (2)
【出願人】(509255912)モルニングスイデ ベントウレス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】