説明

正立等倍像結像光学系およびイメージ読取ユニットおよび読取装置

【課題】従来に無い新規な正立等倍像結像光学系を実現する。
【解決手段】同一仕様の複数のレンズがアレイ配列し、個々のレンズが、倒立像を同一の平面上に結像させる物体側レンズアレイ10と、物体側レンズアレイにおける各レンズの大きさに対して小さい微小な透光部が各レンズに対して複数個の割合でアレイ配列し、ノイズとなる光成分を像側に対して遮断する遮光板12と、物体側レンズアレイにおけるレンズのアレイ配列と共軸的に対応するレンズ配列を有し、各レンズが遮光板12の位置を物体面として、透光部の配列の倒立像を結像させ、透光部の配列の倒立像の集合により、物体の正立等倍像を結像させる像側レンズアレイ14とを有し、物体側レンズアレイ10における各レンズの結像倍率が1/n(n≧1)倍であり、像側レンズアレイ14における各レンズの結像倍率がn倍である正立等倍像結像光学系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、正立等倍像結像光学系およびイメージ読取ユニットおよび読取装置に関する。この発明の正立等倍像結像光学系は、複写原稿やファックス原稿、名刺等の読取りや、指紋・静脈等のバイオメトリックス用の読取り、1次元あるいは2次元のバーコードの読取りに利用できる。
【背景技術】
【0002】
正立等倍像を結像する結像光学系を微小化してユニットとし、このような微小な結像光学系のユニットをアレイ配列し、結像させるべき物体の「微小部分の正立等倍像」をユニットごとに結像させ、これら微小部分の像の集合により物体の正立等倍像を結像させることは従来から知られ、微小な結像光学系のユニットとしてはセルフォックレンズに代表される棒状の屈折率分布レンズが広く知られている。
【0003】
また、近来では、レンズ径:1mm以下の正レンズを平面状にアレイ配列したマイクロレンズアレイを複数枚、光軸方向に組み合わせて正立等倍像結像レンズアレイとし、物体の正立等倍像を結像させるものが知られている。
【0004】
このように、物体の正立等倍像を「微小な正立等倍像の集合」により得る正立等倍像結像光学系では、従来から、個々の微小な正立等倍像を結像する微小なレンズ間の所謂クロストークによる正立等倍像の像質の低下が問題として知られ、このような問題を解決する方策として、正立等倍像結像レンズアレイにおける、微小な正立等倍像結像レンズごとにアパーチュアを配してフレア光を遮断する方法(特許文献1等)や、物体側のマイクロレンズアレイと像側のマイクロレンズアレイとの間に、複数の導波路による導波路セットをアレイ配置する方法(特許文献2)が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−70268
【特許文献2】特許第3696033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、従来に無い新規な正立等倍像結像光学系の実現、さらには、かかる正立等倍像結像光学系を用いるイメージ読取ユニット、読取装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の正立等倍像結像光学系は、物体側レンズアレイと、遮光板と、像側レンズアレイとを有する(請求項1)。
「物体側レンズアレイ」は、同一仕様の複数のレンズがアレイ配列し、個々のレンズが、平面上の物体の「微小部分ごとの倒立像」を、同一平面上に結像させるように構成される。
【0008】
「遮光板」は、物体側レンズアレイによる「微小部分ごとの倒立像」が結像する平面位置に実質的に合致して設けられ「物体側レンズアレイにおける各レンズの大きさに対して小さい微小な透光部」が、物体側レンズアレイの「各レンズに対して複数個の割合」でアレイ配列し、ノイズとなる光成分を像側に対して遮断する。
【0009】
「像側レンズアレイ」は、物体側レンズアレイにおけるレンズのアレイ配列と「共軸的に対応」するレンズ配列を有し、各レンズが遮光板の位置を物体面として「透光部の配列の倒立像」を結像させ「透光部の配列の倒立像」の集合により、物体の正立等倍像を結像させる。
【0010】
そして、物体側レンズアレイにおける各レンズの結像倍率が1/n(n≧1)倍(即ち、等倍もしくは縮小倍率)であり、像側レンズアレイにおける各レンズの結像倍率がn倍(即ち、等倍もしくは拡大倍率)である。
【0011】
物体側レンズアレイにおいてアレイ配列する各レンズが「同一仕様」であるとは、アレイ配列した全てのレンズが同一の光学機能を有することを意味する。また、像側レンズアレイにおける各レンズは、物体側レンズアレイの各レンズと1:1で「共軸的」、即ち、光軸を共通にして対応し、物体側レンズアレイの各レンズが一律に1/n倍の結像倍率を持つことに応じて、n倍の結像倍率有するものであるから、像側レンズアレイにおいて配列される各レンズも「同一仕様」である。従って、物体側レンズアレイにおける任意のレンズと、像側レンズアレイにおいて「このレンズに共軸的に対応」するレンズとは、合成的に正立等倍系のユニットを構成する。
遮光板における透光部は、ノイズとなる光(像側レンズアレイにより結像される集合像において、ノイズとなる光)を像側に対して遮断する機能を有し、たとえば「穿設された孔状」とし、この孔状の透光部の孔壁部でノイズとなる光を「吸収により遮光」したり拡散したり」するように構成することもできる。この場合、透光部の孔の内部に「使用波長の光に対して透明な材質」が充填されていてもよい。あるいは透光部の入射部を「全反射角の小さい膜」や「波長以下の周期構造体(フォトニック結晶等のサブ波長構造)で、全反射角の小さいもの」として構成し、膜や構造体に対し「これらに垂直な方向に近い光」のみを透過させるように構成しても良い。
【0012】
透光部は、物体側レンズアレイによる結像面全体にわたって、多数の透光部が一様な密度で配置されていてもよいし、物体側レンズアレイにおけるレンズごとに「複数の透光部が区分けされて配置」されていてもよい。遮光板は「板」といっても、その厚さは薄く、実際には「薄膜状」あるいは「薄層状」に形成することもできる。
【0013】
若干補足すると、物体側レンズアレイ、像側レンズアレイにおいて「アレイ配列される個々のレンズ」は、単一のレンズであっても良いし、複数のレンズで構成されてもよい。単一のレンズで構成される場合とは「単一の屈折面(平凸レンズ)あるいは2面の屈折面(両凸レンズ、凸メニスカスレンズ)によるレンズ」がアレイ配列する場合であり、このような場合、物体側レンズアレイや像側レンズアレイは、1枚の透明基板の片面もしくは両面に屈折面をアレイ配列したものとして構成できる。
【0014】
「複数のレンズで構成」される場合とは、アレイ配列される個々のレンズが、3面以上の屈折面を光軸方向に配して構成される場合であって、例えば、上記「1枚の透明基板の片面もしくは両面に屈折面をアレイ配列したもの」を2枚以上、光軸を共通にして重ね合わせて物体側レンズアレイあるいは像側レンズアレイを構成することができる。
【0015】
勿論、物体側レンズアレイ、像側レンズアレイは、何れも「1枚の透明基板の片面もしくは両面に屈折面をアレイ配列したもの」として構成できるが、物体側レンズアレイと像側レンズアレイのうちの一方を「1枚の透明基板の片面もしくは両面に、屈折面をアレイ配列したもの」として構成し、他方を「1枚の透明基板の片面もしくは両面に屈折面をアレイ配列したものを2枚以上、光軸を共通にして重ね合わせたもの」として構成することもでき、物体側レンズアレイと像側レンズアレイとを共に「1枚の透明基板の片面もしくは両面に屈折面をアレイ配列したものを2枚以上、光軸を共通にして重ね合わせたもの」として構成することもできる。
なお、物体側レンズアレイ・像側レンズアレイにおけるレンズのアレイ配列は1次元配列でもよいし2次元配列でもよい。
【0016】
物体側レンズアレイの各レンズ結像倍率は1/n(n≧1)倍で、像側レンズアレイの各レンズの結像倍率がn倍であるが、n>1の場合には、物体側レンズアレイの各レンズは縮小倍率、像側レンズアレイの各レンズの結像倍率は拡大倍率である。この場合、物体側レンズアレイと像側レンズアレイとを「同一構成の光学系」とし、物体側を縮小倍率で使用し、像側を拡大倍率で使用できる。勿論、n=1の場合には、物体側レンズアレイ、像側レンズアレイは同一構成となる。
【0017】
請求項1記載の正立等倍像結像光学系の物体側レンズアレイは「少なくとも片面に微小な凸レンズ(凸の屈折面)のアレイを形成された平板状の透明光学材料」を有することができる(請求項2)。請求項1または2記載の正立等倍像結像光学系の像側レンズアレイは「少なくとも片面に微小な凸レンズ(凸の屈折面)のアレイを形成された平板状の透明光学材料」を有することができる(請求項3)。
【0018】
請求項2または3記載の正立等倍像結像光学系は、遮光板の物体側に「物体側光路長を規制する平行透明板」を有することができ(請求項4)、請求項2〜4の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系は、遮光板の像側に「遮光板と正立等倍像の結像面との間の光学配置を規制する平行透明板」を有することができる(請求項5)。
【0019】
請求項1〜5の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系の遮光板は「遮光板の物体側の面もしくはその物体側に、光拡散処理された光拡散部を有し、物体側レンズアレイの側端面から照射される照明光を、光拡散部により物体側へ向けて照明光として拡散照射する」構成とすることができる(請求項6)。
「光拡散処理」は、例えば、上記透光孔以外の部分に粗し処理等により微小な凹凸構造を形成する処理等である。
【0020】
請求項1〜6の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系における各部の大きさとしては、物体側レンズアレイおよび像側レンズアレイにおけるレンズ配列ピッチが「0.1mmオーダー」、遮光板における微小な透光部の配列ピッチが「10μmオーダー」であり、遮光板の透光部が「微小な透光部の開口径に比して大きい孔長」を有し、この孔長が「10μmオーダー」であることが好ましい(請求項7)。ノイズ光となる光は孔壁部で吸収により遮断され、もしくは拡散されて像側に対して遮断される。
【0021】
請求項1〜7の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系は、物体側レンズアレイにおける各レンズの結像倍率が1/n(n>1)倍、像側レンズアレイにおける各レンズの結像倍率がn倍で、「遮光板における微小な透光部の配列パターン」が、物体側レンズアレイのレンズのアレイ配列パターンと「相似パターン」であることが好ましい(請求項8)。勿論、像側レンズアレイにおける各レンズは、物体側レンズアレイの各レンズと共軸的に対応するから、この場合、微小な透光部の配列パターンは「像側レンズアレイにおけるレンズ配列パターンとも相似パターン」になる。
【0022】
請求項8記載の正立等倍像結像光学系は「像側レンズアレイの隣接するレンズによる透光部の像の結像パターンが、相互に補完的であるように、透光部の配列パターンが設定されている」ことができる(請求項9)。「相互に補完的」の意味は後述する。
【0023】
請求項8記載の正立等倍像結像光学系は「像側レンズアレイの隣接するレンズによる透光部の像の結像パターンが、相互に部分的に重なり合って、透光部の像が異なるレンズによる像の重なり合いとなるように、透光部の配列パターンが設定されている」ことができる(請求項10)。
【0024】
「像面に透光部の集合像として結像される物体像」に対してノイズとなる成分は、あるレンズによる結像に対して、隣接するレンズや隣隣接するレンズとの境界部で散乱される光であり、この発明の正立等倍像結像光学系では、このようなノイズ成分光を遮光板により像側に対して遮断するが、上記請求項9や10記載の発明では「隣接するレンズによる透光部の配列パターンの像」を有効に利用して前記集合像における解像性や明るさの向上を図るのである。
【0025】
請求項8記載の正立等倍像結像光学系は、第1種の遮光板と第2種の遮光板を有し、これらを選択的に切換可能とするようにできる(請求項11)。
「第1種の遮光板」は、像側レンズアレイの隣接するレンズによる透光部の像の結像パターンが、相互に補完的であるように、透光部の配列パターンが設定された遮光板」である。
「第2種の遮光板」は、像側レンズアレイの隣接するレンズによる透光部の像の結像パターンが、相互に部分的に重なり合って、透光部の像が異なるレンズによる像の重なり合いとなるように、透光部の配列パターンが設定された遮光板である。
【0026】
請求項12記載のイメージ読取ユニットは「平面上の物体のイメージを読取る」ものであって、照明手段と、正立等倍像結像光学系と、イメージセンサとを有する。
「照明手段」は物体を照明する手段である。
「正立等倍像結像光学系」としては、上述した請求項1〜10の任意の1に記載のものが用いられる。
「イメージセンサ」は、正立等倍像結像光学系により結像される正立等倍像を信号化するものであって、CCDやCMOS等のラインセンサやイメージセンサを用いることができる。
【0027】
請求項13記載のイメージ読取ユニットは「平面上の物体のイメージを読取る」ものであって、照明手段と、正立等倍像結像光学系と、遮光板切換手段と、イメージセンサとを有する。
「照明手段」は物体を照明する手段である。
「正立等倍像結像手段」は、請求項11記載の正立等倍像結像光学系である。
「遮光板切換手段」は、第1種・第2種の遮光板を選択的に切り替える手段である。
「イメージセンサ」は、正立等倍像結像光学系により結像される正立等倍像を信号化するものであって、CCDやCMOS等のラインセンサやイメージセンサを用いることができる。
【0028】
請求項12または13記載のイメージ読取ユニットは、正立等倍像結像光学系が、請求項9または10または11記載のものであって、像側レンズアレイにより結像する遮光部の像の配列ピッチが「イメージセンサにおける受光素子の配列ピッチ」と合致するように設定されていることができる(請求項14)。
【0029】
請求項15の読取装置は、請求項12〜14の任意の1に記載のイメージ読取ユニットを用いた読取装置である。即ち、請求項12〜14の任意の1に記載のイメージ読取ユニットを用い、照明手段のオンオフの制御や、イメージセンサからの信号に対する画像処理等の各種の信号処理を行う手段や、ディスプレイ等(これらは従来から知られたものを適宜利用できる。)が付加されて読取装置が構成される。
【発明の効果】
【0030】
以上に説明したように、この発明によれば新規な正立等倍像結像光学系を実現できる。この正立等倍像結像光学系は、アレイ配列されるレンズの個々に対して複数の透光部が対応する。物体側レンズアレイの個々のレンズによる物体の微小な倒立像は遮光板の部分に結像する。像側レンズアレイにおける個々のレンズは透光部の個々の像を結像するが、透光部は、物体からの光のうちノイズ成分となる光線が、透光部で効果的に除去され、像側レンズアレイにより「透光部を透過した光のみ」で「透光部の倒立像の集合」により正立等倍像が形成されるので、「物体の正立等倍像(像側レンズアレイによる透光部の像の集合として形成される。)」は、フレア光等「物体の正立等倍像の結像に対してノイズとなる成分」を含まず、従ってノイズに影響されない「物体の良好な正立等倍像」を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、この発明の正立等倍像結像光学系の実施の1形態を説明図的に示している。
図1(a)において、符号0は「物体面」即ち、結像されるべき「物体の表面」であり、この物体面の正立等倍像が、正立等倍像結像光学系により結像される。符号10は「物体側レンズアレイ」、符号14は「像側レンズアレイ」、符号Imは「像面」を示す。符号12は「遮光板」を示している。
【0032】
この実施の形態において物体側レンズアレイ10は平板状で、その物体側の面に微小な「凸屈折面(凸レンズ)」がアレイ配列されてレンズアレイを構成している。以下の説明のためアレイ配列する多数のレンズのうちで、図1に示す2つのレンズをレンズA、レンズBとして、これらを説明の対象とする。
像側レンズアレイ14は平板状で、その像側の面に微小な「凸屈折面(凸レンズ)」がアレイ配列されてレンズアレイを構成している。以下の説明のため、アレイ配列する多数のレンズのうちで、図1に示す2つのレンズをレンズa、レンズbとする。レンズaはレンズAと共軸的に対応し、レンズbはレンズBと共軸的に対応する。
物体側レンズアレイ10における各レンズは、この例のように、像側レンズアレイ14における各レンズと1:1で共軸的に対応する。
【0033】
物体側レンズアレイ10のレンズA等は、物体面上の「微小な物体表面」の縮小像(n>1として1/n倍)を結像する。物体側レンズアレイ10の各レンズは同一仕様であるので、各レンズが結像する縮小像は同一面上に結像するが、各レンズが結像する縮小像は「倒立像」である。
【0034】
像側レンズアレイ14のレンズa等は「上記縮小像が結像する同一面」を物体面とするように配置され「上記縮小像を倒立させた拡大像(n倍)」を像面Im上に結像する。
レンズA等の結像倍率は「1/n倍」、レンズa等の結像倍率は「n倍」であるから、レンズAとaとによる合成倍率は等倍である。即ち、例示するレンズAとレンズaは、結像系として1ユニットの等倍結像系を構成する。
【0035】
さて、図1に示す実施の形態では、物体側レンズアレイ10の像側面は平面に形成され、像側レンズアレイ14の物体側面も平面に形成されている。そして、これら平面に挟まれるように遮光板12が設けられている。図1においては、遮光板12は、物体側レンズアレイ10、像側レンズアレイ14と別体として描いてあるが、遮光板12を物体側レンズアレイ10と像側レンズアレイ14の平面により挟持してもよいし、遮光板12を「物体側レンズアレイ10の平面部」あるいは「像側レンズアレイ14の平面部」に一体化させて形成しても良い。遮光板12は、物体側レンズアレイ10のレンズA等による微小な倒立像が結像する平面位置に実質的に合致して設けられる。
【0036】
遮光板12には、物体側レンズアレイ10(および像側レンズアレイ14)における各レンズA(およびa)等の大きさに対して小さい微小な透光部が「各レンズA、aに対して複数個の割合でアレイ配列」している。図1(a)において、符号120Aは「レンズAに対応して形成された複数の透光部の配列」を示し、符号120Bは「レンズBに対応して形成された複数の透光部の配列」を示す。
【0037】
図1(b)に透光部の配列120Aについて例示するように、個々の透光部は「開口径に対して大きい孔長を有し、ノイズとなる成分(図中に「ノイズ光」と表示)を孔壁部で吸収もしくは拡散する」ように形成されており、従って、各透光部を透過した光束のみにより「透光部ごとの正立等倍像」が結像する。図1(a)に示すように、各配列120A等の間の部分は遮光部である。
【0038】
図2は、図1の実施の形態の「遮光板12における透光部の配列状態」を説明図的に示している。図2に示すように、物体側レンズアレイにおけるレンズは正方行列状に2次元的に配列されており、互いに直交する方向において隣接しあう4個のレンズを、図1に例示したレンズA、BとともにレンズC、Dとして例示する。像側レンズアレイにおけるレンズの配列がレンズA、B等と同一ピッチで共軸的に配列されることはいうまでも無い。
【0039】
図2に示すように、例示するレンズA、B、C、Dに対応して、透光部の配列120A、120B、120C、120Dが形成されている。他のレンズに対しても同様である。これら透光部の配列120A等は何れも「透光部の配列パターン」として同一であり、各配列の中心部は、対応するレンズの光軸位置に位置する。例えば、透光部の配列120DはレンズDに対応し、配列120Dの中心部はレンズDの光軸上に位置する。しかし、配列120D等と対応するレンズD等との位置関係は、配列120D等の中心部がレンズD等の光軸位置と合致することは必要な要件ではなく、上記の如く「各配列の中心部を、対応するレンズの光軸位置に位置させる」ことは1例にすぎない。
【0040】
レンズAとこれに対応する透光部の配列120Aの場合を例にとって、いま少し詳しく説明すると、図3に示すように、レンズAに対応した透光部の配列120Aは「6×6個の、微小な開口径の透光部の正方行列」である。上記6×6の透光部を行列表示に従って図の如く、A11、A12、・・A16、・・・A31、・・、A61、・・A66とする。符号A11等における「A」は、これらの透光部が「レンズAに対応するもの」であることを示している。
【0041】
図2に示すように、レンズA等は2次元の正方行列として配列され、配列120A等における透光部の配列は正方行列であるので、透光部の配列120A等は、物体側レンズアレイ(従って像側レンズアレイ)におけるレンズ配列に対して相似的である。
【0042】
図4は、透光部の配列120Aにおける各透光部Aij(i=1〜6、j=1〜6)が「レンズa(レンズAに共軸的に対応する)によりn倍に拡大されて像面上に倒立して結像した状態」を示しており、各透光部Aijの拡大像がIAij(i=1〜6、j=1〜6)である。レンズAとレンズaとによる等倍像は、物体表面の微小部分ごとに正立等倍像として像面上に結像するが、透光部Aijを透過した光束のみにより結像される。
【0043】
従って、拡大像IAij等の集合として「物体表面全体の正立等倍像」が形成される。
【0044】
図5は、正立等倍像結像光学系の実施の別形態の特徴部分を説明する図である。
この実施の形態においては、請求項9記載の発明を説明する。
なお、繁雑を避けるため、混同の虞が無いものについては、図1〜図4におけると同一の符号を付する。
【0045】
図5(a)は、物体側レンズアレイにおける隣接する2つのレンズA、Bと、レンズAに対応して遮光板に形成された透光部A11〜A55による「25個の透光部のアレイ配列」と、レンズBに対応して形成された透光部B11〜B55による「25個の透光部のアレイ配列」を示している。各透光部のアレイ配列は、レンズA、B等のアレイ配列である正方行列配列に相似的な正方行列配列であり、透光部のアレイ配列を構成する透光部が奇数(25個)であるので、アレイ配列の中心に位置する透光部(黒丸で示す)は、対応するレンズの光軸上に位置する。
【0046】
さて、請求項9記載の発明では「像側レンズアレイの隣接するレンズ(図5の例ではレンズA、B)による透光部の像の結像パターンが「相互に補完的」であるように、透光部の配列パターンが設定されているのであるが、このための条件を以下に説明する。
図5(b)は、レンズAに対応する透光部Aijのアレイ配列における「第i列の透光部Ai1〜Ai2m+1」の配列と、レンズBに対応する透光部Bijのアレイ配列における「第i列の透光部Bi1〜Bi2m+1の配列」とを示している。図には透光部のアレイ配列として、5×5のアレイ配列を示しているが、説明の一般性のために、透光部のアレイ配列が行・列とも2m+1個の透光部で構成されているものとする。
【0047】
図の如く、透光部の配列ピッチを「l」とする。この配列ピッチ:lは、透光部の孔径の2倍に等しい。また、レンズA、Bの配列ピッチを「L」とする。すると、第i行の透光部配列において中心の透光部から両端の透光部に至る距離は「ml」となる。
【0048】
図5(c)は、レンズA、Bに対応する像側レンズアレイのレンズa、bにより、透光部Ai1〜Ai2m+1の配列、透光部Bi1〜Bi2m+1の配列を像面上に結像させた状態を示している。即ち、透光部Ai1〜Ai2m+1の配列に応じて像IAi1〜IAi2m+1が結像し、透光部Bi1〜Bi2m+1の配列に応じて像IBi1〜IBi2m+1が結像している。そしてこれらの像において、像IBi1、IBi2は、透光部Aijの像の間に位置している。像IAi1〜IAi2m+1と像IBi1〜IB2m+1の位置関係を「隣接するレンズA、Bによる透光部の像の結像パターンが相互に補完的である」というのである。
【0049】
このような補完的な結像が成立する条件は以下のように与えられる。
【0050】
即ち、図5(b)において、第i行の中心の透光部から右端の透光部に至る距離はmlであり、像側レンズアレイにおけるレンズaによりこの部分が像面上に結像する場合、レンズaの結像倍率を「n」とすると、図5(c)の関係から、
L−(nl/2)=nml
が成り立てば良いから、透光部のピッチ:lを、
l=2L/{n(2m+1)} (1)
に設定すれば、像面上における各レンズa、b・・に対応する「透光部のアレイ配列の像の関係」が補完的になる。物体側レンズアレイにおけるレンズA、B、C、D・・等、像側レンズアレイにおけるレンズa、b、・・等のアレイ配列はともに正方行列配列であるから、上記の如き関係を満足するように透光部のピッチ:lを定めれば、透光部の像の結像パターンは「2次元的に補完的」となる。
【0051】
図5(d)は、レンズA〜Dに対応する像側レンズアレイのレンズa〜dにより像面上に結像された透光部の像の補完状態を示している。レンズaにより拡大結像された透光部の像を符号Iaで示し、レンズbにより拡大結像された透光部の像を符号Ibで示し、レンズcにより拡大結像された透光部の像を符号Icで示し、レンズdにより拡大結像された透光部の像を符号Idで示している。これらの像Ia〜Idは、互いに重なり合う部分(図の中央部分)で補完しあっている。
【0052】
レンズa〜d以外の全てのレンズによる透光部の像は互いに補完しあい、像面全体にわたって、物体面の像が「互いに補完しあう正立等倍像の集合」として結像される。
図4に示した場合においては、像面における「透光部の像」以外に部分には像が存在しないので「全体として正立等倍像の解像度」はあまり高くならないが、図5(d)に示す場合は、透光部の像が互いに補完しあうので、図4の場合に比して、物体表面を再現する「透光部の正立等倍像の密度」が高く、従って、解像度の高い正立等倍像を実現できる。
【0053】
次に、例えば図3の例のように、レンズA、aに対応する透光部A11〜A66のように、6×6の正方行列配列の透光部のアレイ配列があるとした場合に、隣接するレンズa、bによる透光部の像が「相互に重なり合う条件」を考える。説明の一般性のために、透光部のアレイ配列は「2m×2m」の正方行列配列であるとする。このように一般化したときの像のアレイ配列をレンズaに対してIA11〜IA2m2m、レンズbに対してIB1〜IB2m2mとする。
【0054】
このとき、レンズaにより結像された透光部の像IA11〜IA66のうちのレンズb側のm列が、レンズbにより結像された透光部の像IB11〜IB66のうちレンズa側のm列が互いに重なりあう条件を考えると、
レンズa、bの倍率をn(>1)、配列ピッチをL、透光部の配列ピッチをlとして、
L=n(m−1)l+nl=nml−nl+nl=nml 、即ち、
l=L/nm (2)
が成り立てばよい。
【0055】
レンズA(a)、B(b)等は正方行列配列であるから、上記条件が満たされると、像面上に結像する透光部の拡大像のアレイ配列は、2次元的に隣接しあう4つのレンズによる像の重なり合いになる。この状態を図6に示す。
【0056】
図6(a)は、像側レンズアレイにおいて互いに隣接する4個のレンズa、b、c、dと、これらに対応して遮光板に形成された透光部のアレイ配列120A、120B、120C、120Dの様子を示している。
【0057】
図6(b)は、レンズa〜dにより拡大して結像されたアレイ配列120A〜120Dの像であり、像IAはレンズaによる拡大像、像IBはレンズbによる拡大像、像ICはレンズcによる拡大像、像IDはレンズdによる拡大像である。これらは相互に重なり合い、中央の3×3の像(黒丸で示す。)は、レンズa〜dによる拡大像同士が重なり合った部分である。これら3×3の像は、一つ一つが、4つのレンズa〜dにより重なり合って結像されたものである。
【0058】
また、レンズa〜dを含む全てのレンズによる結像では、像面上に結像する透光部の正立等倍像は「互いに隣接する4個のレンズにより重なり合って結像される」ので、結像に与る光量が大きく、従って、物体面全体の像として明るい正立等倍像が得られる。
【実施例1】
【0059】
ここで、具体的な実施例を説明する。
図7以下を参照する。
図7に示す実施例は「イメージ読取ユニット」であって、読取装置における読取部を構成する。この読取装置は生体認証用で、読取るべきイメージは「指の静脈のパターン」である。
【0060】
図7において、符号obは「指」の部分を模式的に示している。符号obsで示す部分は、読取るべき静脈パターンの位置する面であり、この面が「物体面」となる。
符号101は平行平板、符号102は物体側レンズアレイを示す。また、符号120は遮光板、符号103は平行平板、符号104は像側レンズアレイをそれぞれ示す。
【0061】
平行平板101の、図における上側面は「指を当てる面」となっており、図の如く、平行平板101の上側面に指obの腹の部分を当てると、静脈パターンの位置する物体面obsが物体側レンズアレイ102に対して適正な「物体面位置」となるように平行平板101の光学的厚さ(機械的な厚さと屈折率の積)が設定されている。即ち、遮光板120の物体側に配置された平行平板101は「物体側光路長を規制する」ものである。
【0062】
また、物体面obsは「指の内部」に位置するので、読取りを行うための照明光は、指obの表皮部分を透過する波長の光(近赤外光 波長:900nm、この光に対する表皮部分の屈折率は1.34である。)が使用される。平行平板101は上記波長の光に対しては透明であるとともに「読取りに対してノイズ光となり易い可視光」を遮断する機能を有する。
【0063】
この実施例においては、平行平板101は上記の機能を有するものとして、材料として硝材:BK7が用いられ、厚さ:0.55mmである。
【0064】
物体側レンズアレイ102は平板状であって、物体側の面に同一仕様の多数のレンズLAが2次元的にアレイ配列している。この実施例において、レンズLAは、レンズ径:0.15mmの凸の屈折面であり、配列ピッチ:0.15mmである。材料は平行平板101と同じくBK7であり、屈折率:1.509である。レンズLAの頂部は、平行平板101の図で下側の面に実質的に当接している。
【0065】
レンズLAをなす凸の屈折面は「非球面」であり、近軸曲率半径:R=0.1031、円錐定数:K=−1.0、4次の非球面係数:A=−20.6157である。凸屈折面のサグ量は26.63μmである。
【0066】
遮光板120の像側の平行平板103は、平行平板101と同じくBK7により構成され、厚さは0.37662mmに設定されている。像側レンズアレイ104は平板状であって、物体側の面に同一仕様の多数のレンズLBが2次元的にアレイ配列している。この実施例において、レンズLBはレンズ径:0.15mmの凸の屈折面であり、配列ピッチ:0.15mmである。材料は平行平板101と同じくBK7である。レンズLBをなす凸の屈折面は、サグ量:26.63μmの凸球面である。レンズLBの頂部は、平行平板103の「図で下側の面」に実質的に当接している。
【0067】
遮光板120は、厚み:0.030mmであり、物体側レンズアレイ板102の像側平面部と、平行平板103の物体側平面部とにより挟持されている。平行平板103は「遮光板120と像側レンズアレイ104のレンズLBとの間の光学距離」を適正に保つ機能を有している。即ち、平行平板103は、遮光板120と正立等倍像の結像面との間の光学配置を規制する機能を有する。
遮光板120は、上記厚みのアルミ箔に、フォトリソグラフィにより透光部の配列パターンを形成し、透光部の孔部分も含めて全体を黒化して光吸収性とした。
【0068】
図7において符号200はイメージセンサであり、具体的には微小な受光エリアが2次元的に配列されたCCDあるいはCMOSセンサである。この実施例においては、イメージセンサ200の受光面201と、像側レンズアレイ板104の像側平面部との間は「0.8375mmの空気間隙」とされており、受光面201が像面に合致するように位置設定されているが、このようにするかわりに、像側レンズアレイ板104の厚さを大きくし、その像側平面部をイメージセンサ200の受光面201に合致させるようにして、像側光路長を実現するようにしてもよい。
【0069】
上に述べた各部の厚みによれば、指obの腹を当接させる平行平板101の物体側面から、像面であるイメージセンサ200の受光面201までの距離(全厚)は2.594mmである。
【0070】
物体側レンズアレイ102に形成されたレンズLAの配列は、上記ピッチ:0.15mmの「正方行列配置」であり、同様に像側レンズアレイ104に形成されたレンズLBの配列も、上記ピッチ:0.15mmの「正方行列配置」である。レンズLBの配列は、物体側レンズアレイ102におけるレンズLAのアレイ配列と共軸的に対応する。
【0071】
物体面obs上の静脈パターンは、物体側レンズアレイの作用により、各レンズLAに対応する微小部分ごとに倒立像となって遮光板120の位置に結像する。このときの結像倍率は「1/4」倍である。
【0072】
像側レンズアレイ104のレンズLBは、遮光板120の位置を物体面として、像面である受光面201に、レンズLBに対応する微小部分ごとの倒立像を結像させる。レンズLBの結像倍率は「4倍」である。
【0073】
このようにして、受光面201には、物体面obsの位置にある静脈パターンの正立等倍像が、レンズLA、LBの結像作用による透光部の像の集合として結像される。
図8(b)は、受光面210におけるイメージセンサの受光エリアの配列状態を説明するための図である。1単位の受光部RLは正方形形状であって、2次元的に正方行列配列に従って配列されている。受光部RLの配列ピッチ:L1は2次元の各方向につき50μmである。各受光部RLには「1個の受光エリアAR」が形成されており、各受光エリアARは「一辺の長さ:L2が25μmの正方形形状」である。
【0074】
従って、図7に示す受光面210には「25μm×25μmの微小な受光エリア」が50μmのピッチで正方行列配列している。
【0075】
図8(a)は、遮光板120における透光部の配置状態を示している。
物体側レンズアレイ102の各レンズLAに応じて(従って、像側レンズアレイ板104の各レンズLBに応じて)、図8(a)の如く36個の透光部が6×6の正方行列配列で配列形成されている。各レンズLAと透光部の配列の関係は、図3に示したものと同様である。
【0076】
図の如く、図8(a)の縦横方向に隣接する「透光部のアレイ配列120A、120B、120C等」の配列ピッチは、縦横方向とも0.15±0.001mmであり、これは物体側レンズアレイにおけるレンズLA(像側レンズアレイにおけるレンズLB)の配列ピッチに等しい。各「透光部のアレイ配列」の中央部は対応するレンズLA、LBの光軸位置に位置する。透光部のアレイ配列120A、120B、120C等は全レンズについて同一配列であり、これらアレイ配列における「透光部の配列ピッチ」は、図8(a)の上下方向とも0.0125±0.001mmであり、各「アレイ配列の1辺の長さ」は0.0625±0.001mmである。透光部の開口形状は円形状で、その直径は0.00625mm(=6.25μm)である。
【0077】
上述の如く、物体側レンズアレイにおける各レンズLAは、物体面の微小部分を「1/4倍」に縮小して遮光板120の位置に結像する。一方、像側レンズアレイにおける各レンズLBは、遮光板120の各微小部分を「4倍」に拡大して受光面201に結像する。
【0078】
ここで、先に説明した(2)式を考えると、説明中の実施例において、倍率:n=4、透光部のアレイ配列は6×6であるからm=3である。レンズLBの配列ピッチ:L=0.15mmであるから、(2)式を満足する透光部の配列ピッチ:lは、
l=L/nm=0.15/(4×3)=0.0125mm
であり、これは説明中の実施例における透光部のピッチに等しい。レンズLBの結像倍率は4倍であるから、各レンズLBの像面(受光面201)には、微小な透光部の配列が4倍に拡大されて結像する。
【0079】
即ち、像面における「各透光部の4倍拡大像」は、直径:25μmの円形状がピッチ:50μm(0.05mm)で正方行列配列することになり、この配列は図8(b)に示した受光エリアARの配列と同じであり、「各透光部の4倍拡大像」のサイズは「受光エリアARのサイズ」と同じである。
【0080】
従って、受光面における「各透光部の4倍拡大像」を「受光エリアARの配列」と合致させれば、物体面からの光は全て、受光エリアARの部分に結像することになる。このとき、各受光エリアには、図6に示したように、隣接する4個のレンズLBによる光が重なり合って集光するので、イメージセンサ200により「明るい正立等倍像」を読取ることができる。
【0081】
また、透光部の配列パターンとして、9個の透光部を「3×3の正方行列配列」にする場合、透光部の開口径を0.00625mmとし、式(1)に従い、m=1として、
l=2L/{n(2m+1)}=0.30/{4×(2+1)}
=0.30/12=0.025mm
に設定すれば、隣接するレンズに対応する各透光部の拡大像が「互いに補完的」に像面上に結像する。このとき、像面上で補完的に結像する拡大像の隣接するもの同士の間隔は0.1mmであるから、図8(b)に示す「1辺:25μmの受光エリアが50μmピッチで正方行列配列するイメージセンサ」に各受光エリアに透光部の拡大像を結像できる。
【0082】
この場合、例えば、図7における平行平板103を左右方向に長く形成し、その物体側表面に「図8(a)に示す6×6の配列パターン」を第1種の遮光板として形成し、上に説明した3×3の配列パターンを第2種の遮光板として形成し、適当なスライダ機構(各種移動ステージ等)を切換手段として、平行平板103を左右方向に変位させて、第1種・第2種の遮光板を切り替えるようにすれば、明るい正立等倍像と補完的な正立等倍像とを選択的に読取ることができる。
【0083】
イメージセンサ200の出力は、通常の読取り操作と同様に、デジタル信号化され、所望の画像処理を受けて、メモリに記憶され、あるいはディスプレイに表示され、あるいは外部へ転送されることができる。
【0084】
上の説明から理解されるように、遮光板における透光部の配列は、読取るべき物体表面の画像情報を「画素化」する機能を持つ。
このような各種の処理を行う機能を付加することにより「読取装置」を実現できる。
【0085】
最後に、図9を参照して、請求項6記載の発明の実施の形態を説明する。
正立等倍像結像光学系による結像の対象となる物体表面は、良好な像を結像させるためには照明する必要がある。照明の方法は公知の種々の方法を用いることが可能であるが、上に説明した実施例のように、物像間の距離が3mmに満たないような薄型の構成で、照明する対象物が指のような場合、通常の照明方法が困難であることが考えられる。請求項6記載の発明は、このような場合に適した照明を可能とするものである。
【0086】
図9(a)は、図7に示す実施の形態における遮光板120と物体側レンズアレイ102の部分を示している。
図9(a)に示すように、物体側レンズアレイ102の両側端面に近接して照明光源LS1、LS2が設けられ、これら照明光源LS1、LS2から照明光を放射させて、物体側レンズアレイ102の側端面から物体側レンズアレイ102の内部に照射する。
【0087】
一方、図9(b)に示すように、遮光板120における物体側面の、透光部の配列120A、120B等の間の部分に「光拡散処理された光拡散部DF」が形成されている。
【0088】
側端部から物体側レンズアレイ102内に照射された照明光は、光拡散部DFにより拡散され、拡散光となって、物体表面を効率よく均一に照明する。
【0089】
なお、図9の実施の形態においては、光拡散部DFを遮光板120に形成したが、このようにする代わりに、遮光板よりも物体側にある「物体側レンズアレイ102の像側の平面部」に光拡散処理を行って光拡散部を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】正立等倍像結像光学系の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】図1の実施の形態の遮光板における透光部の配列状態を説明図的に示す図である。
【図3】図2に示すレンズAとこれに対応する透光部の配列120Aの対応関係を説明するための図である。
【図4】図1の実施の形態において、像側レンズアレイのレンズaにより拡大結像された透光部の配列の像を説明するための図である。
【図5】正立等倍像結像光学系の実施の別形態の特徴部分を説明する図である。
【図6】請求項10記載の発明の特徴部分を説明するための図である。
【図7】イメージ読取ユニットの1実施例の特徴部分を説明するための図である。
【図8】図7に示す実施例における透光部の配列とイメージセンサにおける受光部の配列を説明するための図である。
【図9】図7の実施例における照明を説明するための図である。
【符号の説明】
【0091】
O 物体面
10 物体側レンズアレイ
12 遮光板
14 像側レンズアレイ
Im 像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一仕様の複数のレンズがアレイ配列し、個々のレンズが、平面上の物体の微小部分ごとの倒立像を同一の平面上に結像させる物体側レンズアレイと、
この物体側レンズアレイによる上記微小部分ごとの倒立像が結像する平面位置に実質的に合致して設けられ、上記物体側レンズアレイにおける各レンズの大きさに対して小さい微小な透光部が上記各レンズに対して複数個の割合でアレイ配列し、ノイズとなる光成分を像側に対して遮断する遮光板と、
上記物体側レンズアレイにおけるレンズのアレイ配列と共軸的に対応するレンズ配列を有し、各レンズが上記遮光板の位置を物体面として、上記透光部の配列の倒立像を結像させ、上記透光部の配列の倒立像の集合により、上記物体の正立等倍像を結像させる像側レンズアレイとを有し、
上記物体側レンズアレイにおける各レンズの結像倍率が1/n(n≧1)倍であり、上記像側レンズアレイにおける各レンズの結像倍率がn倍であることを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項2】
請求項1記載の正立等倍像結像光学系において、
物体側レンズアレイは、少なくとも片面に、微小な凸レンズのアレイを形成された平板状の透明光学材料を有することを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項3】
請求項1または2記載の正立等倍像結像光学系において、
像側レンズアレイは、少なくとも片面に、微小な凸レンズのアレイを形成された平板状の透明光学材料を有することを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項4】
請求項2または3記載の正立等倍像結像光学系において、
遮光板の物体側に、物体側光路長を規制する平行透明板を有することを特徴ととする正立等倍像結像光学系。
【請求項5】
請求項2〜4の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系において、
遮光板の像側に、上記遮光板と正立等倍像の結像面との間の光学配置を規制する平行透明板を有することを特徴ととする正立等倍像結像光学系。
【請求項6】
請求項1〜5の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系において、
遮光板の物体側の面もしくはそれよりも物体側に、光拡散処理された光拡散部を有し、物体側レンズアレイの側端面から照射される照明光を、上記光拡散部により物体側へ向けて照明光として拡散照射することを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項7】
請求項1〜6の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系において、
物体側レンズアレイおよび像側レンズアレイにおけるレンズ配列ピッチが0.1mmオーダー、遮光板における微小な透光部の配列ピッチが10μmオーダーであり、
上記遮光板の透光部は、微小な透光部の開口径に比して大きい孔長を有し、この孔長が10μmオーダーであることを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項8】
請求項1〜7の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系において、
物体側レンズアレイにおける各レンズの結像倍率が1/n(n>1)倍、像側レンズアレイにおける各レンズの結像倍率がn倍であり、
遮光板における微小な透光部の配列パターンが、物体側レンズアレイのレンズのアレイ配列パターンと相似パターンであることを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項9】
請求項8記載の正立等倍像結像光学系において、
像側レンズアレイの、隣接するレンズによる透光部の像の結像パターンが、相互に補完的であるように、透光部の配列パターンが設定されていることを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項10】
請求項8記載の正立等倍像結像光学系において、
像側レンズアレイの、隣接するレンズによる透光部の像の結像パターンが、相互に部分的に重なり合い、透光部の像が異なるレンズによる像の重なり合いとなるように、透光部の配列パターンが設定されていることを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項11】
請求項8記載の正立等倍像結像光学系において、
像側レンズアレイの隣接するレンズによる透光部の像の結像パターンが、相互に補完的であるように、透光部の配列パターンが設定された第1種の遮光板と、像側レンズアレイの隣接するレンズによる透光部の像の結像パターンが、相互に部分的に重なり合いとなるように、透光部の配列パターンが設定された第2種の遮光板とを選択的に切換可能としたことを特徴とする正立等倍像結像光学系。
【請求項12】
平面上の物体のイメージを読取るイメージ読取ユニットにおいて、
物体を照明する照明手段と、
請求項1〜10の任意の1に記載の正立等倍像結像光学系と、
この正立等倍像結像光学系により結像される正立等倍像を信号化するイメージセンサとを有することを特徴とするイメージ読取ユニット。
【請求項13】
平面上の物体のイメージを読取るイメージ読取ユニットにおいて、
物体を照明する照明手段と、
請求項11記載の正立等倍像結像光学系と、
この正立等倍像結像光学系における第1種・第2種の遮光板を選択的に切り替える遮光板切換手段と、
上記正立等倍像結像光学系により結像される正立等倍像を信号化するイメージセンサとを有することを特徴とするイメージ読取ユニット。
【請求項14】
請求項12または13記載のイメージ読取ユニットにおいて、
正立等倍像結像光学系が、請求項9または10または11記載のものであって、
像側レンズアレイにより結像する遮光部の像の配列ピッチが、イメージセンサにおける受光素子の配列ピッチと合致するように、設定されていることを特徴とするイメージ読取ユニット。
【請求項15】
請求項12〜14の任意の1に記載のイメージ読取ユニットを用いた読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−278048(P2008−278048A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117580(P2007−117580)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000115728)リコー光学株式会社 (134)
【Fターム(参考)】